説明

廃液処理装置および洗浄システム

【課題】土壌伝染病の病原微生物を適切に死滅できる廃液処理装置を提供する。
【解決手段】土壌伝染病の病原微生物を含む廃液を処理する廃液処理装置3であって、この廃液処理装置3は、廃液に含まれる病原微生物を死滅させる死滅処理手段34を備える。この死滅処理手段34は、廃液から病原微生物を分離しこの分離した病原微生物を死滅する分離処理手段38を有する。分離処理手段38は、廃液を濾過して病原微生物を分離する分離手段と、この分離手段にて分離した病原微生物を加熱して死滅させる加熱手段とを有する。また、加熱手段は、分離手段にて分離した病原微生物に蒸気を吹き付けて直接加熱することにより、病原微生物を死滅させる蒸気発生手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄して病原微生物を除去した後の廃液を処理する廃液処理装置、およびこの廃液処理装置を備えた洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土壌において土壌伝染病が蔓延しつつある。土壌伝染病とは、例えば、シストセンチュウ、ダイズシストセンチュウおよびキタネグサセンチュウ等の病原微生物によって、馬鈴薯等の農作物に感染する病害である。
【0003】
この土壌伝染病や根腐れ病は、農業用トラクターや農業用車両などによって伝染することが分かっている。
【0004】
そこで、対策の一つとして、被付着体としての車両の洗浄が手作業などで行われている。具体的には、農場や農業施設にて作業や運搬に使用される車両について、消毒液等を用いて洗浄することにより、車体やタイヤに付着した病原微生物を除去して土壌伝染病の感染を防止する。
【0005】
そして、車両の洗浄を行う車両洗浄装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0006】
この従来の車両洗浄装置は、消毒液を供給する消毒液供給手段と、少なくとも消毒対象の車両の下部を囲む枠組と、この枠組に取り付けられ消毒液供給手段から供給される消毒液を通す配管と、この配管に接続され消毒液を枠組の内側へ噴射するための複数の噴射ノズルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−89951号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、車両から病原微生物を除去できるが、消毒液による消毒作用だけでは病原微生物を適切に死滅できないことが分かっている。そのため、洗浄後の廃液に含まれる死滅していない病原微生物が問題となってしまう。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、土壌伝染病の病原微生物を適切に死滅できる廃液処理装置および洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された廃液処理装置は、土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄した後の病原微生物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、廃液に含まれた病原微生物を死滅させる死滅処理手段を備え、この死滅処理手段は、廃液から病原微生物を分離し、この分離した病原微生物を死滅させる分離処理手段を有するものである。
【0011】
請求項2に記載された廃液処理装置は、請求項1記載の廃液処理装置において、分離処理手段は、廃液を濾過して病原微生物を分離する分離手段と、この分離手段にて分離された病原微生物を加熱して死滅させる加熱手段とを有し、加熱手段は、通電により発熱する通電発熱手段、マイクロ波を発生させるマグネトロン、および蒸気を発生させる蒸気発生手段の少なくともいずれか1つを有するものである。
【0012】
請求項3に記載された廃液処理装置は、請求項1または2に記載された廃液処理装置において、死滅処理手段は、分離処理手段にて病原微生物が分離された廃液に残留した病原微生物を死滅させる残留病原微生物処理手段を有し、この残留病原微生物処理手段は、廃液を加熱して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液加熱処理手段、廃液を通電して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液通電処理手段、および、廃液に薬剤を添加して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液薬剤処理手段の少なくともいずれか1つを有するものである。
【0013】
請求項4に記載された廃液処理装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載された廃液処理装置において、病原微生物を含む廃液を集合させて死滅処理手段へ供給する廃液集合手段と、死滅処理手段からの廃液を排水設備へ排出できるように処理する排出処理手段を備え、この排出処理手段は、廃液から油分を分離するグリーストラップと、このグリーストラップにて油分が分離された廃液を不活性化する不活性化処理手段と、この不活性化処理手段にて不活性化した廃液を排水基準に基づいて浄化する浄化処理手段とを有するものである。
【0014】
請求項5に記載された洗浄システムは、土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄して病原微生物を除去する洗浄装置と、請求項1ないし4のいずれか記載の廃液処理装置とを備え、前記洗浄装置からの病原微生物を含む廃液が前記廃液処理装置により処理されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、廃液に含まれる土壌伝染病の病原微生物を死滅させる死滅処理手段が、廃液から病原微生物を分離しこの分離した病原微生物を加熱して死滅させる分離処理手段を有するため、廃液に含まれる病原微生物を適切に死滅できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両洗浄システムの概略平面図である。
【図2】同上車両洗浄システムの廃液処理装置を示す構成図である。
【図3】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の分離処理手段を示す構成図である。
【図4】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図5】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図6】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図7】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図8】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図9】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【図10】同上車両洗浄システムの廃液処理装置の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態の構成について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1において、1は、洗浄システムとしての車両洗浄システムであり、この車両洗浄システム1は、例えば畑作等の農場や農業施設において、馬鈴薯等の農作物に感染するそうか病等の土壌伝染病を防止するために用いられる。すなわち、車両洗浄システム1は、農場や農業施設にて作業や運搬等に使用する被付着体としての車両Sを洗浄するとともに、洗浄後の廃液に含まれる例えばシストセンチュウやキタネグサセンチュウおよびそれらの幼虫や卵等の土壌伝染病の病原微生物を死滅させるものである。
【0019】
車両洗浄システム1は、洗浄装置としての車両洗浄装置2と廃液処理装置3とを備え、車両Sの車体やタイヤに付着した病原微生物を車両洗浄装置2によって除去するとともに、この車両洗浄装置2からの廃液に含まれる土壌伝染病の病原微生物を廃液処理装置3によって死滅させる。
【0020】
車両洗浄装置2は、車両Sが入場方向(図1上、左方向)に向かって走行する際に、例えば消毒液を用いて車体Sから病原微生物を除去して消毒する。
【0021】
この車両洗浄装置2は、図1に示すように、地面に設置され車両Sが上面の車両走行面を走行する床部4と、この床部4を加熱する床加熱手段(床暖房装置)5とを備えている。
【0022】
床部4は、車両Sの走行方向(入場方向および出場方向)に長手状のもので、この床部4の長手方向略中央には、車両Sの走行方向に対する直交方向に長手状の凹溝6が形成されている。
【0023】
なお、図示していないが、床部4の上面にて構成された車両走行面は、車両Sを消毒した後の消毒液である廃液が凹溝6に向かって流れるように、凹溝6に向かって下り傾斜状に形成されている。また、凹溝6の上面部には、複数の開口部を有する溝蓋(グレーチング)7が配設されている。
【0024】
また、床部4内には床加熱手段5の温水パイプが床部4全体にわたって配設され、この温水パイプ内を温水が流れて床部4全体が加熱される。
【0025】
床加熱手段5は、床部4内で温水を循環させるための熱源であるボイラ8を有し、このボイラ8にはヘッダー9が接続され、このヘッダー9に温水パイプが接続されている。
【0026】
また、車両洗浄装置2は、車両Sが通過するゲート体であるトンネル状の装置本体11と、この装置本体11に連設された倉庫(ボイラ庫)12とを備えている。なお、これら装置本体11および倉庫12は、床部4に立設された1つの建物にて構成されている。
【0027】
装置本体11は、図示しないが互いに離間対向する1対の壁とこれらの壁の上端部間に架設された屋根とで構成されたやや細長いトンネル状である。そして、装置本体11は、長手方向一端部に位置し車両Sの入場時に車両入口となる一端開口部13と、長手方向他端部に位置し装置本体11内に入場した車両Sの車両出口となる他端開口部14と、これら一端開口部13と他端開口部14との間に位置し車両Sが通過する本体内部空間である車両通過空間15とを有している。
【0028】
また、装置本体11の一端開口部13および他端開口部14は、例えば電動シャッター装置等の開閉手段がそれぞれ設けられ、これら開閉手段により開閉自在に構成されている。
【0029】
車両洗浄装置2は、装置本体11内で床部4の車両走行面上を走行して車両通過空間15を通過する車両Sに向けて消毒液を噴射する消毒液噴射手段16と、この消毒液噴射手段16を制御する制御手段17とを備えている。
【0030】
消毒液噴射手段16は、消毒液を貯留する貯留部であるタンク18と、このタンク18に接続された接続管19と、この接続管19の途中に設けられタンク18から接続管19に消毒液を供給する圧送手段であるポンプ20とを有している。
【0031】
接続管19のポンプ20より下流側にはバルブ(電磁弁)21が設けられ、接続管19の下流端部には、車両通過空間15において凹溝6を通過する車両S全体を囲むようにループ状(矩形環状)に構成されたノズル取付管22が接続されている。
【0032】
ノズル取付管22は、床部4の凹溝6内に配設された水平状の下側水平管部と、この水平管部の両端部に直角に接続され上方へのびる鉛直状の鉛直管部と、これら両方の鉛直管部の上端に直角に接続された水平状の上側水平管部とを有する。
【0033】
また、ノズル取付管22の下側水平管部、鉛直管部および上側水平管部には、互いに間隔をおいた複数箇所に、消毒液を霧状或いはジェット状にして噴射するノズルがそれぞれ取り付けられている。
【0034】
車両洗浄装置2は、床部4の長手方向一端側(車両入口側)付近に配設され車両Sの有無を検知する光学系の第1検知手段23および第2検知手段24と、床部4の長手方向他端側(車両出口側)付近に配設され車両Sの有無を検知する光学系の第3検知手段25および第4検知手段26と、車両Sを洗浄している際に例えば赤色に点灯する点灯手段27とを備えている。
【0035】
各検知手段23,24,25,26は、床部4の短手方向一端側付近に配設された検知光を発光する発光部23a,24a,25a,26aと、床部4の短手方向他端側付近に配設され発光部からの検知光を受光する受光部23b,24b,25b,26bとを有している。
【0036】
第2検知手段24、第3検知手段25および第4検知手段26は、同一の高さ位置に配設された1対の発光部・受光部にて構成されている。第1検知手段23は、異なる高さ位置に配設された複数対、すなわち2対の発光部・受光部にて構成されている。つまり、図示しないものの、第1検知手段23は、下側の発光部および受光部と、上側の発光部および受光部とにて構成されている。
【0037】
そして、制御手段17は、第1検知手段23および第2検知手段24の検知に基づいてバルブ21を開状態にしてノズルから消毒液を噴射させる。
【0038】
なお、制御手段17は、ポンプ20、バルブ21、第1検知手段23、第2検知手段24、第3検知手段25、第4検知手段26、点灯手段27および装置本体11の開閉手段が電気的に接続されている。
【0039】
廃液処理装置3は、凹溝6の端部に配管31を介して接続された廃液集合手段としての桝32と、この桝32に配管33を介して接続された死滅処理手段34と、この死滅処理手段34に配管35を介して接続された排出処理手段36とを備える。
【0040】
図2に示すように、桝32は、倉庫12内において地中に埋設されており、液体を貯留可能な貯留部37を有している。そして、桝32は、凹溝6からの廃液を貯留部37に集合させて一時的に貯留し、貯留部37内に貯留された廃液を配管33を介して死滅処理手段34へ供給する。
【0041】
死滅処理手段34は、倉庫12内において地中に埋設され、桝32にて集合させた廃液に含まれる土壌伝染病の病原微生物を死滅処理する。
【0042】
図1および図2に示すように、死滅処理手段34は、桝32から供給された廃液から病原微生物を分離してこの分離した病原微生物を死滅させる分離処理手段38と、この分離処理手段38にて病原微生物が分離された廃液に残留した病原微生物を死滅させる残留病原微生物処理手段39とを有している。
【0043】
図3に示すように、分離処理手段38は、配管33aを介して桝32から廃液が供給され、この廃液を濾過して病原微生物を分離する分離手段41と、この分離手段41にて分離された病原微生物を加熱して死滅させる加熱手段42とを有している。
【0044】
分離手段41は、離間して設置され連動して回転可能な一対のローラ43と、これらのローラ43に巻き掛けられローラ43の回転により回転可能な無端状のフィルタ44とを有する。
【0045】
フィルタ44は、濾布等のように病原微生物より小さい複数の孔が設けられたシート体にて形成され、廃液について、液体のみを通過させ、病原微生物やゴミ等の固形分のみを捕捉する。
【0046】
そして、分離手段41は、桝32からの廃液について、フィルタ44が、図3に鉛直方向の矢印で示すように液体のみを通過させ固液分離して廃液中の固形分を捕捉しながら、ローラ43によりフィルタ44を回転させ、図3に水平方向の矢印で示すようにフィルタ44に捕捉された固形分を図3上の右方向へ移動させる。
【0047】
加熱手段42は、フィルタ44の上側面の回転方向の下流側にてフィルタ44の上側面に沿って配設された蒸気発生手段45を有している。この蒸気発生手段45は、蒸気を発生でき、病原微生物を含む固形分が捕捉されたフィルタ44に向かって蒸気を吹き付ける。すなわち、蒸気発生手段45は、フィルタ44上の固形分に直接蒸気を吹き付けて固形分を加熱する。なお、蒸気発生手段45は、蒸気によりフィルタ44全体を加熱したり、フィルタ44において廃液が供給される部分や廃液が供給される部分より上流側の部分に蒸気を吹き付けて加熱することにより、フィルタ44にて捕捉された固形分をフィルタ44を介して加熱する構成にしてもよい。
【0048】
そして、加熱手段42は、フィルタ44の回転により移動してきた固形分を、蒸気発生手段45にて例えば60℃以上120℃以下の温度で1秒以上60秒以下の間加熱することにより、固形分に含まれる病原微生物を直接加熱して死滅させる。
【0049】
なお、分離処理手段38は、死滅した病原微生物を含む固形分を収容する収容部49を有している。また、分離処理手段38は、図1ないし図3には示していないが、病原微生物を収容部49に収容するために、フィルタ44から固形分を剥がし取って回収する例えばスクレーパ等の回収手段を有している。そして、死滅した病原微生物は回収手段にて適宜回収されて収容部49に収容される。
【0050】
残留病原微生物処理手段39は、廃液加熱処理手段46と廃液通電処理手段47と廃液薬剤処理手段48とを有している。
【0051】
廃液加熱処理手段46は、フィルタ44の下方に設置されフィルタ44にて病原微生物が分離された廃液が流入する高温槽51と、この高温槽51内に設けられ高温槽51内の廃液を加熱する加熱手段としてのヒーター52とを有している。
【0052】
そして、廃液加熱処理手段46は、高温槽51内に流入した廃液をヒーター52にて例えば60℃以上95℃以下に加熱することにより、廃液中に残留した病原微生物を死滅させる。また、高温槽51は、配管33bを介して廃液通電処理手段47に接続されており、死滅処理した廃液を廃液通電処理手段47へ供給する。
【0053】
廃液通電処理手段47は、廃液加熱処理手段46から廃液が流入する閉塞型の通電槽53と、この通電槽53内の廃液に通電する通電手段54とを有している。この通電手段54は、電源55と、この電源に接続され少なくとも一部が通電槽53内の廃液に浸漬される一対の電極56とを有している。
【0054】
そして、廃液通電処理手段47は、通電槽53内に流入した廃液に一対の電極56にて電流を流して通電することにより、廃液中に残留した病原微生物を死滅させる。また、通電槽53は、配管33cを介して廃液薬剤処理手段48に接続されており、死滅処理した廃液を廃液薬剤処理手段48へ供給する。
【0055】
廃液薬剤処理手段48は、廃液通電処理手段47から廃液が流入する閉塞型の薬剤処理槽57と、この薬剤処理槽57へ例えば石灰窒素等の殺菌作用を有する薬剤を供給する薬剤供給手段58とを有している。
【0056】
そして、廃液薬剤処理手段48は、薬剤処理槽57内に流入した廃液に薬剤供給手段58にて薬剤を添加することにより、廃液中に残留した病原微生物を死滅させる。また、薬剤処理槽57は、配管35を介して排出処理手段36に接続されており、死滅処理した廃液を排出処理手段36へ供給する。
【0057】
排出処理手段36は、死滅処理手段34にて病原微生物を死滅処理した後の廃液を、例えば下水本管等の排水設備へ排出できるように処理する。
【0058】
また、排出処理手段36は、病原微生物とともに車体やタイヤから除去されたオイルやグリース等の油分を廃液から除去するグリーストラップ61と、このグリーストラップ61にて油分が除去された廃液について消毒液に由来する成分を不活性化する不活性化処理手段62と、この不活性化処理手段62にて不活性化された廃液を排水基準に基づいて浄化する浄化処理手段63とを有している。
【0059】
グリーストラップ61は、倉庫12内において地中に埋設され、配管35を介して薬剤処理槽57に接続され、廃液薬剤処理手段48にて死滅処理後の廃液が流入する。また、グリーストラップ61は、2つの仕切板64にて仕切られて連設した第1槽部65と第2槽部66と第3槽部67とを有している。そして、グリーストラップ61は、第1槽部65、第2槽部66および第3槽部67に廃液が順次流入して、廃液中の油分が除去を除去するとともに、分離処理手段38にて捕捉できなかったごみ等の固形分も除去する。また、グリーストラップ61は、配管68を介して不活性化処理手段62に接続されており、油分を除去した廃液を不活性化処理手段62へ供給する
不活性化処理手段62は、倉庫12の外において地中に埋設され、グリーストラップ61からの廃液が流入する開放型の曝気槽71と、この曝気槽71内に設けられ空気を供給して廃液を曝気する曝気装置72とを有している。そして、不活性化処理手段62は、曝気装置72により廃液を曝気することにより、廃液中の消毒液に由来する塩素分を飛散させて不活性化する。また、曝気槽71は、配管73を介して浄化処理手段63に接続されており、不活性化処理した廃液を浄化処理手段63へ供給する。
【0060】
なお、車両洗浄装置2に用いられる消毒液としては塩素系のものが一般的だが、車両洗浄装置2にて塩素系以外の消毒液を用いる場合には、不活性化処理手段62は、中和液を滴定することにより消毒液の成分を中和させて不活性化する構成にしてもよい。
【0061】
浄化処理手段63は、倉庫12の外において地中に埋設され、不活性化処理手段62からの廃液が流入する浄化槽74を有している。なお、この浄化槽74は、上部に蓋体が取り付けられ、蓋体を含む上部の一部が地中から露出している。
【0062】
浄化槽74は、内部が複数槽に仕切られ、不活性化処理手段62から流入した廃液について、例えば生物処理、曝気処理、好気性処理および固液分離等の一般的な浄化処理を行うことにより、廃液のBOD、COD、ノルマルヘキサン、および窒素やリン等の有害物質の指標を排水基準に基づいて処理し廃液を浄化する。また、浄化槽74には、排出管75を介して排水設備に接続されており、浄化した廃液を排出設備へ排出する。
【0063】
次に、車両洗浄システム1の作用等を説明する。
【0064】
車両Sが入場方向へ走行して床部4の車両走行面の長手方向一端側に進入し、第1検知手段23および第2検知手段24にて車両Sを検知すると、制御手段17は、車両Sが進入したと判断する。
【0065】
また、制御手段17は、車両Sが進入したと判断した場合には、装置本体11の一端開口部13および他端開口部14の開閉手段が上昇を開始するとともに点灯手段27を赤色に点灯させる。そして、制御手段17は、開閉手段が所定の全開位置まで上昇すると、ポンプ20を作動させる。
【0066】
なお、制御手段17は、第1検知手段23および第2検知装置24からの車両有りの検知信号を同時に受信せず、車両S以外、例えば人が進入したと判断した場合には、開閉手段および点灯手段27を作動させない。つまり、車両S以外の進入物によって誤作動しないようになっている。
【0067】
そして、車両Sが装置本体11内に進入すると、バルブ21が閉状態から開状態へ切り替えられ、ノズル取付管22に取り付けられたノズルから消毒液が車両Sに向けて噴射される。
【0068】
その結果、車両Sは、車両通過空間15を通過中に車両外面(車両Sの車体およびタイヤ)の全体がノズルからの所定量の消毒液で洗浄されるとともに消毒される。
【0069】
また、このように車両Sを洗浄することにより、車両Sの車体およびタイヤに付着した土壌伝染病の病原微生物が洗い流されるように除去される。
【0070】
制御手段17は、第3検知手段25および第4検知手段26にて車両Sを検知して、車両Sが車両通過空間15を通過したと判断すると、ポンプ20を停止させ、バルブ21を開状態から閉状態へ切り替え、一端開口部13および他端開口部14の開閉手段を所定の全閉位置まで下降させる。
【0071】
装置本体11において、車両Sを洗浄した後の廃液は、凹溝6へ流入し凹溝6内を流れて配管31を介して桝32へ流入する。
【0072】
桝32に流入した廃液は、貯留部37に集合して一時的に貯留され、配管33aを介して分離処理手段38へ供給される。
【0073】
分離処理手段38は、桝32から供給された廃液中の病原微生物やごみ等の固形分をフィルタ44により捕捉する。また、フィルタ44はローラ43により回転しており、フィルタ44に捕捉された固形分は、フィルタ44の回転にともなって、蒸気発生手段45の方に向かって移動する。
【0074】
蒸気発生手段45は、蒸気を発生させ、移動してきたフィルタ44上の固形分へ蒸気を吹き付けて、病原微生物およびその幼虫や卵を直接加熱することにより、病原微生物およびその幼虫や卵を死滅させる。
【0075】
蒸気発生手段45による加熱で死滅させた病原微生物を含む固形分は、回収手段にて回収されて収容部49に収容され、その後、適宜処分される。
【0076】
また、フィルタ44を通過して病原微生物が分離された廃液は、フィルタ44の下方に設置された高温槽51に流入する。
【0077】
高温槽51では、流入した廃液をヒーター52にて加熱することにより、廃液中に残留した病原微生物、およびその幼虫や卵を死滅させる。また、廃液加熱処理手段46にて死滅処理された廃液は、配管33bを介して高温槽51から通電槽53へ供給される。
【0078】
通電槽53では、流入した廃液に対し、一対の電極56にて電流を流し通電することにより、廃液中に残留した病原微生物、およびその幼虫や卵を電気による衝撃で死滅させる。また、廃液通電処理手段47にて死滅処理された廃液は、配管33cを介して通電槽53から薬剤処理槽57へ供給される。
【0079】
薬剤処理槽57では、流入した廃液に対し、薬剤供給手段58にて薬剤を添加することにより、薬剤の殺菌作用で廃液中に残留した病原微生物、およびその幼虫や卵を死滅させる。
【0080】
したがって、死滅処理手段34では、分離処理手段38にて、廃液から病原微生物を分離しこの分離した病原微生物を死滅させるとともに、分離処理手段38で病原微生物が分離された廃液について、この廃液中に残留した病原微生物を残留病原微生物処理手段39にて死滅させる。
【0081】
このように死滅処理手段34にて病原微生物が死滅された廃液は、配管35を介して薬剤処理槽57からグリーストラップ61へ供給される。
【0082】
グリーストラップ61では、薬剤処理槽57からの廃液が第1槽部65に流入し、第1槽部65にて廃液中のごみや病原微生物の死骸等の固形分が除去されるとともに、第2槽部66へ流入し、第2槽部66にて第1槽部65からの廃液中の油分が除去される。また、第2槽部66にて油分が除去された廃液は、第3槽部67から配管68を介して曝気槽71へ供給される。
【0083】
曝気槽71では、グリーストラップ61から流入した廃液に対し曝気装置72にて曝気することにより、廃液中の塩素分を飛散させ、廃液における消毒液に由来する消毒作用を不活性化させる。また、不活性化処理手段62にて不活性化された廃液は、配管68を介して浄化槽74へ供給される。
【0084】
浄化槽74では、曝気槽71から流入した廃液を浄化処理にて排水基準を満たすように浄化して無害化する。また、浄化処理手段63にて浄化された廃液は、排出管75を介して下水本管等の排水設備へ排出される。
【0085】
そして、このような車両洗浄システム1によれば、廃液処理装置3が、廃液から病原微生物を分離しこの分離した病原微生物を加熱して死滅させる分離処理手段38を有する死滅処理手段34を備えるため、洗浄後の廃液に含まれ、例えば洗浄に用いた消毒液の消毒作用等だけでは死滅しない病原微生物を、分離処理手段38にて廃液から分離しこの分離した病原微生物を直接処理して適切に死滅できる。
【0086】
分離処理手段38は、廃液から病原微生物を分離する分離手段41と、分離手段41にて廃液から分離した病原微生物を加熱して死滅させる加熱手段42を有し、廃液から分離した病原微生物を直接加熱できるため、特殊な設備や特殊な薬剤を用いることなく効果的に病原微生物を死滅できる。特に、加熱手段42が蒸気発生手段45を有する構成にすることにより、蒸気にて短時間で効果的に病原微生物を加熱できるため、病原微生物を適切に死滅できる。
【0087】
また、加熱手段42は、60℃以上120℃以下の温度で1秒以上60秒以下の間、病原微生物を加熱することにより、病原微生物をより確実に死滅できる。
【0088】
分離処理手段38は、フィルタ44がローラ43により回転され、廃液から病原微生物を捕捉しながら、捕捉した病原微生物を加熱手段42へ向かって移動させるので、フィルタ44に目詰まりが発生しにくく、正確に廃液中の病原微生物を捕捉でき、適切に病原微生物を死滅できる。
【0089】
死滅処理手段34は、残留病原微生物処理手段39を有するため、分離処理手段38にて病原微生物を分離した廃液に病原微生物が残留していた場合であっても、この残留した病原微生物を死滅でき、適切に病原微生物を死滅できる。
【0090】
また、廃液処理装置3は、死滅処理手段34にて病原微生物を死滅させた廃液を排水設備へ排出できるように処理する排出処理手段36を備えているため、病原微生物を死滅させた後の廃液を無害化でき、廃液の排出による水環境への負荷を小さくして自然破壊を防止できる。
【0091】
ここで、車両洗浄装置2の廃液には、車両Sの車体やタイヤに付着したオイルやグラスに由来する油分が含まれているため、排出処理手段36では、浄化処理手段63にて浄化する前にグリーストラップ61にて油分を除去することにより、浄化処理手段63の負荷を軽減できるとともに、浄化槽74を小さく設計できる。したがって、浄化処理手段のイニシャルコストやランニングコストを抑えることできる。
【0092】
なお、上記一実施の形態では、車両洗浄装置2からの廃液を廃液処理装置3にて処理する構成としたが、このような構成には限定されず、廃液処理装置3は、土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄した後の病原微生物を含む廃液を処理する構成であればよい。例えば、廃液処理装置3は、被付着体を手動で洗浄した後の廃液を処理する構成にしてもよい。また、廃液処理装置3は、車両S以外の農業設備や農業用具等の被付着体を洗浄した後の廃液を処理する構成にしてもよい。さらに、廃液処理装置3は、消毒液以外の洗浄液を用いて被付着体を洗浄した後の廃液を処理する構成にしてもよい。
【0093】
廃液処理装置3は、廃液集合手段としての桝32と死滅処理手段34と排出処理手段35とを備えた構成としたが、このような構成には限定されず、死滅処理手段34を備えていれば、桝32や排出処理手段36を備えてない構成にしてもよい。
【0094】
分離処理手段38は、加熱手段42にて病原微生物を死滅させる構成としたが、このような構成には限定されず、廃液から分離した病原微生物を例えば通電や薬剤により死滅させる構成にしてもよい。
【0095】
分離処理手段38が加熱手段42を有する構成にする場合は、蒸気発生手段45により病原微生物を死滅させる構成には限定されない。例えば、通電により発熱する通電発熱手段としての熱伝板をフィルタ44の上側面に沿ってフィルタ44を挟むように平行に配設し、フィルタ44にて捕捉した病原微生物を発熱した状態の電熱板に接触させて加熱する構成にしてもよい。また、マイクロ波を発生させるマグネトロンを設け、フィルタ44にて捕捉した病原微生物にマイクロ波を照射して病原微生物を加熱する構成にしてもよい。すなわち、加熱手段42は、通電発熱手段、蒸気発生手段45およびマグネトロンの少なくともいずれか1つを有する構成であればよい。
【0096】
また、分離処理手段38は、分離手段41のフィルタ44が回転可能な構成としたが、このような構成には限定されず、フィルタ44が回転しない構成にしてもよい。
【0097】
さらに、分離処理手段38は、病原微生物を死滅させた後、他の固形分とともに回収する構成としたが、このような構成には限定されず、廃液から他の固形分とともに分離した病原微生物を例えばスクレーパ等を用いて一旦回収した後、この回収した固形分を加熱手段42等にて加熱して、病原微生物を死滅させる構成にしてもよい。
【0098】
死滅処理手段34は、分離処理手段38と、残留病原微生物処理手段39とを有する構成としたが、このような構成には限定されず、例えば、図4に示すように、分離処理手段38のみが設けられ、分離処理手段38の下方には貯留槽77が設けられ、この貯留槽77から配管35を介してグリーストラップ61へ廃液が供給される構成にしてもよい。
【0099】
また、死滅処理手段34が残留病原微生物処理手段39を有する構成の場合は、残留病原微生物処理手段39が廃液加熱処理手段46、廃液通電処理手段47および廃液薬剤処理手段48を有する構成には限定されない。例えば、図5に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液加熱処理手段46のみを有する構成、図6に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液通電処理手段47のみを有する構成、および、図7に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液薬剤処理手段48のみを有する構成にしてもよい。また、図8に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液加熱処理手段46および廃液通電処理手段47を有する構成、図9に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液加熱処理手段46および廃液薬剤処理手段48を有する構成、および、図10に示すような残留病原微生物処理手段39が廃液通電処理手段47および廃液薬剤処理手段48を有する構成にしてもよい。すなわち、残留病原微生物処理手段39は、廃液加熱処理手段46、廃液通電処理手段47および廃液薬剤処理手段48の少なくともいずれか1つを有する構成であればよい。
【符号の説明】
【0100】
1 洗浄システムとしての車両洗浄システム
2 洗浄装置としての車両洗浄装置
3 廃液処理装置
32 廃液集合手段としての桝
34 死滅処理手段
36 排出処理手段
38 分離処理手段
39 残留病原微生物処理手段
41 分離手段
42 加熱手段
45 蒸気発生手段
46 廃液加熱処理手段
47 廃液通電処理手段
48 廃液薬剤処理手段
61 グリーストラップ
62 不活性化処理手段
63 浄化処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄した後の病原微生物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、
廃液に含まれた病原微生物を死滅させる死滅処理手段を備え、
この死滅処理手段は、廃液から病原微生物を分離し、この分離した病原微生物を死滅させる分離処理手段を有する
ことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
分離処理手段は、廃液を濾過して病原微生物を分離する分離手段と、この分離手段にて分離された病原微生物を加熱して死滅させる加熱手段とを有し、
加熱手段は、通電により発熱する通電発熱手段、マイクロ波を発生させるマグネトロン、および蒸気を発生させる蒸気発生手段の少なくともいずれか1つを有する
ことを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項3】
死滅処理手段は、分離処理手段にて病原微生物が分離された廃液に残留した病原微生物を死滅させる残留病原微生物処理手段を有し、
この残留病原微生物処理手段は、廃液を加熱して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液加熱処理手段、廃液を通電して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液通電処理手段、および、廃液に薬剤を添加して廃液中に残留した病原微生物を死滅させる廃液薬剤処理手段の少なくともいずれか1つを有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の廃液処理装置。
【請求項4】
病原微生物を含む廃液を集合させて死滅処理手段へ供給する廃液集合手段と、
死滅処理手段からの廃液を排水設備へ排出できるように処理する排出処理手段を備え、
この排出処理手段は、廃液から油分を分離するグリーストラップと、このグリーストラップにて油分が分離された廃液を不活性化する不活性化処理手段と、この不活性化処理手段にて不活性化した廃液を排水基準に基づいて浄化する浄化処理手段とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項5】
土壌伝染病の病原微生物が付着した被付着体を洗浄して病原微生物を除去する洗浄装置と、
請求項1ないし4のいずれか記載の廃液処理装置とを備え、
前記洗浄装置からの病原微生物を含む廃液が前記廃液処理装置により処理される
ことを特徴とする洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−148(P2013−148A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130808(P2011−130808)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(506310050)株式会社アクト (16)
【Fターム(参考)】