説明

廃水処理船

【課題】船舶や海上から回収した含油廃水、生活廃水等の廃水を海上で浄化処理し、船舶での再利用、或いは放流を容易に行うことのできる廃水処理船を提供する。
【解決手段】曳航または自走により航行可能な船体1と、前記船体に設けられ、廃水を回収し浄化処理する浄化処理手段10とを具備する廃水処理船100であって、前記浄化処理手段は、廃水を収容する原水タンク11と、前記原水タンクから回収された浮上油を収容する浮上油回収タンク20と、円筒状の直胴部を有すると共に底部が漏斗状に形成され、前記原水タンクから取り出された廃水を凝集剤と共に攪拌し、沈殿物が底部の回収路から回収される攪拌タンク12と、前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する工程において使用される複数のフィルタ処理タンク21〜23と、前記濾過処理が完了した浄化済廃水を収容する浄化済廃水タンク26〜28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶や海上から回収した含油廃水、生活廃水等の廃水を浄化処理し、船舶での再利用、或いは放流を行う廃水処理船に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、船底に溜るビルジ水、水バラスト、タンク洗浄水、船体の研掃作業水等が含油廃水として生じる。従来、この含油廃水は、船舶内のタンクに一時貯留された後、廃水回収船や廃水回収車によって船舶から回収され、陸上の浄化処理施設まで搬送されていた。
しかしながら、含油廃水を一時貯留タンクから回収して陸上の浄化処理施設まで搬送するのは、作業が煩わしく、多くのコストと時間を要するという課題があった。
このような課題に対し、本願出願人は、特許文献1において、曳航または自走により航行可能な船体の上部及び内部に、多量の含油廃水を浄化処理可能な廃油処理機構を備えた含油廃水処理船を提案している。
【0003】
前記廃油処理機構にあっては、回収された含油廃水(原水)を収容する原水収容タンクと、原水から油分を取り除く浄化手段と、海上に放流可能な浄化水を収容する浄化済廃水収容タンクと、原水から取り除いた油分を廃油として収容する廃油収容タンクとを備える。
即ち、特許文献1に開示の含油廃水処理船によれば、他の船舶で生じた含油廃水等を回収し、その場で油水分離処理を行い、浄化した廃水を海上に放流することができる。
したがって、従来のように含油廃水を回収して陸上の浄化処理施設で処理する必要がなく、掛かるコストや作業時間を低減することができる。
【0004】
また、船舶にあっては、前記含油廃水の他、船上員が使用した生活廃水(し尿等を含む)が排出される。この生活廃水については、従来、未処理の状態、或いは、所定の処理を施した後に海上に投棄されていたが、近年では法規に従い適切に処理する必要性が生じていた。
このような課題に対し、本願出願人は、特許文献2において、曳航または自走により航行可能な船体の上部及び内部に、多量の生活廃水を処理可能な浄化処理機構を備えた生活廃水処理船を提案した。具備する浄化処理機構においては、回収した生活廃水(原水)を収容する回収タンクと、原水に対し浄化処理を行うための攪拌タンク等の複数の処理タンクと、海上に放流可能な浄化済廃水を収容するタンクとを有している。
即ち、特許文献2に開示の生活廃水処理船によれば、他の船舶から生活廃水を回収し、その場で浄化処理を行い、浄化した廃水を海上に放流することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4243603号公報
【特許文献2】特開2009−45549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1、2に開示の処理船にあっては、廃水を所定レベルにまで浄化した後、海上に放流するものであり、浄化済廃水を船舶で有効に利用できるものではなかった。
このため本願出願人は、海上で浄化処理を行った廃水を有効に再利用できないか鋭意検討を行った。具体的には、船舶では前記のようにタンクや船体の研掃作業水、或いは飲料以外の生活用水等が大量に必要となるため、海上で浄化処理を行った廃水を、そのような用途に容易に再利用可能なシステムが提供できないか鋭意検討した。
尚、浄化済廃水を再利用する場合、大量の浄化済廃水を収容可能なタンクが必要となり、収容される水量によってタンク重量が大きく変化する。
したがって、処理水量に依らず、船体バランスを安定させるためには、浄化処理手順、及び各タンクの配置を充分に考慮する必要があり、この点においても鋭意検討した。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、船舶や海上から回収した含油廃水、生活廃水等の廃水を海上で浄化処理し、船舶での再利用、或いは放流を容易に行うことのできる廃水処理船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る廃水処理船は、曳航または自走により航行可能な船体と、前記船体に設けられ、廃水を回収し浄化処理する浄化処理手段とを具備する廃水処理船であって、前記浄化処理手段は、廃水を収容する原水タンクと、前記原水タンクから回収された浮上油を収容する浮上油回収タンクと、円筒状の直胴部を有すると共に底部が漏斗状に形成され、前記原水タンクから取り出された廃水を凝集剤と共に攪拌し、沈殿物が底部の回収路から回収される攪拌タンクと、前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する工程において使用される複数のフィルタ処理タンクと、前記濾過処理が完了した浄化済廃水を収容する浄化済廃水タンクとを備え、前記原水タンクは、船体中央部にコの字状に配置されると共に、前記攪拌タンクは、前記原水タンクに包囲されるように配置され、前記船体の前後方向における前記原水タンクの一側方に、前記浮上油回収タンク及び浄化済廃水タンクが配置され、前記原水タンクを挟んで、前記浮上油回収タンク及び浄化済廃水タンクの反対側に、前記複数のフィルタ処理タンクが配置されていることに特徴を有する。
【0009】
このように構成することにより、回収油は船尾側に配置され、各フィルタ処理が施される廃水は船首側に配置され、再利用可能な浄化済廃水は船尾側に配置される。
即ち、浄化処理の進行に伴い、回収物や処理廃水が、船体において分散配置されていくため、多量の廃水を処理する場合であっても、船体バランスを安定させることができる。
したがって、他の船舶等で生じた廃水を回収し、その場で廃水を浄化し、船舶で容易に再利用することができる。
また、原水タンクの廃水から懸濁物を除去するための攪拌タンクの周囲が、コの字状の原水タンクに覆われることにより、船体の重心をより安定させることができる。
さらに、攪拌タンクの底部が漏斗状(逆円錐状)に形成されているため、攪拌タンク中の沈殿物を、タンク底部から容易に回収することができ、タンク清掃の際、従来のようにタンク内に作業員が入る必要がなく、掛かるコストや時間を低減することができる。また、タンク下に空間が生まれるため、その空間に攪拌機の駆動部や沈殿物回収のためのポンプ等を配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0010】
また、前記浮上油回収タンク及び前記原水タンクは、その底部、及び前記船体の左右方向における側壁が少なくとも二重構造となされ、前記船体の前後方向において前記浄化済廃水タンクに隣接する配置となされていることが望ましい。
このようにタンクが構成されることにより、例え、タンク壁が一枚破損したとしても、海上への油の流出を防止することができる。
【0011】
また、雨水を前記浄化済廃水タンクに貯留する配管がなされた雨水回収手段が設けられていることが望ましい。
このように浄化済廃水タンクの中に、浄化処理が施された水以外に、雨水を回収可能とすることにより、再利用のための水を効率的に確保することができる。
【0012】
また、前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する複数のフィルタを備え、前記複数のフィルタは、前記船体の甲板上に設けられていることが望ましい。
このように構成することにより、各フィルタのメンテナンス(交換、清掃等)が容易となると共に、各処理タンクを船体内に配置することで、船体の重心を安定させることができる。
【0013】
また、前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する複数のフィルタを備え、前記複数のフィルタは、逆浸透膜のフィルタを含むことが望ましい。
このように逆浸透膜フィルタを用いて濾過処理を行うことにより、イオンや塩類等の水以外の不純物を取り除くことができ、より純度の高い浄化水を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶や海上から回収した含油廃水、生活廃水等の廃水を海上で浄化処理し、船舶での再利用、或いは放流を容易に行うことのできる廃水処理船を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る廃水処理船の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1の廃水処理船が具備する浄化処理機構の概略構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図3は、図1の廃水処理船が具備する浄化処理機構の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明に係る廃水処理船の概略構成を模式的に示す断面図、図2は図1の廃水処理船が具備する浄化処理機構の概略構成を模式的に示す平面図である。
図1に示す廃水処理船100は、他の自走式船による曳航により、又は、自走することにより航行可能に形成された平底の船体1を具備し、この船体1には指令室となるキャビン2が設けられている。また、廃水処理船100は、自船、或いは他の船舶等から回収した含油廃水、生活廃水等の廃水を浄化処理する浄化処理機構10(浄化処理手段)を備え、この浄化処理機構10は、船体1の上部及び内部の容積の殆どを占めている。即ち、この廃水処理船100は含油廃水、生活廃水等の廃水の浄化処理を専門に行う船であり、多量の廃水であっても、それを回収し浄化処理ができるようになされている。
【0017】
図示するように、浄化処理機構10の中央、即ち船体1の中央部に相当する位置には、回収された含油廃水、生活廃水(し尿含む)等の廃水(原水)を収容するための原水タンク11が設けられる。この原水タンク11は、図2に示すようにコの字状に配置されている。
原水タンク11には、パイプ51を介して廃水(原水)が流し込まれるが、タンク上方に設けられたメタルフィルタ18によって、タンク収容前に比較的大きな浮遊物等が除去されるようになっている。
【0018】
また、原水タンク11内には、回収された廃水の上層部(廃水面)に自然浮上した油分を吸い取るためのスキマー19(浮上油回収装置)が設けられている。このスキマー19により吸い取られた廃油は、原水タンク11の一側方、具体的には原水タンク11よりも船尾側に設けられた浮上油回収タンク20に送出される。
また、図2に示すように、前記コの字状の原水タンク11に包囲されるように攪拌タンク12が設けられている。この攪拌タンク12には、原水タンク11からポンプ52によって取り出された廃水がパイプ53を介して供給される。
攪拌タンク12内には、廃水中の懸濁物を凝集させるための凝集剤13が投入され、タンク内に設けられた攪拌機14により廃水が攪拌されることによって懸濁物が凝集し、タンク底部に沈殿するようになっている。ここで、攪拌タンク12は、円筒状の直胴部を有すると共に底部が漏斗状(逆円錐状)に形成されているため、沈殿物は自然に底部中央に集まるようになされている。
【0019】
さらに、攪拌タンク12の底部中央から、沈殿物を回収するための回収路15が引き出されており、タンク内の沈殿物は、ポンプ16により回収路15を通ってタンク外へ排出され、原水タンク11の上部に設けられた残滓再処理タンク17へ回収される。この残滓再処理タンク17では、攪拌タンク12の沈殿物として回収された残滓スラッジ類に対し、再浄化処理がなされる。
尚、攪拌タンク12の底部が漏斗状であるため、タンク下には空間が生まれる。このため、その空間に前記攪拌機14の駆動部や沈殿物回収のためのポンプ16を配置することができ、省スペース化を図ることができる。
また、前記のように残滓再処理タンク17は、原水タンク11の上部に設けられている。即ち、前記残滓再処理タンク17は、船体1の略中央部に設けられ、残滓スラッジの重量による船体バランスへの影響を抑えるようになされている。
【0020】
また、原水タンク11を挟んで、前記浮上油回収タンク20の反対側(即ち船首側)には、多段なフィルタ処理(濾過処理)工程において使用される複数のフィルタ処理タンク21,22,23が順に配置されている。
詳しく説明すると、攪拌タンク12での処理を終えた廃水は、ポンプ54によってパイプ55を介し、先ず、原水タンク11上方のフィルタプレス濾過器50に供給されるようになされている。フィルタプレス濾過器50は、攪拌タンク12から送水されたタンク上層部の処理水を濾過して夾雑物を除去するフィルタである。
また、フィルタプレス濾過器50における濾過処理を終えた廃水は、パイプ30を介してバッグフィルタ56に供給されるようになされている。
バッグフィルタ56は、フィルタプレス濾過器50から送水された廃水を濾過して、さらに夾雑物、浮遊物を除去するためのフィルタである。
尚、比較的大きい夾雑物や浮遊物等が除去されるフィルタプレス濾過器50、及びバッグフィルタ56は、原水タンク11の上部、即ち船体1の略中央部の甲板上に配置され、除去された夾雑物等の重量による船体バランスへの影響を抑えるようになされている。
【0021】
バッグフィルタ56での濾過処理を終えた廃水は、原水タンク11の船首側に隣接するフィルタ処理タンク21に、パイプ57を介して収容されるようになされている。
また、フィルタ処理タンク21内の廃水は、ポンプ58によってパイプ59を介しサンドフィルタ60に供給され、そこで更に夾雑物、浮遊物が除去され、フィルタ処理タンク21の船首側に隣接するフィルタ処理タンク22に収容されるようになされている。
尚、サンドフィルタ60は、前記フィルタ処理タンク21,22の上方の甲板上に設けられている。
【0022】
また、フィルタ処理タンク22内の廃水は、ポンプ61によってパイプ62を介し精密カートリッジフィルタ63に供給され、その濾過処理により、さらに微細な含有物が除去され、フィルタ処理タンク22の船首側に隣接するフィルタ処理タンク23に収容されるようになされている。
さらに、フィルタ処理タンク23内の廃水は、ポンプ64によってパイプ65を介し活性炭フィルタ66に供給され、そこで廃水の臭気が除去され、さらに、逆浸透膜(RO膜)フィルタ71による濾過処理がなされる。この逆浸透膜フィルタ71の濾過処理によって、イオンや塩類等の水以外の不純物が取り除かれ、より純度の高い浄化水を得ることができる。
逆浸透膜フィルタ71での濾過処理を終えた浄化済廃水は、フィルタ処理タンク23の船首側に隣接する放流タンク24に供給されるようになされている。
尚、カートリッジフィルタ63は、前記フィルタ処理タンク23の上方の甲板上に設けられ、活性炭フィルタ66は、前記放流タンク24の上方の甲板上に設けられている。また、逆浸透膜フィルタ71は、甲板上において、活性炭フィルタ66と放流タンク24との間に設けられている。
【0023】
このように、各フィルタ(フィルタプレス濾過器50,バッグフィルタ56,サンドフィルタ60,カートリッジフィルタ63,活性炭フィルタ66,逆浸透膜フィルタ71)は、船体1の内部ではなく上面(甲板上)に配置され、船体1の内部には、各処理タンクが配置される。この構造により、各フィルタのメンテナンス(交換、清掃等)が容易となると共に、船体1の重心を安定させることができる。
【0024】
また、放流タンク24に収容された浄化済廃水は、ポンプ67及びパイプ68により海上に放流されるか、或いは、再利用のために、ポンプ69及びパイプ70により前記浮上油回収タンク20の前後方向に設けられた浄化済廃水タンク26,27,28に送出される。
【0025】
尚、図1に示すように、浄化済廃水タンク26にはポンプ74とパイプ75が設けられ、浄化済廃水タンク27にはポンプ76とパイプ77が設けられ、浄化済廃水タンク28にはポンプ78とパイプ79が設けられており、それぞれタンク内の浄化済廃水を再利用のために送出可能となされている。各パイプ75,77,79は流路切替用のバルブ80に接続されており、送出する浄化済廃水のタンクを切り替え可能となされている。
【0026】
また、船体1には、雨水を回収すると共に、バルブ72に接続された雨水回収路73(雨水回収手段)が設けられている。即ち、バルブ72での流路切替制御により、必要に応じて雨水を浄化済浄化タンク26〜28のいずれかへ流し、貯留することが可能となされている。これにより、船舶で使用する水を効率的に確保することができる。
【0027】
また、浮上油回収タンク20及び原水タンク11は、その底部20a、11a、及び船体1の左右方向における側壁20b、11bが少なくとも二重構造となされている。また、船体1の前後方向において、浮上油回収タンク20は、浄化済廃水タンク27、28の間に配置される。
この構成により、油分を多く含む廃水タンク(浮上油回収タンク20及び原水タンク11)の壁が一枚破損しても、油分が海上に流出しないようになされている。
【0028】
続いて、このように構成された廃水処理船100において、その浄化処理機構10による処理工程を図3のフローに基づき説明する。
先ず、自船或いは他の船舶で生じた含油廃水、生活廃水・し尿等の廃水からなる原水が回収されると、原水は原水タンク11に貯留される(図3のステップS1)。
尚、この回収の際、廃水はメタルフィルタ18で濾過され、原水タンク11内の原水は、浮遊物等の比較的大きいゴミが除去された状態となされている(図3のステップS2)。
【0029】
原水タンク11中の原水は、自然放置されることにより、その表面を含む上層部に、油分が浮上した状態となる。その浮上油は、スキマー19により回収され、浮上油回収タンク20に収容される(図3のステップS3)。
また、原水タンク11中の廃水は、パイプ53を介して攪拌タンク12に供給される。攪拌タンク12では、廃水中に凝集剤13が投入され、攪拌機14によって攪拌される。この攪拌処理により、廃水中の懸濁物は凝集してタンク底部に沈殿する(図3のステップS4)。ここで、攪拌タンク12は、円筒状の直胴部を有するため、効率的に攪拌処理が行われると共に、底部が漏斗状であるため、残滓スラッジ等の沈殿物は、底部中央に集められる。尚、攪拌タンク12底部の沈殿物は、回収路15を介して残滓再処理タンク17へ収容され、適切な再浄化処理が施される。
【0030】
攪拌処理の完了後、攪拌タンク12に収容されている廃水は、パイプ55を介してフィルタプレス濾過器50を通過し、さらにパイプ30を介してバッグフィルタ56に供給される(図3のステップS5)。フィルタプレス濾過器50及びバッグフィルタ56では、廃水中の夾雑物、浮遊物が除去される。また、バッグフィルタ56により濾過処理された廃水は、パイプ57を介してフィルタ処理タンク21に収容される。
【0031】
フィルタ処理タンク21の廃水は、パイプ59を介してサンドフィルタ60に供給され、濾過処理によって、さらに夾雑物、浮遊物が除去された後、フィルタ処理タンク22に収容される(図3のステップS6)。
フィルタ処理タンク22の廃水は、パイプ62を介して精密カートリッジフィルタ63に供給され、さらに微細な含有物が除去され、フィルタ処理タンク23に収容される(図3のステップS7)。
【0032】
さらに、フィルタ処理タンク23の廃水は、パイプ65を介して活性炭フィルタ66に供給され、そこで廃水の臭気が除去され(図3のステップS8)、さらに逆浸透膜フィルタ71においてイオンや塩類等の水以外の不純物が取り除かれる(図3のステップS9)。
逆浸透膜フィルタ71での濾過処理を終えた浄化済廃水は、放流タンク24に収容される。
尚、放流タンク24の浄化済廃水は、船上に搭載されている機器を使用して、所定の水質検査(例えば、水素イオン濃度指数(pH)、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、浮遊物量(SS)、ノルマンヘキサン抽出物含有量)が行われる。
【0033】
放流タンク24に収容された浄化済廃水は、再利用される場合(図3のステップS10)、パイプ70を介し送出され、浄化済廃水タンク26〜28のいずれかに収容される(図3のステップS11)。浄化済廃水タンク26〜28に収容された浄化済廃水は、それぞれパイプ75,77,79を介し、バルブ80により流路選択されて送出される。そして、他の船舶等において、飲料以外の生活用水や研掃用の水等に再利用される。
一方、浄化済廃水タンク26〜28が満杯である等の場合には、パイプ68を介して海上に放流される(図3のステップS12)。
【0034】
以上のように本実施の形態によれば、船体中央部の原水タンク11(及び攪拌タンク12)を挟んで、船体後方に浮上油回収タンク20及び浄化済廃水タンク26〜28が配置され、船体前方に複数のフィルタ処理タンク21〜23が配置される。また、残滓再処理タンク17が、原水タンク11の上部に配置される。
このタンク配置により、回収油は船尾側に配置され、残滓スラッジは船体1の略中央部に配置される。さらに、各フィルタ処理が施される廃水は船首側に配置され、再利用可能な浄化済廃水は船尾側に配置される。
即ち、浄化処理の進行に伴い、回収物や処理廃水が、船体1において分散配置されていくため、多量の廃水を処理する場合であっても、船体バランスを安定させることができる。
したがって、他の船舶等で生じた廃水を回収し、その場で廃水を浄化し、船舶で容易に再利用することができる。
また、各フィルタは、船体1の上面(甲板上)に配置され、各処理タンクは、船体1内に配置されるため、各フィルタのメンテナンス(交換、清掃等)が容易となると共に、船体1の重心を安定させることができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、原水タンク11の廃水から懸濁物を除去するための攪拌タンク12の周囲が、コの字状の原水タンク11に覆われるため、船体1の重心をより安定させることができる。
また、攪拌タンク12の底部が漏斗状に形成されており、攪拌タンク12中の沈殿物を、タンク底部から容易に回収することができ、タンク清掃の際、従来のようにタンク内に作業員が入る必要がなく、掛かるコストや時間を低減することができる。また、タンク下に空間が生まれるため、その空間に攪拌機14の駆動部や沈殿物回収のためのポンプ16等を配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 船体
2 キャビン
3 上型
10 浄化処理機構(浄化処理手段)
11 原水タンク
12 攪拌タンク
13 凝集剤
14 攪拌機
15 回収路
16 ポンプ
17 残滓再処理タンク
18 メタルフィルタ
19 スキマー
20 浮上油回収タンク
21 フィルタ処理タンク
22 フィルタ処理タンク
23 フィルタ処理タンク
24 放流タンク
26 浄化済廃水タンク
27 浄化済廃水タンク
28 浄化済浄化タンク
50 フィルタプレス濾過器
56 バッグフィルタ
60 サンドフィルタ
63 精密カートリッジフィルタ
66 活性炭フィルタ
71 逆浸透膜フィルタ
72 バルブ
73 雨水回収路(雨水回収手段)
80 バルブ
100 廃水処理船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曳航または自走により航行可能な船体と、前記船体に設けられ、廃水を回収し浄化処理する浄化処理手段とを具備する廃水処理船であって、
前記浄化処理手段は、
廃水を収容する原水タンクと、
前記原水タンクから回収された浮上油を収容する浮上油回収タンクと、
円筒状の直胴部を有すると共に底部が漏斗状に形成され、前記原水タンクから取り出された廃水を凝集剤と共に攪拌し、沈殿物が底部の回収路から回収される攪拌タンクと、
前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する工程において使用される複数のフィルタ処理タンクと、
前記濾過処理が完了した浄化済廃水を収容する浄化済廃水タンクとを備え、
前記原水タンクは、船体中央部にコの字状に配置されると共に、前記攪拌タンクは、前記原水タンクに包囲されるように配置され、
前記船体の前後方向における前記原水タンクの一側方に、前記浮上油回収タンク及び浄化済廃水タンクが配置され、
前記原水タンクを挟んで、前記浮上油回収タンク及び浄化済廃水タンクの反対側に、前記複数のフィルタ処理タンクが配置されていることを特徴とする廃水処理船。
【請求項2】
前記浮上油回収タンク及び前記原水タンクは、その底部、及び前記船体の左右方向における側壁が少なくとも二重構造となされ、前記船体の前後方向において前記浄化済廃水タンクに隣接する配置となされていることを特徴とする請求項1に記載された廃水処理船。
【請求項3】
雨水を前記浄化済廃水タンクに貯留する配管がなされた雨水回収手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された廃水処理船。
【請求項4】
前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する複数のフィルタを備え、
前記複数のフィルタは、前記船体の甲板上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された廃水処理船。
【請求項5】
前記攪拌タンクの廃水に対し多段に濾過処理する複数のフィルタを備え、
前記複数のフィルタは、逆浸透膜のフィルタを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された廃水処理船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126408(P2011−126408A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286163(P2009−286163)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(505361200)関東砿産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】