説明

廃棄物処分場の覆土構造体及びその工法

【課題】簡単な構造でありながら、適当な雨水を供給して、閉鎖廃棄処分場の安定化処理を継続すると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷を低減することができる廃棄物処分場の覆土構造体及びその工法を提供すること。
【解決手段】廃棄物層1と覆土層5間に、遮水シート3を縞状に且つ勾配をもたせて敷設してなり、遮水シート3は、U字断面形状またはV字断面形状である廃棄物処分場の覆土構造体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰、破砕残渣等の埋め立てを完了した廃棄物処分場に対して、浸出水発生の原因である降雨の浸透を制御する覆土構造体及びその工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却灰、破砕残渣等の埋め立てを完了した廃棄物処分場(以下、「閉鎖廃棄処分場」とも言う。)は、降雨の浸透を制御する覆土構造体に盛り替えした後、相当の期間経過後、浸出水の水質が良好となった時点で処分場廃止となり、その後は、跡地利用される。
【0003】
閉鎖廃棄処分場は、そのまま放置すると、埋め立て地に降る降雨量の影響により、浸出水量が増え、浸出水処理施設の負荷が増大するという問題が発生し、逆に、遮水シートを敷設し、キャッピングをすると、土壌微生物の生育に必要な水と酸素が欠乏し、生化学的な分解処理が進まず、処分場廃止までの期間(安定化処理期間)が延びてしまうという問題がある。従って、閉鎖廃棄処分場を降雨の浸透を制御する覆土構造体への盛り替えは、必要であり、従来より種々の技術が開示されている。
【0004】
例えば、特開2004−73908号公報には、廃棄処分場において、埋め立て完了した廃棄物の上面に、中央から周縁に至るにつれて傾斜する勾配の最終覆土を施し、覆土上を遮水シートで覆うと共に、遮水シートに所定の開口率で複数のスリットないし小孔を明け、該スリットないし小孔を通じて遮水シート上に降り注ぐ降雨の一部を前記覆土を通じて廃棄物内に浸透させる廃棄物処分場における雨水浸透調節方法が開示されている。この雨水浸透調節方法によれば、最終処理後の覆土表面のうち、雨水が浸透する面積比率を調整することで、雨水の浸透量を簡単に調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−73908号公報(請求項1、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2004−73908号公報の降雨の浸透を制御する覆土構造体は、遮水シートが露出しており、遮水シートの紫外線劣化が激しいため、遮水シートの交換を余儀なくされ、ランニングコストを上昇させるという問題がある。また、特開2004−73908号公報の覆土構造体の開口溝は構造が複雑であり、設置コストを上昇させるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、設置コストを低減できる、簡単な構造でありながら、適当な雨水を供給して、閉鎖廃棄処分場の安定化処理を継続すると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷を低減できる廃棄物処分場の覆土構造体及びその工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、廃棄物処分場における廃棄物層と覆土層間に、遮水シートを縞状に且つ勾配をもたせて敷設してなり、該遮水シートをU字断面形状またはV字断面形状とした廃棄物処分場の覆土構造体であれば、遮水シート間の開口から雨水の一部を供給でき、且つ残りの雨水を樋状の遮水シートから閉鎖廃棄物処分場外に排出して、閉鎖廃棄処分場の安定化処理を継続すると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、廃棄物層と覆土層間に、遮水シートを縞状に且つ勾配をもたせて敷設してなり、該遮水シートは、U字断面形状またはV字断面形状である廃棄物処分場の覆土構造体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、廃棄物層上に、遮水シートを隣接する遮水シートと離間させて、縞状に且つ勾配をもたせ、U字断面形状またはV字断面形状に敷設するI工程と、該遮水シートが敷設された廃棄物層の上に覆土を敷くII工程と、を有する廃棄物処分場の覆土工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮水シート間の開口から閉鎖廃棄物処分場の土壌に雨水の一部を供給でき、且つ残りの雨水を樋状の遮水シートに流して閉鎖廃棄物処分場外に排出することができる。このため、閉鎖廃棄処分場の生化学的な分解処理(安定化処理)を継続すると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷を低減することができる。また、本発明は、廃止手続き後、覆土で覆われていることから、植栽等の後処理に重機等の進入が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】廃棄物処分場の覆土工法を説明する図であり、(A)は廃棄物層を示し、(B)はI工程を、(C)はII工程をそれぞれ示す。また、(C)は本発明の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体の断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体の断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体の平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿って見た図である。
【図6】エンボスシートを含むサンドイッチ構造の遮水シートの一部を破断した斜視図である。
【図7】参考例となる廃棄物処分場の覆土構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体を図1(C)、図4及び図5を参照して説明する。覆土構造体10は、廃棄物層1と覆土層5間に、遮水シート3を縞状に且つ勾配をもたせて敷設してなり、遮水シート3はV字断面形状である。覆土構造体10は、廃棄物層1の上に遮水シート3が存在し、更にその上に覆土層5が存在するため、廃棄物の飛散がなく、また遮水シート3の紫外線劣化を抑制できる。なお、遮水シート3の断面形状としては、V字断面形状に限定されず、U字断面形状などの凹状形状であればよい。これにより、雨水の溜めと排水を円滑にできる。なお、V字及びU字は厳密な定義ではなく、凹状断面形状をすべて含む意味である。
【0014】
廃棄物層1は、閉鎖された廃棄物処理場である。廃棄物層1には覆土5の一部が敷設されていてもよい。すなわち、遮水シート3は、覆土5内に形成されたものであってもよい。
【0015】
縞状とは、図4に示すような、長尺状の遮水シート3が一定間隔で離間して配置されて表われる一定幅の模様の連続(ゼブラ状)のものの他、不定形状の縞であってもよい。例えば特開2004−73908号公報のような円錐状の山の法面に敷設される場合、山の頂上に向かうにつれて遮水シート3間の幅が狭くなる略三角形状の遮水シートを離間して配置されることで表われる模様の連続であってもよい。
【0016】
遮水シート3は勾配をもたせて敷設される。遮水シート3に勾配があることで、雨水の排水を容易にする。また、遮水シート3を縞状に敷設することにより、遮水シート3間に開口部4ができ、この開口部4を通して、雨水等は直接、廃棄物層1に浸透する(図1(C)の矢印Y)。また、V字断面形状であって勾配がついた遮水シート3は、雨水を溜め、且つ雨水の流れをガイドし、排水を円滑にする。遮水シート3間で形成される開口部4の面積が小の場合、雨水の廃棄物層1への浸透が少なくなり、逆に、遮水シート3間で形成される開口部4の面積が大の場合、雨水の廃棄物層1への浸透が多くなる。従って、遮水シート3間で形成される開口部4の面積、すなわち、遮水シート3間の間隔は、例えばその土地の年間降雨量等をもとに適宜決定すればよい。
【0017】
遮水シート3が、V字断面形状のような凹状ではなく、平坦状であれば、図7に示すように、遮水シート3上に雨水を溜めることができず、雨水が遮水シート3間で形成される開口部4に流れ込み、閉鎖廃棄物処分場内に浸透する雨水が、開口する面積により計画された浸透水量より多くなりため、浸透水量の予測が困難となる。
【0018】
遮水シート3は、公知の平シートが使用できる。遮水シート3として、エンボスシートを使用すれば、エンボスシートの突起間に空間を形成し易くなり、雨水の流れを円滑にすることができる。エンボスシートの突起は、片面に形成されたもの、あるいは両面に形成されたもののいずれであってもよい。
【0019】
エンボスシートの一例を図6を参照して説明する。図6は遮水シート3bの一部を示す。図6の遮水シート3bは、エンボスシート32を1枚の透水シート31と他の1枚のシート33でサンドイッチ状に挟みこんだ3重シートである。遮水シート3bにおいて、上面の透水シート31は水を通すが、覆土を通さないため、エンボスシート32と上面の透水シート31間で空間が形成される。このため、遮水シート3b上における雨水の溜めと流れがよくなる。また、下面のシート33は、遮水シート3bの強度を高めるもので、特にエンボスの破損を防止するものであり、遮水シート、透水シートのいずれであってもよい。また、遮水シート3bは、下面のシート33を使用を省略できる。すなわち、遮水シートを、エンボスシート32と透水シート31を貼り合わせた2層構造のシートとすることもできる。2層構造のシートであっても、エンボスシート32と上面の透水シート31間で空間が形成され、遮水シート3b上における雨水の溜めと流れがよくなる。
【0020】
遮水シート3の上流側の端は、固定しておくことが、遮水シート3の設置安定性が高まる点で好ましく、下流側の端は、固定する必要はなく、図5に示すように、暗渠排水管12を埋設した下流側の排水層13に位置するようにしておけばよい。これにより、遮水シート3により集水した水は、下流側の排水層13を流れ、暗渠排水管12に流れ込む。なお、図5の符号11は、貯留堰堤である。
【0021】
覆土構造体10の作用を図1(C)、図4及び図5を参照して説明する。覆土構造体10に降雨(図7中、矢印X)があると、遮水シート3間の開口部4に浸透する雨水(図7中、矢印Y)は、閉鎖廃棄物処分場の土壌に浸透し、一方、遮水シート3に浸透してきた雨水は、遮水シート3に集水され(図7中、矢印Z)、暗渠排水管12に流れ込む。このため、廃棄物層1に生化学的な分解処理(安定化処理)を継続することができる最小限の雨水を供給できると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷を低減することができる。また、遮水シート3は、凹状であるため、雨水が溢れ出すことがなく、本発明の覆土構造体の開口面積に、当該土地の年間の降雨量を乗じれば、水処理施設での負荷の予測が概ね可能となる。
【0022】
次に、本発明の廃棄物処分場の覆土工法について図1を参照して説明する。本発明の廃棄物処分場の覆土工法は、廃棄物層上に、遮水シートを隣接する遮水シートと離間させて、縞状に且つ勾配をもたせ、U字断面形状またはV字断面形状に敷設するI工程と、該遮水シートが敷設された廃棄物層の上に覆土を敷くII工程と、を有する。
【0023】
I工程としては、図1に示すように、廃棄物層上に予めU字断面形状またはV字断面形状の溝2を所定のピッチで多数形成しておき、当該溝2に遮水シート3を敷設する方法が挙げられる。通常、遮水シート3は柔軟性のある素材で作製されており、平状の遮水シートを溝2に敷設することで、遮水シート3をU字断面形状またはV字断面形状にすることができる。また、I工程は、平坦状の廃棄物層1上に、所定のピッチで平状の遮水シート3を多数敷設し、次いで、当該遮水シート3をU字断面形状またはV字断面形状に調整する方法であってもよい。遮水シート3をU字断面形状またはV字断面形状に調整する際、廃棄物層1の表面形状も同様の断面形状に調整することになる。
【0024】
なお、I工程において、廃棄物層1上に遮水シート3を敷設する前に、廃棄物層1上に覆土5の一部を敷設し、その後、遮水シート3を敷設してもよい。予め、廃棄物層1上に覆土5の一部を敷設することで、図1(A)に示すようなV字断面形状が作り易くなる。また、I工程において、遮水シート3を敷設するまでに、廃棄物層1に予め勾配をつけておく。廃棄物層1の勾配は、覆土を盛ることで形成してもよい。
【0025】
II工程は、遮水シート3が敷設された廃棄物層1の上に覆土5を敷く工程である。覆土5を敷くことで、廃棄物の飛散がなくなり、また遮水シート3は覆土中に存在することになるため、遮水シート3の紫外線劣化を防止できる。覆土5の厚みは、適宜決定される。また、本発明は、廃止手続き後、覆土で覆われていることから、植栽等の後処理に重機等の進入が容易である。特開2004−73908号公報の覆土構造体のような表面に遮水シートがある場合、植栽等の後処理をするのであれば、シートを養生する工程が必要となり都合が悪い。
【0026】
本発明の廃棄物処分場の覆土工法によれば、浸出水発生の原因である降雨の浸透を制御する覆土構造体を造成することができる。また、簡単な工法であるため、施工コストを低減できる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体を図2を参照して説明する。図2において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図2において、図1(C)と異なる点は、遮水シートの形状である。図2の覆土構造体10aの遮水シート3aは、U字断面形状である。このような覆土構造体10aは、廃棄物処分場の覆土構造体10と同様の作用効果を奏する。
【0028】
次に、本発明の第3の実施の形態における廃棄物処分場の覆土構造体を図3を参照して説明する。図3において、図2と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図3において、図2と異なる点は、遮水シート3a上に砕石6を敷設した点である。これにより、砕石層が水の流路となり、排水し易くなる。遮水シート3a上に砕石6を敷設するには、I工程後、II工程前に、遮水シート3a上に、砕石6を敷設すればよい。砕石6は、遮水シート3a上にあればよく、例えば遮水シート3aの内容積と同様の量を敷設する方法、遮水シート3aの内容積以上の量を敷設する方法、遮水シート3aの内容積以下の量を敷設する方法のいずれであってもよい。また、砕石6を、遮水シート3a上、短手方向の両側部分に敷設し、中央部分には砕石6を敷設しない形態であってもよい。このような覆土構造体10bは、廃棄物処分場の覆土構造体10と同様の作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、簡易な工法であるため、施工コストを低減できる。また、遮水シートの紫外線劣化がなく、交換が不要であり、ランニングコストを低減できる。また、閉鎖廃棄処分場の生化学的な分解処理(安定化処理)を継続すると共に、閉鎖から廃止までの期間の浸出量を減少させて水処理施設の負荷、すなわち、環境負荷を低減できる。また、安定化処理を遅延させることがなく、跡地利用を促進できる。
【符号の説明】
【0030】
1 廃棄物層
2 溝
3、3a、3b 遮水シート
4 遮水シート間の開口
5 覆土
6 砕石
10、10a、10b 覆土構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物層と覆土層間に、遮水シートを縞状に且つ勾配をもたせて敷設してなり、該遮水シートは、U字断面形状またはV字断面形状であることを特徴とする廃棄物処分場の覆土構造体。
【請求項2】
前記遮水シートは、エンボスシートであることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場の覆土構造体。
【請求項3】
前記遮水シートは、エンボスシートと透水シートを貼り合わせた2層構造のシートであることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場の覆土構造体。
【請求項4】
前記遮水シートは、エンボスシートを1枚の透水シートと他の1枚のシートでサンドイッチ状に挟みこんだシートであることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場の覆土構造体。
【請求項5】
U字断面形状またはV字断面形状の遮水シート上に、砕石を敷設したことを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場の覆土構造体。
【請求項6】
廃棄物層上に、遮水シートを隣接する遮水シートと離間させて、縞状に且つ勾配をもたせ、U字断面形状またはV字断面形状に敷設するI工程と、該遮水シートが敷設された廃棄物層の上に覆土を敷くII工程と、を有することを特徴とする廃棄物処分場の覆土工法。
【請求項7】
前記遮水シートは、エンボスシートであることを特徴とする請求項6記載の廃棄物処分場の覆土工法。
【請求項8】
前記遮水シートは、エンボスシートと透水シートを貼り合わせた2層構造のシートであることを特徴とする請求項6記載の廃棄物処分場の覆土工法。
【請求項9】
前記遮水シートは、エンボスシートを1枚の透水シートと他の1枚のシートでサンドイッチ状に挟みこんだシートであることを特徴とする請求項6記載の廃棄物処分場の覆土工法。
【請求項10】
前記I工程後、前記II工程前に、U字断面形状またはV字断面形状の遮水シート上に、砕石を敷設する工程を行うことを特徴とする請求項6記載の廃棄物処分場の覆土工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183356(P2011−183356A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54217(P2010−54217)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】