説明

廃電化製品のリサイクル処理方法および破砕物分別装置

【課題】本発明は、廃電化製品から主要部品を手作業で解体した後、一括破砕して生じる破砕物から、樹脂を選別する工程の前工程にて電線を除去することにより、回収された樹脂に混在する電線の量を抑制することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の特徴は、破砕物分別装置1に傾斜を設け、更に、この破砕物分別装置1の上方に設けた選別具9の掻出棒12を弾性力を有する部材で構成し、電線16を掻き出すというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線または絶縁紙と、樹脂とを用いた電化製品を再資源化する場合に、電線または絶縁紙を除去するためのリサイクル処理方法と破砕物分別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃電化製品を再資源化する技術はいろいろなものが提案されている。
【0003】
主な方法としては、廃電化製品からその品目に応じて特別な対応が必要な特定部品(例えば、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサーやテレビのブラウン管など)を手作業で解体し、残った部分については筐体ごと一括破砕するというものがある。
【0004】
その後、この一括破砕したものは、選別したい材料に応じて篩選別機、磁力選別機や風力選別機などを活用して選別回収している。
【0005】
今日、有用な再資源である樹脂の回収率を向上するために更なる改善が望まれる分野として、樹脂と電線との選別方法がある。
【0006】
従来の樹脂の選別方法として、鉄や非鉄金属などの重量物を前述した手段を用いて選別した後に、破砕した樹脂片と混在する破砕(破断)した電線の形状に注目して樹脂と電線とを選別するというものがある。
【0007】
その一例として、特許文献1を示す。
【0008】
特許文献1には、破砕物を選別するためのテーブルと、このテーブルに振動を付与するための振動付与手段と、このテーブルに対して空気を供給する空気供給手段からなる被覆銅線(本願でいう「電線」)分離装置なるものが記載されている。
【0009】
前述したテーブルには特有の傾斜が付けられており、このテーブル上に破砕物を載せて前述した振動付与手段を所定の方向に振動させると、この振動付与手段の振動方向とは略直行した方向に破砕物が移動することが記載されている。
【0010】
さらにテーブル面には、空気供給手段から供給された空気が吹き出す空気吹き出し孔が設けられている。
【0011】
特許文献1は、破砕されたプラスチック(本願でいう「樹脂」)と被覆銅線の形状とが、各々平たい形状と線状の形状とをなすことに着目し、前述した構成の被覆銅線分離装置、具体的には、特有の傾斜と空気吹き出し孔との組合せにより、テーブル面の一方から被覆銅線、他方からプラスチック(本願でいう「樹脂」)を回収できるというものである。
【0012】
また、他の例として、特許文献2を示す。
【0013】
特許文献2には、被分別物を振動させつつ入り側から出側に移動させる第1の搬送面と、この第1の搬送面に形成され、幅が分別対象物の径より大きい隙間と、前記第1の搬送面の下方に前記隙間から落ちた分別対処物を振動させつつ出側に移動させる第2の搬送面とを有する振動分別装置なるものが記載されている。
【0014】
特許文献2は、破砕片(本願でいう「樹脂」)に含まれる線類(本願でいう「電線」)の径が比較的狭い範囲に限定できることに着目し、前述したごとく搬送面を2つ設け、線類を前記第2の搬送面にて回収するというものである。
【特許文献1】特開2003−320311号公報
【特許文献2】特開2001−205193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の分離装置を用いた場合、破砕物からの電線と樹脂との選別度合いは、テーブルの大きさに影響されることになる。
【0016】
すなわち、選別度合いを向上させるためには、大きなテーブルが必要となる。
【0017】
ところが、リサイクル施設にて分離装置を設置するスペースには限りがあり、大きなテーブルを設置できない場合、電線と樹脂との選別度合いには、大きな期待が持てないという課題があった。
【0018】
また、特許文献2に記載の振動分別装置を用いた場合、本来、第1の搬送面にて搬送したい樹脂が、加えた振動により、第1の搬送面に設けた隙間に入り込むことになり、その結果、第1の搬送面の出側で回収できずに、電線などと同じ第2の搬送面の出側にて回収されることになるという課題を有していた。
【0019】
しかも特許文献2に記載の振動分別装置は、特許文献2中の図1に示すように、分別した樹脂と電線とが前後して排出する構造となっているため、折角分別した樹脂と電線とが、出側にて再度混合してしまうという課題を有していた。
【0020】
本発明は、上記課題を解決するものであり、広い設置面積を必要とすることなく、少なくとも樹脂と電線とを含む破砕物から掻き出した電線が、再度破砕物に混入することを防止することにより、再資源化できる樹脂の純度を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の廃電化製品のリサイクル処理方法は、この樹脂回収工程は、破砕物から少なくとも樹脂を選別、回収する樹脂選別手段と、この樹脂選別手段に破砕物を供給する破砕物分別手段とからなり、破砕物分別手段は、樹脂選別手段に対して供給する破砕物の量を定量供給とするとともに、弾性力を有する掻出棒を用いて破砕物から電線を掻き出して精製破砕物となした後、樹脂選別手段に対して精製破砕物を供給するというものである。
【0022】
また本発明の破砕物分別装置は、載置側にて載置された少なくとも電線と樹脂とを含む破砕物を載置側から排出側へと搬送する載置面と、この載置面上に設けられる所定の高さを有する桟と、載置面が破砕物を搬送するための駆動力を供給する駆動力供給手段とを備える破砕物搬送手段と、載置面から所定の高さの位置に、載置面と平行で、かつ、桟の長手方向に軸心を配した回転軸と、この回転軸の側面に弾性力を有する掻出棒を設けた選別具とを設けるというものである。
【0023】
本構成により、載置面と桟とで構成された空間には、定量の破砕物が載置されることになり、掻出棒がこの破砕物中に進入してきた際には、桟の反力にて破砕物の拡散を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、掻出棒が破砕物中に進入してきた際に、桟の反力を用いることで破砕物の拡散を防止することができる。しかも、破砕されて小片になった樹脂が、桟を越えるほどには掻出棒に絡むことがないので、載置面と桟とで構成される空間に残ることになる。
【0025】
一方、破砕されて例えば、くの字状などに曲げられた電線は、掻出棒に絡むことで桟を越えるため、破砕物中から電線を除去することが可能となる。
【0026】
その結果、再資源としての樹脂の純度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態は、この樹脂回収工程は、破砕物から少なくとも樹脂を選別、回収する樹脂選別手段と、この樹脂選別手段に破砕物を供給する破砕分別給手段とからなり、破砕物分別手段は、樹脂選別手段に対して供給する破砕物の量を定量供給とするとともに、弾性力を有する掻出棒を用いて破砕物から電線を掻き出して精製破砕物となした後、樹脂選別手段に対して精製破砕物を供給するというものである。
【0028】
このような廃電化製品のリサイクル方法を用いれば、樹脂選別手段に投入する破砕物量が定量となるため、樹脂選別手段の主要な要素、例えば、風力選別機であれば風力、あるいは、篩選別機であれば、篩を行う速度などを投入する破砕物量に適した設定値とすることが可能となるので、樹脂選別手段を最適な能力で使用することができる。
【0029】
しかも、樹脂選別手段に破砕物を投入する前に、掻出棒にて電線を掻き出すことで、破砕物に含まれる電線の量を低減することが可能となり、このような電線が低減した精製破砕物を樹脂選別手段に投入することで、選別回収される樹脂に電線が混入する割合を低減することができる。
【0030】
また本発明の実施の形態は、載置側にて載置された少なくとも電線と樹脂とを含む破砕物を載置側から排出側へと搬送する載置面と、この載置面上に設けられる所定の高さを有する桟と、載置面が破砕物を搬送するための駆動力を供給する駆動力供給手段とを備える破砕物搬送手段と、載置面から所定の高さの位置に、載置面と平行で、かつ、桟の長手方向に軸心を配した回転軸と、この回転軸の側面に弾性力を有する掻出棒を設けた選別具とを設けるというものである。
【0031】
このような破砕物選別装置を用いれば、載置面と桟とで構成された空間には、定量の破砕物が載置されることになり、掻出棒がこの破砕物中に進入してきた際には、桟の反力にて破砕物の拡散を防止することができる。
【0032】
その結果、掻出棒が破砕物中に進入してきた際に、破砕されて小片になった樹脂は、桟を越えるほどには掻出棒に絡むことがないので、載置面と桟とで構成される空間に残される。
【0033】
一方、破砕されて例えば、くの字状などに曲げられた電線は、掻出棒に絡むことで桟を越えるため、破砕物中から電線を除去することが可能となる。
【0034】
また、本発明の実施の形態は、特に、載置面を、載置側よりも排出側のほうが高くなるように傾斜させるとともに、桟の長手方向を、載置面が破砕物を搬送する進行方向に対して略直行する方向に設けるというものである。
【0035】
このような破砕物分別装置を用いれば、桟と載置面とで構成される空間に存在する破砕物の量が安定するうえ、掻き出した電線を載置面の下方、すなわち載置側へ掻き出すことができる。
【0036】
つまり、一度掻き出した電線が、排出側へ向かう精製破砕物に混入することがなくなるため、電線の除去率を向上させるとともに、樹脂中に存在する不純物の割合を低下させることができるので、樹脂の純度が向上する。
【0037】
よって、再資源として使用される樹脂の品質が向上する一方、樹脂の純度が低いために再利用されずに廃棄されていた樹脂の量を低減することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施の形態は、特に掻出棒として、少なくとも一部に樹脂チューブを用いるというものである。
【0039】
このような掻出棒を用いれば、掻出棒が有する適度な弾力により、破砕物中から電線を除去する適度な力を得ることが可能となり、破砕物に埋もれた電線をより多く掻き出すことができる。
【0040】
よって、より破砕物から電線を除去することが可能となり、樹脂選別手段に投入する精製破砕物内の電線混入度合いを抑制することが可能となる。
【0041】
その結果、樹脂選別手段から選別回収される樹脂の純度は高くなる。
【0042】
また、本発明の他の実施の形態は、特に掻出棒として、少なくとも一部にコイルばねを用いるというものである。
【0043】
このような掻出棒を用いれば、掻出棒が有する適度な弾力を維持したまま、樹脂チューブに比べてその断面積を小さくすることが可能となるとともに、折り曲げに対する耐久性を向上することが可能となる。
【0044】
すなわち、掻出棒の断面積を小さくすることで、破砕物中の樹脂に触れる面積を小さくする一方、縮れた電線を掻き出す弾力を確保することが可能となるため、精度よく電線のみを掻き出すことができる。
【0045】
その結果、樹脂選別手段に投入する精製破砕物に混在する電線の量を低減することが可能となり、樹脂選別手段から選別回収される樹脂の純度も高くなる。
【0046】
次に、本発明の他の実施の形態は、特に桟において、桟と掻出棒とが交差する位置に、掻出棒が通り抜ける切欠きを設けるというものである。
【0047】
このような桟を用いれば、破砕物中に混在するモータに使用されている絶縁紙を掻出棒が切欠きから掻き出すことが可能となる。
【0048】
その結果、回収される樹脂中に混在する電線および絶縁紙を除去することが可能となり、より再資源としての樹脂の純度が向上する。
【0049】
また、本発明の他の実施の形態は、回転軸を回動させるための動力を、破砕物搬送手段を駆動する動力から駆動力伝達部を介して得るというものである。
【0050】
このような構成とすれば、破砕物搬送手段と回転軸が連動して動作するため、無理な力を桟に加えることなく破砕物から電線を抽出することができる。
【0051】
その結果、選別具、および破砕物搬送手段ともに不要な外力が加わることがないため、機器としての寿命を縮めることがなくなる。
【0052】
しかも、動力源がひとつで済むため、破砕物分別装置を設置する際の自由度が増し、設備のレイアウト変更が容易となる。
【0053】
なお、ここでいう電線とは、被覆を有する被覆銅線とモータの巻き線に用いられる裸銅線、双方を意図している。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0055】
(実施例1)
まず、図1に本発明の樹脂回収工程を実現する樹脂分別装置1と樹脂選別手段21の外観斜視図を示す。
【0056】
図中2は、破砕物搬送手段の一例であるベルトコンベヤである。ベルトコンベヤ2の両端には、ローラー3を設けてあり、駆動力供給手段であるモータ(図示せず)などから得た駆動力により、載置面4aを構成するベルト4が動作することになる。
【0057】
次に、図中5は、少なくとも樹脂と電線とを含む破砕物6をベルトコンベヤ2に載せるための載置部(載置側)である。
【0058】
なお、破砕物6は、前工程までで少なくとも鉄、銅、アルミの除去工程を経ており、現在の状態としては、電線、樹脂を主成分として微小な金属くずや埃などが混在している。
【0059】
また、ベルトコンベヤ2のベルト4には、図に示すように、所定の間隔で桟7が設けてある。
【0060】
このようなベルトコンベヤ2の載置部5へ破砕物6を投入し、ベルト4が矢印8の方向(載置部5から排出端(排出側)20へと上昇する方向)に移動するようローラー3を回動する。
【0061】
このとき、図1中、要部拡大断面図に示すように、傾斜を有して配されたベルトコンベヤの桟7と載置面4aとで取り出せる破砕物6の量は、ベルト4と載置部5出口高さH、及び桟7の高さから定まり、常に定量を搬送することになる。
【0062】
やがて、ベルトコンベヤ2上に載置された破砕物6は、ベルトコンベヤ2のベルト4の上方に設けた選別具9に近づいていく。
【0063】
ここで、図2を用いて、選別具9について説明する。
【0064】
図2(a)は選別具9の正面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【0065】
図に示すように、選別具9は、回転軸10の側面11に掻出棒12を多数設けた形状となっている。掻出棒12は、金属部12aと弾性力を有する樹脂チューブ12bから成り立っている。
【0066】
本実施例では、樹脂チューブ12bとして塩化ビニルを用いたが、他にポリプロピレンやウレタン、ナイロンなど弾性力を有するものであれば、他のものでも同様の効果を得ることができる。
【0067】
図中、13は、選別具9が回転するための駆動力を回転軸10に伝えるための駆動力伝達部である。
【0068】
本実施例では、図1に示すように、ベルトコンベヤ2のローラー3から駆動力伝達部13へとローラーベルト14を介することで選別具9に対する駆動力を得ている。
【0069】
なお、独自の駆動源を設け、直接、駆動力伝達部13に選別具9への駆動力を発生させてもよい。
【0070】
このような選別具9の動作について、図3から図5を用いて説明する。
【0071】
まず、破砕物6は、上述したように前工程までの選別作業を経た結果、樹脂片15と電線16とを主成分とする状態になっている。
【0072】
また、選別具9とベルトコンベヤ2とは、図中に示す各々の矢印17、18の方向に回動、移動している。
【0073】
従って、ベルト4上の載置面4aと桟7とで構成された空間に対し、適量、定量載せられた破砕物6は、ベルトコンベヤ2が矢印18の方向へと移動することにより、選別具9に設けられた掻出棒12に向かって進むことになる。
【0074】
ここで、図3から図4に掛けて、破砕物6中を掻出棒12が進むときに、桟7が存在することにより、破砕物6は拡散することなく、その反力40により掻出棒12に相対することになる(図4中、要部拡大図)。
【0075】
ところで、破砕物6を詳細に見ると、樹脂片15は樹脂板を破砕した結果、微小薄板となり、電線16は所定長さのものを破砕(切断)した結果、縮れたひも状となっている。
【0076】
その結果、掻出棒12によって掻き出されようとした樹脂片15は、桟7にぶつかりはするものの、桟7を越えることはない。
【0077】
一方、電線16は、掻出棒12に引っ掛かるために、桟7を越えて掻き出される。
【0078】
このとき、掻出棒12が金属部12aだけであれば、掻出棒12としての剛性が高くなり過ぎる。
【0079】
その結果、掻出棒12と桟7とのクリアランスを小さくすれば、破砕物6に突き入れる掻出棒12の深度が浅くなり、掻き出せる電線16の量が少なくなる。
【0080】
一方、掻き出す電線16の量を多くするために、掻出棒12の深度を深くすると、桟7とのクリアランスが大きくなり、掻出棒12が桟7を越える際に、桟7を倒して、不必要に樹脂片15を掻き出したり、場合によっては、桟7に掻出棒12が引掛かり、ベルトコンベヤ2が停止する事態を招く恐れがある。
【0081】
つまり、最適なクリアランスの範囲が狭いために、クリアランスの調整が煩雑になり、機器としての使い勝手が悪いものとなってしまう。
【0082】
ところが、本実施例のように、先端に適度な弾性力を有する塩化ビニル製などの樹脂チューブ12bを設けることで、掻出棒12が破砕物6に突き入れる深度を深くすることができるとともに、掻出棒12が桟7を超える場合、その弾性により、電線16を絡めて掻き出しつつ、桟7を越えることが可能となる。
【0083】
また、クリアランスを調整する場合も、掻出棒12が金属のみの場合よりもその遊びの部分を期待することができるために、機器の使い勝手も向上する。
【0084】
その結果、樹脂片15は桟7から掻き出されることなく、ベルト4とともに排出端20方向へ移動し、電線16は桟7から外へ掻き出されることになる。
【0085】
以上より、図1において、19と示す精製破砕物は、破砕物6から電線(図示せず)を取り出した状態となる。
【0086】
そして、図1に示すように、ベルトコンベヤ2の一端である排出端20から、精製破砕物19は次工程である樹脂選別手段21へと投入される。
【0087】
次工程は、樹脂と他のものとを選別する工程であればよく、出願人は比重差を用いた風力選別装置を用いて樹脂と電線との選別を念入りに行うとともに、細かな金属くずなどをも選別している。
【0088】
特に、上述したような風力選別装置を用いた場合、投入する精製破砕物19が定量であるため、風量を最適値近傍に設定して使用することが可能となる。
【0089】
つまり、風力選別装置に投入される精製破砕物19の量が常に変動することで生じていた選別能力のばらつきを抑制することができる。
【0090】
このように、破砕物6から電線16が混在する割合を低減した精製破砕物19を排出端20から樹脂選別手段21へと供給することで、樹脂選別手段21により選別、回収される樹脂に異物、特に電線が混在する割合が低減可能となるので、樹脂回収物の樹脂純度が向上するため、再資源としての価値が向上する。
【0091】
さらに、ベルトコンベヤ2は載置部5を下方、排出端20を上方とした傾斜を有しているため、選別具9で掻き出された電線16は、載置部5へと掻き出される。
【0092】
その結果、載置部5に掻き出された電線16が集まることになるため、電線16を回収、廃棄する作業が効率よく行える。
【0093】
以上より、純度が低いために有価物と認識されなかった樹脂回収物が、再利用できる再資源と認識されるようになるため、省資源化を促進することが可能となる。
【0094】
また、再利用された樹脂製品の品質も向上する。
【0095】
なお前述した掻出棒12と桟7とのクリアランスは、図6に示すように、ベルト4上の桟7と掻出棒12の先端に設けた樹脂チューブ12bとが重なる長さlのことであり、このクリアランスlと桟7の高さhとを調整することで、排除できる電線の量を増加させることも可能である。
【0096】
ちなみに、出願人が、主に混在している線径φ=0.5〜3mm、長さL=10〜300mmの電線16を排除するための最適条件を検討した結果は、つぎのとおりである(図5中、要部拡大図を参照)。
【0097】
まず、検討した条件を示す。
【0098】
ベルトコンベヤ2の傾斜角度:α=45°~55°
桟7高さ:h=15mm~30mm
ベルトコンベヤ2の速度:v=9m/min~18.5m/min
また、検討した結果、最適条件は以下のとおりである。
【0099】
ベルトコンベヤ2の傾斜角度:α0=55°
桟7高さ:h0=15mm
ベルトコンベヤ2の速度v0:大きな差異なし、低速度の方がやや良
クリアランス:l0=7.5mm(1/2h0)
以下、各々の項目について、説明を行う。
【0100】
1).ベルトコンベヤ2の傾斜角度:αについて
本項目は、ベルトコンベア2に対して選別具9を設置する位置が大きく影響する。
【0101】
すなわち、掻き出した電線16がベルトコンベヤ2上に落下し続けた場合、掻き出した電線16が破砕物6中に混入することになり、再度、選別具9で排除することになる。
【0102】
この再混入する電線16の量が増加した場合、選別具9で排除できる割合に影響することから、所定位置まで掻き出した電線16を飛ばす必要がある。
【0103】
出願人が用いた破砕物分別装置では、電線16を飛ばす距離を設置部5までとしたため、最適な傾斜角度α0は55°となった。
【0104】
なお、上述したように、出願人が評価した破砕物分別装置よりも選別具9を低い位置に設けた場合、この傾斜角度はより水平に近い角度にすることは可能である。
【0105】
2).桟7高さ:hについて
桟7高さhは、低すぎると桟7と載置面4aとで構成する空間が小さくなり、1度で処理できる破砕物6の量が低下する。また、掻き出したくない樹脂片15が、桟7をこぼれ易くなる。
【0106】
また、桟7高さhが、高すぎた場合、破砕物6に突き刺せる掻出棒12の深さにも限りがあることから、破砕物6中に残る電線16量が増加することになる。さらに、掻き出す電線16が桟7に引っ掛かり、電線16が桟7を越えない、という事態になる。
【0107】
出願人が評価した結果では、h0=15mmが適当であった。
【0108】
3).コンベヤ速さ:vについて
出願人が評価した範囲では、大きな差異は見られなかった。なお、傾向としては、低速のほうがやや良化する傾向にあった。
【0109】
4).クリアランス:lについて
出願人が、評価した結果は、1/2hが最適であった。
【0110】
すなわち、
l<1/2hの場合、電線15が破砕物6表面から飛び出している割合に左右されることとなった。すなわち、破砕物6表面から飛び出している電線16の量が多ければ、ある程度の電線16の掻き出しは可能であるが、破砕物6表面から飛び出している電線16の量が少なければ、あまり電線16を掻き出すことができなかった。
【0111】
l=1/2hの場合、破砕物6表面から飛び出した電線16量に関わらず、安定した量の電線16を掻き出すことができた。
【0112】
l>1/2hの場合、掻き出す電線16量は増加したが、桟7からこぼれる樹脂片15の量も増加した。その結果、回収すべき樹脂量の低下を招くことになってしまった。
【0113】
以上の結果から、出願人の評価ではl0=1/2h=7.5mmが最適な値であった。
【0114】
なお、上述した数値は、出願人が評価した装置についての最適値であり、他の装置、使用状況であれば、これらの数値以外でも同様の効果を得ることができるのはいうまでもない。
【0115】
また、図7に示すように、掻出棒12の先端部には、樹脂チューブ12bに代わって、弾性力を得る手段としてコイルバネを用いたスプリング棒12cを用いてもよい。
【0116】
図示したスプリング棒12cを用いた場合、破砕物6と掻出棒12との接触面積が小さくなるため、破砕物6中を進む掻出棒12に対する摩擦抵抗が小さくなるため、掻出棒12が電線16を絡めた場合の掻き出し具合が向上する。
【0117】
しかも、樹脂チューブ12bに比べて、材料的な要因である経年変化による弾性力の低下を招くこともなく、折り曲げに関する耐久性が向上する。
【0118】
さらに、スプリング棒の他の実施例として、図8に示すような先端形状をしたものを用いてもよい。
【0119】
すなわち、図8に示すスプリング棒12d、12eを用いた場合、上記スプリング棒12cの効果に加え、先端部がL字状、T字状となっている分、電線16を引っ掛けやすくなるので、より電線を掻き出すことが可能となる。
【0120】
(実施例2)
次に、他の実施例について、図面を用いて説明する。
【0121】
なお、実施例1で説明したものと同一のものについては、同一の符号を付すことで、説明を援用する。
【0122】
実施例2は、図9に示すように、載置口5aと電線回収箱41とを設けるというものである。
【0123】
すなわち、実施例1の場合、破砕物6を適宜投入するような用い方をする場合、例えば、1ロットごとに破砕物6を投入するなど、載置部5に溜まった電線16を排除できる場合にはなんら支障はない。
【0124】
しかしながら、本工程を含む全工程の稼働率を上げるために、常時、破砕物分別装置1が動作している状況で載置部5に溜まった電線16を回収するには、作業者が回動部に巻き込まれる恐れが生じることになる。
【0125】
よって、このような危険な作業状態を生じないためには、破砕物分別装置1に隣接する位置に電線回収箱41を設け、この電線回収箱41まで選別具9が掻き出した電線16を飛ばすように諸条件を調整してやればよい。
【0126】
しかも、図示するように、ベルトコンベヤ2に破砕物6を供給する載置口5aを設ければ、掻き出した電線16の破砕物6への再混入をより防止することができる。
【0127】
なお、図10に示すように、ベルトコンベヤ2を覆うように遮蔽板42を設ければ、掻き出した電線16が破砕物6に再混入することをほぼ抑制することが可能となる。
【0128】
(実施例3)
次の実施例は、図11を用いて説明する。
【0129】
図から明らかなように、本実施例は、載置面4a上に設ける桟7、及び選別具9の取り付け角度を調整し、選別具9から掻き出した電線16を、ベルトコンベヤ2の側面に設置した電線回収箱41に回収しようとするものである。
【0130】
本実施例を用いれば、常時、破砕物分別装置1aが稼動中であっても、安全に掻き出した電線16を処理することができる。
【0131】
また、図に示すように選別具9を駆動する駆動力は、図示しない駆動源を設けることにより、ベルトコンベヤ2のローラー3から得る必要がなくなる。
【0132】
さらに、図12に示すように、実施例1にて使用したものと同様、ベルトコンベヤ2に設ける桟7の方向を進行方向(矢印8)に対して長手方向が直行するように配置し、選別具9の回転軸(図示せず)をベルトコンベヤ2の進行方向に対して斜めとなる方向に配置してもよい。
【0133】
このような、破砕物分別装置1bを用いた場合、各桟7間にて定量搬送されている破砕物6に対して、選別具9に設けられた掻出棒12が、斜めに切り込むことになる。
【0134】
すなわち、図1や図11に示した破砕物分別装置1、1aよりも破砕物6中を移動する掻出棒12の移動距離が長くなり、かつ、その方向が斜め方向のため、破砕物6中の電線16をより引っ掛ける可能性が高くなる。
【0135】
その結果、図11に示した実施例と同様に、安全に電線16を処理することが可能となるだけでなく、掻き出す電線16量を向上させることが可能となる。
【0136】
(実施例4)
次に、他の実施例について、図面を用いて説明する。
【0137】
図13に示すように、桟30にスリット31を設けるというものである。
【0138】
以下、図14から図16を用いて、選別具9aの動作とともに説明する。
【0139】
図に示すように、破砕物32には、樹脂片15と電線16に加え、モータに使用される絶縁紙33が混在している場合がある。
【0140】
絶縁紙33は、樹脂片15と同様、微小紙片に裁断された状態にあり、電線16のように柔軟性も有するため、図14から図15に掛けて掻出棒12が破砕物32中を通る際に電線16とともにスプリング棒12cに絡むことになる。
【0141】
ところが、絶縁紙33は電線16ほどにはスプリング棒12cに絡まないため、スプリング棒12cが従来の桟7を超える場合に、絶縁紙33を放出することになり、桟7から掻き出すに至らないという課題があった。
【0142】
従って、実施例1にて説明した桟7のごとく、スリットがない状態では、折角掻出棒12に絡んだ絶縁紙が、桟7で擦り落とされることになり、次工程である樹脂選別手段21で回収される樹脂に混入することがあった。
【0143】
しかしながら、図13に示すスリット31を設けることで、スプリング棒12cが有する弾性力と、絶縁紙33を掻き出すための保持力とのバランスが確保されることとなる。
【0144】
その結果、掻出棒12の先端のスプリング棒12cに絡んだ絶縁紙33は、スリット31から掻き出されるため、図15から図16へと進んだ状態の精製破砕物35からは電線16と絶縁紙33とが排除された状態となる。
【0145】
このような精製破砕物35を実施例1同様、ベルトコンベヤ2の排出端20を介して樹脂選別手段21に供給すれば、実施例1よりもさらに絶縁紙33が混入することを抑制することができる。
【0146】
その結果、樹脂選別手段21を経て回収される樹脂の純度は更に向上することとなり、より有価物としての位置付けが上昇する。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、廃家電製品のみならず、廃OA製品や廃自動車などのように、少なくとも樹脂と電線とが混在する破砕物中から、電線を除去する工程に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の一実施例における樹脂分別装置と樹脂選別手段の外観斜視図
【図2】本発明の一実施例における選別具の外観図
【図3】本発明の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【図4】本発明の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【図5】本発明の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【図6】本発明の一実施例における掻出棒と桟との位置関係を示す要部拡大図
【図7】本発明の他の一実施例における選別具の外観図
【図8】本発明の他の一実施例における掻出棒12の正面図
【図9】本発明の実施例2における樹脂分別装置と樹脂選別手段の外観斜視図
【図10】本発明の実施例2における他の樹脂分別装置と樹脂選別手段の外観斜視図
【図11】本発明の実施例3における樹脂分別装置と樹脂選別手段の外観斜視図
【図12】本発明の実施例3における他の樹脂分別装置と樹脂選別手段の外観斜視図
【図13】本発明の他の一実施例における掻出棒と桟とスリットの位置関係を示す要部拡大図
【図14】本発明の他の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【図15】本発明の他の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【図16】本発明の他の一実施例における電線除去の動作を説明する説明図
【符号の説明】
【0149】
1,1a,1b 破砕物分別装置
2 破砕物搬送手段(ベルトコンベヤ)
4a 載置面
5 載置部(載置側)
6,32 破砕物
7,30 桟
9,9a 選別具
10 回転軸
11 側面
12 掻出棒
12b 樹脂チューブ
12c,12d,12e スプリング棒
13 駆動力伝達部
15 樹脂(樹脂片)
16 電線
19 精製破砕物
20 排出端
21 樹脂選別手段
31 切欠き(スリット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電線と樹脂とを含む破砕物から樹脂を選別、回収する樹脂回収工程であって、この樹脂回収工程は、前記破砕物から少なくとも前記樹脂を選別、回収する樹脂選別手段と、この樹脂選別手段に前記破砕物を供給する破砕物分別手段とからなり、前記破砕物分別手段は、前記樹脂選別手段に対して供給する前記破砕物の量を定量供給とするとともに、弾性力を有する掻出棒を用いて前記破砕物から電線を掻き出して精製破砕物となした後、前記樹脂選別手段に対して前記精製破砕物を供給することを特徴とする廃電化製品のリサイクル処理方法。
【請求項2】
載置側にて載置された少なくとも電線と樹脂とを含む破砕物を前記載置側から排出側へと搬送する載置面と、この載置面上に設けられる所定の高さを有する桟と、前記載置面が前記破砕物を搬送するための駆動力を供給する駆動力供給手段とを備える破砕物搬送手段と、前記載置面から所定の高さの位置に、前記載置面と平行で、かつ、前記桟の長手方向に軸心を配した回転軸と、この回転軸の側面に弾性力を有する掻出棒を設けた選別具とを設けたことを特徴とする破砕物分別装置。
【請求項3】
前記載置面を、前記載置側よりも前記排出側のほうが高くなるように傾斜させるとともに、前記桟の長手方向を、前記載置面が前記破砕物を搬送する進行方向に対して略直行する方向としたことを特徴とする請求項2に記載の破砕物分別装置。
【請求項4】
前記掻出棒は、少なくとも一部に樹脂チューブを用いたことを特徴とする請求項2または3に記載の破砕物分別装置。
【請求項5】
前記掻出棒は、少なくとも一部にコイルばねを用いたことを特徴とする請求項2または3に記載の破砕物分別装置。
【請求項6】
前記桟において、前記桟と前記掻出棒とが交差する位置に、前記掻出棒が通り抜ける切欠きを設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の破砕物分別装置。
【請求項7】
前記回転軸を回動させるための動力は、前記破砕物搬送手段を駆動する駆動力供給手段から駆動力伝達部を介して伝達されることを特徴とする請求項2または3に記載の破砕物分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−313398(P2007−313398A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143827(P2006−143827)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】