説明

廃水の処理方法

【課題】高濃度の非イオン界面活性剤を含む廃水から効率よく非イオン界面活性剤を除去する廃水の処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】非イオン界面活性剤を含む廃水から非イオン界面活性剤を除去する廃水処理方法であって、(1)当該廃水にアルカリ剤を添加してアルカリ性条件下で、当該廃水中に含まれる非イオン界面活性剤の曇点以上に当該廃水を加熱して水相と界面活性剤相の2相に分離させ、界面活性剤相を除去した後、(2)当該水相に(a)無機系凝結剤を添加し、さらに(b)無機系凝集剤及び無機酸を添加して当該水相を中和し、(c)水溶性有機系アニオン高分子凝集剤を添加してフロックを形成、沈降させ、(d)当該フロックを分離除去する非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含む廃水の処理方法に関し、特に高い濃度の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は洗浄、起泡、乳化、分散、可溶化などに優れた作用を持つことから、化学薬品製造業、紙パルプ産業、半導体産業、機械・金属産業、繊維産業などの多岐の分野にわたって使用されている。使用された界面活性剤は、工場から排出される廃水中には含まれ、廃水処理を行って、河川に放出される。しかし、近年の界面活性剤、特に非イオン界面活性剤は、比較的発泡性が高い、生分解性が低い、さらに環境ホルモンの影響が懸念される等の周辺環境への配慮から、極力、界面活性剤を廃水中から除去することが行われてきた。例えば、ベントナイト、カチオン性高分子凝集剤、無機系凝集剤で界面活性剤を凝集処理して分離し、さらに分離上澄み液を過酸化水素と鉄塩で処理する方法(例えば特許文献1参照)、リグニンスルホン酸と無機凝集剤で処理する方法(例えば特許文献2、3参照)、フェノール類とアルデヒド類との初期縮合物をアルカリ性物質の存在下に無機凝集剤とを併用する方法(例えば特許文献4参照)、ノボラック樹脂とアルカリ性物質を併用して処理する方法(例えば特許文献5参照)、活性炭で吸着除去する方法(例えば特許文献6参照)、タンニン、無機系凝集剤、カチオン性高分子凝集剤を加えてpHを4〜9に調整し、さらに有機系高分子凝集剤を加えて凝集分離する方法(例えば特許文献7参照)、
活性汚泥処理方法(例えば特許文献8参照)、紫外線を照射して分解する方法(例えば特許文献9参照)、無機凝集剤の添加、有機系高分子凝集剤の添加、さらには有機系凝結剤の添加を行って処理する方法(例えば特許文献10参照)等が種々提案されてきた。しかし、最近の排水規制には対処するには不充分なものであり、いまだ処理は不完全で満足しうるような廃水からの界面活性剤の除去を達成する方法は見出されていない。特に高濃度の界面活性剤を含む廃水では適切な処理方法が無く、産業廃棄物として処理される状況にあり、その解決方法が強く望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−25689号公報
【特許文献2】特公昭52−7865号公報
【特許文献3】特開昭60−238193号公報
【特許文献4】特公昭53−27909号公報
【特許文献5】特開平6−262184号公報
【特許文献6】特開平7−222973号公報
【特許文献7】特開平8−126890号公報
【特許文献8】特開2000−140884号公報
【特許文献9】特開2002−346577号公報
【特許文献10】特開2006−7208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高濃度の非イオン界面活性剤を含む廃水から効率よく非イオン界面活性剤を除去する廃水の処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高濃度の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法について、鋭意検討した結果、高濃度の非イオン界面活性剤を含む廃水中の非イオン界面活性剤はアルカリ性条件下で特定の温度範囲で無機系凝結剤及び凝集剤により廃水中から分離除去されることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、請求項1に係る発明は、非イオン界面活性剤を含む廃水から非イオン界面活性剤を除去する廃水処理方法であって、(1)当該廃水にアルカリ剤を添加してアルカリ性条件下で、当該廃水中に含まれる非イオン界面活性剤の曇点以上に当該廃水を加熱して、水相と界面活性剤相の2相に分離させ、界面活性剤相を除去した後、(2)当該水相に(a)無機系凝結剤を添加し、さらに(b)無機系凝集剤及び無機酸を添加して当該水相を中和し、(c)水溶性有機系アニオン高分子凝集剤を添加してフロックを形成し、沈降させ、(d)当該フロックを分離除去することを特徴とする非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、非イオン界面活性剤が1〜40重量%含まれる廃水であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、アルカリ剤添加による廃水のpHが9〜13.5であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、アルカリ剤が水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムから選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、廃水の加熱温度が50℃〜100℃未満であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、無機系凝結剤がベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレー、タルク、シリカから選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、無機系凝集剤がポリ塩化アルミニウム及び/又は硫酸アルミニウムであることを特徴としている。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法であり、水溶性有機系アニオン高分子凝集剤が水溶性(メタ)アクリル酸共重合体及び水溶性塩、水溶性(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び水溶性塩、水溶性(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド共重合体及び水溶性塩から選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法により、高濃度の界面活性剤を含む廃水を適切に処理することができ、産業廃棄物としての処理を行うことが解消される。また、廃水処理にかかるコストも著しく低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、非イオン界面活性剤を含む廃水から非イオン界面活性剤を除去する廃水処理方法であって、(1)当該廃水にアルカリ剤を添加してアルカリ性条件下で、当該廃水中に含まれる非イオン界面活性剤の曇点以上に当該廃水を加熱して水相と界面活性剤相の2相に分離させ、界面活性剤相を除去した後、(2)当該水相に(a)無機系凝結剤を添加し、さらに(b)無機系凝集剤及び無機酸を添加して当該水相を中和し、(c)水溶性有機系アニオン高分子凝集剤を添加してフロックを形成、沈降させ、(d)当該フロックを分離除去することを特徴とする非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法である。
【0016】
本発明のおける廃水(以下「廃水」とする)は、特に限定したものではなく、種々の産業で非イオン界面活性剤を含む工程水が使用された後、排出された非イオン界面活性剤を含む廃水が対象となる。また、廃水中に水溶性塩類、難溶性塩類、有機系固形分、無機系固形分が含まれている廃水、さらには酸性、中性、アルカリ性の廃水も包含される。
【0017】
本発明における非イオン界面活性剤(以下「非イオン界面活性剤」とする)は、通常、非イオン界面活性剤として用いられているものであり、脂肪酸ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテルなどが挙げられる。具体的には、脂肪酸ポリオキシアルキレングリコールエステルとしては、ステアリン酸ポリエチレングリコール(10モル)エステル、オレイン酸ポリエチレングリコール(10モル)ポリプロピレングリコール(10モル)エステル;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしてはポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル、ポリオキシアルキレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ステアリルエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルとしては、ポリオキシエチレン(10モル)ノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)オクチルフェノールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンステアリン酸エステル、オレイン酸ソルビタンエステル;脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタンエステルとしては、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(10モル)ソルビタンエステル、ジオレイン酸ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ソルビタンエステル;ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール(20モル)重合体、ポリプロピレングリコール(20モル)重合体、ポリエチレングリコール(10モル)ポリプロピレングリコール(10モル)共重合体;ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルとしては、ポリオキシエチレン(10モル)ステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)オレイルアミノエーテル;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテルとしては、ポリオキシエチレン(10モル)ステアリン酸アミドエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)オレイン酸アミドエーテル等がある。これらの1種あるいは2種以上を含んでも良い。
【0018】
本発明において廃水中の非イオン界面活性剤の濃度は、特に限定されるものではなく、廃水中に非イオン界面活性剤を含むためにその廃水処理が困難となっている廃水を対象としているが、通常、本発明の効果を十分に得るには廃水中の非イオン界面活性剤の濃度は1重量%から40重量%の範囲である。好ましくは3重量%から30重量、より好ましくは5重量%から20重量%である。非イオン界面活性剤の濃度が1重量%未満では、本発明の効果は十分に得られるが、経済的なメリットが十分でない場合がある。また、非イオン界面活性剤の濃度が40重量%を超えると、本発明の効果は十分に得られるが、多量の凝結剤、凝集剤を使用するために経済的なメリットが十分でない場合がある。
【0019】
本発明のおけるアルカリ剤(以下「アルカリ剤」とする)は、廃水のpHをアルカリ性にして廃水中の非イオン界面活性剤の脱水和を促進させるために用いられるアルカリ物質であり、廃水に添加して廃水中の成分と難溶性の無機塩を形成しないものであれば特に限定されるもので無く、アルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルミン酸アルカリ金属塩等がある。入手の容易さ及び取り扱いやすさ等を考慮して通常、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムが挙げられ、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0020】
アルカリ剤の添加量は、処理対象の廃水をアルカリ性にして廃水中の非イオン界面活性剤が100℃未満で曇点現象を示すようなアルカリ剤の添加量であり、廃水中の非イオン界面活性剤の種類とその量を考慮して適宜決定すれば良く一律に決定することはできないが、通常、処理対象の廃水のpHが9〜13.5、好ましくは11〜13になるようにアルカリ剤を添加する。
【0021】
アルカリ性とした廃水を加熱すると、廃水中の非イオン界面活性剤は脱水和(曇点現象)を起こして廃水は2層に分離する。廃水中の非イオン界面活性剤の種類と量によって、廃水中の非イオン界面活性剤の脱水和の程度が異なるために廃水の加熱温度を一律に決定することはできないが、通常、50℃〜100℃未満、好ましくは60℃〜85℃である。
【0022】
廃水中の非イオン界面活性剤は、加熱によって脱水和(曇点現象)をおこし、非イオン界面活性剤は水と分離するが、親水性の強い非イオン界面活性剤、例えばポリアルキレンオキシド付加型の脂肪酸ポリエチレングリコールエステル型界面活性剤ではポリアルキレンオキシド付加モル数が5〜10モルを超えると水和性が強くなり、100℃未満では曇点が見られない場合があり、加熱だけでは非イオン界面活性剤を分離することはできない。一方、廃水をアルカリ性にして加熱すると、水酸基イオン(OH)により非イオン界面活性剤の脱水和が促進され、非イオン界面活性剤の曇点は低下し、100℃未満でも曇点を示すようになる。その結果、非イオン界面活性剤を含む廃水は界面活性剤相(非イオン界面活性剤が多く含まれる水相)と水相(非イオン界面活性剤が少ない水相)に分離する。界面活性剤相(非イオン界面活性剤が多く含まれる水相)は、実質的にほとんど非イオン界面活性剤を主成分とし、比重が重く、分離すると下層になる。分離した界面活性剤相(非イオン界面活性剤が多く含まれる水相)は、焼却して処理される。分離された水相は、依然として非イオン界面活性剤を比較的低濃度で含む水相であるために、さらに無機系凝結剤、無機系凝集剤及び有機系アニオン高分子凝集剤を用いて非イオン界面活性剤の分離除去処理を行なう。
【0023】
アルカリ剤に代えて水溶性無機塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等を用い、中性領域で廃水を加熱しても廃水中の非イオン界面活性剤の分離が十分に得られないためにCODの除去効果が小さい。さらにその後の廃水の処理で凝結剤及び凝集剤の添加量を多くしてもCODの除去効果は十分ではない。
【0024】
本発明のおける無機系凝結剤(以下「無機系凝結剤」とする)は、分離した下層の水相である非イオン界面活性剤の少ない水相に添加し、含まれている非イオン界面活性剤を吸着して凝結させる無機系の鉱物であり、吸着能力があって凝集性を持つ無機系鉱物であれば、特に限定されるものではない。入手の容易さ及び取り扱いやすさ等を考慮して通常、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレー、タルク、シリカが挙げられ、中でもベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイトが好適である。これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。無機系凝結剤の添加量は、廃水中の非イオン界面活性剤の種類とその含まれる量を考慮して適宜決定されるものであるが、通常、0.5重量%〜15重量%(対廃水重量)である。無機系凝結剤の添加は、特に限定されるものではないが、粉体のまま添加する方法、水に分散させて水スラリーとして添加する方法があり、いずれを用いても良い。
【0025】
本発明のおける無機系凝集剤(以下「無機系凝集剤」とする)は、非イオン界面活性剤を吸着した無機系凝結剤を凝集沈殿させる無機系の多価金属イオンの塩であり、具体的には硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、明バン、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などが挙げられ、中でも好ましくは硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、明バン、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、より好ましくは硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムである。これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
無機系凝集剤の添加量は、廃水中の非イオン界面活性剤を吸着した無機系凝結剤の凝集性を考慮して、適宜決定されるもので一律に決めることはできないが、通常、廃水に対して0.01重量%〜2重量%(対廃水重量)である。
【0027】
無機系凝集剤の使用方法は、粉体で添加する方法、水溶液として添加する方法、水スラリーで添加する方法等があり、適宜選択すればよい。例えば、通常、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄は水溶液として用いられる。具体的には、硫酸アルミニウムでは硫酸アルミニウム水溶液(Al2として8%液)、ポリ塩化アルミニウムではポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC:Al2として10%液)、アルミン酸ナトリウムではアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2:19%、NaO:19.6%液)、塩化第2鉄ではポリ塩化第2鉄(Feとして11%)等がある。
【0028】
本発明のおける無機酸(以下「無機酸」とする)は、無機系凝集剤と併用して凝結処理されたアルカリ性の廃水から分離した水相のpHを中和(pHが6〜8)するための酸であり、硫酸、塩酸、リン酸等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組合わせて用いられる。
【0029】
本発明のおける水溶性有機系アニオン高分子凝集剤(以下「有機系アニオン高分子凝集剤」とする)は、無機系凝集剤で処理された廃水中の非イオン界面活性剤を吸着した無機系凝結剤を沈降させる目的で用いるアニオン基を有する水溶性の有機系アニオン高分子凝集剤である。具体的には水溶性の(メタ)アクリル酸共重合体及びその水溶性塩(例えばポリアクリル酸ナトリウム)、水溶性の(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びその水溶性塩(例えばアクリル酸−アクリル酸メチル共重合体のナトリウム塩)、水溶性のメタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体及びその水溶性塩(例えばメタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体のナトリウム塩)、水溶性の(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド共重合物及びその水溶性塩(例えばアクリル酸−アクリルアミド共重合体のナトリウム塩、メタクリル酸−メタクリルアミド共重合体のナトリウム塩)、水溶性のマレイン酸−ビニルメチルエーテル共重合体及びその水溶性塩(例えばマレイン酸−ビニルメチルエーテル共重合体のナトリウム塩)、さらにアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びその水溶性塩などが挙げられる。水溶性塩としては水溶性部分中和塩及び水溶性完全中和塩があり、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。中でもポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸−アクリルアミド共重合物の部分中和ナトリウム塩及び完全中和ナトリウム塩が好適である。また、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
有機系アニオン高分子凝集剤は、通常、0.1〜0.5重量%濃度の水溶液で用いられる。有機系アニオン高分子凝集剤の添加量は、無機系凝集剤によって廃水中の非イオン界面活性剤を吸着した無機系凝結剤の凝集状態を考慮して、適宜決定されるもので一律に決めることはできないが、通常、廃水重量に対して10ppm〜500ppmである。
【0031】
具体的に代表的非イオン界面活性剤であり、洗浄剤として多用されるポリオキシエチレンオレイン酸エステル及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステルを約5重量%程度含む廃水の処理を例に用いて、本発明の各処理の概要を以下に説明する。底部に排出バルブ付きの廃水ピットに回収された廃水(pH:7)を撹拌下、50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加して廃水のpHを12に調整する。調整後、緩く撹拌しながらスチームヒーターを使って廃水を加熱する。加熱は、非イオン界面活性剤による曇点現象により廃水が白濁する液温より更に約5℃高い温度まで加熱を行う。廃水が所定の温度の達したならば、撹拌を停止し、静置させる。約20分〜30分で白濁していた廃水は2層に分離する。下層は非イオン界面活性剤を多く含む水相で、ほとんど非イオン界面活性剤を主体としている。上層は非イオン界面活性剤が少ない水相で、1%以下の比較的低濃度の非イオン界面活性剤を含む水相である。2層に分離した後、廃水ピットの排出バルブを開いて非イオン界面活性剤を多く含む下層は排出され、焼却される。一方、廃水ピットに残った上層を緩く撹拌しながら無機系凝結剤のベントナイトを5重量%(残った上層の廃水重量に対して)添加して残存する非イオン界面活性剤を吸着させる。これに無機系凝集剤のポリ塩化アルミニウム(PAC)0.2重量%(残った上層の廃水重量に対して)を添加し、さらに無機酸の硫酸を添加して当該残留上層廃水を中和(pHを6〜8に調整する)して、非イオン界面活性剤が吸着したベントナイトの凝結を促進させる。次に緩い撹拌下、有機系アニオン高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体(イオン強度8モル%、分子量1500万)0.2重量%水溶液を添加して、非イオン界面活性剤が吸着したベントナイトの凝結物を凝集させてフロックを形成させる。撹拌を停止してフロックを沈降させる。凝集したフロックは、一般的には凝集沈澱、加圧浮上などの手段で固液分離を行ない、さらに凝集沈降したフロックをフィルタープレス、遠心分離機等を用いてフロックの脱水を行って廃棄される。
【実施例】
【0032】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔フッ素樹脂製品製造工程からの廃水の処理〕
フッ素樹脂ディスパージョン製造工程からの廃水は、フッ素樹脂の微粒子と多量の非イオン界面活性剤を含み高COD(57,600ppm)の廃水であるために、通常の廃水処理では処理できずに、産業廃棄物として処理していた。この廃水(pH:7.5)を採取し、非イオン界面活性剤を含む廃水の処理試験用供試液として使用した。200mL分液ロートに供試液100mLを入れ、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを12に調整し、リボンヒーターを200mL分液ロートに巻き付けて70℃に加温し、20分間静置した。廃水が2層に分離していることを目視確認した後、下層の非イオン界面活性剤相を排出し、上層を200mLビーカーに入れた。200mLビーカー内の分離した上層にベントナイト10gを添加して緩く撹拌し、次いでポリ塩化アルミニウム(PAC:Al2として10%液)0.2gを添加し、さらに10重量%硫酸を添加してpHを7に調整した。緩く撹拌しながらアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体(イオン強度8モル%、分子量1500万)0.2重量%水溶液を50ppm(上層の水相重量に対して)添加してフロックを形成させた。撹拌を停止してフロックを沈降させ、沈降したフロックをブフナーロートで濾別して固液分離し、濾液のCODをJIS K0102に準じて測定した。また、アルカリ剤添加による廃水の2層分離の状態を以下のように目視評価した。さらに形成したフロックの凝集性を以下の基準で目視評価した。
(アルカリ剤添加による廃水の2層分離の状態評価)
○:上層と下層の分離境界線がハッキリと確認でき、下層がクリア。
△:上層と下層の分離が認められるが、境界線がハッキリと確認できない。
×:上層と下層の分離境界線がハッキリと確認できない。
(フロックの凝集性評価)
○:フロックが締まっている。
×:フロックが緩やかで壊れやすい。
同様にベントナイトをモンモリロナイト、スメクタイト、シリカに置き換え、さらにポリ塩化アルミニウム(PAC:Al2として10%液)を硫酸アルミニウム(Al2として8%液)、ポリ塩化第2鉄(Feとして11%)に置き換えて試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0034】
(使用薬品)
B:ベントナイト
M:モンモリロナイト
Sm:スメクタイト
P:ポリ塩化アルミニウム(PAC:Al2として10%液)
Bn:硫酸アルミニウム(Al2として8%液)
Fe:ポリ塩化第2鉄(Feとして11%)
AM:アクリル酸・アクリルアミド共重合体ナトリウム塩(イオン強度8モル%、分子量1500万)
AA:ポリアクリル酸ナトリウム(分子量1500万)
【0035】
【表1】

【0036】

COD値が57,600ppmの非イオン界面活性剤含有廃水は、本発明の方法により廃水から非イオン界面活性剤の分離ができ、処理水のCOD値は340ppmへと約1/170に大きく低減され、更に凝集したフロックも十分にしまった状態で濾別でき、優れた処理ができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン界面活性剤を含む廃水から非イオン界面活性剤を除去する廃水処理方法であって、(1)当該廃水にアルカリ剤を添加してアルカリ性条件下で、当該廃水中に含まれる非イオン界面活性剤の曇点以上に当該廃水を加熱して、水相と界面活性剤相の2相に分離させ、界面活性剤相を除去した後、(2)当該水相に(a)無機系凝結剤を添加し、さらに(b)無機系凝集剤及び無機酸を添加して当該水相を中和し、(c)水溶性有機系アニオン性高分子凝集剤を添加してフロックを形成し、沈降させ、(d)当該フロックを分離除去することを特徴とする非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項2】
非イオン界面活性剤が1〜40重量%含まれる廃水である請求項1記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項3】
アルカリ剤添加による廃水のpHが9〜13.5である請求項1又は請求項2記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項4】
アルカリ剤が水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムから選ばれた1種以上である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項5】
廃水の加熱温度が50℃〜100℃未満である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項6】
無機系凝結剤がベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレー、タルクから選ばれた1種以上である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項7】
無機系凝集剤がポリ塩化アルミニウム及び/又は硫酸アルミニウムである請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。
【請求項8】
水溶性有機系アニオン性高分子凝集剤が水溶性(メタ)アクリル酸共重合体及び水溶性塩、水溶性(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び水溶性塩、水溶性(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド共重合体及び水溶性塩から選ばれた1種以上である請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の非イオン界面活性剤を含む廃水の処理方法。

【公開番号】特開2008−161769(P2008−161769A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351925(P2006−351925)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】