説明

延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料

【課題】 耐衝撃性、耐熱性に優れる新規な延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体0.1〜99.9重量%及びポリエステル樹脂99.9〜0.1重量%からなる樹脂組成物よりなることを特徴とする延伸フィルム・シート。
【化1】


(1)
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐衝撃性、耐熱性に優れる新規な延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルム延伸フィルム・シートは機械強度、耐熱性に優れ、工業材料、磁気記憶材料、光学材料、情報材料、包装材料等の広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、ポリエステル延伸フィルムは急激に強い力が加わって破損することがあり、耐衝撃性の改良が望まれている。
【0004】
そこで、ポリエステル樹脂にエラストマー等をブレンドして耐衝撃性を改良する試みがなされており例えば、ポリエステル樹脂にポリエステルエラストマーを配合し破断伸度や耐衝撃性を改良することが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。またポリエステル樹脂に、ダイマー酸等の長鎖脂肪族成分を共重合したポリエステルを配合し、成形性、耐衝撃性、開口性に優れた延伸フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。さらにポリエステル樹脂にエポキシ鎖含有エラストマーを配合し保味保香性、耐衝撃性、耐バリアー性に優れた延伸フィルムが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−269311号公報
【特許文献2】特開2004−18742号公報
【特許文献3】特開2001−335650号公報
【特許文献4】特開2003−55483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2に提案の組成物は、ポリエステル樹脂との相溶性が劣り耐衝撃性の改良効果が不充分である。また特許文献3に記載の方法も耐熱性には優れるものの、耐衝撃性の改良効果が不充分である等の課題を有している。また、特許文献4に記載の方法はポリエステル樹脂が有する耐熱性を損なうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、ハードセグメントに特定の芳香族アミド単位を用いた芳香族アミドブロック共重合体及びポリエステル樹脂からなる樹脂組成物よりなる延伸フィルム・シートが耐衝撃性、耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体0.1〜99.9重量%及びポリエステル樹脂99.9〜0.1重量%からなる樹脂組成物よりなることを特徴とする延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料に関するものである。
【0009】
【化1】

(1)
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の延伸フィルム・シートは長さ、幅、厚さに特に制限はなく、平面状成形物であり、テープ類、リボン類も含む。
【0011】
シート・フィルムは高分子学会編集の高分子辞典(朝倉書店、1971年)によると200μm未満をフィルム、200μm以上をシートとしてシートとフィルムに区別されるが、本発明では特に区別はせず、フィルム・シートの厚みは0.5μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmが更に好ましい。
【0012】
本発明の延伸フィルム・シートは、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体及びポリエステル樹脂からなる樹脂組成物よりなる。
【0013】
ここで該樹脂組成物に用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成する一般式(1)で示される芳香族アミド単位中のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基であり、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0014】
該オキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンタメチレン基、オキシヘキサメチレン基等の無置換オキシアルキレン基またはこれらにメチル基、エチル基等のアルキル置換基もしくはフェニル基等のアリール置換基が1個以上結合したものが挙げられる。さらには、上記の無置換オキシアルキレン基単位やアルキルまたはアリール置換オキシアルキレン基単位が任意に2個以上結合したものであっても良く、これらの1種または2種以上が使用される。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。なお、これらオキシアルキレン基中の酸素は、一般式(1)において直接ベンゼン環に結合することが好ましい。
【0015】
該アルキレンカルバモイル基としては、例えばメチレンカルバモイル基、エチレンカルバモイル基、トリメチレンカルバモイル基、テトラメチレンカルバモイル基、ペンタメチレンカルバモイル基、2,2−ジメチルトリメチレンカルバモイル基、ネオペンチルカルバモイル基、ヘキサメチレンカルバモイル基、3−メチルペンタメチレンカルバモイル基、2−メチルヘプタメチレンカルバモイル基、ヘプタメチレンカルバモイル基、オクタメチレンカルバモイル基、ノナメチレンカルバモイル基、デカメチレンカルバモイル基、1,4−シクロヘキシレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。中でもエチレンカルバモイル基が好ましい。
【0016】
該アリーレンカルバモイル基としては、例えば2−ベンジルカルバモイル基、3−ベンジルカルバモイル基、4−ベンジルカルバモイル基、1,2−フェニレンカルバモイル基、1,3−フェニレンカルバモイル基、1,4−フェニレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0017】
本発明の延伸フィルム・シートに用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成するポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とは、公知のものであれば特に制限はない。
【0018】
該ポリエステルは、例えばジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物と短鎖ポリオールを縮合重合することによって得ることができる。該ジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。一方、該短鎖ポリオールとしては、例えば脂肪族、脂環式、芳香族、置換脂肪族または複素環式のジヒドロキシ化合物;トリヒドロキシ化合物;テトラヒドロキシ化合物等を挙げることでき、具体的な短鎖ポリオールとしては、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラヒドロフタレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0019】
該ポリエステルを得る別の方法として、例えばβ−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物の1種または2種以上をヒドロキシ化合物と共に反応せしめる方法によることも可能である。
【0020】
該脂肪族ポリ(オキシアルキレン)としては、例えばポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)、ポリ(オキシヘキサメチレン)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)のエチレンオキシド付加重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0021】
該ポリカーボネートとしては、例えばヒドロキシ化合物の1種または2種以上と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換法によって得られたものが挙げられ、具体的なポリカーボネートとしては、例えばポリ(1,6−ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロピレンカーボネート)等が挙げられる。また、ポリカーボネートを得る他の方法としては、いわゆるホスゲン法によっても得ることもできる。
【0022】
また該ポリジエンとしては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0023】
該ポリオレフィンとしては、例えばポリジエンを水素添加したポリオレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類の単独重合体;ランダム共重合体;交互共重合体;ブロック共重合体等が挙げられる。
【0024】
該ポリオルガノシロキサンとしては、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、耐熱性に優れた延伸フィルム・シートが得られることから、芳香族アミドブロック共重合体が、一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリエステルからなることが好ましく、特に一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリ(ε−カプロラクトン)からなることが好ましい。
【0026】
本発明の延伸フィルム・シートに用いる芳香族アミドブロック共重合体は、一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位が直接結合していても、他の化合物残基を含有していても良い。他の化合物残基としては、例えば二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有していても良い。
【0027】
二官能性ハライド化合物から誘導される化合物残基としては、例えばシュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ピメリン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ドデカン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド等の二官能性酸クロライドから誘導される化合物残基;シュウ酸ジブロマイド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、グルタル酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、ピメリン酸ジブロマイド、スベリン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、ドデカン酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド、フタル酸ジブロマイド等の二官能性酸ブロマイドから誘導される化合物残基等が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よく芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、アジピン酸ジクロライドから誘導される化合物残基が好ましい。
【0028】
二官能性イソシアネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。その中でも反応性に優れ、効率よく芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートから誘導される化合物残基が好ましく用いられる。
【0029】
二官能性カーボネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よく芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0030】
二官能性エステル化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジエチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジエチル等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よく芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタル酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチル等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0031】
二官能性アシルラクタム化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、イソフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、アジポイルビス(ε−カプロラクタム)、スクシニルビス(ε−カプロラクタム)等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よく芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)から誘導される化合物残基が好ましい。
【0032】
二官能性エポキシ化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;p−フェニレンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエステル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基等が挙げられる。
【0033】
二官能性芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される化合物残基としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導される化合物残基が挙げられる。
【0034】
また、本発明の延伸フィルム・シートに用いる芳香族アミドブロック共重合体における芳香族アミド単位の含有量は特に制限はなく、耐衝撃性、環境温度安定性、耐熱性に優れた延伸フィルム・シートが得られることから、芳香族アミド単位の含有量は5〜95重量%の範囲であることが好ましく、特に5〜50重量%の範囲であることが好ましく、さらに15〜45重量%であることが好ましい。
【0035】
本発明の延伸フィルム・シートに用いる芳香族アミドブロック共重合体は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000であることが好ましく、特に30000〜500000であることが好ましい。また、該芳香族アミドブロック共重合体は、硬さがタイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)が50〜99であることが好ましく、特に65〜98であることが好ましい。
【0036】
本発明の延伸フィルム・シートに用いる芳香族アミドブロック共重合体の製造方法としては、一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を製造することが可能な限りにおいていかなる方法を用いてもよく、例えば一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端にカルボン酸基あるいは水酸基を有するモノマーと、両末端に水酸基あるいはカルボン酸基を含有するポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位を含有する化合物を直接反応させる方法;一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、両末端に水酸基を含有するポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とを反応させる際に、二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等よりなる群から選ばれる1種以上の鎖延長剤単位の存在下に反応させる方法;一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させる方法等が挙げられる。その際の重合方法としては、例えば溶液重合法、溶融重合法、界面重合法、固相重合法等が挙げられ、これらを組み合わせて製造してもよい。その中でも容易に分子量を増大させた芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、溶液重合法を行った後に溶融縮合を行うことが好ましい。
【0037】
本発明の延伸フィルム・シートに用いるポリエステル樹脂は、特に制限は無く公知のものが使用できる。ポリエステル樹脂とは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子の総称であって、通常ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。ここでジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸等を挙げることができる。また、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。これらの中でも酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールなどが好ましい。これらの中でも特にポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート単独重合体、90モル%以上がポリエチレンテレフタレートである共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート単独重合体、90モル%以上がポリエチレン−2,6−ナフタレートである共重合体であることが好ましい。なお、これらポリエステル樹脂は1種又は2種以上用いることが可能である。
【0038】
本発明に用いるポリエステル樹脂は、機械特性、寸法安定性、耐熱性の観点から、融点は240〜300℃であることが好ましく、特に金属化合物や金属酸化物を蒸着する際の耐熱性の観点からは、融点が246〜270℃であるとことがさらに好ましい。
【0039】
本発明に用いる樹脂組成物中の芳香族アミドブロック共重合体の配合量は、0.1〜99.9重量%であり、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。0.1重量部未満では耐衝撃性の改良効果が不十分である。一方、99.9重量部を越えると耐熱性、剛性が低下する。
【0040】
また本発明の延伸フィルム・シートには、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;ヒンダードフェノール系化合物;ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物;ヒドロキシアクリレート系化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等の硫黄含有化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物;ラクトン系化合物;ヒドロキシルアミン系化合物;ビタミンE系化合物;アリルアミン系化合物;アミン−ケトン系化合物;芳香族第二級アミン系化合物;モノフェノール系化合物;ビスフェノール系化合物;ポリフェノール系化合物;ベンツイミダゾール系化合物;ジチオカルバミン酸系化合物;チオウレア系化合物;有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なく延伸フィルム・シートに用いる樹脂組成物100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0041】
さらに本発明の延伸フィルム・シートには、成形加工性を向上させる目的で、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸類;ステアリン酸エステル;シリコンオイル;ワックス類;エチレンビスステアリルアミド等の滑剤を添加することもできる。これらの添加量は特に制限はなく、該樹脂組成物100重量部に対し、0.05〜5重量部が好ましく用いられる。
【0042】
また本発明の延伸フィルム・シートには、例えば染料;有機顔料あるいは無機顔料;無機補強剤;可塑剤;ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等の光安定剤;ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルサィシレート系化合物、フェニルアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤;発泡剤;結晶核剤;可塑剤;離型剤;カルボジイミド等の加水分解防止剤;等の公知の添加剤を加えることができる。
【0043】
さらに本発明の延伸フィルム・シートには、難燃性を付与するために難燃剤を添加してもよい。難燃剤は難燃効果を発揮するものであれば特に制限は無く公知のものを使用でき、例えば塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤を使用することができる。難燃剤の配合量は、延伸フィルム・シートに用いる樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜500重量部が好ましく、特に3〜350重量部、さらに5〜250重量部が好ましい。
【0044】
また、本発明の延伸フィルム・シートには、無機粒子及び/又は有機粒子を添加してもよい。該無機粒子としては、例えば湿式または乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、マイカ、カオリン、クレーなどが挙げられ、有機粒子としては、例えばスチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする有機粒子が挙げられる。これらの中でも、湿式または乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子;スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする有機粒子;が好ましく、特に乾式または湿式シリカが好ましい。また、無機粒子及び/又は有機粒子の添加量は樹脂組成物中の0.01〜0.08重量%であるが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.05重量%である。
【0045】
本発明に用いられる樹脂組成物は芳香族アミドブロック共重合体とポリエステル樹脂を混合することにより得られ、これらは一度に混合しても良いし、良好な分散状態を達成するために二段もしくはそれ以上の多段で混合しても構わない。混合方法としては例えば溶液混合、溶融混合等の方法が挙げられ、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0046】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜380℃が好ましく、特に好ましくは200〜320℃である。
【0047】
本発明の延伸フィルム・シートの製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば溶融成形法を用いることができる。
【0048】
溶融成形法としては、例えばTダイを用いた方法、インフレーション法等の溶融押出し法;カレンダー法;熱プレス法;射出成形法等が挙げられ、その中でも得られる延伸シート・フィルムの厚さムラが小さくできることからTダイを用いた溶融押出し法が好ましい。Tダイを用いた溶融押出法では、例えば単軸押出機、二軸押出機等の公知の押出機に樹脂組成物を供給し、溶融押出し、冷却し未延伸フィルム・シートを得た後、延伸し延伸フィルム・シートを得る方法を用いることができる。
【0049】
未延伸フィルム・シートを得る際の溶融押出しは200〜350℃の温度範囲で行うことが好ましい。また冷却法は特に限定はなく、例えばワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けたキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくはこれらの方法を複数組み合わせた方法によりフィルム・シート状の樹脂をキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸フィルムを得る方法が挙げられる。これらのキャスト法の中でも、生産性を損なわず、平面性を維持する観点から静電印加する方法が好ましく使用され、特にテープ状電極を使用する方法が好ましく用いられる。
【0050】
未延伸フィルム・シートを延伸することにより本発明の延伸フィルム・シートとなる。その際の延伸方法としては、特に制限はなく、その中でも1軸延伸方法または2軸延伸方法が好ましく、1軸延伸方法または2軸延伸方法としては、例えば長手方向に延伸した後幅方向に延伸する、あるいは幅方向に延伸した後長手方向に延伸する逐次2軸延伸方法;フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時2軸延伸方法;長手方向または幅方向にのみ延伸する1軸延伸方法等が好ましく用いられる。
【0051】
かかる延伸方法において採用される延伸倍率は、それぞれの方向に1.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.0倍である。また、延伸速度は200〜500000%/分であることが好ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移点〜(ガラス転移点+100℃)の温度範囲であれば任意の温度とすることができ、その中でも好ましくは70〜180℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を80〜150℃、幅方向の延伸温度を80〜160℃である。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよく、複数の温度で行っても良い。延伸を行った最も高い温度を最高延伸温度とする。
【0052】
また本発明の延伸フィルム・シートは寸法安定性を向上させるために延伸後、熱処理を行うことが好ましく、延伸温度+10℃〜ポリエステル樹脂の融点−10℃の温度範囲において熱処理することが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート単独重合体の場合には、熱処理温度は160〜230℃の範囲が好ましく、その中でも耐屈曲ピンホール性に優れた延伸フィルム・シートとなることから180〜210℃が特に好ましく、さらに好ましくは180〜200℃である。また、耐屈曲ピンホール性に加え、寸法安定性にも優れた延伸フィルム・シートとなることから、170〜220℃の熱処理温度であることが特に好ましい。この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。また、熱処理時間は他の特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、通常1〜30秒間行うのが好ましい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
【0053】
また本発明の延伸フィルム・シートの表面にはコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより,接着性をさらに向上させることは特性を向上させる上で好ましい。特に、金属や金属酸化物を蒸着する際は、蒸着するフィルム表面に予めコロナ放電処理を行うことが、フィルムと蒸着層の密着性を高めることから好ましい。さらに、フィルムの表面に易接着性コーティング剤や樹脂などの各種コーティングを施してもよく,その塗布化合物,方法,厚みは本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0054】
本発明の延伸フィルム・シートは、単独またはいくつかの他の重合体からなるシート・フィルム、面上の支持体、多孔質のフィルムや不織布、紙状物、織編物等を積層しても良く、積層方法としては特に制限は無く、例えば押出しラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、無溶剤ラミネート法、ドライラミネート法、共押出しラミネート法等が挙げられる。
【0055】
本発明の延伸フィルム・シートは、そのままのフィルム・シートで用いたり、さらに成形品に成形し用いることができる。成形する際の成形方法としては、例えばフリードローイング、リッジフォーミング、プラグアンドリング成形、スリップ成形、真空成形、圧空成形、マッチドモールド成形等の成形法が挙げられる。中でも真空成形法が好ましく、真空成形法としては、例えば直接法、ドレイプ成形法、エア・スリップ法、スナップバック法、プラグ・アシスト法、エア・クッション法等が挙げられる。
【0056】
本発明の延伸フィルム・シートまたは延伸フィルム・シートを用いて作成した成形品としては、特に制限はなく、その中でも食品、飲料、工業製品や半製品、玩具、雑貨等の包装材料に好ましく用いることができる。
【0057】
本発明の延伸フィルム・シートまたは延伸フィルム・シートの成形品の具体例としては、例えば電子機器、自動車、機器、船、車両、航空機、原子力発電所等の絶縁材料、磁気テープ、強磁性薄膜テープ等のテープ;写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電機絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ用フィルム等のフィルム;液晶表示装置用部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルム;偏光板、光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラスに用いられる反射防止用フィルム;ディスプレイ防爆用フィルムのベースフィルム;液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等の光学シート;光学レンズ、スクリーン等に用いるレンズシート;救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;半導電フィルム、帯電防止フィルム、医薬フィルム等のフィルム等にも使用することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明は、耐衝撃性、環境温度安定性、耐熱性に優れる新規な延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料を提供することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0060】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0061】
〜芳香族アミドブロック共重合体の数平均分子量の測定〜
カラム(東ソー(株)製、商品名TSK−GEL GMHHR−H)を装着したGPC装置(東ソー(株)製、商品名HLC−8020)により、カラム温度40℃、流量0.4ml/分の条件下で、溶離液に20mmol/Lの塩化リチウム−N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いて測定し、標準ポリスチレン換算で算出した。
【0062】
〜芳香族アミドブロック共重合体中の芳香族アミド単位含量の測定〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中、室温の条件でH−NMRを測定し、芳香族基とラクトン単位のメチレン基のピーク強度比より算出した。
【0063】
〜芳香族アミドブロック共重合体の融点測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分、−100〜300℃の範囲で測定した。
【0064】
〜芳香族アミドブロック共重合体のタイプAデュロメータ硬さ〜
芳香族アミドブロック共重合体を圧縮成形した厚さ2mmのシートを用いて、タイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)を測定した。
【0065】
〜耐熱性〜
熱成形体を、150℃に設定したギアオーブン中に1時間放置し外観を目視観察した。
【0066】
合成例1(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でp−アミノフェノール763g(7.0モル)及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)2.1L、トルエン1.4Lを加え50℃に昇温し均一溶液を得た。別途、窒素導入管を備えた3L滴下ロートに、テレフタル酸ジクロライド710g(3.5モル)、NMP0.3L、トルエン1.4Lを加えて均一溶液とした。この溶液を先の溶液中に80℃を保ちながら30分かけて滴下し、さらに80℃で2時間反応させた。
【0067】
室温まで冷却後、固形分を吸引濾過により回収し、メタノール7Lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミドを得た。
【0068】
続いて、窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1045g(3.0モル)、炭酸エチレン555g(6.3モル)、触媒として炭酸ナトリウム0.95g(9.0ミリモル)、NMP6.0Lを加え、180℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、固形分を吸引ろ過により回収し、NMP5L、次いでメタノール7.5Lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1110g(収率85%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(a)と記す。
【0069】
【化2】

合成例2(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)896g(2.1モル)、ε−カプロラクトン2342g(20.5モル)、NMP5380gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.4g(4.1ミリモル)を加え、180℃で2時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)731g(2.1モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に250℃で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3100gを得た。
【0070】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量78000、融点225℃、タイプAデュロメータ硬さ95、芳香族アミド単位含量29重量%であった。
【0071】
合成例3(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)1309g(3.0モル)、ε−カプロラクトン1710g(15.0モル)、NMP5380gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.4g(4.1ミリモル)を加え、180℃で2時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)1068g(3.0モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を260℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に260℃で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3000gを得た。
【0072】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量72000、融点230℃、タイプAデュロメータ硬さ98、芳香族アミド単位含量44重量%であった。
【0073】
合成例4(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)716g(1.6モル)、ε−カプロラクトン3745g(32.8モル)、NMP4302gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート2.2g(6.5ミリモル)を加え、180℃で1時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)585g(1.6モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を230℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に230℃で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット4300gを得た。
【0074】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量82000、融点143℃、タイプAデュロメータ硬さ85、芳香族アミド単位含量17重量%であった。
【0075】
実施例1
合成例2で得られた芳香族アミドブロック共重合体10重量%、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]90重量%を、270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合した後に、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度80℃、延伸倍率3.5倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性をASTM D3420−95(2002年)に準拠し測定した。測定結果を表1に示す。
【0076】
実施例2
実施例1において、合成例2で得られた芳香族アミドブロック共重合体10重量%の代わりに合成例3で得られた芳香族アミドブロック共重合体5重量%、ポリエチレンテレフタレート90重量%の代わりに95重量%を用いた以外は実施例1と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0077】
実施例3
実施例1において、合成例2で得られた芳香族アミドブロック共重合体10重量%の代わりに合成例4で得られた芳香族アミドブロック共重合体20重量%、ポリエチレンテレフタレート90重量%の代わりに80重量%を用いた以外は実施例1と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0078】
実施例4
実施例1において、合成例2で得られた芳香族アミドブロック共重合体10重量%の代わりに合成例4で得られた芳香族アミドブロック共重合体1重量%、ポリエチレンテレフタレート90重量%の代わりに99重量%を用いた以外は実施例1と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0079】
実施例5
合成例2で得られた芳香族アミドブロック共重合体10重量%、ポリエチレン−2,6−ナフタレート[帝人化成(株)製、商品名テオネックスTN9065S]90重量%を、3000℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合した後に、300℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度120℃、延伸倍率3.5倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性をASTM D3420−95(2002年)に準拠し測定した。測定結果を表1に示す。
【0080】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融させた後に、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度100℃、延伸倍率3.5倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性をASTM D3420−95(2002年)に準拠し測定した。測定結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例6
実施例1で得られた熱処理した延伸フィルム・シートを圧空真空成形機(浅野研究所製)を用いて、ヒーター温度300℃、加熱時間30秒で真空成形を行った。金型は間口85mm×155mm、絞り深さ35mmの直方体状容器であり、包装容器に好適なものであった。
【0083】
得られた包装容器の耐熱性を評価したところ、変形が見られず耐熱性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体0.1〜99.9重量%及びポリエステル樹脂99.9〜0.1重量%からなる樹脂組成物よりなることを特徴とする延伸フィルム・シート。
【化1】

(1)
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
【請求項2】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム・シート。
【請求項3】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリ(ε−カプロラクトン)からなることを特徴とする請求項1または2に記載の延伸フィルム・シート。
【請求項4】
ポリエステル樹脂がテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上の単位からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の延伸フィルム・シート。
【請求項5】
ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート単独重合体、90モル%以上がポリエチレンテレフタレートである共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート単独重合体、90モル%以上がポリエチレン−2,6−ナフタレートである共重合体よりなる群から選ばれる1種以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の延伸フィルム・シート。
【請求項6】
1軸延伸または2軸延伸されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の延伸フィルム・シート。
【請求項7】
請求項6に記載の延伸フィルム・シートを、延伸温度+10℃〜ポリエステル樹脂の融点−10℃の温度範囲において熱処理することを特徴とする延伸フィルム・シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の延伸フィルム・シートを用いて作製した成形品。
【請求項9】
請求項8に記載の成形品からなる包装材料。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の延伸フィルム・シートからなる包装材料。

【公開番号】特開2006−328266(P2006−328266A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155524(P2005−155524)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】