説明

廃棄物の処理方法及び金属の製造方法並びに金属

【課題】廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑制して、炉本体の寿命延長を図ることができるロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】ロータリーキルン炉1を用いた廃棄物の処理方法であって、ロータリーキルン炉1の炉本体2に、廃棄物と含水スラッジとを投入するとともに、炉本体2の内部温度を測定し、その温度データに基いて炉本体2内部への前記含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整し、炉本体2内部の温度分布を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば可燃物付スクラップ等の廃棄物をロータリーキルン炉の炉本体の内部に投入し、炉本体内部で廃棄物を燃焼、溶融させて処理するロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法及び金属の製造方法並びに金属に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等を処理する方法として、ロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法が広く利用されている。例えば自動車のシュレッダーダストや廃家電品をはじめとする金属を含有する産業廃棄物を処理する場合には、炉本体の内部に投入された廃棄物のうち、例えばウレタンなどの可燃物をガス化し、金属を含む不燃物を溶融して溶融スラグとする。ここで形成された溶融スラグは、炉本体の出口から排出され、冷却器で水冷されるとともに破砕されて砕塊が生成され、生成された砕塊の中から、鉄(Fe)をはじめとして銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)などの有用または高価な金属を回収する。一方、生成されたガスは、二次燃焼室で高温に燃焼され、悪臭物質などが分解されて二次燃焼室から排出される。その後、熱交換工程、クエンチ工程、煤塵・有害ガス除去工程などを経て大気中に排出される。
【0003】
このようなロータリーキルン炉においては、燃焼バーナーによる燃焼により炉本体の内部が例えば1200℃程度の高温状態となるため、炉本体は、高温に耐え得る耐火物層とこの耐火物層を支持する炉体シェルとの2重構造をなしている。この耐火物層は、前述のように高温雰囲気下におかれることになるため、耐火物層の損傷や劣化を抑制することにより、この炉本体の寿命延長を図ることが可能となる。
そこで、特許文献1には、炉本体の内部温度を推定し、内部温度が安定するように操業する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−20105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可燃物を含有する廃棄物は様々な性状をなしており、例えば、硬質、軟質、重量、フィルム状、発泡材等があり、これらの混合状態も異なっている。このため、廃棄物の燃焼状態は大きくばらつくことになる。これらの廃棄物を粉砕して炉本体に投入しても、可燃物の量によって投入口から加熱により着火する燃焼帯がばらついてしまい、炉本体の内部温度分布が変動してしまう。また、可燃物を含有する廃棄物は、炉本体に投入されると短時間で燃焼してガス化することになるが、この燃焼によって炉本体の一部が局所的に加熱され、その熱衝撃によって耐火物層に溶損やスポーリングが生じてしまう。
【0005】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑制して、炉本体の寿命延長を図ることができるロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法及び金属の製造方法、並びにロータリーキルン炉を用いた金属の製造方法によって製造される金属を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の廃棄物の処理方法は、ロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法であって、前記ロータリーキルン炉の炉本体に、廃棄物と含水スラッジとを投入するとともに、前記炉本体の内部温度を測定し、その温度データに基いて前記炉本体内部への前記含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整し、前記炉本体内部の温度分布を制御することを特徴としている。
【0007】
この構成の廃棄物の処理方法においては、炉本体に、廃棄物と含水スラッジとがそれぞれ単独で投入されることになる。含水スラッジを炉本体内部に投入した場合には、スラッジ中の水分の蒸発及びスラッジ自体の加熱に熱が使用されることになり、廃棄物の昇温が遅くなる。これにより、廃棄物の燃焼が緩やかになり、燃焼帯が大きく広がって炉本体内部の局所的な温度上昇が抑制され、耐火物層の劣化を防止できる。一方、廃棄物を炉本体内部に投入した場合には、燃焼が促進され、炉本体内部温度を上昇する。
このように含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整することで炉本体の内部温度を調整でき、炉本体の寿命延長を図ることができる。
【0008】
ここで、前記含水スラッジと前記廃棄物とをそれぞれ単独で前記炉本体に投入してもよい。
この場合、炉本体の内部温度が高温になったタイミングで含水スラッジを単独で炉本体に投入することにより、発熱量を低減させて炉本体の内部温度を低下させることができる。一方、炉本体の内部温度が低温になったタイミングで廃棄物を単独で炉本体に投入することにより、発熱量を増加させて炉本体の内部温度を上昇させることができる。このようにして炉本体の内部温度を安定させることが可能となる。
さらに、含水スラッジ又は廃棄物をそれぞれ単独で投入するので、内部温度の変化に応じて炉本体内部での廃棄物と含水スラッジとの存在割合を即座に変更することができ、炉本体の内部温度の調整をすばやく行うことができる。
【0009】
また、前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物を投入し、前記温度データに基いて前記含水スラッジと前記廃棄物との混合比を調整することにより、前記炉本体内部の温度分布を制御するように構成しても良い。
この場合、廃棄物と含水スラッジとを予め混合させることで廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑えることが可能となり、炉本体の内部での温度上昇を抑制することができる。
【0010】
さらに、前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物と、前記含水スラッジとをそれぞれ投入するように構成しても良い。
この場合、廃棄物と含水スラッジとを予め混合させることで廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑えることができるとともに、含水スラッジを単独で投入することによって内部温度の変化に応じて炉本体内部での廃棄物と含水スラッジとの存在割合を即座に変更することができる。
【0011】
また、前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物と、前記含水スラッジと、前記廃棄物と、をそれぞれ投入するように構成してもよい。
この場合、廃棄物と含水スラッジとを予め混合させることで廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑えることができるとともに、含水スラッジを単独で投入することによって内部温度の変化に応じて炉本体内部での廃棄物と含水スラッジとの存在割合を即座に変更することができる。また、廃棄物自体も単独で炉本体に投入できるので、炉本体の内部温度を即座に上昇させることもできる。
【0012】
本発明の金属の製造方法は、ロータリーキルン炉を用いた金属の製造方法であって、
前記ロータリーキルン炉の炉本体に、金属を含む廃棄物と含水スラッジとを投入するとともに、前記炉本体の内部温度を測定し、その温度データに基いて前記炉本体内部への前記含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整し、前記炉本体内部の温度分布を制御しながら燃焼させ、前記炉本体の出口から流下させられる溶融物から金属を分離回収することを特徴とする。
また、本発明の金属は、前述の金属の製造方法によって製造され、銅:0〜85質量%、金:0〜200g/T、銀:0〜2000g/T、残部が鉄及び不可避不純物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、廃棄物のばらつきによる燃焼状態の変動を抑制して、炉本体の寿命延長を図ることができるロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法及び金属の製造方法、並びにロータリーキルン炉を用いた金属の製造方法によって製造される金属を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして説明する。図1に、本発明の実施形態である廃棄物の処理方法及び金属の製造方法に用いられるロータリーキルン炉を示す。
このロータリーキルン炉1は、廃棄物及び含水スラッジが投入される炉本体2と、この炉本体2の内部で燃焼する燃焼バーナー(図示なし)と、炉本体2の内部温度を測定する温度測定手段4と、炉本体2から排出される排気ガスが導入される二次燃焼室(図示なし)と、炉本体2の内部で生成したスラグが冷却される冷却器(図示なし)と、炉本体2に廃棄物及び含水スラッジを投入するための投入部10と、を備えている。
ここで、廃棄物としては、例えば自動車のシュレッダーダストや、廃家電品、プリント基板などが挙げられる。なお、本実施形態では、金属を含む廃棄物を処理する。
【0015】
炉本体2は、軸線に沿って延びる円筒状をなしており、上流側の端面には蓋部5が設けられ、この蓋部5に前記燃焼バーナーが配設されている。また、下流側の端面は開口され、前記二次燃焼室及び前記冷却器へと連通されている。
炉本体2の内部温度を測定する温度測定手段4は、炉本体2の内部に挿入される検出部7と炉本体2に配設された送信機8と炉本体2とは分離して配設された受信機9とを備えており、この送信機8は炉本体2とともに軸線を中心として回転されながら測定した温度データを逐次受信機9へと送信するように構成されている。
【0016】
投入部10は、廃棄物が貯留される廃棄物用ホッパー11と、廃棄物を炉本体2へ投入する廃棄物投入部12と、含水スラッジが貯留されるスラッジ用ホッパー13と、含水スラッジを炉本体2へ投入するスラッジ投入部14と、廃棄物と含水スラッジとを混合する混合槽15と、混合物を炉本体2へ投入する混合物投入部16とを備えている。つまり、炉本体2には、廃棄物を単独で投入する廃棄物投入部12と、含水スラッジを単独で投入するスラッジ投入部14と、廃棄物と含水スラッジとの混合物を炉本体2へ投入する混合物投入部16との3系統の投入部が設けられているのである。
【0017】
廃棄物用ホッパー11は、廃棄物投入部12及び混合槽15に配管17で接続されており、この配管17に複数の弁18A、18Bが設けられている。また、スラッジ用ホッパー13は、スラッジ投入部14及び混合槽15とに配管19で接続されており、この配管19に複数の弁20A、20Bが設けられている。
また、投入部10には、温度測定手段4による炉本体2の内部温度の測定データに応じて弁18A、18Bを操作して廃棄物の投入量を調整する廃棄物投入量調整部21と、弁20A、20Bを操作して含水スラッジの投入量を調整するスラッジ投入量調整部22とを備えている。
【0018】
なお、本実施形態においては、廃棄物用ホッパー11には、集荷された様々な性状の廃棄物を粉砕したものが貯留されている。スラッジ用ホッパー13には、スラグ、排水汚泥、煙灰等、銅製錬所等から排出されたものが貯留されている。ここで、スラッジの厚みは1〜100mm、スラッジを構成する粒径サイズは数十μm〜数cm、好ましくは数百μm〜数mmとされている。これらは、スラッジ用ホッパー13内で水分10〜50%、好ましくは10〜30%に調整されている。
さらに、混合槽15では、廃棄物と含水スラッジとが重量比で、廃棄物/含水スラッジ=9.5〜0.5となるように混合されている。なお、この混合比率は廃棄物の性状に合わせて設定することが好ましい。
【0019】
また、前記二次燃焼室には、炉本体2から排出される排気ガスをさらに燃焼するための二次バーナーが配設されている。
また、前記冷却器は、炉本体2で溶解された不燃物成分(金属等)で構成されたスラグを冷却する水冷手段を備えている。
【0020】
次に、このロータリーキルン炉1による廃棄物の処理方法及び金属の製造方法の手順について説明する。
炉本体2を軸線を中心として回転させるとともに、燃焼バーナー3を点火して炉本体2の内部を800〜1200℃程度に加熱する。さらに、前記二次燃焼室の二次バーナーを点火するとともに、前記冷却器の水冷手段に冷却水を流通する。
【0021】
この状態で、弁18A、18Bを開けて廃棄物投入部12を介して廃棄物を炉本体2の内部に投入する。すると、廃棄物に含有された可燃物が燃焼して炉本体2の内部温度が上昇する。炉本体2の内部温度が十分に上昇したら、廃棄物投入部12からの投入を中断し、廃棄物と含水スラッジとの混合物を混合物投入部16を介して炉本体2の内部に投入する。
【0022】
炉本体2の内部に投入された混合物は、可燃物が分解されてガス化するとともに、金属を含む不燃性成分が溶融状態または半溶融状態のスラグとなる。また、含水スラッジの水分が蒸発されるとともに、スラッジ自体も加熱される。
生成したガス成分は、炉本体2の下流側開口部から前記二次燃焼室に送られ、二次バーナーによってさらに高温に燃焼され、排出口から煤煙処理工程(図示なし)に向けて排出される。また、炉本体2の内部で生成したスラグは、炉本体2の下流側開口部から流下し、前記冷却器で冷却されて破砕され、例えば磁気選鉱装置(図示なし)、テーブル浮選などの比重分離装置、篩い分けなどによって金属の砕塊とスラグの砕塊とに分別され、有用な金属が回収、製造される。ここで、本実施形態である金属の製造方法によって製造される金属は、銅:0〜85質量%、金:0〜200g/T、銀:0〜2000g/T、残部が鉄及び不可避不純物からなる。この金属の好ましい濃度は、鉄:15〜80質量%、銅:20〜85質量%、金:10〜200g/T、銀:200〜2000g/Tである。また、この金属は燃え残りの炭素含有量が少なく、金属濃度の均一性が高いという特徴を有している。そして、この金属は、例えば銅製錬炉に投入することによって、銅、金、銀をそれぞれ分離して回収することが可能となる。
【0023】
このようにして廃棄物の処理を実施している際には、温度測定手段4によって炉本体2の内部温度を測定し、送信機8から受信機9へと測定データを送信する。この測定データに基いて廃棄物投入量調整部21と、スラッジ投入量調整部22とによって廃棄物及び含水スラッジが炉本体2の内部に投入される。詳述すると、炉本体2の内部温度が低下した場合には、廃棄物投入量調整部21によって弁18Bを開放して廃棄物を単独で投入し、燃焼を促進する。一方、炉本体2の内部温度が上昇した場合には、スラッジ投入量調整部22によって弁20Bを開放して含水スラッジを単独で投入し、炉本体2内部の燃焼を抑制する。これにより、炉本体2の内部温度を調整する。
【0024】
このような構成とされた本発明の実施形態であるロータリーキルン炉1を用いた廃棄物の処理方法及び金属の製造方法においては、炉本体2に廃棄物を投入する廃棄物投入部12と含水スラッジを投入するスラッジ投入部14によって、廃棄物及び含水スラッジが炉本体2の内部に投入されるので、廃棄物の急激な燃焼を防止して炉本体2内部の局所的な温度上昇を抑制することができ、耐火物層の劣化を防止して炉本体2の寿命延長を図ることができる。
【0025】
また、炉本体2の内部温度を測定する温度測定手段4による測定データに応じて含水スラッジの投入量を調整するスラッジ投入量調整部22と、廃棄物の投入量を調整する廃棄物投入量調整部21とを備えているので、含水スラッジの投入量及び廃棄物の投入量と調整することで、炉本体2の内部温度を調整することが可能となり、安定した操業を行うことができる。
【0026】
また、廃棄物と含水スラッジを混合する混合槽15と、この混合槽15で混合された混合物を炉本体2の内部に投入する混合物投入部16とを備え、炉本体2に廃棄物と含水スラッジとを予め混合した混合物を投入することで廃棄物の性状のばらつきを抑えて、燃焼状態を安定化することができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、混合物投入部16とスラッジ投入部14と廃棄物投入部12とがそれぞれ別体に配設され、3系統の投入部を有しているので、含水スラッジ及び廃棄物を炉本体2の内部にそれぞれ単独で投入することができる。したがって、炉本体2の内部温度が高温又は低温になったタイミングで含水スラッジ又は廃棄物を炉本体2に投入することにより、炉本体2の内部温度を低下又は上昇させることができる。また、含水スラッジ及び廃棄物を単独で投入できるので、内部温度の変化に応じて炉本体2内部での廃棄物と含水スラッジとの存在割合を即座に変更することができ、炉本体2の内部温度の調整をすばやく行うことができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態であるロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法及び金属の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、廃棄物の性状や含水スラッジの性状については、実施形態に限定されることはなく、様々な性状のものを適用することができる。
【0029】
また、混合槽において廃棄物と含水スラッジとを混合して炉本体に投入するものとして説明したが、これに限定されることはなく、廃棄物及び含水スラッジをそれぞれ単独で炉本体の内部に投入するような構成としてもよい。この場合、含水スラッジと廃棄物とを予め混合していないため、炉本体の内部温度の上昇が認められた場合にのみ含水スラッジを投入することが可能となる。これにより、炉本体2への廃棄物の投入割合を大きくして処理効率を向上させることができるとともに、含水スラッジによるエネルギーロスを小さく抑えることが可能となる
また、炉本体の内部で生成したスラグは、冷却・破砕後、金属とスラグに分別するものとして説明したが、破砕後、分別せずに全てを銅製錬炉に投入することも可能である。
【0030】
さらに、本実施形態において製造される金属の組成は、処理する廃棄物に含まれる金属の割合によって変動することになるが、銅:0〜85質量%、金:0〜200g/T、銀:0〜2000g/T、残部が鉄及び不可避不純物からなるものであればよい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の効果を確認するために行った確認実験について説明する。
〔実施例1〕
約8cmから10cmのシュレッダーダストを20mm程度に粉砕し、風力選別により可燃物と不燃物とに選別した。このようにして選別された可燃物と水分20%の含水スラッジとを混合槽で混合した。混合比率(重量比)はシュレッダーダスト70%、含水スラッジ30%とした。この混合物をロータリーキルン炉の炉本体(直径0.6m、長さ3m)に投入し、炉本体を1rpmで回転させながら燃焼させ、炉本体の内部温度の分布を測定した。また、炉本体下流側に形成された溶融スラグを炉本体下流側開口部から流下させ、冷却器中で冷却・破砕した後、生成物を比重分離装置にかけて金属のみを回収した。このとき得られた金属は、鉄:55質量%、銅:45質量%、銀:500g/T、金:65g/Tの組成であった。
〔実施例2〕
混合比率をシュレッダーダスト80%、含水スラッジ20%とした混合物をロータリーキルン炉の炉本体に投入し、炉本体を1rpmで回転させながら燃焼させ、炉本体の内部温度の分布を測定した。
〔実施例3〕
シュレッダーダストと含水スラグとを混合せずに、それぞれ単独で連続的に炉本体に投入し、炉本体を1rpmで回転させながら燃焼させ、炉本体の内部温度の分布を測定した。このときの投入量の割合をシュレッダーダスト70%、含水スラッジ30%とした。
〔実施例4〕
シュレッダーダストと含水スラグとを混合せずに、それぞれ単独で1分間隔で炉本体に投入し、炉本体を1rpmで回転させながら燃焼させ、炉本体の内部温度の分布を測定した。このときの投入量の割合をシュレッダーダスト70%、含水スラッジ30%とした。
〔比較例〕
シュレッダーダストを単独で炉本体に投入して燃焼させ、炉本体の内部温度の分布を測定した。
【0032】
これらの温度測定結果を図2及び図3に示す。比較例では、投入口の近くで大きく温度上昇して炉本体の下流側では温度が低くなっている。つまり、シュレッダーダストが投入した直後に一気に燃焼して燃焼帯が広がらずに局所的に温度が上昇してしまった。
一方、実施例1、2、3、4では、最高温度も低く炉本体内部での温度分布が比較的緩やかであることが確認される。また、実施例1と実施例2とを比較すると、含水スラッジの割合が多いと最高温度が低くなることが確認された。
【0033】
さらに、実施例1、2と実施例3、4とを比較すると、予め含水スラッジとシュレッダーダストとを混合した場合と、炉本体にそれぞれ単独で投入した場合とでは大きな差が認められず、どちらも炉本体の局所的な温度上昇を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態である廃棄物の処理方法及び金属の製造方法に用いられるロータリーキルン炉を示す説明図である。
【図2】実施例の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1 ロータリーキルン炉
2 炉本体
3 燃焼バーナー
4 温度測定手段
10 投入部
12 廃棄物投入部
14 スラッジ投入部
15 混合槽
16 混合物投入部
21 廃棄物投入量調整部
22 スラッジ投入量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルン炉を用いた廃棄物の処理方法であって、
前記ロータリーキルン炉の炉本体に、廃棄物と含水スラッジとを投入するとともに、
前記炉本体の内部温度を測定し、その温度データに基いて前記炉本体内部への前記含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整し、前記炉本体内部の温度分布を制御することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記含水スラッジと前記廃棄物がそれぞれ単独で前記炉本体に投入されることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物を投入し、前記温度データに基いて前記含水スラッジと前記廃棄物との混合比を調整することにより、前記炉本体内部の温度分布を制御することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物と、前記含水スラッジとをそれぞれ投入することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記炉本体に、前記含水スラッジと前記廃棄物との混合物と、前記含水スラッジと、前記廃棄物と、をそれぞれ投入することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
ロータリーキルン炉を用いた金属の製造方法であって、
前記ロータリーキルン炉の炉本体に、金属を含む廃棄物と含水スラッジとを投入するとともに、前記炉本体の内部温度を測定し、その温度データに基いて前記炉本体内部への前記含水スラッジの投入量及び前記廃棄物の投入量のうち少なくとも一方を調整し、前記炉本体内部の温度分布を制御しながら燃焼させ、前記炉本体の出口から流下させられる溶融物から金属を分離回収することを特徴とする金属の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された金属の製造方法によって製造され、銅:0〜85質量%、金:0〜200g/T、銀:0〜2000g/T、残部が鉄及び不可避不純物からなることを特徴とする金属。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−63286(P2009−63286A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206135(P2008−206135)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】