説明

廃棄物移送方法

【課題】 発生した廃棄物を容易に、長距離にわたって移送する。
【解決手段】 工場11や工事現場12といった廃棄物発生地1において廃棄物が投入された脱着式コンテナDを荷役車両Vaにより出発港3の一区画に設けたコンテナ集約所31まで運搬し、コンテナ集約所31まで運搬された脱着式コンテナDをガントリークレーン32によりコンテナ船Sに積載して海上移送し、コンテナ船Sで海上移送された脱着式コンテナDをガントリークレーン52によりコンテナ船Sから下ろした後、処理場61(廃棄物処理地6)まで他の荷役車両Vbにより運搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の移送に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や工事現場といった大量に廃棄物が発生する廃棄物発生地においては、脱着式コンテナに廃棄物を投入し、廃棄物が投入された当該脱着式コンテナを廃棄物処理地まで荷役車両により運搬することで廃棄物を処理するようにしている。そして、脱着式コンテナには荷役車両と係脱することができるリフトバーを備えており、荷役車両に備えた荷役装置(荷役アーム)により荷役車両上に積み込みまたは地面に降ろす事ができるようにしている。これによると、荷役車両に対する積み降ろしにおいて施設側に特殊な装置を設ける必要がないので、廃棄物の運搬においては、荷役車両に適した上記のようなリフトバーを備える脱着式コンテナが普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該脱着式コンテナを荷役車両により運搬しているので、ひとつの脱着式コンテナを運搬するために1台の荷役車両が必要であり、運搬の効率が良くない。2個の脱着式コンテナを搭載できる荷役車両や、トレーラを牽引することで、荷役車両一台あたりの脱着式コンテナの輸送効率を向上することができるが、車両全長が長くなることで荷役車両の走行できる道路が制限されたり、牽引車の運転免許を運転手が取得しなければならないといった新たな問題が生じる。また、荷役車両を長時間運転することは運転手に過大な負荷をかけるため、運転する時間がある程度限られてくることから脱着式コンテナを運搬できる距離にも制限があった。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、発生した廃棄物を容易に、長距離にわたって移送することができる廃棄物移送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の廃棄物移送方法は、廃棄物発生地において廃棄物が投入された脱着式コンテナを荷役車両によりコンテナ集約所まで運搬し、前記コンテナ集約所からコンテナ貯留所まで前記脱着式コンテナをコンテナ船で海上移送し、前記コンテナ船でコンテナ貯留所まで海上移送された前記脱着式コンテナを所定の廃棄物処理地まで他の荷役車両により運搬することを特徴とする。本発明によると脱着式コンテナを海上移送するため、発生した廃棄物を容易に、長距離にわたって移送することができる。
【0007】
さらに、前記コンテナ集約所において前記脱着式コンテナを海上コンテナに内蔵し、脱着式コンテナを内蔵した海上コンテナをコンテナ船に積載するようにしてもよく、これにより、従来ある脱着式コンテナに隅金具を設けたり、ガントリークレーンにアタッチメントを装着することなく、その他の海上コンテナと同じようにコンテナ船に積込み又は荷降ろしをすることができる。
【0008】
また、前記コンテナ集約所は、港の一区画に配置するようにしてもよい。これにより、脱着式コンテナをコンテナ船に積込む作業を容易におこなうことができる。
【発明の効果】
【0009】
発生した廃棄物を容易に、長距離にわたって移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した廃棄物輸送方法の概念図である。
【図2】脱着式コンテナの側面図である。
【図3】海上コンテナの側面図である。
【図4】海上コンテナの平面図である。
【図5】保持具の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明を適用した廃棄物輸送方法を示す概念図である。
1は、廃棄物発生地であり、図示のように工場11や工事現場12といった廃棄物が発生する箇所を示している。工場11や工事現場12には、脱着式コンテナ(荷役車両用コンテナ)Dが設置されている。そして、廃棄物が発生すると作業者や、パワーショベル13により脱着式コンテナDに投入する。
【0012】
図2は、脱着式コンテナDの側面図である。脱着式コンテナDは、前壁21と底面22と左右2枚の側壁23とを溶接することで箱状に形成されている。前壁21の両側は補強桁21aを固定することにより補強し、底面22は、前後方向に延びる主桁22aを固定することにより補強している。脱着式コンテナDの開放後面は、テールゲート24により閉じられている。テールゲート24は脱着式コンテナDの上部に固定したヒンジ24aを介して回動可能に支持されており、テールゲート24の下端はハンドル24bにより開放後面を閉鎖した状態で保持できるようにしている。脱着式コンテナDの開放上面は、2枚の天蓋25を備えており、左右両側の側壁23の上面に固定した回動軸25a周りに手動で開閉することができるとともに、閉鎖した状態で天蓋25を保持するロック25bを前壁21に設けている。
また、脱着式コンテナDの前壁21の上部には、従来公知のアーム式荷役装置を備えた荷役車両Vaのフックと係脱自在な係合部、すなわちリフトバー26を設けている。脱着式コンテナDの底面22の前後左右4箇所には、脱着式コンテナDを設置するための接地部27を固定している。前側に固定した接地部27は脚部27aで、後側に固定した接地部27は走行ローラ27bが回転可能に取付けられている。そして、側壁23の下側にはフォークリフトのフォークを挿入可能なフォークポケット28を開けている。なお、フォークポケット28は、主桁22aの側面に設けてもよい。
そして、図2に示すような脱着式コンテナDを複数の廃棄物発生地1に一個ないしは複数個置くようにしている。
【0013】
図1に戻って廃棄物移送方法の説明をする。
廃棄物発生地1で廃棄された廃棄物により満杯になった脱着式コンテナDを荷役車両Vaにより運搬する。この時、前述のとおり、荷役車両Vaの図示しない荷役装置により脱着式コンテナDを荷役車両Va上に持ち上げて搭載する。
脱着式コンテナDを搭載した荷役車両Vaは、出発港3のコンテナ集約所31まで運搬し、図示しない荷役装置により脱着式コンテナDを降ろす。複数の荷役車両Vaが、複数の廃棄物発生地1とコンテナ集約所31との間を往復することで、脱着式コンテナDをコンテナ集約所31に集約することができる。また、別の日に廃棄物発生地1とコンテナ集約所31との間を往復することで脱着式コンテナDを集約することもできる(コンテナ集約作業)。なお、コンテナ集約所31は、出発港3の敷地内であってその一区画を利用することが望ましいが、出発港3の敷地内に設けることが困難な場合は、出発港3に近い別の場所であってもよい。
【0014】
コンテナ集約所31に集められた脱着式コンテナDは、フォークリフト(図示せず)により海上コンテナCに内蔵される(積載準備)。具体的な方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0015】
図3及び図4は、ISO規格に即した20フィート長の海上コンテナCを示した図である。図3は、海上コンテナCの側面図であり、図4はその平面図である。
まず、海上コンテナCの構造について説明する。海上コンテナCは、角パイプなどの鋼材を長方形状に組み上げた底枠41と、底枠41の四隅に立設した支柱42と、角パイプなどの鋼材を長方形状に組み上げるとともに4本の支柱42に四隅を支持された天枠43とにより直方体状に形成されている。
底枠41は、長手方向に沿った2本の縦桁41aと、隣り合う縦桁41a間に配されその両端を縦桁41aの側面に溶接固定した複数の横桁41bと、複数の横桁41bの上面であって、海上コンテナCの略中央に寄った位置に配置した2枚の補強板41cを備えている。
海上コンテナCの底部に相当する底面44は、底枠41の上面に所定大きさの複数の合板を施設して構成し、前後面45・右側面46及び天井47には鉄製の波板を嵌め込み固定している。残りの左側面48は2枚の扉48aにより開閉可能である。扉48aを閉鎖すると海上コンテナCは密閉される。なお、2枚の扉48aは、図示するようにそれぞれが略中央部で屈曲することができる。
海上コンテナCの8つの角には、隅金具49が備えられており、他の海上コンテナCとツイストロック等により連結することができる。
【0016】
底面44の上面には脱着式コンテナDのずれ止めのための保持具5を備えている。保持具5は、長方形の支持板51と、支持板51の両端部に複数のボルト(固縛部)52で固定したリング53とを有している。リング53は、規制部53aと規制部53aに囲まれた孔部53bを備えている。尚、ボルト52は、リング53及び支持板51に設けられた貫通孔を通され、底面44に螺入している。ボルト52は、支持板51とリング53との固定と、保持具5の海上コンテナCへの固定とを一度に行っている。支持板51は、脱着式コンテナDの左右の接地部27(脚部27a同士または走行ローラ27b同士)をその両端で一度に支持することができる長さであり、海上コンテナCの底面44に配置した場合には、支持板51の略中央部を海上コンテナCの底枠41(特に補強板41c)の上方に配置する。
【0017】
海上コンテナCに脱着式コンテナDを内蔵するには、まず左側面48を開放して、海上コンテナCの底面44に保持具5を、脱着式コンテナDの接地部27の位置に合致した位置に固定する。そして、コンテナ集約所31に集められた脱着式コンテナDを、フォークリフト(図示せず)により開放した左側面48から海上コンテナCに搭載する。図5に示すように前側の保持具5の孔部53bには脚部27aが、後側の保持具5の孔部53bにはローラ27bがそれぞれ合致するように脱着式コンテナDを載置する。その後、海上コンテナCの扉48aを閉鎖して積載準備が完了する。これにより港湾のガントリークレーンによる荷役作業ができるようになるとともに、通常の海上コンテナと隅金具49を介して相互に固定することができる。
【0018】
次に、脱着式コンテナDを内蔵した海上コンテナCを、ガントリークレーン32によりコンテナ船Sに積載する(積載作業)。前述のとおり海上コンテナCは、ISO規格に合致したコンテナであるので、特殊な装置やアタッチメントを介することなくコンテナ船Sに積載することができる。そして、海上コンテナCを積載したコンテナ船Sは、到着港5に向かって移動する(海上移送)。
これにより、一度に大量の数の脱着式コンテナDを移動させることができるので、廃棄物の移送を容易に行うことができる。また、コンテナ船Sは長距離の移送に向くため、通常、荷役車両Vaで移動した場合に比べて長距離の移送が可能になる。さらに、二酸化炭素排出の削減にも寄与することができる。
【0019】
廃棄物処理地6に近い到着港5にコンテナ船Sが到着すると、コンテナ船Sからコンテナ貯留所51にガントリークレーン52を用いて海上コンテナCを荷降ろしする(荷降ろし作業)。ここでも海上コンテナCはISO規格に合致したコンテナであるので、特殊な装置やアタッチメントを介することなくコンテナ船Sから容易に荷降ろしすることができる。
【0020】
コンテナ貯留所51に降ろされた海上コンテナCはその左側面48を開放し、内部から脱着式コンテナDを図示しないフォークリフトによって外側に出される(分離作業)。
そして脱着式コンテナDをコンテナ貯留所51にて他の荷役車両Vbの荷役装置(図示せず)により荷役車両Vbに搭載し、脱着式コンテナDを搭載した荷役車両Vbは廃棄物処理地6の処理場61まで運搬する。処理場61は従来からあるゴミ焼却場やゴミ分別施設等を示しており、処理場61で焼却された焼却灰は最終処分場62にて埋め立てられたり、分別された資源物はリサイクル工場63にてリサイクルされる。なお、脱着式コンテナDを到着港5から処理場61に荷役車両Vbで運搬したが、直接、最終処分場62やリサイクル工場63に運搬してもよい。
【0021】
廃棄物処理地6において、内蔵した廃棄物を取り出すことで空になった脱着式コンテナDは、上記と逆の手順を追って再び廃棄物発生地1まで持っていくようにすればよい。
【0022】
以上のように、本発明の廃棄物移送方法では、コンテナ船Sを用いているため、大量のコンテナを長距離にわたって容易に移送することができる。
そして、脱着式コンテナDはテールゲート24及び天蓋25を閉鎖することで密閉することができるので、廃棄物発生地1から出発港3までの移動時や、到着港5から廃棄物処理地6までの移動時に内蔵した廃棄物が飛散してしまうことを防止することができる。また、荷役車両Vaからコンテナ船S、コンテナ船Sから他の荷役車両Vbに移載するときであっても脱着式コンテナDをそのまま海上コンテナCに内蔵または取り出すようにしたため、脱着式コンテナDを開放して投入された廃棄物を移し替える作業を行わない。これにより、脱着式コンテナD内の廃棄物が散乱し、周辺環境を悪化させることはない。
【0023】
脱着式コンテナDをコンテナ船Sに積載するにあたり、一般的に流通している海上コンテナCに内蔵するようにしたので、ガントリークレーンを用いてコンテナ船Sに積載又は荷降ろしする際に特殊な装置やアタッチメントを用意する必要がなく安価にコンテナ船Sを利用することができる。また、隅金具49を備えた脱着式コンテナDをコンテナ船Sに積載するようにしてもよいが、上記実施例であれば、脱着式コンテナDも従来からあるコンテナをそのまま流用することができる。
【0024】
保持具5の支持板51は左右一対の接地部27(脚部27a同士または走行ローラ27b同士)をその両端で支え、中央部の下方には海上コンテナCの補強板41cが配置されることにより、脱着式コンテナDの重量を接地部27や支持板51を介して補強板41cに伝えるようになっている。これにより、接地部27が、海上コンテナCの底面44を突き破ってしまうことを防止することができる。そして、支持板51は補強板41cの上方に配置した場合について説明したが、縦桁41aの上方まで両端を延長するようにして縦桁41aに脱着式コンテナDの重量を伝えてもよく、横桁41bの上方に配置することで横桁41bに伝えるようにしてもよい。
【0025】
また、脱着式コンテナDは、海上コンテナCに固定した保持具5に接地部27を挿入することよりその前後左右位置を保持することができる。なお、リング53により前後左右方向に移動することを規制しているが、脱着式コンテナDが扉48aを内側から開放して海上コンテナCから飛び出すことを防止すればよく、少なくとも海上コンテナCの左側に位置する規制部53aがあればよい。規制部53aは支持板51に突出配置したリング53により形成したが、支持板51に凹みを一体形成するようにして設けてもよい。そして、保持具5はボルト(固縛部)52により海上コンテナCの底面44に固定しているので、脱着式コンテナDの接地部27の位置に応じて保持具5の位置を適宜変更することができる。保持具5は上述の実施例以外のものでもよく、海上コンテナCの底面44に直接規制部を設けても良く、従来公知のラッシングベルト(ベルト製緊縛具)や、海上コンテナCの側面内側に備えたパッド等のクッション材を脱着式コンテナDの側面に当接することで位置を保持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 廃棄物発生地
11 工場
12 工事現場
D 脱着式コンテナ
22 底面
27 接地部
27a 脚部
27b 走行ローラ
Va 荷役車両
3 出発港
31 コンテナ集約所
32 ガントリークレーン
C 海上コンテナ
41 底枠
41a 縦桁
41b 横桁
41c 補強板
5 保持具
51 支持板
52 ボルト
53 リング
53a 規制部
S コンテナ船
5 到着港
51 コンテナ貯留所
52 ガントリークレーン
Vb 他の荷役車両
6 廃棄物処理地
61 処理場
62 最終処分場
63 リサイクル工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物発生地において廃棄物が投入された脱着式コンテナを荷役車両によりコンテナ集約所まで運搬し、
前記コンテナ集約所からコンテナ貯留所まで前記脱着式コンテナをコンテナ船で海上移送し、
前記コンテナ船でコンテナ貯留所まで海上移送された前記脱着式コンテナを所定の廃棄物処理地まで他の荷役車両により運搬することを特徴とする廃棄物移送方法。
【請求項2】
前記コンテナ集約所において前記脱着式コンテナを海上コンテナに内蔵し、
脱着式コンテナを内蔵した海上コンテナをコンテナ船Sに積載することを特徴とする請求項1記載の廃棄物移送方法。
【請求項3】
前記コンテナ集約所は、港の一区画に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218872(P2012−218872A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85833(P2011−85833)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【出願人】(596068969)大栄環境株式会社 (3)
【出願人】(508081798)井本商運株式会社 (5)
【Fターム(参考)】