説明

廃棄物処分場の漏水検知システム

【課題】 容易に構築でき、かつ高い精度で漏水箇所を特定できるようにする。
【解決手段】 地盤の凹部に遮水シートを敷き、遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において遮水シートの漏水を検知するシステムであって、遮水シート6の下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線24と、遮水シート6を挟んで抵抗線24と反対側に、抵抗線24に近接して抵抗線24とほぼ同じ方向に敷設された導電線28と、導電線28の一端と抵抗線24の一端との間に、電流計40を介して接続した定電流源36と、抵抗線24の両端の電圧を測定する電圧計42とを備え、抵抗線24と導電線28との組みは、間隔をおき遮水シートに沿って複数設けられている。破口70が生じると、水72が漏水し、導電線28と抵抗線24とがその箇所で電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地盤の凹部に遮水シートを敷き、遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において遮水シートの漏水を検知するシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】都市部などで発生する大量の廃棄物を処分する1つの方法として、地盤の凹部に遮水シートを敷き、遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させ、最終的に土中に埋設するという方法が採られている。廃棄物中には人体に有害な物質が含まれている場合があり、また、堆積した廃棄物中で何らかの化学反応が起り、有害物質が発生する場合もある。これらの有害物質は、雨水などに混ざり地盤中に染み込むと、地下水が汚染され、環境破壊の原因となる。上記遮水シートは、このような有害物質が地盤中に染み込むことを阻止するために設けられている。
【0003】遮水シートは、合成樹脂や合成ゴムにより形成され、十分な強度を備え、さらに、二重化することで一層の強化が図られているが、それでも投棄された廃棄物により損傷を受けたり、あるいは経年変化のために劣化して、破損することを想定しておくことがより無難である。このような破損が生じると、その箇所を通じて漏水が発生し、有害物質の阻止は不可能となってしまう。
【0004】そこで、遮水シートの破損を早期に検出し、漏水を阻止すべく対策を講じることが重要である。遮水シートを通じた漏水を検知するシステムとしては、遮水シートを挟んで電流を流すことで漏水の有無を検知し、さらに漏水箇所を特定するシステムが知られている。すなわち、遮水シートの下側に複数の導電線を間隔をおいて平行に敷設し、遮水シートの上側には複数の導電線を間隔をおいて、下側の導電線と直交させて敷設する。そして、上下の各導電線間に電圧を印加し、電流が流れるか否かを調べる。その結果、上側の特定の導電線と、下側の特定の導電線との間で電流が流れた場合には、これらの導電線の交点の近傍で、遮水シートが破損していることが分る。また、別のシステムとして、遮水シートの上側に電極をマトリクス状に配置し、遮水シートの上下に電圧を印加した際の電界強度を各電極により測定して、電流強度の分布を算出するというシステムなども考案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、導電線を敷設する上記漏水検知システムでは、上下の導電線を交差させて敷設する必要があり、導電線の敷設に手間と時間がかかる。また、上下の導電線の交点の間隔以上に、漏洩箇所の特定精度を高めることはできない。一方、電界強度を測定するシステムでは、多数の電極をマトリクス状に配置しなければならず、電極の配置に手間と時間がかかる上、各電極と関連機器とを接続するケーブルの本数も膨大となる。さらに、比抵抗の分布の測定も必要であり、そして、測定結果から電界強度を求めるためにも、複雑な演算を行わなければならない。本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、容易に構築することができ、かつ高い精度で漏水箇所を特定できる廃棄物処分場の漏水検知システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電体と、前記導電体と前記抵抗線間に定電流を供給する定電流源と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線は、間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。本発明はまた、地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電体と、前記導電体と前記抵抗線間に電流を供給する電流源と、前記抵抗線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線は、間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。本発明はまた、前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記抵抗線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、前記導電体が敷設されたことを特徴とする。本発明はまた、地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電線と、前記導電線の一端と前記抵抗線の一端との間に接続された定電流源と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線と前記導電線との組みは、間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
【0007】本発明はまた、地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電線と、前記導電線の一端と前記抵抗線の一端との間に接続された電流源と、前記抵抗線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線と前記導電線との組みは、間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。本発明はまた、前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記抵抗線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、1本の前記抵抗線とそれぞれ組みを成す前記導電線が敷設されたことを特徴とする。本発明はまた、前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記導電線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、1本の前記導電線とそれぞれ組みを成す前記抵抗線が敷設されたことを特徴とする。本発明はまた、前記抵抗線に電流を供給する電流供給手段と、前記電流供給手段により前記抵抗線に電流を供給したとき前記抵抗線に電流が流れるか否かを検出する電流検出手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0008】本発明の廃棄物処分場の漏水検知システムでは、遮水シートが破損して漏水が発生すると、その箇所で抵抗線と導電体とは電気的に導通状態となる。その結果、抵抗線に電流が流れ、抵抗線で電圧降下が生じるため、電圧測定手段による電圧の測定結果は零ではなくなる。これによりまず、どの抵抗線の近傍で漏水が発生しているかが分る。そして、電圧測定手段が測定した電圧をV、定電流源が供給する電流をIとすると、漏水箇所近傍の抵抗線の箇所と抵抗線の端部との間の抵抗値はV/Iとなるので、抵抗線の単位長さ当たりの抵抗値がrであれば、抵抗線の端部から漏水箇所までの距離はV/(Ir)となる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は実施例の漏水検知システムにおける漏水箇所特定の原理を説明するための原理図、図2は実施例の漏水検知システムの一例の要部を示す断面側面図、図3は同平面図、図4は実施例の漏水検知システムの回路図、図5は実施例の漏水検知システムを備えた廃棄物処分場の全体を示す断面側面図である。
【0010】本実施例の廃棄物処分場の漏水検知システムは、図5に示したように、地盤の凹部2に二重の遮水シート、すなわち第1および第2の遮水シート4,6を敷き、これらの遮水シート上に廃棄物8を投棄して堆積させる廃棄物処分場10に設けられている。
【0011】図2は、遮水シートの一部を拡大して示した断面図であり、地盤12上にまず第1のフェルト層14が形成され、その上に第1の遮水シート4が敷かれている。第2の遮水シート6は第2のフェルト層16を挟んで第1の遮水シート4の上に敷かれており、第2の遮水シート6の上にはさらに第3のフェルト層18が形成され、第3のフェルト層18の上には覆土層20が形成されている。
【0012】図2、図3に示したように、本実施例の漏水検知システム22は、抵抗線24と第1および第2の導電線26,28(特許請求の範囲の導電体と導電線に相当)とを含んでいる。そして、抵抗線24は、単位長さ当たりの抵抗値が既知であり、第1および第2の遮水シート4,6の間に敷設されている。また、第1の導電線26は、第1の遮水シート4の下側に、したがって第1の遮水シート4を挟んで抵抗線24と反対側に、抵抗線24に近接して抵抗線24とほぼ同じ方向に敷設されている。一方、第2の導電線28は、第2の遮水シート6の上側に、したがって第2の遮水シート6を挟んで抵抗線24と反対側に、抵抗線24に近接して抵抗線24とほぼ同じ方向に敷設されている。第1および第2の遮水シート4,6の間にはまた、被覆導電線30が抵抗線24に近接して抵抗線24と同じ方向に敷設され、その一端は抵抗線24の一方の端部に電気的に接続されている。抵抗線24は、組みを成す第1および第2の導電線26,28ならびに被覆導電線30と共に、本実施例では、図3に示したように、10本が間隔をおいて(例えば10m程度の間隔で)ほぼ平行に敷設されている。
【0013】この廃棄物処分場の漏水検知システム22はさらに、図4に示したように、第1および第2の電流源34,36、第1および第2の電流計38,40、電圧計42、ならびに切り換えスイッチ44を備えている。第1および第2の電流源34,36は第1および第2の導電線26,28を通じて電流を流すために設けられ、第1および第2の電流計38,40はその電流値を測定するためのものであり、一方、電圧計42は、各抵抗線24の両端の電圧を測定するためのものである。
【0014】第1の電流源34の一方の端子64は第1の電流計38の一方の端子48に接続され、第1の電流計38のもう一方の端子50は切り換えスイッチ44を介して第1の導電線26に接続されている。また、第2の定電流源36の一方の端子66は第2の電流計40の一方の端子56に接続され、第2の電流計40のもう一方の端子58は切り換えスイッチ44を介して第2の導電線28に接続されている。そして、電圧計42のもう一方の端子60は切り換えスイッチ44を介して各被覆導電線30の一方の端部62に接続される構成となっている。なお、被覆導電線30の他端は上述のように各抵抗線24のもう一方の端部に接続されている。
【0015】切り換えスイッチ44は、第1および第2の電流計38,40を通じて第1および第2の電流源34,36、ならびに電圧計42を、抵抗線24およびその抵抗線24と関連する第1および第2の導電線26,28ならびに被覆導電線30の各組みに対して切り換えて接続するためのものであり、4回路10接点の構成となっている。
【0016】そして、この切り換えスイッチ44を通じて、第1の電流源34の端子64は第1の電流計38を通じて各第1の導電線26の一端に接続され、第2の電流源36の端子66は第2の電流計40を通じて各第2の導電線28の一端に接続される。また、同時に、電圧計42の端子52は各抵抗線24の一方の端部68および電流源34および36のマイナス端子71に接続され、電圧計42のもう一方の端子60は各被覆導電線30の一方の端部62に接続される。なお、被覆導電線30の他端は上述のように同じ組みの抵抗線24のもう一方の端部32に接続されている。
【0017】次に、遮水シートの漏水箇所をいかに特定するかについて詳しく説明する。図1は第2の遮水シート6周辺の側断面を簡略化して示しており、ここでは第2の遮水シート6に生じた破損箇所を特定する場合を例に説明する。したがって、図1では、不必要に複雑になることを避けるため、第1の遮水シート4や第1の導電線26、ならびに第1の電流源34などは省略されている。また、同じ理由で、切り換えスイッチ44も省略し、図1に示した特定の抵抗線24および関連する導電線などが電流源などに接続された状態が示されている。なお図1と図4とで電流計40の接続位置がちがっているが、抵抗線24に流れる電流が測定できる位置であればどこでもかまわない。
【0018】図1に示したように、第2の遮水シート6が破損して、破口70が生じると、第2の遮水シート6上の水72は、この破口70を通じて第2の遮水シート6の下側に漏水する。その結果、この水72によって破口70の箇所を通じて第2の遮水シート6の上側の第2の導電線28と下側の抵抗線24とは電気的に接続され、第2の定電流源36、第2の導電線28の一部、抵抗線24の一部、ならびに第2の電流計40による電気的な直列回路が形成されて、第2の電流源36が供給する電流は点線Aで示すように流れる。なお、第2の電流源36からの電流は、抵抗線24を破口70の箇所から端部32の方向にも流れるが、電圧計42の入力インピーダンスは十分に大きいため、この電流は無視できる程度のものである。
【0019】点線Aで示したように電流が流れる結果、抵抗線24の破口70近傍の箇所と端部68との間で電圧が発生する。電圧計42は被覆導電線30を通じて抵抗線24の両端に接続されているので、電圧計42は抵抗線24の両端の電圧を測定することになる。しかし、上述のように破口70の箇所から端部68の方向には実質的に電流は流れないので、この区間では電圧降下は発生せず、電圧計42が測定する電圧は、抵抗線24における破口70近傍の箇所と端部68との間で発生した電圧となる。
【0020】したがって、電圧計42が測定した電圧をVボルト、第2の電流計40が測定した電流をIアンペアすると、抵抗線24の破口70近傍の箇所と端部68との間の抵抗値はV/Iオームとなる。これより、抵抗線24の単位長さ当たりの抵抗値がrオーム/メートル(既知)であるとすると、抵抗線24の端部68から破口70近傍の箇所までの距離は、
【0021】
【数1】V/(Ir)メートルとなる。なお、ここでは第2の遮水シート6に破損が生じた場合を例に説明したが、第1の遮水シート4に関しては、抵抗線24が上側に、第1の導電線26は下側に敷設されてはいるものの、遮水シートを挟んで抵抗線24と導電線とが敷設されているという点では同じであるため、第1の遮水シート4に関しても同様の原理で漏水の有無を検知でき、そして漏水箇所までの距離を算出することができる。
【0022】次に、漏水を検査する場合の具体的な手順について説明する。まず、図3に示した各抵抗線24と関連する導電線の組みに対して、切り換えスイッチ44(図4)を操作して順次、第1および第2の電流源34,36などを切り換えて接続していく。その結果、いずれかの抵抗線24の近傍で、第1または第2の遮水シート4,6において漏水が生じていた場合には、第1または第2の電流計38,40の測定結果が零ではなくなる。これにより、まず、その抵抗線24に沿ったいずれかの箇所で漏水が発生していることが分る。その後、その抵抗線24に関して、第1または第2の電流計38,40および電圧計42の測定結果と、抵抗線24の単位長当たりの抵抗値とにより、[数1]にしたがって抵抗線24の端部68(図4)から漏水箇所までの距離を算出する。
【0023】このように、本実施例の廃棄物処分場の漏水検知システム22では、まず、第1および第2の電流計38,40の測定結果が零でないかどうかにより漏水の有無を検知でき、そして、漏水を検知したときは、抵抗線24の端部62から第1または第2の遮水シート4,6の漏水箇所までの距離を、電圧計42および第1または第2の電流計38,40の測定結果から簡単な計算式により容易に算出することができる。そして、この廃棄物処分場の漏水検知システム22では、抵抗線24の配列方向での、漏水箇所の特定精度は抵抗線24の間隔により制限されるものの、抵抗線24の延在方向での精度に関してはそのような制限はなく、極めて正確に漏水箇所の位置を特定できる。さらに、抵抗線24、第1および第2の導電線26,28、ならびに被覆導電線30は、互いに交差させたりする必要はなく、すべて単に同一方向に延在させればよい。したがってシステムの構築が容易であり、作業時間の短縮や作業人員の削減を実現できる。さらには通常導電線28が敷設されている遮水シート6のフェルト層18側部分は、水分もしくは覆土層20の影響で、すべて同電位となることがあり、この場合抵抗線24が何本あろうと1つの点状、面状または線状の導電体で同様の効果を得られる。この場合、図4R>4において電流計40の一方の端子58は切り換えスイッチ44を介さず、1つの導電体に接続すればよい。また、導電線26が敷設されている遮水シート4のフェルト層14側部分についても水分もしくは地盤12の影響で同様のことが言える。
【0024】以上、本発明について実施例をもとに詳しく説明したが、これはあくまでも一例であり、本発明はこの例に限定されることなく種々の形態で実施できる。たとえば、上記実施例では、2つの電流源と2つの電流計を設けたが、共に1台だけとして、切り換えスイッチにより第1および第2の導電線26,28の一方に切り換えて接続する構成とすることも無論可能であり、遮水シート4および6がほぼ同時期に破損した場合等は、さらにどちらの遮水シートがどの位置で破損しているかを検知することが可能となる。なお、このとき電流計を電流源と導電線間でなく、電圧計42の端子52と電流源のマイナス端子71間に挿入しても同様である。また、第1および第2の電流源34,36が供給する電流の値が正確に決っている(たとえば定電流源である)場合には、電流計で測定する必要はないので、第1および第2の電流計38,40を削除することも可能である。その場合、漏水の有無は電圧計42の測定値が零か否かにより知ることができる。
【0025】そして、上記実施例では、第1および第2の遮水シート4,6の間に抵抗線24を敷設するとしたが、第1および第2の遮水シートの間に1本の導電線を敷設し、第1の遮水シート4の下側に、上記導電線と組みを成す抵抗線を敷設し、さらに第2の遮水シートの上側に上記導電線と組みを成すもう1本の抵抗線を敷設する構成としても上記実施例と同じ機能を実現でき、したがって同じ効果を得ることができる。また、抵抗線24の端部68と被覆導電線30の端部62との間に、必要に応じて例えば電源と電流計との直列回路を接続することで、抵抗線の断線検査を行うことも可能である。すなわち、抵抗線24が正常なら抵抗線24および被覆導電線30を通じて電流が流れ、電流計はある大きさの電流が流れていることを示すので、そのことから抵抗線24は正常であると判定できる。一方、電流計が示す電流値が零のときは抵抗線24の断線を疑うことになる。さらに、上記実施例では、遮水シートが二重化されているとしたが、遮水シートが二重化されていない場合にも本発明は無論有効であり、第1および第2の導電線26,28の一方、および関連する電流源と電流計を削除した構成とすることで同様のシステムを構成できる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明の廃棄物処分場の漏水検知システムでは、遮水シートが破損して漏水が発生すると、その箇所で抵抗線と導電線とは電気的に導通状態となる。その結果、抵抗線に電流が流れ、抵抗線で電圧降下が生じるため、電圧測定手段による電圧の測定結果は零ではなくなる。これによりまず、どの抵抗線の近傍で漏水が発生しているかが分る。そして、電圧測定手段が測定した電圧をV、電流源が供給する電流をIとすると、漏水箇所近傍の抵抗線の箇所と抵抗線の端部との間の抵抗値はV/Iとなるので、抵抗線の単位長さ当たりの抵抗値がrであれば、抵抗線の端部から漏水箇所までの距離はV/(Ir)となる。このように本発明の廃棄物処分場の漏水検知システムでは、抵抗線に電流が流れるか否かにより漏水の有無を検知でき、そして、抵抗線の端部から第1または第2の遮水シートの漏水箇所までの距離を、定電流源が供給する電流の値と、電圧測定手段の測定結果とから簡単な計算式により容易に算出することができる。そして、この廃棄物処分場の漏水検知システムでは、抵抗線の配列方向での、漏水箇所の特定精度は抵抗線の間隔により制限されるものの、抵抗線の延在方向での精度に関してはそのような制限はなく、極めて正確に漏水箇所の位置を特定できる。さらに、抵抗線や導電線は、互いに交差させたりする必要はなく、すべて単に同一方向に延在させればよい。さらに導電線のかわりに1つの点状、面状または線状の導電体を使用する場合は導電体の位置は場所を選ぶ必要がない。したがってシステムの構築が容易であり、作業時間の短縮や作業人員の削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の漏水検知システムにおける漏水箇所特定の原理を説明するための原理図である。
【図2】実施例の漏水検知システムの一例の要部を示す断面側面図である。
【図3】実施例の漏水検知システムの一例の要部を示す平面図である。
【図4】実施例の漏水検知システムの回路図である。
【図5】実施例の漏水検知システムを備えた廃棄物処分場を示す断面側面図である。
【符号の説明】
4 第1の遮水シート
6 第2の遮水シート
10 廃棄物処分場
14 第1のフェルト層
16 第2のフェルト層
18 第3のフェルト層
20 覆土層
22 漏水検知システム
24 抵抗線
26 第1の導電線
28 第2の導電線
30 被覆導電線
34 第1の定電流源
36 第2の定電流源
38 第1の電流計
40 第2の電流計
42 電圧計
44 切り換えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電体と、前記導電体と前記抵抗線間に定電流を供給する定電流源と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線は、間隔をおいて複数設けられている、ことを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項2】 地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電体と、前記導電体と前記抵抗線間に電流を供給する電流源と、前記抵抗線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線は、間隔をおいて複数設けられている、ことを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項3】 前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記抵抗線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、前記導電体が敷設された請求項1または2記載の廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項4】 地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電線と、前記導電線の一端と前記抵抗線の一端との間に接続された定電流源と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線と前記導電線との組みは、間隔をおいて複数設けられている、ことを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項5】 地盤の凹部に遮水シートを敷き、前記遮水シート上に廃棄物を投棄して堆積させる廃棄物処分場において前記遮水シートの漏水を検知するシステムであって、前記遮水シートの上側または下側に敷設された、単位長さ当たりの抵抗値が既知の抵抗線と、前記遮水シートを挟んで前記抵抗線と反対側に敷設された導電線と、前記導電線の一端と前記抵抗線の一端との間に接続された電流源と、前記抵抗線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記抵抗線の両端の電圧を測定する電圧測定手段とを備え、前記抵抗線と前記導電線との組みは、間隔をおいて複数設けられている、ことを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項6】 前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記抵抗線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、1本の前記抵抗線とそれぞれ組みを成す前記導電線が敷設された請求項4または5記載の廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項7】 前記遮水シートは二重であり、2枚の前記遮水シートの間に前記導電線が敷設され、上側の前記遮水シートの上側と、下側の前記遮水シートの下側とに、1本の前記導電線とそれぞれ組みを成す前記抵抗線が敷設された請求項4または5記載の廃棄物処分場の漏水検知システム。
【請求項8】 前記抵抗線に電流を供給する電流供給手段と、前記電流供給手段により前記抵抗線に電流を供給したとき前記抵抗線に電流が流れるか否かを検出する電流検出手段とをさらに備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃棄物処分場の漏水検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平10−300622
【公開日】平成10年(1998)11月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−123464
【出願日】平成9年(1997)4月25日
【出願人】(000112668)株式会社フジタ (20)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)