説明

廃棄物から金属類を回収するための湿式精錬プロセスおよび装置

本発明は、金属類を回収するための、特に地方自治体の廃棄物焼却プラント(4)などの焼却プラントからの炉底灰から金属類を回収するための、プロセスおよび装置に関する。本発明によると、灰を含有した原料が酸化ユニット(1)に送り込まれ、そこで前記金属類の少なくとも一部が1種以上の酸および少なくとも1つの酸素供与体の存在下で酸化され、これにより、金属イオン類を含む流れが生じる。この流れから特定の金属類が溶媒抽出ユニット(2)で選択および濃縮され、その後に電解採取ユニット(3)で金属形態に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属類を回収するための、特に地方自治体の廃棄物焼却プラントなどの焼却プラントからの灰から金属類を回収するための、プロセスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の焼却は、一般に炉底灰と煙道ガスとを生じさせ、煙道ガスは微粒子を含有しうる。これらの微粒子は煙塵または飛灰と呼ばれる。これらの飛灰は、主に、水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、およびさまざまな金属酸化物で構成されている。通常、煙道ガスは、大気に放出される前に、浄化工程にかけられる。炉底灰はあらゆる不燃物質、一般には塩類と金属類、を含有している。これらの金属類はそれぞれの中性(金属)形態および/または塩類として存在しうる。後者の場合、金属類はイオンの形態で存在する。その組成は、焼却プロセスの原料に強く依存する。
【0003】
当該技術分野においては、焼却プラントからの炉底灰は、通常、投棄によって処分されるか、または浸出可能な化合物を、例えば灰をベントナイトに詰め込むことによって、固定化した後に建設用材料として使用される。
【0004】
銅などの金属類の入手可能性は、需要の増大および天然資源の枯渇の結果として近年低下してきている。
【0005】
現在の方法では、磁気および機械的抽出の組み合わせに基づく抽出方法を用いて銅などの有価金属類を廃棄物から回収している。これら公知の方法は、サイズが4mm未満の粒子を除去するにはあまり効率的でなく、サイズが1mm未満の粒子には実行不可能とみなされている。さらに、これらの磁気/機械的方法は、一般にくず金属混合物を生じさせ、このくず金属混合物を再利用するにはさらなる精錬が必要とされる。さらに、これらの方法は、上記の灰が建設目的に用いられた場合に地下水汚染などの環境問題の主因となる金属塩類を無視する。
【0006】
欧州特許出願公開第0274059号には、熱分解された電池、組み立てられた印刷回路板、および電子部品から電気分解によって金属類を再生利用するためのプロセスが記載されている。欧州特許出願公開第0274059号に記載されている電気分解工程中に回収された金属類は、その後、電気分解工程後に、公知の冶金学的または電気化学的方法によって互いに分離される。ただし、このプロセスは、電気分解後に金属類を分離するために別の処理工程を必要とするという欠点を有する。また、欧州特許出願公開第0274059号のプロセスは、その用途が導電性の入力流に限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、とりわけ、非導電性の、または僅かに導電性の、流れの処理にも使用されうる、より汎用的な方法を提供しようとするものである。これは、具体的には非導電性である炉底灰に当てはまる。
【0008】
本発明は、現在使用されているプロセスの欠点の一部を克服すると共に、焼却プロセスによって生じた炉底灰流などの低導電性または非導電性の供給源から銅、錫、金、銀、亜鉛、鉛、白金、およびこれらの混合物などの、ただしこれだけには限定されない、有価金属を回収するプロセスおよび装置を提供しようとするものである。
【0009】
この目的は、金属形態の金属類を1種以上含有する灰の廃棄物流からこれらの金属類を回収するためのプロセスを提供することによって達成されることが見出された。このプロセスは、
−前記灰の廃棄物流を浸出または酸化ユニットに送り込む工程であって、前記金属形態の金属類の少なくとも一部を1種以上の酸性物質と少なくとも1つの酸素供与体との存在下で酸化させ、これにより、対応する金属イオン類を含む流れを生じさせる工程と、
−前記金属イオン類を含む流れから1種以上の金属イオンを濃縮し、これにより、濃縮された金属イオン類の流れを生じさせる工程と、
−前記濃縮された金属イオン類の流れから前記金属イオン類の少なくとも一部を還元し、これにより、前記1種以上の金属を金属形態で生成する工程と、
を含む。
【0010】
灰の廃棄物供給流は、好ましくは焼却プラントからの、より好ましくは地方自治体の廃棄物のための焼却プラントからの、炉底灰である。本発明のプロセスは、炉底灰の処理に特に適している。その理由は、炉底灰は金属類を経済的に有意なレベルで含有し、かつ大量に生成されるからである。
【0011】
本発明のための原料として用いられる灰には、特定の金属類がそれぞれの金属形態で、または酸化された形態で、または他の塩形態で、存在する。通常、この灰はいくつかの異なる種類の金属類、例えば銅と他の金属類との混合物、を含有している。本発明者らは、一般に特定の金属類、特に銅、は塩またはイオンとしてではなく、金属の形態で頻繁に存在し、この金属を選択して濃縮化するには、最初に酸化工程を実施する必要があり、この工程を酸および酸素の存在下で実施すると、酸化反応が大幅に加速されるため、最も効果的に実施されることを認識した。この酸化工程において実施されるプロセスは、浸出としても公知である。浸出は、一般には金属塩を水性媒体中に溶解するために用いられる。浸出が有利である理由は、実施が比較的容易であり、ガス状汚染が最小限に抑えられるからである。浸出は低効率であると言われるが、本発明者らは本発明の目的を妨げることにはならないと認識した。
【0012】
当該技術分野において、浸出は通常、硫化鉱または酸化鉱に対して行われ、金は明らかな例外である。金属形態または天然の金属を含有する鉱石は、伝統的な方法では妥当な時間内に大量に浸出できないため、通常は自重法または上記の機械的方法によって処理される。したがって、本発明は、金属形態の金属類を含有する廃棄物流を処理することを特徴とする。
【0013】
米国特許第6878356号のように亜鉛めっき鋼上の薄い亜鉛被覆から亜鉛を回収するプロセスなど、廃棄物流から金属形態の金属類を浸出する既存のいくつかの湿式精錬法と異なり、本発明は、酸性物質と酸素供与体とによって金属形態の金属の酸化を加速させ、これにより、薄い被覆だけでなく、より大きな金属片の溶解も可能にする。
【0014】
第1の工程で金属を酸化させる。この工程は、酸性条件下で実施可能であり、一部の金属類の場合はアルカリ性条件下でも実施可能である。本願明細書で使用する酸性物質という用語は、水中で解離して水素イオン(H)を生じさせる物質、または一対の電子を受容できる物質、すなわちルイス酸、を指す。ここでの半反応は、例えば水素イオンの場合は、以下のとおりである。
2H+1/2・O+2e → HO (1)
アルカリ性の水性条件下において匹敵する半反応は、次のように記述されることもある。
O+1/2・O+2e → 2OH (2)
この式の左辺および右辺に対して、1つの水分子(HO)を除去し、2つの水酸化物イオン(OH)を追加すると、半反応(1)は(2)と同一である。
【0015】
浸出工程をアルカリ性の条件下で実施可能にするには、かなりの量の金属イオンをアルカリ性溶液中に溶解する必要がある。経済的に実現可能にするには、銅の場合、現在では少なくとも1g/Lから5g/L必要である。金属イオンをアルカリ性溶液に溶解するには、金属錯体の形成が適切なアプローチである。
【0016】
亜鉛または鉛など一部の金属類の場合は、水酸化物イオン自体が金属イオンと錯体を形成でき、例えば水溶性亜鉛酸塩を生成する。現在では、プロセスの経済化のために、十分な金属イオン、すなわち亜鉛の場合は5〜10モル、を溶解するには、水酸化物イオンの濃度を極めて高くする必要がある。アルカリ性溶液は、ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの可溶性塩を含みうる塩基性物質を追加することによって得られる。
【0017】
銅、亜鉛、および銀などの遷移金属イオンの場合は、これらの金属イオンを錯化してこれらの金属イオンの可溶性を高めるために、アンモニアを使用できる。他の金属類の場合は、金属イオンを錯化するために使用可能な他の水溶性キレート剤は、例えば、EDTAおよびDEHPA(ジ(2−エチルヘキシル)過リン酸塩)である。金属イオンを錯化するには、水酸化物を使用するより、アンモニアまたは他のキレート剤を使用する方が有利である。その理由は、水酸化物イオンの濃度をそれ程高くする必要がなく、また溶媒が水であるために水素イオンの濃度をより高くできることによる。より反応性の高い水素イオンを利用できるため、半反応(1)の反応速度が上がる。これらの水素イオンの濃度を上げるために、塩酸、溶解二酸化炭素、または硫酸などの酸を溶液に追加できる。
【0018】
原料流が炉底灰など、炭酸塩の含有量が多く、かつ生成物として銅または亜鉛が求められる場合は、アンモニア溶液と溶解二酸化炭素との組み合わせが極めて有利である。溶解二酸化炭素は炭酸を形成し、溶液は固体炭酸塩によって約9pHにpH緩衝される。これにより、低pHで発生する二酸化炭素の大量排出が回避される。さらに、溶解アンモニアの約50%が9pHでプロトン化されてアンモニウムイオン、すなわち半反応(1)のために極めて適した水素イオン源、を形成する。その後、残りの溶解アンモニアは、銅または亜鉛イオンの錯化に使用可能である。第3に、求められる生成物がアンモニアによって選択的に錯化される一方で、溶解二酸化炭素は不要なイオンと共に沈殿する。これにより、廃水が大幅に減る。第4に、二酸化炭素は、焼却プロセスにおいて十分に入手可能である。
【0019】
酸は、オフガス処理工程、すなわちNO、塩素、金属酸化物、および硫黄酸化物(中でもSOおよびSO)などの有害成分を、例えば廃棄物焼却炉のオフガスから除去する工程、から得られるので大いに有利である。これらの公知のオフガス処理工程では、一般に汚染ガス流を液体に接触させる。この接触は、例えば、湿式洗浄器内で液体によってガスの不純物を除くことによって、または液体をガス内に噴射することによって、またはガスを液体プールに通すことによって、または何れか他の接触方法によって行われる。酸類は、腐食性ガスを中和するプロセスにおいて生じる。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)などの塩素含有製品が焼却されると、HClガスが形成される。このガスは、水と接触すると塩酸を生じる。これらのオフガス処理動作によって、通常、酸流、好ましくは、硫酸、塩酸、およびこれらの組み合わせ、などの強酸流になる。通常、オフガス処理は焼却が行われた直後にその場で行われるので、これらの酸流を経済的に大いに有利に利用できる。さらなる利点は、これらの酸流を廃水処理プラントで多大な費用をかけて処理する必要がない点である。
【0020】
上記のように、酸素を空気の形態で加えると金属形態の金属の酸化反応の加速を助けることがさらに見出された。一般に以下の反応が発生する。ここでは一例として銅が用いられている。
Cu+2H+1/2・O → HO+Cu2+ (3)
【0021】
また、空気をユニット内に吹き込むと、酸化工程において液相で行われる混合が良好になされる。酸化ユニット内に空気を流すことによって、酸化工程を大幅に高速化できる。
【0022】
代わりに、または加えて、過酸化水素などの液状酸素供与体を使用してもよい。供給流内の銅が触媒として機能し、過酸化水素から酸素を遊離させる。これにより、酸素の可用性が増し、反応速度が増す。過酸化水素自体は酸化剤としても機能でき、以下の還元反応をもたらす。
+2H+2e → 2HO (4)
ただし、期待に反して、反応(4)は、銅またはニッケルのような金属イオンの浸出を促進しない。代わりに、保護不動態層がこれら金属類の表面に形成され、これら金属類のさらなる大量浸出を妨げる。したがって、過酸化水素を酸素供与体として用いる場合は、試薬類を正しい順番に従って追加することが極めて望ましい。このために、最初に廃棄物流を酸またはキレート剤、例えばアンモニア、を含有する溶液に浸漬する。必ずその後に過酸化水素を追加する。
【0023】
浸出または酸化は、水性媒体中で適切な条件下において行う。浸出は高温であるほど進行が速いが、エネルギー使用量を考慮すると、温度は20℃から30℃が望ましい。焼却炉の余剰熱を利用可能な場合は、好適な温度は60℃から80℃である。キレート剤を使用しない場合の浸出溶液のpHは、好ましくは−1から4の間、より好ましくは−1から1の間である。アルカリ性溶液のpHは、好ましくは約8〜10、より好ましくは9である。これにより、炉底灰からの全ての炭酸塩が確実に固体状で残る一方で、反応のために十分な水素イオンが確実に利用可能になる。
【0024】
この結果、高い金属濃度、例えば1〜10g/Lの銅濃度、がもたらされる。
【0025】
金属形態の金属類が少なくとも部分的に、好ましくはかなりの程度まで、例えば99%(重量ベース)以上、酸化された後に、所望の酸化金属を選択して濃縮する必要がある。これは、別個のユニットで、特に溶媒抽出ユニットで、行われることが好ましい。所望の金属の選択および濃縮が酸化形態または金属形態のどちらかで行われるように、排出物を電解採取工程に直接供給し、電解採取工程における条件を選択することも可能である。ただし、実際には、これは通常は容易には達成されない。溶媒抽出は液体−液体抽出であり、複数の化合物をそれぞれの相対的可溶性に基づき、互いに不混和性または低混和性である2種類の液体内で分離する方法である。これらの液体として、通常、水と有機溶媒とが用いられる。浸出工程後に得られた溶液から所望の金属を選択的に抽出するために、通常、錯化剤が用いられる。浸出後に、この溶液から金属を濃縮形態で回収できる。この結果、1つの物質が一方の液相からもう一方の液相へと抽出される。
【0026】
この目的のために極めて適した抽出剤は、コグニス社(Cognis corporation)から購入可能なLIX84(商標)である。この2つの液体を混合することによって所望の金属を浸出貴液から有機抽出剤に抽出し、沈殿後にこの2つの液体を比重により分離する。次に、同様の混合および沈殿プロセスを用いて、濃度勾配に逆らって濃縮された酸によって金属を抽出剤から引き離す。この混合および沈殿は、例えば、多段ミキサ−セトラ装置、パルスカラム、または他の装置において実施可能である。
【0027】
本発明のプロセスの最終工程において、金属イオンを還元して金属形態の金属沈殿物を形成する。これは、ほぼ単一の金属を酸化形態で、例えばCu2+イオンとして、含有する濃縮排出物を還元工程にかけることによって行われることが好ましい。この工程は、陰極と陽極とが一対存在するガルヴァーニ電池を用いて実施されることが好ましい。金属イオンが陰極上で還元され、これにより、後で容易に除去可能な金属沈着が陰極上に形成される。1つの実施形態において、電解採取工程は、国際公開第98/58090号に記載されているプロセスとデバイスとを用いて実施される。
【0028】
国際公開第98/58090号には、電気化学的電池を用いて流れから金属類を回収するための方法およびデバイスが記載されている。国際公開第98/58090号には、特定のイオンを選択する方法は一切記載または提案されておらず、これを溶媒抽出によって実現しうることも記載または提案されていない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するために適した1つの実施形態の模式図である。
【図2】本発明を実施するために適した1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好適な一実施形態においては、図1に模式的に示されているように、廃棄物流内の金属粒に外部電圧を印加することによって、浸出(すなわち、金属形態の金属を酸化して対応するイオンにすること)がさらに向上される。これは、溶液内に存在する銅の少なくとも一部をめっきするために特に有用である。残りの金属類は、別個の溶媒抽出および電解採取工程で処理可能である。電圧を印加するには、金属粒が陽極板に接触するように、平坦形状の、ほぼ水平(例えば、表面の傾斜角が10°未満、好ましくは4°〜8°の間)の不活性陽極上に灰を広げる。陽極板は、灰を支持するために、やや水平である必要がある。灰の輸送には、例えば揺すった後に灰が移動するには、若干の傾斜が有用である。陽極は、例えば金網構造の形態で設けることによって、金属粒との接触面積が最大化されるような形状にできる。陽極を、例えばチタン合金、例えばASTMグレード7のチタン、から作製してもよい。この陽極を陰極と共に、酸と複数の添加剤、例えば硫酸および溶解硫酸銅と少量の塩化物などの添加剤、で満たされた容器内に配置する。陰極、例えば316タイプのステンレス鋼製の陰極、を陽極の上方の近距離、一般には数センチメートル、例えば1〜5cm、に配置する。制御された電圧差(好ましくは0.1Vから1Vの間、例えば約0.3V)をこの2つの電極に印加すると、金属形態の金属の浸出(溶解)、すなわち対応するイオンへの酸化、が高速で行われる。陰極には銅イオンが直接めっきされる。この実施形態は、装置が単純であるため、極めて好都合である。実際に、この実施形態においては、酸化、選択、およびめっきによるイオンから対応する金属への変換の3つの工程が単一の装置に組み合わされる。
【0031】
上記装置においては、銅イオンの濃度を一定、またはほぼ一定、に維持する必要がある。ただし、銅イオンは浸出されるあらゆる非銅系金属のために消費され、鉄の浸出は次の反応に従う:Fe(s)+Cu2+ → Fe2++Cu(s)。これは、電解液からCuを激減させる。
【0032】
より詳細には、鉄と銅の場合は、次の2つの半反応が発生する。
陽極において、Fe(s) → Fe2++2e
陰極において、Cu2++2e → Cu(s)。
【0033】
この理由により、1つの実施形態においては、最初に浸出流体中の卑金属が浸出され、さらに必要であれば、灰が陽極および陰極の上に広げられた、しかし溶解硫酸銅は存在しない、装置によってこの浸出が加速される。その場合、陰極での半反応は、
Cu2++2e → Cu(s)ではなく、
2H+2e → H(g)である。
【0034】
酸化する金属形態の金属類は、以降の溶媒抽出および電解採取工程で処理可能である。印加電位が十分に低い(0.34V未満)場合は、銅などの半貴金属と銀および金などの貴金属とは固体状で残るので、浸出段階において上記方法により硫酸銅で処理可能である。
【0035】
消費される酸は、湿式ガス洗浄器から得ることができる。
【0036】
図2は、本発明を実施するために適した1つの実施形態の概略図である。図2において、焼却炉(4)で生じた灰の廃棄物流(10)は酸化ユニット(1)に送り込まれ、そこで酸素の豊富な原料(7)と酸原料(11)とが送り込まれて金属原子が対応するイオンに酸化される。図2においては、焼却炉プロセスのガス排出物処理工程(5)から酸原料(11)が生じる一方で、焼却炉プロセスの浄化済み煙道ガスは煙突(6)から放出される。酸化器(1)の排出物(8)は溶媒抽出ユニット(2)に送り込まれる。溶媒抽出ユニット(2)は、所望される金属イオンの必要な選択および濃縮を行う一例である。所望される金属類のイオン類を高濃度に含有する排出物(9)が電解採取工程(3)に送り込まれる。溶媒抽出工程の排出物(14)を別個の抽出工程にかけて他のイオンを抽出し、さらなる処理にかけることもできる。電解採取工程(3)では、金属イオン類をそれぞれの金属形態に還元するために、陽極(12)と陰極(13)とが用いられる。現時点でイオン類を低濃度で含有している排出物(15)が再利用のために溶媒抽出ユニット(2)に戻される。
【実施例】
【0037】
廃棄物焼却炉の、乾燥重量150±5kgの、炉底灰に対して2つの異なる実験を実施した。水に溶かした10w%アンモニア150kgを直径45cm、高さ2mのカラムに追加した。これらの実験においては、酸を一切加えなかった。この結果、酸消費によりpHが上昇した。第1の実験では、KNF Laboport(商標)60W隔膜ポンプでカラムの底から空気を送り込んで泡立たせた。第2の実験では、浸出流体を2つのProminent(商標)隔膜ポンプでカラムに通し、再循環させた浸出流体に過酸化水素を連続的に追加した。以下の表に、浸出された金属の量を示す。
【0038】
【表1】

)乾燥物質に基づく
【0039】
これらの実験には、溶媒抽出工程を含めなかった。溶媒抽出を含めた場合、より高速の浸出が観察された。
【0040】
別個の装置において、浸出貴液が溶媒抽出ユニットを通して送り込まれ、18560ppmの銅を含有する高濃度の硫酸銅電解液が希硫酸から首尾よく生成された。この電解液からの銅で陰極がめっきされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属形態の金属類を1種以上含有する廃棄物供給流から前記金属類を回収するプロセスであって、
−前記廃棄物供給流を酸化ユニットに送り込む工程であって、前記金属形態の金属類の少なくとも一部を、1種以上の酸性物質と少なくとも1つの酸素供与体と、必要であればさらに錯化剤と、の存在下で酸化し、これにより金属イオン類を含む流れを生じさせる工程と、その後に特定のイオン類を選択してそれぞれの金属形態に変換する工程とを含む、
プロセス。
【請求項2】
特定のイオン類を選択してそれぞれの金属形態に変換する前記工程は、
−前記廃棄物供給流から前記金属イオン類のうちの1種以上を濃縮し、これにより濃縮された金属イオンの流れを生じさせる工程と、
−前記濃縮された金属イオンの流れから前記金属イオン類の少なくとも一部を還元し、これにより前記1種以上の金属類を金属形態で生じさせる工程と、
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸素供与体は、酸素含有溶解ガス、好ましくは空気、または液体、好ましくは過酸化水素、である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記金属形態の金属類の前記酸化は、前記金属類を陽極化する誘導電位によって加速される、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属類の一部は前記酸化ユニット内の陰極上で還元され、これにより前記金属類を金属形態で生じさせる、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記1種以上の酸性物質はHSO、HCl、HNO、CO、またはこれらの組み合わせから選択される、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
1種以上の(錯体形成)塩基性物質が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアから選択される、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
1種以上の金属イオンを濃縮する前記工程は溶媒抽出工程において実施される、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記濃縮された金属イオン類の流れから前記金属イオン類の少なくとも一部を還元する前記工程は電解採取工程において実施される、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記金属形態の金属は銅である、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1種以上の金属形態の金属類を含有する前記廃棄物供給流は、灰、特に焼却プラントからの炉底灰、特に地方自治体の廃棄物のための焼却プラントからの炉底灰、を含む、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記1種以上の酸性物質類は、前記炉底灰を生じさせた前記焼却プラントの前記煙道ガス処理工程から得られる、先行請求項の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
先行請求項の何れか1項に記載のプロセスを実施する装置であって、
−金属形態の金属類を含有する廃棄物流、特に焼却プラントからの炉底灰、を含む原料を送り込むための開口部と、酸を送り込むための管路と、酸素含有ガスを送り込むための管路とを備えた酸化ユニットと、
−前記酸化ユニットの前記排出物を受け入れるための管路が取り付けられた溶媒抽出ユニットと、
−前記酸化ユニットの前記排出物を受け入れるための管路が取り付けられた電解採取ユニットと、
を備えた装置。
【請求項14】
前記酸化ユニットは一対の電極をさらに備え、前記一対の電極は好ましくはほぼ水平の陽極を含む、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−506764(P2013−506764A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533106(P2012−533106)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050657
【国際公開番号】WO2011/074948
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512088615)エレメタル ホールディング ベー.フェー. (1)
【Fターム(参考)】