廃材の再資源化装置およびそれを用いた再資源化方法、ならびに当該方法にて得られた金属、金属化合物、基材
【課題】透明導電膜を含む廃材からインジウムなどの希少金属を含む有価物を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的な再資源化装置および再資源化方法を提供する。
【解決手段】透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備える廃材の再資源化装置、当該再資源化装置を用いて透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法、ならびに、当該方法にて得られた金属、金属化合物、基材。
【解決手段】透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備える廃材の再資源化装置、当該再資源化装置を用いて透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法、ならびに、当該方法にて得られた金属、金属化合物、基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜を含む廃材の再資源化装置およびそれを用いた再資源化方法、ならびに当該方法にて得られた金属、金属化合物、基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫など地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0003】
このような状況を受けて、たとえば2001年4月には家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0004】
これら家電4品目においては、関係者の鋭意努力のもと、法律施行当初に比べリサイクルが格段に進んでいる。現在、家電4品目に使用されている鉄、銅、アルミなどの金属はもとより、プラスチックについてもリサイクルが拡大しつつある。また、テレビにおいては、CRT(Cathode Ray Tube)のガラスを切断して電子銃や蛍光体を除去した後、ガラスカレットとして元のCRT用ガラスに再生使用するリサイクル技術がすでに実用化されている。
【0005】
一方、最近、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display:FED)、電子ペーパなどのフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)が身の回りの製品に搭載されてきており、たとえば、テレビ、パーソナルコンピュータ、モニタ、ビデオ、カメラ、携帯電話、カーナビゲーション、情報携帯端末、小型ゲーム機など、様々な分野で幅広く利用されてきている。FPDの市場規模はその省電力、省スペース、軽量といった特性から、近年の高度情報化社会の進展に伴い急激に増加している。これに伴い、これらFPDの廃棄量も年々増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上等の要求が強くなってきている。
【0006】
ところが、これらFPDは比較的新しい製品であること、また、現状は比較的廃棄物の量が少ないこともあり、前記CRTのような適切なリサイクルは実用化されていない。廃棄されたFPDは廃棄物の処理施設で破砕されて、シュレッダーダストとともに埋め立て処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0007】
加えて液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどに代表される薄型テレビにおいては、近い将来、家電リサイクル法の適用品目として追加される動きもある。このような背景から、基幹部品であるFPDのリサイクル技術の開発は急務となっている。
【0008】
FPDリサイクル技術開発において考慮すべき点は、ガラス、インジウムなどの材料の再生である。FPD表示部の基材は、ガラスまたはプラスチック基板が用いられている。ガラスは製品重量の大半を占めるため、リサイクル率向上の観点からも再資源化が望ましく、再度同一製品のガラス原料として再生するなどの高位なリサイクルを行なうことがより望ましい。また、基材には透明導電膜としてITO(Indium Tin Oxide)などのインジウム化合物が加工されている。インジウムは希少金属であり、昨今のFPD市場拡大も影響し価格が高騰してきており、回収、リサイクルが模索されている。
【0009】
前記インジウム化合物以外にFPD表示部の基材に加工される金属は、液晶パネルを例に挙げると、たとえばモリブデン、タンタル、チタン、アルミニウムなどがあるが、これらは液晶パネル中の含有量が約150ppm未満であり、自然鉱石中の含有量よりも大幅に低濃度であるため、経済的にリサイクルは困難である。一方、インジウムは天然にインジウムを主原料とする鉱石が存在せず、主に亜鉛などの鉱石に5〜30ppm程度含まれているにすぎず希少な金属であるが、液晶パネル中にはおよそ150〜700ppm程度含まれており、これを回収し再生することは資源有効活用上価値があり、また、経済的にも有利と考えられる。
【0010】
これらを踏まえると、FPD中のガラス、インジウム材料の再生は非常に意義深いものであるが課題も多い。たとえばガラスの同一材料への再生においては大きく2つの課題が挙げられる。1つ目は不純物の完全な除去、2つ目はガラスの分別である。前者においてはガラスに加工された電極材料やカラーフィルタ、配向膜、また、2枚のガラス間に封入された液晶材料など、ガラス以外の成分は完全に除去する必要がある。後者は組成の違うガラスは特性が変わるために分別する必要があり、製造メーカーの異なるガラスはもちろんのこと、同一メーカーでもグレードの違うガラスは分別する必要がある。一方、インジウムについては種々検討されてきているが、まだまだ廃FPD製品からのインジウム回収は経済性が伴わず、製造工程で発生する使用済みターゲットや装置、治具に付着したITO残渣を回収するにとどまっている。
【0011】
このような背景の中、透明導電膜を含む廃材について、当該廃材中の基材上の薄膜除去処理やITO中のインジウムの回収技術について、各企業や研究機関を含め多くの研究開発努力がなされている。
【0012】
たとえば、酸、アルカリなどの薬液を用いてITO中のインジウムを分離し回収する手法が多く提案されている(たとえば特開2000−128531号公報(特許文献1)を参照)。しかしながら、このような薬液を用いる方法においては、廃酸、廃アルカリなどの処理施設が必要であり、洗浄に大量の水を使用するなど環境負荷は少なくない。また、強酸、強アルカリを使用することも多く、作業安全性のほか処理施設の耐用性も考慮する必要があり、多大な設備投資が必要となる。
【0013】
また、加熱処理にて有機物を燃焼させ、インジウム、ガラスをリサイクルする手法についての技術も開示されている(たとえば、特開2000−84531号公報(特許文献2)を参照)。しかし、このような手法では処理物全体を高温処理することにより多くの有機ガスが発生するため、排ガス処理施設が必要となる。また、ガラス成分も溶融してしまうためガラス材料としての再生は難しいといった問題も生じる。
【0014】
一方、超臨界流体を用いて有機物を除去し、酸洗浄や製錬プロセスにてインジウムを回収するプロセスについての技術も開示されている(たとえば、特開2001−235718号公報(特許文献3)を参照)。しかしながら、このような方法ではたとえば500℃、35MPaといった高温高圧プロセスにて超臨界状態を形成するため、膨大なエネルギーと大掛かりな設備が必要となり、今後生産量が増え続けると予想されるFPDが使用済みとなった時にトータル的に環境負荷が増大することが懸念される。
【0015】
上述のように、市場から回収されたFPD廃材からガラスやインジウムなどの材料を再生するにあたって、膨大なエネルギーと大掛かりな設備を要せず、またインジウムの回収において湿式プロセスを使用しないFPD廃材の再資源化方法の開発が強く望まれているにもかかわらず、そのような再資源化方法は未だ公知となっていないのが現状である。
【0016】
一方、IC産業においては、水を使用しない洗浄技術が採用されているが、いずれの技術も製造工程での還元洗浄装置を用いたものであり、FPD廃材の再生への適用の視点はなく、この分野への適用については機能、性能ともに十分ではない。
【0017】
なお、透明導電膜を含む廃材としては、上述したFPD廃材以外にもたとえば太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムの廃材が挙げられ、これらの製品の廃材より透明導電膜を回収する際にも、上述と同様の課題の解決が求められている。
【特許文献1】特開2000−128531号公報
【特許文献2】特開2000−84531号公報
【特許文献3】特開2001−235718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、透明導電膜を含む廃材からインジウムなどの希少金属を含む有価物を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的な再資源化装置および再資源化方法を提供することである。より詳しくは、FPD廃材から、ガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的なFPD廃材の再資源装置および再資源化方法を提供することである。さらに詳しくは、湿式プロセスを使用することなくFPD廃材から、ガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的なFPD廃材の再資源化装置及び再資源化方法を提供することである。
【0019】
また、本発明は、FPD廃材からガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、高品位な特性を有するガラス、インジウムなどを提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、FPD廃材などの透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理することにより、当該廃材に含まれる基材および/または基材上に形成された透明導電膜に含まれるインジウム成分を回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0021】
本発明の廃材の再資源化装置は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段としてプラズマ発生装置を備えることを特徴とする。
【0022】
ここにおいて、前記廃材は、基材と、基材上に形成された透明導電膜とを含むことが好ましい。前記基材は、ガラスおよび/またはプラスチックからなることが好ましい。
【0023】
本発明の廃材の再資源化装置において、前記プラズマ発生装置は大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることが好ましく、当該大気圧非平衡プラズマ放電機構は誘電体バリア放電機構を備えることが好ましく、当該誘電体バリア放電機構は2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることがより好ましい。また本発明の廃材の再資源化装置では、前記平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することが好ましい。
【0024】
本発明の廃材の再資源化装置では、前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けることが好ましく、前記誘電体を設けた電極に前記廃材を設置することがより好ましい。さらに、前記廃材を、前記誘電体を設けた電極、基材、透明導電膜の順になるように設置することが特に好ましい。
【0025】
本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることが好ましい。また本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることが好ましい。さらに本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定することが好ましい。
【0026】
本発明の廃材の再資源化装置はまた、プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備え、処理中のプラズマ電流波形が、記憶されたプラズマ電流波形と一致した場合にプラズマ処理を終了するか否かを判定することが好ましい。さらに、プラズマの電流波形を変換処理し、プラズマ処理を終了するか否かを判定することが、より好ましい。
【0027】
本発明はまた、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法についても提供する。
【0028】
本発明の廃材の再資源化方法において、前記廃材は、FPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。また、前記FPDは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0029】
本発明の廃材の再資源化方法において、前記廃材は基材と、基材に形成された透明導電膜を含むことが好ましく、前記基材は、金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0030】
また本発明の廃材の再資源化方法においては、プラズマ処理によって、前記基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離することが好ましく、基材から分離された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを回収し、再資源化することがより好ましい。
【0031】
ここにおいて、前記金属および/または金属化合物は、インジウムおよび/またはインジウム化合物であることが、好ましい。
【0032】
本発明の廃材の再資源化方法はまた、プラズマ処理した前記基材を再資源化することが好ましい。
【0033】
本発明はまた、上述した本発明の廃材金属および/または金属化合物についても提供する。
【0034】
本発明はさらに、上述した本発明の廃材の再資源化方法によりフラットパネルディスプレイから得られた基材についても提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、環境負荷をかけることなく、廃材に透明導電膜として含まれる希少金属を分離することができる。また本発明によれば、プラズマにより透明導電膜を含む廃材の処理を行なうため、たとえばディスプレイの基材に含まれる金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり、環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに本発明によれば、水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。
【0036】
本発明の廃材の再資源化方法は、FPD以外にも、たとえば太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムなどのインジウム化合物などで形成された透明導電膜を含む製品の廃材の再資源化にも好適に適用できる。
【0037】
また本発明は、廃材に含まれる基材をプラズマ処理することにより得られる金属、金属化合物、基材から選ばれる少なくともいずれかについても提供することができる。このような本発明の方法により回収された金属、金属化合物、基材から選ばれる少なくともいずれかは、再び同一製品の材料等としてリサイクル可能である。
【0038】
また本発明の廃材の再資源化装置は、FPD廃材に含まれる基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離するための、および/または、FPD廃材に含まれる基材を洗浄するためのプラズマ発生装置を備えるため、上述した本発明の再資源化方法に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の好ましい一例の廃材の再資源化装置1を模式的に示す図であり、図2は、本発明の廃材の再資源化装置1に用いられるプラズマ発生装置2を概念的に示す図である。本発明の再資源化装置1は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置2を備えることを特徴とする。このような本発明の廃材の再資源化装置1によれば、環境負荷をかけることなく、廃材に透明導電膜として含まれる希少金属を分離することができる。また本発明の廃材の再資源化装置1によれば、プラズマにより透明導電膜を含む廃材の処理を行なうため、たとえばディスプレイの基材に含まれる金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり、環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに本発明の廃材の再資源化装置1によれば、水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。
【0040】
ここで、本発明の廃材の再資源化装置に用いられるプラズマ発生の技術自体は、IC産業や電子部品産業の分野で実用化が進んでいる物質の分解や改質に関する技術として応用されている。しかしながら、本発明の廃材の再資源化装置は、当該プラズマ技術を産業廃棄物を再資源化の分野に応用しようとするものであり、具体的には、少なくとも基材と透明導電膜とを含む廃材にプラズマを照射することにより、基材に形成された透明導電膜の形成材料を含む金属、金属化合物および有機化合物から選ばれる少なくともいずれかを分離し、および/または、当該基材を洗浄することで、これらの金属、金属化合物、基材を再資源化しようとするものである。このような着眼は、従来にはない、画期的なものである。
【0041】
ここで、図3は、本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする透明導電膜を含む廃材の一例としてFPDである液晶パネル51を模式的に示す断面図である。本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする廃材は、透明導電膜を含んでいるのであれば特に制限されないが、好ましくは基材と、当該基材に形成された透明導電膜とを含む。このような廃材としては、たとえば、FPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。このうちFPDは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかを含む。これらはいずれも、ガラスおよび/またはプラスチックで形成された基材上に、ITOなどのインジウム化合物からなるITOが形成されてなり、その構造が共通している。以下、本発明の廃材の再資源化装置1の説明に先立ち、本発明において再資源化の対象となる廃材として、FPDの中でも液晶パネルを例に挙げて説明する。
【0042】
図3には、TFT(Thin Film Transistor)タイプの液晶パネル51の一般的な構造(側面断面図)を模式的に示している。図3に示す例では、TFT側基材52上に電極材料(TFTを含む)54、透明導電膜であるITO電極55が形成され、その上に配向膜56が形成される。一方、カラーフィルタ側基材53にはカラーフィルタ57、透明導電膜であるITO電極58、配向膜59が順次形成される。そして加工後の基材52,53間に液晶60を注入し、その周囲を封止材61,62にて封止する。また基材52,53上には、通常、偏光板63,64が貼り付けられている。
【0043】
本発明においては、たとえば図3に示す液晶パネルにおいて基材52,53を分割し、液晶60を回収後、基材52,53の配向膜56,59が形成されている側の面に、本発明の再資源化装置1のプラズマ発生装置2で発生させたプラズマを照射する。よって、プラズマ処理により分離処理され得る基材52,53には、配向膜56,59、透明導電膜であるITO電極55,58、電極材料(TFTを含む)54、封止材61,62およびカラーフィルタ57が形成されている。これらは、具体的には、表1に示すような材料で形成されている。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、本発明の廃材の再資源化装置1を用いたプラズマ処理によって分離処理され得る材料としては、たとえばポリイミド、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの有機物のほか、タンタル、チタン、モリブデン、アルミニウム、ITOなどの無機物が挙げられることがわかる。なお、表1に示した材料は一例であり、本発明の再資源化装置1を用いて分離される材料はこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の廃材の再資源化装置1によれば、プラズマ処理によって、基材52,53から、たとえば表1に示したような金属、金属化合物および有機物の少なくともいずれかから構成される配向膜56、ITO電極55、電極材料(TFTを含む)54、封止材61,62、配向膜59、ITO電極58およびカラーフィルタ57を分離することができ、また、プラズマ処理によって、当該基材を洗浄することができる。このようにプラズマ処理によって洗浄された基材は、上述した材料が非常によく除去されているため、同一製品等に再度利用することができる。また、本発明の再資源化装置1を用いることで、基材から分離された金属、金属化合物、有機物もまた、回収し、再利用することができる。なお、上述した金属、金属化合物および有機物の少なくともいずれかの材料は、これらが形成された基材とは、その化学構造が相違するため、プラズマ発生装置2により発生したプラズマにより生成するラジカルなどで除去することが可能となる。
【0047】
本発明の廃材の再資源化装置1において、上述したような透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理するためのプラズマ発生装置2としては、特に制限されるものではないが、真空装置などが不要であるため装置コストがかからず、平衡プラズマ放電機構よりはるかに少ない消費エネルギーで反応プロセスを構築できることから、大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることが好ましい。また前記大気圧非平衡プラズマ放電機構は、均一なグロー放電などを発生させやすいように、誘電体バリア放電機構を備えることが好ましい。また、前記誘電体バリア放電機構は、一度に大きなエリアの処理が可能であり、処理の高効率化を考慮すると、2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることが好ましく、これら平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することがより好ましい。さらに、プラズマ照射効率向上の観点から、前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けてなる構造を備えることが特に好ましい。
【0048】
図1および図2に示す例のプラズマ発生装置2は、2枚の平行平板電極であるA電極3およびB電極4が一定の間隔をあけ、その間にB電極4に密着して誘電体5が設置されており、A電極3およびB電極4に電源6が電気的に接続されてなる。このようなプラズマ発生装置2のA電極3とB電極4との間に、透明導電膜9を含む廃材7を設置する。廃材7としては、好ましくは基材8と、基材8に形成された透明導電膜9とを有するものを適用する。この基材8および透明導電膜9を含む廃材7は、上述した図3の例では、電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53が相当する。
【0049】
本発明の廃材の再資源化装置1において、廃材7は、A電極3とB電極4との間に設置されればよく、この電極間に廃材を設置する方法については、従来公知の適宜の手法を特に制限されることなく採用することができる。たとえばベルトコンベアなどを用いて、A電極3とB電極4との間を通過するように廃材7を搬送するようにしてもよい(図示せず)。廃材7に集中的にプラズマ照射するために、廃材7は、上記誘電体5を設けた電極(図1および図2に示す例ではB電極4)上に設置することが好ましい。またこの場合、透明導電膜9に集中的にプラズマ照射することができ、プラズマ処理効率を向上し、かつ、プラズマ処理時間を短縮できることから、図1および図2に示す例のように、誘電体5を設けた電極(図1および図2に示す例ではB電極4)、基材8、透明導電膜9の順になるように設置することが好ましい。
【0050】
本発明におけるプラズマ発生装置2に用いられるA電極3およびB電極4の形成材料としては、特に制限されることなく当分野において従来より広く用いられている適宜の材料を用いることができるが、経済性、耐食性の観点から、ステンレス(具体的にはSUS304など)を用いることが好ましい。また誘電体5についても特に制限されるものではなく、当分野において従来より広く用いられている適宜の材料を用いることができるが、耐久性を考慮するのであればガラスを用いることが好ましく、また、誘電率が高く、均一なグロー放電を発生させるためにはアルミナを用いることが好ましい。これらは得ようとする放電特性によって使い分けてもよい。
【0051】
また本発明におけるプラズマ発生装置2に用いられる電源6は、空気、水蒸気およびその他の気体を活性化し得る電源であれば、直流、交流、パルスのいずれでもよいが、電流、電圧などを瞬時にオン、オフできるパルス電源を用いることが好ましい。パルス電源を用いることで、電界強度を急激に高め、プラズマ密度を上げることができ、また、プラズマ放電により熱が発生する前に電流、電圧などをオフすることが可能となるという利点もある。電源6としてパルス電源を用いる場合、周波数は特に制限されないが、たとえば1〜100kHzの範囲が例示される。
【0052】
さらに、図1および図2に示す例におけるプラズマ発生装置2では、A電極3と誘電体5との間に、原料ガスを供給するためのガス供給路10が形成されている。このガス供給路10を介してプラズマ発生装置2内に供給する原料ガスとしては、たとえば、酸素ガス、窒素ガス、空気、水蒸気、ヘリウムガス、アルゴン、二酸化炭素、水素ガス、メタンガス、アンモニアガス、フッ素ガスなどが挙げられるがこれに限定されるものではなく、これらのガスの混合物を用いてもよい。原料ガスの供給方法はとくに限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0053】
ここで、本発明に用いられるプラズマに含まれ得る有効なラジカルは種々存在するが、有毒であるものや高価なものは避けるべきであり、空気そのものを原料ガスとして用いるようにしてもよい。このように原料ガスの1つに空気を用いる場合には、送風機を用いて供給するようにしてもよい。なお、プラズマ処理を行なう領域の酸素ラジカル濃度を上げるために、空気に少量の酸素ガスを付加する、または、水蒸気を付加するようにしてもよい。中でも、空気に水蒸気を付加する方法は、空気に酸素ガスを付加する方法と比較して簡便であり、より好適である。
【0054】
また上述のように酸素ガスまたは水蒸気を付加した空気を原料ガスとして用いる場合には、付加した酸素ガスまたは水蒸気を供給段階で制御するよりは、プラズマ発生装置2によりプラズマを照射する領域を観察して、この観察された結果に応じて電源6の周波数を変化させるように制御して、当該領域における酸素ラジカルの濃度を調整するように実現することが好ましい。すなわち、空気そのものを原料ガスとして用いることが経済的で安全ではなるが、湿度の変化がプラズマを照射する領域における酸素ラジカル濃度の変化として現れてくることは好ましくなく、これを適正に保つために、電源6の周波数の制御、酸素ガスまたは水蒸気の添加量の制御などを行なうことが好ましい。
【0055】
なお、図1に示す例のプラズマ発生装置2では、ガス供給路10は、上述のように廃材7を設置した状態で、供給ガス入口11を除いては、A電極4側から覆うA電極枠13およびB電極4側から覆うB電極枠14によって密閉され得るように実現される。またガス供給路10は、供給ガス出口12にも連通しており、プラズマ処理後のガス供給路10内のガスをこの供給ガス出口12から排出し得るように構成されている。
【0056】
本発明におけるプラズマ発生装置2を用いたプラズマ処理に際しては、上述したように廃材7を設置し、A電極枠13およびB電極枠14によりガス供給路10を密閉した状態で、供給ガス入口11から原料ガスを供給しつつ、電源6からA電極3およびB電極4にある値以上の電圧を印加する。これによってA電極3とB電極4との間に放電が生じ、この放電により雰囲気ガス(ガス供給路10に供給された原料ガス)の成分に起因する各種のイオン、ラジカルを含むプラズマが発生し、上述した少なくとも基材8および透明導電膜9を含む廃材7に照射される。基材8から透明導電膜9が分離され、基材9が洗浄される。ここで、具体的には、上述したように基材8および透明導電膜9を含む廃材7は、図3に示した例では、電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53が相当するが、本発明の廃材の再資源化装置1を用いてこれらにプラズマ照射することで、基材52,53上に形成された金属、金属化合物および有機物を分離し、基材52,53表面を洗浄することができる。すなわち、放電によってガス供給路10から入ってくるガスの成分が高速に加速された電子と衝突することにより、電離・解離・励起され、ガスの成分に起因する各種のイオンやラジカルが生成する。これらのラジカルがFPD廃材である液晶パネルの基材に加工された金属、金属化合物、有機物などに作用し、基材からこれら加工物を分離させる。
【0057】
本発明の再資源化装置1を用いて、廃材7にプラズマを照射する時間は、基材8に形成された透明導電膜9の形成材料を含む上述した材料が分離されるのであれば特に制限されないが、たとえば1秒〜1時間である。また、基材表面をより高度に洗浄するために、たとえば、透明導電膜9の形成材料を含む上述した材料を分離した後の基材8に、プラズマを照射するようにしてもよい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、電源6により印加する電圧および周波数を、プラズマ処理の途中で変更するようにしてもよい。廃材7を設置していない側の電極と廃材7との間の距離も特に制限されるものではなく、たとえば1mm〜1mの範囲内での直線距離を適宜選択することができる。
【0058】
ここで、プラズマ被処理物である廃材7から透明導電膜9が除去できたか否かは、たとえばエネルギー分散型X線装置を用いて基材表面を分析することで判定することができるが、このエネルギー分散型X線装置を用いた場合には分析に時間を要し、また装置が大掛かりなものとなるために、実用化の観点からは得策ではない。このため、本発明者らは、透明導電膜9が形成された基材8に対しプラズマの照射が開始された時点と、プラズマ照射によって透明導電膜9が除去された時点において、両時点でのプラズマ電流波形が異なることを見出し、この電流波形の相違を利用することでプラズマ処理を終了するか否かの判定を行なうことができることに着目した。
【0059】
上述した観点から、本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることが好ましく、また、プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることが好ましい。プラズマの電流波形を観測する機構としては、当分野において従来より広く用いられている適宜の機構を特に制限なく用いることができ、特に制限されるものではないが、分解能、データ処理の容易さから、デジタルオシロスコープを用いることが好ましい。またプラズマの電流波形を解析する機構についても、プラズマ処理前後の波形変化などを比較できるものであれば特に限定されるものではなく、従来より広く用いられている適宜の機構を特に制限なく用いることができる。プラズマ処理前後の波形変化を比較する方法としては、たとえば画像認識や画像変換処理などを用いる方法、また、電流波形を、その波高や振幅、標準偏差などに変換処理して比較する方法などを挙げることができる。
【0060】
図1には、上述したプラズマ発生装置2に加え、プラズマの電流波形を観測する機構としてオシロスコープ16、プラズマの電流波形を解析する機構として電流波形解析装置17、ならびに、これらを制御するための制御装置18を備える廃材の再資源化装置1を模式的に示している。図1に示す例では、平行平板電極であるA電極3とB電極4との間に流れる電流および印加される電圧を観測するためにA電極3およびB電極4にオシロスコープ16が電気的に接続されてなり、このオシロスコープ16に電流波形解析装置17および制御装置18がさらに電気的に接続されてなる。このようにプラズマの電流波形を観測する機構およびプラズマの電流波形を解析する機構を備えることで、上述したプラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定できる廃材の再資源化装置1を実現することができる。なお、この場合、本発明の再資源化装置は、プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備えることが好ましく、図1に示す例では、電流波形解析装置17が、このプラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構を兼ね備える。
【0061】
ここで、図4は、図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1を制御する方法の一例を示すフローチャートである。図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1は、たとえば、図4に示すような一連のフローにて、プラズマ処理を終了するか否かを判定するように制御することができる。
【0062】
まず、予め基材8から透明導電膜9が除去された時点のプラズマ電流波形(波形X)を電流波形解析装置17に記憶させる(ステップ501)。なお、この際、透明導電膜が形成されていない基材からプラズマ電流波形を得るようにしてもよい。また、プラズマ電流波形(波形X)は、観測しやすいように高速フーリエ変換を行なってもよい。
【0063】
次に、オシロスコープ16でプラズマ電流波形の観測を開始し(ステップ502)、透明導電膜9が形成された基材8へプラズマ処理を開始する(ステップ503)。プラズマ処理中は、プラズマ電流波形をオシロスコープ16で観測し、観測されたプラズマ電流波形を電流波形解析装置17に送信する。このように観測するプラズマ電流波形についても、観測しやすいように高速フーリエ変換を行なってよい。
【0064】
次に、電流波形解析装置17において、常時オシロスコープ16から受信したプラズマ電流波形を、予め記憶した波形Xと比較する(ステップ504)。そしてオシロスコープ16から受信したプラズマ電流波形が波形Xと略一致したとき(ステップ505)、基材8から透明導電膜9が除去されたと判定し、電流波形解析装置17から制御装置18へ処理終了の信号が送られる(ステップ506)。制御装置18は処理終了の信号を受け、次ステップへ進む(ステップ507)。このようにして、本発明の廃材の再資源化装置1を用いた好適なプラズマ処理の制御を実現することが可能となる。
【0065】
なお、図1および図2に示した例は、あくまでも好ましい一例であり、本発明の廃材の再資源化装置は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備えるのであれば特に制限されるものではなく、いかなる構成で実現されてもよい。
【0066】
図5は、本発明の廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。本発明は、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法についても提供する。本発明の廃材の再資源化方法では、上述したように基材と、当該基材に形成された透明導電膜とを含む廃材をその再資源化の対象とする。このような廃材としては、上述のようにFPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。またこのうちFPDには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかが含まれる。図1には、このような透明導電膜を含む廃材の一例としてFPD廃材である液晶パネル(図3)を含む液晶テレビの廃材を再資源化する場合について示している。
【0067】
図1に示す例の本発明の廃材の再資源化方法では、まず、たとえば家庭や製造工場などから廃棄されたFPD廃材(たとえば液晶パネルを含む液晶テレビの廃材)を回収する(ステップ101)。次に、回収された液晶テレビの廃材を従来公知の適宜の手法にて解体(たとえば、手解体)し、シールドケースや鋼板などの金属部品、プリント基板、筐体やスタンドカバーなどのプラスチック部品、蛍光管などに解体し(ステップ102)、図3に示したような液晶パネル51を取り出す(ステップ103)。
【0068】
次に、液晶パネル51に貼り付けられている偏光板63,64を除去する(ステップ104)。偏光板63,64の除去方法は、従来公知の適宜の手法にて除去することができる。たとえば、偏光板63,64の一端部(たとえば隅)をカッターなどの工具を用いて部分的に剥離した後に、その剥離部分を適当な力で引っ張り、偏光板63,64の全体を剥離する方法、市販の偏光板剥離装置を用いて偏光板63,64を剥離する方法などが挙げられる。
【0069】
続いて、液晶パネル51の分別を行なう(ステップ105)。これは、使用されているディスプレイの基材を同一種類ごとに再資源化することを目的として行なわれるものである。したがって、再生される基材の用途によっては当該分別工程が不要である場合もある。当該工程で基材を分別する方法としては、たとえばガラスで形成された基材の場合には、蛍光X線を利用した分別方法を好適に採用することができる。具体的には、ガラスに軟X線を照射し、そのガラスから発せられる蛍光X線を、たとえば蛍光X線分析機を使用して分別する。その他、液晶テレビの製造メーカー、機種ナンバーなどから基材に使用されている使用ガラスの種類を追跡する方法などもあるが、分別方法はガラスを同一種類毎に分別できればどのような手段を用いても構わない。またプラスチックで形成された基材の場合には、上記追跡による方法が有効である。また、基材がガラスと、樹脂や有機物などを含んだプラスチックで構成される場合もある。
【0070】
次に、基材52,53上に形成されたインジウム化合物などを表面に露出させるために、上記分別した液晶パネル51の2枚の基材52,53を分割する(ステップ106)。基材52,53を分割する方法は、特に限定されないが、たとえば、封止エリアの内側の4辺をカッターなどで切断する方法などが挙げられる。また、液晶パネルを破砕してもよく、手段は特に限定されない。
【0071】
続いて、封入されていた液晶および分割したガラス表面に付着した液晶を回収する(ステップ107)。回収方法は特に限定されるものではないが、封入されていた液晶の回収としては、たとえばアセトン等の有機溶剤洗浄が挙げられる。また、分割したガラス表面に付着した液晶の回収としては、たとえば、ヘラなどの板状物を用いてガラス表面に付着した液晶を擦り取る方法がある。このようにして回収された液晶は、ここまで加熱などの工程が無いため、製品使用時の品質が保持された状態であり、再使用するのに好適である。なお、この液晶は必要に応じて不純物の除去や精製を行なってもよく、また、再使用時の用途などに応じて成分の再調整を行なってもよい。
【0072】
続く工程において、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する(ステップ108)。この工程では、具体的には、ステップ106において分割または破砕された電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53にプラズマを照射して、基材上に形成された透明導電膜の形成材料を含む表1に示したような金属(具体的にはインジウム)、金属化合物(具体的にはインジウム化合物)および有機物を分離し、また、基材52,53を洗浄する。
【0073】
このステップ108において用いられる本発明の廃材の再資源化装置としては、上述したように、透明導電膜を含む基材にプラズマ処理する手段としてプラズマ発生装置を備えているものであれば特に制限されるものではないが、図1に示した例のように、プラズマ発生装置2に加え、プラズマの電流波形を観測する機構としてオシロスコープ16、プラズマの電流波形を解析する機構として電流波形解析装置17、ならびに、これらを制御するための制御装置18を備える廃材の再資源化装置1を特に好適に用いることができる。またさらに、このような廃材の再資源化装置1を、図4に示した一連のフローに沿って制御して、プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定するように実現することが特に好ましい。
【0074】
続く工程において、プラズマ処理により基材52,53から分離したインジウムおよび/またはインジウム化合物を回収する(ステップ109)。回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、再び材料として再資源化する(ステップ110)。この回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は、十分に透明導電膜の材料として再生可能であるが、用途はこの限りではなく、たとえば、半田材料や半導体材料への再生も可能である。
【0075】
ここで、インジウムおよび/またはインジウム化合物と一緒に分離されたタンタル、チタンなどのその他の金属および/またはその他の金属化合物については、必要に応じて、たとえば、酸、アルカリ等の薬液を使用する方法や電気分解等の方法を利用してインジウムおよび/またはインジウム化合物との分離および回収が可能である。また、インジウムおよび/またはインジウム化合物と一緒に分離された有機物は、たとえば、有機溶剤洗浄による抽出によりインジウムおよび/またはインジウム化合物と分離が可能である。
【0076】
また図1に示す例では、プラズマ処理にて洗浄された基材も回収し(ステップ111)、再び材料として再資源化する(ステップ112)。ガラスで形成された基材の場合、その再資源化の方法としては、回収されたガラス製基材を液晶パネルディスプレイの製造工程へ投入する方法、破砕装置などでカレット化しガラスメーカーで同一用途に再生する方法、珪石代替材料やタイル材料として再資源化する方法などが挙げられる。
【0077】
上述したような本発明の廃材の再資源化方法においては、プラズマにより処理を行なうため、ディスプレイの基材に形成された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに、本発明によるプラズマ洗浄によれば水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。また、本発明の方法により回収された金属および/または金属化合物および/または基材は、各種材料として再利用することができる。
【0078】
なお、本発明の透明導電膜が加工された廃材の再資源化方法は、図1に示した各工程の全てを備える必要はなく、本発明の廃材の再資源化装置を用いてプラズマ処理する工程を少なくとも含んでいれば、本発明の範囲に包含される。また、本発明の廃材の再資源化方法には、図1に示されていないステップが必要により付加されてもよい。
【0079】
本発明はまた、上述した本発明の廃材の再資源化方法により得られた金属および/金属化合物についても提供し、さらには、上述した本発明の廃材の再資源化方法によりFPDから得られた基材についても提供する。このような本発明の廃材の再資源化方法により得られた金属、金属化合物、基材は、再び同一製品の材料など、各種材料としてリサイクル可能である。
【0080】
本発明の再資源化方法により得られる金属および/または金属化合物は、上述したように、必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、再び材料として再資源化できる。また、プラズマ処理による分離物中のインジウム含有率は、液晶パネル中のインジウム含有率(150〜700ppm程度)と比べてはるかに高く、およそ数十%以上である。したがって、このままの状態で、たとえばインジウムを扱う製錬会社に売却し、インジウム材料として精製することが可能である。また、必要に応じて、分離物から、たとえば、酸、アルカリなどの薬液を使用する方法や電気分解などの方法を利用して更に高純度のインジウムを回収してもよい。回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は、必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、透明導電膜の材料として再生可能であるが、上述のように用途はこの限りではなく、たとえば、半田材料や半導体材料への再生も可能である。
【0081】
また、プラズマ照射後の基材は、上述したような透明導電膜の形成材料を含む金属、金属化合物、有機物から選ばれる少なくともいずれかが除去された状態であり、再び基材として使用できる。たとえばガラスで形成された基材の場合、プラズマ照射後のガラス製基材をFPD製造工程で投入しているガラスサイズに切断、加工、洗浄後、再びFPD製造工程に投入する方法がある。また、プラズマ照射後のガラス製基材を破砕装置などでカレット化し、ガラスメーカーで同一用途に再生する方法などもある。
【0082】
なお、上述した本発明の廃材の再資源化方法において、プラズマ処理により分離された金属、金属化合物および基材から選ばれる少なくともいずれかの具体的な回収方法については特に制限されるものではない。ここで、図6は、本発明の好ましい他の例の廃材の再資源化装置31を模式的に示す図である。図6に示す例の廃材の再資源化装置31は、プラズマ処理により分離された金属、金属化合物、基材を回収する機構をさらに備えてなること以外は、図1に示した例の廃材の再資源化装置1と同様であり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。
【0083】
図6に示す例では、プラズマ処理により基材8から分離された透明導電膜9の形成材料を含む金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれか(分離物35)を回収するための機構として、供給ガス出口32に連通して、吸引機構33および集塵機構34が設けられてなる。分離物35は、もともと薄膜であるため軽く、吸引機構33により吸引することで、気流に乗って供給ガス出口32を通過し、吸引機構33側に移動する。ここで、プラズマのラジカル作用、熱作用などによりインジウム成分などが液体あるいは気体などの固体以外の状態になった場合(たとえば、酸化インジウムの気化温度850℃、金属インジウムの融点155℃、沸点2000℃などの物性値が報告されている)でも、雰囲気(大気)温度が常温であるため、インジウム成分などはすぐに固体状態に戻る。なお、この場合には、図6に示すように、供給ガス出口32と集塵機構34との間に冷却機構36を設け、固体以外の状態のインジウム成分を強制的に冷却して固体状態に戻すように構成してもよい。このようにして、吸引機構33側に移動した固体状態の分離物35を集塵機構34により回収することができる。
【0084】
図6に示した例において、吸引機構33、集塵機構34および冷却機構36は、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の手段を用いて実現することができる。たとえば、吸引機構33は吸引ポンプ、集塵機構34はバグフィルタなどを用いることができる。
【0085】
なお、万一、プラズマのラジカル作用、熱作用などにより、インジウム成分などが液体あるいは気体などの固体以外の状態になり、装置内の内壁等に付着する場合には、たとえば、ガス供給路10の内壁に防着シートを設け、定期的に防着シートから、付着したインジウム成分を回収するようにしてもよい(図示せず)。また、上述したインジウム成分の回収方法は、たとえば、切削や研磨等の物理的手法でもよく、薬液を使用したものでもよい。防着シートの材質はこれら回収方法に適し、装置にセットできるものであれば特に限定されず、たとえば金属、樹脂などが挙げられる。
【0086】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<実験例1>
誘電体バリア放電で平行平板電極構造のプラズマ発生装置を3種類用意してプラズマ処理の実験を行なった。1つ目のプラズマ発生装置としては図2に示したようにA電極3(誘電体なし)と、誘電体5が設けられたB電極4とを備えるプラズマ発生装置2、2つ目のプラズマ発生装置としては図7に示すように誘電体42が設けられたA電極3と、誘電体5が設けられたB電極4とを備えるプラズマ発生装置41、3つ目のプラズマ発生装置としては図8に示すように誘電体42が設けられたA電極3と、B電極4(誘電体なし)とを備えるプラズマ発生装置46を用いた。各プラズマ発生装置2,41,46は、A電極3、B電極4共にSUS製の電極を用い(電極サイズ:縦100mm×横100mm)、また誘電体5,42としてはアルミナ製のものを用いた(誘電体サイズ:縦150mm×横150mm)。また、各プラズマ発生装置2,41,46においても、A電極3とB電極4との間の直線距離は2mmに設定した。
【0088】
これら3種のプラズマ発生装置に、液晶パネルのカラーフィルタ側ガラス製基材8(縦50mm×横50mm)上に透明導電膜9が形成されたサンプルを、透明導電膜9がプラズマを照射する領域側となるようにB電極4側に設置した。原料ガスとして乾燥空気を用い(総ガス流量:0.5リットル/分)、電源からの出力を電力が300W、周波数が10kHzとなるように設定し、いずれも同じ条件でプラズマ照射を5分間行なった。3種類の各プラズマ発生装置2,41,46におけるプラズマ照射状態を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から、B電極4側にのみ誘電体5を設けた図2に示したプラズマ発生装置2を用いた場合には、サンプルに集中してプラズマが放電されており放電状態は良好であった。一方、A電極3、B電極4にそれぞれ誘電体42,5を設けた図7に示したプラズマ発生装置41を用いた場合には、サンプルに集中してプラズマ放電はされているがA電極3側にも誘電体42が設けられているために放電自体が弱くなった。また、A電極3側にのみ誘電体42を設けた図8に示したプラズマ発生装置46を用いた場合には、プラズマ放電が直接B電極4に逃げてしまい、サンプルの外側にプラズマ放電が集中し、サンプル内側にはほとんどプラズマ放電されない状態が観察された。
【0091】
次に、それぞれ3種類の装置でのインジウム除去率を算出した。プラズマの条件は上述の条件と同一で行なった。インジウム除去率の算出においては、プラズマ処理を行なっていないサンプルの透明導電膜中のインジウム量と、それぞれ3種類の装置でプラズマ処理したサンプルに残存するインジウム量を定量し算出した。インジウムは35%塩酸で80℃、90分で完全に溶解させ、ICP発光分析装置(堀場製作所製JY238ULTRACE)を用いて定量を行なった。図9は、3種類のプラズマ発生装置をそれぞれ用いた場合のインジウム除去率を比較して示すグラフであり、縦軸はインジウム除去率(%)である。結果、インジウム除去率は図2に示したプラズマ発生装置2の場合には81%、図7に示したプラズマ発生装置41の場合には51%、図8に示したプラズマ発生装置46の場合には12%となった。これは誘電体バリア放電で平行平板電極構造のプラズマ発生装置においては、図3に示す構造が最もプラズマ処理効率が良く、処理時間の短縮が見込まれることを示唆している。
【0092】
<実験例2>
次に図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1で使用したものと同一で、プラズマ照射直後とプラズマ照射5分後の電流電圧波形データを収集した。電流電圧波形データはオシロスコープ(日本テクトロニクス製TDS2024)で収集し、高電圧プローブはP6015A型、電流プローブはP6022を使用した。プラズマ照射直後の電流波形データを図10に、プラズマ照射5分後の電流波形データを図11に示す。図10および図11において、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【0093】
結果、プラズマ照射直後と5分後の電流波形が1.5〜2μsecの領域で大きく異なっていることがわかる。この領域でのプラズマ照射直後の電流波高が約0.4Aであったのに対し、プラズマ照射5分後の電流波高は約0.1Aと小さくなっている。このことから、たとえば高速フーリエ変換(FFT)や画像認識および画像変換処理などを用いる方法、また、電流波形を、その波高や振幅、標準偏差などに変換処理して電流波形の変化を読み取れば、プラズマ処理終了の判断を行なうことができる。
【0094】
<実験例3>
図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1と同様にして、プラズマ照射を2分間行なった場合の電流波形の標準偏差の経時変化を図12に示す。図12において、縦軸は標準偏差(A)、横軸はプラズマ照射時間(sec)である。結果、プラズマ照射直後の電流波形の標準偏差は約0.16Aであったが、照射時間経過につれ徐々に減少し、1分以降は標準偏差約0.05Aに収束した。このように、電流波形の変化を読み取る手段として、標準偏差データを用いることは有効である。
【0095】
今回開示された実施の形態、実験例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の好ましい一例の廃材の再資源化装置1を模式的に示す図である。
【図2】本発明の廃材の再資源化装置1に用いられるプラズマ発生装置2を概念的に示す図である。
【図3】本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする透明導電膜を含む廃材の一例としてFPDである液晶パネル51を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1を制御する方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の好ましい他の例の廃材の再資源化装置31を模式的に示す図である。
【図7】誘電体42が設けられたA電極3と、誘電体5が設けられたB電極4とを備える例のプラズマ発生装置41を概念的に示す図である。
【図8】誘電体42が設けられたA電極3と、B電極4(誘電体なし)とを備えるプラズマ発生装置46を概念的に示す図である。
【図9】3種類のプラズマ発生装置をそれぞれ用いた場合のインジウム除去率を比較して示すグラフであり、縦軸はインジウム除去率(%)である。
【図10】実験例2で得られたプラズマ照射直後の電流波形データを示すグラフであり、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【図11】実験例2で得られたプラズマ照射5分後の電流波形データを示すグラフであり、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【図12】図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1と同様にして、プラズマ照射を2分間行なった場合の電流波形の標準偏差の経時変化を示すグラフであり、縦軸は標準偏差(A)、横軸はプラズマ照射時間(sec)である。
【符号の説明】
【0097】
1,31 廃材の再資源化装置、2,41,46 プラズマ発生装置、3 A電極、4 B電極、5,42 誘電体、6 電源、7 廃材、8 基材、9 透明導電膜、10 ガス供給路、11 供給ガス入口、12,32 供給ガス出口、13 A電極枠、14 B電極枠、16 オシロスコープ、17 電流波形解析装置、18 制御装置、33 吸引機構、34 集塵機構、35 分離物、36 冷却機構、51 液晶パネル、52,53 基材、54 電極材料、55,58 ITO電極、56,59 配向膜、57 カラーフィルタ、60 液晶、61,62 封止材、63,64 偏光板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜を含む廃材の再資源化装置およびそれを用いた再資源化方法、ならびに当該方法にて得られた金属、金属化合物、基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫など地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0003】
このような状況を受けて、たとえば2001年4月には家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0004】
これら家電4品目においては、関係者の鋭意努力のもと、法律施行当初に比べリサイクルが格段に進んでいる。現在、家電4品目に使用されている鉄、銅、アルミなどの金属はもとより、プラスチックについてもリサイクルが拡大しつつある。また、テレビにおいては、CRT(Cathode Ray Tube)のガラスを切断して電子銃や蛍光体を除去した後、ガラスカレットとして元のCRT用ガラスに再生使用するリサイクル技術がすでに実用化されている。
【0005】
一方、最近、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display:FED)、電子ペーパなどのフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)が身の回りの製品に搭載されてきており、たとえば、テレビ、パーソナルコンピュータ、モニタ、ビデオ、カメラ、携帯電話、カーナビゲーション、情報携帯端末、小型ゲーム機など、様々な分野で幅広く利用されてきている。FPDの市場規模はその省電力、省スペース、軽量といった特性から、近年の高度情報化社会の進展に伴い急激に増加している。これに伴い、これらFPDの廃棄量も年々増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上等の要求が強くなってきている。
【0006】
ところが、これらFPDは比較的新しい製品であること、また、現状は比較的廃棄物の量が少ないこともあり、前記CRTのような適切なリサイクルは実用化されていない。廃棄されたFPDは廃棄物の処理施設で破砕されて、シュレッダーダストとともに埋め立て処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0007】
加えて液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどに代表される薄型テレビにおいては、近い将来、家電リサイクル法の適用品目として追加される動きもある。このような背景から、基幹部品であるFPDのリサイクル技術の開発は急務となっている。
【0008】
FPDリサイクル技術開発において考慮すべき点は、ガラス、インジウムなどの材料の再生である。FPD表示部の基材は、ガラスまたはプラスチック基板が用いられている。ガラスは製品重量の大半を占めるため、リサイクル率向上の観点からも再資源化が望ましく、再度同一製品のガラス原料として再生するなどの高位なリサイクルを行なうことがより望ましい。また、基材には透明導電膜としてITO(Indium Tin Oxide)などのインジウム化合物が加工されている。インジウムは希少金属であり、昨今のFPD市場拡大も影響し価格が高騰してきており、回収、リサイクルが模索されている。
【0009】
前記インジウム化合物以外にFPD表示部の基材に加工される金属は、液晶パネルを例に挙げると、たとえばモリブデン、タンタル、チタン、アルミニウムなどがあるが、これらは液晶パネル中の含有量が約150ppm未満であり、自然鉱石中の含有量よりも大幅に低濃度であるため、経済的にリサイクルは困難である。一方、インジウムは天然にインジウムを主原料とする鉱石が存在せず、主に亜鉛などの鉱石に5〜30ppm程度含まれているにすぎず希少な金属であるが、液晶パネル中にはおよそ150〜700ppm程度含まれており、これを回収し再生することは資源有効活用上価値があり、また、経済的にも有利と考えられる。
【0010】
これらを踏まえると、FPD中のガラス、インジウム材料の再生は非常に意義深いものであるが課題も多い。たとえばガラスの同一材料への再生においては大きく2つの課題が挙げられる。1つ目は不純物の完全な除去、2つ目はガラスの分別である。前者においてはガラスに加工された電極材料やカラーフィルタ、配向膜、また、2枚のガラス間に封入された液晶材料など、ガラス以外の成分は完全に除去する必要がある。後者は組成の違うガラスは特性が変わるために分別する必要があり、製造メーカーの異なるガラスはもちろんのこと、同一メーカーでもグレードの違うガラスは分別する必要がある。一方、インジウムについては種々検討されてきているが、まだまだ廃FPD製品からのインジウム回収は経済性が伴わず、製造工程で発生する使用済みターゲットや装置、治具に付着したITO残渣を回収するにとどまっている。
【0011】
このような背景の中、透明導電膜を含む廃材について、当該廃材中の基材上の薄膜除去処理やITO中のインジウムの回収技術について、各企業や研究機関を含め多くの研究開発努力がなされている。
【0012】
たとえば、酸、アルカリなどの薬液を用いてITO中のインジウムを分離し回収する手法が多く提案されている(たとえば特開2000−128531号公報(特許文献1)を参照)。しかしながら、このような薬液を用いる方法においては、廃酸、廃アルカリなどの処理施設が必要であり、洗浄に大量の水を使用するなど環境負荷は少なくない。また、強酸、強アルカリを使用することも多く、作業安全性のほか処理施設の耐用性も考慮する必要があり、多大な設備投資が必要となる。
【0013】
また、加熱処理にて有機物を燃焼させ、インジウム、ガラスをリサイクルする手法についての技術も開示されている(たとえば、特開2000−84531号公報(特許文献2)を参照)。しかし、このような手法では処理物全体を高温処理することにより多くの有機ガスが発生するため、排ガス処理施設が必要となる。また、ガラス成分も溶融してしまうためガラス材料としての再生は難しいといった問題も生じる。
【0014】
一方、超臨界流体を用いて有機物を除去し、酸洗浄や製錬プロセスにてインジウムを回収するプロセスについての技術も開示されている(たとえば、特開2001−235718号公報(特許文献3)を参照)。しかしながら、このような方法ではたとえば500℃、35MPaといった高温高圧プロセスにて超臨界状態を形成するため、膨大なエネルギーと大掛かりな設備が必要となり、今後生産量が増え続けると予想されるFPDが使用済みとなった時にトータル的に環境負荷が増大することが懸念される。
【0015】
上述のように、市場から回収されたFPD廃材からガラスやインジウムなどの材料を再生するにあたって、膨大なエネルギーと大掛かりな設備を要せず、またインジウムの回収において湿式プロセスを使用しないFPD廃材の再資源化方法の開発が強く望まれているにもかかわらず、そのような再資源化方法は未だ公知となっていないのが現状である。
【0016】
一方、IC産業においては、水を使用しない洗浄技術が採用されているが、いずれの技術も製造工程での還元洗浄装置を用いたものであり、FPD廃材の再生への適用の視点はなく、この分野への適用については機能、性能ともに十分ではない。
【0017】
なお、透明導電膜を含む廃材としては、上述したFPD廃材以外にもたとえば太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムの廃材が挙げられ、これらの製品の廃材より透明導電膜を回収する際にも、上述と同様の課題の解決が求められている。
【特許文献1】特開2000−128531号公報
【特許文献2】特開2000−84531号公報
【特許文献3】特開2001−235718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、透明導電膜を含む廃材からインジウムなどの希少金属を含む有価物を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的な再資源化装置および再資源化方法を提供することである。より詳しくは、FPD廃材から、ガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的なFPD廃材の再資源装置および再資源化方法を提供することである。さらに詳しくは、湿式プロセスを使用することなくFPD廃材から、ガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、効率的なFPD廃材の再資源化装置及び再資源化方法を提供することである。
【0019】
また、本発明は、FPD廃材からガラス、インジウムなどの材料を回収し、再び同一製品の材料としてリサイクル可能な、高品位な特性を有するガラス、インジウムなどを提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、FPD廃材などの透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理することにより、当該廃材に含まれる基材および/または基材上に形成された透明導電膜に含まれるインジウム成分を回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0021】
本発明の廃材の再資源化装置は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段としてプラズマ発生装置を備えることを特徴とする。
【0022】
ここにおいて、前記廃材は、基材と、基材上に形成された透明導電膜とを含むことが好ましい。前記基材は、ガラスおよび/またはプラスチックからなることが好ましい。
【0023】
本発明の廃材の再資源化装置において、前記プラズマ発生装置は大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることが好ましく、当該大気圧非平衡プラズマ放電機構は誘電体バリア放電機構を備えることが好ましく、当該誘電体バリア放電機構は2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることがより好ましい。また本発明の廃材の再資源化装置では、前記平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することが好ましい。
【0024】
本発明の廃材の再資源化装置では、前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けることが好ましく、前記誘電体を設けた電極に前記廃材を設置することがより好ましい。さらに、前記廃材を、前記誘電体を設けた電極、基材、透明導電膜の順になるように設置することが特に好ましい。
【0025】
本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることが好ましい。また本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることが好ましい。さらに本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定することが好ましい。
【0026】
本発明の廃材の再資源化装置はまた、プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備え、処理中のプラズマ電流波形が、記憶されたプラズマ電流波形と一致した場合にプラズマ処理を終了するか否かを判定することが好ましい。さらに、プラズマの電流波形を変換処理し、プラズマ処理を終了するか否かを判定することが、より好ましい。
【0027】
本発明はまた、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法についても提供する。
【0028】
本発明の廃材の再資源化方法において、前記廃材は、FPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。また、前記FPDは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0029】
本発明の廃材の再資源化方法において、前記廃材は基材と、基材に形成された透明導電膜を含むことが好ましく、前記基材は、金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0030】
また本発明の廃材の再資源化方法においては、プラズマ処理によって、前記基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離することが好ましく、基材から分離された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを回収し、再資源化することがより好ましい。
【0031】
ここにおいて、前記金属および/または金属化合物は、インジウムおよび/またはインジウム化合物であることが、好ましい。
【0032】
本発明の廃材の再資源化方法はまた、プラズマ処理した前記基材を再資源化することが好ましい。
【0033】
本発明はまた、上述した本発明の廃材金属および/または金属化合物についても提供する。
【0034】
本発明はさらに、上述した本発明の廃材の再資源化方法によりフラットパネルディスプレイから得られた基材についても提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、環境負荷をかけることなく、廃材に透明導電膜として含まれる希少金属を分離することができる。また本発明によれば、プラズマにより透明導電膜を含む廃材の処理を行なうため、たとえばディスプレイの基材に含まれる金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり、環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに本発明によれば、水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。
【0036】
本発明の廃材の再資源化方法は、FPD以外にも、たとえば太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムなどのインジウム化合物などで形成された透明導電膜を含む製品の廃材の再資源化にも好適に適用できる。
【0037】
また本発明は、廃材に含まれる基材をプラズマ処理することにより得られる金属、金属化合物、基材から選ばれる少なくともいずれかについても提供することができる。このような本発明の方法により回収された金属、金属化合物、基材から選ばれる少なくともいずれかは、再び同一製品の材料等としてリサイクル可能である。
【0038】
また本発明の廃材の再資源化装置は、FPD廃材に含まれる基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離するための、および/または、FPD廃材に含まれる基材を洗浄するためのプラズマ発生装置を備えるため、上述した本発明の再資源化方法に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の好ましい一例の廃材の再資源化装置1を模式的に示す図であり、図2は、本発明の廃材の再資源化装置1に用いられるプラズマ発生装置2を概念的に示す図である。本発明の再資源化装置1は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置2を備えることを特徴とする。このような本発明の廃材の再資源化装置1によれば、環境負荷をかけることなく、廃材に透明導電膜として含まれる希少金属を分離することができる。また本発明の廃材の再資源化装置1によれば、プラズマにより透明導電膜を含む廃材の処理を行なうため、たとえばディスプレイの基材に含まれる金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり、環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに本発明の廃材の再資源化装置1によれば、水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。
【0040】
ここで、本発明の廃材の再資源化装置に用いられるプラズマ発生の技術自体は、IC産業や電子部品産業の分野で実用化が進んでいる物質の分解や改質に関する技術として応用されている。しかしながら、本発明の廃材の再資源化装置は、当該プラズマ技術を産業廃棄物を再資源化の分野に応用しようとするものであり、具体的には、少なくとも基材と透明導電膜とを含む廃材にプラズマを照射することにより、基材に形成された透明導電膜の形成材料を含む金属、金属化合物および有機化合物から選ばれる少なくともいずれかを分離し、および/または、当該基材を洗浄することで、これらの金属、金属化合物、基材を再資源化しようとするものである。このような着眼は、従来にはない、画期的なものである。
【0041】
ここで、図3は、本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする透明導電膜を含む廃材の一例としてFPDである液晶パネル51を模式的に示す断面図である。本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする廃材は、透明導電膜を含んでいるのであれば特に制限されないが、好ましくは基材と、当該基材に形成された透明導電膜とを含む。このような廃材としては、たとえば、FPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。このうちFPDは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかを含む。これらはいずれも、ガラスおよび/またはプラスチックで形成された基材上に、ITOなどのインジウム化合物からなるITOが形成されてなり、その構造が共通している。以下、本発明の廃材の再資源化装置1の説明に先立ち、本発明において再資源化の対象となる廃材として、FPDの中でも液晶パネルを例に挙げて説明する。
【0042】
図3には、TFT(Thin Film Transistor)タイプの液晶パネル51の一般的な構造(側面断面図)を模式的に示している。図3に示す例では、TFT側基材52上に電極材料(TFTを含む)54、透明導電膜であるITO電極55が形成され、その上に配向膜56が形成される。一方、カラーフィルタ側基材53にはカラーフィルタ57、透明導電膜であるITO電極58、配向膜59が順次形成される。そして加工後の基材52,53間に液晶60を注入し、その周囲を封止材61,62にて封止する。また基材52,53上には、通常、偏光板63,64が貼り付けられている。
【0043】
本発明においては、たとえば図3に示す液晶パネルにおいて基材52,53を分割し、液晶60を回収後、基材52,53の配向膜56,59が形成されている側の面に、本発明の再資源化装置1のプラズマ発生装置2で発生させたプラズマを照射する。よって、プラズマ処理により分離処理され得る基材52,53には、配向膜56,59、透明導電膜であるITO電極55,58、電極材料(TFTを含む)54、封止材61,62およびカラーフィルタ57が形成されている。これらは、具体的には、表1に示すような材料で形成されている。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、本発明の廃材の再資源化装置1を用いたプラズマ処理によって分離処理され得る材料としては、たとえばポリイミド、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの有機物のほか、タンタル、チタン、モリブデン、アルミニウム、ITOなどの無機物が挙げられることがわかる。なお、表1に示した材料は一例であり、本発明の再資源化装置1を用いて分離される材料はこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の廃材の再資源化装置1によれば、プラズマ処理によって、基材52,53から、たとえば表1に示したような金属、金属化合物および有機物の少なくともいずれかから構成される配向膜56、ITO電極55、電極材料(TFTを含む)54、封止材61,62、配向膜59、ITO電極58およびカラーフィルタ57を分離することができ、また、プラズマ処理によって、当該基材を洗浄することができる。このようにプラズマ処理によって洗浄された基材は、上述した材料が非常によく除去されているため、同一製品等に再度利用することができる。また、本発明の再資源化装置1を用いることで、基材から分離された金属、金属化合物、有機物もまた、回収し、再利用することができる。なお、上述した金属、金属化合物および有機物の少なくともいずれかの材料は、これらが形成された基材とは、その化学構造が相違するため、プラズマ発生装置2により発生したプラズマにより生成するラジカルなどで除去することが可能となる。
【0047】
本発明の廃材の再資源化装置1において、上述したような透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理するためのプラズマ発生装置2としては、特に制限されるものではないが、真空装置などが不要であるため装置コストがかからず、平衡プラズマ放電機構よりはるかに少ない消費エネルギーで反応プロセスを構築できることから、大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることが好ましい。また前記大気圧非平衡プラズマ放電機構は、均一なグロー放電などを発生させやすいように、誘電体バリア放電機構を備えることが好ましい。また、前記誘電体バリア放電機構は、一度に大きなエリアの処理が可能であり、処理の高効率化を考慮すると、2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることが好ましく、これら平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することがより好ましい。さらに、プラズマ照射効率向上の観点から、前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けてなる構造を備えることが特に好ましい。
【0048】
図1および図2に示す例のプラズマ発生装置2は、2枚の平行平板電極であるA電極3およびB電極4が一定の間隔をあけ、その間にB電極4に密着して誘電体5が設置されており、A電極3およびB電極4に電源6が電気的に接続されてなる。このようなプラズマ発生装置2のA電極3とB電極4との間に、透明導電膜9を含む廃材7を設置する。廃材7としては、好ましくは基材8と、基材8に形成された透明導電膜9とを有するものを適用する。この基材8および透明導電膜9を含む廃材7は、上述した図3の例では、電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53が相当する。
【0049】
本発明の廃材の再資源化装置1において、廃材7は、A電極3とB電極4との間に設置されればよく、この電極間に廃材を設置する方法については、従来公知の適宜の手法を特に制限されることなく採用することができる。たとえばベルトコンベアなどを用いて、A電極3とB電極4との間を通過するように廃材7を搬送するようにしてもよい(図示せず)。廃材7に集中的にプラズマ照射するために、廃材7は、上記誘電体5を設けた電極(図1および図2に示す例ではB電極4)上に設置することが好ましい。またこの場合、透明導電膜9に集中的にプラズマ照射することができ、プラズマ処理効率を向上し、かつ、プラズマ処理時間を短縮できることから、図1および図2に示す例のように、誘電体5を設けた電極(図1および図2に示す例ではB電極4)、基材8、透明導電膜9の順になるように設置することが好ましい。
【0050】
本発明におけるプラズマ発生装置2に用いられるA電極3およびB電極4の形成材料としては、特に制限されることなく当分野において従来より広く用いられている適宜の材料を用いることができるが、経済性、耐食性の観点から、ステンレス(具体的にはSUS304など)を用いることが好ましい。また誘電体5についても特に制限されるものではなく、当分野において従来より広く用いられている適宜の材料を用いることができるが、耐久性を考慮するのであればガラスを用いることが好ましく、また、誘電率が高く、均一なグロー放電を発生させるためにはアルミナを用いることが好ましい。これらは得ようとする放電特性によって使い分けてもよい。
【0051】
また本発明におけるプラズマ発生装置2に用いられる電源6は、空気、水蒸気およびその他の気体を活性化し得る電源であれば、直流、交流、パルスのいずれでもよいが、電流、電圧などを瞬時にオン、オフできるパルス電源を用いることが好ましい。パルス電源を用いることで、電界強度を急激に高め、プラズマ密度を上げることができ、また、プラズマ放電により熱が発生する前に電流、電圧などをオフすることが可能となるという利点もある。電源6としてパルス電源を用いる場合、周波数は特に制限されないが、たとえば1〜100kHzの範囲が例示される。
【0052】
さらに、図1および図2に示す例におけるプラズマ発生装置2では、A電極3と誘電体5との間に、原料ガスを供給するためのガス供給路10が形成されている。このガス供給路10を介してプラズマ発生装置2内に供給する原料ガスとしては、たとえば、酸素ガス、窒素ガス、空気、水蒸気、ヘリウムガス、アルゴン、二酸化炭素、水素ガス、メタンガス、アンモニアガス、フッ素ガスなどが挙げられるがこれに限定されるものではなく、これらのガスの混合物を用いてもよい。原料ガスの供給方法はとくに限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0053】
ここで、本発明に用いられるプラズマに含まれ得る有効なラジカルは種々存在するが、有毒であるものや高価なものは避けるべきであり、空気そのものを原料ガスとして用いるようにしてもよい。このように原料ガスの1つに空気を用いる場合には、送風機を用いて供給するようにしてもよい。なお、プラズマ処理を行なう領域の酸素ラジカル濃度を上げるために、空気に少量の酸素ガスを付加する、または、水蒸気を付加するようにしてもよい。中でも、空気に水蒸気を付加する方法は、空気に酸素ガスを付加する方法と比較して簡便であり、より好適である。
【0054】
また上述のように酸素ガスまたは水蒸気を付加した空気を原料ガスとして用いる場合には、付加した酸素ガスまたは水蒸気を供給段階で制御するよりは、プラズマ発生装置2によりプラズマを照射する領域を観察して、この観察された結果に応じて電源6の周波数を変化させるように制御して、当該領域における酸素ラジカルの濃度を調整するように実現することが好ましい。すなわち、空気そのものを原料ガスとして用いることが経済的で安全ではなるが、湿度の変化がプラズマを照射する領域における酸素ラジカル濃度の変化として現れてくることは好ましくなく、これを適正に保つために、電源6の周波数の制御、酸素ガスまたは水蒸気の添加量の制御などを行なうことが好ましい。
【0055】
なお、図1に示す例のプラズマ発生装置2では、ガス供給路10は、上述のように廃材7を設置した状態で、供給ガス入口11を除いては、A電極4側から覆うA電極枠13およびB電極4側から覆うB電極枠14によって密閉され得るように実現される。またガス供給路10は、供給ガス出口12にも連通しており、プラズマ処理後のガス供給路10内のガスをこの供給ガス出口12から排出し得るように構成されている。
【0056】
本発明におけるプラズマ発生装置2を用いたプラズマ処理に際しては、上述したように廃材7を設置し、A電極枠13およびB電極枠14によりガス供給路10を密閉した状態で、供給ガス入口11から原料ガスを供給しつつ、電源6からA電極3およびB電極4にある値以上の電圧を印加する。これによってA電極3とB電極4との間に放電が生じ、この放電により雰囲気ガス(ガス供給路10に供給された原料ガス)の成分に起因する各種のイオン、ラジカルを含むプラズマが発生し、上述した少なくとも基材8および透明導電膜9を含む廃材7に照射される。基材8から透明導電膜9が分離され、基材9が洗浄される。ここで、具体的には、上述したように基材8および透明導電膜9を含む廃材7は、図3に示した例では、電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53が相当するが、本発明の廃材の再資源化装置1を用いてこれらにプラズマ照射することで、基材52,53上に形成された金属、金属化合物および有機物を分離し、基材52,53表面を洗浄することができる。すなわち、放電によってガス供給路10から入ってくるガスの成分が高速に加速された電子と衝突することにより、電離・解離・励起され、ガスの成分に起因する各種のイオンやラジカルが生成する。これらのラジカルがFPD廃材である液晶パネルの基材に加工された金属、金属化合物、有機物などに作用し、基材からこれら加工物を分離させる。
【0057】
本発明の再資源化装置1を用いて、廃材7にプラズマを照射する時間は、基材8に形成された透明導電膜9の形成材料を含む上述した材料が分離されるのであれば特に制限されないが、たとえば1秒〜1時間である。また、基材表面をより高度に洗浄するために、たとえば、透明導電膜9の形成材料を含む上述した材料を分離した後の基材8に、プラズマを照射するようにしてもよい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、電源6により印加する電圧および周波数を、プラズマ処理の途中で変更するようにしてもよい。廃材7を設置していない側の電極と廃材7との間の距離も特に制限されるものではなく、たとえば1mm〜1mの範囲内での直線距離を適宜選択することができる。
【0058】
ここで、プラズマ被処理物である廃材7から透明導電膜9が除去できたか否かは、たとえばエネルギー分散型X線装置を用いて基材表面を分析することで判定することができるが、このエネルギー分散型X線装置を用いた場合には分析に時間を要し、また装置が大掛かりなものとなるために、実用化の観点からは得策ではない。このため、本発明者らは、透明導電膜9が形成された基材8に対しプラズマの照射が開始された時点と、プラズマ照射によって透明導電膜9が除去された時点において、両時点でのプラズマ電流波形が異なることを見出し、この電流波形の相違を利用することでプラズマ処理を終了するか否かの判定を行なうことができることに着目した。
【0059】
上述した観点から、本発明の廃材の再資源化装置は、プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることが好ましく、また、プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることが好ましい。プラズマの電流波形を観測する機構としては、当分野において従来より広く用いられている適宜の機構を特に制限なく用いることができ、特に制限されるものではないが、分解能、データ処理の容易さから、デジタルオシロスコープを用いることが好ましい。またプラズマの電流波形を解析する機構についても、プラズマ処理前後の波形変化などを比較できるものであれば特に限定されるものではなく、従来より広く用いられている適宜の機構を特に制限なく用いることができる。プラズマ処理前後の波形変化を比較する方法としては、たとえば画像認識や画像変換処理などを用いる方法、また、電流波形を、その波高や振幅、標準偏差などに変換処理して比較する方法などを挙げることができる。
【0060】
図1には、上述したプラズマ発生装置2に加え、プラズマの電流波形を観測する機構としてオシロスコープ16、プラズマの電流波形を解析する機構として電流波形解析装置17、ならびに、これらを制御するための制御装置18を備える廃材の再資源化装置1を模式的に示している。図1に示す例では、平行平板電極であるA電極3とB電極4との間に流れる電流および印加される電圧を観測するためにA電極3およびB電極4にオシロスコープ16が電気的に接続されてなり、このオシロスコープ16に電流波形解析装置17および制御装置18がさらに電気的に接続されてなる。このようにプラズマの電流波形を観測する機構およびプラズマの電流波形を解析する機構を備えることで、上述したプラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定できる廃材の再資源化装置1を実現することができる。なお、この場合、本発明の再資源化装置は、プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備えることが好ましく、図1に示す例では、電流波形解析装置17が、このプラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構を兼ね備える。
【0061】
ここで、図4は、図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1を制御する方法の一例を示すフローチャートである。図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1は、たとえば、図4に示すような一連のフローにて、プラズマ処理を終了するか否かを判定するように制御することができる。
【0062】
まず、予め基材8から透明導電膜9が除去された時点のプラズマ電流波形(波形X)を電流波形解析装置17に記憶させる(ステップ501)。なお、この際、透明導電膜が形成されていない基材からプラズマ電流波形を得るようにしてもよい。また、プラズマ電流波形(波形X)は、観測しやすいように高速フーリエ変換を行なってもよい。
【0063】
次に、オシロスコープ16でプラズマ電流波形の観測を開始し(ステップ502)、透明導電膜9が形成された基材8へプラズマ処理を開始する(ステップ503)。プラズマ処理中は、プラズマ電流波形をオシロスコープ16で観測し、観測されたプラズマ電流波形を電流波形解析装置17に送信する。このように観測するプラズマ電流波形についても、観測しやすいように高速フーリエ変換を行なってよい。
【0064】
次に、電流波形解析装置17において、常時オシロスコープ16から受信したプラズマ電流波形を、予め記憶した波形Xと比較する(ステップ504)。そしてオシロスコープ16から受信したプラズマ電流波形が波形Xと略一致したとき(ステップ505)、基材8から透明導電膜9が除去されたと判定し、電流波形解析装置17から制御装置18へ処理終了の信号が送られる(ステップ506)。制御装置18は処理終了の信号を受け、次ステップへ進む(ステップ507)。このようにして、本発明の廃材の再資源化装置1を用いた好適なプラズマ処理の制御を実現することが可能となる。
【0065】
なお、図1および図2に示した例は、あくまでも好ましい一例であり、本発明の廃材の再資源化装置は、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備えるのであれば特に制限されるものではなく、いかなる構成で実現されてもよい。
【0066】
図5は、本発明の廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。本発明は、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む廃材の再資源化方法についても提供する。本発明の廃材の再資源化方法では、上述したように基材と、当該基材に形成された透明導電膜とを含む廃材をその再資源化の対象とする。このような廃材としては、上述のようにFPD、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。またこのうちFPDには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかが含まれる。図1には、このような透明導電膜を含む廃材の一例としてFPD廃材である液晶パネル(図3)を含む液晶テレビの廃材を再資源化する場合について示している。
【0067】
図1に示す例の本発明の廃材の再資源化方法では、まず、たとえば家庭や製造工場などから廃棄されたFPD廃材(たとえば液晶パネルを含む液晶テレビの廃材)を回収する(ステップ101)。次に、回収された液晶テレビの廃材を従来公知の適宜の手法にて解体(たとえば、手解体)し、シールドケースや鋼板などの金属部品、プリント基板、筐体やスタンドカバーなどのプラスチック部品、蛍光管などに解体し(ステップ102)、図3に示したような液晶パネル51を取り出す(ステップ103)。
【0068】
次に、液晶パネル51に貼り付けられている偏光板63,64を除去する(ステップ104)。偏光板63,64の除去方法は、従来公知の適宜の手法にて除去することができる。たとえば、偏光板63,64の一端部(たとえば隅)をカッターなどの工具を用いて部分的に剥離した後に、その剥離部分を適当な力で引っ張り、偏光板63,64の全体を剥離する方法、市販の偏光板剥離装置を用いて偏光板63,64を剥離する方法などが挙げられる。
【0069】
続いて、液晶パネル51の分別を行なう(ステップ105)。これは、使用されているディスプレイの基材を同一種類ごとに再資源化することを目的として行なわれるものである。したがって、再生される基材の用途によっては当該分別工程が不要である場合もある。当該工程で基材を分別する方法としては、たとえばガラスで形成された基材の場合には、蛍光X線を利用した分別方法を好適に採用することができる。具体的には、ガラスに軟X線を照射し、そのガラスから発せられる蛍光X線を、たとえば蛍光X線分析機を使用して分別する。その他、液晶テレビの製造メーカー、機種ナンバーなどから基材に使用されている使用ガラスの種類を追跡する方法などもあるが、分別方法はガラスを同一種類毎に分別できればどのような手段を用いても構わない。またプラスチックで形成された基材の場合には、上記追跡による方法が有効である。また、基材がガラスと、樹脂や有機物などを含んだプラスチックで構成される場合もある。
【0070】
次に、基材52,53上に形成されたインジウム化合物などを表面に露出させるために、上記分別した液晶パネル51の2枚の基材52,53を分割する(ステップ106)。基材52,53を分割する方法は、特に限定されないが、たとえば、封止エリアの内側の4辺をカッターなどで切断する方法などが挙げられる。また、液晶パネルを破砕してもよく、手段は特に限定されない。
【0071】
続いて、封入されていた液晶および分割したガラス表面に付着した液晶を回収する(ステップ107)。回収方法は特に限定されるものではないが、封入されていた液晶の回収としては、たとえばアセトン等の有機溶剤洗浄が挙げられる。また、分割したガラス表面に付着した液晶の回収としては、たとえば、ヘラなどの板状物を用いてガラス表面に付着した液晶を擦り取る方法がある。このようにして回収された液晶は、ここまで加熱などの工程が無いため、製品使用時の品質が保持された状態であり、再使用するのに好適である。なお、この液晶は必要に応じて不純物の除去や精製を行なってもよく、また、再使用時の用途などに応じて成分の再調整を行なってもよい。
【0072】
続く工程において、上述した本発明の廃材の再資源化装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する(ステップ108)。この工程では、具体的には、ステップ106において分割または破砕された電極材料54、ITO電極55および配向膜56が形成されたTFT側基材52、または、カラーフィルタ57、ITO電極58および配向膜59が形成されたカラーフィルタ側基材53にプラズマを照射して、基材上に形成された透明導電膜の形成材料を含む表1に示したような金属(具体的にはインジウム)、金属化合物(具体的にはインジウム化合物)および有機物を分離し、また、基材52,53を洗浄する。
【0073】
このステップ108において用いられる本発明の廃材の再資源化装置としては、上述したように、透明導電膜を含む基材にプラズマ処理する手段としてプラズマ発生装置を備えているものであれば特に制限されるものではないが、図1に示した例のように、プラズマ発生装置2に加え、プラズマの電流波形を観測する機構としてオシロスコープ16、プラズマの電流波形を解析する機構として電流波形解析装置17、ならびに、これらを制御するための制御装置18を備える廃材の再資源化装置1を特に好適に用いることができる。またさらに、このような廃材の再資源化装置1を、図4に示した一連のフローに沿って制御して、プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定するように実現することが特に好ましい。
【0074】
続く工程において、プラズマ処理により基材52,53から分離したインジウムおよび/またはインジウム化合物を回収する(ステップ109)。回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、再び材料として再資源化する(ステップ110)。この回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は、十分に透明導電膜の材料として再生可能であるが、用途はこの限りではなく、たとえば、半田材料や半導体材料への再生も可能である。
【0075】
ここで、インジウムおよび/またはインジウム化合物と一緒に分離されたタンタル、チタンなどのその他の金属および/またはその他の金属化合物については、必要に応じて、たとえば、酸、アルカリ等の薬液を使用する方法や電気分解等の方法を利用してインジウムおよび/またはインジウム化合物との分離および回収が可能である。また、インジウムおよび/またはインジウム化合物と一緒に分離された有機物は、たとえば、有機溶剤洗浄による抽出によりインジウムおよび/またはインジウム化合物と分離が可能である。
【0076】
また図1に示す例では、プラズマ処理にて洗浄された基材も回収し(ステップ111)、再び材料として再資源化する(ステップ112)。ガラスで形成された基材の場合、その再資源化の方法としては、回収されたガラス製基材を液晶パネルディスプレイの製造工程へ投入する方法、破砕装置などでカレット化しガラスメーカーで同一用途に再生する方法、珪石代替材料やタイル材料として再資源化する方法などが挙げられる。
【0077】
上述したような本発明の廃材の再資源化方法においては、プラズマにより処理を行なうため、ディスプレイの基材に形成された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかの分離、および/または、ディスプレイの基材を洗浄するために、従来の酸、アルカリや有機溶媒を用いた場合とは異なり環境に負荷を与える物質を使用することがない。さらに、本発明によるプラズマ洗浄によれば水を使用することもないので乾燥などにエネルギーが不要であり地球にやさしい技術で、持続可能な環境を維持するための材料リサイクルを実現することができる。また、本発明の方法により回収された金属および/または金属化合物および/または基材は、各種材料として再利用することができる。
【0078】
なお、本発明の透明導電膜が加工された廃材の再資源化方法は、図1に示した各工程の全てを備える必要はなく、本発明の廃材の再資源化装置を用いてプラズマ処理する工程を少なくとも含んでいれば、本発明の範囲に包含される。また、本発明の廃材の再資源化方法には、図1に示されていないステップが必要により付加されてもよい。
【0079】
本発明はまた、上述した本発明の廃材の再資源化方法により得られた金属および/金属化合物についても提供し、さらには、上述した本発明の廃材の再資源化方法によりFPDから得られた基材についても提供する。このような本発明の廃材の再資源化方法により得られた金属、金属化合物、基材は、再び同一製品の材料など、各種材料としてリサイクル可能である。
【0080】
本発明の再資源化方法により得られる金属および/または金属化合物は、上述したように、必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、再び材料として再資源化できる。また、プラズマ処理による分離物中のインジウム含有率は、液晶パネル中のインジウム含有率(150〜700ppm程度)と比べてはるかに高く、およそ数十%以上である。したがって、このままの状態で、たとえばインジウムを扱う製錬会社に売却し、インジウム材料として精製することが可能である。また、必要に応じて、分離物から、たとえば、酸、アルカリなどの薬液を使用する方法や電気分解などの方法を利用して更に高純度のインジウムを回収してもよい。回収されたインジウムおよび/またはインジウム化合物は、必要に応じて不純物の除去や精製を行ない、透明導電膜の材料として再生可能であるが、上述のように用途はこの限りではなく、たとえば、半田材料や半導体材料への再生も可能である。
【0081】
また、プラズマ照射後の基材は、上述したような透明導電膜の形成材料を含む金属、金属化合物、有機物から選ばれる少なくともいずれかが除去された状態であり、再び基材として使用できる。たとえばガラスで形成された基材の場合、プラズマ照射後のガラス製基材をFPD製造工程で投入しているガラスサイズに切断、加工、洗浄後、再びFPD製造工程に投入する方法がある。また、プラズマ照射後のガラス製基材を破砕装置などでカレット化し、ガラスメーカーで同一用途に再生する方法などもある。
【0082】
なお、上述した本発明の廃材の再資源化方法において、プラズマ処理により分離された金属、金属化合物および基材から選ばれる少なくともいずれかの具体的な回収方法については特に制限されるものではない。ここで、図6は、本発明の好ましい他の例の廃材の再資源化装置31を模式的に示す図である。図6に示す例の廃材の再資源化装置31は、プラズマ処理により分離された金属、金属化合物、基材を回収する機構をさらに備えてなること以外は、図1に示した例の廃材の再資源化装置1と同様であり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。
【0083】
図6に示す例では、プラズマ処理により基材8から分離された透明導電膜9の形成材料を含む金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれか(分離物35)を回収するための機構として、供給ガス出口32に連通して、吸引機構33および集塵機構34が設けられてなる。分離物35は、もともと薄膜であるため軽く、吸引機構33により吸引することで、気流に乗って供給ガス出口32を通過し、吸引機構33側に移動する。ここで、プラズマのラジカル作用、熱作用などによりインジウム成分などが液体あるいは気体などの固体以外の状態になった場合(たとえば、酸化インジウムの気化温度850℃、金属インジウムの融点155℃、沸点2000℃などの物性値が報告されている)でも、雰囲気(大気)温度が常温であるため、インジウム成分などはすぐに固体状態に戻る。なお、この場合には、図6に示すように、供給ガス出口32と集塵機構34との間に冷却機構36を設け、固体以外の状態のインジウム成分を強制的に冷却して固体状態に戻すように構成してもよい。このようにして、吸引機構33側に移動した固体状態の分離物35を集塵機構34により回収することができる。
【0084】
図6に示した例において、吸引機構33、集塵機構34および冷却機構36は、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の手段を用いて実現することができる。たとえば、吸引機構33は吸引ポンプ、集塵機構34はバグフィルタなどを用いることができる。
【0085】
なお、万一、プラズマのラジカル作用、熱作用などにより、インジウム成分などが液体あるいは気体などの固体以外の状態になり、装置内の内壁等に付着する場合には、たとえば、ガス供給路10の内壁に防着シートを設け、定期的に防着シートから、付着したインジウム成分を回収するようにしてもよい(図示せず)。また、上述したインジウム成分の回収方法は、たとえば、切削や研磨等の物理的手法でもよく、薬液を使用したものでもよい。防着シートの材質はこれら回収方法に適し、装置にセットできるものであれば特に限定されず、たとえば金属、樹脂などが挙げられる。
【0086】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<実験例1>
誘電体バリア放電で平行平板電極構造のプラズマ発生装置を3種類用意してプラズマ処理の実験を行なった。1つ目のプラズマ発生装置としては図2に示したようにA電極3(誘電体なし)と、誘電体5が設けられたB電極4とを備えるプラズマ発生装置2、2つ目のプラズマ発生装置としては図7に示すように誘電体42が設けられたA電極3と、誘電体5が設けられたB電極4とを備えるプラズマ発生装置41、3つ目のプラズマ発生装置としては図8に示すように誘電体42が設けられたA電極3と、B電極4(誘電体なし)とを備えるプラズマ発生装置46を用いた。各プラズマ発生装置2,41,46は、A電極3、B電極4共にSUS製の電極を用い(電極サイズ:縦100mm×横100mm)、また誘電体5,42としてはアルミナ製のものを用いた(誘電体サイズ:縦150mm×横150mm)。また、各プラズマ発生装置2,41,46においても、A電極3とB電極4との間の直線距離は2mmに設定した。
【0088】
これら3種のプラズマ発生装置に、液晶パネルのカラーフィルタ側ガラス製基材8(縦50mm×横50mm)上に透明導電膜9が形成されたサンプルを、透明導電膜9がプラズマを照射する領域側となるようにB電極4側に設置した。原料ガスとして乾燥空気を用い(総ガス流量:0.5リットル/分)、電源からの出力を電力が300W、周波数が10kHzとなるように設定し、いずれも同じ条件でプラズマ照射を5分間行なった。3種類の各プラズマ発生装置2,41,46におけるプラズマ照射状態を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から、B電極4側にのみ誘電体5を設けた図2に示したプラズマ発生装置2を用いた場合には、サンプルに集中してプラズマが放電されており放電状態は良好であった。一方、A電極3、B電極4にそれぞれ誘電体42,5を設けた図7に示したプラズマ発生装置41を用いた場合には、サンプルに集中してプラズマ放電はされているがA電極3側にも誘電体42が設けられているために放電自体が弱くなった。また、A電極3側にのみ誘電体42を設けた図8に示したプラズマ発生装置46を用いた場合には、プラズマ放電が直接B電極4に逃げてしまい、サンプルの外側にプラズマ放電が集中し、サンプル内側にはほとんどプラズマ放電されない状態が観察された。
【0091】
次に、それぞれ3種類の装置でのインジウム除去率を算出した。プラズマの条件は上述の条件と同一で行なった。インジウム除去率の算出においては、プラズマ処理を行なっていないサンプルの透明導電膜中のインジウム量と、それぞれ3種類の装置でプラズマ処理したサンプルに残存するインジウム量を定量し算出した。インジウムは35%塩酸で80℃、90分で完全に溶解させ、ICP発光分析装置(堀場製作所製JY238ULTRACE)を用いて定量を行なった。図9は、3種類のプラズマ発生装置をそれぞれ用いた場合のインジウム除去率を比較して示すグラフであり、縦軸はインジウム除去率(%)である。結果、インジウム除去率は図2に示したプラズマ発生装置2の場合には81%、図7に示したプラズマ発生装置41の場合には51%、図8に示したプラズマ発生装置46の場合には12%となった。これは誘電体バリア放電で平行平板電極構造のプラズマ発生装置においては、図3に示す構造が最もプラズマ処理効率が良く、処理時間の短縮が見込まれることを示唆している。
【0092】
<実験例2>
次に図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1で使用したものと同一で、プラズマ照射直後とプラズマ照射5分後の電流電圧波形データを収集した。電流電圧波形データはオシロスコープ(日本テクトロニクス製TDS2024)で収集し、高電圧プローブはP6015A型、電流プローブはP6022を使用した。プラズマ照射直後の電流波形データを図10に、プラズマ照射5分後の電流波形データを図11に示す。図10および図11において、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【0093】
結果、プラズマ照射直後と5分後の電流波形が1.5〜2μsecの領域で大きく異なっていることがわかる。この領域でのプラズマ照射直後の電流波高が約0.4Aであったのに対し、プラズマ照射5分後の電流波高は約0.1Aと小さくなっている。このことから、たとえば高速フーリエ変換(FFT)や画像認識および画像変換処理などを用いる方法、また、電流波形を、その波高や振幅、標準偏差などに変換処理して電流波形の変化を読み取れば、プラズマ処理終了の判断を行なうことができる。
【0094】
<実験例3>
図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1と同様にして、プラズマ照射を2分間行なった場合の電流波形の標準偏差の経時変化を図12に示す。図12において、縦軸は標準偏差(A)、横軸はプラズマ照射時間(sec)である。結果、プラズマ照射直後の電流波形の標準偏差は約0.16Aであったが、照射時間経過につれ徐々に減少し、1分以降は標準偏差約0.05Aに収束した。このように、電流波形の変化を読み取る手段として、標準偏差データを用いることは有効である。
【0095】
今回開示された実施の形態、実験例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の好ましい一例の廃材の再資源化装置1を模式的に示す図である。
【図2】本発明の廃材の再資源化装置1に用いられるプラズマ発生装置2を概念的に示す図である。
【図3】本発明の廃材の再資源化装置1が再資源化の対象とする透明導電膜を含む廃材の一例としてFPDである液晶パネル51を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示した例の本発明の廃材の再資源化装置1を制御する方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の好ましい他の例の廃材の再資源化装置31を模式的に示す図である。
【図7】誘電体42が設けられたA電極3と、誘電体5が設けられたB電極4とを備える例のプラズマ発生装置41を概念的に示す図である。
【図8】誘電体42が設けられたA電極3と、B電極4(誘電体なし)とを備えるプラズマ発生装置46を概念的に示す図である。
【図9】3種類のプラズマ発生装置をそれぞれ用いた場合のインジウム除去率を比較して示すグラフであり、縦軸はインジウム除去率(%)である。
【図10】実験例2で得られたプラズマ照射直後の電流波形データを示すグラフであり、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【図11】実験例2で得られたプラズマ照射5分後の電流波形データを示すグラフであり、縦軸は電流(A)、横軸は時間(μsec)である。
【図12】図2に示したプラズマ発生装置2を用い、プラズマ条件と使用サンプルは実験例1と同様にして、プラズマ照射を2分間行なった場合の電流波形の標準偏差の経時変化を示すグラフであり、縦軸は標準偏差(A)、横軸はプラズマ照射時間(sec)である。
【符号の説明】
【0097】
1,31 廃材の再資源化装置、2,41,46 プラズマ発生装置、3 A電極、4 B電極、5,42 誘電体、6 電源、7 廃材、8 基材、9 透明導電膜、10 ガス供給路、11 供給ガス入口、12,32 供給ガス出口、13 A電極枠、14 B電極枠、16 オシロスコープ、17 電流波形解析装置、18 制御装置、33 吸引機構、34 集塵機構、35 分離物、36 冷却機構、51 液晶パネル、52,53 基材、54 電極材料、55,58 ITO電極、56,59 配向膜、57 カラーフィルタ、60 液晶、61,62 封止材、63,64 偏光板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備える、廃材の再資源化装置。
【請求項2】
前記廃材は、基材と、基材上に形成された透明導電膜とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基材は、ガラスおよび/またはプラスチックからなる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生装置が大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記大気圧非平衡プラズマ放電機構が誘電体バリア放電機構を備えることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記誘電体バリア放電機構が、2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記誘電体を設けた電極に、前記廃材を設置することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記廃材を、前記誘電体を設けた電極、基材、透明導電膜の順になるように設置することを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備え、処理中のプラズマ電流波形が、記憶されたプラズマ電流波形と一致した場合にプラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
プラズマの電流波形を変換処理し、プラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む、廃材の再資源化方法。
【請求項17】
前記廃材が、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フラットパネルディスプレイが、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記廃材が、基材と、基材に形成された透明導電膜を含むことを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プラズマ処理によって、前記基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基材から分離された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを回収し、再資源化することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属および/または金属化合物が、インジウムおよび/またはインジウム化合物であること特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
プラズマ処理した前記基材を再資源化することを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項16〜24のいずれかに記載の廃材の再資源化方法により得られた金属および/または金属化合物。
【請求項26】
請求項16〜24のいずれかに記載の廃材の再資源化方法によりフラットパネルディスプレイから得られた基材。
【請求項1】
透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する手段として、プラズマ発生装置を備える、廃材の再資源化装置。
【請求項2】
前記廃材は、基材と、基材上に形成された透明導電膜とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基材は、ガラスおよび/またはプラスチックからなる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生装置が大気圧非平衡プラズマ放電機構を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記大気圧非平衡プラズマ放電機構が誘電体バリア放電機構を備えることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記誘電体バリア放電機構が、2枚の平板状電極が平行に並んだ平行平板電極であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記平行平板電極の2枚の電極間に前記廃材を設置することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記平行平板電極の2枚の電極の少なくとも一方の電極に誘電体を設けることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記誘電体を設けた電極に、前記廃材を設置することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記廃材を、前記誘電体を設けた電極、基材、透明導電膜の順になるように設置することを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
プラズマの電流波形を観測する機構をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
プラズマの電流波形を解析する機構をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
プラズマの電流波形の変化を読み取り、それをもってプラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
プラズマ処理終了時のプラズマ電流波形を記憶する機構をさらに備え、処理中のプラズマ電流波形が、記憶されたプラズマ電流波形と一致した場合にプラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
プラズマの電流波形を変換処理し、プラズマ処理を終了するか否かを判定することを特徴とする、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の装置を用いて、透明導電膜を含む廃材をプラズマ処理する工程を含む、廃材の再資源化方法。
【請求項17】
前記廃材が、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールドフィルム、ヒータ、防曇窓、帯電防止フィルムから選ばれる少なくともいずれかである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フラットパネルディスプレイが、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパから選ばれる少なくともいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記廃材が、基材と、基材に形成された透明導電膜を含むことを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プラズマ処理によって、前記基材から金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを分離することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基材から分離された金属、金属化合物および有機物から選ばれる少なくともいずれかを回収し、再資源化することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属および/または金属化合物が、インジウムおよび/またはインジウム化合物であること特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
プラズマ処理した前記基材を再資源化することを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項16〜24のいずれかに記載の廃材の再資源化方法により得られた金属および/または金属化合物。
【請求項26】
請求項16〜24のいずれかに記載の廃材の再資源化方法によりフラットパネルディスプレイから得られた基材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−246428(P2008−246428A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93354(P2007−93354)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]