説明

廃棄物の処理方法および廃棄物処理剤

【課題】 可溶性アルカリ性物質を含有する廃棄物、特に産業廃棄物焼却灰溶融スラグ及び一般廃棄物焼却灰溶融スラグは可溶性のアルカリ性物質(アルカリ金属)を含んでいる。従って、このアルカリ性物質を吸着、吸蔵することにより浸出液(排水)を無害化する処理剤及び処理方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物に、各種アルカリ性物質を吸着または吸蔵することが可能な(a)珪素系化合物、(b)非晶性水酸化アルミニウム、(c)塩基性水酸化アルミニウムまたは(d)アルナイトを添加することにより無害化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性アルカリ性物質を含有する廃棄物を安定化処理するのに有効な廃棄物処理剤及び廃棄物処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物、特に産業廃棄物焼却灰溶融スラグ及び一般廃棄物焼却灰溶融スラグは、可溶性のアルカリ性物質(アルカリ金属)を含んでおりその浸出液(以下浸漬液ともいう)pHは9〜12の達する廃棄物がある。
このような、浸出液を排水基準のpH5.8〜8.6に制御する方法としては、鉱酸(塩酸、硝酸、硫酸)及び硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の酸性物質を添加すれば容易に制御できる。
しかしながら、これらの物質は濃度を薄くしてもそのもの自体のpHが低すぎる(pH≒1〜4)。よって、これらを廃棄物に添加することにより浸出液のpHについては制御可能であるが、pHが局部的に低くなるので廃棄物中に含有されている有害物質、特に鉛がPb2+イオンとして溶出し排水基準に不適合となる。この鉛は、これら酸性物質を添加しなければPbO等の形で存在するので溶出しない。
一方、これら酸性物質の濃度を更に薄くし、そのもの自体のpHを5以上とすればpH制御と同時に浸出液(浸漬液)を無害化することが可能であるが、使用する液量が膨大なものとなり現実的でなくなる。以上より、現状は対応方法が見出されなくこれらを満足できる処理剤及び処理方法が強く要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、このような可溶性アルカリを含有する廃棄物の浸出液(浸漬液)のpHを制御し更に有害重金属を安定化するための廃棄物処理剤及び廃棄物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者の研究によれば、前記本発明の目的は浸出液または浸漬液のpHが8.6以上の廃棄物に、アルカリ性を示すイオンを吸着及び吸蔵する処理剤もしくはその水懸濁液を添加処理することにより排水基準のpH5.8〜8.6に制御することを特徴とする廃棄物の処理方法により達成される。
【0005】
本発明によれば、前記処理剤は(a)珪素系化合物、(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウム、(c)式Al(OH)6−nx(An−・mHOで示される塩基性水酸化アルミニウムまたは(d)式MAl(SO(OH)で示されるアルナイト化合物であることが望ましいことが見出された。
【0006】
かくして本発明によれば、前記廃棄物に前記(a)〜(d)の群から選ばれた少なくとも一種の処理剤もしくはその水懸濁液を添加処理することによって、溶出可能なアルカリ性物質を含有する廃棄物を安定化することができることができる。
【0007】
また、本発明によれば下記(a)〜(d)よりなる群から選ばれる浸出液または浸漬液のpHが8.6以上の廃棄物を処理するための廃棄物処理剤が提供される。
(a)合成ケイ酸アルミニウム、シリカ・アルミナ、H型ゼオライト、酸性白土、含水ケイ酸および無水ケイ酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種の珪素系化合物。
(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウム。
(c)式Al(OH)6−nx(An−・mHO(但し式中、nは1〜2の整数、xは0.001〜4.0、ただしnxの値が4.0を超えない範囲、An−はSO2−、ClまたはNO、mは0.1〜4.0を表わす)で示される塩基性水酸化アルミニウム。
(d)式MAl(SO(OH)(但し式中MはNaまたはKを表わす)で示されるアルナイト化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の廃棄物処理剤を、可溶性アルカリを含む廃棄物に対して添加することにより該廃棄物の浸漬液(排水)のpH制御、更には有害重金属の溶出制御、更には該廃棄物を添加することにより、添加された該廃棄物のシリアルバッチ試験における有害金属(特にPb)までも制御できる。しかも、本発明廃棄物の処理剤は少量でその効果を発揮するので経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の方法の実施態様として(a)珪素系化合物、(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウム、(c)式Al(OH)6−nx(An−・mHOで示される化合物、(d)式MAl(SO(OH)で示されるアルナイトより選ばれた少なくとも一種の処理剤を廃棄物と直接混合する方法、あるいは既に埋め立て処理されている廃棄物にこれら処理剤を水に懸濁したスラリーを注入する方法が挙げられる。
これらの処理剤の添加量は、多いほうが良く特に上限を設ける必要はないが、あまり多量に添加するのは経済的でない。このため、廃棄物100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、さらには0.5〜2.0重量部の範囲が好ましく例示される。以下に、本発明で使用する処理剤について詳しく説明する。
【0010】
本発明において使用する(a)珪素系化合物は、合成ケイ酸アルミニウム、シリカ・アルミナ、H型ゼオライト、酸性白土、含水ケイ酸または無水ケイ酸であり、これら珪素系化合物は含水ケイ酸、無水ケイ酸を除きプロトン酸(H→プレンステッド酸)を有しており、このプロトン(H)がアルカリイオンと交換可能であり当該廃棄物より溶出するアルカリとイオン交換することで安定化する。一例としては、+(Na+OH)→Na+HOで示される。ここに、Naは珪素系化合物の表面に結びついた水素イオン及びナトリウムイオンを表わす。一方、含水ケイ酸、無水ケイ酸は破壊原子価による負の電荷にアルカリイオンを吸着し安定化する。化学反応式の一例としてはSi−OH+(Na+OH)→Si−ONa+HOで示される。この反応により、スラグの浸漬液(排水)のpH制御が可能になる。
【0011】
次に、本発明において使用する(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である無定形の非晶性水酸化アルミニウムについて詳細に説明する。非晶質水酸化アルミニウムは、結晶性水酸化アルミニウムに比較して酸及びアルカリに対する反応性が極めてよいことは良く知られていることである。しかしながら、本発明の対象となる廃棄物はその浸漬液のpHが9〜12と比較的弱アルカリ性である。従って、非晶質水酸化アルミニウムの中でも日本薬局方制酸力が150mL以上で、その構造中に炭酸イオンを含有する無定形の非晶性水酸化アルミニウムが特に有効である。非晶質水酸化アルミニウムは、不安定で短時間で結晶性水酸化アルミニウムに移行する。これを、防御するために構造中に炭酸イオンを含有させた水酸化アルミニウムが特に有効である。尚、水酸化アルミニウムが廃棄物に含まれる可溶性アルカリを吸着し安定化する作用については明らかでないが、水酸化アルミニウムは酸及びアルカリとの反応性が非常に良いためと推定される。
【0012】
次に、本発明において使用する(c)式Al(OH)6−nx(An−・mHOで示される塩基性水酸化アルミニウム化合物について詳細に説明する。式中nは1〜2の整数、xは0.001〜4.0、ただしnxの値が4.0を超えない範囲、An−はSO2−、ClまたはNOであり、mは0.1〜4.0を表わす。xが、0.001より少ないと廃棄物中に含まれるアルカリ性物質の吸着能が低くなり目的を達成しがたくなり、4.0より多いとそのもの自体のpHが低くなりpH制御は可能であるが廃棄物中に含まれる他の有害金属(鉛、ホウ素、フッ素)を溶出する可能性が高いことによる。この(c)塩基性水酸化アルミニウム化合物が廃棄物に含まれる可溶性アルカリを吸着し安定化する作用について明らかでないが、以下の化学反応式によるものと推定される。
例えばA=SO2−、nx=0.90であり、可溶性アルカリがCaイオンのとき下記反応式で表わされる。
Al(OH)5.1(SO0.45・2HO+0.45[Ca2−+2OH]→Al(OH)6.0+0.45CaSO+2H
【0013】
次に、本発明において使用する(d)式MAl(SO(OH)で表わされるアルナイトについて説明する。アルナイトは、公開特許公報昭64−1167、同2000−7326及びAmerican Mineralogist,Vorume72, pages 178〜187,1987に記されている物質等が有効である。このアルナイトが廃棄物に含まれる可溶性アルカリを吸着し安定化する作用については明らかでないが、(c)の塩基性水酸化アルミニウムと同様な作用により安定化するものと推定される。
【0014】
本発明において廃棄物の処理方法としては(a)珪素系化合物、(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウム、(c)塩基性水酸化アルミニウムおよび(d)アルナイトより選ばれた少なくとも一種の処理剤を水に懸濁し廃棄物と混合する方法、前記処理剤の懸濁液を埋め立て処分されている廃棄物中にポンプ等を用いて注入する方法が挙げられる。
本発明を適用し得る廃棄物は、可溶性アルカリ成分を含有する産業廃棄物焼却灰及びその溶融スラグ可溶性アルカリ成分を含有する一般廃棄物焼却灰及びその溶融スラグが特に有効である。
【実施例】
【0015】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
250mL容蓋付きポリビンに、可溶性アルカリを含む廃棄物溶融スラグ100g、Al(OH)6−nx(An−・mHO系化合物(処理剤)としてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5g、純粋150mLを投入し軽く振り混ぜ(混合)常温で60日間放置し、経日毎のpH変化を測定した。更に、60日間経過後にスラグと浸漬液を分離後、浸漬液を遠心分離機を用いて15000rpm×15分間処理し、上澄み液中の有害元素を下記する方法で測定した。
(1)pH:HORIBA製F−22型pHメーター
(2)鉛、カドミウム、6価クロム、ヒ素、セレン:フレームレス原子吸光法
(3)全水銀:還元気化原子吸光法
(4)シアン:ピリジン−ピラゾロン吸光光度法
(5)フッ素:ランタン−アリザリンコンプレキソン法
(6)ホウ素:ICP法
経日毎のpH変化を表1に、また、上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0017】
実施例2
実施例1において、Al(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0018】
実施例3
実施例1において、Al(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを2.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0019】
実施例4
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gをAl(OH)4.6(SO0.7・2.4HO 1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0020】
実施例5
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gをAl(OH)5.6(SO0.2・1.3HO 1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0021】
実施例6
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gをAl(OH)5.0(Cl)1.0・2.3HO 1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0022】
実施例7
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gをAl(OH)5.0(NO1.0・2.2HO 1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0023】
実施例8
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを、協和化学工業株式会社化学製合成ケイ酸アルミニウム「KW−700PEL」2.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0024】
実施例9
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを、市販のシリカ・アルミナ1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0025】
実施例10
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを、株式会社トクヤマ製含水ケイ酸「トクシールGU−N」2.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0026】
実施例11
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを、協和化学工業株式会社化学製水酸化アルミニウムゲル「SPゲルFM,日本薬局方制酸力320mL」1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0027】
実施例12
実施例1においてAl(OH)5.1(SO0.45・2HO 0.5gを、市販のアルナイト「NaAl(SO(OH)」1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0028】
実施例13
実施例1において、Al(OH)5.1(SO4)0.45・2HO 0.5gを、Al(OH)5.1(SO4)0.45・2HO 0.5g、および、株式会社トクヤマ製含水ケイ酸「トクシールGU−N」0.5gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0029】
比較例1
実施例1において、Al(OH)5.1(SO)0.45・2HO 0.5gを、市販の結晶性水酸化アルミニウム「ギブサイト日本薬局方制酸力3mL」2.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0030】
比較例2
実施例1において、Al(OH)5.1(SO)0.45・2HO 0.5gを、市販の硫酸アルミニウム「Al(SO)」1.0gとした以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0031】
比較例3
実施例1において、処理剤を使用しないこと以外は実施例1と同様とした。経日毎のpH変化を表1に、また、60日経時後の上澄み液中の有害元素測定結果を表2に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1に示した比較例3の結果より、本廃棄物に処理剤を添加しなければ浸漬水(排水)のpHは9.08〜9.28であり、排水基準のpH5.8〜8.6に不適合の廃棄物であることが分かる。更に、比較例3の結晶性水酸化アルミニウムもpH制御できないことがわかる。これらに対して、実施例1〜13は本発明の廃棄物処理剤を添加剤を添加することにより、また、比較例2は十分にpH制御でき廃水基準に適合することが分かる。
【0035】
表1および表2に示した実施例1〜13の結果を比較例2と比較すると、本発明の廃棄物処理剤を添加することにより、有害元素の鉛,カドミウム,フッ素,ホウ素の溶出量を土壌基準内と出来ることがわかる。これに対して、比較例2の硫酸アルミニウムはそのもの自体のpHが低いので、スラグと接触する際に局部的にpHが4以下となる。従って、pHを4以下としなければ溶出しない本廃棄物中の有害元素(鉛,カドミウム,フッ素,ホウ素)と反応しこれらをイオン化するために溶出する。比較例1の結晶性水酸化アルミニウムは、何の影響も及ぼさないので処理剤添加なし(比較例3)と同結果となることが分かる。比較例1(処理剤添加なし)は、その浸漬水(排水)のpHが9.08〜9.28であるので、本廃棄物中の(有害元素)鉛,カドミウム,フッ素,ホウ素は安定であり溶出しないことが分かる。
表1および表2より、本発明の廃棄物処理剤は廃棄物の浸漬液(排水)のpH制御および有害元素の溶出ともに制御できることが分かる。
【0036】
実施例14
50L容ポリバケツに、可溶性アルカリを含む廃棄物25kgを投入する。別に、50Lポリバケツに純水37.5LにAl(OH)6−nx(An−)・mHO系化合物としてAl(OH)5.1(SO)0.45・2HO 250gを懸濁しておき、この懸濁液を定量ポンプを用いて前記廃棄物を投入しているポリバケツの底部に設置しているパイプを通じて60分で注入した。この状態で、常温で60日間放置し、経日毎のpH変化を測定した。更に、60日間経過後の浸漬液を取り出し遠心分離機を用いて15000rpm×15分間処理し、上澄み液中の有害元素およびCODを下記する方法で測定した。
(1)pH:HORIBA製F-22型pHメーター
(2)鉛,カドミウム,6価クロム,ヒ素,セレン:フレームレス原子吸光法
(3)全水銀:還元気化原子吸光法
(4)シアン:ピリジン−ピラゾロン吸光光度法
(5)フッ素:ランタン−アリザリンコンプレキソン法
(6)ホウ素:ICP法
(7)COD:JIS K 0102法に準ずる。
経日毎のpH変化を表3に、また、上澄み液中の有害元素およびCOD測定結果を表4に示す。
【0037】
実施例15
実施例14において、Al(OH)5.1(SO)0.45・2HO 250gを、Al(OH)5.1(SO)0.45・2HO 125gおよび含水ケイ酸(トクシールGU−N)125gとした以外は実施例14と同様とした。経日毎のpH変化を表3に、また、上澄み液中の有害元素およびCOD測定結果を表4に示す。
【0038】
比較例4
実施例14において、処理剤を使用しないこと以外は実施例14と同様とした。経日毎のpH変化を表3に、また、上澄み液中の有害元素およびCOD測定結果を表4に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表3,表4に示した、実施例14,15の結果を比較例4と比較すると本発明の廃棄物処理剤を廃棄物に対して注入法で添加しても、有害元素の鉛,カドミウム,フッ素,ホウ素等を溶出さすことなく、浸漬液(排水)のpHを制御できることが分かる。
【0042】
実施例16
実施例14の60日経時後の廃棄物を取り出し、355μmの金網で水篩し処理剤等除き50℃で乾燥した。この廃棄物をさら目開き3mmの金網を通過さす。この廃棄物40gとpH4.0に調整された硝酸溶液800mLを1L容蓋付きポリビンに投入し、反転振とう可能な振とう機にセットし24時間反転振とうした。後、固液分離した廃棄物に再度pH4.0に調整された硝酸溶液800mLを投入し、更に反転振とう可能な振とう機にセットし24時間反転振とうした。この操作を5回繰り返す。尚、各回毎に分離された浸漬水は、遠心分離機を用いて15000rpm×15分間処理し、上澄み液中の有害元素を下記する方法で測定した。また、上澄み液中の有害元素濃度および溶出量測定結果を表5に示す。
(1)鉛,カドミウム,6価クロム,ヒ素,セレン:フレームレス原子吸光法
(2)全水銀:還元気化原子吸光法
(3)シアン:ピリジン−ピラゾロン吸光光度法
(4)フッ素:ランタン−アリザリンコンプレキソン法
(5)ホウ素:ICP法
尚、本試験法は、オランダ公定法NEN7343(シリアルバッチ試験)に準ずるものであり、各成分の溶出量の計算方法を下記する。
={V/m×(C−C)/1000}×1000
:各成分の溶出量(μg−成分/kg−試料の乾重量)
:各溶出液画分中の成分濃度(μg/L)
:溶媒中の各成分濃度(μg/L)(コントロール)
:試料の乾重量(kg)
:溶出液画分iの体積(L)
【0043】
【表5】

【0044】
実施例17
実施例16の実施例14の60日経時後を実施例15の60日経時後とした以外は実施例16と同様とした。また、上澄み液中の有害元素濃度および溶出量測定結果を表6に示す。
【0045】
【表6】

【0046】
比較例5
実施例16の実施例14の60日経時後を比較例4の60日経時後とした以外は実施例16と同様とした。また、上澄み液中の有害元素濃度および溶出量測定結果を表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
表5,表6,表7に示した、実施例16,17の結果を比較例5と比較すると、本発明の廃棄物処理剤を廃棄物に対して添加することにより、経日後廃棄物のシリアルバッチ試験においても有害金属(特にPb)の溶出を制御できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸出液または浸漬液のpHが8.6以上の廃棄物に、アルカリ性を示すイオンを吸着及び吸蔵する処理剤もしくはその水懸濁液を添加処理することにより排水基準のpH5.8〜8.6に制御することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】
該処理剤が、合成ケイ酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、H型ゼオライト、酸性白土、含水ケイ酸および無水ケイ酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種の珪素系化合物である請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
該処理剤が、日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウムである請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
該処理剤が、式Al(OH)6−nx(An−・mHO(但し式中、nは1〜2の整数、xは0.001〜4.0、ただしnxの値が4.0を超えない範囲、An−はSO2−、Cl-またはNO-、mは0.1〜4.0を表わす)で示される塩基性水酸化アルミニウムである請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
該処理剤が式MAl(SO(OH)(但し式中MはNaまたはKを表わす)で示されるアルナイト化合物である請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
下記(a)〜(d)よりなる群から選ばれる、浸出液または浸漬液のpHが8.6以上の廃棄物を処理するための廃棄物処理剤。
(a)合成ケイ酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、H型ゼオライト、酸性白土、含水ケイ酸および無水ケイ酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種の珪素系化合物。
(b)日本薬局方制酸力が150mL以上である非晶質水酸化アルミニウム。
(c)式Al(OH)6−nx(An−・mHO(但し式中、nは1〜2の整数、xは0.001〜4.0、ただしnxの値が4.0を超えない範囲、An−はSO2−、ClまたはNO、mは0.1〜0.4を表わす)で示される塩基性水酸化アルミニウム。
(d)式MAl(SO(OH)(但し式中MはNaまたはKを表わす)で示されるアルナイト化合物。
【請求項7】
浸出液または浸漬液のpHが8.6以上の廃棄物を含む汚染領域に請求項6に記載の処理剤の水懸濁液を注入管より注入し、アルカリ性を示すイオンを吸着および吸蔵する廃棄物処理方法。

【公開番号】特開2006−116408(P2006−116408A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306168(P2004−306168)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【出願人】(504391167)ミクニエコシステム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】