説明

廃液の回収装置

【課題】1次回収タンク内まで廃液の循環を確実に行うとともに、該1次回収タンク内における廃液の付着の発生を防止して、作動不良の発生を回避し得る廃液の回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】塗装ラインから回収される廃液を、配管を介して複数の1次回収タンクに送り、該1次回収タンク内の廃液を1次回収タンクよりも下方に設置された2次回収タンクへ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンクに貯留し、該2次回収タンク内の廃液の上澄部分を、ポンプにより循環管を介して前記1次回収タンク側に循環させるようにする。さらに、前記2次回収タンクから循環する廃液を各1次回収タンクの内面に向けて噴出するよう構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の塗装ラインに適用される廃液の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車塗装工場等における塗装工程において自動塗装機等のホース内の塗料を塗装色の色替え時に洗浄して生じた廃液を回収する廃液の回収装置が知られている。
【0003】
図4は、自動車塗装工場の廃液の回収装置の1例を示す。
図4において、自動車塗装ラインの各所に配置された塗装ガンのガン先及び途中経路から回収した塗料を、配管を介して複数の1次回収タンク1に送っている。各1次回収タンク1にて貯留上限を感知すると各1次回収タンク1毎に設置されたホンプ10により、2次回収タンク4に送り込まれる。
かかる2次回収タンク4においては、廃液の貯留量が上限に達するとポンプ5によりホース6を介して回収槽7に送られる。なお、Dが塗装作業を行うブースの床面である。
【0004】
また特許文献1(特開2005−21828号公報)においては、自動車の塗装ラインから排出される廃液溶剤は、それぞれの回収ホッパー10.1〜10.4からそれぞれの枝管11.1〜11.4を介して回収配管30に導かれるようにてなっている。
該回収ホッパー10にて上限を感知すると、該回収ホッパー10内の廃液溶剤を複数の前記回収ホッパー10タンクよりも下方に(斜め下方に設置された中継タンク50の方に)設置した回収配管30により、廃液溶剤の自重により落下させて中継タンク50に貯留している。
また、該廃液溶剤の上澄みの廃液溶剤を、1個のポンプ60により循環管70を介して前記回収配管30に循環させるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−21828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示す自動車塗装工場の廃液の回収装置は、次のような問題がある。
(1)各1次回収タンク1にて貯留量の上限を感知すると各1次回収タンク1毎に設置されたポンプ10により、廃液溶剤の全てが2次回収タンク4に送り込まれるので、すなわちタンクの上限値に達するまで2次タンク4に送り込まれないため、1次、2次回収タンク4内の廃液の流れがなく下面に廃液の中の顔料成分等が分離して沈降しやすく、ポンプ5、10の詰まりが発生する。
(2)1次回収タンク1が、設置レイアウトから、ブース床面よりも下方にあり1次回収タンクの状況を確認しづらく、メインテナンス性が極めて悪い。
(3)1次回収タンクの内壁等に廃液が付着して、固まり易く(凝着)、その塊がはがれ落ちて廃液中に混ざるとポンプ作動不良や配管の詰まりの原因となる。
(4)常時廃液の流れが無いため、顔料沈降及び配管内での廃液乾きが発生し、配管の詰まりを生じ易い。
【0007】
また、特許文献1のものにおいては、廃液溶剤の上澄みの廃液溶剤を1個のポンプ60により循環管70を介して前記回収配管30に循環させるようにしているが、回収配管30は回収ホッパー10の枝管11の下端に接続されるものであり、回収ホッパー10.1〜10.4には接続されてなく、廃液は各回収ホッパー10.1〜10.4には循環していない。
従って、回収ホッパー10.1〜10.4内、の廃液の循環がないため、該回収ホッパー内での廃液の付着が大きくなって、これを起因として作動不良の発生原因となる。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、1次回収タンク内まで廃液の循環を確実に行うとともに、該1次回収タンク内における廃液の付着の発生を防止して、作動不良の発生を回避し得る廃液の回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、塗装ラインから回収される廃液を、配管を介して複数の1次回収タンクに送り、該1次回収タンク内の廃液を1次回収タンクよりも下方に設置された2次回収タンクの方へ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンクに貯留し、該2次回収タンク内の廃液の上澄部分を、ポンプにより循環管を介して前記1次回収タンク側に循環させるようにして、前記2次回収タンクから前記循環管を経て前記各1次回収タンクにそれぞれ循環する廃液の循環路を前記複数の1次回収タンク毎に設け、前記各循環路の前記各1次回収タンク側の出口は、前記2次回収タンクからの廃液を前記各1次回収タンクの内面に向けて噴出するよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、次のように構成する。
即ち、前記出口は、前記1次回収タンクの内面に沿って噴霧が噴出するように、該内面に沿って延設され前記1次回収タンクの内面に向けて開口する複数の噴口が列設された列状ノズル部材により形成される。
【0011】
また、好ましくは、前記複数の噴口は前記1次回収タンクの内面全周にわたって列設されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃液を複数の1次回収タンクよりも下方に設置された2次回収タンクの方へ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンクに貯留し、該廃液の上澄部分を、ポンプにより循環管を介して前記1次回収タンク側に循環させるようにし、前記各1次回収タンクに前記循環管の出口を連結して、前記2次回収タンクから前記循環管を経て前記各1次回収タンクにそれぞれ循環する廃液の循環路を前記複数の1次回収タンク毎に設けたので、各1次回収タンクに廃液をコンスタントに循環させることができる。
また、2次回収タンクからの廃液を各1次回収タンクの内面に向けて噴出させ循環路を介して1次回収タンクから下方の2次回収タンクの方へ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンクに落とすので、1次回収タンクの内壁への付着廃液を循環する廃液で洗い落として、2次回収タンクの方へと流すことができる。
【0013】
特に、前記各循環路の前記各1次回収タンク側の出口は、前記2次回収タンクからの廃液を前記各1次回収タンクの内面に向けて噴出するように構成されているので、各1次回収タンクの内面に、ノズル部材から噴出する廃液を「ぶつける」ことによって各1次回収タンクの内面に付着した付着廃液を、確実に洗い落とすことができる。
従って、本発明は、かかる構成により、1次回収タンクの内壁への廃液の付着の発生を防止でき、作動不良の発生を回避できる。
【0014】
また、前記出口は、前記1次回収タンクの内面に沿って噴霧が噴出するように、該内面に沿って延設され前記1次回収タンクの内面に向けて開口する複数の噴口が列設された列状ノズル部材に形成されるので、列状ノズル部材によって1次回収タンクの内面に向けて開口する複数の噴口から、1次回収タンクの内面に沿って噴霧を噴出させるので、付着廃液をより確実に洗い落とすことができる。更に、前記複数の噴口を1次回収タンクの内面全周にわたって列設することにより1次回収タンクの内面全体をより綺麗に洗浄できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
図1は、本発明の実施例にかかる自動車塗装工場の廃液の回収装置の全体配置図である。
図2(A)は前記実施例における廃液回収装置の構成図、(B)は作業手順図である。図3は1次回収タンクの平面図(図1のA−A断面図)である。
【0017】
図1〜2において、本発明にかかる自動車塗装工場の廃液の回収装置は、階上部Zと階下の調合室60とに分かれている。
階上部Zには、自動車塗装ラインにおいて、塗装の塗装色の色替え時に、ガン先及び途中経路に残った塗料およびシンナー等の溶剤が廃液として排出され、その排出される廃液が配管を介して送り込まれる複数の1次回収タンク1を備えている。該1次回収タンク1はブース毎にあるいは任意に複数個設けられている。
調合室60には、前記各1次回収タンク1から廃液が送られる2次回収タンク4、及び2次回収タンク4に沈殿して堆積した顔料を回収する回収槽7及びポンプ5が設置されている。
【0018】
図1において、自動車塗装ラインから排出されるガン先及び途中経路からの廃液の塗料および溶剤を、配管を介して複数(この例では6個)の1次回収タンク1に送っている。
該複数個の1次回収タンク1を出た廃液は、図2のように、該1次回収タンク1よりも下方に設置され合流管3にて各1次回収タンク1に接続された2次回収タンク4の方へ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンク4に回収する。
【0019】
そして、該2次回収タンク4において、顔料と溶剤とが分離され、2次回収タンク4内の廃液の上澄部分を、1個のポンプ5により汲み出して循環管4aに乗せ、該循環管4a及び該循環管4aから複数の1次回収タンク1毎に分岐された各循環管4sにより、各1次回収タンク1側に循環させている。
なお、2次回収タンク4とポンプ5との間には、切換え弁20、21が介在されとともに、ポンプ5と回収槽7との間にも切換え弁22、23が設けられている。切換え弁20は2次回収タンク4に貯留される廃液の上澄み部分に開口位置を有する配管に設けられ、切換え弁21は2次回収タンク4に貯留する顔料を排出するように2次回収タンク4の下部または底部に開口位置を有する配管に設けられている。
【0020】
そして、2次回収タンク4に顔料が規定値以上堆積したことセンサで検出した場合には、切換え弁20を閉じて、切換え弁21を開き、さらに、切換え弁23を閉じ、切換え弁24を開き、顔料は調合室60に設置された回収槽7に配管6を介して送り込まれる。
さらに、その送り込みが終了したら、再び切換え弁20を開き、切換え弁21を閉じ、さらに、切換え弁23を開き、切換え弁24を閉じて、循環管4aによって循環させる。
このように、1つのポンプ5によって、1次回収タンク1への循環と回収槽7への回収作業とを行うことで、回収装置を簡素化している。
また、2次回収タンク4において、分離された顔料は調合室60に設置された回収槽7に配管6を介して送り込まれ、回収槽7に回収された顔料が満たされた場合には回収業者によって回収されて処理される。なお、5aは補充用の廃液溶剤の入口である。
図2(B)は以上の操作をブロック図で示したものである。
【0021】
また、図3のように、前記各1次回収タンク1の上部には、前記各循環路4sの前記各1次回収タンク1側の出口が設けられ、その出口部分には前記2次回収タンク4側からの廃液を、各1次回収タンク1の内面1fに向けて噴出するように噴出ノズル2が設置されている。
該噴出ノズル2は、管状体2aに形成され、その管壁には前記1次回収タンク1の内面1fに沿って噴霧1cが噴出するように多数の噴口2bが、該内面1fに沿って延設されている。
従って、前記各1次回収タンク1の内面1fに、噴出ノズル2の複数の噴口2bから廃液を噴出することによって、各1次回収タンク1の廃液内面1fに付着した付着廃液を、確実に洗い落とすことができる。
さらに、前記複数の噴口2bが1次回収タンクの内面全周にわたって列設されるため、1次回収タンク1の内面全体をより綺麗に洗浄できる。
【0022】
また、前記複数の1次回収タンク1の底部または下部に接続した各排液通路3aに、前記各噴出ノズル2から噴出される廃液を流して、その下流部位にて該排液通路3aを合流管3にて一本化して前記2次回収タンク4に接続している。
これにより、各1次回収タンク1の内面1fに付着した付着廃液を洗い落とし、この廃液を下流部位にて廃液の通路即ち合流管3にて一本化して、前記2次回収タンク4に流すことにより、付着廃液の流れが円滑になり、詰まりの発生を防止できる。
【0023】
以上の実施例によれば、廃液を複数の1次回収タンク1よりも下方に設置された2次回収タンク4の方へ廃液の自重により落下させて2次回収タンク4に貯留し、該廃液の上澄部分を、ポンプ5により循環管4a、さらに各循環管4sを介して各1次回収タンク1に廃液をコンスタントに循環させることができるので、廃液の流れが滞ることによって生じる廃液の中の顔料成分等が分離して沈降や付着によって、ポンプの詰まり等が発生する問題を解消できる。
また、各1次回収タンク1に各循環管4sの出口を連結し、2次回収タンクからの廃液を各1次回収タンクの内面に向けて噴出させて、1次回収タンクの内壁1fへの付着廃液を循環する廃液で洗い落とすので、1次回収タンク1の内壁1fへの廃液の付着の発生を防止でき、作動不良の発生を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、1次回収タンク内まで廃液の循環を確実に行うとともに、該1次回収タンク内における廃液の付着の発生を防止して、作動不良の発生を回避し得る廃液の回収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例にかかる自動車塗装工場の廃液の回収装置の全体配置図である。
【図2】(A)は前記実施例における廃液回収装置の構成図、(B)は作業手順図である。
【図3】1次回収タンクの平面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】従来の自動車塗装工場の廃液の回収装置の1例を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 1次回収タンク
1f 内面
2 噴出ノズル
2b 噴口
3 合流管
3a 排液通路
4 2次回収タンク
4a 循環管
4s 循環管
5 ポンプ
7 回収槽
60 調合室
Z 階上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ラインから回収される廃液を、配管を介して複数の1次回収タンクに送り、該1次回収タンク内の廃液を1次回収タンクよりも下方に設置された2次回収タンクの方へ該廃液の自重により落下させて該2次回収タンクに貯留し、該2次回収タンク内の廃液の上澄部分を、ポンプにより循環管を介して前記1次回収タンク側に循環させるようにして、前記2次回収タンクから前記循環管を経て前記各1次回収タンクにそれぞれ循環する廃液の循環路を前記複数の1次回収タンク毎に設け、前記各循環路の前記各1次回収タンク側の出口は、前記2次回収タンクからの廃液を前記各1次回収タンクの内面に向けて噴出するよう構成されていることを特徴とする廃液の回収装置。
【請求項2】
前記出口は、前記1次回収タンクの内面に沿って噴霧が噴出するように、該内面に沿って延設され前記1次回収タンクの内面に向けて開口する複数の噴口が列設された列状ノズル部材により形成されたことを特徴とする請求項1記載の廃液の回収装置
【請求項3】
前記複数の噴口は前記1次回収タンクの内面全周にわたって列設されていることを特徴とする請求項2記載の廃液の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125424(P2010−125424A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305112(P2008−305112)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】