説明

廃棄物乾燥システム及び廃棄物乾燥方法

【課題】処理対象廃棄物(特に、生ゴミ)が多量の水分を含有していたとしても、その水分をも適正に処理することを可能にする。
【解決手段】廃棄物乾燥システム100は、水分を含有した廃棄物を脱水し分離水114を取り出す脱水ユニット110と、分離水114を分離した後の廃棄物115を乾燥させる乾燥ユニット120と、分離水114と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成し、蒸気を乾燥ユニット120に供給する蒸気生成ユニット130と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物乾燥システム及び廃棄物乾燥方法に関し、特に、生ゴミなどの水分を含有する廃棄物を対象とする廃棄物乾燥システム及び廃棄物乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミ処理機の一例として特開2008−29908号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
【0003】
図6は特許文献1に記載された生ゴミ処理機の縦断面図である。図6に示された生ゴミ処理機1000は、生ゴミを投入する投入口1011を有する処理機本体1010と、投入口1011に上部が連通しており、投入された生ゴミを収容するとともに、下方に排出口1021を有する処理槽1020と、処理槽1020の外壁に取り付けられ、処理槽1020内の生ゴミを加熱し、乾燥させるヒータ1030と、処理槽1020の排出口1021を遮蔽するように配設され、処理槽1020内のゴミ(乾燥したゴミ)を粉砕する一対の粉砕ローラ1040と、粉砕ローラ1040の下方に配置され、粉砕ローラ1040により粉砕されたゴミを収容する廃棄物容器1050と、から構成されている。
【0004】
図6に示された生ゴミ処理機1000においては、投入口1011から投入された生ゴミは処理槽1020の内部において処理槽1020内を落下しつつ、ヒータ1030により乾燥させられる。ヒータ1030により乾燥状態となったゴミは粉砕ローラ1040により粉砕され、廃棄物容器1050の内部に落下する。
【0005】
【特許文献1】特開2007−105565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示した生ゴミ処理機1000においては、生ゴミをそのまま処理槽1020に投入しているが、実際の生ゴミは多量の水分を含有しているため、処理槽1020の内部においてヒータ1030により生ゴミを加熱するとしても、生ゴミを乾燥させるまでには長時間を要し、粉砕ローラ1040がゴミを粉砕する時点において、生ゴミが十分に乾燥していないことが起こり得る。生ゴミが十分に乾燥していないと、粉砕ローラ1040によってゴミを十分に粉砕することは不可能となる。
【0007】
また、仮に、生ゴミを処理槽1020に投入する前に生ゴミを脱水処理するとしても、生ゴミから分離した分離水を別途処理しなければならず、分離水処理用の設備を用意しなければならない。
【0008】
本発明は以上のような従来の生ゴミ処理機における問題点に鑑みてなされたものであり、処理対象廃棄物(特に、生ゴミ)が多量の水分を含有していたとしても、その水分をも適正に処理することを可能にする廃棄物乾燥システム及び廃棄物乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、水分を含有した廃棄物を脱水し分離水(114)を取り出す脱水ユニット(110)と、前記分離水(114)を分離した後の前記廃棄物(115)を乾燥させる乾燥ユニット(120)と、前記分離水(114)と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成し、前記蒸気を前記乾燥ユニット(120)に供給する蒸気生成ユニット(130)と、からなる廃棄物乾燥システム(100)を提供する。前記分離水(114)の固形分濃度は15%(重量%)以下であることが好ましい。
【0011】
前記蒸気生成ユニット(130)は、例えば、前記分離水(114)を貯蔵する第一タンク(131)と、前記重油を貯蔵する第二タンク(132)と、前記第一タンク(131)から供給される前記分離水(114)と前記第二タンク(132)から供給される前記重油との混合物を燃焼させるエマルジョンバーナー(133)と、前記エマルジョンバーナー(133)により加熱され、蒸気を発生するボイラ(134)と、から構成することができる。
【0012】
また、前記乾燥ユニットは、例えば、前記分離水(114)を分離した後の前記廃棄物(115)を前記脱水ユニット(110)から投入する投入ホッパ(121)と、前記投入ホッパ(121)内の前記廃棄物(115)を乾燥させる乾燥機(122)と、前記乾燥機(122)から排出される蒸気を前記投入ホッパ(121)に導入する蒸気用パイプ(241)と、から構成することができる。
【0013】
本発明に係る廃棄物乾燥システム(200)は、前記分離水(114)を貯蔵する第三タンク(211)と、前記重油を貯蔵する第四タンク(212)と、前記第三タンク(211)から供給される前記分離水(114)と前記第四タンク(212)から供給される前記重油との混合物を燃焼させる第二エマルジョンバーナー(213)と、前記第二エマルジョンバーナー(213)に加熱され、対象物の脱臭を行う脱臭装置(220)と、前記投入ホッパ(121)を通過した後の前記蒸気を前記脱臭装置に(220)導入する第二蒸気用パイプ(242)と、を追加的に備えることができる。
【0014】
本発明に係る廃棄物乾燥システム(300)は、前記分離水(114)が15%(重量%)を超える固形分を含有している場合に、前記分離水(114)が含む固形分を15%(重量%)以下にする水分濃度調整手段(310)をさらに備えることができる。
【0015】
前記分離水濃度調整手段(310)は、例えば、前記分離水(114)を貯蔵するタンク(311)と、前記タンク(311)内に貯蔵されている前記分離水(114)の固形分濃度を検出する固形分濃度検出センサ(312)と、水源(313)と、前記固形分濃度検出センサ(312)が検出した前記固形分濃度が予め定められた濃度より大きい場合には、前記固形分濃度が前記予め定められた濃度になるまで、前記水源(313)から前記タンク(311)内に水を放水し、前記固形分濃度検出センサが検出した前記固形分濃度が前記予め定められた濃度以下である場合に、前記タンク(311)内の分離水(114)をそのまま前記蒸気生成ユニット(130)に放水する制御ユニット(314)と、から構成することができる。
【0016】
本発明は、さらに、水分を含有した廃棄物を脱水し分離水(114)を取り出す脱水過程と、前記分離水(114)と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成する蒸気生成過程と、前記蒸気生成過程において生成された蒸気を用いて、前記分離水(114)を分離した後の前記廃棄物(115)を乾燥させる乾燥過程と、を備える廃棄物乾燥方法を提供する。前記分離水(114)の固形分濃度は15%(重量%)以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る廃棄物乾燥方法は、前記乾燥過程において排出される蒸気により、前記分離水(114)を取り出した後の前記廃棄物(115)を加熱する加熱過程をさらに備えることが好ましい。
【0018】
本発明に係る廃棄物乾燥方法は、前記分離水(114)と重油とを混合し、その混合物を燃焼させ、その燃焼熱により、前記加熱過程から排出される蒸気を脱臭する脱臭過程をさらに備えることが好ましい。
【0019】
本発明に係る廃棄物乾燥方法は、前記分離水(114)が15%(重量%)を超える固形分を含有している場合に、前記分離水(114)が含む固形分を15%(重量%)以下にする水分濃度調整過程をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る乾燥システムによれば、処理対象廃棄物である生ゴミが多量の水分を含有していたとしても、脱水ユニットがその水分を分離水として取り出し、分離水は重油とともに蒸気生成ユニットにおいて燃焼される。燃焼の結果として生じた高熱蒸気は処理対象廃棄物の乾燥処理に使用される。このように、本発明に係る乾燥システムによれば、処理対象廃棄物である生ゴミが多量の水分を含有していたとしても、その水分をも適切に処理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100の構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態に係る廃棄物乾燥システム100は、水分を含有した廃棄物を脱水し分離水を取り出す脱水ユニット110と、分離水を分離した後の廃棄物を乾燥させる乾燥ユニット120と、分離水と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成し、その蒸気を乾燥ユニット120に供給する蒸気生成ユニット130と、から構成されている。
【0023】
なお、以下の説明においては、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム100が処理する廃棄物として生ゴミを例に取る。
【0024】
脱水ユニット110は、破砕分別機111と、脱水機112と、ポンプ113と、から構成されている。破砕分別機111は、大きさが不揃いの生ゴミを適当な大きさに破砕するとともに、生ゴミに混入している金属、プラスチック、木材などの処理対象とならない廃棄物を分別し、除去する。脱水機112は、破砕分別機111を通過した生ゴミを脱水処理し、分離水114と固形物115とに分離する。ポンプ113は、脱水機112から排出された分離水114を蒸気生成ユニット130に送り込む。
【0025】
蒸気生成ユニット130は、ポンプ113を介して脱水機112から送られてくる分離水114を貯蔵する第一タンク131と、重油を貯蔵する第二タンク132と、エマルジョンバーナー133と、ボイラ134と、蒸気改質機135と、から構成されている。エマルジョンバーナー133は、分離水114と重油とを混合した結果として得られるエマルジョンを燃焼させる。ボイラ134は、エマルジョンバーナー133によるエマルジョンの燃焼の際に生成される熱を利用して、水から高熱蒸気に生成する。蒸気改質機135は、ボイラ134から放出される蒸気を改質する。ボイラ134から放出される蒸気(摂氏約100度)は、搬送配管中における凝縮、乾燥機の伝熱面における水分付着による熱伝達率の低下などの欠点を有している。このため、蒸気改質機135は、ボイラ134から放出される蒸気をさらに加熱し、過熱蒸気(摂氏約200度)とすることにより、これらの欠点を排除する。
【0026】
乾燥ユニット120は、脱水機112から固形物115が投入される投入ホッパ121と、投入ホッパ121内の固形物115を乾燥させる乾燥機122と、乾燥機122の内部において乾燥した固形物115の排出先である排出タンク123と、から構成されている。
【0027】
図2は乾燥機122の構造を示す概略的な縦断面図である。
図2に示すように、乾燥機122は、側壁に原料入り口1222及び処理物排出口1223を有する円筒形のケーシング1220と、ケーシング1220の内部においてケーシング1220の中心軸を回転中心軸として回転する回転軸1230と、回転軸1230の外周に上下方向に段違いに取り付けられた複数の攪拌板1240と、原料投入ユニット1250と、処理物排出ユニット1260と、ケーシング1220の側壁の外周面及び底部の外周面に沿って形成された中空の蒸気導入空間1270と、から構成されている。
【0028】
原料投入ユニット1250は、ケーシング1220の原料入り口1222に一端が接続され、他端が閉じており、上向きの開口部1251を有する円筒状の原料投入部1252と、原料投入部1252の内部に配置されたスクリュー1253と、から構成されている。開口部1251は投入ホッパ121と接続されており、固形物115は投入ホッパ121及び開口部1251を経て原料投入部1252の内部に達した後、スクリュー1253により、ケーシング1220の内部に搬送される。
【0029】
また、処理物排出ユニット1260は、ケーシング1220の処理物排出口1223に一端が接続され、他端が閉じており、下向きの開口部1261を有する円筒状の処理物排出部1262と、処理物排出部1262の内部に配置されたスクリュー1263と、から構成されている。
【0030】
開口部1261は排出タンク123と接続されている。ケーシング1220の内部において乾燥された固形物115はスクリュー1263により処理物排出部1262の内部を搬出され、開口部1261を経て、排出タンク123内に落下する。蒸気導入空間1270には蒸気導入口1271が形成されており、蒸気生成ユニット130のボイラ134が生成した高熱蒸気は蒸気改質機135及び蒸気導入口1271を介して蒸気導入口1271の内部に導入される。蒸気導入口1271はケーシング1220の側壁及び底部の全域にわたって形成されているため、蒸気導入口1271に導入された高熱蒸気はその熱量によってケーシング1220を外側から加熱する。
【0031】
乾燥機120は以下のように作動する。
固形物115は投入ホッパ121及び開口部1251を介して原料投入部1252の内部に投入される。原料投入部1252の内部に投入された固形物115は、スクリュー1253により、ケーシング1220の内部に搬送される。
ケーシング1220の内部においては、攪拌板1240が回転軸1230を中心として回転しているため、ケーシング1220の内部に搬送された固形物115は回転する攪拌板1240により攪拌される。
【0032】
さらに、ケーシング1220はボイラ134から蒸気導入空間1270内に導入された高熱蒸気により加熱されているため、固形物115は攪拌板1240により攪拌されつつ、乾燥する。乾燥した固形物115はスクリュー1263により処理物排出部1262の内部を搬出され、開口部1261を経て、排出タンク123内に落下する。排出タンク123に落下した固形物115は本実施形態に係る乾燥システム100から搬出され、例えば、肥料として再利用される。
【0033】
本実施形態に係る乾燥システム100によれば、処理対象廃棄物である生ゴミが多量の水分を含有していたとしても、その水分を分離水114として取り出し、分離水114は重油とともにエマルジョンバーナー133により燃焼される。燃焼の結果として生じた高熱蒸気は乾燥機122において固形物115の乾燥処理に使用される。
【0034】
このように、本実施形態に係る乾燥システム100によれば、処理対象廃棄物である生ゴミが多量の水分を含有していたとしても、その水分をも適切に処理することが可能である。
【0035】
本実施形態に係る乾燥システム100は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。例えば、乾燥機122の構造は図2に示したものに限定されるものではなく、高熱蒸気を利用して対象物を乾燥させる構造を有するものである限りにおいて、他の構造の乾燥機を使用することも可能である。
【0036】
(第二の実施形態)
図3は本発明の第二の実施形態に係る廃棄物乾燥システム200の構成を示すブロック図である。
【0037】
本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200は、第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100と比較して、分離水114と重油とを混合し、その混合物を燃焼させる燃焼ユニット210と、脱臭装置220と、コンデンサ230と、乾燥機122から放出された蒸気を投入ホッパ121及びコンデンサ230を経て脱臭装置220に導入する高熱蒸気用パイプ群240と、から構成されている。
【0038】
燃焼ユニット210は、ポンプ113を介して脱水機112から送られてくる分離水114を貯蔵する第三タンク211と、重油を貯蔵する第四タンク212と、エマルジョンバーナー213と、から構成されている。エマルジョンバーナー213は、分離水114と重油とを混合した結果として得られるエマルジョンを燃焼させる。
【0039】
高熱蒸気用パイプ群240は、乾燥機122から放出される蒸気を投入ホッパ121の内部に導入する第一蒸気用パイプ241と、第一蒸気用パイプ241を介して投入ホッパ121に導入された蒸気を投入ホッパ121からコンデンサ230に導入する第二蒸気用パイプ242と、コンデンサ230から放出された蒸気を脱臭装置220に導入する第三蒸気用パイプ243と、からなる。
【0040】
なお、本実施形態においては、乾燥機122の天面に蒸気排出口が形成されており、乾燥機122内の蒸気はこの蒸気排出口から第一蒸気用パイプ241を介して投入ホッパ121の内部に導入される。
【0041】
本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200において、第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100と同様の構成部分においては、廃棄物乾燥システム100と同様の動作がなされる。以下、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200に特有の動作のみを説明する。
【0042】
乾燥機122から第一蒸気用パイプ241を介して投入ホッパ121に導入された蒸気は投入ホッパ121に投入された固形物115を予備的に加熱する。このため、乾燥機122の内部に投入された固形物115を乾燥させる時間を早めることができる。
投入ホッパ121において固形物115を予備的に加熱した蒸気は固形物115が含有する臭気を吸収している。この臭気を含む蒸気は第二蒸気用パイプ242を介してコンデンサ230に送られ、コンデンサ230において、蒸気が含む水分が除去される。その後、蒸気は第三蒸気用パイプ243を介して脱臭装置220に送られる。
【0043】
脱臭装置220においては、蒸気に含まれる臭気はエマルジョンバーナー213の燃焼熱により物理的に分解される。このため、脱臭装置220からは無臭の蒸気(この段階においては、蒸気中の水分がほとんど蒸発しているため、無臭の空気になっている)が放出される。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200によれば、乾燥機122から排出される蒸気の熱により固形物115を加熱するため、固形物115は乾燥機122への投入時にはある程度温度が上昇している。このため、乾燥機122の内部において、固形物115を乾燥させる時間を短縮化することが可能である。
【0045】
また、分離水114を重油とともに燃焼させることにより、固形物115を加熱した蒸気が含有する臭気を消臭させるため、環境に与える負荷を最小限に抑えることができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200においては、必要に応じて、コンデンサ230を省略することが可能である。
【0047】
なお、本出願人は、以下の通り、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200の燃料節約の度合いを実験により確認した。
【0048】
(1)ポンプ113により分離水114を蒸気生成ユニット130に送らず、第二タンク132からの重油のみをエマルジョンバーナー133で燃焼させた場合と、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200のように、ポンプ113から分離水114を蒸気生成ユニット130に送り、分離水114を重油と混合させてエマルジョンを生成し、このエマルジョンをエマルジョンバーナー133で燃焼させた場合のそれぞれの燃料(重油)使用量を比較したところ、後者は前者に対して約25%少なかった。
【0049】
(2)乾燥機122内の蒸気を投入ホッパ121の内部に導入しない場合と、乾燥機122内の蒸気を第一蒸気用パイプ241を介して投入ホッパ121の内部に導入した場合のそれぞれの燃料(重油)使用量を比較したところ、後者は前者に対して約3%少なかった。
【0050】
(3)ボイラ134から放出される蒸気を蒸気改質機135を通過させずに直接に乾燥機122に導入した場合と、ボイラ134から放出される蒸気を蒸気改質機135を経て乾燥機122に導入した場合のそれぞれの燃料(重油)使用量を比較したところ、後者は前者に対して約3%少なかった。
【0051】
(4)ポンプ113により分離水114を燃焼ユニット210に送らず、第四タンク212からの重油のみをエマルジョンバーナー213で燃焼させた場合と、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200のように、ポンプ113から分離水114を燃焼ユニット210に送り、分離水114を重油と混合させてエマルジョンを生成し、このエマルジョンをエマルジョンバーナー213で燃焼させた場合のそれぞれの燃料(重油)使用量を比較したところ、後者は前者に対して約10%少なかった。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム200によれば、25+3+3+10=41(%)の燃料(重油)の節約が可能になる。
【0053】
(第三の実施形態)
図4は本発明の第三の実施形態に係る廃棄物乾燥システム300の構成を示すブロック図である。
【0054】
本実施形態に係る廃棄物乾燥システム300は、第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100と比較して、分離水濃度調整手段310をさらに備えている。
発明者の研究の結果、分離水114を重油とともにエマルジョンバーナー133、213により燃焼させるためには、分離水114の固形分濃度は15%(重量%)以下であることが有効であることが判明した。
【0055】
しかしながら、生ゴミは種々雑多のものを含むため、分離水114中の固形物115の濃度が15%(重量%)を超えることも多く、そのような場合には、分離水114中の固形物115の濃度を15%(重量%)以下に維持することは困難であることが多い。
このため、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム300は、分離水濃度調整手段310を設けることにより、分離水114中の固形物115の濃度を15%(重量%)以下に維持することを可能にするものである。
【0056】
図5は分離水濃度調整手段310の構造の一例を示す概略的な断面図である。
図5に示す分離水濃度調整手段310は、分離水114を貯蔵するタンク311と、タンク311内に貯蔵されている分離水114の固形分濃度を検出する固形分濃度検出センサ312と、水源313と、制御ユニット314と、から構成されている。水源313は第一開閉バルブ315を介してタンク311に放水を行う。すなわち、第一開閉バルブ315が開けば、水源313はタンク311に放水を行い、第一開閉バルブ315が閉じれば、水源313からタンク311への放水は中断する。
【0057】
また、タンク311の底部には第二開閉バルブ316が取り付けられている。第二開閉バルブ316が開くと、タンク311内の分離水114は蒸気生成ユニット130に送られ、第二開閉バルブ316が閉じると、タンク311から蒸気生成ユニット130への放水は中断する。第一開閉バルブ315及び第二開閉バルブ316の開閉は制御ユニット314により制御される。
【0058】
分離水濃度調整手段310は以下のように作動する。
固形分濃度検出センサ312はタンク311内の分離水114の固形分濃度を検出し、検出した固形分濃度を示す濃度信号を制御ユニット314に送信する。制御ユニット314は、濃度信号が示す固形分濃度が予め定められた濃度(例えば、15重量%)より大きい場合には、タンク311内の分離水114の固形分濃度が予め定められた濃度になるまで、第一開閉バルブ315を開き、水源313からタンク311内に水を放水する。
【0059】
制御ユニット314は、タンク311内の分離水114の固形分濃度が予め定められた濃度になったときに、第一開閉バルブ315を閉じる。その後、制御ユニット314は、第二開閉バルブ316を開き、タンク311内の分離水114を蒸気生成ユニット130に向けて放水する。
【0060】
一方、制御ユニット314は、濃度信号が示す固形分濃度が予め定められた濃度が予め定められた濃度以下である場合には、第二開閉バルブ316を開き、タンク311内の分離水114をそのまま蒸気生成ユニット130に放水する。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る廃棄物乾燥システム300によれば、濃度調整手段310の作用により、固形分濃度が15%(重量%)以下である分離水114を蒸気生成ユニット130に送ることが常に可能になる。
【0062】
また、図5に示すように、タンク311内に曝気ノズル317を配置することも可能である。曝気ノズル317の上部には孔が形成されている。曝気ノズル317の下方から水蒸気(例えば、ボイラ134から放出される水蒸気)を送り込み、曝気ノズル317の上部の孔から水蒸気を放出することにより、タンク311の内部の溶液を攪拌するとともに、溶液中の固形分を好気性分解(あるいは加水分解)させ、微細化することが可能になる。これにより、この固形分を含むエマルジョン(蒸気生成ユニット130において生成されるエマルジョン)がエマルジョンバーナー133で完全燃焼されることを促進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上述の第一乃至第三の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100、200、300においては、処理対象物として生ゴミを例示したが、処理対象物は生ゴミには限定されない。水分を含有する廃棄物であれば、いかなる廃棄物でも、第一乃至第三の実施形態に係る廃棄物乾燥システム100、200、300に対象にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は本発明の第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システムの一構成要素である乾燥機の構造を示す概略的な縦断面図である。
【図3】図3は本発明の第二の実施形態に係る廃棄物乾燥システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は本発明の第三の実施形態に係る廃棄物乾燥システムの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は本発明の第三の実施形態に係る廃棄物乾燥システムにおける分離水濃度調整手段の構造の一例を示す概略的な断面図である。
【図6】図6は従来の生ゴミ処理機の縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
100 本発明の第一の実施形態に係る廃棄物乾燥システム
110 脱水ユニット
111 破砕分別機
112 脱水機
113 ポンプ
114 分離水
115 固形物
120 乾燥ユニット
121 投入ホッパ
122 乾燥機
123 排出タンク
130 蒸気生成ユニット
131 第一タンク
132 第二タンク
133 エマルジョンバーナー
134 ボイラ
135 蒸気改質機
210 燃焼ユニット
211 第三タンク
212 第四タンク
213 エマルジョンバーナー
220 脱臭装置
230 コンデンサ
240 高熱蒸気用パイプ群
310 分離水濃度調整手段
311 タンク
312 固形分濃度検出センサ
313 水源
314 制御ユニット
315 第一開閉バルブ
316 第二開閉バルブ
317 曝気ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含有した廃棄物を脱水し分離水を取り出す脱水ユニットと、
前記分離水を分離した後の前記廃棄物を乾燥させる乾燥ユニットと、
前記分離水と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成し、前記蒸気を前記乾燥ユニットに供給する蒸気生成ユニットと、
からなる廃棄物乾燥システム。
【請求項2】
前記分離水の固形分濃度は15%(重量%)以下であることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項3】
前記蒸気生成ユニットは、
前記分離水を貯蔵する第一タンクと、
前記重油を貯蔵する第二タンクと、
前記第一タンクから供給される前記分離水と前記第二タンクから供給される前記重油との混合物を燃焼させるエマルジョンバーナーと、
前記エマルジョンバーナーにより加熱され、蒸気を発生するボイラと、
からなることを特徴とする請求項2に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項4】
前記乾燥ユニットは、
前記分離水を分離した後の前記廃棄物を前記脱水ユニットから投入する投入ホッパと、
前記投入ホッパ内の前記廃棄物を乾燥させる乾燥機と、
前記乾燥機から排出される蒸気を前記投入ホッパに導入する蒸気用パイプと、
からなることを特徴する請求項1乃至3の何れか一項に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項5】
前記分離水を貯蔵する第三タンクと、
前記重油を貯蔵する第四タンクと、
前記第三タンクから供給される前記分離水と前記第四タンクから供給される前記重油との混合物を燃焼させる第二エマルジョンバーナーと、
前記第二エマルジョンバーナーに加熱され、対象物の脱臭を行う脱臭装置と、
前記投入ホッパを通過した後の前記蒸気を前記脱臭装置に導入する第二蒸気用パイプと、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項6】
前記分離水が15%(重量%)を超える固形分を含有している場合に、前記分離水が含む固形分を15%(重量%)以下にする水分濃度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項7】
前記分離水濃度調整手段は、
前記分離水を貯蔵するタンクと、
前記タンク内に貯蔵されている前記分離水の固形分濃度を検出する固形分濃度検出センサと、
水源と、
前記固形分濃度検出センサが検出した前記固形分濃度が予め定められた濃度より大きい場合には、前記固形分濃度が前記予め定められた濃度になるまで、前記水源から前記タンク内に水を放水し、前記固形分濃度検出センサが検出した前記固形分濃度が前記予め定められた濃度以下である場合に、前記タンク内の分離水をそのまま前記蒸気生成ユニットに放水する制御ユニットと、
からなることを特徴とする請求項6に記載の廃棄物乾燥システム。
【請求項8】
水分を含有した廃棄物を脱水し分離水を取り出す脱水過程と、
前記分離水と重油とを混合し、その混合物を燃焼させることにより蒸気を生成する蒸気生成過程と、
前記蒸気生成過程において生成された蒸気を用いて、前記分離水を分離した後の前記廃棄物を乾燥させる乾燥過程と、
を備える廃棄物乾燥方法。
【請求項9】
前記分離水の固形分濃度は15%(重量%)以下であることを特徴とする請求項8に記載の廃棄物乾燥方法。
【請求項10】
前記乾燥過程において排出される蒸気により、前記分離水を取り出した後の前記廃棄物を加熱する加熱過程をさらに備えることを特徴とする請求項8または9に記載の廃棄物乾燥方法。
【請求項11】
前記分離水と重油とを混合し、その混合物を燃焼させ、その燃焼熱により、前記加熱過程から排出される蒸気を脱臭する脱臭過程をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の廃棄物乾燥方法。
【請求項12】
前記分離水が15%(重量%)を超える固形分を含有している場合に、前記分離水が含む固形分を15%(重量%)以下にする水分濃度調整過程をさらに備えることを特徴とする請求項8乃至11の何れか一項に記載の廃棄物乾燥方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−112612(P2010−112612A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284740(P2008−284740)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(508296761)株式会社共立 (4)
【出願人】(399042063)共立工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】