説明

廃棄物安定化の方法およびそれから得られた製品

重金属安定化のための方法であって、重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブ(炭素ベースモレキュラーシーブを除く)、および粘土と混合するステップと;混合物をガラス化するステップとを含む方法が提供される。特に、重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブ、および場合により他の化学薬品と混合することによって、予備安定化混合物を調製するステップと;予備安定化混合物を粘土と混合するステップと;得られた混合物をガラス化するステップとを含む方法が提供される。それは粘土ベースセラミックマトリクスの構造内へ安定化された重金属を含む製品も提供し、該製品は、少なくとも重金属を含む廃棄物、モレキュラーシーブ(炭素ベースモレキュラーシーブを除く)および粘土の混合物のガラス化製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物安定化の方法およびそれから得られた付加価値製品に関する。特に本発明は、適切なモレキュラーシーブ、粘土を用いて、場合により化学添加剤を用いて廃棄物を処理することにより、廃棄物からの重金属を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業活動から発生した廃棄物は、危険廃棄物と同様に、適正な廃棄要件のために特に問題がある。重金属を含有する産業廃棄物は、それが廃棄される前に処理する必要がある。この廃棄物は未処理のまま放置されると、環境を汚染して、生命体への危害を引き起こす可能性がある。
【0003】
産業汚泥からの毒性廃棄物を処置および抽出するために、複数の従来技術プロセスが提案されてきた。これらのプロセスの多くは、多様な種類の粘土または頁岩を利用して、液体および固体産業廃棄物からの重金属および他の毒性物質を吸収または吸着する。
【0004】
Lo,I.M−C.,et al.,(1997,J.Envir.Engrg.Div.,ASCE 123(1),pp 25−33)は、粘土鉱物への重金属吸着による、粘土中への重金属の安定化の方法を開示している。吸着は、カチオンが負に荷電した粘土粒子に誘引されるので、鉱物表面で発生する外部的吸着でも、または鉱物構造自体の中で、例えば粘土鉱物層の間で発生する内部的吸着でも可能である。
【0005】
粘土鉱物は、カチオン交換容量(Cation Exchange Capacity)(LaGrega,M.D.,1994,McGraw−Hill,Inc.,New York)と呼ばれる特性を有することが既知であり、それにより粘土構造中に本来存在しているカチオンは、外部カチオンによって置換される。実際にそれはまた、アルミナおよびシリカのシートからなる粘土鉱物がその全ての負電荷を捕捉する、カチオン交換プロセスによる。このことは、Si4+がAl3+などの低荷電カチオンによって置換されるときに、またはAl3+がFe2+、Mg2+またはCa2+などの2価カチオンによって置換されるときに起こる(Weaver,C.E.,1989,「Clays,mud and shales.」Elsevier,New York)。この負電荷は、重金属が粘土鉱物表面に吸着されるようにすることができる(外部吸着)。
【0006】
金属安定化は、鉱物表面での重金属の移動および吸着と共に開始する。さらにモンモリロナイトなどの層状粘土鉱物は、カチオンを内部吸収することが既知である(Conner,J.R.,1990,Van Nostrand Reinhold,NewYork)。モンモリロナイトは個々の層からなり、Ca2+などのカチオンによって結合された2枚のシリカシートの間の1枚のアルミナシートから構成されている。次に層間カチオンは、内部吸着により重金属によって置換できる。粘土鉱物は、基礎アルミナシリカ構造を有し、熱を受けたときに化学変換を受ける。これらの化学変換は、粘土の本来の化学相、例えばカオリナイトおよびモンモリロナイトをムライトおよびクリストバライト相に変化させる。重金属カチオンの包含プロセスは、吸着された重金属が包含されるようになる新しい相の形成を通じた焼成プロセス中に完了する。X線回折(XRD)分析は、焼成プロセスが、本来は海底粘土に存在するカオリナイトおよびモンモリロナイトの、重金属カチオンを包含することが報告されているクリストバライトおよびムライトへの変換をもたらすことを明らかにする(Schneider et al,1994,Wiley and Sons,New York;Dion,L.B.,1996,Engineer Thesis,Stanford University,California,USA;Deer et al,1992, 2nd edition,Longman Scientific & Technical,New York,Wiley)。
【0007】
従来技術で述べられているような粘土安定化の方法は、一般に「カプセル化」および「包含」プロセスとして区別できる。どちらのプロセスもマトリクスのガラス化の最終ステップを含む。
【0008】
重金属が化合物または錯体、例えば金属酸化物の形で存在するとき、添加した粘土ベースセラミック鉱物は金属化合物をカプセル化(または包囲)する。しかしながら金属化合物は元の粘土ベースセラミック鉱物と化学結合しておらず、結合した結晶相に変換されない。カプセル化プロセスは、ミクロ(<10μm)またはマクロ(>10μm)状態で実施できる。
【0009】
粘土ベースセラミックマトリクスは、制限された容量を有し、いったんその飽和容量に達すると、そこからそれ以上の包含およびカプセル化は起こらないであろう。マトリクスの部位がいったん充填されると、粘土はその安定化能力を消耗している。さらに異なる粘土ベースセラミックマトリクスは、その様々な化学組成のために異なる包含およびカプセル化能力を有する。さらに包囲する粘土マトリクスがいったん分散または破壊されると、金属がマトリクスから遊離して、環境へ浸出するため、カプセル化は金属安定化の効率的な機構ではない。
【0010】
重金属が重金属カチオンおよび金属化合物アニオンの形で存在するとき、重金属カチオンおよび金属化合物アニオンは粘土に化学的に結合し、粘土中へ包含されている。高温での焼結後、重金属はムライトおよびクリストバライト構造中へ粘土ベースセラミックマトリクスの一部として包含される。しかしながらこの形の重金属が、カプセル化法によって安定化された重金属よりも良好に安定化されている場合でも、粘土の安定化容量は制限されており、そのような包含が起こる前に重金属が金属カチオンおよびアニオンとして存在する必要がある。
【0011】
粘土は、粘土マトリクス内の活性吸着部位に基づいて、制限された安定化容量を有する。しかしながら重金属の包含容量を超過したとき、重金属は単にカプセル化される。この条件下では、粘土マトリクスが例えば外部因子によって妨害されたとき、重金属が環境中に浸出し得る。例えばカオリナイトは、制限された吸着およびイオン交換特性を備えた層状構造である。それは層状構造であるため、マトリクスの強度は弱く、酸によって破壊される。重金属は結果として浸出することができる。
【0012】
したがって上述の従来技術の実質的な欠点は、廃棄材料が長い目で見て環境上安全でないかもしれないことである。これらの材料は監視下で保管する必要があり、建設または埋立て材料などの用途には適切でない。
【0013】
したがって危険な重金属の安定性を改善し、長期の貯蔵リスクを低減または排除しながら、同時に安全な付加価値製品を供給するプロセスを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、従来技術の問題に対処し、廃棄物からの、特に産業廃棄物からの重金属の安定化の新しい方法を提供する。廃棄物は危険廃棄物でもよい。本発明はさらに、建設および/または埋立て材料などの用途に適切である、廃棄物からの安定化重金属を含む付加価値製品に関する。
【0015】
第1の態様によると、本発明は、
重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブ(但し、炭素ベースモレキュラーシーブを除く)、および粘土と混合するステップと;
混合物をガラス化するステップと;
を含む重金属安定化の方法に関する。
【0016】
混合物の成分は、任意の順序で、または場合により特定の順序で混合できる。
【0017】
ガラス化は、金属を粘土マトリクスまたは粘土鉱物に化学結合させる、モレキュラーシーブ、粘土および重金属の間での相変化を引き起こすことによって、重金属を安定化させるために実施する。本発明による、モレキュラーシーブの、および場合により他の化学物質の添加によって、粘土マトリクスまたは粘土鉱物による重金属の包含容量の結果は改善された。
【0018】
ガラス化するステップによって、混合物は、再結晶化構造に変換される。
【0019】
前記方法は、混合物のpHを8.0〜12.0、好ましくは9.5の範囲に調整することを含んでもよい。
【0020】
前記方法はさらに、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4の添加を含む。アルカリベース化合物およびホスフェートベース化合物は、異なる割合で、例えばアルカリベース化合物のホスフェートベース化合物に対する50:50から100:0の体積比で添加してもよい。特にNa2SiO3およびNa3PO4は、異なる割合で添加することができる。例えばNa2SiO3のNa3PO4に対する体積比は、50:50から100:0である。
【0021】
前記方法は、アルミナベース化合物、特に水酸化アルミニウム(Al(OH)3)および/または酸化アルミニウム(Al23)を混合物に添加することをさらに含んでもよい。
【0022】
水および/または廃水処理工場からの汚泥は、アルミナベース化合物源として、特に水酸化アルミニウムおよび/または酸化アルミニウム源として使用できる。
【0023】
モレキュラーシーブに関しては、本発明の目的のための任意の適切なモレキュラーシーブが使用できる。しかしながら、炭素ベースモレキュラーシーブは特に本発明から除外される。また廃棄物が重金属を含有する非危険廃棄物である場合、モレキュラーシーブは本発明の方法には使用できない。
【0024】
本発明の1つの態様によると、モレキュラーシーブは天然および/または合成であり得る。特にそれは少なくともSiおよび/またはAlを含む。別の態様によると、該Siおよび/またはAlは、B、Ca、Zn、Ga、Ge、Ti、V、FeまたはPの少なくとも1つによって置換される。さらに適切な置換分も使用できる。
【0025】
1種類のモレキュラーシーブを使用してもよい。あるいは1つ以上のモレキュラーシーブの混合物を使用してもよい。モレキュラーシーブは、B、Ca、Zn、Ga、Ge、Ti、V、Fe、P、SiまたはAlの少なくとも1つも含むことができる。モレキュラーシーブは、各種の孔径の多孔性構造を有することができる。モレキュラーシーブの例は、金属ポルフィリンの固体、PIZA−1およびSAPOを含む。
【0026】
モレキュラーシーブの詳細な例は、ゼオライトである。ゼオライトは天然または合成である。ゼオライトは、石油/石油化学精製プロセスからの使用済み合成ゼオライト(FCCおよび/またはRCC)の形であり得る。
【0027】
詳細な実施形態によると、本発明による方法は、
重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブ(但し、炭素ベースモレキュラーシーブは除く)と混合することによって、予備安定化混合物1を調製するステップと;
予備安定化混合物1を粘土と混合して、予備安定化混合物2を形成するステップと;
得られた混合物をガラス化するステップと;
を含む。
【0028】
混合物は、モレキュラーシーブ、粘土および重金属の間に相変化を引き起こすことによって、重金属を安定化させるためにガラス化される。
【0029】
本発明の詳細な態様によると、予備安定化混合物2の調製に関与するステップは、
重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブと混合するステップと;
予備安定化混合物1を形成するために、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を添加するステップと;
予備安定化混合物2を形成するために、予備安定化混合物1を粘土と混合するステップと;
熟成させるために予備安定化混合物2を放置するステップと;
を含んでもよい。
【0030】
特に、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を添加するステップは、Na2SiO3および/またはNa3PO4の添加を含む。
【0031】
予備安定化混合物1および/または2の調製はさらに、少なくともアルミナベース化合物、特に水酸化アルミニウムおよび/またはAl23を予備安定化混合物に、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4の添加と同時に、添加の前または後に添加するステップを含んでもよい。本発明の方法に関与する混合ステップは、任意の特定の方法で実施できる。
【0032】
本発明の別の態様により、本発明の他の任意の態様による方法は、少なくとも1つの融剤を混合物に添加するステップをさらに含む。特に融剤はホウ酸塩でもよい。
【0033】
本発明の任意の実施形態によるガラス化プロセスは、1400℃までの高温処理を使用することによって成し遂げられる。
【0034】
詳細な態様によると、ガラス化プロセスは、以下の焼成特性を含んでもよい。
A:室温から450〜550℃までの加熱;
B:450〜550℃の一定温度;
C:Bから750〜900℃までの加熱;
D:750〜900℃の一定温度;
E:Dから900〜1300℃までの加熱;
F:Eからの一定温度;および
G:冷却。
【0035】
特にステップEの焼成特性は、Dから950〜1250℃までの加熱を含むことができる。
【0036】
特にステップA、CおよびEの温度は、5℃/分〜20℃/分の速度で上昇する。ステップB、DおよびFの温度は、ステップBでは30分〜12時間;ステップDでは30分〜12時間;ステップFでは30分〜60時間に渡って一定に維持できる。温度範囲は、焼成される材料のサイズ、形状および化学組成によって、そして使用した炉の種類、すなわちトンネル炉、バッチ炉または回転炉によって変化する。ステップGの冷却は、自然冷却でもよい。
【0037】
さらなる態様によると、本発明は、本発明の任意の実施形態の方法によって得た、または得ることができるガラス化製品に関する。
【0038】
本発明による製品は、安定化重金属を含む付加価値製品であり、該製品は少なくとも、重金属を含む廃棄物、モレキュラーシーブおよび粘土の混合物のガラス化製品である。モレキュラーシーブに関して、任意の適切なモレキュラーシーブを使用できるが、好ましくはAlおよび/またはSiベースモレキュラーシーブである。炭素ベースモレキュラーシーブは適切でなく、それゆえ本発明の目的では除外される。本発明の製品は、ガラス化される混合物がさらにアルカリベース、ホスフェートベースまたはアルミナベース化合物の少なくとも1つを含む製品であってもよい。特にアルカリベース化合物はNa2SiO3であってもよく、ホスフェートベース化合物はNa3PO4であってもよく、アルミナベース化合物は水酸化アルミニウム(Al(OH)3)および/または酸化アルミニウム(Al23)でもよい。
【0039】
実施形態によると、製品は、ガラス化される混合物が廃棄物およびモレキュラーシーブ(但し、炭素ベースモレキュラーシーブは除く)を含む予備安定化混合物を調製することと、予備安定化混合物を粘土と混合することとによって得られるようなものである。予備安定化混合物はさらに、アルカリベース、ホスフェートベースまたはアルミナベース化合物の少なくとも1つを含んでもよい。特にアルカリベース化合物はNa2SiO3であってもよく、ホスフェートベース化合物はNa3PO4であってもよく、アルミナベース化合物はAl(OH)3および/またはAl23であってもよい。
【0040】
本発明の任意の実施形態による方法によって得られる、または得られた製品は、例えば建設または干拓/埋立てに適切な付加価値製品である。
【0041】
ガラス化製品は例えばレンガ、軽量コンクリートブロック、タイル、コンクリート骨材、コンクリートまたは埋立て材料用の砂様原材料、あるいはコンクリートまたは道路建設用の砂利様骨材、道路柵、砂防ブロック、建設ブロック、擁壁ブロック、鉄道用枕木、玉石歩道または街路用のレンガまたはブロック、パティオ(Patio)または歩道用の石またはタイル、下水または排水パイプ、ガラス繊維絶縁体、天井タイル、壁板、屋根瓦、および床用タイルの形であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、廃棄物、例えば廃水、汚泥、および/または固体廃棄物からの毒性金属化合物および金属カチオンを含む、ある汚染物質を安定化する方法に関する。廃棄物は重金属を含む産業廃棄物であり得る。廃棄物は重金属を含む危険廃棄物でもあり得る。本発明はさらに、他の有機成分はもちろんのこと、重金属以外の多くの他の種類の汚染物質を安定化させる方法を提供する。
【0043】
1つの態様によると、本発明は、
重金属を含む廃棄物を、(但し、炭素ベースモレキュラーシーブは除く)モレキュラーシーブ、および粘土と混合するステップと;
混合物をガラス化するステップと;
を含む重金属安定化の方法を提供する。
【0044】
モレキュラーシーブに関して、本発明の目的のための任意の適切なモレキュラーシーブが使用できる。炭素ベースモレキュラーシーブは適切でなく、したがって特に本発明から除外される。したがって本発明の目的のためには、「モレキュラーシーブ(molecular sieve)」または「モレキュラーシーブ(molecular sieves)」の用語は、本発明の目的に適切なモレキュラーシーブのみを指すであろう。明示的に示されていなくても、モレキュラーシーブという用語は、本発明から否定されている、炭素ベースモレキュラーシーブを含まないであろう。
【0045】
混合物の成分は任意の順序で、または場合により特定の順序に従って混合できる。
【0046】
ガラス化ステップによって、混合物は再結晶化構造に変換される。ガラス化は、モレキュラーシーブ、粘土および重金属の間に相変化を引き起こすことによって重金属を安定化させるために実施される。
【0047】
本発明によると、重金属を含む廃棄物材料は少なくともモレキュラーシーブおよび粘土と共に混合される。ガラス化後、廃棄物は例えば建設で、または埋立てに使用できる最終付加価値製品の一部となる。
【0048】
本発明の目的では、「廃棄物」は、重金属を含む任意の廃棄物を意味する。重金属を含む廃棄物は、廃水、固体廃棄物、および/または汚泥であり得る。廃棄物は産業廃棄物であり得る。重金属を含む産業廃棄物を含めた、廃棄物の例の非制限的なリストは、吸収プロセスからの使用済み炭素、残油クラッキングプロセスからの使用済み炭素、石油化学精製からの使用済み粘土、石油/石油化学精製からの使用済み触媒、石油および/または石油化学精製からの使用済み廃棄物および/または汚泥、ヒ素および他の金属を含有する半導体プロセスからの余剰汚泥、焼却炉ボトムアッシュおよび/またはフライアッシュ、船舶サンドブラストからの使用済み銅スラグおよび汚泥、水および/または廃水処理工場からの余剰汚泥、電子産業からの製材および/またはエッチング廃棄物、金属精製からのスラグ、塗料産業からのTiO2廃棄物、重金属汚染粘土、重金属を含有する無機廃棄物および重金属を含有する他の任意の種類の廃棄物を含む。吸収プロセスからの、および残油クラッキングプロセスからの使用済み炭素の例は、部分酸化炭素(POX)である。石油化学精製からの使用済み触媒の例は、水素処理触媒、水素クラッキングおよび/またはFCC触媒である。
【0049】
一般に、本発明による重金属を含む廃棄物は「危険廃棄物」であろうが、「危険」の定義の範囲内と見なされないであろう重金属を含む任意の廃棄物も使用でき、本発明の範囲内である。「危険廃棄物」は本発明の目的では、重金属を含む固体、液体、半液体または半固体、汚泥などであってもよく、公衆衛生または環境に対する潜在的脅威を与え、以下の基準のいずれかを満足する、廃棄物のサブセットとして定義される。米国環境保護庁(EPA)によって危険廃棄物として特にリストされている(http://www.epa.gov/);または危険廃棄物の処理の1つ以上を示す。
【0050】
本発明の目的に適切な重金属を含む他の廃棄物は、当業者に明らかになるであろう。
【0051】
重金属を含む廃棄物は、任意の形、例えば液体、固体、またはその混合物であり得る。本発明によって加工する前に、標準技術を使用して、液体廃棄物は脱水もでき、または重金属は沈殿できる。
【0052】
重金属という用語は、生命体に毒性または危険であると見なされる任意の重金属を意味すると理解される。例えばヒト、微生物を含む動物、または植物にとってである。「重金属を含む廃棄物」において定義される「1つの重金属」または「複数の重金属」は、これに限定されるわけではないが、金属イオン、金属化合物、金属化合物アニオンなどを含む。危険重金属の例は、これに限定されるわけではないが、ヒ素、カドミウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、銀、パラジウム、プラチナ、セレン、タングステン、ウラン、バナジウム、亜鉛などを含む。
【0053】
本発明の方法により、重金属を含む廃棄物はモレキュラーシーブと混合される。
【0054】
モレキュラーシーブは本開示において、吸着およびイオン交換の目的でミクロ多孔性、メソ多孔性またはマクロ多孔性構造を持つ固体として定義される。
【0055】
モレキュラーシーブは、明瞭なX線回折パターンによって示される、秩序多孔構造を備えた結晶構造を有する。結晶構造は、異なる種の特徴を示す空洞および孔を画定する。孔は均一または不均一に分散し得る。モレキュラーシーブは、Kosal et al.,2002,Nature Materials,1,118−121(その内容は参照により本明細書に組み入れられている)によって述べられている、ミクロ多孔性金属ポルフィリン固体であると述べることができる。例えば該化合物は、PIZA−1(Kosal et al.)として同定された。別の例は、シリカ−アルミノ−ホスフェートである、SAPOである。これらは、8、10または12員環構造を含有するミクロ多孔性材料である。環構造は、約3.5オングストローム〜10オングストロームの範囲の平均孔径を有することができる(Union Carbideが開発、http://crtc.caer.uky.edu/text.htm)。モレキュラーシーブは、粉末またはペレットの形態でもよい。
【0056】
本発明の目的では、炭素は800℃以上の高温にて燃焼するので、「モレキュラーシーブ」という用語は本明細書で使用するように、炭素ベースモレキュラーシーブを除外するであろう。ガラス化のステップの間、本発明の方法ではより高い温度が使用され、それゆえ炭素ベースモレキュラーシーブは本発明には不適切である。
【0057】
さらに本発明で言及するモレキュラーシーブは、少なくとも1種類のモレキュラーシーブまたは異なる種類のモレキュラーシーブの混合物が使用できることを意味する。
【0058】
モレキュラーシーブは、天然または合成でもよい。合成モレキュラーシーブは、通常、アルミノシリケートまたはホスフェートゲルから熱水条件下で調製される。その結晶化は、オートクレーブ内での1〜50日に渡る長期反応によって、多くの場合、構造指向剤(テンプレート)の存在下で達成される。テンプレートの適切な選択は、特定の骨組および孔網目を調製するために非常に重要である(Meier et.al.,Atlas of Zeolite Structure Types,Butterworth,London, 1992)。合成モレキュラーシーブの例はPIZA−1(Kosal et.al.)である。
【0059】
特にモレキュラーシーブは少なくともSiおよび/またはAlを含む。さらにモレキュラーシーブは、格子のSiおよび/またはAlの四面体原子がB、Ca、Zn、Ga、Ge、Ti、V、FeまたはPなどの他の金属原子によって置換できる、結晶性骨組材料である。モレキュラーシーブは、錯体の形でもよい。例えば結晶性アルミノホスフェート組成物、SAPO、金属置換アルミノホスフェート、[MeO2]、[AlO2]および[PO2]が四面体ミクロ多孔性構造を形成し、Meが1つ以上の2価元素、Zn、Mn、Fe、MgおよびCo、および3価のFeを有する金属源であるMeAPO、金属スルフィドモレキュラーシーブおよび金属亜鉛ホスフェート組成物。
【0060】
モレキュラーシーブの詳細な例はゼオライトである。ゼオライトは、SiO4およびAlO4の連結四面体からなる骨組シリケートである。アルミノ−シリケート構造は、負に荷電して、その中に常駐する正のカチオンを引きつける。ゼオライトは、ナトリウム、カリウム、バリウム、カルシウム、または他の重金属、および比較的大型の分子のような大型カチオン、並びに、水、アンモニウムイオン、カーボネートイオンおよびナイトレートイオンのようなアニオン基のためのスペースを有するその構造内に、大きな空きスペースまたはケージを有する。好ましいゼオライトでは、スペースは相互接続されて、鉱物に応じた可変サイズの長く広いチャネルを形成する。これらのチャネルは構造へ出入りする常駐イオンおよび分子の移動を容易にする。
【0061】
ゼオライトは、イオン交換、濾過、悪臭除去、化学ふるいおよびガス吸収の作業を実施する。ゼオライトの最も周知の用途は、硬水軟化剤である。水中のカルシウムは、水を「硬く」して、スカムを形成して、他の問題を引き起こす可能性がある。損害を与えにくいナトリウムイオンを装填されたゼオライトは、硬水にその構造を通過させて、カルシウムをナトリウムイオンと交換することができる。
【0062】
本発明の方法に適切である当分野で既知の任意のゼオライトが使用できる。ゼオライトは、天然および/または合成でもよい。例えば合成Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、ZMS−5およびβ−モルデナイト、X型ゼオライトおよびA型ゼオライト、ZK−5、ZK−4、FCC/RCCゼオライトなどの合成ゼオライト、フォージャサイト、クリノプチロライト、菱沸石およびエリオナイト(Zeolite Molecular Sieves:Structure,Chemistry and Use, Donald Breck,Malabar F.,1984;Zeolites and clay minerals as sorbents and molecular sieves,R.M. Barrer,London,Academic Press,1978;Catalysis and zeolites:fundamentals and applications,J.Weitkamp,L.Puppe,New York,Springer,1999;Synthesis of porous materials:zeolites,clays,and nanostructures,Mario L.Occelli,Henri Kessler,New York,1997)。本発明の方法ではゼオライトの異なる種類またはその混合物を使用できる。ゼオライトは異なる孔径の構造を有することができる。
【0063】
ゼオライト源として、任意のゼオライトベース化合物またはゼオライトを含む任意の組成物を使用できる。例えば、異なる孔径のゼオライト、石油/石油化学精製プロセスからの使用済みゼオライト、スラリーからの重金属の除去または抽出を含む石油精製プロセスからの使用済みゼオライト、ゼオライトベース材料および化合物。
【0064】
本発明の目的では、ゼオライトと類似の特徴または挙動を有する任意の化合物を使用できる。これらは好都合には、ゼオライト類似物質と呼べる。ゼオライトと類似の特徴を有するおよび/または類似の機能を有する任意の化合物を本発明の目的に使用できることは、当業者に明らかになるであろう。したがって本出願で述べられていないモレキュラーシーブ化合物は、まだ発見されていないモレキュラーシーブ化合物と同様に、本発明の範囲内である。
【0065】
廃棄物および沈殿化合物中の重金属イオンは、モレキュラーシーブ構造および粘土鉱物構造に吸着する。本発明のプロセスは、天然、部分または完全合成のいずれかの、様々な種類の粘土を利用できる。本開示の目的では、「粘土」という用語は、「頁岩」という用語を含む。「粘土」という用語は、異なる種類の粘土または頁岩の混合物ならびに粘土および頁岩の混合物も含む。粘土および頁岩は、水和アルミナ−シリケートである鉱物の天然発生種である。それらは以下の(または他の同等の)少量または微量元素:マグネシウム、鉄、カリウム、ナトリウムおよび酸素の1つ以上を含むことができる。頁岩および粘土は類似した種類の岩石であり、生成時またはその後の両方の地質および気候条件の違いの結果として、地質学的風化、硬度および脆性の度合いがある程度異なっている。粘土および頁岩はどちらも、本発明に望ましいシリケート組成を有し、混和している(ブレンド/混合)か、または識別が困難であるかのどちらかであってもよい。粘土は海底および/または地上粘土であり得る。本発明に適切な粘土または頁岩は例えば、カオリナイト、および/またはモンモリロナイトおよび水和アルミナ−シリケートを含む鉱物を含むものであり得る。
【0066】
構造的に粘土鉱物は、アルミニウムおよびケイ素イオンまたは原子の層からなり、2つの層は酸素原子あるいは酸素および水素原子の組合せによって共に結合されている。粘土鉱物粒子は、粒子の表面および縁にある静電荷によって結合されている。マグネシウムおよび鉄は、ある粘土鉱物中のアルミニウム原子の一部と置換する。置換可能なナトリウム、カルシウムおよびカリウムイオンが、多くの粘土鉱物粒子の表面および縁で発生する。これらの置換可能なイオンまたは任意のイオンおよび粘土粒子間の水の分子層は、粘土鉱物の可塑特性を大幅に左右する。
【0067】
粘土は、その鉱物学に基づいて、3つの種類:カオリナイト、モンモリロナイトおよびイライトにグループ分けされる。カオリナイトのグループは、鉱物カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アナウキサイトおよびアロフェンを含み、その全ては水和アルミニウムシリケートである。モンモリロナイト、サポナイト、ノトロナイト、ヘクトライトおよびバイデライトはモンモリロナイトグループを構成し、アルミニウム、マグネシウム、鉄およびリチウムのある変種の水和シリケートからなる。モンモリロナイトは普通、カルシウムおよびナトリウムを置換可能なイオンとして含有する。グループ名としてのイライトは、カリウム、アルミニウム、鉄およびマグネシウムの錯体水和シリケートである、粘土の雲母変種に適用されている。カオリナイトおよびモンモリロナイトが好ましく、他の粘土および頁岩がこのプロセスに作用することが見出されており、使用することもできる。
【0068】
粘土は、重金属の吸着を最大限に向上させるために、加工中に小さな(微)粒子に粉砕される。上述の源のいずれかから粘土を得た後、粘土は非常に細かい粒子形に加工される。大半の粘土は、適切に設計されたミキサーで本発明によって要求される微粒子サイズまで粉砕される。粘土が硬い場合、所望のサイズまで予備粉砕する必要がある。
【0069】
1つの実施形態によると、本発明の方法は重金属を含む廃棄物を、モレキュラーシーブおよび粘土と混合するステップを含む。場合により、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4などの化学添加物を混合物に添加できる。アルミナベース化合物、特に水酸化アルミニウム(Al(OH)3)および/または酸化アルミニウム(Al23)などの他の化合物も混合物に同様に添加できる。これらの化合物は、任意の特定の順序で混合する必要はない。得られた混合物は次に、付加価値製品を作成するためにガラス化される。混合物は場合により、ガラス化ステップの前に熟成される。
【0070】
しかしながら、本発明の詳細な実施形態によると、各種の成分が特定の順序で混合される。
【0071】
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物は、汚染物質(重金属)を固体形に変換するために、廃棄物(特に産業廃棄物)から重金属を沈殿させるのに使用できる。特にアルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物はNa2SiO3および/またはNa2PO4であり得る。重金属は、材料構造の一部として安定化塊の中に含有されるであろう。この技術は、管理できないまたはさらに体積を縮小できない廃棄物の廃棄の長期的問題に対処するために設計されている。沈殿した重金属は、金属カチオン、化合物および/または錯体の形であり得る。
【0072】
プロセスは、液体、汚泥または固体廃棄物の干拓または他の目的に使用できる固体、構造的に堅固な材料への変換を含む。生成された固体は、低透過性の固体マトリクスに廃棄物を結合またはカプセル化するだけではなく、重金属および他の任意の危険物質も化学的に固定するので、それらは不動化される。このプロセスは、化学沈殿、化学吸着、物理カプセル化および再結晶化を含む。
【0073】
アルミナベース化合物も、さらなる安定化効果のために混合物に添加できる。特にAl(OH)3および/またはAl23を添加できる。この安定化ステップには、その特性のために、特にアルミナまたはガンマアルミナの準安定相を選択できる。あるいはAl23の他の形態も使用できる。アルミナの準安定相、ガンマまたはベータ相は、明確な数のカチオン空格子点に、結晶中の利用可能な四面体および八面体部位を無作為に占有させる、欠陥とげ状(spinal)構造を有する。それは大きな表面積も有する。結果として、より良好な吸着およびイオン交換のために、高濃度の表面酸部位が存在する。
【0074】
詳細な実施形態によると、本発明は、
重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブ(炭素ベースモレキュラーシーブを除く)と混合することによって、予備安定化混合物1を調製するステップと;
予備安定化混合物2を形成するために、予備安定化混合物1を粘土と混合するステップと;
得られた混合物をガラス化するステップと;
を含む方法を提供する。
【0075】
特に、生じた予備安定化混合物1はスラリーベース混合物である。スラリーベース混合物は、水または他の液体および不溶性固体の混合物として定義できる。スラリーベース混合物は、標準技術および当業者によって既知の方法に従って調製できる。特に、スラリー混合物の総重量の25%〜90%の水を含むスラリーベース混合物が好ましい。
【0076】
前記混合物は、モレキュラーシーブ、粘土および重金属の間で相変化を引き起こすことによって、重金属を安定化させるためにガラス化される。
【0077】
詳細な方法によると、予備安定化混合物の調製のステップは、
重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブと混合するステップと;
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を添加して、予備安定化混合物1を得るステップと;
粘土を添加して、予備安定化混合物2を得るステップと;
予備安定化混合物2を熟成させるために放置し、予備安定化混合物3を得るステップと;
を含み得る。
【0078】
特にアルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を添加するステップは、Na2SiO3および/またはNa2PO4の添加を含む。さらに得られた予備安定化混合物1はスラリーベース混合物であり得る。
【0079】
予備安定化混合物の調製は、少なくともアルミナベース化合物、特にAl(OH)3および/またはAl23を予備安定化混合物に、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物の添加と同時に、添加の前または後に添加することをさらに含んでもよい。アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物は、Na2SiO3および/またはNa3PO4であり得る。
【0080】
図1および2に例示されているさらに詳細な実施形態によると、本発明の方法は、重金属を含む廃棄物をモレキュラーシーブと混合することにより、予備安定化混合物(1)を調製するステップと(予備安定化段階1);予備安定化混合物(2)を得るために、予備安定化混合物(1)を粘土または頁岩と混合するステップと(予備安定化段階2);得られた混合物をガラス化するステップと(最終段階)を含む。アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4、および/またはアルミナベース化合物、特にAl(OH)3および/またはAl23も、予備安定化混合物(1)の調製中に添加できる。予備安定化混合物(2)を熟成するために放置して(予備安定化ステップ3)、次に熟成混合物(予備安定化混合物3)を最終ガラス化段階に従って処理する。上の方法の例は、図1の矢印Aによって例示されている。場合により、さらなる粘土を最終段階の間に、ガラス化の前に混合物に添加できる(図1の矢印Bによって示されるように)。熟成ステップも予備結晶化ステップとして示されている。
【0081】
図1および2のスキームが本発明のプロセスを容易に理解するために有用であることが提起される。しかしながら本発明の方法の範囲は図1および2に概説された、そのような特定の順序に制限されない。実際に廃棄物、モレキュラーシーブ、粘土および任意の化学添加物、例えばアルカリベースおよび/またはホスフェートベース化学物質、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4、およびアルミナベース化合物、特にAl(OH)3および/またはAl23を任意の順序で添加および混合できる。本発明の1つの実施形態の説明で挙げた任意の特徴、条件または化合物は、本発明の他の任意の実施形態の実施に等しく利用できることが理解されるであろう。
【0082】
図1および2に例示するように、第2の実施形態による方法は、予備安定化段階−1、2および3混合物が調製される「プロセス1」(段階1、2および3)、およびガラス化ステップを含む「プロセス2」において特徴付けることができる。特にプロセス1において、予備安定化混合物は、予備安定化段階−1、2および3混合物に分けることができる。しかしながら1つの態様によると、プロセスは以下により、予備安定化混合物の調製を含むことができる。
【0083】
プロセス1(予備安定化段階1、2および3)
予備安定化段階1
産業廃棄物、モレキュラーシーブおよび任意の化学添加物(Na2SiO3および/またはNa3PO4、Al(OH)3(水酸化アルミニウム)および/またはAl23)は、種々の容量の独立したサイロに好都合に貯蔵できる(図1)。化学添加物は、アルカリベース化合物、ホスフェートベース化合物および/またはアルミナベース化合物であり得る。特にアルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物はNa2SiO3および/またはNa3PO4であり得る。アルミナベース化合物はAl(OH)3および/またはAl23であり得る。
【0084】
大きい粒径を有する産業廃棄物およびモレキュラーシーブには、微粒子粉砕を実施できる。しかしながらこのステップは、粒子がすでに十分に細かい場合には実施されない。この段階の粒径は、理想的にはサブミクロン範囲であろう(1μm〜250μm)。
【0085】
モレキュラーシーブは、混合タンクあるいは他の任意の適切なコンテナまたは機械装置に導入される。重金属を含む産業廃棄物は次にタンクに導入される(しかし廃棄物およびモレキュラーシーブは任意の順序で添加できる)。次に混合物(予備安定化段階1混合物)は、水を添加することによってペースト中へ混合し、十分にイオン交換を引き起こすために例えば15分〜48時間に渡って放置して熟成させた。特に熟成時間は15分〜5時間、なおさらに詳細には2時間である。吸着プロセスはpH値の変化によって逆転させることができるので、この新しい混合物は予備安定化混合物と言われる。好ましくは、予備安定化段階1混合物は水の添加によってスラリーペースト中へ混合される。
【0086】
予備安定化混合物中のモレキュラーシーブおよび産業廃棄物の割合は、本発明の方法の目的に応じて変化し得る。
【0087】
例えばモレキュラーシーブの産業廃棄物に対する比は乾燥重量で1:2000から7:3である。非危険廃棄物が含まれる場合、モレキュラーシーブの添加は省略される。
【0088】
次に予備安定化段階1混合物を例えば15分〜48時間に渡って放置して熟成させる。特に混合物を15分〜24時間に渡って放置して熟成させる。
【0089】
化学添加物は場合により予備安定化段階1混合物へ添加されて、混合タンクに入れることができる。化学添加物は、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を含む。例えばNa2SiO3および/またはNa3PO4。その後に、アルミナベース化合物を添加できる。アルミナベース化合物は、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、例えばNa2SiO3または/およびNa3PO4の添加と同時に、添加の前または後に添加できる。アルミナベース化合物はAl(OH)3および/またはAl23であり得る。予備安定化段階1混合物は穏やかに撹拌および混合される。
【0090】
予備安定化段階1混合物(または第1の実施形態の方法に準拠した混合物)のpHは、8.0〜12.0の値に、特に9.5に調整できる。
【0091】
pHは、当分野で既知の任意の標準方法に従って任意の物質を添加することによって調整できる。
【0092】
例えばNa2SiO3および/またはNa3PO4を含み得るアルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を予備安定化段階1混合物中に添加して、混合物のpHを8〜12.0、特に金属化合物の沈殿が発生する9.5に調整することができる。形成し得る金属化合物は、金属シリケート、金属ホスフェート、および金属ヒドロキシドである。添加される化学物質の量がpHの変化を引き起こすために、そして沈殿を生じるために必要な量であることは、当業者に明らかになるであろう。
【0093】
予備安定化段階1混合物におけるアルカリベース化合物のホスフェートベース化合物に対する比は、好ましくは、体積で50:50から100:0の範囲である。特にアルカリベース化合物およびホスフェートベース化合物はNa2SiO3およびNa2PO4である。
【0094】
ホスフェートベース化合物の添加は任意である。特にホスフェートベース化合物はNa3PO4であり得る。しかしながらそれは最終製品の最終結晶化温度を低下させるので、必要とされる限りそれを予備安定化段階1混合物に添加することができる。これは、高い金属含有率の産業廃棄物を処理するときに特に有用である。
【0095】
ホスフェートベース化合物の添加に対する追加の効果
高カルシウム含有率の産業廃棄物と遭遇したときに、リン酸(H3PO4)を添加して遊離カルシウムと反応させて、代わりの経路としてアパタイトを形成することができる。
【0096】
産業廃棄物または粘土物質中にカルシウムが存在するとき、ホスフェートベース化合物の混合物への添加は、遊離カルシウムとホスフェートとの間に反応を生じさせて、アパタイトと呼ばれる化合物が形成されるであろう。特にホスフェートベース化合物はNa3PO4であり得る。形成されたアパタイトは、アモルファスから結晶性の相にあり得る。混合物中に存在する重金属は、アパタイト中に包含されて、非常に安定である新しい金属−アパタイト化合物を形成することが可能である。アパタイトは良好な金属収着能力を有する。一部の金属、例えば鉛は、新しい固体、例えば鉛−アパタイトの沈殿の間に、または既存のカルシウム−アパタイトでのカルシウムとの交換によって、アパタイト鉱物構造に入ることができる。
【0097】
加えて、混合物のモレキュラーシーブおよびアルミナベース化合物との焼成があり、焼成は新しい化学相を生じさせて、最終製品の安定性をさらに向上させる。
【0098】
アパタイトが良好な金属収着能力を有することは、十分に文書に示されている。特定の金属、例えば鉛は、新しい固体、例えば鉛−アパタイトの沈殿の間に、または既存のカルシウム−アパタイトでのカルシウムとの交換によって、アパタイト鉱物構造に入ることができる。
【0099】
アパタイト鉱物中で封鎖された金属は、他の化学安定形を著しく超える、高い耐久性および耐浸出性を有する。このことは、アパタイト鉱物構造が水相および非水相液体の存在下で、例えばpH2〜12、1000℃までの広範囲の環境条件に渡って非常に安定であるためである。アパタイトと金属との間の反応も高速であるため、反応は直ちに有効である。
【0100】
アルカリベース化合物の使用から形成された金属シリケートは、それらが最終安定化シリカ−アルミナマトリクス中に容易に包含されるため、特に有用である。特にアルカリベース化合物はNa2SiO3である。
【0101】
アルミナベース化合物源として、産業廃棄物、例えば水および/または廃水処理工場からの汚泥は、それらが主に水酸化アルミニウムからなるため使用することができる。乾燥および焼成プロセスを通じて、水酸化アルミニウムは、金属カチオンを包含できるγ−Al23に変換される。
【0102】
添加できるアルミナベース化合物の割合は、金属濃度に応じて、予備安定化段階1混合物の0%〜60%で変化できる。特にアルミナベース化合物は水酸化アルミニウムである。
【0103】
Al23(酸化アルミニウム)も、追加の安定化効果のために、予備安定化段階1混合物に添加できる。特にアルミナまたはガンマ−アルミナの準安定相はその特性のために、この安定化ステップに選択できる。あるいはAl23の他の形態も使用できる。アルミナの準安定相、ガンマまたはベータ相は、明確な数のカチオン空格子点に、結晶中の利用可能な四面体および八面体部位を無作為に占有させる、欠陥とげ状(spinal)構造を有する。それは大きな表面積も有する。結果として、より良好な吸着およびイオン交換のために、高濃度の表面酸部位が存在する。
【0104】
添加されるAl23の割合は、全乾燥混合物の0.01%から予備安定化段階1混合物の40%で変化できる。
【0105】
融剤も予備安定化段階1混合物に添加できる。融剤は、より低温にてセラミック体の熟成を促進し、マトリクスにより優れた物理的特徴も与えることが既知である(Singer F and Singer S.S.,Industrial Ceramics,1963,121頁)。融剤の例は、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム;マグネシウムおよびアルカリ土類金属、例えばカルシウム、ストロンチウムおよびバリウム;ホウ素、亜鉛、鉛およびビスマスの化合物を含む。特に本プロセスで使用した融剤はホウ酸塩である。
【0106】
ホウ酸塩はその低い融点で、そして釉薬の溶融温度の低下におけるその溶融作用で既知である。ホウ酸塩はこの目的で一部のセラミック組成物に非常に少量を添加でき、ガラス状相の粘度を低下させることによって結晶化を促進できる(http://www.digitalfire.ab.ca/cermat/material/127.html)。
【0107】
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物、特にNa2SiO3および/またはNa3PO4、および/またはアルミナベース化合物、特に水酸化アルミニウムおよび/またはAl23を添加するとき、予備安定化段階1混合物をさらに5分〜6時間に渡って放置して熟成させる。特に混合物をさらに30分〜6時間に渡って放置して熟成させる。
【0108】
予備安定化段階2
粘土も、カオリナイトおよびモンモリロナイトの存在のために、重金属イオンをその鉱物構造内に吸着する。次に、適切な粘土または各種の粘土の混合物、例えば海底粘土または地上粘土の混合物を予備安定化段階1混合物中に各種の割合で添加して、予備安定化段階2混合物と呼ぶ新しい混合物を得るために、均一に混合する(図2)。予備安定化段階2混合物は、混合物の毒性に応じて10%〜90%の粘土を含む。特に予備安定化段階2混合物は、30%〜80%の粘土を含む。
【0109】
予備安定化段階3
次に予備安定化段階2混合物を、予備安定化段階3混合物を形成する目的で、化学反応の発生、ならびに金属イオンおよび金属化合物のゼオライトの孔構造および粘土鉱物の層状構造への移動に十分な時間を与えるために、15分〜48時間の適切な時間に渡って放置して熟成する。特に時間は、30分〜48時間である。
【0110】
プロセス2
予備安定化段階3混合物を、粘土加工機械につながる主ホッパーに導入する。さらなる粘土、例えば海底粘土をこの段階でホッパーに添加できる。
【0111】
予備安定化段階3混合物および追加の粘土は、さらなる混合と、場合により、2つの物質を共に混合して粒径をさらに小さくする粉砕を受ける。この段階は、保護または「マクロカプセル化」のさらなる層を与えるために実施される。
【0112】
マクロカプセル化は、廃棄物重金属が少なくともモレキュラーシーブおよび粘土の大きい構造の混合物(マトリクス)に物理的に捕捉される機構として定義される。この機構を通じて、危険廃棄物の重金属は、危険物質内の不連続孔に保持される。
【0113】
最終混合物は、30%〜90%の割合の粘土を含む。特に最終混合物は60%〜90%の割合の粘土を含む。
【0114】
最終混合物は、一連の研削、粉砕、混合、押出成形および最後にガラス化からなる粘土ベースのセラミック製品の製造のための、周知の加工機械を通過する。
【0115】
ガラス化は化学形態の高温変換プロセスとして定義される。それはガラス状物質がガラス質または結晶性シリケートまたはホスフェートをベースとしているために幅広く使用されている。シリケートガラスは、SiO4の連続四面体格子によって形成された結晶構造を有する。アルミナは四面体配置されたAlO4としてガラスの一部を形成でき、廃棄物中の金属は骨格の空格子点を充填できる。安定化は、アルミナシリカ相互作用によって強力な付着力を提供する。ホスフェートベース系は、より低温、例えば1000℃未満にて形成される利点を有する。リンがホスフェート相であるPahedronとして存在する、P5+またはPO4-3への金属の化学結合が可能である。ホスフェート金属は粘度が低いので、安定化も起こる。この機構は、炉内での焼成プロセス中に実施される。
【0116】
その上、特にガラス化プロセスは、吸収された金属化合物と共にモレキュラーシーブおよび粘土鉱物構造を、吸収された金属を永久に固定するムライトおよびクリストバライト結晶形に変換する。高温(約1000℃以上)でのガラス化は、粘土鉱物およびモレキュラーシーブの両方に相変化を引き起こすことによって、重金属カチオンを永久に安定化させる。実際にそのような温度にて、粘土鉱物およびモレキュラーシーブ支持体のアルミナシリカマトリクスは相変換を受けて、ムライトおよびアモルファスシリカを生成し、これがクリストバライトに結晶化する。結果として、捕捉された重金属は新しい相の微小構造内に残存して、新たに形成されたマトリクス中に包含されるようになる。実際に相変換は、鉱物構造における根本的な構造変化を含み、その変化の間に重金属は新しいムライトおよびクリストバライト相の一部となる。
【0117】
ゼオライト自体は、約60重量%のシリカおよび40重量%のアルミナを含むアルミナシリカ網目である。X線回折(XRD)分析は、ゼオライト単独の焼結が、高い焼成温度においてであるが、ムライト相の形成も引き起こすことを示している。
【0118】
粘土は、モレキュラーシーブの溶融プロセスがより低温で起きるように誘導する。これは、ムライトの結晶化を向上させることが報告されている、海底粘土中の鉱化剤、例えば二酸化チタン、酸化鉄(iii)、酸化カルシウム、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムの存在のために達成できる(Bulens and Delmon,1977,Clay Min.25,pp271−277;Bulens et al,1978,J.Am.Ceram.Soc.61,pp81−84;Johnson and Pask,1982,Am.Ceram.Soc.Bull.61,pp838−842)。これは、ムライトおよびクリストバライトの安定化マトリクスを提供するのはもちろんのこと、触媒網目自体の溶融および同じ2相の形成を誘発させる、粘土の重大な役割を明らかに強調している。
【0119】
炉に導入された製品は、1400℃までの温度処理を用いて、焼成プロセスを受ける。詳細な実施形態によると、焼成プロセスは、図3に示したパターンによる温度特性を有することができる。全体の焼成特性は、以下の通りである。
A:室温から450〜550℃までの加熱(特に500℃);
B:450〜550℃の一定温度(特に500℃);
C:Bから750〜900℃までの加熱(特に850℃);
D:750〜900℃の一定温度(特に850℃);
E:Dから900〜1300℃までの加熱(特に1050℃);
F:Eからの一定温度(特に1050℃);および
G:冷却。
【0120】
特にステップEの焼成特性は、Dから950〜1250℃までの加熱を含むことができる。
【0121】
特にステップA、CおよびEの温度は、5℃/分〜20℃/分の速度で上昇する。ステップB、DおよびFの温度は、ステップBでは30分〜12時間;ステップDでは30分〜12時間;ステップFでは30分〜60時間に渡って一定に維持できる。温度範囲は、焼成される材料のサイズ、形状および化学組成によって、そして使用した炉の種類、すなわちトンネル炉、バッチ炉または回転炉によって変化する。ステップGの冷却は、自然冷却でもよい。
【0122】
使用した処理装置および炉の種類に応じて、各種の製品を製造できる。
【0123】
例えば混合のためのローラーおよびパンミル、製品の押出のための圧延および真空押出機などの処理装置を使用して、そして各種の押出機マウスピースを使用することによって、各種の製品形状を形成できる。物質の含水率は通常、該プロセスでは25%未満である。あるいは物質が蒸気処理および回転シャフトを使用した混合によって処理される、軟泥または湿潤粘土処理装置がある。この後に物質は、製品形成のために成形チェーンプレス中へ供給される。次に最終製品は離型され、乾燥のために放置される。
【0124】
炉、例えばトンネル炉、回転炉または他の任意の種類の炉を使用できる。
【0125】
処理装置の種類、使用した炉および使用した押出機マウス/ダイピースまたは型の種類に応じて、各種の製品を製造できる。
【0126】
加えて、所望ならば最終製品の色を変化させて、追加の結合強度を付与するために、プロセス中に各種の化学添加物を添加できる。例えば結合強度を付与するためのリグニンおよび濃厚な赤色を発生させるための酸化鉄粉末。
【0127】
別の実施形態によると、本発明の方法は図4に示す方法で実施できる。特に廃棄物貯蔵ユニットAに格納された廃棄物質の予備秤量比は、混合ユニットDに直接送られるか、または予備処理ユニットBでの予備処理を受けるかのどちらかである。予備処理は、廃棄物が次のステップでより容易に管理できるように廃棄物を調節するのに役立ち得る。例えば予備処理は、廃棄物の微粉砕、ふるい分け、混合、脱水および/または乾燥を含み得る。
【0128】
次に廃棄物の混合物を混合ユニットDの内側のサイロCからの添加剤および化学薬品を用いて、規定の時間に渡ってさらに調節する。時間は、廃棄物の特徴に応じて変わることがある。特に時間は、15分〜1時間であり得る。添加剤および化学薬品は、アルカリベース化合物、ホスフェートベース化合物、アルミナベース化合物および任意の融剤ならびにモレキュラーシーブを含む。廃棄物の混合物に添加される添加剤および化学薬品の量は、処理される廃棄物の毒性に依存するため変化することがある。
【0129】
特にアルカリベースおよびホスフェートベース化合物はNa2SiO3および/またはNa3PO4であり得る。アルミナベース化合物はAl(OH)3および/またはAl23であり得る。すでに述べたように、本発明の方法の任意の適切な融剤が使用できる。上述の任意の適切なモレキュラーシーブが使用できる。本方法に使用された廃棄物は、すでに述べた廃棄物であり得る。
【0130】
次に粘土貯蔵ユニットEに格納されている粘土は、混合ユニットDに添加される。例えば粘土は予備処理できる。さらなる添加剤および化学薬品を混合ユニットDに添加できる。特に混合ユニットD内の廃棄物対粘土比は、混合物の総重量に基づく比で1:99〜70:30であり得る。次に、安定したペーストまたはスラリー混合物が得られるように、混合物を規定の時間に渡って混合する。次にペーストまたはスラリーを熟成ステーションFで処理して、ここでペーストまたはスラリーは成形ユニットGに到達する前に水分含有率の低減を受ける。特に熟成ステーションFでの熟成時間は、15分〜48時間で変化し得る。
【0131】
次に得られた成形製品は乾燥機Hを使用して、製品が焼成プロセスを含むガラス化を受ける炉ユニットJに送られる前にさらに乾燥できる。乾燥機Hでは、成形製品の含水量を製品が乾燥される時間に応じて、製品の総重量に基づいて0〜10重量%まで減少させることができる。焼成プロセスは1400℃までの温度に達することができる。しかしながら製品がガラス化を受ける時間は、要求される製品の種類によって変わることがある。焼成プロセスの後、焼成された製品は次に製品貯蔵ユニットKに収集および格納される。
【0132】
詳細な実施形態によると、混合ユニットDからの混合物を熟成ステーションFに格納することができる。したがって熟成ステーションFでの熟成時間は、混合ユニットDからの混合物が格納される時間量に応じて変化し得る。
【0133】
製品は例えばコンクリートまたは埋立て材料および干拓用の骨材様原材料、コンクリートまたは道路建設用の砂利様骨材、道路舗装用のレンガ様、建物および建設材料、建物および建設材料用のタイル様材料、道路柵、砂防ブロック、建設ブロック、擁壁ブロック、鉄道用枕木、玉石歩道または街路用のレンガまたはブロック、パティオまたは歩道用の石またはタイル、下水または排水パイプ、ガラス繊維絶縁体、天井タイル、壁板、屋根瓦、および床用タイルであり得る。
【0134】
したがって本発明は、本発明の方法の任意の実施形態によって得た、または得られるガラス化製品も提供する。
【0135】
本発明による製品は安定化重金属を含む製品であり、該製品は、セラミックマトリクス、モレキュラーシーブ(但し、炭素ベースモレキュラーシーブは除く)および粘土の構造内へ安定化された重金属を含む少なくとも危険廃棄物の混合物のガラス化製品である。本発明の製品は、ガラス化される混合物がアルカリベース化合物、ホスフェートベース化合物またはアルミナベース化合物の少なくとも1つをさらに含む製品であり得る。アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物はNa2SiO3および/またはNa3PO4であり、アルミナベース化合物はAl23および/またはAl23であり得る。
【0136】
実施形態によると、製品は、ガラス化される混合物が、廃棄物およびモレキュラーシーブを含む予備安定化混合物1を調製することと、予備安定化混合物2を形成するために予備安定化混合物1を粘土と混合することとによって得られるようなものである。予備安定化混合物1および2は、アルカリベース化合物、ホスフェートベース化合物またはアルミナベース化合物の少なくとも1つをさらに含むことができる。アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物はNa2SiO3および/またはNa3PO4であり得、アルミナベース化合物はAl23および/またはAl23であり得る。混合物は、製品を得るために混合物をガラス化する前に、上述した適切な期間に渡って熟成することができる。
【0137】
本発明の任意の実施形態による方法によって得た、または得られる製品は、例えば建設または干拓に適切な付加価値製品である。
【0138】
本発明の目的に非危険廃棄物を使用するとき、本発明の同様の製品を得るために、廃棄物に上述した同じ方法を受けさせることができる。
【0139】
次に本発明の完成製品を梱包および貯蔵する。
【0140】
ここで本発明を一般的に説明したが、例示によって提供され、本発明を制限するものではない以下の実施例の参照により、本発明はさらに容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0141】
重金属を含有する7種類の異なる産業廃棄物を選択および処理する。選択した廃棄物のリストを表1に示す。
【0142】
この廃棄物の予備安定化は、ゼオライト3要素および産業廃棄物7要素からなる。産業廃棄物およびゼオライトを共に、混合容器内でスラリーまで混合した。自然のままの含水率が低すぎる場合、スラリー混合物が得られるまで水を添加した。
【0143】
混合物を4時間維持した。その後、Na2SiO3を添加してpHを9.0に変化させた。予備安定化混合物を8時間放置して熟成させた。
【0144】
海底粘土を予備安定化混合物と65:35の割合で混合して、物質を一連の混合および押出機によって処理して試験サンプルを作成した。この時点での含水率は20%〜25%で維持されていた。
【0145】
サンプルを含水率が0%〜3%に達するまで、105℃の乾燥オーブンで乾燥させた。
【0146】
製品を規定の焼成特性にて炉内で焼成した(焼成特性の全体のパターンを図3に示す)。
A:室温、すなわち30℃から550℃までの加熱。時間変化:5℃/分
B:550℃にて2時間の一定温度。
C:550℃から900℃までの加熱。時間変化:5℃/分
D:900℃にて2時間の一定温度。
E:900℃から1050℃までの加熱。時間変化:5℃/分
F:1050℃にて6時間の一定温度。
G:自然冷却。
【0147】
焼成製品に浸出試験を受けさせた。結果を下の表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
列1は、該技術によって処理された産業廃棄物の種類を示す。
列2は、産業廃棄物中に存在する主な重金属を示す。
列3は、該技術によって処理された後の、主な金属の浸出結果を示す。
列4は、未処理産業廃棄物中の主な金属の浸出結果を示す。
列5、6、7は、重金属の許容される基準を示す。
【0150】
表1より、処理および未処理産業廃棄物からの重金属の浸出性間に著しい相違があることがわかる。
【0151】
処理は、産業廃棄物の浸出性を環境上安全なレベルまで低下させる。
【0152】
未処理形における産業廃棄物の金属浸出性は、表1に示すように、許容限度を超えていることがわかる。世界保健機関(WHO)基準、米国環境保護庁(EPA)およびSitting基準からの許容される金属含有率限度を基準として使用した。
【0153】
次に該技術を使用して処理した産業廃棄物を、その金属浸出性について試験した。結果は、金属がマトリクス内で安全に安定化されて、環境内へ浸出しないことを示した。
【実施例2】
【0154】
シンガポールの石油化学会社からの部分酸化炭素、すなわちPOX炭素を該技術を用いて試験および処理した。
【0155】
予備安定化は、ゼオライト2要素およびPOX炭素8要素から構成されていた。POX炭素およびゼオライトを共に混合容器内で混合した。混合物の含水率を30%〜40%に維持した。自然のままの含水率が低すぎる場合、水を混合物に添加した。
【0156】
混合物を1時間維持した。その後、Na2SiO3およびNa3PO4をそれぞれ4:1の割合で添加して、pHを9.0に変化させた。予備安定化混合物を2時間熟成させた。
【0157】
海底粘土を予備安定化混合物と85:15の割合で混合して、物質を一連の混合および押出機によって処理した。寸法50mm×12mm×30mmの試験サンプルを製造した。この時点での含水率は20%〜25%で維持されていた。
【0158】
サンプルを含水率が0%〜3%に達するまで、105℃の乾燥オーブンで乾燥させた。
【0159】
製品を炉内で焼成して、焼成製品に浸出試験を受けさせた。「処理前」および「処理後」結果を表2に示す。
【0160】
製品を規定の焼成特性にて炉内で焼成する。
A:室温、すなわち30℃から550℃までの加熱。時間変化:5℃/分
B:550℃にて2時間の一定温度。
C:550℃から800℃までの加熱。時間変化:5℃/分
D:800℃にて1時間の一定温度。
E:800℃から1050℃までの加熱。時間変化:5℃/分
F:1050℃にて6時間の一定温度。
G:自然冷却。
【0161】
【表2】

【0162】
試験結果より得られた値は危険廃棄物分類のNEA限度より下であり、それゆえ廃棄または再使用に関して安全である。
【実施例3】
【0163】
該技術を汚染された海底粘土および水道設備からの余剰汚泥を処理するために使用した。
【0164】
水処理工場から入手した余剰汚泥はケーキ形であった。固体形のおよそ30%の高レベルのアルミナベース化合物を、残りの70%の水と共に有していた。30%の固体は主にAlベース化合物(Al(OH)3)からなり、有機物質、細菌およびシリカベース化合物を含んでいた。余剰汚泥中には非常に低レベルの重金属が検出された。本技術では余剰汚泥を重金属の安定化のためのアルミナ源として使用した。
【0165】
合成汚染海底粘土の化学分析を表3および4に示す。
【0166】
【表3】

【0167】
【表4】

【0168】
予備安定化混合物は、ゼオライト1要素および水道設備からの余剰汚泥2要素および合成汚染海底粘土7要素から構成されていた。各種の内容を共に混合容器内で混合した。混合物の含水率を30%〜40%に維持した。自然のままの含水率が低すぎる場合、水を混合物に添加した。
【0169】
混合物を8時間維持した。物質を一連の混合および押出機によって処理した。寸法50mm×12mm×30mmの試験サンプルを製造した。この時点での含水率は20%〜25%で維持されていた。
【0170】
サンプルを含水率が0%〜3%に達するまで、105℃の乾燥オーブンで乾燥させた。
【0171】
製品を炉内で焼成して、焼成製品に浸出試験を受けさせた。結果を下の表5に示す。
【0172】
製品を規定の焼成特性にて炉内で焼成し、浸出試験を受けさせた(図3)。
A:室温、すなわち30℃から500℃までの加熱。時間変化:5℃/分
B:500℃にて3時間の一定温度。
C:500℃から900℃までの加熱。時間変化:5℃/分
D:900℃にて2時間の一定温度。
E:900℃から1050℃までの加熱。時間変化:5℃/分
F:1050℃にて8時間の一定温度。
G:自然冷却。
【0173】
【表5】

【0174】
試験結果より得られた値は危険廃棄物分類のNEA限度より下であり、それゆえ廃棄または再使用に関して安全である。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の方法の詳細な実施形態を示す。
【図2】本発明の方法の詳細な実施形態を示す。
【図3】本発明の詳細な実施形態による焼成プロセスの温度特性を示す。
【図4】本発明の方法の1つの実施形態で使用された各種のユニットのレイアウトを示す。図で引用される各種のユニットは以下の通りである。Aは廃棄物貯蔵ユニットであり、Bは廃棄物ユニットの予備処理ユニットであり、Cは化学薬品および添加剤サイロユニットからなり、Dは混合ユニットであり、Eは粘土貯蔵ユニットであり、Fは熟成ユニットであり、Gは成形ユニットであり、Hは乾燥ユニットであり、Jは炉ユニットであり、Kは製品貯蔵ユニットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属安定化の方法であって、
重金属を含む廃棄物を、炭素ベースモレキュラーシーブを除くモレキュラーシーブおよび粘土と混合するステップと;
混合物をガラス化するステップと;
を含む方法。
【請求項2】
重金属を含む廃棄物を、前記モレキュラーシーブと混合することによって予備安定化混合物1を調製するステップと;
予備安定化混合物2を形成するために、前記予備安定化混合物1を粘土と混合するステップと;
得られた混合物をガラス化するステップと;
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備安定化混合物1がスラリーベース混合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラス化の前に前記混合物を熟成するステップをさらに含む請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物のpHを8.0〜12.0に調整するステップをさらに含む請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物のpHが9.5に調整される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を前記混合物に添加することによってpHが調整される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記重金属を沈殿させるステップを含む請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
前記重金属が金属カチオン、化合物および/または錯体の形態である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を前記混合物に添加することによって前記重金属を沈殿させる請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物を前記混合物に添加するステップをさらに含む請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
少なくともアルミナベース化合物を前記混合物に添加するステップをさらに含む請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
少なくともアルミナベース化合物を前記混合物に、アルカリベースおよび/またはホスフェートベース化合物の添加と同時に、添加の前または後に添加するステップをさらに含む請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
アルミナベース化合物源が水および/または廃水処理工場からの汚泥である請求項12〜13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミナベース化合物が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)および/または酸化アルミニウム(Al23)である請求項12〜14に記載の方法。
【請求項16】
前記Al23がアルミナおよび/またはガンマアルミナの準安定相である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ホスフェートベース化合物を添加するステップを含み、該ステップにおいて前記ホスフェートベース化合物が廃棄物および/または粘土中のカルシウムと反応してアパタイトを生成し、前記重金属が前記アパタイト中に包含される請求項1〜16に記載の方法。
【請求項18】
前記廃棄物が重金属を含む危険および/または産業廃棄物である請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
前記重金属を含む危険および/または産業廃棄物が、吸収プロセスからの使用済み炭素、残油クラッキングプロセスからの使用済み炭素、石油化学精製からの使用済み粘土、石油/石油化学精製からの使用済み触媒、石油および/または石油化学精製からの使用済み廃棄物および/または汚泥、ヒ素を含有する半導体プロセスからの余剰汚泥、焼却炉ボトムアッシュおよび/またはフライアッシュ、船舶サンドブラストからの使用済み銅スラグおよび汚泥、電子産業からの製材および/またはエッチング廃棄物、金属精製からのスラグ、塗料産業からのTiO2廃棄物、重金属汚染粘土、重金属を含有する廃棄物からなる群より選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記残油クラッキングプロセスからの使用済み炭素がPOX炭素である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記石油化学精製からの使用済み触媒が水素化処理触媒、水素クラッキングおよび/またはFCC触媒である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アルカリベース化合物の前記ホスフェートベース化合物に対する比が体積で50:50から100:0である請求項7〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブの廃棄物に対する比が乾燥重量で1:2000から7:3である請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記モレキュラーシーブが天然および/または合成モレキュラーシーブである請求項1〜23に記載の方法。
【請求項25】
前記モレキュラーシーブが少なくともSiおよび/またはAlを含む請求項1〜24に記載の方法。
【請求項26】
前記モレキュラーシーブのSiおよび/またはAlがB、Ca、Zn、Ga、Ge、Ti、V、FeまたはPによって置換される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モレキュラーシーブがB、Ca、Zn、Ga、Ge、Ti、V、Fe、P、SiまたはAlの少なくとも1つを含む請求項1〜24に記載の方法。
【請求項28】
前記モレキュラーシーブが錯体の形態である請求項1〜27に記載の方法。
【請求項29】
前記モレキュラーシーブの錯体が、結晶性アルミノホスフェート組成物、SAPO;金属スルフィドモレキュラーシーブ;金属亜鉛ホスフェート組成物;金属置換アルミノホスフェート、MeAPO(MeAPOは、[MeO2]、[AlO2]および[PO2]を含む四面体ミクロ多孔性構造であり、Meは金属である)からなる群より選択される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記MeがZn、Mn、Fe、Mg、Coおよび/またはFeからなる請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記モレキュラーシーブが少なくともミクロ多孔性金属ポルフィリン固体である請求項1〜30に記載の方法。
【請求項32】
前記モレキュラーシーブがPIZA−1および/またはSAPOである請求項1〜31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種類のモレキュラーシーブを含む組成物の形態のモレキュラーシーブを添加するステップを含む請求項1〜32に記載の方法。
【請求項34】
前記モレキュラーシーブが異なる孔径である請求項1〜33に記載の方法。
【請求項35】
前記モレキュラーシーブがゼオライトである請求項1〜34に記載の方法。
【請求項36】
前記ゼオライトが天然または合成ゼオライトである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ゼオライトが石油/石油化学精製プロセスからの使用済み合成ゼオライトである請求項35〜36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つのゼオライトが、合成Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、ZMS−5およびβ−モルデナイト、X型ゼオライト、A型ゼオライト、ZK−5、ZK−4、FCC/RCCゼオライト、フォージャサイト、クリノプチロライト、菱沸石およびエリオナイトからなる群より選択される請求項35〜37に記載の方法。
【請求項39】
前記ガラス化ステップを実施する前に、さらに粘土を最終混合物に添加するステップを含む請求項1〜38に記載の方法。
【請求項40】
ガラス化の製品が、レンガ、軽量コンクリートブロック、コンクリート骨材、コンクリートまたは埋立て材料用の砂様原材料、あるいはコンクリートまたは道路建設用の砂利様骨材、道路柵、砂防ブロック、建設ブロック、擁壁ブロック、鉄道用枕木、玉石歩道または街路用のレンガまたはブロック、パティオまたは歩道用の石またはタイル、下水または排水パイプ、ガラス繊維絶縁体、天井タイル、壁板、屋根瓦、および床用タイルの形態である請求項1〜39に記載の方法。
【請求項41】
前記廃棄物が重金属を含有する非危険廃棄物である場合、前記モレキュラーシーブの廃棄物に対する比が0である請求項1〜40に記載の方法。
【請求項42】
関与する混合ステップを任意の特定の順序で実施する必要がない請求項1〜41に記載の方法。
【請求項43】
前記アルカリベース化合物がNa2SiO3であり、前記ホスフェートベース化合物がNa3PO4である請求項7〜42に記載の方法。
【請求項44】
前記Na2SiO3のNa3PO4に対する比が体積で50:50から100:0である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの融剤の前記混合物への添加をさらに含む請求項1〜44に記載の方法。
【請求項46】
前記融剤がホウ酸塩である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ガラス化が1400℃までの温度処理を使用することによって達成される請求項1〜46に記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜47に記載の方法によって得られたまたは得ることができるガラス化製品。
【請求項49】
安定化重金属を含む製品であって、少なくとも、重金属を含む廃棄物、炭素ベースモレキュラーシーブを除くモレキュラーシーブ、および粘土の混合物のガラス化製品である製品。
【請求項50】
前記廃棄物が重金属を含む産業廃棄物である請求項49に記載の製品。
【請求項51】
前記廃棄物が重金属を含む危険廃棄物である請求項49〜50に記載の製品。
【請求項52】
ガラス化された混合物が、アルカリベース、ホスフェートベースまたはアルミナベース化合物の少なくとも1つをさらに含む請求項49〜51に記載の製品。
【請求項53】
ガラス化された混合物が、廃棄物およびモレキュラーシーブを含む予備安定化混合物1を調製するステップと、予備安定化混合物2を形成するために予備安定化混合物1を粘土と混合するステップとによって得られる請求項49〜52に記載の製品。
【請求項54】
前記混合物が熟成される請求項49〜53に記載の製品。
【請求項55】
前記アルカリベース化合物がNa2SiO3であり、前記ホスフェートベース化合物がNa3PO4であり、そしてアルミナベース化合物が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)および/または酸化アルミニウム(Al23)である請求項52〜54に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−539053(P2008−539053A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507283(P2007−507283)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000117
【国際公開番号】WO2005/097368
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506340459)ニューアース・プライヴェイト・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】