説明

廃複合樹脂組成物の改質方法

【課題】相溶化性が低い異なる種類の廃合成樹脂材を使用する場合であって、相互の接合強度を高めて優れた機械的強度を得る。これらに廃無機フィラーを添加する場合であっても、樹脂相互を相溶化すると共に樹脂と無機フィラー等の界面強度及び親和性を高め、生成される廃複合樹脂組成物の機械的強度を高める。産業廃棄物として排出される廃合成樹脂材と共に大量の廃無機フィラーを有効に再利用する。
【解決手段】1.少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材にオレフィン系相溶化剤を添加する、2.オレフィン系相溶化剤が添加されて高相溶化された少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物として排出される使用済みの廃複合樹脂材や同じく廃棄物であるフライアッシュ等の廃無機フィラーの再利用化を図るコンクリート等の代用製品としての成形品等の成形原料になる廃複合樹脂組成物の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1において廃合成樹脂材や廃無機フィラーの再利用を図るため、コンクリート代用成形品等のように高い強度が要求される成形品の成形原料になる廃複合樹脂組成物の製造方法を提案した。この廃複合樹脂組成物の製造方法は、所望の大きさからなる廃合成樹脂材に対し、該廃合成樹脂材より熱伝導率が高く、微小粒径の廃無機フィラーを30乃至60wt%の割合で混合して常温下で撹拌混合し、廃合成樹脂材表面に廃無機フィラーを均一に付着させた撹拌混合物を生成する撹拌工程と、該撹拌混合物を廃合成樹脂材の軟化温度下で加熱混練し、付着した廃無機フィラーを介して供給される熱エネルギーにより廃合成樹脂材を軟化し、付着した廃無機フィラーを混練圧により廃合成樹脂材内に取り込ませて加熱混合物を生成する加熱混練工程と、該加熱混合物を廃合成樹脂材の溶融温度下で加熱混練し、供給される熱エネルギーにより廃合成樹脂材を流動可能に溶融して廃無機フィラー表面にコーティングして溶融混合物を生成する溶融混練工程と、該溶融混合物を、廃合成樹脂材及び廃無機フィラーの温度勾配が平衡化するまで加熱混練状態を継続して溶融した廃合成樹脂材中に廃無機フィラーを均一に分散させて海島構造化した複合廃樹脂組成物を生成することを特徴としている。
【0003】
しかし、複合廃樹脂組成物を組成する廃合成樹脂材は、回収される過程で異なる複数のオレフィン系樹脂及び少量の熱可塑性樹脂が混在し、廃合成樹脂材相互の接合強度が低く、充分な機械的強度がなかった。しかも、廃合成樹脂材自体、バージン樹脂に比べて成形時や使用時の熱ストレスや機械的ストレス、紫外線等により樹脂強度自体が低下しており、これを原料として成形される成形品にあっては、機械的強度が低くなる問題を有している。このため、廃合成樹脂材を原料とする成形品にあっては、成形製品の用途が限定され、高い機械的強度が要求される上記したコンクリート等の代用成形製品として使用することが困難であった。
【0004】
特に、再利用される廃合成樹脂材としては、大部分がPE樹脂(ポリエチレン)やPP樹脂(ポリプロピレン)等のオレフィン系廃合成樹脂に少量の、例えばPS樹脂(ポリスチレン)等の熱可塑性樹脂材で占められているのが実情である。この廃PE樹脂と廃PP樹脂は相溶化性が悪く、これらを溶融した際には、樹脂相互の接合性が悪いため、これらを原料として新たに成形される成形製品にあっては、必然的に機械的強度が低くなることが避けられなかった。
【0005】
しかも、上記した廃複合樹脂組成物の製造方法において、廃樹脂成形品の機械的強度を高めたり、重量化したり、耐候性を高めたりするために他の産業廃棄物であるフライアッシュや高炉スラグ等の廃無機フィラーを混入すると、オレフィン系廃合成樹脂材相互の相溶化性が悪い上に、更に添加される廃無機フィラーにより成形品の機械的強度が更に低下している。このため、廃無機フィラーの添加量を低く抑える必要があり、廃無機フィラーを有効再利用するのが困難であった。
【特許文献1】特許3719257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、相溶化性が低い異なる種類の廃合成樹脂材を使用する場合には、充分な機械的強度を有した廃複合樹脂組成物に生成することができず、これを成形原料とする成形品自体の機械的強度が低くなって成形品の用途が限定される点にある。また、他の産業廃棄物である廃無機フィラーの有効利用を図るためにこれを添加する場合にあっては、機械的強度が低下するため、添加量を少なくしなければならず、廃無機フィラーを有効に再利用するのが困難な点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、低相溶化性の少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌しながら加熱溶融した後に、所望の形状に成形して廃複合樹脂組成物を生成する方法において、1.少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材にオレフィン系相溶化剤を添加する、2.オレフィン系相溶化剤が添加されて高相溶化された少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融する、上記1及び2からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、低相溶化性の少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌しながら加熱溶融した後に、所望の形状に成形して廃複合樹脂組成物を生成する方法において、1.上記2種類のオレフィン系廃合成樹脂材に廃無機フィラーを30wt%〜80wt%の割合で混合して混合物を生成する、2.上記混合物にオレフィン系相溶化剤を添加する、3.オレフィン系相溶化剤が添加された混合物を撹拌混練しながら加熱溶融し、オレフィン系廃合成樹脂材相互を高相溶化すると共にオレフィン系廃合成樹脂材と廃無機フィラーの界面強度及び親和性を高める、上記1乃至3からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、相溶化性が低い異なる種類の廃合成樹脂材を使用する場合であって、相互の接合強度を高めて優れた機械的強度を得ることができる。また、これらに廃無機フィラーを添加する場合であっても、樹脂相互を相溶化すると共に樹脂と無機フィラー等の界面強度及び親和性を高め、生成される廃複合樹脂組成物の機械的強度を高めることができる。そして産業廃棄物として排出される廃合成樹脂材と共に大量の廃無機フィラーを有効に再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、1.少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材にオレフィン系相溶化剤を添加する、2.オレフィン系相溶化剤が添加されて高相溶化された少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融することを最良の形態とする。
また、1.上記2種類のオレフィン系廃合成樹脂材に廃無機フィラーを30wt%〜80wt%の割合で混合して混合物を生成する、2.上記混合物にオレフィン系相溶化剤を添加する、3.オレフィン系相溶化剤が添加された混合物を撹拌混練しながら加熱溶融し、オレフィン系廃合成樹脂材相互を高相溶化すると共にオレフィン系廃合成樹脂材と廃無機フィラーの界面強度及び親和性を高めることを最良の形態とする。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明方法を実施例に従って説明する。
図1において、廃複合樹脂組成物は、主に産業廃棄物として排出される異なる種類のオレフィン系廃合成樹脂材及び同じく、廃棄物として排出され、オレフィン系廃合成樹脂材より熱伝導率が高い廃無機フィラーを主成分とし、これに異なる種類のオレフィン系廃合成樹脂材相互を接合する相溶化剤及び必要に応じて添加されるガラス繊維、炭素繊維等の再生補強繊維や難燃剤、耐候剤等の各種助剤からなる。
【0012】
オレフィン系廃合成樹脂材としては、例えば主に廃PP樹脂、廃PE樹脂と少量の熱可塑性廃樹脂(PS樹脂)等からなる。具体的には、リサイクルするために回収される容器、包装製品(例えば≡日本容器包装リサイクル協会から提供される廃樹脂等)を廃複合樹脂組成物の原料とする場合にあっては、廃PE樹脂及び廃PP樹脂と少量の熱可塑性廃樹脂(廃PS樹脂等)のオレフィン系樹脂がほとんどを占めている。これら少なくとも2種類の廃PE樹脂及び廃PP樹脂は、例えば混合、加熱溶融して、例えば10mm以下、望ましくは5mm以下の大きさに成形した1種類のペレットを使用すればよい。
【0013】
オレフィン系廃合成樹脂材の大部分を占める廃PE樹脂と廃PP樹脂とは相溶化性が悪く、その混合物を加熱溶融して成形した際には、これらオレフィン系を主とする廃複合組成物は、機械的強度が低い。
【0014】
また、廃無機フィラーとしては、例えば石炭灰、フライアッシュ、高炉スラグ等で、上記したオレフィン系廃合成樹脂材より高い熱伝導率を有していることを条件とする。そして廃無機フィラーは、例えば平均粒子径が100μm以下、望ましくは40μm以下に微粉砕される。
【0015】
相溶化剤としては、オレフィン系廃合成樹脂材と同種のオレフィン系で、酸構造の官能基を有した変性ポリオレフィン系接着樹脂、またはオレフィン系水添エラストマー樹脂が適している。具体的には、前者としては三菱化学株式会社製 商品名:モディック−AP908、後者としては旭化成株式会社製、商品名:タフテックP2000、JSR株式会社製、商品名:ダイナロン6200P、日本合成化学(株)、商品名:ソアノールA4412B等が存在する。尚、上記において相溶化剤の商品例を示したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各種のオレフィン系エラストマー樹脂及びオレフィン系接着性樹脂から適宜選択すればよい。
【0016】
上記した廃複合樹脂材及び廃無機フィラーを主成分とし、相溶化剤及び必要に応じて助材が添加された廃複合樹脂組成物の製造方法は、以下の通りである。
1.常温混合工程
オレフィン系廃合成樹脂材10〜60wt%(後述する相溶化剤の添加量を10wt%とする場合。但し、他に助材を添加する場合には、実際の添加量は、上記数値より少なくなる。)、廃無機フィラー30〜80wt%(ブレーン法比表面積が約2500cm2/g以上の場合。また、後述する相溶化剤の添加量を10wt%とする場合。但し、他に助材を添加する場合には、実際の添加量は、上記数値より少なくなる。)、相溶化剤1〜15wt%及び必要に応じて再生補強繊維、難燃剤、着色剤等の助材を添加した混合物を、常温下で撹拌混合して常温混合物を生成する。また、助材として添加する再生補強繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等で、長繊維または短繊維のいずれであってもよい。相溶化剤の添加量は、添加量を増大するに従って樹脂相互の接合力が高くなるが、コストを考慮した実際の製造においては、10wt%程度が望ましい。
【0017】
上記した撹拌作用よりオレフィン系廃合成樹脂材、相溶化剤及び必要に応じて添加される助材を均一に分散混合させる。この混合により、オレフィン系廃合成樹脂材の表面に微小粒径である廃無機フィラーや助材が均一に付着させる。オレフィン系廃合成樹脂材に対する廃無機フィラーの付着作用は、上記した撹拌によりオレフィン系廃合成樹脂材相互が摩擦し合って発生する静電気やファンデンワールス力による吸着作用に依存する。
【0018】
2.加熱混練工程
上記1により生成された常温混合物をオレフィン系廃合成樹脂材の軟化温度下で加熱混練する。このとき、オレフィン系廃合成樹脂材の表面に付着又は余剰分の微小粒径である廃無機フィラーは、廃合成樹脂材に比べて熱伝導率が高いため、先に軟化温度まで昇温してオレフィン系廃合成樹脂材や相溶化剤を加熱させる。そして、オレフィン系廃合成樹脂材や相溶化剤が軟化温度又はガラス転移温度以上になると、電子がブラウン運動により振動して軟化し始める。
【0019】
また、上記のように廃無機フィラーからの熱エネルギーによりオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤が軟化した状態で混練圧が作用すると、異なる種類のオレフィン系廃合成樹脂材相互を相溶化剤により接合させると共にこの混練圧と自己せん断熱の作用により凝集した廃無機フィラーを分散させながら軟化したオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤の内部に押し込み、加熱混合物を生成する。
【0020】
3.溶融混練工程
上記工程2による加熱混合物を、オレフィン系廃合成樹脂材の溶融温度下(約220℃)で加熱混練して溶融混合物を生成する。これによりオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤が、外部から直接付与される熱や廃無機フィラーを介して付与される熱や自己せん断熱により溶融して流動状態になる。このとき、オレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤と廃無機フィラーの界面では熱エネルギーの授受により浸漬熱が助長され、溶融したオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤の内部に多くの廃無機フィラーが取り込まれ、廃無機フィラーの表面にオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤がコーティングされた状態になる。
【0021】
この結果、廃無機フィラー自体、その表面にはオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤がコーティングされることにより界面での親和性が高くなり、溶融したオレフィン系廃合成樹脂材及び相溶化剤中において廃無機フィラーを均一に分散させる。
【0022】
尚、この溶融混練工程においては、溶融したオレフィン系廃合成樹脂材と廃無機フィラーとは熱伝導率が異なるために常に温度差があり、オレフィン系廃合成樹脂材は廃無機フィラーからの熱エネルギーの供給状態が継続される。
【0023】
上記により生成された廃複合樹脂組成物は、溶融状態のまま、又は必要に応じて溶融状態の廃複合樹脂組成物中に混在する空気を脱気した後に、例えば射出成形機またはプレス成型機に供給し、例えばコンクリート代用品である所望の成形品に成形したり、溶融した廃複合樹脂組成物を微小空間内に通過させることにより棒状成形品に成形した後に所定の長さ毎に切断してペレット化される。このペレットは、射出成形機またはプレス成型機に供給される成形原料になる。
【0024】
実験例1
実験例1は、廃PE樹脂:廃PP樹脂材=約1:1(但し、若干量のPS樹脂等を含む)からなるオレフィン系廃合成樹脂材に添加する相溶化剤の種類及び添加量に応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度の関係を示す。
尚、相溶化剤無添加の場合の曲げ強度を図2に示す。図2は、廃PP樹脂:廃樹脂PE=約1:1の廃合成樹脂材をベースとした廃複合樹脂組成物(試料A)、これに廃合成樹脂材を50wt%に廃無機フィラー50wt%を添加した廃複合樹脂組成物(試料B)、上記に廃合成樹脂材50wt%に廃無機フィラー47.5wt%及び補強繊維2.5wt%を添加した廃複合樹脂組成物(試料C)、上記に廃合成樹脂材45wt%に廃無機フィラー38.5wt%、補強繊維2.5wt%及び助剤14wt%を添加した廃複合樹脂組成物(試料D)の曲げ強度をそれぞれ示す。
加熱溶融条件
溶融温度:約200℃、撹拌時の回転数:50rpm、撹拌時間:15分
成形条件
型への加圧力:5MPa
曲げ強度試験方法
JISK7203に準ずる。
尚、相溶化剤の添加量が0wt%の場合、曲げ強度は、26MPaである。
【0025】
1.オレフィン系水添樹脂
a.オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、90wt%
相溶化剤:商品名 タフテックP2000(スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン熱可塑性エラストマー)、10wt%
曲げ強度:33MPa
b.オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、99wt%
相溶化剤:商品名 ダイナロン6200P(スチレン/エチレンブチレン/オレフィン結晶ブロックコポリマー)1wt%
曲げ強度:30MPa
【0026】
2.オレフィン系樹脂で酸構造の官能基を有する接着性樹脂
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、90wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908(ポリプロピレンをベースとする酸構造の官能基を有する酸変性ポリオレフィン系接着性樹脂)10wt%
曲げ強度:34MPa
【0027】
3.考察
いずれの相溶化剤においても、相溶化剤を添加することにより廃複合樹脂組成物の曲げ強度が向上した。
【0028】
実験例2
実験例2は、上記した試料Aに添加する相溶化剤の種類及び添加量に応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度の関係を示す。尚、成形条件等は、上記実験例1と同様とする。(図3参照)
試料E
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、40wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908及び商品名 ソアノールA4412Bを単独又は組合せて10wt%とする。
試料F
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、40wt%
廃無機フィラー 50wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908及び商品名 ソアノールA4412Bを単独又は組合せて10wt%とする。
試料G
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、40wt%
廃無機フィラー 47.5wt%
補強繊維 2.5wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908及び商品名 ソアノールA4412Bを単独又は組合せて10wt%とする。
試料H
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、40wt%
廃無機フィラー 34.0wt%
補強繊維 2.0wt%
助剤 14wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908及び商品名 ソアノールA4412Bを単独又は組合せて10wt%とする。
考察
オレフィン系廃合成樹脂材の大部分を占める廃PP樹脂と廃PE樹脂の接触又は絡み合いの部分に、ポリプロピレンベースに酸変性された、例えばカルボン酸基の状態で入り込み、廃PP樹脂と廃PE樹脂を繋ぎ合わせて機械的強度を向上させる。
【0029】
また、相溶化剤は酸変性された、例えばカルボン酸基がフライアッシュ表面の酸素分子、例えばSiO2、Al23、CaO等の酸素原子とも親和性を持ち、廃合成樹脂材相互を相溶化して接合形成すると共に廃無機フィラーであるフライアッシュに接合して機械的強度を向上させる。
【0030】
更に、補助的には、相溶化剤がPP樹脂ベースであるため、オレフィン系廃合成樹脂材における廃PP樹脂の構成比率を高くすることの相乗効果として機械的強度を向上させる。
【0031】
実験例3
以下に、相溶化剤を添加した条件で、廃合成樹脂材及び廃無機フィラーの量を異ならせた際の廃複合樹脂組成物の曲げ強度及び成形された廃複合樹脂組成物が破断する際の最大変位量の比較例を示す。尚、成形条件等は、上記実験例1と同様とする。
【0032】
図5に、廃無機フィラーをフライアッシュとした場合の廃複合樹脂組成物の曲げ強度及び成形された廃複合樹脂組成物が破断する際の最大変位量の比較を示す。
基本組成 オレフィン系廃合成樹脂材+無機フィラー:フライアッシュ(形状:球形、比重:2.4cm3/g、表面積:3820cm2/g、図4参照)+相溶化剤:商品名モディック−AP908
サンプル1
廃PE樹脂材:廃PP樹脂材=約1:1(但し、若干量のPS樹脂を含む) 90wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:26MPa
サンプル2
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:60wt%+フライアッシュ:30wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:34.34MPa
サンプル3
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:50wt%+フライアッシュ:40wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:35.61MPa
サンプル4(図6参照)
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:40wt%+フライアッシュ:50wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:36.63MPa
サンプル5
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:30wt%+フライアッシュ:60wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:37.00MPa
サンプル6(図7参照)
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:20wt%+フライアッシュ:70wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:39.50MPa
サンプル7(図8参照)
サンプル1のオレフィン系廃合成樹脂材:10wt%+フライアッシュ:80wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:41.45MPa
【0033】
図10に、廃無機フィラーを高炉スラグとした場合の廃複合樹脂組成物の曲げ強度及び成形された廃複合樹脂組成物が破断する際の最大変位量の比較を示す。
基本組成 オレフィン系廃合成樹脂材+無機フィラー:高炉スラグ(形状:不定形、比重:293cm3/g、表面積:4180cm2/g、図9参照)+相溶化剤:商品名モディック−AP908
サンプル8
廃PE樹脂材:廃PP樹脂材=約1:1(但し、若干量のPS樹脂を含む) 90wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:26.00MPa
サンプル9(図11参照)
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:60wt%+高炉スラグ:30wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:35.98MPa
サンプル10
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:50wt%+高炉スラグ:40wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:34.29MPa
サンプル11
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:40wt%+高炉スラグ:50wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:35.24MPa
サンプル12
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:30wt%+高炉スラグ:60wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:37.50MPa
サンプル13(図12参照)
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:20wt%+高炉スラグ:70wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:43.12MPa
サンプル14
サンプル8のオレフィン系廃合成樹脂材:10wt%+高炉スラグ:80wt%+相溶化剤:10wt%
曲げ強度:40.00MPa
考察
フライアッシュ及び酸化スラグのいずれの廃無機フィラーの添加量を80wt%まで増量した場合であっても、廃複合樹脂組成物の曲げ強度が向上した。
無機フィラーの添加量が増量することにより、相溶化剤による分散、接合性が向上し、更に無機フィラー間の距離が接近することにより、ファンデルワールス力が強くなり、重畳作用により、更に曲げ強度が向上した。
【0034】
実験例4
実験例4は、相溶化剤相互の化学結合により廃合成樹脂材と廃無機フィラーの接合性を示す。尚、廃複合樹脂組成物を生成する際の加熱溶融条件、成形条件等は上記した通りである。
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=1:1、40wt%
廃無機フィラー フライアッシュ50wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908 7wt%+日本合成化学(株) 商品名 ソアノールA4412B 3wt%
曲げ強度:30.0MPa
【0035】
相溶化剤自体、機械的剛性(曲げ強度:約100MPa)が高いエチレンビニールールアルコールル共重合樹脂で、末端基に水酸基を有しているソアノールA4412Bがモディック−AP908と化学結合し、オレフィン系廃合成樹脂材を構成する樹脂相互を接合してオレフィン系廃合成樹脂材自体の機械的強度を向上させる。また、上記相溶化剤は無機フィラーに対しても親和性を有しているため、オレフィン系廃合成樹脂材と廃無機フィラーを接合して廃複合樹脂組成物の機械的強度を高める。
【0036】
尚、図13は、オレフィン系廃合成樹脂材:40wt%、廃無機フィラー:50wt%、相溶化剤(商品名 モディック−AP908:7wt%+ソアノール商品名 A4412B:3wt%)とした廃複合樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。
【0037】
実験例5
実験例5は、上記したサンプル3に添加する相溶化剤の種類及び添加量に応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度の関係を示す。尚、廃複合樹脂組成物を生成する際の加熱溶融条件、成形条件等は上記した通りである。
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1、40wt%
廃無機フィラー フライアッシュ47.5wt%
再生グラスファイバー 2.5wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908 10wt%
曲げ強度:40.0MPa
【0038】
実験例6
実験例6は、上記したサンプル4に添加する相溶化剤の種類及び添加量に応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度の関係を示す。尚、廃複合樹脂組成物を生成する際の加熱溶融条件、成形条件等は上記した通りである。
オレフィン系廃合成樹脂材 廃PE樹脂:廃PP樹脂=約1:1 40wt%
廃無機フィラー フライアッシュ 34.5wt%
再生グラスファイバー 2.0wt%
難燃剤 14wt%
相溶化剤:商品名 モディック−AP908 10wt%
曲げ強度:39.8MPa
【0039】
尚、図14は、オレフィン系廃合成樹脂材:39wt%、廃無機フィラー:38.5wt%、相溶化剤(商品名 モディック−AP908):10wt%、難燃剤:14wt%とした廃複合樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。
考察
低相溶化性の異なる2種類のオレフィン系廃合成樹脂材の場合、低相溶化性の異なる2種類のオレフィン系廃合成樹脂材に廃無機フィラーを添加した場合、低相溶化性の異なる2種類のオレフィン系廃合成樹脂材に廃無機フィラー及び難燃剤等の助材を添加した場合のいずれの場合であっても、オレフィン系廃合成樹脂材と同種の相溶化剤を添加することにより相互の接合強度を高めて生成される廃複合樹脂組成物の機械的強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】廃複合樹脂組成物の製造方法の概略を示す工程図である。
【図2】相溶化剤を添加しない場合の各種廃複合樹脂組成物の曲げ強度を示す説明図である。
【図3】廃複合樹脂組成物の組成及び相溶化剤の種類を異ならせた場合の廃複合樹脂組成物の曲げ強度を示す説明図である。
【図4】無機フィラーとしてのフライアッシュを示す電子顕微鏡写真である。
【図5】廃合成樹脂材と無機フィラーの組合せに応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度を示す説明図である。
【図6】サンプル4の組成を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】サンプル6の組成を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】サンプル7の組成を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】無機フィラーとしての酸化スラグを示す電子顕微鏡写真である。
【図10】廃合成樹脂材と無機フィラーの組合せに応じた廃複合樹脂組成物の曲げ強度を示す説明図である。
【図11】サンプル9の組成を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】サンプル13の組成を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】廃合成樹脂材に相溶化剤を添加した実施例4に係る廃複合樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。
【図14】廃合成樹脂材に相溶化剤を添加した実施例6に係る廃複合樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低相溶化性の少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融した後に、所望の形状に成形して廃複合樹脂組成物を生成する方法において、
1.少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材にオレフィン系相溶化剤を添加する、
2.オレフィン系相溶化剤が添加されて高相溶化された少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融する、
上記1及び2からなる廃複合樹脂組成物の改質方法。
【請求項2】
低相溶化性の少なくとも2種類のオレフィン系廃合成樹脂材を撹拌混練しながら加熱溶融した後に、所望の形状に成形して廃複合樹脂組成物を生成する方法において、
1.上記2種類のオレフィン系廃合成樹脂材に廃無機フィラーを30wt%〜80wt%の割合で混合して混合物を生成する、
2.上記混合物にオレフィン系相溶化剤を添加する、
3.オレフィン系相溶化剤が添加された混合物を撹拌混練しながら加熱溶融し、オレフィン系廃合成樹脂材相互を高相溶化すると共にオレフィン系廃合成樹脂材と廃無機フィラーの界面強度及び親和性を高める、
上記1乃至3からなる廃複合樹脂組成物の改質方法。
【請求項3】
請求項1及び2のオレフィン系廃合成樹脂材は、PE樹脂(ポリ・エチレン)、PP樹脂(ポリ・プロピレン)等及び少量の熱可塑性樹脂等を含む各種オレフィン系合成樹脂の少なくとも2種類とした廃複合樹脂組成物の改質方法。
【請求項4】
請求項1及び2のオレフィン系相溶化剤は、オレフィン系水添エラストマー樹脂とした廃複合樹脂組成物の改質方法。
【請求項5】
請求項1及び2のオレフィン系相溶化剤は、オレフィン系樹脂に酸構造の官能基を有したポリオレフィン系接着性樹脂とした廃複合樹脂組成物の改質方法。
【請求項6】
請求項1及び2において、成形された廃複合樹脂組成物の曲げ強度を、異なる種類のオレフィン系廃合成樹脂材を約1:1とした際の曲げ強度を基準とし、該基準値以上である廃複合樹脂組成物の改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−184534(P2008−184534A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19146(P2007−19146)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(504158711)八洲建設株式会社 (6)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】