説明

廃棄物最終処分場の保護工法

【目的】 遮水シートの損傷を阻止するとともに耐候性に優れる廃棄物最終処分場の保護材工法を提供することを目的とする。
【構成】 廃棄物最終処分場1の保護工法であり、傾斜状の法面部3と底面2からなる下地に遮水シート4を敷設し、その上に予め耐候性を有する合成高分子系のシート層8、9の間、または片面に繊維材料からなる補強材10を積層した保護材5を設置した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、廃棄物最終処分場に用いる保護工法に係り、詳しくは廃棄物最終処分場の下地に敷設した遮水シートの損傷を阻止して長期にわたり使用できる廃棄物最終処分場の保護工法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、廃棄物最終処分場における環境汚染と安全性の問題がクローズアップされている。廃棄物最終処分場は厚生省の指針に遮水工を施すように義務付けられている。一般的には、遮水シートによる表面遮水工法が多く採用されている。この表面遮水工法は、下地基盤の安定性、遮水シートの敷設工事の確実性、遮水シートの耐久性、維持管理の確実性が必要である。
【0003】表面遮水工法の今までの問題は、施工時点では発生しなかったが、湧水等によって洗掘された場合や地盤沈下によって基盤が不安定になることであった。この結果、遮水シートの施工は環境条件によって左右されやすいため、下地への敷設性、シートの接合性、耐クリープ性等を考慮したような確実な施工ができないことがあった。
【0004】上記廃棄物最終処分場に用いる遮水シートとしては、加硫ゴム、塩化ビニル、ポリウレタン、またポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)のようなポリオレフィン樹脂をシート状にしたもの、上記樹脂に部分架橋もしくは完全架橋させたモノオレフィン系共重合ゴムをブレンドして柔軟性、耐熱性そして反撥弾性を付与したものがある。また、モノオレフィン系共重合ゴムとポリオレフィンプラスチックとを予め動的に熱処理して部分架橋させた熱可塑性エラストマーに密度0.910−0.950g/cm3 のエチレン重合体を混合してシート状に成形した防水シートがある。この種の遮水シートは引張強度、引裂強度、破断伸び等において優れた物性値を有するだけでなく、接着性および柔軟性に富んでいるために接着施工が容易であり、しかも耐候性に優れているために土木工事用として好適である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる遮水シートは耐外傷性に欠け、野鳥あるいは下地に存在する鋭利な異物によって損傷する危険性があった。更に、敷設した遮水シートの衝撃等による外傷による損傷が発生した。例えば、遮水シート敷設後の覆土作業時には、遮水シートが重機の回転運動や接触によって損傷したり、覆土材に含まれた石等によって損傷することがあった。また、最終廃棄物の埋設時には、遮水シートが自転車のスポーク等の不燃物の接触による損傷があった。
【0006】そのため、従来では遮水シートの保護材として、不織布、織布、古畳、ウレタンフォーム等が使用されていた。しかし、不織布はニードルパンチ加工されているため、長期的には不織布が分解することがあった。織布はポリエステル繊維やポリプロピレン繊維を素材としているが、耐候性に欠けるために、タールや樹脂などで被覆していた。古畳は廃棄品であるため、廉価な保護材であるが、やはり耐候性に難があり長期使用には無理があった。しかも、最近の住宅事情などによって畳そのものの生産が減少しているため、調達には限界があった。更に、ウレタンフォームは現場において吹き付けにより塗膜を形成していたため、作業時間がかかる問題があった。本発明はこのような問題点を改善するものであり、遮水シートの損傷を阻止するとともに耐候性に優れる廃棄物最終処分場の保護材工法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、廃棄物最終処分場の保護工法において、傾斜状の法面部と底面からなる下地に遮水シートを敷設し、その上に予め耐候性を有する合成高分子系のシート層の間、または片面に繊維材料からなる補強材を積層した保護材を設置した廃棄物最終処分場の保護工法にある。
【0008】以下、本発明の廃棄物最終処分場の保護工法を添付図面に従って詳細に説明する。図1は廃棄物最終処分場の保護構造の断面図であり、図2は図1の部分拡大図である。この廃棄物最終処分場1は、ほぼ平坦な底面2と傾斜状の法面部3とからなり、これらの下地には遮水シート4が全面に敷設されて投棄された廃棄物からの汚水が地中へ浸出しないように形成されている。
【0009】上記遮水シート4は、エチレン−プロピレン・ターポリマー、ブチルゴム、あるいはエチレン−プロピレン・ターポリマーとブチルゴムのブレンド物からなる耐候性に優れた加硫ゴム、あるいは高密度ポリエチレン、塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン等が使用される。中でも、耐候性、寸法安定性、そして機械的特性に優れる加硫ゴムシートと熱可塑性ポリウレタンシートが好ましい。尚、この遮水シートには織物や不織布のような補強材を積層、あるいは埋設することができる。
【0010】本発明で使用する熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステルタイプでもポリエーテルタイプでも使用することができるが、耐加水分解性が大きく、低温でも柔軟性が大きく、そして微生物分解の耐性が大きいポリエーテルタイプが遮水シートとして好ましい。また、上記熱可塑性ポリウレタンには、廃棄物最終処分場に用いる遮水シートにするために紫外線吸収剤、酸化防止剤、カーボンブラックが添加されている。
【0011】そして、底面2と法面部3に敷設された遮水シート4の上側には、遮水シート4の損傷を防止するために保護材5が全面あるいは局部的に敷設されている。遮水シート4と保護材5の界面には、プライマーからなる接着剤が部分的、あるいは全面に介在し、法面部3における保護材5のずれを阻止している。更に、全体の中でも最も衝撃力を受けやすい底面部には保護土7を置くことによって、投棄された廃棄物の重量にも耐えるようにすることができる。
【0012】上記保護材5は、図3に示すように、耐候性に優れるエチレン−プロピレン・ターポリマー、ブチルゴム、エチレン−プロピレン・ターポリマーとブチルゴムのブレンド物、あるいは塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルからなる厚さ0.3〜3.0mmの上下シート層8、9の間に厚さ0.05〜0.50mmの帆布からなる補強材10を積層したものである。上下シート層8、9の厚さは、同一でもまた相違していてもよい。また、図4に示すように、上シート層8に割布からなる補強材10を積層したものでもよい。上記補強材10は、帆布や割布に限定されることなく、不織布を使用することもできる。割布は、1軸延伸されたフィルムを延伸軸を交差した形で積層し、接合した開口率の大きなフィルム体であり、縦、横方向の物性(引張強さ、伸び)がほぼ等しい物性を有している。上記補強材10は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維を素材とするものである。
【0013】上記保護材5が加硫シートの場合における製造方法としては、例えば2つの未加硫ゴム層の間に帆布からなる補強材10を介在して加圧積層し、これをコンベアベルトに設置して加硫缶中に導入して走行させながら加硫する方法、あるいは押出または圧延成形した2つの未加硫ゴム層の一方のゴム層に補強材10を加圧によって積層し、次いで他のゴム層を積層した後、これを前記加硫缶で連続加硫する方法、また押出または圧延成形した2つの未加硫ゴム層の間に補強材10を介在させつつ、これを前記加硫缶で連続加硫する方法等がある。また、保護材5が塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルの場合には、押出または圧延成形した2層に補強材10を介在させ、ラミネート装置あるいは圧着ロールにて一体化させる方法がある。
【0014】本発明に使用する他の保護材5としては、上下シート層8、9、あるいは上シート層8に補強材10を積層し、更に粘着層を付着したものでもよい。この保護材5は直接遮水シート4に貼着することができる。
【0015】
【作用】本発明の廃棄物最終処分場の保護工法によれば、傾斜状の法面部と底面からなる下地に遮水シートを敷設し、その上に耐候性を有する合成高分子系のシート層の間、あるいは片面に繊維材料からなる補強材を積層した保護材を敷設することにより、遮水シートの外部からの損傷を十分に阻止することができ、耐久性に優れた廃棄物最終処分場に仕上げることができる。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
実施例1、比較例1〜3厚さ1.5mmの加硫したエチレン−プロピレン・ターポリマー製の遮水シートに接着剤を塗布した後、エチレン−プロピレン・ターポリマー製の上下加硫ゴム層の間にポリエステル繊維を用いた平織物を積層した厚さ1.5mmの保護材を設置した試料を作製した。一方、比較例として厚さ1.5mmの加硫したエチレン−プロピレン・ターポリマー製の遮水シートに接着剤を塗布し、その上にポリエステル繊維からなる厚さ4、5、あるいは10mmの不織布をそれぞれ積層した試料を作製した。
【0017】実施例2〜3厚さ1.5mmの加硫したエチレン−プロピレン・ターポリマー製の遮水シートに接着剤を塗布した後、厚さ0.5mmと厚さ0.8mmのエチレン−酢酸ビニルの片面に、それぞれポリプロピレン製の割布を積層した保護材を設置した試料を作製した。
【0018】そして、上記試料の耐外傷性、耐候性を評価した。耐外傷性の評価方法は各試料を鉄板の上に置き、先端に0.5Rの刃をつけた2.5kgの荷重を落下させ、試料が破損しない最大高さを調べた。また、耐候性はJISD0205に準じて、サンシャインW.O.Mを用いて外観変化を調べた。この結果を表1に示す。
【0019】
【表1】


【0020】この結果、実施例の保護材を使用すれば、耐外傷性、耐候性ともに優れていることが判る。
【0021】
【発明の効果】以上のように 本発明の廃棄物最終処分場の保護工法によれば、遮水シートの外部からの損傷を十分に阻止することができ、耐久性に優れた廃棄物最終処分場に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る廃棄物最終処分場の保護構造の断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明に使用する保護材の断面図である。
【図4】本発明に使用する他の保護材の断面図である。
【符号の説明】
1 廃棄物最終処分場
2 底面
3 法面部
4 遮水シート
5 保護材
7 保護土
8 上シート層
9 下シート層
10 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 廃棄物最終処分場の保護工法において、傾斜状の法面部と底面からなる下地に遮水シートを敷設し、その上に予め耐候性を有する合成高分子系のシート層の間、または片面に繊維材料からなる補強材を積層した保護材を設置したことを特徴とする廃棄物最終処分場の保護工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−1100
【公開日】平成9年(1997)1月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−176654
【出願日】平成7年(1995)6月19日
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)