説明

廃棄物分解装置

【課題】 ダイオキシンの発生を最小限に抑えられ、より確実に廃棄物の灰化を行うとともに、その熱分解処理時間を短縮化できる磁気作用を用いた廃棄物分解装置を提供する。
【解決手段】 容器状の本体1と、この本体1に設けられて本体1内へ廃棄物を投入するための投入口12aと、前記本体1に設けられ廃棄物を分解した後の残渣を出すための排出口12cと、前記本体1に収容された廃棄物に磁気を作用させる磁気作用手段Mとを有する廃棄物分解装置Aにおいて、前記本体1に収容された廃棄物を圧縮する加圧手段2を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系廃棄物を磁気作用手段によって熱分解処理する廃棄物分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より有機系廃棄物を処理する設備としては、焼却炉や溶融炉がある。これら焼却炉や溶融炉による廃棄物処理の問題として、ダイオキシンの発生がある。ダイオキシン発生を抑制する対策としては、二次燃焼室を設け、炉内温度を例えば800℃以上の所定温度以上に保つことなどの対策が採られている。しかしながら、このような対策を採るには、多大な設備費用や重油等の燃料費を必要とする。
【0003】
このため、近年においては、磁気作用手段によって熱分解処理する廃棄物分解装置が開発されている(例えば特許文献1、2、3参照)。これらは、炉内に磁化された空気を取り込むことにより、廃棄物を昇温、そして熱分解させ、炭化、さらには灰化させるものである。そしてこの磁気作用手段によって熱分解処理する廃棄物分解装置によれば、二次燃焼室を設けたり、炉内温度を例えば800℃以上などの高温に保ったりする必要がなく、廃棄物を完全燃焼させることが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−341245号公報
【特許文献2】特開2003−193061号公報
【特許文献3】特開2007−209843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような磁気作用手段によって熱分解処理する廃棄物分解装置にも、処理時間の短縮化や、より確実な灰化の点で、更なる改良の余地があった。すなわち本発明は、より確実に廃棄物の灰化を行うとともに、その処理時間を短縮化できる新規な磁気作用手段によって熱分解処理する廃棄物分解装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、容器状の本体と、この本体に設けられて本体内へ廃棄物を投入するための投入口と、前記本体に設けられ廃棄物を分解した後の残渣を出すための排出口と、前記本体に収容された廃棄物に磁気を作用させる磁気作用手段とを有する廃棄物分解装置において、前記本体に収容された廃棄物を圧縮する加圧手段を備えたことを特徴とする廃棄物分解装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した廃棄物分解装置において、前記加圧手段は前記本体内に設けられた錘部材と、この錘部材を昇降動作させる昇降手段とによって構成されていることを特徴とする廃棄物分解装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した廃棄物分解装置において、前記磁気作用手段は前記本体内へ外部から空気を導入させる空気導入管と、この空気導入管の途中に配置された磁石とによって構成されていることを特徴とする廃棄物分解装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載した廃棄物分解装置において、前記空気導入管と磁石とにより構成される前記磁気作用手段の他、他の磁気作用手段が錘部材内に収容されていることを特徴とする廃棄物分解装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載した廃棄物分解装置において、前記空気導入管と磁石とにより構成される前記磁気作用手段の他、他の磁気作用手段が前記本体の底部に設けられた空間部に収容されていることを特徴とする廃棄物分解装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載した廃棄物分解装置において、前記錘部材内と、前記本体の底部とに、それぞれ収容される前記磁気作用手段は、磁化された廃棄物の残渣であることを特徴とする廃棄物分解装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃棄物分解装置によれば、焼却炉のような燃焼ではなく、磁場振動を利用した分解であるため、ダイオキシンの発生を最小限に抑えられるものである。そして焼却炉のような二次燃焼室を必要としないため、設備費用を低く抑えることができ、更に補助燃料も必要としないため、ランニングコストも低く抑えることができる。そして特に本体内に収容された廃棄物を圧縮する加圧手段が備えられているため、より確実に廃棄物の灰化が行なわれるとともに、灰化までの処理時間を短縮化できるものである
【0013】
更に加圧手段を、本体内に設けられた錘部材と、この錘部材を昇降動作させる昇降手段とによって構成した場合には、分解処理により逐次減容されていく廃棄物に対し、常時一定の加圧を行うことが簡易な構造によって実現できる。
【0014】
磁気作用手段を、本体内へ外部から空気を導入させる空気導入管と、この空気導入管の途中に配置された磁石とによって構成した場合には、より確実且つ効率的に本体内へ磁化された空気を導入できる。
【0015】
磁気作用手段を、廃棄物を加圧する錘部材内に収容した場合には、廃棄物の直近の位置に磁気作用手段を常時位置させることができるため、廃棄物へより強い磁気を安定的に放つことができる。
【0016】
また磁気作用手段を本体の底部に設けられた空間部に収容した場合には、本体内をより安定的に強い磁場に保つことが可能となる。
【0017】
錘部材内と、本体の底部とに収容される磁気作用手段として、磁化された廃棄物の残渣を用いた場合には、より安価に磁気作用手段を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る廃棄物分解装置を図面にしたがって説明する。
廃棄物分解装置Aは、図1に示されるように、廃棄物が投入される容器状の本体1と、この本体1に収容された廃棄物に磁気を作用させる磁気作用手段Mと、本体1に収容された廃棄物を圧縮する加圧手段2とを備えて成る。
【0019】
本体1は円筒容器状をしており、上方には上蓋10が固定状態に設けられている。この上蓋10の中心は、後述する加圧手段2の吊下ロッド22を挿し通すための挿入口が開口され、ここに吊下ロッド22を摺動自在に支承するための案内管11が設けられている。
【0020】
本体1の側壁12の上部には、廃棄物の投入口12aが開口される。更に側壁12の上部には廃棄物が分解処理される際に発生するガスを排出するガス排出口12bが、二箇所に対向的に設けられており、これらガス排出口12bには、ガス排出管14が設置される。そしてこれらガス排出管14に、配管Pが接続され、ガスが触媒に送られるようになっている。また前記投入口12aには図示を省略するバケットコンベヤ等から成る廃棄物自動投入機が設置される。
【0021】
側壁12の下部には、分解処理されて灰化された廃棄物を取り出すための処理物排出口12cが二つ対向的に設けられている。更に側壁12の下方複数箇所には、磁気作用手段Mが設置される空気導入口12dが開口される。また側壁12の中央付近の下方寄りには、温度センサ17が設けられる。ちなみに側壁12は二重壁構造を採るものであり、本体1の保温性及び断熱性を向上させている。
本体1の底部には仕切り板が設けられて二重底構造となっており、この底部の空間部Sには、磁気作用手段Mが収容される。また側壁12下端には、排液孔が対向的に二箇所穿孔されるとともに、ここに排液管15が設けられている。処理物排出口12cより高い高さ位置における、側壁12の内壁面には、複数のストッパ16が設けられている。これらストッパ16によって、後述する加圧手段2の錘部材20がそれ以上に下降しないように規制している。
【0022】
次に加圧手段2について説明する。加圧手段2は、本体1内に設けられ、廃棄物に直接的に当接して下方に加圧する錘部材20と、この錘部材20を昇降動作させる昇降手段23とによって構成される。
【0023】
錘部材20は、円盤状の加圧板21と、この加圧板21の上方中心に垂直に立ち上げられて設けられる吊下ロッド22とからなる。加圧板21は、内部が中空に形成されており、この内部には後述する磁気作用手段Mが収容されている。また吊下ロッド22の上端には、昇降手段23と接続するための係止リング22aが設けられている。
錘部材20は以上のような具体的な形態を有し、加圧板21を本体1内部に水平状態に位置させ、吊下ロッド22の上部が本体1の上蓋10の中心の案内管11に挿し通されている。
【0024】
一方、昇降手段23は、本体1上部に門状等のフレーム部材で構築される吊下架台24と、前記吊下架台24に設置される巻上機25と、この巻上機25に巻き取り自在とされるチェーン26とから成る。
巻上機25は、一例として駆動モータ及び巻取ドラム等から成るものである。またチェーン26の先端には係止フック26aが備えられ、錘部材20の吊下ロッド22上端の係止リング22aに係止される。
【0025】
次に磁気作用手段Mについて説明する。磁気作用手段Mは、一例として前記本体1の側壁12に開口される空気導入口12dと、本体1底部の空間部Sと、後述する加圧手段2の錘部材20とに備えられる。
【0026】
空気導入口12dに設けられる磁気作用手段Mについて説明すると、空気導入口12dには、図3に示すような空気導入管3が備えられ、更にこの空気導入管3を挟み込むように磁石4が設けられている。磁石4は一例として永久磁石を用いるものであり、これら磁石4のS極とN極が互いに対向するように設けられている。なお磁石4としては、永久磁石の他、適宜電磁石などを用いるようにしても構わない。なお空気導入管3には、更に図示しない配管が接続されるものである。
【0027】
本体1底部の空間部Sの磁気作用手段Mについて説明すると、本体1底部の空間部Sには、磁化したセラミック灰から成る磁気セラミック5が内部に充填されている。具体的にはこの磁気セラミック5は、本発明の廃棄物分解装置Aによって処理された廃棄物の磁化された残渣が用いられる。
また加圧手段2の錘部材20の磁気作用手段Mについて説明すると、錘部材20の加圧板21内に磁化したセラミック灰から成る磁気セラミック6が充填されている。この磁気セラミック6も具体的には、本発明の廃棄物分解装置Aによって処理された廃棄物の磁化された残渣が用いられる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る廃棄物分解装置Aは、以上のような構成を有しており、以下にこの廃棄物分解装置Aの作動態様について説明する。
まず本体1内では、磁化された空気が空気導入口12dから導入されることと、錘部材20内の磁気作用手段M及び本体1底部の磁気作用手段Mの作用とにより磁場振動が生じている。
【0029】
そして新たな廃棄物が本体1内に自動投入装置等を介して投入されると、図4中の最上部の分解処理待ち部分Z1に積載される。廃棄物が本体1内に投入される際には、昇降手段23によって錘部材20は、上方に巻き上げられるものである。
【0030】
分解された部分が減容化するため、分解待ち部分Z1にあった廃棄物が分解乾燥部分Z2に下がる(図4、5参照)。分解乾燥部分Z2での廃棄物は、下層の分解反応部分Z3の廃棄物の分解で発生するエネルギーで水分が蒸発され、乾燥がなされる。
【0031】
更に分解された下方の部分が減容化するため、分解乾燥部分Z2で乾燥がなされた廃棄物は、分解反応部分Z3に下がる。この分解反応部分Z3では、廃棄物は分解エネルギーにより排気化され炭化が促進され、更に磁場振動により炭化が進行する。
【0032】
炭化が進行した廃棄物は、やがて磁化をもつセラミック灰となり、図5中の一番下層の灰化した部分Z4に堆積する。そしてこの灰化した部分Z4に分解エネルギーを蓄積し、この分解エネルギーが上層の分解反応部分Z3や分解乾燥部分Z2の廃棄物に対し、上述したように作用するものである。
【0033】
分解時に発生する水蒸気は、本体側壁12上部のガス排出口12bから本体1外に排出され、触媒に送られる。また磁化された木酢液が仕切板13に穿孔される水抜孔から下方に落下し、底部の排液管15から本体1外に排出される。
なお、灰化した部分Z4は処理物排出口12cの蓋を開けて、掻き出すなどして排出させる。
以上のように本発明によれば、焼却炉のような燃焼ではなく、ほぼ酸欠状態で磁場振動を利用した分解であるため、塩化物を処理してもダイオキシンの発生を最小限に抑えられるものである。
【0034】
加圧手段2の作用について説明すると、錘部材20によって廃棄物を下方に適度に加圧しているため、分解処理が促進され、分解処理時間も加圧しない場合と比べて短縮化される。本実施の形態では、特に廃棄物に対し常時直接的に当接する加圧板21内に磁気作用手段Mを備えているため、廃棄物へより強い磁気を安定的に放つことが可能となっている。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態において加圧手段2は、錘部材20の自重により加圧するものであったが、コイルスプリングや空気バネなどの付勢手段を用いて比較的軽量の加圧板21を廃棄物に対し当接させ、加圧するように設計変更することも可能である。この場合付勢力を調節自在とすることももちろん差し支えない。
【実施例】
【0036】
以下に本発明に係る廃棄物分解装置と従来の焼却炉及び溶融炉との比較実験データ(表1参照)を示す。
なおこの実施例で用いた廃棄物分解装置の大きさは、本体が外寸で直径約1m50cm、高さが約2m50cmのものを用いている。もちろんこのサイズは一例であり、提供先の要望等により種々のサイズで製作することが可能である。
【0037】
【表1】

【0038】
表1は、本発明の実施例に係る廃棄物分解装置と、従来の焼却炉及び溶融炉との比較実験データである。この表1から本発明の実施例に係る廃棄物分解装置によれば、廃棄物の残渣量が、最初の投入される廃棄物の体積の0.50%に減容されるのに対し、焼却炉は5〜10%、溶融炉でも2〜5%にしか減容されていないことがわかる。従って本発明は、極めて廃棄物の減容効果に優れたものであると言える。更に本発明では、二次燃焼室を必要としないため、設備費用を低く抑えることができ、補助燃料も必要としないため、ランニングコストも少なく済むものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の廃棄物分解処理装置は、従来の焼却炉等に比べて設備投資が小額で済み、ランニングコストも少なく、ダイオキシンの発生もごく僅かであるため、法規制にも適合しやすく、廃棄物を排出する多様な産業分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る廃棄物分解処理装置の斜視図である。
【図2】加圧手段の錘部材を、一部破断して示す斜視図である。
【図3】空気導入管と磁石とから成る磁気作用手段を示す斜視図である。
【図4】本体内での分解処理態様を示す説明図である。
【図5】本体内での分解処理態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
A 廃棄物分解装置 1…本体 2…加圧手段
3…空気導入管 4…磁石 5,6…磁気セラミック
10…上蓋 11…案内管 12…側壁
12a…投入口 12b…ガス排出口 12c…処理物排出口
12d…空気導入口 13…仕切板 14…ガス排出管
15…排液管 16…ストッパ 17…温度センサ
20…錘部材 21…加圧板 22…吊下ロッド
22a…係止リング 23…昇降手段 24…吊下架台
25…巻上機 26…チェーン 26a…係止フック
M…磁気作用手段 P…配管 S…空間部
Z1…分解待ち部分 Z2…分解乾燥部分
Z3…分解反応部分 Z4…灰化した部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器状の本体と、この本体に設けられて本体内へ廃棄物を投入するための投入口と、前記本体に設けられ廃棄物を分解した後の残渣を出すための排出口と、前記本体に収容された廃棄物に磁気を作用させる磁気作用手段とを有する廃棄物分解装置において、前記本体に収容された廃棄物を圧縮する加圧手段を備えたことを特徴とする廃棄物分解装置。
【請求項2】
請求項1に記載した廃棄物分解装置において、前記加圧手段は前記本体内に設けられた錘部材と、この錘部材を昇降動作させる昇降手段とによって構成されていることを特徴とする廃棄物分解装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した廃棄物分解装置において、前記磁気作用手段は前記本体内へ外部から空気を導入させる空気導入管と、この空気導入管の途中に配置された磁石とによって構成されていることを特徴とする廃棄物分解装置。
【請求項4】
請求項3に記載した廃棄物分解装置において、前記空気導入管と磁石とにより構成される前記磁気作用手段の他、他の磁気作用手段が錘部材内に収容されていることを特徴とする廃棄物分解装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載した廃棄物分解装置において、前記空気導入管と磁石とにより構成される前記磁気作用手段の他、他の磁気作用手段が前記本体の底部に設けられた空間部に収容されていることを特徴とする廃棄物分解装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載した廃棄物分解装置において、前記錘部材内と、前記本体の底部とに、それぞれ収容される前記磁気作用手段は、磁化された廃棄物の残渣であることを特徴とする廃棄物分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−172464(P2009−172464A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11160(P2008−11160)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(307041458)株式会社マグテック (1)
【Fターム(参考)】