説明

廃棄物焼却灰の無害化装置及びその方法

【課題】廃棄物焼却炉からの焼却灰中の重金属類の溶出防止を効率的に行うことができ、焼却灰を高温度に保持する熱量を供給するための燃焼炉が不要な焼却灰無害化装置及びその方法を提供することを課題とする。
【解決手段】廃棄物焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰無害化装置において、太陽熱集熱装置11と、太陽熱集熱装置11から太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、熱媒体を加熱する太陽熱受熱装置9と、廃棄物焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置12と、太陽熱受熱装置9で加熱された熱媒体との熱交換により、二酸化炭素分離装置12により分離した二酸化炭素を加熱する二酸化炭素加熱装置6と、焼却灰を受け入れ、二酸化炭素加熱装置6からの加熱二酸化炭素の供給を受け、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させ、焼却灰に含まれる重金属類を難溶化させる焼却灰反応装置1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類を含む廃棄物焼却炉の焼却灰を無害化して利用可能とする焼却灰無害化装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物を焼却した際に発生する焼却灰は、その殆どが埋め立て処分されている。しかし、近年、埋め立て処分場の確保が困難になり、埋め立て量を減少させることが要望されている。このため、焼却灰を土木建築資材として有効利用する試みがなされている。
【0003】
しかし、焼却灰には、有害物質、特に重金属類が含まれており、資源として利用する際には、重金属類を除去する処理を行うか、又は重金属類を安定化させて溶出量が基準値以下になる処理を行わなければならない。なお、焼却灰に含まれている重金属類のうち、特に鉛の含有量が多いため、処理の対象になっている重金属類は主として鉛である。
【0004】
重金属類の溶出を防止し無害化する方法としては、従来より、野外エージング処理が行われている。野外エージング処理は、焼却灰に適度の水分を与えつつ数週間〜数ヶ月、野外のストックヤード等に静置し、空気中の二酸化炭素と接触させる方法である。
【0005】
焼却灰に含まれる重金属類は、二酸化炭素と反応させて炭酸化物とせしめることにより、水に対する溶解度が低下する性質を有する。たとえば、鉛は酸化鉛PbOから炭酸鉛PbCOに変化することにより、水に対する溶解度は酸化鉛で107mg/lであるところ、炭酸鉛では2.5mg/lとなり、難溶性になる。
【0006】
また、焼却灰に含まれる酸化カルシウムCaOを二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムCaCOとせしめることにより、焼却灰のpHを重金属類の難溶領域とすることも行われる。すなわち、焼却灰のpHを、鉛の水に対する溶解度が最も低下するpH領域9〜11の間に調整することにより鉛の溶出を抑制することができる。この炭酸鉛を生成させ難溶性にすることと、pHを難溶性領域に調整することにより、鉛の溶解度を低減させ鉛の溶出を抑制して、焼却灰を土木資材として利用する際の基準値となる土壌環境基準値を満足させることができる。
【0007】
しかしながら、大気中の二酸化炭素濃度は約400ppmと低濃度であり、野外エージング処理が終了するには数週間〜数ヶ月という長期の時間がかかるだけでなく、多量の焼却灰を処理するためには、広大なストックヤードを必要としていた。更に、野外エージング処理そのものが、自然に進行する化学反応に頼っているため、重金属類の溶出防止効果が不安定であるという問題点があった。
【0008】
そこで、焼却灰のエージング処理を促進する技術として、特許文献1の焼却灰の改質技術が開示されている。この特許文献1の方法によると、廃棄物焼却炉からの焼却灰に、二酸化炭素と水分とを混合して、50〜600℃の温度域で一定時間保持して焼却灰を改質し、焼却灰からの重金属類溶出を防止するエージング処理を行うこととしている。上記二酸化炭素としては、ごみ焼却炉からの排ガスから高濃度二酸化炭素を分離して利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−281150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1による方法では、焼却灰を改質する際に焼却灰を高温度に保持するために外部から与える熱量として、別に設けた燃焼炉で燃料を燃焼して燃焼ガスを発生させその熱量を上記焼却灰へ供給して該焼却灰を高温度に保持することとしており、そのための燃料が必要となり燃料費等の運転費が嵩むという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、廃棄物焼却炉からの焼却灰中の重金属類の溶出防止を効率的に行うことができ、焼却灰を高温度に保持する熱量を供給するための燃焼炉が不要な焼却灰無害化装置及びその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明によると、焼却灰無害化装置に関しては、
廃棄物焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰無害化装置において、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、
太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、熱媒体を加熱する太陽熱受熱装置と、
廃棄物焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置と、
太陽熱受熱装置で加熱された熱媒体との熱交換により、二酸化炭素分離装置により分離した二酸化炭素を加熱する二酸化炭素加熱装置と、
焼却灰を受け入れ、二酸化炭素加熱装置からの加熱二酸化炭素の供給を受け、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させ、焼却灰に含まれる重金属類を難溶化させる焼却灰反応装置
と、
を備えることにより解決される。
【0013】
また、上記課題は、本発明によると、焼却灰無害化方法に関しては、
廃棄物焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰無害化方法において、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱工程と、
太陽熱集熱工程で集熱された太陽熱を受熱し受熱した太陽熱との熱交換により、熱媒体を加熱する太陽熱受熱工程と、
廃棄物焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程と、
太陽熱受熱工程で加熱された熱媒体との熱交換により、二酸化炭素分離装置により分離した二酸化炭素を加熱する二酸化炭素加熱工程と、
焼却灰を受け入れ、二酸化炭素加熱工程で加熱された加熱二酸化炭素の供給を受け、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させ、焼却灰に含まれる重金属類を難溶化させる焼却灰反応工程と、
を有することにより解決される。
【0014】
このような構成の本発明にあっては、焼却灰反応装置にて、焼却灰と二酸化炭素とを接触させることにより、焼却灰に含まれる重金属類の溶出を抑制する。焼却炉から排出される排ガスには二酸化炭素が10%程度含まれており、排ガスから二酸化炭素を分離してこれを用いる。焼却灰に含まれる重金属類は、二酸化炭素と反応して炭酸化物を生成し、水に対する溶解度が低下し難溶性になる。また、焼却灰に含まれる酸化カルシウムを二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムを生成して、焼却灰のpHを重金属類の難溶領域とする。この重金属類の炭酸化物を生成させ難溶性にすることと、焼却灰のpHを難溶性領域に調整することにより、重金属類の溶解度を低減させ重金属類の溶出を抑制することができ、処理済みの焼却灰を土木建築資材等に利用する際に、土壌環境基準値を満足させることができる。
【0015】
また、本発明では、太陽熱を集熱して二酸化炭素を加熱する。したがって、燃料を燃焼する燃焼炉が不要であり、燃料費等の運転費が不要であるので、経済的に焼却灰を無害化する。
【0016】
本発明において、焼却灰反応装置は、焼却灰を搬送するとともに焼却灰に加熱二酸化炭素を通気させる搬送格子を備えるようにすることができる。
【0017】
焼却灰に二酸化炭素を通気して炭酸化反応を進める場合、バッチ式の反応装置では設備が大きくなり、設置スペースが大きくなり、制約が生じることがある。そのため、連続式の反応装置がより好ましいが、ロータリーキルン等の回転床式反応装置では、焼却灰の攪拌性には優れるものの、焼却灰と二酸化炭素との接触が充分に得られず、焼却灰への水添加を付加する場合にも機構が複雑になり、設備コストの上で制約が生じることがある。そこで、連続的に焼却灰と二酸化炭素との接触を良好に保ちながら焼却灰の攪拌も十分に確保し、焼却灰への水添加も容易に行う方法として、ストーカ式焼却炉の火格子に似た構造の格子部材を用いた搬送格子、すなわち、格子部材が斜め方向に上下往復運動をして焼却灰を攪拌しながら搬送する搬送格子を用いて格子部材下から二酸化炭素を吹き込み、格子部材上の焼却灰に二酸化炭素を供給し、炭酸化反応を進めると同時に、焼却灰の攪拌も確保することができる。
【0018】
本発明において、焼却灰反応装置は、焼却灰に水を供給する水供給装置を備えることが好ましい。
【0019】
焼却灰に水を添加すると、焼却灰中の酸化鉛、あるいは酸化カルシウムに二酸化炭素を接触させて炭酸化を行う場合、添加された水に二酸化炭素が溶解して炭酸イオンが生成し、酸化鉛、酸化カルシウムの炭酸化反応が促進される。
【0020】
本発明において、焼却灰反応工程で、供給される加熱二酸化炭素の温度が100℃〜200℃であることが好ましい。
【0021】
酸化鉛、あるいは酸化カルシウムに二酸化炭素を接触させて炭酸化を行う場合、その二酸化炭素の温度を高くすると、酸化鉛あるいは酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸化物が生成する炭酸化反応が促進される。二酸化炭素の温度が100℃より低いと炭酸化反応の速度が低下し反応が進行しにくいため好ましくない。一方、焼却灰と二酸化炭素を接触させる雰囲気温度が200℃を超える領域では、炭酸鉛が分解して再び酸化鉛になる反応が始まるため好ましくない。また、焼却灰の雰囲気温度が200℃を超えると、焼却灰に残存する未燃分と塩素とが反応してダイオキシン類が再合成されるため、好ましくない。そのため、加熱二酸化炭素の温度を100℃〜200℃とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、太陽熱を集熱した熱により廃棄物焼却炉から排出される排ガスから分離した二酸化炭素を加熱して廃棄物焼却灰に吹き込み、焼却灰と二酸化炭素とを接触させ焼却灰のエージング処理を行うこととしたので、焼却灰中の重金属類の溶出防止を効率的に行うことができ、焼却灰を高温度に保持する熱量を供給するための燃焼炉が不要な焼却灰無害化装置及びその方法を提供することができる。また、焼却灰を搬送格子により効率よく撹拌しながら搬送することとするならば、焼却灰の灰無害化をより効率よく行うことができ、また焼却灰反応装置をシンプルでコンパクトな装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態装置を示す概要構成図である。
【図2】本発明についての一実施例における試験結果を示す図である。
【図3】本発明についての他の実施例における試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0025】
図1において、符号1は、反応槽を有する焼却灰反応装置であり、反応槽内には下部に搬送格子2が設けられている。搬送格子2は、ストーカ式焼却炉の火格子に似た構造の格子部材であり、格子部材が斜め方向に上下往復運動をして焼却灰を攪拌しながら搬送し、格子部材下から後述する二酸化炭素を格子部材上の焼却灰に吹き込み、焼却灰に二酸化炭素を供給し、炭酸化反応を進めるとともに、焼却灰の攪拌と搬送を行うものである。左側の搬入部2Aから右側の搬出部2Bに向け搬送格子2上の焼却灰Pを攪拌しながら連続的に搬送するようになっている。反応槽内の上部空間には、上記焼却灰Pへ水を散布供給する水供給装置3が設けられている。
【0026】
上記反応槽の下部には、搬送格子2の下方に形成される下部空間へ後述する二酸化炭素が後述の二酸化炭素加熱装置6で加熱された後に送入される加熱二酸化炭素送入管5が接続されている。また、上記反応槽の上部空間からは、搬送格子2上の焼却灰Pに通気された二酸化炭素を導出する二酸化炭素導出管4が接続されている。
【0027】
図示しない廃棄物の焼却炉から排出された排ガスが熱回収装置で熱回収された後の排ガスの一部を受けてこの排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置12が設けられている。二酸化炭素加熱装置6は、二酸化炭素分離装置12から該二酸化炭素を二酸化炭素供給管7により受けるようになっている。この二酸化炭素供給管7は上記二酸化炭素導出管4と合流して、二酸化炭素送風機8を経て上記二酸化炭素加熱装置6に接続されている。該二酸化炭素加熱装置6には、上記加熱二酸化炭素送入管5が接続されていて、かくして、上記焼却炉からの排ガスから分離され得られた二酸化炭素は、焼却灰反応装置1から排出された二酸化炭素と合流して上記二酸化炭素加熱装置6で熱媒体との熱交換により加熱を受けた後、上記焼却灰反応装置1へ加熱二酸化炭素送入管5により送入される加熱二酸化炭素となる。
【0028】
上記二酸化炭素加熱装置6は、熱交換器6Aを有している。この熱交換器6Aは、後述の太陽熱受熱装置9に設けられた熱交換器9Aと接続されていて、熱媒体供給ポンプ(又はブロワ)10により、熱媒体が上記熱交換器6Aと上記熱交換器9Aとの間の閉管路を循環する。熱媒体としては、蒸気、加熱空気を用いることができる。
【0029】
上記二酸化炭素加熱装置6へ供給される二酸化炭素を含む廃棄物の焼却炉の排ガスは、焼却炉に設けられた廃熱回収ボイラよりも下流の排ガスラインから抜き出される。焼却炉の排ガスは、排ガスラインに分岐ダクトを設け、その分岐ダクトから二酸化炭素分離装置を経由した後、上記二酸化炭素供給管7から上記二酸化炭素加熱装置6へ取り入れられる。集塵機の出口側に分岐ダクトを設け排ガスを二酸化炭素分離装置へ取り入れる場合、及び送風機の出口側で煙突の手前に分岐ダクトを設け排ガスを二酸化炭素分離装置へ取り入れる場合には、この排ガスは酸性ガスとダストが除去処理されているので、そのまま加熱して焼却灰反応装置へ供給することができる。
【0030】
二酸化炭素分離装置12には、公知の二酸化炭素分離装置を用いることができる。この二酸化炭素分離装置には、次の化学吸収方式と物理吸収方式とがあるが、いずれを用いてもよい。
【0031】
<化学吸収方式>
化学的に二酸化炭素を吸収する溶液、例えば、アルカリ性溶液、アミン、炭酸カリウム水溶液に排ガスを通気し二酸化炭素を吸収させ、二酸化炭素を吸収した溶液を加熱して二酸化炭素を脱離して分離する。二酸化炭素が脱離した溶液を吸収溶液として再生する方式である。
【0032】
<物理吸収方式>
物理的に二酸化炭素を吸収する溶液、例えば、メタノール、ポリエチレングリコールに高圧力に加圧した排ガスを通気し二酸化炭素を吸収させ、二酸化炭素を吸収した溶液を減圧加熱して二酸化炭素を脱離して分離する。二酸化炭素が脱離した溶液を吸収溶液として再生する方式である。
【0033】
二酸化炭素分離工程においては、分離された二酸化炭素の濃度が80〜100%となるように分離することが好ましい。
【0034】
二酸化炭素の濃度を高くすると、酸化鉛あるいは酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸化物が生成する反応が促進される。二酸化炭素の濃度が80%より低いと、二酸化炭素分離装置を用いて高濃度の二酸化炭素を得るようにするために必要となる費用に見合うだけの炭酸化反応効率が得られないため、二酸化炭素の濃度を80%以上とすることが好ましい。
【0035】
太陽熱受熱装置9は、上記熱交換器9Aを有していて、集熱された太陽熱により、該熱交換器9Aにて熱媒体を加熱するようになっている。
【0036】
上記太陽熱受熱装置9は、室外に設けられた太陽熱集熱装置11としての反射鏡からの太陽光を集光して、太陽熱を集熱するようになっており、この集熱された太陽熱で上記熱交換器9Aの熱媒体を加熱する。
【0037】
該太陽熱受熱装置9は蓄熱体を有していることが好ましく、蓄熱体に太陽熱を蓄熱し、蓄熱体により蓄熱した熱量により熱媒体を加熱するようにすると、太陽の日射量が変動しても熱媒体を所定の温度範囲に安定して加熱することができる。
【0038】
このように構成された本実施形態装置では、太陽熱集熱装置11で集熱された太陽熱が太陽熱受熱装置9の熱交換器9Aで熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体が熱媒体供給ポンプ(又はブロワ)10によって循環され二酸化炭素加熱装置6で、熱交換器6Aを介して二酸化炭素を加熱する。この加熱二酸化炭素は加熱二酸化炭素送入管5によって、焼却灰反応装置1の下部空間へ送入され、搬送格子2の下部から供給され、搬入部2Aから搬入されて搬送格子2上で攪拌されながら搬送される焼却灰Pと接触する。焼却灰Pと加熱二酸化炭素とを接触させることにより、焼却灰に含まれる重金属類は、二酸化炭素と反応して炭酸化物を生成し、水に対する溶解度が低下し難溶性になる。また、焼却灰に含まれる酸化カルシウムを二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムを生成して、焼却灰のpHを重金属類の難溶領域とする。この重金属類の炭酸化物を生成させ難溶性にすることと、焼却灰のpHを難溶性領域に調整することにより、重金属類の溶解度を低減させ重金属類の溶出を抑制することができ、処理済みの焼却灰を土木建築資材等に利用する際に、土壌環境基準値を満足させることができる。該焼却灰Pは水供給装置3から水の散布を受けており、上記二酸化炭素との反応が促進される。かくして、二酸化炭素との接触反応により重金属類の溶出防止がなされて無害化された焼却灰は搬出部2Bから排出される。
【0039】
焼却灰反応装置1での焼却灰反応工程において、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させる時間は1〜5時間であることが好ましい。焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させる時間が1時間より短いと重金属類の炭酸化物を生成する反応及び炭酸カルシウムを生成する反応が十分に進行しないため、好ましくない。5時間程度までの時間で重金属類の溶出を十分に抑制することができるため、5時間より長くする必要がない。
【実施例】
【0040】
焼却灰エージング実験を行った。焼却灰反応装置として、ガス分散板を設けた容器を用い、該容器内に焼却灰を入れガス分散板の下方からガスを通気し、焼却灰にガスを接触させた。焼却灰を撹拌しながら二酸化炭素濃度50、75、80、100%のガスを100℃に加熱して通気し、また、焼却灰に水を噴霧した。廃棄物焼却炉から排出された2種類の焼却灰、焼却灰A(鉛溶出濃度0.25mg/l)と焼却灰B(鉛溶出濃度0.18mg/l)を用いてエージング実験を行なった。容器内に焼却灰を1.0kg入れ、通気ガス量を0.53Nm/hとしてガスを通気した。このガス通気量の設定は、以下に基づく。1日のごみ処理量が100ton/日の焼却炉では発生焼却灰量が375kg/hであり、発生排ガス量は26,000Nm/hであり、排ガス中の二酸化炭素濃度は10%である。この発生排ガス量から経済的に抜き出し可能であって焼却灰のエージング処理に使用可能な排ガス量は2,000Nm/hであり、二酸化炭素分離により得られる二酸化炭素ガス量は二酸化炭素ガス濃度100%のガスとして200Nm/hとなるところ、焼却灰量を375 kgを1.0kgにスケールダウンしてエージング実験を行う際には、スケールダウン比率に合わせて通気ガス量を0.53Nm/hに設定した。
【0041】
通気時間0.5、1、2 、5、10、20時間後の焼却灰の鉛溶出濃度を測定し、排ガス通気時間と鉛溶出濃度との関係を、焼却灰Aについて図2に、焼却灰Bについて図3に示す。図中、用いられた二酸化炭素濃度を、◆50%、■75%、▲80%、●100%として示してある。
【0042】
焼却灰を土木資材として利用する際に規制値となる鉛の土壌環境基準値である鉛溶出濃度0.01mg/lに対して、エージング処理後の焼却灰の鉛溶出濃度が小さくなる通気時間は、二酸化炭素濃度80%ガスでは、焼却灰Aの場合5時間であり、焼却灰Bの場合2時間であり、二酸化炭素濃度100%ガスでは、焼却灰Aの場合1時間であり、焼却灰Bの場合1時間であった。
【0043】
焼却炉排ガスを二酸化炭素分離して生成した二酸化炭素濃度80〜100%ガスを100℃に加熱して焼却灰と接触させることにより、鉛溶出濃度を土壌環境基準値以下にして溶出を抑制するエージング処理を極めて短時間で行うことができることを確認した。
【符号の説明】
【0044】
1 焼却灰反応装置
2 搬送格子
3 水供給装置
6 二酸化炭素加熱装置
9 太陽熱受熱装置
11 太陽熱集熱装置
12 二酸化炭素分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰無害化装置において、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、
太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱し、受熱した太陽熱との熱交換により、熱媒体を加熱する太陽熱受熱装置と、
廃棄物焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置と、
太陽熱受熱装置で加熱された熱媒体との熱交換により、二酸化炭素分離装置により分離した二酸化炭素を加熱する二酸化炭素加熱装置と、
焼却灰を受け入れ、二酸化炭素加熱装置からの加熱二酸化炭素の供給を受け、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させ、焼却灰に含まれる重金属類を難溶化させる焼却灰反応装置
と、
を備えることを特徴とする焼却灰無害化装置。
【請求項2】
焼却灰反応装置は、焼却灰を搬送するとともに焼却灰に加熱二酸化炭素を通気させる搬送格子を備えることとする請求項1に記載の焼却灰無害化装置。
【請求項3】
焼却灰反応装置は、焼却灰に水を供給する水供給装置を備えることとする請求項1又は請求項2に記載の焼却灰無害化装置。
【請求項4】
廃棄物焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰無害化方法において、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱工程と、
太陽熱集熱工程で集熱された太陽熱を受熱し受熱した太陽熱との熱交換により、熱媒体を加熱する太陽熱受熱工程と、
廃棄物焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程と、
太陽熱受熱工程で加熱された熱媒体との熱交換により、二酸化炭素分離装置により分離した二酸化炭素を加熱する二酸化炭素加熱工程と、
焼却灰を受け入れ、二酸化炭素加熱工程で加熱された加熱二酸化炭素の供給を受け、焼却灰と加熱二酸化炭素とを接触させ、焼却灰に含まれる重金属類を難溶化させる焼却灰反応工程と、
を有することを特徴とする焼却灰無害化方法。
【請求項5】
焼却灰反応工程で、供給される加熱排ガスの温度が100℃〜200℃であることとする請求項4に記載の焼却灰無害化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147844(P2011−147844A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9153(P2010−9153)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】