説明

延伸された芯鞘型フィラメント

本発明は、中空フィラメント、光学用フィラメント、コンジュゲートフィラメント等の芯鞘型フィラメントを、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で、極細の芯鞘型フィラメントを連続的に安定して製造可能にすることにあり、芯鞘型フィラメントの送出手段により送り出された原芯鞘型フィラメントが、赤外線光束で加熱され、その加熱された芯鞘型フィラメントが、自己の自重により与えられる張力または1MPa以下の張力により、100倍以上に延伸されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法およびその製造装置に関し、特にそれらの簡便な延伸手段によって得られる100倍以上の高倍率で延伸された極細中空フィラメント、極細光学用フィラメント、極細コンジュゲートフィラメント等の極細芯鞘型フィラメントに関する。
【背景技術】
極細フィラメントは、人工皮革やワイピングクロス、フィルターなど、種々の用途で使用されている。しかし、高度に分子配向したフィラメントで、繊維径が5ミクロンメータ以下という高度の品質を備えた極細フィラメントの製造には、海島構造紡糸(例えば、特開平7−258940号)や分割繊維(例えば、特開2002−220740)による紡糸といった、特殊で複雑な紡糸法が用いられ、コストも高く、汎用繊維に用いて簡便に延伸できるには至っていなかった。
高強度、高弾性率繊維を得るための繊維の延伸手段として、本発明人らによるゾーン延伸法があるが(特公昭60−24852号)、ゾーン延伸で細いフィラメントを安定して生産するには、さらなる要件があることが望ましい。
また、繊維の分野における極細化の要請は、より高機能、高性能を有する繊維にまで及んでいる。しかし、従来の極細繊維を得る手段では、装置がますます複雑・緻密になり、コスト高になるため、運転も安定して製造することが困難になってきており、また、高機能繊維は、多品種少量生産されることが多いので、従来の極細繊維の製造法は、高機能繊維の製造にはマッチングしておらず、より簡便に高品質の高機能繊維の製造手段が求められていた。そこで、高機能繊維の代表的な存在である芯鞘型フィラメントの極細フィラメントにおいても、簡便な手段が求められていた。
一方、本発明は赤外線加熱によるフィラメントの延伸技術に関するものであるが、それらに関する技術は、従来より種々行われていた(例えば、特開2003−166115、国際公開第00/73556号パンフレット、鈴木章泰、他1名「Journal of Applied Polymer Science」、vol.83、p.1711−1716、2002年、鈴木章泰、他1名 高分子学会予稿集、高分子学会2001年5月7日、50巻4号、p787、鈴木章泰、他1名「Journal of Applied Polymer Science」、vol.88、p.3279−3283、2003年、鈴木章泰、他1名「Journal of Applied Polymer Science」、vol.90、p.1955−1958、2003年)。本発明は、これらの技術をさらに改良し、芯鞘型フィラメントに有効に適応できるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術をさらに発展させたものであって、その目的とするところは、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易に極細芯鞘型フィラメントを得ることにある。また他の目的は、中空フィラメント、光学用フィラメント、コンジュゲートフィラメントなどの芯鞘型フィラメントを、高品質でフィラメント径細く安定して製造可能とすることにある。さらに他の目的は、延伸された極細中空フィラメントや延伸された極細光学用フィラメント等の延伸さられた部分と、未延伸の原フィラメントが一体的につながっている芯鞘型フィラメントを提供することにある。さらに他の目的は、極細中空フィラメントや極細コンジュゲートフィラメント等の芯鞘型フィラメントからなる長繊維不織布を製造可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであって、その製造方法としての特徴を、次に示す。本発明は、原芯鞘型フィラメントが、10Mpa以下の張力を与えられ、赤外線光束で加熱されることにより、100倍以上の延伸倍率に延伸される延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記張力が、原芯鞘型フィラメントの自己の自重により与えられる張力である、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記赤外線光束が、原芯鞘型フィラメントの中心で、そのフィラメントの軸方向に上下4mm以内に照射され、かつ、少なくとも2方向以上からの照射である、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記赤外線光束が、レーザーである、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記原芯鞘型フィラメントが、送風管により送られて、前記赤外線光束へ導かれる、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記原芯鞘型フィラメントが、赤外線光束で加熱される前に、その原芯鞘型フィラメントの位置を規制する案内具が設けられている、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記延伸過程で、赤外線照射が停止され、延伸されたフィラメントに原芯鞘型フィラメントが接続された状態の製品が取り出されることにより、原芯鞘型フィラメントが接続している延伸された芯鞘型フィラメントを得る、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、その後に設けられた加熱ゾーンにより熱処理される、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、さらに延伸される、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントの複数本が、同時に繰り出されてさらに延伸され、一体的に巻き取られる、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法に関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、走行するコンベア上に集積される、延伸された芯鞘型フィラメントからなる不織布の製造方法に関する。さらに本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法において、前記原フィラメントが自重によってもたらされる張力により延伸され、その後、所定の引き取り速度で延伸されていく、延伸された芯鞘型フィラメントの延伸立ち上げ方法に関する。
また本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであって、その製造装置としての特徴を、次に示す。本発明は、芯鞘型フィラメントからなる原フィラメントの送出手段と、送り出された原フィラメントに対して、複数箇所から赤外線光束が照射されることによって、原フィラメントの中心でその原フィラメントの軸方向に上下4mm以内に加熱されるように構成されている赤外線加熱装置と、その加熱された原フィラメントが、10MPa以下の張力が与えられることにより、100倍以上に延伸されるように制御する手段を有する、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記赤外線光束が、レーザー発振装置によって放射されるレーザーである、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記赤外線光束の複数箇所からの放射手段が、一方向から照射される光束を、鏡を用いて反射されたものである、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記赤外線光束の複数箇所からの放射手段が、複数の赤外線光束放射装置からの光束である、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記レーザー光のパワー密度が、10W/cm以上である炭酸ガスレーザーである、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記原芯鞘型フィラメントが、前記赤外線光束で加熱される前に、その原芯鞘型フィラメントの位置を規制する案内具が設けられている、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。また本発明は、前記案内具が、前記原芯鞘型フィラメントの案内位置を微調整できる、位置制御装置を有する、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。さらに本発明は、前記原芯鞘型フィラメントが、前記赤外線光束で加熱される前に、送風管が設けられており、その原芯鞘型フィラメントが該送風管により送られてくるように構成されている、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置に関する。
さらに本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであって、延伸された芯鞘型フィラメントとしての特徴を次に示す。本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、鞘のみからなり、内部が気体である中空フィラメントであり、延伸された中空フィラメントの外径が10μm以下である、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、分割繊維用の中空フィラメントであり、延伸されたその中空フィラメントのタテ方向に多数のクラックを有する、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、その延伸されたフィラメントの壁に多数の微細な孔を有する微多孔膜中空フィラメントである、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、芯成分の光線透過率が85%以上であるポリマーからなり、フィラメント径が30μm以下の光学用フィラメントである、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。また本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントの芯成分が、石英系ガラスまたはフッ化物ガラスであり、フィラメント径が10μm以下の光学用フィラメントである、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。さらに本発明は、前記延伸された芯鞘型フィラメントが、コンジュゲーフィラメントであり、そのコンジュゲートフィラメントの鞘成分が接着性ポリマーからなる、延伸された極細芯鞘型フィラメントに関する。また本発明は、前記原芯鞘型フィラメントと前記延伸された芯鞘型フィラメントとが、接続されている光学用フィラメントである芯鞘型フィラメントに関する。さらに本発明は、前記原芯鞘型フィラメントと前記延伸された芯鞘型フィラメントとが、接続されている中空フィラメントである芯鞘型フィラメントに関する。
本発明は、延伸された芯鞘型フィラメントに関する。フィラメントは実質的に連続した長さを持つ繊維で、短い長さ(数ミリメータから数センチメータ)からなる短繊維とは区別される。芯鞘型とは、フィラメントの断面における表皮部分と内側の芯となる部分で、積極的に構造が異なるようにされたフィラメントをいう。積極的とは、均一な系から紡糸されたフィラメントが、紡糸や延伸の段階で発生するスキン構造などは含まれないことを意味する。
本発明における中空フィラメントは、鞘のみから形成されており、芯は気体からなるものであるが、本発明の芯鞘型フィラメントに含められる。また、レンコン型と呼ばれる、内部に複数の中空部を有する場合も、本発明の芯鞘型フィラメントに含める。
本発明の中空フィラメントには、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の衣料用繊維として使用されるポリマーからなり、軽量、断熱、保温を目的として従来から使用されてきたものであるが、本発明により簡便に極細フィラメントとされることにより、さらに衣料の生地が緻密化し、光沢が増し、印刷性もアップし、防水性も発現できるなど、性能がアップし、高級化、高品質化されることとなる。また、中空フィラメントの他の例として、分割繊維を製造するための、割れ目を多数有する中空糸も含まれる。本発明により簡便に極細フィラメントとされることにより、延伸後分割されて、より微細で、複雑な断面を有する繊維が製造できるからである。さらに本発明には、中空糸膜(微多孔膜中空繊維)と呼ばれる壁に小さな(数十オングストロームから数ミクロンメータ)孔を多数有する中空フィラメント(微多孔中空フィラメント)も含まれる。微多孔中空フィラメントは、本発明により延伸されることにより、簡便に極細フィラメントとされ、さらに延伸されることにより膜の厚みが薄くなり、分離効率が上がり、また、延伸により孔の形状が細長くなり、より孔が微細となり、さらに繊細な分離を可能となり、気体分離膜等として性能が向上する。
光学用フィラメントは、光線透過性の高い材質からなる芯(コアー)と、その芯よりも屈折率の小さな材質からなる鞘(グラッド)からなり、芯鞘構造のフィラメントである。光学用フィラメントには、有機系と無機系があるが、本発明はそれらの両方が含まれる。本発明の光学用フィラメントは、光線透過率が85%以上、好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上である。鞘成分は、芯成分より光線透過率の小さいものが使用される。なお、この光線透過率は、200μmを含む可視光領域で測定される。
本発明の光学用フィラメントは、光をフィラメント内部に透過させるための細く長い線であり、通常、光ファイバーや光導波路とも云われる。光学用フィラメントは、通常、光透過性の高い材質からなる芯(コアー)と、その芯よりも屈折率の小さな材質からなる鞘(グラッド)からなる芯鞘構造のフィラメントである。また、芯鞘構造には、芯と鞘が明確に分かれており、光が芯と鞘の界面で反射しながら進行するステップインデックスタイプと、フィラメントの中心部が最も屈折率が高く、周辺部に向かって徐々に屈折率が低くなっており、そのため外に出ようとする光は、中央部に集められながら進行するグレーテッドインデックスタイプと、コアーの芯部の径が10μmかあるいはそれ以下にすることにより、芯部を中心に光が進行するシングルモードタイプなどがある。本発明は、径の大きなフィラメントから、径の細いフィラメントが容易に製造できるので、ステップインデックスタイプのフィラメントから、シングルモードタイプのフィラメントを製造するのに特に適する。本発明の延伸された光学用フィラメントは、延伸されて極細化されることにより、イメージセンサーなどにおいて、1点1点の解像度が良くなり、また、繊維束がさらにフレキシブルになり、また、繊維束が薄いフラットになり、装置をコンパクトにすることが可能となる。
本発明の延伸された光学用フィラメントの芯成分は、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリトリメチルペンタンから選ばれたポリマーの一種を主成分とすることが好ましい。これらのポリマーは、光線透過性がよく、屈折率が高いからである。主成分とは、50%(重量パーセント、以下同じ)を越える成分、好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上が、これらのポリマーからなるものをいう。また、これらのポリマーを、他の化学種で変性されたものも使用できる。また、光学用フィラメントの鞘成分が、含フッ素ポリマーであることを特徴とする。フッ素系ポリマーは、屈折率が低いので、光学用フィラメントの鞘成分として非常に有効である。含フッ素ポリマーとは、ポリマー中にフッ素原子を、少なくとも2%以上、好ましくは5%以上含まれるものをいう。
また本発明の有機系の光学フィラメントでは、フィラメント径が30μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20μm以下、10μm以下が最も好ましい。従来、このようにフィラメント径の小さい有機系光学フィラメントは製造困難であったが、本発明により、簡便に製造でき、しかも、径の大きな原フィラメントと接続しているフィラメントも製造できることに特徴がある。
本発明の無機系の光学フィラメントとして、芯成分が、石英カラスまたはフッ化物ガラスであることを特徴とする。遠距離通信では、石英ガラスが好ましく、高性能な分野には、フッ化物ガラスがさらに好ましい。
本発明には、コンジュゲート紡糸ダイスから紡糸された種々のコンジュゲートフィラメントも含まれる。コンジュゲートフィラメントとは、複合フィラメント(または複合繊維)とも呼ばれる。本発明のコンジュゲートフィラメントの例として、芯がポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン等の強度メンバーとなるポリマーであり、鞘が変性ポリエステルや変性ポリアミド、または変性ポリオレフィンなど芯層より融点の低いポリマーからなる接着剤層で、接着性を有するフィラメントとなる。また、コンジュゲートフィラメントの他の例として、芯が上記の強度メンバーとなるポリマーで、鞘がポリアミドやポリビニルアルコール系等の吸湿性を有する層からなる吸湿性フィラメントもある。また、コンジュゲートフィラメントには、芯の位置を断面の中心から偏在させ、延伸後に収縮させることにより、捲縮を発生するフィラメントとしても使用される。これらのコンジュゲートフィラメントは、従来から使用されてきたものであるが、本発明により簡便に極細フィラメントとされることにより、さらに性能がアップし、高級化、高品質化されることとなる。
本発明は、原芯鞘型フィラメントを延伸する手段を提供するものである。本発明における、原芯鞘型フィラメントとは、既に芯鞘型フィラメントとして製造されて、ボビン等に巻き取られたものであってもよいし、紡糸過程において、溶融または溶解芯鞘型フィラメントが、冷却や凝固により芯鞘型フィラメントとなったものを、紡糸過程に引き続き使用され、本発明の延伸手段の原料となる芯鞘型フィラメントとして使用してもよい。
本発明の原芯鞘型フィラメントは、赤外線加熱手段(レーザーを含む)により照射される赤外線光束により、延伸適温に加熱される。赤外線は、原芯鞘型フィラメントを加熱するが、延伸適温に加熱される範囲が、原芯鞘型フィラメントの中心で、そのフィラメントの軸方向に上下4mm以内であることが好ましく、さらに好ましくは3mm以下、最も好ましくは2mm以下で加熱される。本発明は、狭い領域で急激に延伸することにより、高度の分子配向を伴った延伸を可能にし、しかも超高倍率延伸であっても、延伸切れを少なくすることができた。なお、この場合の赤外線光束の照射は、複数箇所から照射されることが好ましい。芯鞘型フィラメントにおいて、フィラメントの片側のみからの加熱は、もともと延伸が困難なフィラメントが、非対称加熱により、さらに困難になるからである。原フィラメントが中空フィラメントでは、その断熱性のため、片側加熱では、特に延伸が困難となる。このような複数箇所からの照射は、赤外線光束を鏡によって反射させることにより、複数回、原フィラメントの通路に沿って照射させることによって達成できる。鏡は、固定型ばかりでなく、ポリゴンミラーのように回転するタイプも使用することができる。
また、複数箇所からの照射の別な手段として、複数光源からの光源を原フィラメントに複数箇所から照射する手段がある。比較的小規模のレーザー光源で安定してコストの安いレーザー発信装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができ、本発明の芯鞘型フィラメントは、高ワット密度が必要であることより、この複数光源を使用する方式は有効である。
赤外線は、波長0.78μmから1mmまでとされているが、高分子化合物のC−Cボンドは、3.5μmの吸収を中心としており、0.78μmから20μm程度の近赤外の範囲が特に好ましい。これらの赤外線は、鏡やレンズにより、線状または点状に焦点を絞り、芯鞘型フィラメントの加熱域をフィラメントの軸方向上下4mm以下に絞り込む、スポットヒータやラインヒータと呼ばれる加熱ヒータが使用できる。特に、ラインヒータは、複数本の芯鞘型フィラメントを、同時に加熱する場合に好適である。
本発明の赤外線加熱には、レーザーによる加熱が特に好ましい。中でも、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザーと、1.06μmの波長のYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット系)レーザーが特に好ましい。また、アルゴンレーザーも使用することができる。レーザーは、放射範囲を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。本発明の炭酸ガスレーザーは、パワー密度が10W/cm以上、好ましくは15W/cm以上、さらに好ましくは20W/cm以上、最も好ましくは、30W/cm以上である。狭い延伸領域に高パワー密度のエネルギーを集中することによって、本発明の超高倍率延伸が可能となるからである。なお本発明では、原フィラメントは複数箇所から照射されるが、その場合は、それぞれの方向からのパワー密度が、加算されて示される。
一般に、延伸は芯鞘型フィラメント等を延伸適温に加熱して、それに張力が加わることにより行われる。本発明の延伸における張力は、自己の自重により与えられる張力により延伸されることを特徴とする。これは、一般の延伸が、ローラ間の速度差によって与えられる張力や、巻き取りによる張力によって延伸されることと原理的に異なる。本発明では、加熱部に加わる芯鞘型フィラメントの自重の大きさ(加熱部から自由落下している距離によって定まる)を、自由落下距離を変化させることで、最適の張力を選択することができる。通常のローラ間の延伸では、100倍以上という大きな延伸倍率は、コントロールが困難であるが、本発明では、距離という簡便な手段で、容易にコントロールできるようにしたことに特徴がある。このような自己の重力による張力は、下記に示す10MPa以下の範囲で求められる。
また、本発明における張力は、非常に小さく、10MPa以下、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下、最も好ましくは0.3MPa以下にすることで延伸される。10MPaを越えると、延伸切れが生じ易くなり、高倍率延伸するためには、このような張力範囲にあることが望ましい。このように小さい延伸張力で、延伸倍率が100倍以上、条件によっては1,000倍以上、あるいは10,000倍以上と極端に大きな倍率が実現できる。その理由は、延伸温度が融点前後と、極端に高い温度を維持しつつ、非常に狭い延伸領域で延伸するため、芯鞘型フィラメントの切断を免れて変形できるものと思われる。合成繊維の通常のローラ間延伸では、数10MPaから数100MPaという張力で延伸されていることと、大幅に異なる範囲で延伸されていることに特徴がある。
本発明において、得られた延伸芯鞘型フィラメントの延伸倍率が、100倍以上、好ましくは200倍以上、さらに好ましくは500倍以上、最も好ましくは1,000倍以上の超高倍率で延伸されることを特徴とする。通常の合成繊維の延伸では、3〜7倍であり、PET繊維のスーパードローイングでも10数倍程度である。特に中空繊維や光学用フィラメント、コンジュゲートフィラメント等の機能性繊維では、あまりの高倍率延伸では、その機能を損ねるおそれがあり、本発明のような超高倍率延伸は行われていない。このように超高倍率の延伸を可能にしたのは、非常に狭い領域での延伸を可能にしたことにより、その間の延伸温度を、原芯鞘型フィラメントの融点前後まで上昇することができ、そのために延伸張力が小さくなるが、その小さい延伸張力と超高倍率をコントロールする手段を見いだしたことに本発明の特徴がある。このように超高倍率延伸を可能にしたことにより、フィラメント径が30μm以下、さらには10μm以下、さらに5μm以下といった超極細芯鞘型フィラメントの製造を可能にしたばかりでなく、芯鞘型フィラメント製造の生産速度を数百倍に高めたことにより、生産性の面からも意義がある。
本発明において、赤外線光束によって延伸される延伸開始部において、原芯鞘型フィラメントの径以上の膨張部をもって延伸される場合がある。このような特異な現象は、通常の合成繊維の延伸では、観察されていない。この現象も、延伸温度を原芯鞘型フィラメントの融点前後まで上昇し、狭い領域での延伸を可能にしたことに由来するものと思われる。このように膨張部をもって延伸されることにより、100倍以上、あるいは1,000倍以上、好適な条件では10,000倍以上の延伸を可能にした。
本発明における原芯鞘型フィラメントを赤外線光束で加熱する場合、赤外線光束に対して、原フィラメントが移動することによって、連続した延伸されたフィラメントが形成されていく。その原フィラメントの移動について、本発明は二つの手段を提供する。その一つは、原フィラメントが把持具に保持されており、その把持具の移動装置により、原フィラメントが赤外線光束に対して相対的に移動する方式(バッチ法)である。他の一つは、原フィラメントの送出手段により、原フィラメントが連続的に送り出される方式(連続法)である。
バッチ法は、原フィラメントが把持具に保持されており、その把持具の移動装置により、原フィラメントが赤外線光束に対して相対的に移動する。把持具は、何らかのチャックであってもよいが、移動装置の一部に結びつける場合もある。移動装置は、ラックアンドピニオン方式で移動するクロスヘッドが代表的であるが、単なる回転する螺旋ねじ等であってもよい。また、原フィラメントの移動を容易にするため、滑車等で原フィラメントを案内して、赤外線光束の適切な位置に導くことができる。
本発明の連続法においは、フィラメントの送出手段から送り出された原芯鞘型フィラメントについて延伸が行われる。送出手段は、ニップローラや駆動されたローラ群などの一定の送出速度で、芯鞘型フィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。
バッチ法と連続法の両方において、赤外線光束が原フィラメントに当たる直前で、原フィラメントの位置を規制する案内具を設けることが好ましい。連続法の送風管の出口の形状によって、そのような機能を持たすことも可能であるが、送風管は芯鞘型フィラメントを送る気体の通気や、芯鞘型フィラメントの通し易さに重点を置き、その後に簡便な案内具で芯鞘型フィラメントの位置を規制することが好ましい。案内具は、細い管や溝、コーム、細いバーの組み合わせなどが使用できる。また、上述の滑車も、本発明の案内具の役目も果たすことができる。
この赤外線光束が原フィラメントに当たる直前とは、好ましくは100mm以内、さらに好ましくは50mm以内、20mm以内が最も好ましい。原フィラメントの赤外線光束による加熱は、非常に狭い範囲において加熱されることが特徴で、その狭い範囲の加熱を可能にするために、芯鞘型フィラメントの位置を規制する必要がある。従来の通常の延伸では、延伸張力が大きいので、案内具は必要としないが、本発明では、延伸張力が小さく、延伸倍率が大きいので、延伸点のほんの少しのゆらぎや変動は、延伸の安定性に大きく影響するので、延伸点の直前に案内具を設けることが、延伸の安定性に大きく寄与する。本発明における案内具は、細い管や溝、コーム、細いバーの組み合わせなどが使用できる。
上記案内具においては、案内具の位置を微調整できる位置制御機構を有することが望ましい。レーザービームの狭い領域に、フィラメントの走行位置を正確にフィットさせるためには、案内具をXY方向に位置制御する必要がある。
フィラメントの送出手段により送り出された原芯鞘型フィラメントは、さらに送風管を通して、送風管中を原芯鞘型フィラメントの走行方向に流れる気体によって送られることが望ましい。送風管を流れる気体は、通常、室温の気体が使用されるが、原芯鞘型フィラメントを予熱したい場合は、加熱エアーが使用される。また、原芯鞘型フィラメントが、酸化されるのを防ぐ場合は、窒素ガス等の不活性ガスが使用され、水分の飛散を防ぐ場合は、水蒸気や水分を含む気体が使用される。なお、送風管は、必ずしも筒状である必要がなく、溝状であってもよく、それらの中を気体とともに原芯鞘型フィラメントが流れればよい。管の断面は、円が好ましいが、矩形でもその他の形状でもよい。管を流れる気体は、枝分かれした管の一方より供給してもよく、管が2重になっており、外側の管から内側の管へ、孔などによって供給してもよい。合成繊維のインターレース紡糸やタスラン加工に使用されるフィラメントの空気交絡ノズルも本発明の送風管として使用される。また、本発明における不織布製造のように、自由落下により延伸する場合、本発明の送風管によるエアーの勢いで、フィラメントに延伸張力を与えることもできる。
本発明における芯鞘型フィラメントの延伸においては、複数本の原芯鞘型フィラメントをまとめて、同一赤外線光束中で延伸できることを特徴とする。通常、赤外線光束中で複数本の原フィラメントをまとめて延伸すると、延伸フィラメント間で膠着が生じるが、芯鞘型フィラメントでは、鞘成分の構成により、膠着することなく延伸することができた。例えば、光学用フィラメントの鞘成分が、フッ素系ポリマーである場合などである。また、延伸点直前の案内具により、延伸点での複数のフィラメント間が接触しないようにすることもできる。複数本とは、2本以上、場合によっては、5本以上も延伸することができた。
本発明の延伸された芯鞘型フィラメントは、その後続工程で、ボビンやチーズ等に巻き取られ、ボビン巻やチーズ巻の形態の製品とされる。これらの巻き取りにおいては、延伸された芯鞘型フィラメントは、トラバースされながら巻き取られることが望ましい。トラバースされることにより、均一な巻き上げ形態を確保できるからである。極細芯鞘型フィラメントでは、糸切れや毛羽の発生が最も問題となるが、本発明では、高度に分子配向しているためと、延伸張力が小さいため、小さな巻取張力で巻き取ることが可能となるので、糸切れや毛羽を少なくできることも本発明の特徴である。なお、複数本の原フィラメントを同時に延伸して、同時に巻き取る際には、撚糸機で撚をかけながら巻いて行くこともできるが、本発明はフィラメントの走行速度が速いので、インターレース交絡法によりフィラメント間を交絡して巻き取ることが好ましい。
本発明の延伸工程の後に、加熱ゾーンを有する加熱装置を設け、延伸された芯鞘型フィラメントを熱処理することもできる。加熱は、加熱気体中を通過させたり、赤外線加熱等の輻射加熱、加熱ローラ上を通す、またはそれらの併用などで行うことができる。熱処理は、延伸された芯鞘型フィラメントの熱収縮を小さくしたり、結晶化度を上げ、芯鞘型フィラメントの経時変化を小さくしヤング率を向上させるなど、種々の効果をもたらす。なお、本発明の不織布の場合は、熱処理は、コンベア上で行ってもよい。
本発明の延伸された芯鞘型フィラメントを、さらに延伸した後に巻き取ることもできる。後段階の延伸の手段は、前の段階で行った赤外線による延伸手段を用いることもできるが、前の段階で充分に高倍率延伸されて、既に極細芯鞘型フィラメントが得られている場合は、通常のゴデットローラ等のローラ間延伸や、ピン延伸、ゾーン延伸法などを用いることもできる。
本発明における延伸された芯鞘型フィラメントを、走行するコンベア上に集積することによって、延伸された芯鞘型フィラメントからなる不織布を製造することができる。特に本発明では、中空フィラメントやコンジュゲートフィラメントの極細フィラメントからなる不織布を簡便に製造できることに意義がある。近年、不織布は、単に織物の代替というだけではなく、不織布独特の特性が注目されて、種々の業界で需要が活発化している。その中で、極細繊維の不織布として、メルトブローン不織布があり、溶融フィラメントを熱風で吹き飛ばすことで3μm前後のフィラメントとし、コンベア上に集積して不織布となしたものが、エアーフィルターを中心に使用されている。しかし、このメルトブローン不織布を構成するフィラメントは、0.1cN/dtex前後と、通常の未延伸繊維よりも弱い強度であり、また、ショットまたはダマと呼ばれる樹脂の小さい塊が多数存在する。本発明の延伸された芯鞘型フィラメントからなる不織布は、メルトブローン不織布と同様の3μm前後のフィラメント径を有していながら、芯鞘型フィラメントが高度に分子配向しているので、通常の延伸された合成繊維に近い強度を有している。しかも、ショットやダマを全く含まない不織布とすることができ、さらに中空フィラメントやコンジュゲートフィラメントからなることによって、高機能性を有する不織布となる。
本発明の不織布は、極細フィラメントであることによる緻密な生地や光沢、印刷適正のアップなどの効果に加えて、中空フィラメントからなることにより、軽量、断熱、保温、撥水等の特性、コンジュゲートフィラメントからなることにより、接着性、独特の感触、かさ高性などの性能を持たすことができる。不織布は、通常、何らかの繊維間の交絡を行う必要があるが、本発明ではフィラメント径が非常に小さいので、単位重量あたりの芯鞘型フィラメント数が極端に多くなり、特に交絡工程を設けなくても、メルトブローン不織布同様、芯鞘型フィラメントをコンベア上に集積する際の、コンベア下からの負圧吸引で芯鞘型フィラメントが絡み合い、簡単なプレス程度良い場合も多い。勿論、通常の不織布で行われている、熱エンボスやニードルパンチ、接着剤接合等の手段を用いることもでき、用途によって判断される。極細繊維不織布の大きな用途であるフィルター用途では、不織布をエレクトレット加工することで、捕集効率を桁違いに大きくすることができ、本発明の不織布もエレクトレット加工してフィルター分野に向けることができる。本発明の不織布の製造において、コンベア上に芯鞘型フィラメントを集積させる際、コンベア背面からの負圧を行うが、この負圧によるエアーの吸引によるエアーの流れや、また、積極的にエアーのサッカー等を用いることによるエアーの流れが、芯鞘型フィラメントの延伸における延伸の張力として働く場合もあり、その場合も、本発明の延伸張力に含められる。
本発明の延伸された芯鞘型フィラメントにおいては、未延伸と接続された形態でも提供することができる。この形態のフィラメントは、連続法においても提供できるが、バッチ法において特に好ましい。また、フィラメントの材質としては、光学用フィラメントや微多孔膜中空フィラメントが特に好ましい。光学用フィラメントにおいて、未延伸部と接続されている延伸されたフィラメントとすることにより、広い面積の光を集めて、ピンポイントに強い光を当てることが可能で、光源の光が弱い場合も使用でき、ファイバースコープ等で有用となる。通常、このような場合、集光装置と光学用フィラメントとの間に接続装置が必要となるが、フィラメントが細い場合は、接続が困難であり、また装置費も高い欠点がある。また、延伸された微多孔膜中空フィラメントに未延伸部が接続されている場合、気体等の供給部分は大きく、その部分で簡易に気体等を供給し、それから極細中空微多孔中空フィラメントへ、何らの接続装置を必要とせずに連続して供給できる利点がある。なお、この形態のフィラメントは、延伸中に赤外線照射を停止し、延伸フィラメントに原フィラメントが接続された状態の製品を取り出すことにより、原フィラメントが接続している延伸された芯鞘型フィラメントを得ることができる。ここで、接続とは、接着剤や他の手段を用いることなく、連続して一体化していることをいう。
なお、本発明における延伸倍率λは、原フィラメントの径doと延伸後のフィラメントの径dより、下記の式で表される。この場合、フィラメントの密度は一定として計算する。フィラメント径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、100倍、350倍、または1000倍等の倍率での撮影写真に基づき、10点の平均値で行う。
λ=(do/d)
【発明の効果】
本発明は、中空フィラメント、光学用フィラメント、コンジュゲートフィラメント等の芯鞘型フィラメントについて、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易に極細フィラメントを得ることができた。これらの極細芯鞘型フィラメントは、100倍以上という超高倍率延伸によって実現できたものであり、このような高倍率な延伸を実現する手段を提供できたことは、極細芯鞘型フィラメントが、簡便に得られると云うばかりでなく、極細芯鞘型フィラメントを、高速で生産できることを意味しており、生産性の面からの意義が大きい。
本発明による極細芯鞘型フィラメントが中空フィラメントである場合、中空フィラメントの有する軽量、保温性、断熱性などの性能にプラスして、極細フィラメントとなることで、生地が緻密になり、光沢や印刷性も増し、さらに高級化し高品質となる。中空フィラメントは、近年、水着として利用されており、保温、水に浮く、透けて見え難いなどの性質が利用されている。それが極細フィラメントとなることで、緻密な生地となり、撥水性も増し、光沢、印刷性アップなどで、商品価値が高まる。中空フィラメントが、分割繊維用中空フィラメントでは、より細いフィラメントが製造でき、また、断面が複雑な形状の極細フィラメントとなる。中空フィラメントが、微多孔膜中空フィラメントである場合は、延伸されることにより、膜が薄くなり、分離効率が上がる。また、延伸により孔の形状が細長くなり、より孔が微細になり、分離性能を上げることができる。さらに、この延伸された微多孔中空フィラメントに、未延伸部が接続されていることにより、気体等の供給部分は大きいので、原料気体等の供給が容易であり、極細微多孔膜中空フィラメントに特別の接続装置を必要としないで接続できるので、装置費も安くなり、装置をコンパクトとすることができた。
本発明による極細芯鞘型フィラメントが、光学用フィラメントである場合、イメージセンサー等に使用することにより、1点1点の解像度が良くなり、センサーや診断装置の性能アップにつながる。また、極細フィラメントであるので、繊維束がフレキシブルになり、また、繊維束が薄いフラットになり、装置がコンパクトにすることができた。さらに、この延伸された光学用フィラメントに未延伸部が接続されていることにより、広い面積の光を集めて、ピンポイントに強い光を当てることができ、ファイバースコープ等として性能がアップする。また、光源の光が弱くても、集光する効率がよい光学用フィラメントとなった。また、従来、集光装置と光学用フィラメントとの接続は、フィラメントが細いために接続が困難であった。しかし、本発明では、延伸されたフィラメントと未延伸部が接続しているため、接続部分が不要になり、また接続装置費も不要になることでコストが安くなり、装置もコンパクトになる。
本発明による極細芯鞘型フィラメントがコンジュゲートフィラメントである場合、コンジュゲートフィラメントの接着性フィラメント、吸湿性フィラメント、捲縮フィラメントとしての性能が、フィラメントが極細になることによって、さらに性能がアップし、高級化、高品質化された。
さらに、本発明により極細中空フィラメントや極細コンジュゲートフィラメントからなる長繊維不織布を製造できた。市場にある極細芯鞘型フィラメントからなる不織布として、メルトブローン不織布があるが、フィラメント強度がなく、また、ショットやダマと呼ばれる小さな樹脂の塊が混在する問題点があった。しかし、本発明の不織布は、そのような欠点がなく、中空フィラメントのもつ保温性、軽量性などの特性、コンジュゲートフィラメントのもつ接着性やかさ高性、吸湿性などの性能と、極細フィラメントのもつ生地の緻密さ、光沢、印刷性能アップなどの品質とあいまって、不織布をより高級化・高品質化することができた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の延伸された芯鞘型フィラメントを製造するためのバッチ法におけるプロセスの概念図を示す。
第2図は、本発明の延伸された芯鞘型フィラメントを製造するための連続法におけるプロセスの概念図を示す。
第3図Aは、本発明の原芯鞘型フィラメントに赤外線光束を複数箇所から照射するための鏡の配置の例を平面図で示す。
第3図Bは、本発明の原芯鞘型フィラメントに赤外線光束を複数箇所から照射するための鏡の配置の例を側面図で示す。
第4図は、本発明の原フィラメントに赤外線光束を複数箇所から照射する他の例で、複数の光源を有する場合を平面図で示す。
第5図は、本発明の延伸された芯鞘型フィラメントを、複数本再延伸する場合のプロセスの概念図を示す。
第6図は、本発明に使用される種々の送風管を、概念図で示す。
第7図は、本発明の延伸された芯鞘型フィラメントからなる不織布を製造するためのプロセスの概念図を示す。
第8図は、本発明における中空フィラメントを延伸したことによる、フィラメントの外径と内径の変化を示す実験結果の図表を示す。
第9図は、本発明の延伸された中空フィラメントの走査型電子顕微鏡写真(1000倍)を示す。
第10図Aは、本発明における延伸された中空フィラメントの偏光顕微鏡写真で、延伸開始部の写真(100倍)で示す。
第10図Bは、本発明における延伸された中空フィラメントの偏光顕微鏡写真で、延伸されたフィラメントの写真(100倍)で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のバッチ法における装置の例を示す。原芯鞘型フィラメント1が、ラックアンドピニオン方式で移動する移動装置2に固定されている把持具3に把持されている。螺旋ねじからなるガイドレール4が、モータの回転により下方に一定速度で移動することにより、原フィラメント1は、一定速度で下方に移動する。移動する原フィラメント1の一定個所に対して、連続炭酸ガスレーザー発振器5よりレーザー光6が、照射されるようになっている。図では、原フィラメントの赤外線照射位置を一定に安定して保持するために、原フィラメントの赤外線照射位置の上下に滑車7a、7bが設けられ、原フィラメントを案内するように配置されている。赤外線照射された原フィラメントは、自分の自重または10MPa以下の張力で延伸され、延伸された芯鞘型フィラメント8となる。延伸された芯鞘型フィラメント8は、必要に応じて、荷重9を付加され、または巻取リールに巻き取られる。なお、把持具3を引張試験器のチャックとし、引張試験器のロードセルに直結していることにより、延伸の張力を簡便に測定できる。図1のバッチ法は、原芯鞘型フィラメントと、延伸されたフィラメントとが、接続されたフィラメントを得る場合に、特に有用である。
図2は、本発明の連続法のプロセスの例を示した。原芯鞘型フィラメント1は、リール11に巻かれた状態から繰り出され、コーム12を経て、繰出ニップローラ13a、13bより一定速度で送り出される。送り出された原フィラメント1は、送風管14によって送られ、案内具15で位置を規制されて一定速度で下降する。送風管14は、矢印aより導入された空気が原フィラメント1の通路に導かれ、フィラメントが空気の流れによって送られるようになっている。なお、送風管14は、使用を省略することもできる。案内具15は、レーザーの照射位置とフィラメントの走行位置を正確に定めるもので、図では、内径が0.5mmの注射針を使用したが、細いパイプやコームや図7で示すスネイルワイヤなども使用できる。案内具15の直下に、レーザー発振装置5より、走行する原フィラメント1に対して、一定幅の加熱域Mにレーザー光6が照射される。レーザー光6により加熱され、原フィラメントの自重と送風管のエアーの送り出される風速により与えられる張力により、フィラメントは延伸されて、延伸された芯鞘型フィラメント16となって下降し、下降過程に備えられている熱処理ゾーン17を通過することが望ましい。延伸された芯鞘型フィラメント16は、滑車18を通り、引取ニップロール19a、19bを経て、巻取リール20で巻き取られる。この場合において、滑車18への延伸された芯鞘型フィラメント16の通路は、芯鞘型フィラメントの自由落下の軌跡pとして延伸される場合と、滑車18への直線的な軌跡qとして延伸される場合と、それらの中間的な軌跡として延伸される場合がある。軌跡pの延伸された芯鞘型フィラメント16の自重で延伸される場合は、延伸張力に送風管14からの空気の流れが張力に加算される場合もあるが、それらも自重による延伸の範疇に含める。軌跡qおよび軌跡pと軌跡qの中間位置では、巻取のテンションが延伸の張力に及ぶが、その場合は、延伸張力が10MPa以下であることが望ましい。延伸張力は、滑車18に張力測定機構を設けることもできるが、他の方法として、上記バッチ法のロードセル測定により、同一送出速度やレーザー照射条件、延伸倍率等の関係から推定することができる。引取巻取リール20で巻き取る前に、加熱されている延伸ロール21a、21bと延伸ロール22a、22b間で、延伸ロール21と22の速度の比で、さらに延伸することもできる。この場合の延伸された芯鞘型フィラメントの熱処理ゾーン17は、延伸ローラ22の後に設けることが望ましい。また、複数の原フィラメントが同時に延伸された場合は、引取リールの直前で、インターレース法などでフィラメント間を空気交絡しておくことが望ましい。
図3に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の例を示す。図Aは平面図であり、図Bは側面図である。この図のような複数箇所からの原フィラメントへの赤外線照射は、図1、2においても行なわれるが、煩雑になるので、図1,2では省略して示し、図3で代表して示す。赤外線照射器より照射された赤外線光束31aは、原フィラメント1の通る領域P(図の点線内)を通って、鏡32に達し、鏡32で反射された赤外線光束31bとなり、鏡33で反射されて赤外線光束31cとなる。赤外線光束31cは領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置から120度後から、原フィラメントを照射する。領域Pを通過した赤外線光束31cは、鏡34で反射されて、赤外線光束31dとなり、鏡35で反射されて、赤外線光束31eとなる。赤外線光束31eは領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置の先ほどの赤外線光束31cとは逆の120度後から、原フィラメント1を照射する。このように、原フィラメント1は、3つの赤外線光束31a、31c、31eにより、120度ずつ対称の位置から均等に原フィラメント1を加熱することができる。
図4に、本発明で採用されている、赤外線光束を複数箇所から原フィラメントに照射する手段の他の例で、複数の光源を使用する例を平面図で示す。赤外線放射装置から放射された赤外線光束41aは、原芯鞘型フィラメント1へ放射される。また、別の赤外線放射装置から放射された赤外線光束41bも、原芯鞘型フィラメント1へ放射される。さらに別の赤外線放射装置から放射された赤外線光束41cも、原芯鞘型フィラメント1へ放射される。このように、複数の光源からの放射は、比較的小規模の光源で安定したコストの安いレーザー発信装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。なお、図では光源が3個の場合を示したが、2個でもよいし、4個以上も使用できる。特に、複数本延伸では、このような複数光源による延伸が特に有効である。
図5に、既に本発明により延伸された芯鞘型フィラメントを、複数本同時に繰り出し、同時に延伸する例について示す。ボビン51a、51b、51c、51d、51eに巻かれた延伸された芯鞘型フィラメント52a、52b、52c、52d、52eは、それぞれ送風管53とパイプ54で送られ、エアーマニホールド55に集められ、フィラメントの集合体56となる。なお、送風管53とパイプ54中の芯鞘型フィラメント52は、図では、煩雑になるので示していない。未延伸原フィラメントは、強度やヤング率が小さく、延伸されたフィラメント52は、繊度が小さいため、張力に耐えないので、ボビン51は、一定速度で回転し、繰出張力を小さくされていることが好ましい。送り出されたフィラメントの集合体56は、ピッチ可変機構57によって、走行位置をレーザービーム58の中心になるように調整される。案内具59は、延伸点ではフィラメント相互間が接触しないように、フィラメント間を離して案内されていることが好ましい。ピッチ可変機構57には、案内具59が設けられており、その位置を、ラック60とギア61により、フィラメントの走行位置が微調整される。ピッチ可変機構57は、図では一方向だけに調整される例を示したが、直角方向にギアのセットを設けて、XY軸方向に調整させることができる。ピッチ可変機構57で位置を調整されたフィラメント集合体56は、レーザービーム58で加熱されて延伸され、引取機構62によって引取速度を一定に調整され、モータMで駆動されている巻取ボビン63に巻き取られていく。本図において、レーザービーム58は、1本の線で示したが、図3や図4の複数の光束であることが望ましい。また、図では、ボビンに直接巻かれている例を示したが、加撚して巻かれることや、インターレース等によりフィラメント相互間を絡ませて巻かれることが好ましい。また、図5では、赤外線による再延伸の例を示したが、再延伸は、通常のローラ延伸やゾーン延伸等の他の延伸手段を用いることもできる。なお、送風管53やパイプ54へ導入された空気が、原フィラメント1の通路に導かれ、フィラメントが空気の流れによって送られ、エアーの送り出される風速により与えられる張力は、本発明の延伸張力に加味される。なお、図5は、延伸されたフィラメントの再延伸の例として説明したが、同様の機構で、未延伸原フィラメントの複数本延伸の手段としても使用される。
図6に、本発明で使用される送風管の例を示す。図Aは、フィラメント1が通過する主管71に、矢印aより導入された空気が枝管72を通じて、主管71と合流する。図Bは、二重管73で、内部が空洞になっており、矢印bより導入された空気は、二重管内壁に設けられた多数の孔74により、フィラメントの通路へ導かれる。図Cは、インターレース紡糸に使用される空気交絡ノズル75として使用されているノズルの例で、両サイドc1、c2から空気が吹き込まれる。このように、フィラメントの走行方向に積極的に空気が送り込まれるようにしているのは、本発明では、延伸張力が小さいため、案内具等の抵抗によってフィラメントの走行が阻害されることのないようにするためであり、また、不織布製造の場合のように、巻取テンションで積極的に張力が付加できない場合などで、空気の勢いで、延伸張力を付加することもできる。また、図Cのノズルは、本発明の延伸後のインターレース巻取に際しても使用できる。なお、図6の送風管は、管状のものの例を示したが、一部が解放されて、溝状になっているものも使用される。
図7に、本発明の不織布の製造の例を示す。多数の原芯鞘型フィラメント1がボビン81に巻かれた状態で、架台82に取り付けられている(煩雑さを避けるため3本のみ図示する)。これらの原芯鞘型フィラメント1a、1b、1cは、案内具であるスネイルワイヤ83a、83b、83cを通じて、送出ニップロール84a、84bの回転により送り出されるようになっている。送り出された原芯鞘型フィラメント1は、自重で下降する過程で、赤外線放射装置85より放射されるライン状の赤外線光束により加熱される。原芯鞘型フィラメント1の走行過程での赤外線光束による加熱部Nの範囲を斜線で示す。原芯鞘型フィラメント1に吸収されずに通過した光束は、点線で示した凹面鏡86で反射して、加熱部Nに集光するように戻される。赤外線放射装置65側にも、凹面鏡を設ける(但し、赤外線放射装置よりの光束の進行部は窓が開いている)が、図では省略してある。原芯鞘型フィラメント1は、加熱部Nにおける赤外線の放射熱により加熱され、その部分より下での芯鞘型フィラメント自身の自重により延伸されて、延伸芯鞘型フィラメント87a、87b、87cとなり、走行しているコンベア88上に集積し、ウェブ89を形成する。コンベア88の裏面からは、負圧吸引により矢印dの方向にエアーが吸引され、ウェブ89の走行の安定性に寄与する。負圧dが延伸された芯鞘型フィラメント87に及ぼす張力で牽引され、芯鞘型フィラメントの細化や配向度のアップに寄与し、これらの張力も本発明の自重による張力の一部と見なされる。図では省略してあるが、コンベア88の進行方向に、原芯鞘型フィラメント1の多数のボビン81を多段に設置し、ニップローラ84や赤外線放射装置等を多段に設けて、ウェブ89の生産性をアップするようにされている。なお、このように進行方向に多段に送出ニップロール84等を設ける場合、赤外線放射装置85や、凹面鏡86は、数段分を兼ねることもできる。なお、延伸張力が、フィラメントの自重やコンベア下からの負圧では不十分で、延伸や配向が小さい場合は、原フィラメント1が赤外線光束部へ導かれる際に、送風管によって導き、送風管のエアーの送り出される風速により与えられる張力も加味して使用される。
【実施例1】
原芯鞘型フィラメントとしてのアイソタクチック(it)ポリプロピレン中空フィラメント(フィラメント径280μm、内径90μm)を使用した。延伸装置は、図2、3の装置により延伸した。この原フィラメントの送出速度を種々変化させ、巻取速度も変化させて採取したフィラメントのフィラメント径(外径)と内径についての実験結果を図8に示す。この時のレーザー発振装置は、(株)鬼塚硝子社製で、最大出力10Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用した。レーザーのパワー密度は、送出速度が0.3m/分の時は28.5W/cm(1.2W)で、送出速度が速くなるにつれてパワー密度も大きくなり、0.6m/分では、52.5W/cm(2.2W)とした。この場合のレーザーの光束径は4.0mmであった。延伸芯鞘型フィラメントは、図2における軌跡pを辿り、レーザー加熱部Mから一番下までの距離は、120cmであった。図8に示すように、巻取速度84.8m/分でも100倍以上の延伸倍率が簡単に得られ、延伸されたフィラメントの径(外径)も、最終的には7μmに達し、倍率も10,000倍を越える。内径と外径の比を比較すると、送出速度が小さいと、フィラメント径が小さくなっても、相対的に内径が大きく、送出速度が大きいと、内径が小さくなる傾向である。このようにして延伸された中空フィラメントの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図9に示す。また、この延伸過程のサンプルについて偏光顕微鏡写真で外径と内径がわかるように、図10に示した。図10Aは、延伸開始部を示しており、延伸開始部で、この例では、若干ではあるが、延伸開始部の径が大きくなっている。図10Bは、延伸された中空フィラメントで外径9μm(延伸倍率約850倍)における偏光顕微鏡写真で示した。延伸されたフィラメントのX線写真をとると、原中空フィラメントより、配向パターンが明確になっており、延伸により配向が崩れることなく、むしろ配向がよくなっていることがわかった。
【実施例2】
原芯鞘型フィラメントとして、ポリメタクリル酸メチル系光学用フィラメント(フィラメント径250μm)を、実施例と同様な手段により、送出速度0.3m/分で延伸した。パワー密度は、23.9W/cmで行った。その場合、巻取速度は、139.8m/分で、フィラメント径14μm(延伸倍率319倍)、巻取速度226.2m/分でフィラメント径12μm(延伸倍率433倍)、巻取速度400m/分で、フィラメント径7μm(延伸倍率1274倍)の延伸されたフィラメントが得られた。これらのそれぞれの延伸倍率に相当する延伸張力を、図1に示す方式により、ロードセルで測定すると、フィラメント径14μmでは、0.12MPaであり、フィラメント径12μmの場合は、0.18MPaであり、7μmでは、0.25MPaであった。なお、10MPaを超えた張力のもとでは、100倍以上の高延伸倍率の延伸は出来なかった。また、延伸張力が0.001より小さな張力でも、高延伸倍率の延伸はできなかった。
【産業上の利用可能性】
中空フィラメント、光学用フィラメント、コンジュゲートフィラメント等の芯鞘型フィラメントを簡便な延伸手段で、極細の芯鞘型フィラメントとすることで、保温性のよい衣類、極細光ファイバー、コンジュゲートフィラメントからなる不織布等が製造できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原芯鞘型フィラメントが、10Mpa以下の張力を与えられ、赤外線光束で加熱されることにより、100倍以上の延伸倍率に延伸されることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項2】
請求の範囲1の前記張力が、原芯鞘型フィラメントの自己の自重により与えられる張力であることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項3】
請求の範囲1の前記赤外線光束が、原芯鞘型フィラメントの中心で、該フィラメントの軸方向に上下4mm以内に照射され、かつ、少なくとも2方向以上からの照射であることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項4】
請求の範囲1における前記赤外線光束が、レーザーであることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項5】
請求の範囲1における前記原芯鞘型フィラメントが、送風管により送られて、前記赤外線光束へ導かれることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項6】
請求の範囲1における前記原芯鞘型フィラメントが、赤外線光束で加熱される前に、該原芯鞘型フィラメントの位置を規制する案内具が設けられていることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項7】
請求の範囲1における前記延伸過程で、赤外線照射が停止され、延伸されたフィラメントに原芯鞘型フィラメントが接続された状態の製品が取り出されることにより、原芯鞘型フィラメントが接続している延伸された芯鞘型フィラメントを得ることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項8】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、その後に設けられた加熱ゾーンにより熱処理されることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項9】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、さらに延伸されることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項10】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントの複数本が、同時に繰り出されてさらに延伸され、一体的に巻き取られることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法。
【請求項11】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、走行するコンベア上に集積されることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントからなる不織布の製造方法。
【請求項12】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントの製造方法において、前記原フィラメントが自重によってもたらされる張力により延伸され、その後、所定の引き取り速度で延伸されていくことを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの延伸立ち上げ方法。
【請求項13】
芯鞘型フィラメントからなる原フィラメントの送出手段と、
送り出された該原フィラメントに対して、複数箇所から赤外線光束が照射されることによって、該原フィラメントの中心で該原フィラメントの軸方向に上下4mm以内に加熱されるように構成されている赤外線加熱装置と、
加熱された原フィラメントが、10MPa以下の張力が与えられることにより、100倍以上に延伸されるように制御する手段を有することを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項14】
請求の範囲13における前記赤外線光束が、レーザー発振装置によって放射されるレーザーであることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項15】
請求の範囲13における前記赤外線光束の複数箇所からの放射手段が、一方向から照射される光束を、鏡を用いて反射されたものであることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項16】
請求の範囲13における前記赤外線光束の複数箇所からの放射手段が、複数の赤外線光束放射装置からの光束であることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項17】
請求の範囲14における前記レーザー光のパワー密度が、10W/cm以上である炭酸ガスレーザーであることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項18】
請求の範囲13における前記原芯鞘型フィラメントが、前記赤外線光束で加熱される前に、該原芯鞘型フィラメントの位置を規制する案内具が設けられていることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項19】
請求の範囲18における前記案内具が、前記原芯鞘型フィラメントの案内位置を微調整できる、位置制御装置を有することを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項20】
請求の範囲13における前記原芯鞘型フィラメントが、前記赤外線光束で加熱される前に、送風管が設けられており、該原芯鞘型フィラメントが該送風管により送られてくるように構成されていることを特徴とする、延伸された芯鞘型フィラメントの製造装置。
【請求項21】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、鞘のみからなり、内部が気体である中空フィラメントであり、延伸された中空フィラメントの外径が10μm以下であることを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項22】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、分割繊維用の中空フィラメントであり、延伸された該中空フィラメントのタテ方向に多数のクラックを有することを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項23】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、該延伸されたフィラメントの壁に多数の微細な孔を有する微多孔膜中空フィラメントであることを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項24】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、芯成分の光線透過率が85%以上であるポリマーからなり、フィラメント径が30μm以下の光学用フィラメントであることを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項25】
請求の範囲1の前記延伸された芯鞘型フィラメントの芯成分が、石英系ガラスまたはフッ化物ガラスであり、フィラメント径が10μm以下の光学用フィラメントであることを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項26】
請求の範囲1における前記延伸された芯鞘型フィラメントが、コンジュゲーフィラメントであり、該コンジュゲートフィラメントの鞘成分が接着性ポリマーからなることを特徴とする、延伸された極細芯鞘型フィラメント。
【請求項27】
請求の範囲7における前記原芯鞘型フィラメントと前記延伸された芯鞘型フィラメントとが、接続されている光学用フィラメントであることを特徴とする芯鞘型フィラメント。
【請求項28】
請求の範囲7における前記原芯鞘型フィラメントと前記延伸された芯鞘型フィラメントとが、接続されている中空フィラメントであることを特徴とする芯鞘型フィラメント。

【国際公開番号】WO2004/085723
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503990(P2005−503990)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002864
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(800000079)株式会社山梨ティー・エル・オー (11)
【Fターム(参考)】