説明

廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法

【課題】廃棄物を、糖化発酵によるバイオエタノールの製造用原料として利用するために、紙類系廃棄物および厨芥類系廃棄物という異種の原料を共に処理し、廃棄物由来バイオマス原料の高濃度化を達成することができる糖化発酵方法を提供する。
【解決手段】バイオマス原料の糖化発酵方法は、紙類を主に含む紙類系廃棄物を希釈水に離解させて、離解液を生成する工程と、上記離解液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得る工程と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物を希釈水に懸濁させて、懸濁液を生成する工程と、上記懸濁液に酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを加えて、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を行う工程とからなる。紙類系廃棄物の離解液および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程において、異物除去処理を行うことが好ましい。排出用水は、紙類系廃棄物の離解工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁工程の希釈水として再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を、例えば糖化発酵によるバイオエタノールの製造に利用するための廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法、詳しくは、紙類を主に含む紙類系廃棄物と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物とに分け、紙類を主な成分とする原料は離解および脱水によるパルプに調整し、厨芥類を主な成分とする原料は水で懸濁後、前述のパルプを加えることで、最終的に廃棄物由来バイオマス原料の高濃度化を達成することができる工業的に非常に有効な廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガスの排出抑制に寄与するバイオマスの利活用は、カーボンニュートラルの観点から注目されており、直接燃焼、ガス化、メタン発酵、エタノール発酵などにより、電力や化石燃料代替としての利用および開発が行われている。現在、国内で注目されているバイオマス原料は、廃木材、剪定枝、下水汚泥、食品廃棄物、農産廃棄物などが挙げられる。その一方で、焼却施設に持ち込まれる一般廃棄物の中には、紙類や厨芥類等のバイオマス資源が60%以上存在しているが、ほとんど利用されていないのが現状である。これら一般廃棄物は比重選別により、紙類およびプラスチック類を多く含む軽量ごみと、厨芥類を多く含む重量ごみとに分類できることは知られており、その重量ごみをメタン発酵基質に利用する開発が行われている。
【0003】
一方、紙類は焼却されるのみであり、これを回収してエタノール発酵基質とする発明が、下記の特許文献1にすでに記載されている( 「ごみ焼却施設におけるセルロース系エタノールの製造方法」)。
【0004】
ところで、平成18〜20年度の環境省発表の全国廃棄物排出量は、3700〜3900万tであるが、そのうち、厨芥類や紙布革類の比率は、63〜66%を占め、2400万t程度が毎年焼却処分されている(環境省ホームページ内資料より算出)。これらは水分を含んだ量であるが、一般的に紙類の含水率は30%、厨芥類は70〜80%であることを考慮に入れても、非常に多くのバイオマス資源であるといえる。
【0005】
一方、エタノールは蒸留により濃縮されるため、蒸留開始時の濃度が高くなければ、エネルギー回収率は高くならない。高濃度のエタノール反応液、または別のバイオリファイナリー原料の高濃度生産のためには、高濃度の発酵基質が必要である。
【0006】
例えば、厨芥類を発酵基質とする場合、原料に含まれるデンプン質が多く、かつ含水率も低く、さらに発酵不適物が少ない場合には、液化および糖化を行っただけで発酵基質として用いられるが、それ以外の場合は、例えば下記の特許文献2では、生ごみから得られた糖液を濃縮する方法について言及されており、また下記の特許文献3においては、デンプン質を含む原料から30〜60%のペレットを形成し、固体発酵による同時糖化発酵を行う方法が記載されている。
【0007】
さらに紙類については、例えば下記の特許文献4において、紙類とそれ以外のごみが混ざっている廃棄物から、紙類のセルロース成分を分離回収する方法が記載されており、紙を離解することで異物を除去し、繊維化された紙類のセルロース分を回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−96818号公報
【特許文献2】特開2006−325577号公報
【特許文献3】特開2005−65695号公報
【特許文献4】特開2002−159953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、廃棄物中に多く含まれるバイオマス資源をできるだけ多く回収するためには、紙類と厨芥類を多く回収し、かつ発酵不適物や難発酵物質をできるだけ多く取り除き、さらに原料濃度を高くする必要があるが、上記従来の特許文献に記載の技術では、充分な処理を行うことができないという問題があった。特に、厨芥類は粘度が高く、機械的な脱水に適さない場合が多く、コンポストで用いられるような熱による乾燥は時間がかかり、かつ熱源として電力等が必要とされるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、最終的に高濃度のバイオマス原料を糖化発酵することができるため、結果的に目的生産物の濃度が高くなるとともに、処理設備が小規模になって、設備コストが低減することができ、一般廃棄物由来のバイオマス資源の利用適応範囲が広がることで、炭酸ガス排出量が低減し、排出権取引に利用できる、廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、廃棄物由来の紙類および厨芥類を共に処理し、エタノール発酵原料とすることにより、さらに収量が向上し、炭酸ガスの排出削減にも寄与できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法の発明は、紙類を主に含む紙類系廃棄物を希釈水に離解させて、離解液を生成する工程と、紙類系廃棄物の離解液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得る工程と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物を希釈水に懸濁させて、懸濁液を生成する工程と、厨芥類系廃棄物の懸濁液に酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを加えて、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を行う工程とからなることを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程において、異物除去処理を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の希釈水として再利用することを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程の濃度調整処理に利用することを特徴としている。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、脱水パルプおよび排出用水を得る工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の処理温度が、60℃〜95℃であることを特徴としている。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程、および廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程において、処理液のpHを調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法の発明は、紙類を主に含む紙類系廃棄物を希釈水に離解させて、離解液を生成する工程と、紙類系廃棄物の離解液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得る工程と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物を希釈水に懸濁させて、懸濁液を生成する工程と、厨芥類系廃棄物の懸濁液に酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを加えて、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を行う工程とからなるもので、請求項1の発明によれば、最終的に高濃度のバイオマス原料を糖化発酵することができるため、結果的に目的生産物の濃度が高くなるとともに、処理設備が小規模になって、設備コストが低減することができ、一般廃棄物由来のバイオマス資源の利用適応範囲が広がることで、炭酸ガス排出量が低減し、排出権取引に利用できるという効果を奏する。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程において、異物除去処理を行うことを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、紙類および厨芥類をともに一度水で希釈することにより、バイオマス原料に適さない異物を除去することができるという効果を奏する。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の希釈水として再利用するもので、請求項3の発明によれば、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を循環利用することで、排水処理を大幅に低減することができるという効果を奏する。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程の濃度調整処理に利用するもので、請求項4の発明によれば、紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を循環利用することで、排水処理を大幅に低減することができるという効果を奏する。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、脱水パルプおよび排出用水を得る工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の処理温度が、60℃〜95℃であることを特徴とするもので、請求項5の発明によれば、紙類系廃棄物および厨芥類系廃棄物の原料は、廃棄物由来であるため、多くの雑菌が含まれており、一連の反応もしくはその一部を60℃〜95℃の温度で処理することにより、雑菌由来の不必要な原料の腐敗および排出用水の腐敗を防ぐことができるという効果を奏する。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法であって、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程、および廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程において、処理液のpHを調整することを特徴とするもので、請求項6の発明によれば、例えばエタノール発酵に適した廃棄物由来バイオマス原料を調製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明による廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法の実施の形態を示すブロック図である。
【0027】
同図を参照すると、本発明による廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法は、紙類を主に含む紙類系廃棄物を希釈水に離解させて、離解液を生成する工程と、紙類系廃棄物の離解液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得る工程と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物を希釈水に懸濁させて、懸濁液を生成する工程と、厨芥類系廃棄物の懸濁液に酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを加えて、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を行う工程とからなることを特徴とするものである。
【0028】
ここで、廃棄物は、比重選別などの機械的な分離手法により、紙類を多く含む廃棄物と厨芥類を多く含む廃棄物に分類できる。紙類は表面加工処理されていたり、プラスチックや金属などと複合化して存在しているため、水で紙類を離解させ、この離解処理中に、バイオマス原料として不適なものを粒径等で分離除去する工程を入れることができる。
【0029】
一方、厨芥類は、野菜くずなど原形を留めているため、水で懸濁することで均一化及び微細化する。この懸濁処理中に、バイオマス原料として不適なものを粒径等で分離除去する工程を入れることができる。
【0030】
一般廃棄物由来バイオマス原料を発酵基質として用いる際に、厨芥類と紙類に分けた後、希釈水を用いて異物除去や微細化等の処理を行ない、かつ最終的な原料処理濃度を高くする必要がある。
【0031】
厨芥類は野菜くずなど原形を留めているため、水で懸濁することで均一化及び微細化する。紙類は表面加工処理されていたり、プラスチックや金属などと複合化して存在しているため、水で紙類を離解させ脱水することにより、パルプとして回収する。
【0032】
水に懸濁させた厨芥類はその懸濁成分であるセルロース、デンプン、タンパク質といった含水性の高い成分を酵素により分解し液化する。
【0033】
脱水により濃縮されたパルプを、厨芥類の液化処理工程の前後において投入し、パルプを酵素により分解し液化する。
【0034】
さらに脱水パルプの投入前後において、厨芥類や紙類由来の原料を基質とする微生物を加え、目的成分の生産を行うものである。
【0035】
処理工程中の液化に伴い、脱水パルプを投入し、最終的に反応槽容量あたりの高濃度原料を処理する。投入する脱水パルプは、一括投入すると粘度が高くなり、機械的な攪拌に支障をきたすことが想定されるため、複数回に分けて行うことが望ましい。また、脱水パルプを分けて加えるのに要する時間は、3時間から72時間であるのが好ましい。
【0036】
紙類系廃棄物の離解液の生成工程および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程において、スクリーンによる異物除去処理を行うことが好ましい。
【0037】
紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の希釈水として再利用することが好ましい。
【0038】
紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程の濃度調整処理に利用することが好ましい。
【0039】
さらに、機械的な脱水工程で発生した脱水液中には、細分化されたバイオマス原料成分の水溶性成分が含まれているため、この用水を離解水や懸濁水として再利用することで未回収成分の回収を行うことができる。
【0040】
本発明による廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法では、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、脱水パルプおよび排出用水を得る工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の処理温度は、60℃〜95℃とするのが好ましい。ここで、紙類系廃棄物および厨芥類系廃棄物の原料は、廃棄物由来であるため、多くの雑菌が含まれており、一連の反応もしくはその一部を60℃〜95℃、好ましくは70℃〜85℃で実施することにより、雑菌由来の不必要な原料の腐敗および用水の腐敗を防ぎ、雑菌の繁殖を抑えることができる。
【0041】
また、紙類系廃棄物の離解液の生成工程、厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程、および廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程において、処理液のpHを調整することが好ましい。
【0042】
厨芥類と紙類の使用比率は、原料の性状によっても変化するが、乾燥重量比で紙類が少なくとも30%以上もしくは厨芥類が70%以下であることが望ましい。
【0043】
また、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程、または紙類系廃棄物の離解液および厨芥類系廃棄物の懸濁液の混合工程において、処理液のpHを調整することにより、例えばエタノール発酵に適した廃棄物由来バイオマス原料を調製することができる。
【0044】
本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法によれば、バイオマス資源の高濃度化により、微生物の資化成分の高濃度化が図られ、その後の目的生産物の高濃度化が実現する。
【0045】
また、本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法によれば、バイオマス資源の高濃度化により、処理設備が小規模になり、設備コストが低減する。
【0046】
本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法によれば、バイオマス資源の高濃度化により、原料としての利用範囲が広まることで、廃棄物からの資源回収量が増え、炭酸ガス排出量の低減につながり、排出権取引に用いることができる。
【0047】
本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法によれば、排出用水を循環利用することで、排水の処理が少なくなる、もしくは無くなる。
【0048】
本発明の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法は、一般廃棄物そのものにも適応できるが、異物除去効率を考慮に入れると、機械選別により紙類が主に含まれる紙類系廃棄物と厨芥類が主に含まれる厨芥類廃棄物に分離して処理することが望ましい。さらに、オフィス発生の事業系廃棄物のような紙類が主な廃棄物と、スーパーや飲食店由来事業系廃棄物のような厨芥類が主な廃棄物の場合、機械選別無しで処理を行うことができる。
【実施例】
【0049】
つぎに、本発明の実施例を説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
家庭から発生した生ごみ(1)、および食堂から発生した2種類の生ごみ(2)(3)を用いて、ミキサーにより懸濁処理を行った。懸濁時に適宜加水し、ミキシングが可能なギリギリの濃度で懸濁処理を行った。さらに、得られた懸濁物30gに、100mM酢酸バッファー(pH4.5)を5ml加え、酵素(Celic Ctec)2mlを加えることで、厨芥の懸濁物の糖潜在量(グルコース潜在量)、および実際のグルコース濃度を求めた。得られた結果を、下記の表1に示した。
【表1】

【0051】
この表1の結果から明らかなように、厨芥類の懸濁物の最終スラリー濃度は、いずれの場合も12%に届かず、実際のグルコース濃度は、最大でも3.5%程度であった。従って、これをエタノール発酵の原料とした場合には、最大でもエタノール濃度が2vol%に満たなくなるため、蒸留によるエネルギーが多く必要になり、エネルギー回収率が悪くなってしまう。
【0052】
つぎに、本発明の方法において、OA紙を5w%で調製したパルプ離解溶液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得た。そして、上記家庭から発生した生ごみ(1)、および食堂から発生した2種類の生ごみ(2)(3)の懸濁液に、それぞれ酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを酵素による液化に応じて添加して、バイオマス原料の高濃度化を伴った糖化発酵を行った。
【0053】
この糖化発酵溶液について、得られたエタノール溶液からグルコースの生成量を理論的に求めたところ、いずれの場合も生成グルコース濃度が大幅に上昇した。
【0054】
従って、厨芥類懸濁液に、脱水パルプを加えることで、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を実施でき、高濃度化した目的生産物が得られることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙類を主に含む紙類系廃棄物を希釈水に離解させて、離解液を生成する工程と、紙類系廃棄物の離解液を脱水して、脱水パルプおよび排出用水を得る工程と、厨芥類を主に含む厨芥類系廃棄物を希釈水に懸濁させて、懸濁液を生成する工程と、厨芥類系廃棄物の懸濁液に酵母を加えるとともに、上記脱水パルプを加えて、高濃度化されたバイオマス原料により糖化発酵を行う工程とからなることを特徴とする、廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。
【請求項2】
紙類系廃棄物の離解液の生成工程および厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程において、異物除去処理を行うことを特徴とする、請求項1に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。
【請求項3】
紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、紙類系廃棄物の離解液の生成工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の希釈水として再利用することを特徴とする、請求項1または2に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。
【請求項4】
紙類系廃棄物の離解液の脱水工程から排出された排出用水を、廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程の濃度調整処理に利用することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。
【請求項5】
紙類系廃棄物の離解液の生成工程、脱水パルプおよび排出用水を得る工程および/または厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程の処理温度が、60℃〜95℃であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。
【請求項6】
紙類系廃棄物の離解液の生成工程、厨芥類系廃棄物の懸濁液の生成工程、および廃棄物由来バイオマス原料による糖化発酵工程において、処理液のpHを調整することを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の廃棄物由来バイオマス原料の糖化発酵方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−212593(P2011−212593A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83309(P2010−83309)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】