説明

廃水採取端部、廃水採取装置部および廃水測定装置

【課題】廃水採取の際に微生物の増殖によりフィルターが閉塞されることを防ぐことが可能な廃水採取端部やそれを利用した廃水採取装置部、廃水測定装置を提供する。
【解決手段】廃水採取端部30は、廃水中に浸漬して、廃水を吸入する廃水採取端部であって、廃水吸入H1,H2,H3を少なくとも覆う、少なくとも一部が銅製であるフィルター21を有するので廃水採取の際に微生物の増殖によりフィルターが閉塞されることを防ぎ、メンテナンスが不必要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境分析を行うにあたり、長期間メンテナンスが不要でランニングコストが低い廃水採取端部、廃水測定装置部および廃水測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境汚染防止を目的として、廃水中の各種化学物質の定量を高精度で実施することは非常に重要である。同様に廃水中に含まれる化学物質が流れ込んだ海洋、湖沼、河川の水の分析も必要性が高い。また水処理を行う下水道システムにおいて化学物質濃度の正確な把握は、効率的な施設運用を行う上で経済的な意味がある。これらの分析では連続して汚染状況を監視する必要があり、かつ可能な限り自動分析が望まれる。
【0003】
廃水の成分または性質としての測定項目すなわち、代表的な分析の項目としては、溶存酸素、pH、化学的酸素要求量(COD)、全有機体炭素(TOC)、生物化学的酸素要求量(BOD)などがある。これらの分析自体は数多くの方法が知られているが、いずれの場合も、廃水に含まれる微生物により装置が汚染され、その微生物が増殖することにより配管が閉塞して装置が停止する、検出器が汚染され精度が低下するなどの問題がある。それに対して、装置の配管に抗菌剤を添加して閉塞を防ぐなどの方法が特許文献1に提案されている。
【0004】
さらに廃水自体を廃水等の流路から採取する際に、大きなごみを除くために一般的にフィルターが用いられるが、このフィルターが汚染されて閉塞し頻繁なメンテナンスが必要である。そのためステンレスの筒状フィルターの外面に定期的にステンレスの板を押し当て、汚れを掻き落とすように動作させることにより洗浄するなどの工夫がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2004-037273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大きな問題としては廃水中の微生物がフィルターの内部に付着して閉塞することが防げないことである。このようなフィルターに抗菌剤を用いることも考えられるが、銀などの抗菌剤は抗菌性を有する面と微生物が直接接触した場合に効果をあらわし、一度抗菌剤表面に汚れの被膜が形成されると効果がなくなってしまうことが分かった。
【0007】
そこで抗菌性を有する金属そのものをフィルターとして利用することも考えたが、逆に、その金属による装置の汚染の問題が起こる可能性があることが考えられる。特にBODを連続測定する微生物を利用したセンサについてこのようなフィルターを利用した例がない理由は金属イオンが微生物作用に悪影響を及ぼす可能性があるためと推察している。
【0008】
本発明は前記の廃水採取の際に微生物の増殖によりフィルターが閉塞されることを防ぐことが可能な廃水採取端部を提供することを目的とする。
また、そのような廃水採取端部を使用した長期間メンテナンスが不必要でかつ、微生物を使用したような測定装置にも適用可能な廃水採取端部、廃水採取装置部を提供することを第2の目的とする。
更にそのような廃水採取端部、廃水採取装置部を使用した廃水測定装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る廃水採取端部は、廃水中に浸漬して、廃水を吸入する廃水採取端部であって、廃水吸入口を少なくとも覆う、少なくとも一部が銅製であるフィルターを有する。
更にそのフィルターが、その一部に銅に対して電気化学的に貴な金属を接続したフィルターであることがより好ましい。
その電気化学的に貴な金属として金、銀、白金のいずれか少なくとも一つを含む合金を接続したフィルターであることがより好ましい。
本発明に係る廃水採取端部が微生物を使用した測定装置の廃水採取端部用であることがより好ましい。
本発明に係る廃水採取装置部は上述のような廃水採取端部と、廃水採取端部に接続される吸引機構部と、液体により配管及びフィルターを洗浄する洗浄機構部と、配管及びフィルターに残る水を除く除水機構部とを備える。
本発明に係る廃水測定装置は上記の廃水採取装置部と廃水の測定対象成分または測定対象性質を測定する測定装置部とを備える。
また前記測定対象性質が生物化学的酸素要求量(BOD)であることが廃水測定装置として好ましい。
本発明は廃水中に浸漬して、廃水を採取する装置にあって、フィルターの少なくとも一部を銅で構成することを第1の特徴としている。さらにその銅に対して電気化学的に貴な金属を接続し、銅と貴な金属で電池作用を起こすことが好ましい。
【0010】
また廃水を吸引し、所定の分析工程が完了した際にアルカリ性液体で配管ならびにフィルターを洗い、さらに空気により配管ならびにフィルターから水を除く機構を備えていることが好ましい。
本発明は特に廃水の測定対象性質がBODで、微生物を利用したBOD測定装置としてBODを連続測定する場合に好適である。
【発明の効果】
【0011】
廃水採取の際に微生物の増殖によりフィルターが閉塞されることを防ぎ、メンテナンスが不必要な廃水採取端部、廃水採取装置部及び廃水測定装置が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の廃水採取端部や、その廃水採取端部を利用した廃水採取装置部はそれぞれ単独に市販されたりすることもあるが、大部分はそれらに接続される廃水の測定対象成分または測定対象性質を測定する測定装置部と組み合わせて廃水測定装置として販売されることが多い。中でも、本発明の廃水測定装置として特に好ましく利用できる微生物を利用したBOD測定装置を例にあげて説明する。
【0013】
先ずBOD測定装置の後段の部分を構成する廃水測定装置部の概要を最初に図1に示す。図1は廃水測定装置部の配管系統図である。本装置部は廃水2、洗浄水3、標準液4を送液ポンプ9によって吸引する。それぞれ図示を省略したサンプル採取配管、洗浄水タンク、標準液タンク等に接続されている。各液は適宜バルブ5、6、7を開閉することにより選択される。同時に緩衝液1を別途の送液ポンプ8で吸引し、前記の各液と緩衝液を合流混合させる。恒温槽10内に設置された酸素電極を備えるフローセル12の端面に微生物を固定化した膜を設置する。測定後の液は排水13として排出される。尚、廃水2のラインは後で説明する前段の廃水採取装置部に接続されることになる。また、空気導入配管11からは一定温度の恒温槽内の空気を導入して廃水と緩衝液の混合液中に合流させている。この空気導入配管11は図示を省略したバルブ、エアーポンプ等に接続されている。この空気導入配管11に接続されるエアーポンプは、1分間あたりの合計送液量0.2ml〜10mlに対して0.1〜10l/分程度、より好ましくは0.5〜3l/分で運転される。これらのポンプ、バルブ類の制御、酵素電極による測定演算等は図示を省略したマイクロコンピュータ等を内蔵した測定装置部制御部によって行われる。
【0014】
8および9のポンプはチューブポンプ、シリンジポンプ、プランジャーポンプなど各種のポンプを利用できるが、特に廃水分析の場合は濁りなどによるつまりを防ぐため、チューブを用いるチューブポンプが好適である。送液の速度は、廃水から装置までの距離により変更可能であるが、測定条件を一定化するために用いる緩衝液量があまり多大になると分析コストが上昇するため、0.1〜5ml/分程度が好適である。
【0015】
バルブ5、6、7はポンプの場合と同じくチューブを挟むことにより閉鎖可能なピンチバルブが好適である。恒温槽10は液体方式、空気方式、金属ブロック方式など各種の構成を利用できるが、特に空気方式は装置の軽量化が可能で望ましい。
【0016】
検知部分は微生物の呼吸活性を酸素電極によって検知する。この装置に用いる配管は、シリコン、フッ素樹脂、ポリエチレンなどの樹脂製配管を用いる。固定化微生物は、多孔性膜の上に微生物培養液を滴下し、更に別の多孔性膜で覆うことにより作成できる。より安定に微生物を保持するために2枚の膜を接着剤、両面粘着シートで接着するか、加熱圧着、超音波接着などの方法で接着することが望ましい。
【0017】
BOD測定装置の装置構成を定めたJIS(日本工業規格) K3602(1990年)には微生物としてトリコスポロン クタネウム(IFO-10466株)が規定されている。さらに難分解性の成分を含む廃水を分析する際には、その環境に生息する微生物、たとえばその廃水を処理する生物処理槽の活性汚泥が利用される。
【0018】
特に後者の活性汚泥は、一般的に単一の微生物で分解資化困難な有機溶剤などにも応答可能であり、より正確なBOD値が得られる。BODは廃水を20℃で5日間密閉して静置し、その間に消費された酸素量を分析する。この場合、アンモニウムイオンが存在すると、廃水中に生息する硝化菌の作用により亜硝酸イオンが生成し、硝化作用により消費された酸素量も含まれる。厳密には全体のBODを全BOD、硝化作用によるBODをN-BOD、全BODからN-BODを除いた値をC-BODと呼ぶ。普通は全BODをもって廃水の分析値とする場合が多い。
【0019】
実際に活性汚泥を固定化した装置にアンモニウムイオン標準液を注入すると汚泥の種類に応じた酸素消費が観察され、グルコースなどの有機物と比べて重量濃度あたりの感度が1/3程度であるが、その寄与が無視できないことがわかる。
【0020】
活性汚泥などではこの硝化菌の作用も重要であるし、トリコスポロン属のような単一の微生物でも抗菌性を有する金属を利用すると、その毒性により検知に用いる微生物が悪影響を受ける可能性がある。
【0021】
銀などの抗菌性を有する金属を練りこんだ抗菌樹脂を利用する際は、接触する表面のみで作用するため溶解した金属イオンが影響することはない。しかし抗菌樹脂の欠点として汚染物が一旦表面を覆ってしまうと、効果がなくなることが挙げられる。実際に廃水から汚れを除くフィルターとして抗菌樹脂を用いてもほとんど効果がない。
【0022】
上述のような測定装置部の前段に置かれて廃水を採取する廃水採取装置部およびその主要部である廃水採取端部について以下のように試行を繰り返して本発明に至った。
【0023】
以上に説明したような問題点を解決するため本発明者らは、各種の組成からなるフィルターを廃水採取端部に使用することを検討し、銅メッシュを基本とするフィルターが有効であることを見出した。
【0024】
まず、銅メッシュを筒状に加工し、フィルターとして使用すると同じ孔径のステンレスフィルターに比較して微生物汚染が著しく軽減されることが分かった。このようなフィルターを使用した廃水採取端部の一例を図2に示した。図2(a)は本発明の廃水採取端部30の一例の正面図である。樹脂パイプ22内に筒状に形成した円筒形の銅メッシュフィルター21が挿入され、そのパイプの両端にエンドキャップ23,24をかぶせて円筒形の銅メッシュフィルター21を樹脂パイプ22に固定している。図2(b)はその銅メッシュフィルターの正面図である。樹脂パイプ22にはH1、H2、H3で示した穴が設けられている。また一方のエンドキャップ24には取水配管部25が接続され樹脂パイプ22内と連通している。もう一方のエンドキャップ23は封止されている。従って、本廃水採取端部では穴H1、H2、H3を通って、銅メッシュフィルター21を通過した廃水が樹脂パイプ22内に吸入され、廃水採取配管25を通って、吸引機構部へと導かれることになる。実際に使用した銅メッシュフィルターの仕様は開口径0.01mm、厚みは0.5mmであった。
【0025】
他に、同様にニッケル、銀からなる板に0.1mmφ程度の細孔を開けて、各々フィルターとして使用しても汚染は軽減された。いずれの場合も、廃水が通過する配管内面に対応する金属の付着物が認められ、一部が溶解しながら効果を発揮していることがわかった。ただし、銀やニッケルを利用した場合は徐々にBOD測定装置部内の微生物の活性が低下した。特に活性汚泥を利用した場合にアンモニウムイオンに対する応答値は極端に低下した。一方銅メッシュフィルターの場合は、1ヶ月以上活性低下が認められなかった。この理由は明確ではないが、銅イオンが生物反応に関係する多くの酵素の補欠分子族として利用されているため、高濃度の場合には微生物に毒性を発揮するものの、低濃度ではほとんど影響を及ぼさないためと思われる。
【0026】
以上の結果より、フィルター表面の局所的銅イオン濃度を上昇させることができれば、微生物汚染の除去効果が上昇することが予測された。廃水中には低濃度であるが塩類が含まれる上、溶存酸素が存在することから、銅に対して貴な金属を近傍に設置すると、ガルバニ電池の原理で銅イオンの溶解が促進されることに本発明者等は着目した。
【0027】
そこで、銅フィルターに対して金、銀、白金などの銅に対して貴な金属をフィルター近傍に配置し、同時に廃水に浸漬し、銅フィルターと貴な金属が電気的に接続した状態で、試験をおこなったところ上記の銅メッシュフィルターと同等またはそれ以上の効果が得られた。
【0028】
更に、前出の図2のごとくの廃水採取部を組み立てる際に、平板状の銅メッシュ等を筒状にして端部を固定する際に金ロウもしくは銀ロウを利用して溶接すると、銅ロウに比べてより微生物汚染の除去効果がより向上することを見出した。金、銀および銅ロウは主金属に亜鉛などを混合して融点を低下させたものである。金および銀ロウでは貴金属を主金属にするものであり、貴金属と接触した卑金属である銅が廃水中の塩類を支持電解質として電池反応を起こし、溶接面で酸素の還元が起きて、流れる電流に対応して銅がイオン化するものと考えられる。
【0029】
もちろん、上記溶接によらず金、銀、白金などの銅に対して貴な金属を機械的に結束して接続しても同様の効果を奏する。
【0030】
さらに装置をより安定に動作させるためには、メッシュ孔径を、越える大きなごみを物理的に除くことが望ましい。そのためにはフィルターを介して廃水を採取した後に、空気でごみを除くことが望ましい。また、アルカリ性の溶液を流すことにより汚染を除く効果が高まり望ましい。
【0031】
用いる銅メッシュは、平織、綾織等の織り方には関係なく開口径0.01〜0.2mm、望ましくは0.05〜0.1mmが好適である。厚みは0.05〜1mmの範囲で利用できる。実用的なメッシュの規格としては1インチ当たりの線数を用いて表す。メッシュ数では50から300程度のものが使用できる。厚すぎると筒状に加工する場合に不利で、薄すぎると強度が弱いため、望ましくは0.05〜0.5mmが好適である。以上では手に入れやすく、廉価な銅メッシュの例を説明したが、銅を利用したフィルターであれば他の形状のフィルターでも良く、薄板に多数の細孔を形成したような形状や鎧戸のように多数の細い板を隙間をつけて重なり合わせたような形状のフィルターでも良い。またフィルターの全てが銅で構成される必要は必ずしもなく、少なくとも廃水が通過する部分が銅で構成されていればよい。
【0032】
次に以上説明した廃水採取端部を主要部として、残りの、吸引機構部、洗浄機構部、除水機構部から構成される廃水採取装置部について図を参照しつつ説明する。
【0033】
図3に廃水採取装置部の配管系統図を示した。廃水採取装置部は廃水採取端部30、吸引機構部31、除水機構部32、洗浄機構部33から構成される。廃水槽31内に配置された廃水採取部30は廃水採取配管25を通してチューブポンプ36に接続されている。チューブポンプ36はサンプルだめ37の下部に配管35を介して接続されている。サンプルだめ37の上部は戻り配管38に接続され、戻り配管38は廃水槽34の上部にその端部を開放して配置されている。この一連の部分が吸引機構部31を構成しており、廃水をサンプルだめ37まで吸引し、液面センサ46のレベル以上に吸引された廃水はオーバーフローすることによって戻り配管38を通って廃水槽34にもどされる。サンプルだめ37にはサンプル採取配管39が挿入されており、図1に示した測定装置部と接続されている。
【0034】
先に説明したサンプルだめ37の液面センサ46は液が一定量、例えばサンプル採取用として、試料液が350ml採取されるまでの液面を検知しており、制御部でその量まで採取にかかる時間をサンプルだめ中に廃水がない状態から計測している。この時間測定は例えば、ポンプの不調や廃水採取端部における「つまり」の程度を検知するために行われる。この液面センサ46の液面検知信号を受けて、前出の測定装置部のポンプ9が動作開始し、測定を開始する。
【0035】
サンプルだめ37からサンプル採取配管39を介して測定のための採水が完了した後、洗浄機構部33が動作して、サンプル配管等をアルカリ性溶液にて洗浄する。洗浄機構部33はアルカリ性溶液注入ポンプ40、アルカリ性溶液導入パイプ41、バルブ42から構成され、図示を省略したアルカリ性溶液貯めからアルカリ性溶液注入ポンプ40によりサンプルだめ37内にアルカリ性溶液を注入して行われる。このとき同時にチューブポンプ36を廃水吸引時とは逆方向に作動させ、サンンプルだめ37から廃水およびアルカリ性溶液を廃水採取配管25を通して廃水採取部20から廃水槽に排水する。この際にサンプルだめ37や各配管内、排水採取部内部がアルカリ性溶液で洗浄されるわけである。アルカリ性溶液としては水酸化ナトリウムのpH10程度の溶液が使用される。
【0036】
洗浄が行われた後は除水機構部32が動作して配管等の内部の水分をエアーブローする。除水機構部32はエアーポンプ43、バルブ44、エアー導入パイプ45から構成されている。バルブ44を開放しエアーポンプ43から空気を送り出して廃水採取配管25の中の残留水分をブローする。更に廃水採取部30に達したエアーは銅フィルター等につまったゴミ等の異物をエアーブローして除去する作用を及ぼす。この状態でサンプルだめ中に廃水がない状態になっている。ここから適時に、先に説明した廃水をサンプルだめ37まで吸引する動作へつながっていくことになる。
【0037】
上記図3では洗浄機構部33のアルカリ性溶液導入パイプ41がサンプルだめ37に接続され、サンプルだめ37もアルカリ溶液洗浄される最良の形態であった。 これに対して例えばエアー導入パイプ45の廃水採取配管25との接続部近傍に本アルカリ性溶液導入パイプ37を接続することにより最低限、廃水採取配管25や廃水採取部30をアルカリ溶液洗浄することもできる。これらのポンプ、バルブ類の制御等は図示を省略したマイクロコンピュータ等を内蔵した廃水採取装置部制御部によって行われる。尚、廃水採取装置部と測定装置部が組み合わされて廃水測定装置として使用されるような場合は各装置部の制御部は統合されて総合的にポンプ、バルブ等を制御する。
【0038】
[試験]
以下に種々の特性試験を実施例と比較例について行った結果を示して、本発明の内容をさらに詳細に説明するが、もちろん本発明はこれらの試験で使用した実施例に限定されるものではない。
【0039】
1 廃水採取端部「つまり」測定試験
(1)試験内容
本発明の廃水採取装置部の廃水採取端部を下水管路に浸漬し、1時間に1回廃水を採取し、採取に要する時間を記録した。これを「つまり」測定試験実施例1とする。比較のために比較用廃水採取端部を作製し、この端部についても同様に採取に要する時間を記録した。これを「つまり」測定試験比較例1とする。廃水採取装置部の構成は図3に示した通りであり、廃水採取端部の構成も図2に示した通りであった。
【0040】
「つまり」測定試験実施例1において使用した廃水採取端部および廃水採取装置部の詳細な仕様は以下のようであった。
開口径0.1mm、厚み0.1mmの10cm×15cmの銅メッシュを筒状に丸め、重ねた面に銀ロウを流し込み溶接して18mmφ 全長100mmの円筒形の銅メッシュフィルター21を得た。これを図2に示した廃水採取端部30中の円筒形の銅メッシュフィルター21として使用した。エンドキャップ23,24としては塩化ビニル樹脂製を使用した。樹脂パイプ22は塩化ビニル樹脂製を使用した。内径4mm、外径6mmのテトロンホースを取水配管部25として使用し、図3における吸引機構部に接続した。吸引機構部31のポンプ36はコールパーマー社製7014型を使用して100ml/分の流速で廃水を吸引した。
【0041】
「つまり」測定試験比較例1において使用した比較用廃水採取端部および廃水採取装置部の詳細な仕様は以下のようであった。
開口径0.1mm、厚み0.1mmの10cm×15cmのステンレスメッシュを筒状に丸め、重ねた面に銀ロウを流し込み溶接して得た18mmφ 全長100mmの円筒状フィルターを使用した以外は「つまり」測定試験実施例1と同じとした。
【0042】
(2)試験結果
1週間毎に記録された採取に要した時間をまとめたものを表1に示した。
【0043】
【表1】

「つまり」測定試験実施例1では28日間経過し、合計すると672回廃水を採取しても採取に要する時間がほぼ一定していることが分かる。また28日後フィルターを引き上げて調べると、メッシュの開口部は閉塞していなかった。
【0044】
「つまり」測定試験比較例1では1週間経過した時点で採水に要する時間が長くなり、28日目には10分以上かかるようになった。また、また28日後フィルターを引き上げて調べると、メッシュの開口部は完全に閉塞していたことが確認できた。
【0045】
2 BOD測定試験
(1)試験内容
図3に示した本発明の廃水採取装置部と図1に示した測定装置部を組み合わせてBOD測定装置としたものを使用した。尚、廃水採取端部は前記「1 廃水採取端部「つまり」測定試験」において実施例1として使用した廃水採取端部と同じものを使用した。これをBOD測定試験実施例1とする。フローセル12にはトリコスポロンおよび活性汚泥を固定化した微生物膜を装着して測定を行った。更に詳細にはトリコスポロン クタネウム IFO-10466株を固定化した微生物膜を使用した。恒温槽10の温度を35℃とし、緩衝液には100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いた。活性汚泥の場合は温度を25℃とした。BOD値として20mg/L相当のグルコース、グルタミン酸水溶液を標準液とした。洗浄液は蒸留水を用いた。
【0046】
下水を計りながら、2週間に1回、塩化アンモニウムの100mg/l水溶液を廃水の代わりに測定してグルコース、グルタミン酸水溶液を標準としたBOD値を記録した。比較のために比較用廃水採取端部を作製し、この端部についても上記BOD測定試験実施例1と同じ廃水採取装置部と測定装置部に接続して同様にBOD値を測定した。これをBOD測定試験比較例1とする。
この比較用廃水採取端部としては実施例1に使用した銅メッシュの円筒状フィルターと同一寸法の銀の筒に0.1mmの孔を開けた開口率を30%としたものを用いた。
【0047】
(2)試験結果
表2に結果を示す。グルコース、グルタミン酸溶液を基準にした濃度を示し、単位はmg/Lである。活性汚泥膜に関しては長期間にわたりアンモニウムイオン水溶液に対する応答値が一定しており、硝化菌活性が抑制されていないことが分かる。なお、トリコスポロン膜はアンモニウムイオン水溶液には応答しない。比較例の方ではアンモニウムイオン水溶液に対する応答値が低下することが分かる。一般的に硝化菌は金属イオン、シアンなどの毒物に鋭敏に反応することが知られており、銀イオン毒性の影響を受けているものと思われる。
【0048】
【表2】

【0049】
3 廃水採取端部の差異に基づく性能試験
(1)試験内容
廃水採取端部の銅フィルターが、金ロウで接続された場合と、銅ロウで接続された場合の汚れの付着の程度を比較した。
比較方法は、下水を20l採取し、2種類のフィルターを1週間浸漬し、乾燥後の重量を比較して、汚れの付着を比べた。
【0050】
フィルタの開口径、全長、厚み等の仕様は前述の1廃水採取端部「つまり」測定試験と同じである。第1のフィルターは銅メッシュを筒状に丸め、重ねた面に金ロウを流し込み溶接した。このフィルターは約15gである。同様に第2のフィルターは銅ロウで溶接した。この各フィルターに加えて、さらに試験1で比較に用いたステンレスフィルターもサンプルとした。各フィルターを105℃で2時間乾燥し、重量を精秤した後、下水に浸漬した。1週間後、軽く水を切り、再度105℃で2時間の乾燥を行い、重量を計った。
【0051】
(2)試験結果
上記試験の結果を表3に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
金ロウで溶接したフィルターと銅ロウで溶接したフィルターでは外観上はあまり差異は認められないが、重量的には金ロウを使用したフィルターの方が重量の増加量が少なく、汚染防止に対してより高い効果を発揮している。比較のために実験したステンレスフィルターは外観上も汚れが目立ち、重量も著しく増加した。
本試験では廃水を流動させない状態で比較することによりフィルター材質の差異が顕著に表れていると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の廃水測定装置部の配管系統図
【図2】(a)は本発明の廃水採取端部の一例の正面図、(b)はその銅メッシュフィルターの正面図。
【図3】本発明の廃水採取装置部の配管系統図
【符号の説明】
【0055】
1・・・緩衝液
2・・・廃水
3・・・洗浄液
4・・・標準液
5・・・廃水用ピンチバルブ
6・・・洗浄液用ピンチバルブ
7・・・標準液用ピンチバルブ
8・・・緩衝液用チューブポンプ
9・・・廃水用チューブポンプ
10・・・恒温槽
11・・・空気導入配管
12・・・フローセル
13・・・廃水
21・・・銅メッシュフィルター
30・・・廃水採取端部
31・・・吸引機構部
32・・・除水機構部
33・・・洗浄機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中に浸漬して、廃水を吸入する廃水採取端部であって、廃水吸入口を少なくとも覆う、少なくとも一部が銅製であるフィルターを有する廃水採取端部。
【請求項2】
前記フィルターが、その一部に銅に対して電気化学的に貴な金属を接続したフィルターである請求項1記載の廃水採取端部。
【請求項3】
前記フィルターが、前記電気化学的に貴な金属として金、銀、白金のいずれか少なくとも一つを含む合金を接続したフィルターである請求項2記載の廃水採取端部。
【請求項4】
前記廃水採取端部が微生物を使用した測定装置の廃水採取端部用である請求項1から3のいずれか一項に記載の廃水採取端部。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の廃水採取端部と、該廃水採取端部に接続される吸引機構部と、液体により配管及びフィルターを洗浄する洗浄機構部と、配管及びフィルターに残る水を除く除水機構部とを備える廃水採取装置部。
【請求項6】
請求項5に記載の廃水採取装置部と廃水の測定対象成分または測定対象性質を測定する測定装置部とを備えた廃水測定装置。
【請求項7】
前記測定対象性質が生物化学的酸素要求量(BOD)である請求項6に記載の廃水測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−201075(P2006−201075A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14257(P2005−14257)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】