説明

廃水処理システム

【目的】主として砂を含む残留汚泥の回収処理作業を別途行うことなく、廃水処理を安定的に行え、廃水処理コストの低減を図り、しかも良好な汚泥処理環境を創出できる廃水処理システムを提供することを目的とする。
【構成】廃水一時貯留槽2から廃水汲み上げポンプ5により汚泥とともに貯留廃水6を汲み上げて汚泥分離装置15に供給して、汚泥を分離した原水を得ることができる。廃水一時貯留の段階で汚泥が堆積残留させないで済み、更に、分離汚泥を汚泥回収槽19に回収して、原水槽9に原水を送り込む前段階で分離汚泥の回収を行うことができる。これにより、従来の沈積汚泥回収方式における堆積残留汚泥のバキューム回収処理が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として砂を汚泥として含む廃水から汚泥を分離した原水を貯留する廃水処理システムに関し、例えば、レンタル用モップのフロア清掃用パイル材や足拭き用マット等の清掃部材の清浄処理において発生する廃水の浄化処理に好適な廃水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンタル用モップやマット等の清掃部材は、使用後にレンタル品提供者が回収し、洗浄して再利用することが行われている。
この種の清掃部材においては、その機能上、靴などに付着していた砂や細かい固形物をパイル糸の繁みの中に多量に取り込むことになる。例えばマットの場合、吸引クリーナで吸い込んだり、ブラシで掻き落としたり、あるいは叩き落したりしても、一旦パイル糸の繁みの中に取り込まれた砂等の塵埃は、パイル糸に傷を付けないように軽く引っ掻いたり、叩くだけでは、パイル糸の繁みの中を移動するだけでその中から完全に取り除くのが困難である。
【0003】
そこで、汚れたマット等の洗浄においては、例えば、特許文献1に示されるように、パイル糸の繁みの中の塵埃を取り除くために、ジェット水流を大量に吹き付けて砂等を掃き出すことが行われている。特許文献1には、水槽の水面近くで裏返したマットに対して、水槽内に配置された上向き噴射ノズルから300気圧程度の高圧水をマットパイル面に向けて噴射するマット水洗装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、清掃モップの柄から取り外したモップパイルを複数個、水槽内のホルダーに保持して、ジェット水流を噴出させてモップパイルを水洗いする、大量洗浄用モップ洗浄機が開示されている。
【特許文献1】特開平10−244236号公報
【特許文献2】特開平10−263487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示されるように、清掃部材に付着した砂等の塵埃を除去するために大量の水を使用することになるため、水洗処理の過程で大量の廃水が発生する。この廃水は、砂や繊維屑等のリント屑が含んでいるため、そのまま廃棄するのは環境保全、資源再利用等の観点から好ましくない。このため、図9に示す廃水処理システムを用いて、砂等の汚泥と原水に分離する廃水処理が行われている。
【0006】
上記のマット水洗装置やモップ洗浄機等の廃水源60から廃水が排出路61を介して廃水溜め槽62に移送される。廃水溜め槽62に溢れた廃水63は堰65を超えて、オーバーフロー廃水66として汲み出し槽64に流れ込む。汲み出し槽64に溜まった廃水67は汲み出しポンプ68により廃水送管69を通じて大型塵埃除去用フィルタ部70を通過して、原水槽71に送り込まれる。原水槽71に溜まった原水72は汲み出されて所定の浄化処理設備等に送水される。
【0007】
しかしながら、上記の従来の廃水処理システムにおいては、原水槽71への原水貯留までの処理過程で、廃水に含まれる汚泥を各槽で沈積させて分離、除去するため、廃水処理過程で大量に発生する汚泥の廃棄処理に手間と処理コストがかかるといった問題が生じていた。この汚泥は砂が主で、リント屑も混在しているが、廃水溜め槽62の底部に堆積するだけでなく、オーバーフロー廃水66とし流れ込む汲み出し槽64の底部、更には、汲み出し槽64から汲み出されて送り込まれる原水槽71の底部にも堆積して残留することになった。このため、廃水溜め槽62、汲み出し槽64及び原水槽71の底部に堆積した汚泥を掻き出して清掃する清掃作業を定期的に行っていた。しかし、この清掃作業には、廃水溜め槽62等から汚泥を吸い出して回収するバキューム処理を必要とするため、このバキューム汚泥回収作業に多くの作業時間がかかり、また電力の消費量も多く、廃水処理のコストアップを招き、しかも、汚泥回収の際には各槽で一旦水抜きしてからバキューム処理を行うため廃水処理の稼働率が低下するといった問題があった。なお、大量の残留汚泥は腐敗臭等の悪臭源となり、作業環境を悪化させる要因になっていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、残留汚泥の回収処理作業を別途行うことなく、廃水処理を安定的に行え、廃水処理コストの低減を図り、しかも良好な汚泥処理環境を創出できる廃水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態は、主として砂を汚泥として含む廃水から汚泥を分離して得られた原水を原水槽に貯留する廃水処理システムにおいて、廃水源から供給される廃水を一時貯留し、且つ底部に廃水汲み上げポンプを設置した廃水一時貯留槽と、前記廃水一時貯留槽から前記汚泥を含有した廃水を前記廃水汲み上げポンプにより汲み上げて供給される汚泥分離装置と、前記汚泥分離装置により前記廃水を汚泥と原水に分離した後、前記原水を排水して貯留する原水槽と、前記廃水から分離された汚泥を回収する汚泥回収槽とを少なくとも備えた廃水処理システムである。
【0010】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記原水槽の底部に設置された原水ポンプと、前記原水ポンプにより汲み出された原水を処理する原水処理設備と、前記原水槽の底部に堆積した原水槽堆積汚泥を前記原水ポンプにより汲み出して回収する原水槽堆積汚泥貯留槽を有する廃水処理システムである。
【0011】
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記廃水一時貯留槽の貯留水位を検出する検出手段と、前記廃水一時貯留槽の貯留廃水の貯留水位が所定の高水位以上に貯留されていることを前記検出手段により検出したことを条件に、前記廃水汲み上げポンプを駆動するポンプ駆動制御手段とを有した廃水処理システムである。
【0012】
本発明の第4の形態は、第3の形態において、前記検出手段は、超音波を前記廃水一時貯留槽の水面に反射させて前記貯留水位を検出する超音波レベル計からなる廃水処理システムである。
【0013】
本発明の第5の形態は、第3又は第4の形態において、前記廃水一時貯留槽の前記高水位を超えた位置から前記原水槽にバイパス配管が連通配置され、前記高水位を超えて前記廃水が前記廃水一時貯留槽に供給されたときに過剰な前記廃水を原水槽に排水する廃水処理システムである。
【0014】
本発明の第6の形態は、第1〜第5のいずれかの形態において、前記廃水一時貯留槽は、その底部に向けて下向傾斜した傾斜内壁を有し、前記廃水源からの廃水を前記傾斜内壁面に向けて排出して前記廃水を貯留する廃水処理システムである。
【0015】
本発明の第7の形態は、第1〜第6のいずれかの形態において、前記廃水汲み上げポンプから前記汚泥分離装置に廃水を供給する廃水供給路が設けられ、前記廃水供給路の先端に連通配置された傘状部と前記傘状部の排水口に対向配置された水圧緩衝部材とからなるディフューザが設けられ、前記傘状部の端部は前記汚泥分離装置の分離面に接近させて配置され、前記排水口から排出された廃水を前記水圧緩衝部材に落下衝突させて廃水を側方に拡散させ、拡散された廃水を前記傘状部端部から前記分離面に排出させる廃水処理システムである。
【0016】
本発明の第8の形態は、第7の形態において、前記廃水供給路の途中から前記廃水汲み上げポンプに帰還する循環用配管が設けられ、前記廃水供給路に供給される廃水の一部を前記循環用配管を介して前記廃水一時貯留槽の底部に強制循環させ、廃水汲み上げポンプ近傍に沈殿した汚泥を強制攪拌して前記廃水供給路に送出させる廃水処理システムである。
【0017】
本発明の第9の形態は、第7又は第8の形態において、前記傘状部周囲を覆い、且つ前記分離処理面に垂れ下げた飛散防止カバーを備えた廃水処理システムである。
【0018】
本発明の第10の形態は、第1〜第9のいずれかの形態において、前記汚泥分離装置は、振動源から発生させた振動により廃水を汚泥と原水に分離する振動ふるい装置からなる廃水処理システムである。
【0019】
本発明の第11の形態は、第10の形態において、前記振動ふるい装置は、上段分離面と下段分離面の2段式分離面構造からなり、前記上段分離面は、前記下段分離面より細目のメッシュからなり、前記上段分離面上に分離残留された汚泥を側方から振動排出する汚泥排出路が設けられ、前記下段分離面から透過排出される原水を側方から排水する原水排水路が設けられる廃水処理システムである。
【0020】
本発明の第12の形態は、第11の形態において、前記下段分離面の下に複数個の球状小片を散在させたボールトレイを配置し、前記ボールトレイ上で前記球状小片を上下振動させて前記球状小片の衝突により前記上段分離面に衝撃を与え、前記上段分離面を目詰まりさせる汚泥を前記汚泥排出路から排出除去する廃水処理システムである。
【0021】
本発明の第13の形態は、第11又は第12の形態において、可動体と、前記可動体に偏心して取り付けた錘と、前記可動体の下面に配設したブラシ部材とからなるブラシ洗浄機を備え、前記ブラシ洗浄機を前記ブラシ部材を下側にして前記上段分離面上に載置し、前記振動ふるい装置の振動により前記ブラシ洗浄機を自走させて前記上段分離面を前記ブラシ部材により清掃させる廃水処理システムである。
【0022】
本発明の第14の形態は、第11、第12又は第13の形態において前記汚泥回収槽は、上面開口部と底部開口部を有した汚泥収容部と、前記底部開口部を閉鎖する開閉蓋から構成され、前記汚泥排出路から排出される分離汚泥は前記上面開口部から落下して前記汚泥収容部に回収され、汚泥中の水分は前記底部開口部から自重脱水される廃水処理システムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の形態によれば、前記廃水一時貯留槽から前記廃水汲み上げポンプにより前記汚泥とともに貯留廃水を汲み上げて前記汚泥分離装置に供給するので、前記汚泥分離装置により汚泥を分離した原水を得ることができる。従って、前記廃水一時貯留槽における廃水一時貯留の段階で汚泥が堆積残留させないで済み、更に、前記汚泥分離装置により汚泥を分離して前記汚泥回収槽に回収して、原水槽に原水を送り込む前段階で分離汚泥の回収を行うことができる。これにより、従来の沈積汚泥回収方式の廃水処理において実施していた、原水槽等の堆積残留汚泥のバキューム回収処理が不要となるため、バキューム処理作業に要した作業コスト及び電力消費コストの削減が可能となり、廃水処理費用の低コスト化を図ることができる。しかも、従来の沈積汚泥回収方式の場合には、大量の残留汚泥を作ってしまうが、本形態では常時、汚泥を回収分離しながら廃水処理するので、従来方式における悪臭源がなくなり、良好な作業環境を創出することができる。
【0024】
本発明においては、前記汚泥分離装置により汚泥を分離して前記汚泥回収槽に回収するので、前記原水槽に原水を送り込む前段階で分離汚泥の大半を回収することが可能となるが、原水に汚泥が僅かに混入することになる。そこで、本発明の第2の形態によれば、かかる原水槽堆積汚泥の対策として、別途、原水槽堆積汚泥回収処理を行わなくとも、常時、底部汚泥の回収処理が可能となり、原水処理設備への原水汲み出し用原水ポンプを用いて原水槽堆積汚泥を原水槽底部から汲み出して原水槽堆積汚泥貯留槽に回収することができるため、簡易且つ安価に汚泥回収作業を行うことができる。従来の廃水処理の場合(図9参照)と比べると、従来は、大量に堆積した沈積汚泥を回収する必要があるため、原水槽底部に堆積した汚泥をバキューム回収する際、一旦、原水槽の水を抜いてからバキューム作業を行う必要があり、廃水処理システムの稼働率の低下を招来していたが、本発明においては、前記原水ポンプから先の供給経路を前記原水槽堆積汚泥貯留槽と前記原水処理設備に切り換えるだけの簡易な経路構成で、汚泥回収及び前記原水処理設備への原水搬送を行うことができ、廃水処理システムの稼働率の向上と処理コストの低減を図ることができる。原水処理設備としては、例えば、二次的利用のために原水を浄化剤で浄化処理する浄化設備などである。
【0025】
廃水に軽量物の塵埃が多く含まれる場合には、軽量汚泥を常時回収する必要があるが、本発明においては、汚泥中の主な砂は重量物であるので、槽内で沈降し堆積する性質を利用することができる。即ち、本発明の第3の形態によれば、前記廃水一時貯留槽の貯留廃水の貯留水位が所定の高水位以上に貯留されていることを前記検出手段により検出したことを条件に、前記汲み上げポンプを駆動して前記汚泥分離装置に貯留廃水を供給するので、重量物たる、主な砂を汚泥として含む、一定量の廃水を前記廃水一時貯留槽に溜め込む一時貯留過程において、貯留槽底部に溜まった汚泥と一緒に貯留廃水を、前記廃水汲み上げポンプにより汲み上げることが可能となり、常時ポンプ駆動をせずとも、効率的且つ経済的に汚泥回収を行うことができる。
【0026】
前記廃水一時貯留槽の貯留水位の検出には、導通センサによる静電容量式液面計やフロート(浮き)式液面計などを使用することができるが、汚泥を含む廃水による静電センサや浮きが汚染され、清掃作業の手間を必要とすることになる。そこで、本発明の第4の形態に係る超音波レベル計によれば、超音波を貯留廃水面に当て、その反射により水位を検出する非接触計測を行えるため、汚泥汚染による清掃作業を行わなくて済む利点がある。
【0027】
本発明の第5の形態によれば、前記廃水一時貯留槽の前記高水位を超えた位置から前記原水槽にバイパス配管が連通配置され、前記高水位を超えて前記廃水が前記廃水一時貯留槽に供給されたときに過剰な前記廃水を原水槽に排水するので、前記高水位を超えた過剰供給の廃水を前記バイパス配管を通じて前記原水槽に排水でき、前記廃水一時貯留槽に廃水を連続供給することが可能となり、前記廃水一時貯留槽の貯留容積に対して廃水供給を最大にして廃水処理能力を向上させることができる。
【0028】
前記廃水一時貯留槽として箱型形状の貯留槽を用いると貯留容積を大きくすることができるが、その場合、前記廃水源から貯留槽内に排水したときに生ずる跳ね返りによって、箱内壁面に汚泥が飛沫となって被着して残留してしまう。このため、付着汚泥が悪臭を放ち、多量に堆積したりするので、付着汚泥の清掃を定期的に行うことになる。そこで、本発明の第6の形態によれば、前記廃水一時貯留槽は、その底部に向けて下向傾斜した傾斜内壁を有し、前記廃水源からの廃水を前記傾斜内壁面に向けて排出するので、廃水を前記廃水一時貯留槽に溜め込む際に、前記傾斜内壁面の傾斜による水勾配を設けて、該傾斜面に沿って汚泥を流し落としながら前記底部に送り込むことができ、廃水一時貯留する過程において、前記廃水一時貯留槽内壁に付着汚泥が残留することを防止でき、付着汚泥の悪臭を発生させることなく作業環境の保全を確保でき、また付着汚泥の清掃作業も行わなくて済む利点がある。
【0029】
本発明の第7の形態によれば、前記廃水汲み上げポンプは、前記廃水供給路と連通した前記傘状部と、前記傘状部の排水口に対向配置した水圧緩衝部材からなる前記ディフューザを有し、前記傘状部の端部を前記汚泥分離装置の分離処理面に接近させて廃水を排出させるので、前記廃水供給路から流れ込む廃水を前記水圧緩衝部材に衝突させて水流の勢いを緩和するとともに、更に衝突後の廃水を前記傘状部の内面に飛散させて、廃水の一部を前記傘状部の端部より前記分離処理面に垂れ流すことができる。従って、廃水供給路の出口から前記分離処理面に直に噴出させる場合には、前記分離処理面からの跳ね返りによって廃水供給路の出口付近に汚泥が飛沫となって被着して残留してしまい、廃水詰まりを起こす不具合を生ずるが、これと比べて、本形態においては、前記傘状部の端部より、穏やかな水流の廃水供給を前記分離処理面に行うことができるので、汚泥の飛沫の発生を十分に抑制して、上記廃水詰まりを起こすことなく、効率的に汚泥の分離処理を行うことができる。
【0030】
本発明の第8の形態によれば、前記廃水供給路の途中から前記廃水汲み上げポンプに帰還する循環用配管が設けられ、前記廃水供給路に供給される廃水の一部を前記循環用配管を介して前記廃水一時貯留槽の底部に強制循環させ、廃水汲み上げポンプ近傍に沈殿した汚泥を強制攪拌して前記廃水供給路に送出させるので、前記廃水一時貯留槽の底部への廃水の帰還流を与えて、その攪拌作用により前記廃水汲み上げポンプの清掃が簡易に行え、しかも前記底部に汚泥が沈積するのを防止でき、前記廃水一時貯留槽に腐敗臭の原因になる残留汚泥が発生させないように、高効率に前記汚泥分離装置に廃水を直送して、従来の汚泥回収処理を伴うことなく廃水処理の低コスト化を実現でき、更に単位時間当たりの廃水処理能力を向上させることができる。特に、ポンプ内設備へ直接、廃水を循環させる場合には、常時、廃水供給配管内の目詰まりを防止することができる。しかも、汚泥分離装置への廃水供給と、ポンプへの循環流の時間差を設けることができ、稼動時の泥分離装置への廃水溢れ現象を防止でき、廃水汲み上げポンプの出口配管に逆止弁を取り付けなくて済む。
【0031】
本発明の第9の形態によれば、前記傘状部周囲を覆い、かつ前記分離処理面に垂れ下げた飛散防止カバーを備えるので、前記分離処理面において、前記傘状部の端部より廃水が流れ落ちる際に、より穏やかな水流の廃水供給を前記分離処理面に行え、前記分離処理面において生ずる廃水の跳ね返りや飛沫の発生を確実に防止でき、上記廃水詰まりを起こすことなく、より効率的に汚泥の分離処理を行うことができる。
【0032】
本発明の第10の形態によれば、前記汚泥分離装置は、振動源から発生させた振動により汚泥と原水に分離する振動ふるい装置からなるので、汚泥と水の軽重の差を利用して効率的かつ短時間に分離することができ、廃水処理能力を向上させることができる。
【0033】
本発明の第11の形態によれば、前記振動ふるい装置は、上段分離面と下段分離面の2段式分離処理面構造からなり、前記上段分離面は、前記下段分離面より細目のメッシュからなり、前記上段分離面上に分離残留された汚泥を側方から振動排出する汚泥排出路が設けられ、前記下段分離面から透過排出される原水を側方から排水する原水排水路が設けられるので、例えば、レンタル用モップやマットの洗浄済み廃水に多く含まれる、砂以外のリント屑の汚泥に対して、前記上段分離面により細かなリント屑等を弁別分離することができる。従って、粗い目の前記下段分離面だけの1段式分離処理面構造の振動ふるい装置を用いると、細かなリント屑等が混入したまま原水を排出することになり、回収後の原水に対してリント屑を取り除くための浄化剤等の薬品費用が嵩むことになるが、本形態においては、前記上段分離面により細かなリント屑等を弁別分離して良質の原水を排出でき、かかる薬品費用等の原水処理コストを大幅に低減することができる。なお、前記上段分離面上に分離残留された汚泥により目詰まりが生じるので、前記上段分離面のメッシュを取り替え自在にするのが好ましい。回収リント屑は廃棄処理されるが、大部分が砂である回収汚泥は、産業用物質として再利用が可能となり、資源の有効利用に貢献することができる。
【0034】
本発明の第12の形態によれば、前記下段分離面の下に複数個の球状小片を散在させたボールトレイを配置し、前記振動ふるい装置の振動作用を利用して、前記ボールトレイ上で前記球状小片を上下振動させて前記球状小片の衝突により前記下段分離面に衝撃を与え、その衝撃力は前記上段分離面にも作用し、その結果、上段及び下段分離面に強固に付着した汚泥を確実に除去できる。即ち、前記下段分離面や上段分離面に付着した汚泥を掻き取ったり、刮げ取ったりして分離面の目詰まりを防止し、汚泥分離効率を低下させずに、安定した廃水処理を実施することができる。なお、複数個の球状小片は前記ボールトレイと前記下段分離面の間に介挿されることにより、小片自体の上下振動により装置外に飛び出すおそれもなく、振動駆動時に分離面の目詰まり防止動作を確実に実施させることが可能になる。
【0035】
本発明の第13の形態によれば、可動体と、前記可動体に偏心して取り付けた錘と、前記可動体の下面に配設したブラシ部材とからなるブラシ洗浄機を備え、前記ブラシ洗浄機を前記ブラシ部材を下側にして前記分離処理面に載置し、前記振動ふるい装置の振動により前記ブラシ洗浄機を自走させて前記分離処理面を前記ブラシ部材により清掃させるので、前記振動ふるい装置の振動を受けた前記ブラシ洗浄機は前記錘による偏心作用により自走して、前記分離処理面上を自在に移動し、前記分離処理面に付着した汚泥を、フリーに動く前記ブラシ部材により掻き取ったり、刮げ取ったりして分離面の目詰まりを防止し、汚泥分離効率を低下させずに、安定した廃水処理を実施することができる。
【0036】
本発明の第14の形態によれば、前記汚泥回収槽は、上面開口部と底部開口部を有した汚泥収容部と、前記底部開口部を閉鎖する開閉蓋から構成され、前記汚泥排出路から排出される分離汚泥は前記上面開口部から落下して前記汚泥収容部に回収され、汚泥中の水分は前記底部開口部から自重脱水されるので、前記自重脱水により水分が取り除かれた分離汚泥の固形化を実現することができる。即ち、前記開閉蓋の開放により固形化され、十分に水分を抜いた汚泥塊を収集することができるので、搬送等の取扱いが容易になり、再資源化処理に好適な形態の資源物質を得ることができる。特に、水分を吸収するリント屑が汚泥に含有されている場合には、汚泥を焼却処理して再資源化するときに、含有水分を多く含むと焼却効率が低下し、再処理費用が嵩んだり、別途に脱水処理を必要となり好ましくないが、本形態により得られた汚泥塊は、汚泥中の水分が十分に収容汚泥の自重脱水作用によって除去されるので、別途に脱水処理を行うことなく、低コストで焼却処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る廃水処理システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る廃水処理システムの構成図である。本実施形態は、レンタル用マットやモップの水洗装置を廃水源1として、主として砂を汚泥として含む廃水を原水に分離処理する廃水処理システムである。この廃水処理システムは、
廃水源1から廃水導入路3を通じて供給される廃水を一時貯留し、且つ底部に廃水汲み上げポンプ5を設置した廃水一時貯留槽2と、廃水一時貯留槽2底部から汚泥を含有した廃水を廃水汲み上げポンプ5により汲み上げて供給される汚泥分離装置15と、汚泥分離装置15により廃水を汚泥と原水に分離した後、原水10を排水して貯留する原水槽9と、汚泥分離装置15により廃水から分離された汚泥を回収する汚泥回収槽19を有する。
【0038】
原水槽9の収容原水は、原水槽9の底部に設置された原水ポンプにより汲み出され、原水供給路12を通じて、原水を処理する原水処理設備(図示せず)への供給路23に送水される。原水処理設備としては、例えば、二次的利用のために原水を浄化剤で浄化処理する浄化設備などである。原水供給路12の原水処理設備側への経路には開閉バルブ24が設けられている。
【0039】
原水供給路12は開閉バルブ25を介して、原水槽堆積汚泥貯留槽27への供給路26にも接続されている。原水槽9の底部に堆積した原水槽堆積汚泥を原水ポンプ11により汲み出して回収するとき、開閉バルブ24を閉成し、且つ、開閉バルブ25を開成して、原水供給路12及び供給路26を通じて、原水ポンプ11により汲み出した原水槽堆積汚泥を原水とともに原水槽堆積汚泥貯留槽27に送水して、原水槽堆積汚泥水28として貯留回収する。原水槽堆積汚泥貯留槽27の貯留水は、開閉バルブ29を介して排出路30を通じて、廃水一時貯留槽2に戻される。
【0040】
原水ポンプ11から先の供給経路を原水槽堆積汚泥貯留槽27と原水処理設備に切り換えるだけの簡易な経路構成により、原水ポンプ11を用いて原水槽堆積汚泥を原水槽9底部から汲み出して原水槽堆積汚泥貯留槽27に回収できるので、別途、原水槽堆積汚泥回収処理を行わなくとも、廃水処理稼動中、常時、底部汚泥の回収清掃処理が可能となり、廃水処理システムの稼働率の向上と処理コストの低減に寄与することができる。
【0041】
廃水一時貯留槽2は、上部開放形状の貯留槽4に一時貯留された廃水6を、貯留槽4の底部に配置した廃水汲み上げポンプ5により汲み上げて、汲み上げ廃水供給路13を通じて汚泥分離装置15に供給する。廃水汲み上げポンプ5には汚泥用のハイスピンポンプを使用することができる。
図2は廃水一時貯留槽2の詳細構成を示す。廃水一時貯留槽2は、上部開放形状の貯留槽4の底部46に向けて下向傾斜した傾斜内壁47を有する。廃水源1から廃水導入路3の排水口から廃水45を傾斜内壁面47に向けて排出して廃水を貯留槽4内に収容貯留する。底部46は幅狭空間の釜場であり、釜場内に廃水汲み上げポンプ5を設置している。
【0042】
箱型形状の廃水一時貯留槽を用いると貯留容積を大きくすることができるが、その場合、廃水源から貯留槽内に排水したときに生ずる跳ね返りによって、箱内壁面に汚泥が飛沫となって被着して残留してしまう。このため、付着汚泥が悪臭を放ち、多量に堆積したりするので、付着汚泥の清掃を定期的に行う手間を要することになる。一方、廃水一時貯留槽2の場合には、廃水を貯留槽4に溜め込む際に、傾斜内壁47の傾斜面による水勾配を設けて、その傾斜面に沿って汚泥48を流し落としながら底部46に送り込むことができるので、廃水一時貯留する過程において、廃水一時貯留槽内壁に付着汚泥が残留することを防止でき、付着汚泥の悪臭を発生させることなく作業環境の保全を確保でき、また付着汚泥の清掃作業も行わなくて済む。
【0043】
廃水一時貯留槽2には、貯留水位を検出する検出手段として、超音波レベル計7が設置されている。超音波レベル計7は超音波を廃水一時貯留槽2の水面に反射させて貯留水位を検出し、図示しないポンプ駆動制御装置に検出信号を送信する。即ち、超音波レベル計7はセンサヘッドから超音波を発信し、水面で反射してくる超音波を再度センサヘッドで受信して、この間の発信と受信の時間を計測してセンサヘッドからの距離を計測し、センサヘッドの設置定点と計測距離の関係から水位の変化を監視することができる。
【0044】
廃水一時貯留槽の貯留水位の検出に超音波レベル計7を使用するので、超音波を貯留廃水面に当て、その反射により水位を検出する非接触計測を行えるため、汚泥汚染による清掃作業を行わなくて済む。貯留水位の検出手段として、導通センサによる静電容量式液面計やフロート(浮き)式液面計などを使用してもよい。
【0045】
前記ポンプ駆動制御装置によるポンプ駆動は、超音波レベル計7の計測に基づき行われ、廃水一時貯留槽2の貯留廃水の貯留水位が低水位L以上で高水位H以下の間であることが検出されたことを条件に、廃水汲み上げポンプ5が駆動される。低水位Lは、釜場より低くすると砂分だけとなるため、底部46の釜場内に廃水がある状態の限界水位に設定される。廃水一時貯留槽2の高水位Hを超えた位置から原水槽9にバイパス配管8が連通配置されており、高水位Hを超えて廃水が供給されたときに過剰な廃水を原水槽9に排水することができる。従って、高水位Hぎりぎまで廃水貯留を行え、廃水一時貯留槽2に廃水を連続供給して、廃水一時貯留槽2の貯留容積に対して廃水供給を最大にして廃水処理能力を向上させることができる。なお、上層の貯留廃水は汚泥を僅かしか含まない上澄みに相当するので、そのまま原水槽9に排水することが可能となる。更に、廃水の供給過剰のおそれがあるので、上限HH(>H)を検出したときは廃水供給経路を遮断ないし送水停止する停止処理が行われる。
【0046】
図3は汚泥分離装置15の概略構成を示す。図4は汚泥分離装置15のふるい面16付近の詳細構成図である。
汚泥分離装置15は、振動源から発生させた振動により廃水を汚泥と原水に分離する振動ふるい装置からなる。この振動ふるい装置は、円筒状ふるい枠32の中に設けた、上段分離面34と下段分離面35の2段式分離面構造からなる。ふるい枠32の外周適所には、上段分離面上34に分離残留された汚泥を側方から振動排出する汚泥排出口18が開口形成されている。汚泥排出口18から汚泥排出路に連通し、汚泥分離装置15により廃水から分離された汚泥39が汚泥排出路を通じて汚泥回収槽19に排出、回収される。
【0047】
ふるい枠32下方の透過排水受け部36には、側方から排水する原水排水口20が設けられており、下段分離面35から透過排出された原水40は、透過排水受け部36に流れて、原水排水口20に連通した原水排水口21を通じて、原水槽9に排出、貯留される。なお、原水排水口20からの原水をバイパス路22を通じてバイパス配管8にも流して、常時使用されないバイパス配管8の清掃に利用してもよい。
【0048】
上段分離面34は、下段分離面35より細目のナイロンメッシュ(#80〜#100メッシュ)からなる。下段分離面35にはSUS製網(4mm孔)を使用する。上段分離面34にもSUS製網を使用してよいが、細い網目を使用する場合には、SUS製では尖った砂粒が食い込むおそれがあるのでナイロン製が好ましい。前記下段分離面35の下側には、多数の孔58が空いたボールトレイ57が平行に配置されており、このボールトレイ57上に多数の樹脂製球状小片51が散在配置されている。
【0049】
粗い目の下段分離面だけの1段式分離処理面構造の振動ふるい装置を用いると、レンタル用モップやマットの洗浄済み廃水に多く含まれる、砂以外のリント屑の汚泥に対して、細かなリント屑等が混入したまま原水を排出することになり、回収後の原水に対してリント屑を取り除くための浄化剤等の薬品費用が嵩むことになる。本実施形態においては、上記2段式分離面構造からなる振動ふるい装置の使用により、上段分離面34により細かなリント屑等を弁別分離することができるので、上段分離面34により細かなリント屑等を弁別分離して良質の原水を排出でき、かかる薬品費用等の原水処理コストを大幅に低減することができる。なお、上段分離面34のナイロンメッシュは分離残留された汚泥により目詰まりが生じるので、図示しないが、メッシュの取り付けは上方より取り替え作業のしやすい、ワンタッチヒンジ脱着構造にしている。また、上段分離面34の上方に、メッシュ洗浄用高温水噴射ノズルを配置して、ナイロンメッシュを適宜、高温水を噴き付けて洗浄するようにしてもよい。
【0050】
図5は、汚泥分離装置15の振動ふるい原理を説明するためのモータ回転軸の構成(5A)と振動ふるい面(5B)を示す。汚泥分離装置15は、振動モータ17の回転軸80の両端に取り付けた錘(ウエイト)81(図3の37)、82(図3の38)により振動を発生させる振動源を備え、上段分離面34又は下段分離面35の振動ふるい面はその重心を中心にして加振されて振動する。振動モータ17は透過排水受け部36下部の装置基台33に内設されている。トップ・ウエイト81の回転は水平面の円形振動を発生させ、ふるい面の中心に供給された被処理物を周辺方向に移動させる役目をし、ボトム・ウエイト82の回転はふるい面を転倒運動させ垂直方向の振動を発生させる。これらの振動が合成されることにより、ふるい面に3次元的なジャイレトリー運動を生起させる。図5の(5A)に示すように、トップ・ウエイト81の軸83と、ボトム・ウエイト82の軸84に対する空間的位相θに応じて、発生する合成振動態様が異なる。本実施形態においては、位相θを約45°としている。ふるい面の振動態様を図5の(5B)に示す。(5B)の実線は位相θを0°としたときの被処理物の移動方向を示す。位相θが0°の場合には、被処理物は中心Cから半径方向にまっすぐに、ふるい枠32の外周部に向けて移動していく。位相θを約45°とする場合には、一点破線で示すように、被処理物は中心Cから半径方向に円弧を描きながらふるい枠32の外周部に向けて渦巻き状に移動していく。いずれの場合も、ふるい枠32外周部に達した被処理物はふるい枠32の内側に沿って回転運動をする。ふるい枠32には、汚泥出口56が開口形成され、汚泥排出口18に連通して汚泥排出路を形成している。
【0051】
上記構成の汚泥分離装置15において、廃水一時貯留槽2から廃水汲み上げポンプ5により汲み上げた廃水を、汲み上げ廃水供給路13を通じて上段分離面34及び下段分離面35の振動ふるい面に供給すると、廃水に含有された汚泥は上記振動作用によりふるい枠32に向けて篩い出され、ふるい枠32内周面に沿って円弧移動しながら、ふるい枠32に設けた汚泥出口56及び汚泥排出口18を通じて排出され、汚泥回収槽19に回収される。廃水はふるい面の中心Cに向けて連続供給されるが、(5B)の一点破線で示すように、上記振動作用により汚泥は中心から徐々に外周側に移動していくので、中心C付近に堆積せず、連続的に汚泥分離処理を行うことができる。この汚泥分離の間に、汚泥と分離された原水はふるい面を透過して、透過排水受け部36に流れ落ちて、原水排水口21を通じて原水槽9に排出、貯留される。
【0052】
廃水供給路13終端の廃水放出管31には、図4に示すように、ふるい面に直に廃水排出をさせないためのディフューザ14が取り付けられている。ディフューザ14は、廃水放出管31の先端に連通配置された傘状部からなる。この傘状部の中心に延出された廃水放出管31の排水口(80〜100mm径)には、水圧緩衝部材41が対向配置されている。このディフューザ14の傘状部の端部は汚泥分離装置15のふるい面に接近させて配置されている。廃水放出管31の排水口から排出された廃水は水圧緩衝部材41に落下衝突して側方に拡散する。図4の44で示す、拡散された廃水は傘状部端部からふるい面に落下、排出される。
【0053】
傘状部及び水圧緩衝部材41からなるディフューザ14を、廃水放出管31に設置することにより、廃水供給路13から流れ込む廃水を水圧緩衝部材41に衝突させて水流の勢いを緩和することができる。また、衝突後の廃水を傘状部の内面に飛散させて、廃水の一部を傘状部の端部より汚泥分離用ふるい面に垂れ流すことができる。従って、廃水供給路13の出口からふるい面に直に噴出させる場合には、ふるい面からの跳ね返りによって廃水供給路13の出口付近に汚泥が飛沫となって被着して残留してしまい、廃水詰まりを起こす不具合を生ずるが、ディフューザ14によれば、傘状部の端部より、穏やかな水流の廃水供給をふるい面に行うことができるので、汚泥の飛沫の発生を十分に抑制して、上記廃水詰まりを起こすことなく、効率的に汚泥の分離処理を行うことができる。
【0054】
図4に示すように、ディフューザ14の傘状部周囲を覆う飛散防止カバー42が取り付けられている。飛散防止カバー42は、ビニール製カバーシートからなり、その端部43は上段分離面34のふるい面上に垂れ下げられている。飛散防止カバー42により傘状部を覆うことによって、ふるい面に傘状部の端部より廃水が流れ落ちる際に、より穏やかな水流の廃水を供給することができ、ふるい面において生ずる廃水の跳ね返りや飛沫の発生を確実に防止でき、上記廃水詰まりを起こすことなく、しかも周辺作業者への汚泥飛散も回避して、より効率的に汚泥の分離処理を行うことができる。
【0055】
図6は、上段分離面34の目詰まり防止対策に用いる球状小片51を示す。下段分離面35の下側には孔58が多数空けられたボールトレイ57が前記下段分離面35と平行に配置されている。前記ボールトレイ57上には複数個の球状小片51がフリーに動くように散在載置されている。球状小片51は樹脂製ボールである。前記孔58の直径は前記球状小片51の直径よりも小さく、静止状態では球状小片51は前記孔58の上に嵌っている。ふるい振動に伴ってボールトレイ57が振動し、球状小片51は上下に反復振動する。球状小片51が下段分離面35に衝突すると、その衝撃力は上段分離面34にも作用し、上段分離面34及び下段分離面35を目詰まりさせる汚泥を分離し、汚泥出口56及び汚泥排出口18に連通した汚泥排出路から排出除去することができる。即ち、上記振動ふるい装置の振動作用を利用して、ボールトレイ57に載置、導入した球状小片52を上下振動させて、球状小片の叩き作用により上段分離面34及び下段分離面35に付着した汚泥を掻き取ったり、刮げ取ったりして分離面の目詰まりを防止し、汚泥分離効率を低下させずに、安定した廃水処理を実施することができる。なお、複数個の球状小片51はボールトレイ57と下段分離面35の間に介挿しており、小片自体の上下振動により装置外に飛び出すおそれもなく、振動駆動時にふるい面の目詰まり防止動作を確実に実施させることができる。
【0056】
図7の(7A)は、ふるい面に載置して用いる、ふるい面清掃用自走式ブラシ洗浄機49を示す。この自走式ブラシ洗浄機49は、可動体52と、可動体52に偏心して取り付けた錘50と、可動体52の下面に配設したブラシ部材53からなる。ブラシ部材53は、硬質ナイロン製ブラシ部を植設した基材55を可動体52下面にビス54止め固定されている。
ブラシ洗浄機49はブラシ部材53を下側にして上段分離面34上に載置され、振動ふるい装置の振動を受けて、偏心錘51の揺動作用によって、図6及び図7の(7B)に示すように、ふるい面上をフリーに自走することができる。
【0057】
上記ブラシ洗浄機49は、電源等の駆動源を用いずとも、ふるい面上を自在に移動でき、ふるい面に付着した汚泥を、フリーに動くブラシ部材53により掻き取ったり、刮げ取ったりしてふるい面の目詰まりを防止でき、汚泥分離効率を低下させずに、しかも簡単且つ安価に、安定した廃水処理を実施することができる。
【0058】
図8の(8A)は、汚泥回収槽19の概略構成を示す。汚泥回収槽19は上面開口部と底部開口部を有した、逆円錐台型汚泥収容部(容量200L)と、底部91の開口部を左右矢印方向に開閉する開閉蓋92、92から構成されている。開閉蓋92、92は通常閉じられているが、その内端部92a、92aには微細な隙間93が存在している。汚泥分離装置15における上記汚泥排出路から排出される分離汚泥39は、上面開口部から落下して汚泥収容部に回収され収容される。収容汚泥90中の水分は、汚泥90の自重により搾られ、前記隙間93から脱水される。自重脱水された排水94は回収容器95で受けて回収される。また、前記開閉蓋92、92を多少左右に開けば、前記隙間93は拡張され、水分は汚泥の自重脱水作用で下方に排水される。前記回収容器95に収容された水分94は廃水一時貯留槽2に再投入される。
【0059】
上記汚泥回収槽19の設置によって、汚泥収容部へ汚泥90を投入して、前記自重脱水作用により水分が取り除かれた分離汚泥の固形化を実現することができる。従って、開閉蓋92の開放により固形化され、十分に水分を抜いた汚泥塊を収集することができるので、搬送等の取扱いが容易になり、再資源化処理に好適な形態の資源物質を得ることができる。特に、水分を吸収するリント屑が汚泥に含有されている場合には、汚泥を焼却処理して再資源化するときに、含有水分を多く含むと焼却効率が低下し、再処理費用が嵩んだり、別途に脱水処理を必要となり好ましくないが、本形態により得られた汚泥塊は、汚泥中の水分が十分に収容汚泥の自重脱水作用によって除去されるので、別途に脱水処理を行うことなく、低コストで焼却処理することができる。
【0060】
図8の(8B)は廃水汲み上げポンプに廃水循環機能を付与した例を示す。廃水供給路99の途中から廃水汲み上げポンプ98に帰還する循環用配管100及び開閉バルブ101が設けられている。廃水供給路99に供給される廃水の一部を循環用配管100を介して廃水一時貯留槽96の底部97に強制循環させる。この強制循環により廃水汲み上げポンプ98近傍に沈殿した汚泥を強制攪拌して廃水供給路99に送出させる。
【0061】
上記のように、廃水汲み上げポンプに廃水循環機能を付与することにより、廃水一時貯留槽96の底部97(釜場)への廃水の帰還流を与えて、その攪拌作用によりポンプの清掃を行いながら底部97に汚泥が沈積するのを防止することができる。従って、廃水一時貯留槽96には腐敗臭の原因になる残留汚泥が発生させないように、高効率に汚泥分離装置に廃水を直送して、従来の汚泥回収処理を伴うことなく廃水処理の低コスト化を実現でき、更に単位時間当たりの廃水処理能力を向上させることができる。
特に、破線102に示すように、ポンプ内設備へ直接、廃水を循環させることにより、常時、廃水供給配管内の目詰まりを防止することができる。しかも、汚泥分離装置15への廃水供給と、ポンプへの循環流の時間差を設けることができ、稼動時の泥分離装置15への廃水溢れ現象を防止でき、廃水汲み上げポンプの出口配管に逆支弁を取り付けなくて済む。
【0062】
本実施形態における廃水処理システムによれば、廃水一時貯留槽2から廃水汲み上げポンプ5により汚泥とともに貯留廃水6を汲み上げて汚泥分離装置15に供給するので、汚泥分離装置15により汚泥を分離した原水を得ることができる。従って、廃水一時貯留槽2における廃水一時貯留の段階で汚泥が堆積残留させないで済み、更に、汚泥分離装置15により汚泥を分離して汚泥回収槽19に回収して、原水槽9に原水を送り込む前段階で分離汚泥の回収を行うことができる。これにより、従来の沈積汚泥回収方式の廃水処理において実施していた、原水槽等の堆積残留汚泥のバキューム回収処理が不要となるため、バキューム処理作業に要した作業コスト及び電力消費コストの削減が可能となり、廃水処理費用の低コスト化を図ることができる。実施上の比較では、種々の清掃作業コストは従来の1/10程度に削減された。しかも、従来の沈積汚泥回収方式の場合には、大量の残留汚泥を作ってしまうが、本形態では常時、汚泥を回収分離しながら廃水処理するので、従来方式における悪臭源がなくなり、良好な作業環境を創出することができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、レンタル用モップのフロア清掃用パイル材や足拭き用マット等の清掃部材の清浄処理において発生する、主に砂を含んだ廃水の浄化処理を行う廃水処理システムに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態である廃水処理システムの構成図である。
【図2】前記廃水処理システムに用いる廃水一時貯留槽2の構成図である。
【図3】前記廃水処理システムに用いる汚泥分離装置15の概略構成図である。
【図4】汚泥分離装置15の分離面付近の詳細構成図である。
【図5】汚泥分離装置15の振動ふるい原理を説明するためのモーター回転軸の構成と振動ふるい面を示す図である。
【図6】下段分離面35の目詰まり防止対策に用いる球状小片51の使用状態を示す図である。
【図7】本実施形態に用いる、ふるい面清掃用自走式ブラシ洗浄機を示す図である。
【図8】本実施形態に用いる汚泥回収槽19の概略構成図及び、廃水汲み上げポンプに廃水循環機能を付与した例を示す図である。
【図9】従来の廃水処理システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1 廃水源
2 廃水一時貯留槽
3 廃水導入路
4 貯留槽
5 廃水汲み上げポンプ
6 廃水
7 超音波レベル計
8 バイパス配管
9 原水槽
10 原水
11 原水ポンプ
12 原水供給路
13 汲み上げ廃水供給路
14 ディフューザ
15 汚泥分離装置
16 ふるい面
17 振動モータ
18 汚泥排出口
19 汚泥回収槽
20 原水排水口
21 原水排水口
22 バイパス路
23 供給路
24 開閉バルブ
25 開閉バルブ
26 供給路
27 原水槽堆積汚泥貯留槽
28 原水槽堆積汚泥水
29 開閉バルブ
30 排出路
31 廃水放出管
32 ふるい枠
33 装置基台
34 上段分離面
35 下段分離面
36 透過排水受け部
37 トップ・ウエイト
38 ボトム・ウエイト
39 汚泥
40 原水
41 水圧緩衝部材
42 飛散防止カバー
43 端部
44 拡散された廃水
45 廃水
46 底部
47 傾斜内壁
48 汚泥
49 ブラシ洗浄機
50 錘
51 球状小片
52 可動体
53 ブラシ部材
54 ビス
55 基材
56 汚泥出口
57 ボールトレイ
58 孔
60 廃水源
61 排出路
62 廃水溜め槽
63 廃水
64 汲み出し槽
65 堰
66 オーバーフロー廃水
67 廃水
68 汲み出しポンプ
69 廃水送管
70 フィルタ部
71 原水槽
72 原水
80 回転軸
81 錘(ウエイト)
82 錘(ウエイト)
83 軸
84 軸
90 汚泥
91 底部
92 開閉蓋
92a 内端部
93 隙間
94 自重脱水された排水
95 回収容器
96 廃水一時貯留槽
97 底部
98 廃水汲み上げポンプ
99 廃水供給路
100 循環用配管
101 開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として砂を汚泥として含む廃水から汚泥を分離して得られた原水を原水槽に貯留する廃水処理システムにおいて、廃水源から供給される廃水を一時貯留し、且つ底部に廃水汲み上げポンプを設置した廃水一時貯留槽と、前記廃水一時貯留槽から前記汚泥を含有した廃水を前記廃水汲み上げポンプにより汲み上げて供給される汚泥分離装置と、前記汚泥分離装置により前記廃水を汚泥と原水に分離した後、前記原水を排水して貯留する原水槽と、前記廃水から分離された汚泥を回収する汚泥回収槽とを少なくとも備えたことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項2】
前記原水槽の底部に設置された原水ポンプと、前記原水ポンプにより汲み出された原水を処理する原水処理設備と、前記原水槽の底部に堆積した原水槽堆積汚泥を前記原水ポンプにより汲み出して回収する原水槽堆積汚泥貯留槽を有する請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記廃水一時貯留槽の貯留水位を検出する検出手段と、前記廃水一時貯留槽の貯留廃水の貯留水位が所定の高水位以上に貯留されていることを前記検出手段により検出したことを条件に、前記廃水汲み上げポンプを駆動するポンプ駆動制御手段とを有した請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記検出手段は、超音波を前記廃水一時貯留槽の水面に反射させて前記貯留水位を検出する超音波レベル計からなる請求項3に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記廃水一時貯留槽の前記高水位を超えた位置から前記原水槽にバイパス配管が連通配置され、前記高水位を超えて前記廃水が前記廃水一時貯留槽に供給されたときに過剰な前記廃水を原水槽に排水する請求項3又は4に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記廃水一時貯留槽は、その底部に向けて下向傾斜した傾斜内壁を有し、前記廃水源からの廃水を前記傾斜内壁面に向けて排出して前記廃水を貯留する請求項1〜5のいずれかに記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記廃水汲み上げポンプから前記汚泥分離装置に廃水を供給する廃水供給路が設けられ、前記廃水供給路の先端に連通配置された傘状部と前記傘状部の排水口に対向配置された水圧緩衝部材とからなるディフューザが設けられ、前記傘状部の端部は前記汚泥分離装置の分離面に接近させて配置され、前記排水口から排出された廃水を前記水圧緩衝部材に落下衝突させて廃水を側方に拡散させ、拡散された廃水を前記傘状部端部から前記分離面に排出させる請求項1〜6のいずれかに記載の廃水処理システム。
【請求項8】
前記廃水供給路の途中から前記廃水汲み上げポンプに帰還する循環用配管が設けられ、前記廃水供給路に供給される廃水の一部を前記循環用配管を介して前記廃水一時貯留槽の底部に強制循環させ、廃水汲み上げポンプ近傍に沈殿した汚泥を強制攪拌して前記廃水供給路に送出させる請求項7に記載の廃水処理システム。
【請求項9】
前記傘状部周囲を覆い、且つ前記分離処理面に垂れ下げた飛散防止カバーを備えた請求項7又は8に記載の廃水処理システム。
【請求項10】
前記汚泥分離装置は、振動源から発生させた振動により廃水を汚泥と原水に分離する振動ふるい装置からなる請求項1〜9のいずれかに記載の廃水処理システム。
【請求項11】
前記振動ふるい装置は、上段分離面と下段分離面の2段式分離面構造からなり、前記上段分離面は、前記下段分離面より細目のメッシュからなり、前記上段分離面上に分離残留された汚泥を側方から振動排出する汚泥排出路が設けられ、前記下段分離面から透過排出される原水を側方から排水する原水排水路が設けられる請求項10に記載の廃水処理システム。
【請求項12】
前記下段分離面の下に複数個の球状小片を散在させたボールトレイを配置し、前記ボールトレイ上で前記球状小片を上下振動させて前記球状小片の衝突により前記上段分離面に衝撃を与え、前記上段分離面を目詰まりさせる汚泥を前記汚泥排出路から排出除去する請求項11に記載の廃水処理システム。
【請求項13】
可動体と、前記可動体に偏心して取り付けた錘と、前記可動体の下面に配設したブラシ部材とからなるブラシ洗浄機を備え、前記ブラシ洗浄機を前記ブラシ部材を下側にして前記上段分離面上に載置し、前記振動ふるい装置の振動により前記ブラシ洗浄機を自走させて前記上段分離面を前記ブラシ部材により清掃させる請求項11又は12に記載の廃水処理システム。
【請求項14】
前記汚泥回収槽は、上面開口部と底部開口部を有した汚泥収容部と、前記底部開口部を閉鎖する開閉蓋から構成され、前記汚泥排出路から排出される分離汚泥は前記上面開口部から落下して前記汚泥収容部に回収され、汚泥中の水分は前記底部開口部から自重脱水される請求項11、12又は13のいずれかに記載の廃水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−101255(P2009−101255A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273130(P2007−273130)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】