説明

廃棄物画分の非加圧−前処理、酵素加水分解および発酵

【課題】比較的高い乾物含量を有する、単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の非加圧−前処理、酵素加水分解および発酵による、バイオエタノールを含む発酵産物の製造方法の提供。
【解決手段】酵素加水分解および発酵にわたる非加圧−前処理から、発酵可能および非−発酵可能な固形物の分類まで、単一の容器または廃棄物画分の機械的加工処理に自由落下混合を用いる同様のデバイスで、比較的高い乾物含量で加工処理する。酵素加水分解は、炭水化物分解酵素を含む加水分解酵素ならびに酸化酵素の組合せに基づく。発酵は酵母またはいずれか他の種類のエタノール発生微生物、すなわちバイオエタノールまたは他の生化学材料の生成にペントースおよび/またはヘキソースを利用することができる微生物を用いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い乾物含量を有し、所望により大きな粒子を含んでいてもよい、単糖類および/または多糖類を含有する廃棄画分の非加圧−前処理、酵素加水分解および発酵による、バイオエタノールまたは他の有用な発酵産物を生成するための方法に関する。酵素加水分解および発酵にわたる非加圧−前処理から発酵可能なおよび発酵不可能な固形物の分類までの方法は全体として、マッシュを輸送することなく、単一の容器中で高い乾物含量で処理することができる。この単一容器中で行う混合は、自由落下混合原理に基づく。
【背景技術】
【0002】
家庭、産業および農業処理、自治体作業ならびに食品および飼料加工は、多糖類および/または単糖類を含有する、例えば、グルコース、デンプン、セルロースおよびヘミセルロースの形態で含有する廃棄物画分および副産物を発生する。今日、家庭および産業で発生した廃棄物画分の大部分は、堆積されるかまたは焼却されている。廃棄物画分の堆積は種々の環境、健康および論理的な問題と関連し、したがって、多くの国、例えばEU諸国においてますます制限されている。主要な別法の処理は、廃棄物の焼却である。広く分布した地方加熱システムを有する国々、例えばデンマークにおいては、燃焼性の廃棄物を例えば電気および地方の加温に変換する廃棄物−エネルギー工場が、廃棄物のエネルギー含量の極めて良好な利用を提供している。しかしながら、地方加熱システムを有さない国々の大部分については、非常に低い効率で廃棄物の乏しい発電が提供されている。
【0003】
さらに、廃棄物用量の焼却は多くの新たな環境問題、主としてNO−、SO−およびダイオキシン放出を生じる。冷暖房ガス浄化システムにおけるかなりの投資を削減し得るが、かかる問題は排除されない。さらに、廃棄物のほぼ20%が非−可燃性であり、スラグおよびフライアッシュとして堆積されている。近頃ではスラグの一部分が建築作業における基礎材料として利用されているが、主としてスラグ中の高含量の重金属がかかる利用を妨げ得るという事実に起因して、かかる地域内の将来の規制を予想しなければならない。
【0004】
したがって、近代社会によって発生した膨大な量の廃棄物は明白な解決法がないまま、ますます問題視されるようになってきている。地方のコミュニティー、産業ならびに社会は、一般的に、環境的にフレンドリーな方法で廃棄物画分をより高い価値の材料に変換する方法を開発することにかなりの関心を持っている。したがって、例えば、種々の廃棄物画分を、微生物および/または加水分解酵素の使用によって、バイオエタノールまたは他の生化学材料に潜在的に変換することができるであろう。
【0005】
一般的に、多糖類、二糖類および単糖類を含有する廃棄物画分からのバイオエタノールまたは他の有用な発酵産物の生成における鍵となる方法工程は、5つの主工程に分けることができ、各々の工程は1またはそれを超える別々の容器において処理される:
・廃棄物画分の分類および粉砕
・前処理
・加水分解
・発酵
・生成物、例えばエタノール、回収
【0006】
本発明は、驚くべきことに、前処理および加水分解の工程を、バッチ、半バッチまたは連続方法のいずれかで1つの同じ容器で行うことを可能にし、本発明の方法は、それ自体、廃棄物画分のいずれの以前の分類および粉砕にも依拠しない。さらに、発酵、分類および生成物、例えばエタノール、回収も同じ容器中で行うことができる。
【0007】
廃棄物画分の分類および粉砕
不均一な廃棄物画分の発酵を含む方法の説明において、第1の工程は、通常、廃棄物の分類および粉砕システムの非常に複雑な方法である。目的は、攪拌槽中で処理することができる有機スラリーを得ることである。残りの画分は最大範囲まで再循環しなければならない。かかるシステムの例は、米国特許第4,094,740A号に記載されている。
【0008】
前処理
前処理は、一般的に、つづく多糖類の加水分解(例えば、酵素加水分解)が植物材料の他の保護構造(例えば、リグニン)の分解を必要とする場合に必要となる。いくつかの前処理技術が、例えばバイオエタノール生産の分野で知られている。前処理方法は、例えば酸加水分解、蒸気爆発、酸化、アルカリまたはエタノールでの抽出などに基づき得る。前処理技術の一般的な特徴は、可能な添加反応物の作用と結合して、それが植物材料の分類および遊離の利点をとることであり、それは100℃を超える温度で生じ、すなわち、方法は圧力の適用を必要とする。
【0009】
加水分解
前処理および所望により機械的な前処理の後、バイオエタノールまたは他の生化学材料の生成のための単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の利用における次の工程は、遊離したデンプン、セルロースおよびヘミセルロースの発酵可能な糖への加水分解である。酵素的に行う場合には、異なる作用様式を有する多数の異なる酵素が必要となる。酵素は外部から添加することができ、あるいはバイオマス上で増殖する微生物をそれに提供することができる。
【0010】
セルロースは炭水化物加水分解酵素セルラーゼによってグルコースに加水分解される。セルロース加水分解系の有力な理解は、セルラーゼを3のクラス;
セルロース鎖の末端からセロビオース単位を遊離するエキソ−1,4−β−D−グルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ(CBH)(EC 3.2.1.91);セルロース鎖中の内部β−1,4−グルコシド結合を加水分解するエンド−1,4−β−D−グルカナーゼ(EG)(EC 3.2.1.4);セロビオースをグルコースに加水分解し、セロオリゴヌクレオチド糖からグルコース単位を遊離する1,4−β−D−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)に分ける。
【0011】
ヘミセルロース中の異なる糖はヘミセルラーゼによって遊離する。ヘミセルラーゼ加水分解系は、ヘミセルロースの不均一な性質に起因してセルロース加水分解系よりもより複雑である。系は、なかでもキシラン鎖中の内部結合を加水分解するエンド−1,4−β−D−キシラナーゼ(EC 3.2.1.8);非還元末端からキシロオリゴ糖を攻撃し、キシロースを遊離する1,4−β−D−キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37);内部結合を切断するエンド−1,4−β−D−マンナナーゼ(EC 3.2.1.78);マンノオリゴ糖をマンノースに分解する1,4−β−D−マンノシダーゼ(EC 3.2.1.25)を含む。側鎖基は、多くの酵素;α−D−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)、α−L−アラビノフラノシダーゼ(EC 3.2.1.55)、α−D−グルクロニダーゼ(EC 3.2.1.139)、シンナモイルエステラーゼ(EC 3.1.1)、アセチルキシランエステラーゼ(EC 3.1.1.6)およびフェルロイルエステラーゼ(EC 3.1.1.73)によって除去される。
【0012】
デンプンのような多糖類の加水分解に使用する最も重要な酵素は、アルファ−アミラーゼ(1,4−α−D−グルカン グルカノヒドロラーゼ(EC 3.2.1.1))である。これらはエンド作用型のヒドロラーゼであり、1,4−α−D−グルコシド結合を切断し、1,6−アルファ−D−グルコシド分岐点を回避するが、加水分解することができない。しかしながら、ベータ−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)およびプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)のようなエキソ作用型のグリコアミラーゼもデンプン加水分解に使用することができる。デンプン加水分解の結果は、主として、グルコース、マルトース、マルトトリオース、α−デキストリンおよび変動する量のオリゴ糖である。デンプン・ベースの加水分解物を発酵に用いる場合、タンパク質加水分解酵素の添加が有利になり得る。かかる酵素は、微生物の凝集を妨げ得、微生物に利用可能なアミノ酸を生成し得る。
【0013】
リグノセルロース・バイオマスの前処理および酵素加水分解を組合せることにおいて、酸化酵素の使用が全体の加水分解ならびに例えばつづく発酵のために用いる微生物の生存能力に対して積極的な効果を有し得ることが見出された。この効果の理由は、酸化酵素によって生じたリグニンおよび他のフェノール性インヒビターの酸化的架橋形成である。典型的に、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)またはペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)は、外部的または添加する微生物にラッカーゼ遺伝子を取り込ませることのいずれかで用いる。
【0014】
発酵
単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分からのバイオエタノールまたは他の有用な発酵生成物の製造に関連して使用する発酵工程は、単糖類および/または多糖類のような複雑な有機分子を、本発明のヘキソースおよびペントースからエタノールまたは他の特定の化学物質を生成することができる酵母(標準、培養または操作された)および/または細菌またはいずれか他の微生物の作用を介して、エタノール、二酸化炭素および水のようなより単純な構成物に切断する生化学反応である。
【0015】
生成物、例えばエタノール、回収
生成物の回収、例えば発酵ビールからエタノールの回収は、3つの主要な加工処理に分けられる:固形物をエタノール/水溶液から分離するビール・ストリッピング、エタノールを水性溶液回収する精留、および最後の水をエタノールから除去する脱水。
【0016】
回収方法は、例えばデンプンおよび糖ベースのエタノール産生産業において使用されている標準的な蒸留システムに非常に類似しているため、該方法はさらに記載しない。
【0017】
本発明に対して類似性を示す方法
有機廃棄物画分からバイオエタノールの産生に通じる別々に見た前処理および幾つかのつづく方法工程は、以前に記載されている。
【0018】
米国特許第4342830A号は、内部有孔回転ドラムおよび外部静止ドラムを有するドラム型ミキサー中での商業、産業、農業、家庭およびレストラン廃棄物のような有機物の加熱−前処理方法を記載している。容器は加圧下にあり、蒸気を加えて廃棄物の有機物を軟化する。一瞬の外部ドラムの減圧によって軟化した有機物は内部ドラムの孔を通され、それによって有機物および無機物の分類が行われる。したがって、廃棄物はさらなる加水分解の前によく粉砕される。有機物はエタノール生産を含む幾つかの目的のためにつづいて用いることができるが、これらの方法も加水分解も前処理として同一の容器中で起こることは記載されていない。
【0019】
米国特許第4093516A号は、機械的な前−処理、加熱前−処理、化学的加水分解および糖化、発酵およびエタノールの回収を記載しているが、当該方法は、液化した自治体の廃棄物または汚水のような低乾物含量を有する廃棄物画分に基づく。
【0020】
チェコ特許第9602835A3号は、リグノセルロースおよびデンプンを含有する材料に基づくエタノールの生産方法を記載している。材料はドラム型の高温加圧容器中で加水分解される。残りのリグノセルロースの酵素加水分解は異なる容器中で行われ、得られたマッシュはいまだもう1の異なる容器に移され、したがって前処理および加水分解のための単一の容器の使用についてはこの文献に何ら示唆されていない。
【0021】
米国特許第4094740A号は、自治体固形廃棄物からエタノールを生産するための湿式分画システムに基づく15工程の廃棄物分類システムを含む方法を記載している。つづいて、有機廃棄物は、例えばつづくエタノール産生のために、加圧酸加水分解によって粉砕および加水分解される。
【0022】
米国特許第5637502号は、エタノール産生に自治体固形廃棄物を利用する方法を記載している。該方法は、20%未満の乾物含量を有するパルプ化された廃棄物を用いて操作する。廃棄物は攪拌糟中で加圧下加熱する。加水分解は酵素を用いて行い、生成したグルコースは5工程分類ユニットを通して連続的に回収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明と公知技術との差異
したがって、高乾物含量を有する廃棄物画分を取扱い得、また非有機起源の大きな粒子を含有する部分的な有機廃棄物画分の効率的な処理も許容する単純化された方法に対する要望が存在する。本発明は、非−分類廃棄物画分を直接的に取り扱うことができ、それによって大きく、費用がかかり、かつ環境的に問題のある分類および粉砕システムの使用を避ける方法を提供する。自治体固形廃棄物、供給源での分類、または別法として有機および無機画分の幾つかの種類の中央分類が本発明の方法の能力を高めると考えられる。他の画分については、廃棄物の粗い断片をバッグに開け、本発明による方法の能力を高めると考えられる。
【0024】
本発明による方法における前−処理は常圧で行い、それによってエネルギー費用、装置費用および機械的困難が顕著に軽減される。さらに、さらなる化学物質の添加は前−処理において必要とされない。したがって、本発明は、多糖類が主として糖、デンプン、または紙、段ボールまたは同様のもののようなすでに前−処理されたセルロールである廃棄物画分に指向される。それによって、一般的にアミラーゼはセルラーゼよりも安価であるため、酵素の費用も低く維持される。この方法の目的は、単糖類の低価格抽出を行うことにある。非変換リグノセルロースは、発酵の後におそらく分類することができ、例えば、高圧前−処理を有する方法に用いることができる。
【0025】
本発明においては、加水分解はマッシュの以前の無毒化なしに酵素的に行う。さらに、加水分解は、20%(w/w)を超える乾物含量を有するマッシュに対して行う。
【0026】
本発明においては、発酵もいずれの先の無毒化なしに行う。化学物質の添加は、pH調整のためだけに必要である。所望により、液化した廃棄物画分は、さらなる糖化および発酵のために標準的な発酵容器に導くこともできる。
【0027】
バイオエタノールまたは他の有用な発酵産物の生成の次の方法工程は、所望により、非−発酵可能な固形物からの発酵済みまたは発酵可能な廃棄物画分の分類を含むことができる。この工程は、前−処理、加水分解および発酵に用いるのと同一の容器で行うことができる。加水分解が廃棄物の発酵可能な部分を液化しつつ非−発酵可能な固形物が固相で残るという事実を利用することによって、分類は、例えば容器の中に取り込まれたまたは容器の外部のふるい分けシステムによって行うことができる。
【0028】
さらに、産物、例えばエタノールの回収は1つの同一容器で行うことが可能である。このことは、例えば加熱および/または吸引によって行った発酵したマッシュからのエタノールの全体回収、または例えば分類後に残る非−発酵固形物からのエタノールの回収のいずれかとし得る。
【0029】
例えば、バイオエタノール生産の技術分野内においては、現在まで、自由落下混合の原理を利用して1つの単一容器内で前−処理および加水分解を行うことが不可能であり、前−処理から産物の回収を1つの容器中で行う全体方法を行うことは少なくとも不可能であった。
【0030】
重力混合の原理は、たとえ高粘度を有していようとも、大きなからまった粒子が存在していいようと、低エネルギー入力でもってすべての種類の廃棄物画分に適用することができ、簡単なスケールアップを許容する。本発明のもう1つの目的は、非加圧−前処理を用いることによる前−処理においてエネルギー入力を減少することである。驚くべきことに、本発明による20%を超える乾物含量を有する非−断片化の部分的に有機的な廃棄物画分の処理が、廃棄物にもともと存在するセルロース、ヘミセルロースおよびデンプンの50%を超えるものをセロビオース、グルコースおよびキシロースに酵素的に加水分解することを見出した。さらに、他の発酵可能な原料を添加することなく、4体積%を超えるエタノール含量を得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(発明の概要)
本発明は、単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の非加圧−前処理、液化、糖化、発酵および分類の方法に関する。当該方法は、比較的高い乾物含量、好ましくは20%を超える、比較的大きな粒子を含む廃棄物に好適である。従来の方法とは異なり、本発明の方法は、さらに、大きな粒子を含む部分的に有機的な廃棄物画分の効率的な処理を許容する。該材料の処理は、さらなる水の供給、無毒化または機械的断片化なしに行うことができる。
【0032】
前−処理は、所望により、圧力を加えることなく、すなわち容器を大気に開放し、蒸気を投入することによっても行い得、前−処理時間は比較的短い、すなわち0ないし120分の範囲内である。
【0033】
本発明のさらなる特徴は、前−処理および加水分解を1つの単一容器中で行うという事実である。さらに、容器は、所望により、発酵およびふるい分け概念によって非−発酵可能な固形画分から発酵可能なブロスの分離を行うために用いることもできる(図1および2参照)。全体発酵マッシュまたは固形画分のいずれかからの生成物、例えばエタノールの回収も、該容器中で行うことができる。廃棄物画分の同時混合は、廃棄物画分の必要な機械的作用を保障するための重力の原理に主として依拠する混合デバイス中でも行う。好ましい型の混合デバイスは、ドラムミキサー、回転式ミキサーまたは同様のデバイスのような自由落下ミキサーである。さらに、当該方法は、高含量のデンプン、精製デンプン、セルロース、ヘミセルロースおよび単糖類を有する、単糖および/または多糖類を含有する廃棄物画分のバイオエタノール産生に特に好適である。
【0034】
酵素加水分解は、炭水化物分解酵素を含む加水分解酵素ならびに酸化酵素の組合せに基づく。発酵は酵母またはいずれか他の種類のエタノール発生微生物、すなわちバイオエタノールまたは他の生化学材料の生成にペントースおよび/またはヘキソースを利用することができる微生物を用いて行う。
【0035】
(発明の説明)
単糖類および/または多糖類を含有するバイオマスに対する機械的作用
本発明は、3つの方法工程:すなわち、非加圧−前処理、酵素加水分解および発酵を含む。さらに、廃棄物画分および発酵産物の分類/回収の工程も含まれ得る。前−処理および加水分解は1つの単一容器で行い、一方で発酵、分類および産物回収は所望により前−処理および加水分解と同一の1つの容器で行うことができる。バイオエタノール生産の技術分野内では、かかる方法工程を1つの単一容器中でどのように統合するかが以前に示されていなかった。米国特許第4342830A号、チェコ特許9602835A3号および米国特許第4094740A号のような膨大な先行技術文献は、本願において特許請求するものに類似する出発材料および方法工程を記載している。しかしながら、それらのいずれも、非加圧−前処理または単一の容器、反応器または同様のデバイス中での前−処理および加水分解の統合については記載していない。本発明の容器は、自由落下混合原理、すなわち、ドラムミキサー、廃棄物を持ち上げる回転水平軸を有するミキサーまたは自由落下原理を利用する同様の混合デバイスに基づく(かかる混合デバイスの例を示す図2を参照されたい)。
【0036】
本発明のすべての方法工程において行う混合は、少なくとも4倍の目的を供する。
第1に、それは、用いる多糖類および/または単糖類を含有する廃棄物画分および蒸気、酵素ならびに微生物の間の緊密な接触を保障する。
【0037】
第2に、自由落下混合の間に材料に対して行われる機械作業が、裂けるより大きな粒子が離れるのを助け、したがって、材料の表面積を増大することを援助し、それはさらに、例えば用いる酵素に対するセルロースおよびヘミセルロースの近づきやすさを増大するであろう。材料に対する機械作業をさらに増大するために、金属球または材料と衝突するであろう同様の手段を所望によりミキサーに添加してもよい。
【0038】
第3に、材料の混合は、当業者によく知られているように、例えばセルラーゼ酵素、特にセロビオヒドラーゼを阻害し得る、高セロビオース濃度の局所蓄積を防ぐ。
【0039】
第4に、セルラーゼ酵素の重要な特徴は、酵素性能に対するセルロース結合ドメイン(CBD)の影響である。CBDはセルロース分解酵素の機能部分である。CBDは水溶性酵素が不溶性の基質表面(セルロース)に付着することを可能とする。CBDによって提供される酵素とセルロースとの間の緊密な会合は、触媒速度および酵素の安定性を高める。セルロースを加水分解するために、酵素はセルロース鎖上のCBDの位置を変化させなければならない。機械的作用、すなわち自由落下混合がCBDの移動に重要であり、その結果、セルロース鎖に沿った酵素の酵素作用にも重要であると考えられる。
【0040】
上記したことに加えて、酵素加水分解および発酵が伝統的には穀物発酵産業において使用されるものに類似する中央設置翼軸に載置された翼、例えばラッシュトン型タービン翼またはインターミグ翼を備えた攪拌糟反応器中で行われてきたことは注記すべきである。この装置を用いると、高粘度、非常に粘稠または非常に乾燥した材料の溶液を効率的に攪拌できないが、非常に少ないまたは全く混合されないゾーンを生じるであろう。さらに、かかる混合物の攪拌は非常に大きなエネルギー入力を必要とし、それは方法経済学に対して有害である。単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分を用いて作業すると、このことが、ほぼ20%までの乾物含量の上限を以前は制限していた。自由落下に基づく混合原理は、この課題を克服し、20%を超える乾物含量を有する、単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分に使用し得る。
【0041】
例えば比較的高い乾物含量ならびに大きな平均繊維および粒子サイズを有する、単糖類および/または多糖類を含有するバイオマスのような非−混和性の植物材料の加工は、混合に回転式ミキサーを用いる固体状態発酵またはバイオリアクターから知られているが(例えば、Giovanozziら、2002)、この混合原理は、非加圧−前処理、酵素加水分解および所望により単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の発酵および分類を含む結合した単一容器方法において以前に実施されていない。
【0042】
非加圧−前処理
本発明において特許請求する廃棄物画分の非加圧−前処理の1つの例は、非−加圧蒸気前−処理である。これは、同様のバイオマスの以前に記載された前−処理、例えば、米国特許第4342830A号、米国特許第4093516A号、チェコ特許9602835A3号、米国特許第4094740A号および米国特許第5637502号から顕著に逸脱する。これらのすべての方法は、圧力下で行われている。本発明による非加圧−前処理は、容器に直接蒸気を注入することによって、および/または、容器を間接的に加熱することによって行うことができる。所望により、前−処理の影響力を改善するために、pH調整を用いることができる。廃棄物画分の前−処理は、自由落下ベースの混合と同時に適用する。
【0043】
本発明の前−処理の目的は、実際の酵素処理の前の殺生物活性を通した望ましくない微生物の量の最小限化にある。かかる作業の例は、放射能照射、UV−照射およびエレクトロポレーションである。所望により熱処理を用いることによって、種々の紙画分、野菜のような高い水分含量および低いリグニン含量を有するバイオマスの内部構造の崩壊、およびデンプン構造の開口のような加工したバイオマスの軟化が殺生物効果に加えて起こる。多糖類のつづく加水分解の適当な実行がもとのリグノセルロース材料の他の保護構造(例えば、リグニン)の分解を必要する場合は、加圧前−処理が必要となり得る。しかしながら、本発明の前−処理の目的は非−加工バイオマスなどの保護構造を崩壊することではなく、むしろ、微生物活性を制限し、加工した廃棄物画分を軟化することである。非加圧−前処理方法は好ましくは蒸気投入に基づくが、所望により酸性またはアルカリ性の化合物を補充することもできる。
【0044】
本発明による単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の非加圧−前処理は、好ましくは廃棄物をほぼ100℃まで加熱する蒸気を利用する。これは、当該技術分野で以前に記載された前−処理、例えば基質の加圧前−処理を利用している米国特許第4342830A号に記載された方法から顕著に逸脱する。バイオエタノール生産における本発明にかかる廃棄物画分のような高い乾物含量を有するバイオマス/下層の利用、および方法の全工程を通した自由落下混合の利用は、以前に記載されていない。
【0045】
記載したすべての画分は、所望により、本発明による実際の方法において利用する前の分類、断片化またはパルプ化のような機械的前−処理のいくつかの種類に付してもよい。しかしながら、機械的前−処理はそれ自体で本発明の一部分を構成するものではない。バイオエタノール生産の以前に記載された方法の大部分、例えば、チェコ特許9602835A3号、米国特許第4094740A号および米国特許第5637502号においては、エタノール生産を適当に行うために、使用するバイオマスおよび/または下層の粒子サイズを裂く、パルプ化するまたはその他減少することを絶対的な必要性としている。本発明による方法は、例えば方法経済学と関連して明らかな利点であるさらなる水の供給または機械的破裂なしに、20%を超える乾物含量を有し、大きな粒子を含有する単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分を取り扱うことができ、加工処理することができる。
【0046】
加水分解
非加圧−前処理の後、バイオエタノールまたは他の生化学材料の生産のための単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の利用におけるつぎの段階は、遊離したデンプン、セルロースおよびヘミセルロースの発酵可能な糖への加水分解である。酵素的に行うのであれば、これには異なる作用様式を有する多数の異なる酵素が必要である。酵素は、外部から添加することができ、あるいはバイオマス、すなわち廃棄物画分の上で増殖する微生物がそれらを提供することができる。
【0047】
酵素または酵素産生微生物を添加する前に、温度およびpHを問題の酵素について至適値に調整しなければならない。マッシュの冷却および加熱は、所望により、冷水または熱水(例えば、異なる加熱水)を容器に直接循環することによって行い得る。酵素加水分解の前に、酵素のために、いまだ20%を超えるが、適当な乾物含量を達成するためにさらなる水を添加することが必要になるかもしれない。pHは希釈酸または希釈アルカリ溶液を容器に注入することによって連続的に調整することができる。さらに、pHはオンラインpH測定ユニットによって制御することができる。
【0048】
酵素加水分解方法の目的は、部分的に、至適酵素条件で液化を開始されることであり、これは至適発酵条件から逸脱する場合もあり、および、部分的に、粘度を低下させてそれによってつづく糖化および発酵用の画分を調製するために廃棄物の画分を液化することである。加水分解工程の時間は、廃棄物画分の組成および稠度に依存して0ないし24時間となり得る。
【0049】
デンプン、セルロースおよびヘミセルロースまたはそれらの部分のグルコース、キシロースおよびセロビオースへの変換に作用することができる酵素は、天然形態またはかかる酵素の蓄積を生じる微生物の形態のいずれかでバイオマスに添加する。酵素の特別の混合物は、例えば画分の組成に依存して各々の廃棄物画分の各々について製造されるであろう。同様にして、他の添加剤を酵素活性を高めるために添加し得る。
【0050】
発酵
発酵工程は、非加圧−前処理ならびに酵素加水分解が以前に起こっている同一の容器中で行い得る。所望により、部分的に発酵したマッシュを最終発酵用のもう1の発酵容器に輸送することもできる。
【0051】
発酵工程は、酵母(標準、培養または操作した)、好熱性細菌または部分的に加水分解したマッシュに存在するヘキソースおよびペントースからバイオエタノールまたは他の特定の生化学材料を生成できるいずれか他の微生物を添加することによって行う。酵母の添加と同時のマッシュへのさらなる酵素の添加は、特定の条件下で好ましい。発酵を開始し得る前および発酵方法自体の間は、マッシュの温度およびpHは、用いる微生物の至適pHおよび温度に準じて調整してもよい。発酵は嫌気性とすることができ、酵母または他のエタノール生産微生物を外部から添加することができる(例えば、シード発酵糟から)。あるいは、空気、酸素またはいずれか他の酸素含有添加剤を発酵物に添加することによって、発酵方法自体で微生物を増殖することもできる。幾つかの廃棄物画分については、発酵方法を適当に行うために、例えば窒素源、栄養物ならびにビタミンを添加することが必要になるかもしれない。
【0052】
あるいは、発酵方法は、作業温度に依存して、連続エタノール回収または容器からの他の生化学材料の回収を含むことができる。
【0053】
非−発酵可能画分の分類
非−発酵可能固形物からの発酵済みまたは発酵可能な画分の分類は、非加圧−前処理、酵素加水分解および発酵に用いたのと同一の容器中で行うことができる。加水分解は廃棄物画分の発酵可能な部分を液化または部分的に液化し、大部分の非−発酵可能な固形物を固相に残すため、分類は、例えば容器に組み込んだふるい分けシステムによって行うことができる。
【0054】
組み込んだふるい分けシステムは、例えば、混合および液化した固形物からの非−変換固形物の分離を行う、内部孔を有する回転式ドラムとすることができる。あるいは、回転式混合デバイスによって清潔に維持される静止ドラム中のふるい分けデバイスとすることもできる。分類工程の目的は、最終生成物、例えばバイオエタノールの主要な部分を液相に保持しつつ、非−変換可能な固形物の主要な部分を固体画分に残すことである。容器の固形画分に残る生成物は、その沸点を超えて画分を加熱し、つづいて容器を空にする前に蒸気を凝縮することによって回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は本発明の原理の概略図を示す。示す例においては、廃棄物を容器に入れ、その中で非加圧−前処理、加水分解、発酵および分離を、蒸気、酵素および酵母/微生物を添加することによって行う。所望により、エタノール・ビールはさらなる加工のために除去してもよく、一方、固形廃棄物は排出することができる。
【図2】図2は本発明に好適な重力ミキサーの例を示す。有孔内部ドラムは、発酵可能および非−発酵可能な廃棄物画分を分離する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は本発明の原理の概略図を示す。示す例においては、廃棄物を容器に入れ、その中で非加圧−前処理、加水分解、発酵および分離を、蒸気、酵素および酵母/微生物を添加することによって行う。所望により、エタノール・ビールはさらなる方法のために除去してもよく、一方、固形廃棄物を排出することができる。
【0057】
図2は本発明に好適な重力ミキサーの例を示す。有孔内部ドラムは、発酵可能および非−発酵可能な廃棄物画分を分離する。本発明による方法は、以下の好ましい技術パラメータを用いて行うことができる。
【0058】
すべての廃棄物画分について、粒子サイズは廃棄物を加工するために制限されない。装置の寸法のみが、廃棄物の最大粒子サイズを制限し得る。したがって、例えば、方法全体を通して1000mmの粒子を有する非−分類、非−断片化廃棄物を取扱いおよび利用することが可能である。
【0059】
単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分の組成
本発明による単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分は、例えば、デンプンならびに精製デンプン、セルロース、ヘミセルロースおよび/または二糖類および/または単糖類の形態の、多糖類および/または単糖類を含有するいずれの材料も含む。以下に特徴付けする材料の処理は、補充的な水または機械的断片化の添加なしに行い得る。
【0060】
単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物の適当な型には:
例えば:
分類されていない自治体固形廃棄物(MSW)
例えば、Dewaster(登録商標)またはreCulture(登録商標)のようないくつかの中央分類、断片化またはパルプ化デバイスにおいて加工したMSW
有機画分および紙を豊富に含む画分の両方を含む、家庭から分類された固形廃棄物
RDF(廃物由来燃料、Refuse-Derived-Fuel)画分
のような家庭に由来する廃棄物画分、
【0061】
例えば:
今や家庭廃棄物として処理される紙または他の有機物画分を含む一般産業廃棄物画分
製紙産業からの、例えば再生施設からの廃棄物画分
食物および飼料産業からの廃棄物画分
製薬産業からの廃棄物画分
のような産業に由来する廃棄物画分
【0062】
例えば:
ジャガイモおよびサトウダイコンのような糖またはデンプンを豊富に含む製品を含む方法からの廃棄物画分
食物または飼料目的のために活用できない穀物、ジャガイモおよびサトウダイコンのような汚染されたかまたは他の方法で害された農業製品
庭園廃棄物
肥料または肥料由来の製品
のような農業または農作関連セクター由来の廃棄物画分
【0063】
例えば:
廃水処理工場からの汚泥
バイオマス加工処理からの繊維または汚泥
紙または他の有機画分を含有する公共セクターからの一般廃棄物画分
のような自治体、国または州が関連するまたは調節している活動由来の廃棄物画分
【0064】
酵素加水分解および発酵方法における単糖類および多糖類を含有する廃棄物画分の乾物含量は20%を超え、好ましくは20−80%、より好ましくは20−50%、なおより好ましくは20−45%および最も好ましくは20−40%である。
【0065】
自由落下ミキサーデバイス
ドラムミキサーの形態の自由落下混合概念に基づく容器を利用する場合、以下の技術データが好ましい:
・回転速度:0−30rpm、好ましくは0−20rpm、より好ましくは0−15rpm、なおより好ましくは0−10rpmおよび最も好ましくは0−5rpm
・定期的に変化する回転方向を有する回転
・所定の間隔の回転。
【0066】
明らかなように、最適な回転速度は容器の体積に依存し、したがって、方法を比較的小さな容器で行う場合、好ましい回転速度は比較的高く、一方で方法を比較的大きな容器で行う場合、好ましい回転速度は比較的低い。
【0067】
廃棄物画分の非加圧−前処理
高温前−処理を選択する場合は、以下の技術データが好ましい:
・前−処理温度:60−110℃、好ましくは65−105℃、より好ましくは70−105℃、なおより好ましくは75−105℃および最も好ましくは80−100℃。
・前−処理時間:0−120分、好ましくは5−100分、より好ましくは10−90分、なおより好ましくは20−80分および最も好ましくは30−60分。
・前−処理蒸気投入:0−2kg/kg乾物、好ましくは0.01−1.5kg/kg乾物、より好ましくは0.02−1.0kg/kg乾物、なおより好ましくは0.03−0.8kg/kg乾物および最も好ましくは0.05−0.5kg/kg乾物。
【0068】
廃棄物画分の酵素加水分解
・種々の廃棄物画分の加水分解のための酵素
−セルラーゼ
−セロビアーゼ
−ヘミセルラーゼ
−アルファ アミラーゼ
−グリコ アミラーゼ(AMG)
−酸化酵素
−所望により、タンパク質加水分解酵素およびリパーゼ
・酵素加水分解の処理時間:0−96時間、好ましくは0−72時間、より好ましくは0−48時間、なおより好ましくは0−24時間および最も好ましくは5−15時間
・酵素加水分解の温度(適用した酵素の至適温度を参照して調節):20−105℃、好ましくは20−100℃、より好ましくは20−90℃、より好ましくは20−80℃、なおより好ましくは25−70℃および最も好ましくは30−70℃
・廃棄物マッシュのpH(適用した酵素の至適pHを参照して調節):3−12、好ましくは5−10のような4−11、より好ましくは6−9のような4−9、なおより好ましくは7−8のような4−8および最も好ましくは4−5。
【0069】
加水分解した廃棄物画分の発酵
・種々の廃棄物画分の発酵のための微生物
−標準的なパン酵母(乾燥、新鮮またはいずれか他の形態の)
−いずれかの種類の遺伝子工学的または他の方法で改良された酵母
−いずれかの種類の好熱性細菌
−いずれかの種類の望ましい生成物を産生することができる菌類
・発酵の処理時間:1−150時間、好ましくは10−90時間、より好ましくは20−80時間、なおより好ましくは30−75時間および最も好ましくは40−70時間
・発酵の温度(適用した微生物の至適温度を参照して調節):20−105℃、好ましくは20−100℃、より好ましくは20−90℃、より好ましくは20−80℃、なおより好ましくは25−70℃および最も好ましくは30−70℃
・廃棄物マッシュのpH(適用した微生物の至適pHを参照して調節):3−12、好ましくは5−10のような4−11、より好ましくは6−9のような4−9、なおより好ましくは7−8のような4−8および最も好ましくは4−5。
【0070】
実施例1:セメントミキサーで行った高セルラーゼ負荷の実験
1)非処理自治体固形廃棄物からのエタノール生産
8.5kgの乾物含量の概算量に相当する、オデンセ・クラフトファーメベルクの廃棄物ピットからの12.2kgの非分類および非処理の自治体固形廃棄物を、約10°傾いた水平軸を有する慣用的な回転式セメントミキサーに負荷した。ミキサーは、材料の適当な混合を確かにするために長軸にそった2の内部リムからなっていた。廃棄物画分をドラムの内部に維持し、ミキサーからの蒸発を減少するために、蓋が開口部の上に載置されていた。ミキサードラムは、29rpmの速度で水平軸にそって回転した。
【0071】
蒸気発生器を回転式ドラムに連結した。3バールの飽和蒸気、ほぼ4.5kgを35分間に添加し、そのうちの20分を用いて廃棄物画分を加熱し、残りの15分は90−96℃の保持時間とした。
【0072】
セメントミキサーは、蒸気連結を除去し、40−45℃の範囲の一定温度に維持するためにファンヒーターを載置することによってセメントミキサーを40℃まで温度を下げた。2リットルの水を加えて、その結果として45%のマッシュの乾物含量とした。
【0073】
1275mlのCelluclast(登録商標)1.5FG L、255mlのNovozym(登録商標)188および8.5mlのAMGを廃棄物マッシュに添加した。Celluclast(登録商標)1.5FG LおよびNovozym(登録商標)188酵素の添加は、ほぼ15FPU/g DMに対応した。
【0074】
ファンヒーターを用いることによってセメントミキサーを40−45℃に加熱した。材料の混合/加水分解は9時間にわたって行い、pHレベルを測定してそれを4−5に調節するために、毎時間中断した。マッシュのpHはクエン酸顆粒をドラムに添加することによって調節した。方法は、プラスチック容器、缶詰の缶およびガラス片のような大きな非−変換粒子を含有する多少の濁ったマッシュを生じた。試料を採取した。
【0075】
得られた試料の糖含量を測定するために、それらを2500rpmで15分間遠心し、その後に上清を0.45μm濾紙を通して濾過し、HPLCで糖について分析した。15FPU/g DMの酵素負荷の9時間の酵素加水分解後に、上清は51g/kgのグルコースおよび10g/kgのキシロースを含有していた。
【0076】
40−45℃での9時間の加水分解後に、セメントミキサーに酵母を同時に添加することによって糖化および発酵方法を行った。温度は35℃未満まで放冷し、その後に170gの圧縮酵素(パン酵母、デ・ダンスケ・スピリットファブリッケル(De Danske Spritfabrikker))を添加した。糖化および発酵方法は、30−35℃にて37時間続け、その間一度だけ16時間後にpH調節のために中断した。
【0077】
同時の糖化および発酵は、4.5体積%のエタノールに等しい32g/kgのエタノールを生じた。
【0078】
発酵したマッシュをふるい分け、固形物画分を乾燥した。乾燥固形物画分は4.6kgを構成した。液体画分の乾物はさらに分析しなかった。
【0079】
2)供給源分類した有機固形物家庭廃棄物からのエタノール生産
10.3kg乾物の概算量に相当するデポーザルエリア、キリントルム イー/ジー(Klintholm I/S)からの25.7kgの供給源分類した自治体固形廃棄物を前記と同様にして取り扱った。蒸気投入は、ほぼ30%のマッシュの乾物含量を生じた。
【0080】
1545mlのCelluclast(登録商標)1.5 FG L、309mlのNovozym(登録商標)188、10mLのSpirizyme(登録商標)plus FG(グリコ・アミラーゼ)および10mlのLiquozyme(登録商標)sc ds(アルファ・アミラーゼ)を廃棄物マッシュに添加した。Celluclast(登録商標)1.5 FG LおよびNovozym(登録商標)188酵素添加は、ほぼ15FPU/g DMに相当した。
【0081】
ファンヒーターを用いることによってセメントミキサーを40−45℃に加熱した。材料の混合/加水分解は6時間にわたって行い、pHレベルを測定してそれを4−5に調節するために、毎時間中断した。マッシュのpHはクエン酸顆粒をドラムに添加することによって調節した。方法は、微量のプラスチック、缶詰の缶およびガラスの片のような大きな非−変換粒子を含有する半液体の泥を生じた。
【0082】
試料を2500rpmで15分間遠心した。上清を0.45μm濾紙を通して濾過し、HPLCで糖について分析した。6時間の酵素加水分解および15FPU/g DMの酵素負荷の後に、上清は53g/kgのグルコースおよび12g/kgのキシロースを含有していた。
【0083】
40−45℃での6時間の加水分解後に、セメントミキサーに酵母を添加することによって糖化および発酵方法を同時に行った。温度は35℃未満まで放冷し、その後に200gの圧縮酵素(パン酵母、デ・ダンスケ・スピリットファブリッケル(De Danske Spritfabrikker))を添加した。糖化および発酵方法は、30−35℃にて39時間続け、その間一度だけ13時間後にpH調節のために中断した。
【0084】
同時の糖化および発酵は5.2体積%のエタノールに等しい37g/kgのエタノールを生じた。
発酵したマッシュをふるい分けた後に、湿った固形物画分は6.0kgを構成した。液体画分の乾物はさらに分析しなかった。
【0085】
実施例2:パイロットスケールの反応器で行った高セルラーゼ負荷の実験(図2)
供給源分類した有機固形物家庭廃棄物および紙からのエタノール生産(真空ストリッピングを含む)
【0086】
ほぼ33.3kg乾物の概算量に相当するデポーザルエリア、キリントルム イー/ジー(Klintholm I/S)からの49.6kgの供給源分類した自治体固形廃棄物および16.7kgの紙(新聞紙および広告回覧)をパイロット反応器に負荷した。パイロット反応器は図2に見ることができるように有孔内側ドラムを有する静止式ドラムからなり、有孔内側ドラムは水平軸に沿って回転することができる。
【0087】
前記と同様にして取り扱った。蒸気投入は、ほぼ30%のマッシュの乾物含量を生じた。
【0088】
1545mlのCelluclast(登録商標)1.5 FG L、309mlのNovozym(登録商標)188、10mLのSpirizyme(登録商標)plus FG(グリコ・アミラーゼ)および10mlのLiquozyme(登録商標)sc ds(アルファ・アミラーゼ)を廃棄物マッシュに添加した。Celluclast(登録商標)1.5 FG LおよびNovozym(登録商標)188酵素添加は、ほぼ15FPU/g DMに相当した。
【0089】
ファンヒーターを用いることによってセメントミキサーを40−45℃に加熱した。材料の混合/加水分解は6時間にわたって行い、pHレベルを測定してそれを4−5に調節するために、毎時間中断した。マッシュのpHはクエン酸顆粒をドラムに添加することによって調節した。方法は、微量のプラスチック、缶詰の缶およびガラスの片のような大きな非−変換粒子を含有する半液体の泥を生じた。
【0090】
試料を2500rpmで15分間遠心した。上清を0.45μm濾紙を通して濾過し、HPLCで糖について分析した。6時間の酵素加水分解および15FPU/g DMの酵素負荷の後に、上清は53g/kgのグルコースおよび12g/kgのキシロースを含有していた。
【0091】
4barの飽和蒸気ほぼ21kgを、30分間加熱および30分間90℃にて前−処理で60分間の間に混合しながら添加した。廃棄物マッシュの乾物含量をさらに低下するために、15lの水を添加し、これは30−32%の乾物含量となった。
【0092】
前−処理の後に、反応器および含有物を反応器の冷却ジャケット中の冷却水および少量の圧縮空気をドラムに添加してほぼ40℃まで冷却した。
【0093】
酵素を添加する前に、廃棄物画分のpHをほぼ5に調節した。その後に、5lのCelluclast(登録商標)1.5 FG、1lのNovozym(登録商標)188、33mlのSpirizyme(登録商標)plus FGおよび33mlのLiquozyme(登録商標) sc dsを添加した。Celluclast(登録商標)1.5 FGおよびNovozym(登録商標)188の量はほぼ15FPU pr.g乾物の酵素用量に相当する。
【0094】
酵素加水分解の間、固形クエン酸をドラムに添加することによって廃棄物マッシュのpHを連続的に調整する。加水分解は廃棄物マッシュの稠度を固形物から、プラスチック、堅果の殻および小さな枝木の一片のような微量の非−変換粒子を含有する半液体の泥に変化した。
【0095】
40−45℃での加水分解の6時間後に、廃棄物マッシュを冷却ジェケット中の冷却水およびドラム中の少量の圧縮空気で36℃まで冷却した。冷却後、666gの圧縮パン酵母(De Dansk Spritfabrikker)をドラムに添加した。同時の糖化および発酵(SSF)方法を30−35℃にて39時間続けた。
【0096】
加水分解およびつづくSSF方法、すなわち合計45時間後に、4.0体積%のエタノールと等価の28.8g/kgのエタノールを生じた。
SSFの後、真空ポンプおよび冷却した凝縮器を反応器に連結することにとって、反応器中の幾分かのエタノールを回収した。
【0097】
実施例3:試作スケール反応器で行った低セルロース負荷を用いた実験(図2)
非分類自治体固形廃棄物および紙からのエタノール生産
1週間の2家族からの32.1kgのMSWを密閉した廃棄物バッグに添加し、ほぼ30kg乾物の概算量に相当する8.1kgのさらなる紙(新聞紙および広告回覧)をパイロット反応器に負荷した。廃棄物の乾物含量を低下するために、12.5lの水を添加した。詳細な記載については、実施例2を参照されたい。
【0098】
負荷後に、加熱ジャケットおよびさらなる蒸気(4バール)を反応チャンバーに入れつつ、廃棄物を90℃まで加熱した。
【0099】
(ドラムの内側の携帯温度計によっても手動でチェックする)90℃に達した場合、混合しつつその温度を30分間維持した。その後に、固形クエン酸を添加することによってpHをほぼ5に調整しつつ、その混合物を冷却ジャケットを用いてほぼ50℃まで冷却した。
【0100】
正確な温度およびpHで、酵素を1.15lのCellclast(登録商標)1.5FG、0.25lのNovozym(登録商標)188、30gのアミラーゼ(NS50033、Novozymesからのもの)、15gのResinase(登録商標)A 2×および15gのAlcalase(登録商標)2.5Lの形態で添加した。Cellclast(登録商標)1.5 FGおよびNovozym(登録商標)188の量は、g乾物当たりほぼ7FPUの酵素用量に対応する。
【0101】
酵素加水分解の間、固形クエン酸をドラムに添加することによって廃棄物マッシュのpHを連続的に調整した。
【0102】
酵素を添加してほぼ24時間後に、いまや粘稠な廃棄物をさらに33℃まで冷やし、酵母を添加した。酵素添加後しばらくして、二酸化炭素発酵が酵母ロック中の泡として観察し得た。SSFの間、マッシュのpHは固形炭酸ナトリウムの添加によってマッシュのpHを調整した。方法は1週間続けた。24時間の前加水分解につづく数日のSSFの後に、結果は3.2体積%のエタノールに相当する22.8g/kgであった。
【0103】
実施例4:異なるタイプの廃棄物についての収率(廃棄物からエタノール)
異なるタイプの廃棄物を用いて幾つかの実験を行った。収率を以下に示す(トン乾物当たり産生したエタノールの体積)。
【0104】
【表1】

【0105】
結果は、この方法においては低酵素負荷でさえ、かなりの量のエタノールをMSWから産生し得ることを示している。発酵後の分類がこの方法の強みであることを考慮すれば、この結果は供給源分類がトン乾物当たりの収量を増大するであろうことも示している。庭園廃棄物を用いた実験は、主としてリグノセルロースからなる廃棄物画分の高温前−処理の重要性を示し、この方法が、容易に近づき易い単糖類をエタノールまたは他の発酵産物に変換することを目的とすることを強調している。たとえそうだとしても、発酵ブロス中で4体積%付近のエタノール濃度に達することは可能であり、それは蒸留における経済学を維持するのに必要である。このことは可能である。なぜなら、この方法で作業しているのは乾物含量だからである。
【0106】
引用文献
Giovannozzi-Sermanni, G., D'Annibale, A., Perani, C., Porri, A., Falesiedi, G. (2002). Solid-state bioreactors for the sustainability. Internet adress
reCulture(登録商標): 欧州特許0921858、欧州特許97935926.2
Dewaster(登録商標): http://www.ewoc.dk/
米国特許第4,342,820 A号
米国特許第4,093,516 A号
チェコ特許9,602,835 A3号
米国特許第4,094,740 A号
米国特許第5,637,502号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−単糖類および/または多糖類を含有する廃棄物画分を提供し、
−該廃棄物画分を加熱前処理につづいて、
−廃棄物の発酵可能な部分の液化を生じる該廃棄物画分の酵素加水分解につづいて
−非−発酵可能な固形物からの廃棄物の発酵可能な部分の分類
を含む廃棄物画分を加工処理する方法であって、
ここに、廃棄物の液化した発酵可能な部分をその後に発酵に付すことを特徴とする該方法。
【請求項2】
発酵可能な部分を嫌気性発酵に付する請求項1記載の方法。
【請求項3】
発酵可能な部分をエタノール発生微生物を用いる発酵に付する請求項1記載の方法。
【請求項4】
発酵可能な部分を窒素源の添加を含む発酵に付する請求項1記載の方法。
【請求項5】
発酵可能な部分を栄養物またはビタミンの添加を含む発酵に付する請求項1記載の方法。
【請求項6】
単糖類および/または多糖類を含む廃棄物画分が、分類されていない自治体固形廃棄物(MSW)、中央分類、断片化またはパルプ化デバイスにおいて加工処理したMSW、家庭からの起源分類された廃棄物、有機画分、紙を豊富に含む廃棄物画分、またはRDF(廃物由来燃料、Refuse-Derived-Fuel)画分である請求項1記載の方法。
【請求項7】
単糖類および/または多糖類を含む廃棄物画分が、紙または他の有機画分を含む一般産業廃棄物画分、製紙産業からの廃棄物画分、再生施設からの廃棄物画分、食物および飼料産業からの廃棄物画分、または製薬産業からの廃棄物画分である請求項1記載の方法。
【請求項8】
単糖類および/または多糖類を含む廃棄物画分が、加工処理している糖またはデンプンを豊富に含む製品からの廃棄物画分、加工処理しているジャガイモまたはサトウダイコンからの廃棄物画分、汚染されたかまたは害された農業製品、食物または飼料目的のために活用できない汚染されたかまたは害された穀物、ジャガイモおよびサトウダイコン、庭園廃棄物、肥料または肥料由来の製品である請求項1記載の方法。
【請求項9】
単糖類および/または多糖類を含む廃棄物画分が、廃水処理工場からの汚泥、バイオマス加工処理からの繊維または汚泥画分、または紙または他の有機画分を含有する公共セクターからの一般廃棄物画分である請求項1記載の方法。
【請求項10】
非加圧−前処理を蒸気を用いて行う請求項1記載の方法。
【請求項11】
非加圧−前処理の処理時間が、60−110℃の範囲の温度および0−2kg/kg乾物の蒸気投入で0−120分間である請求項10記載の方法。
【請求項12】
単糖類および/または多糖類を含む廃棄物画分の酵素加水分解を、天然形態またはかかる酵素の蓄積を生じる微生物の形態のいずれかで供給する加水分解酵素で行う請求項1記載の方法。
【請求項13】
該酵素加水分解を、20−105℃の範囲の温度でもって0−96時間続ける請求項12記載の方法。
【請求項14】
該酵素加水分解を、セルラーゼ、セロビオラーゼおよびヘミセルラーゼを含む酵素の混合物を用いて行う請求項1記載の方法。
【請求項15】
該酵素加水分解を、タンパク質加水分解酵素を含む酵素の混合物を用いて行う請求項1記載の方法。
【請求項16】
該酵素加水分解を、アルファ・アミラーゼおよびグリコアミラーゼを含む酵素の混合物を用いて行う請求項1記載の方法。
【請求項17】
該酵素加水分解を、リパーゼを含む酵素の混合物を用いて行う請求項1記載の方法。
【請求項18】
該酵素加水分解を、酸化酵素を含む酵素の混合物を用いて行う請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−244996(P2012−244996A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−149481(P2012−149481)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2008−532897(P2008−532897)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(308032459)ドン・エナジー・ジェネレーション・アクティーゼルスカブ (2)
【氏名又は名称原語表記】DONG ENERGY GENERATION A/S
【Fターム(参考)】