説明

延伸フィルム及びその用途

【課題】石油原料であるポリプロピレンに植物由来原料であるポリ乳酸を配合すること環境負荷を低減する延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系重合体(A)50〜88重量%、乳酸(B)10〜50重量%、酸化チタンを除く微粒子(C)1〜20重量%、酸化チタンの微粒子(D)1〜20重量%、相溶化剤(E)0〜10重量%、((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、少なくとも一方向に延伸されてなる延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油原料であるポリプロピレンに植物由来原料であるポリ乳酸を配合すること環境負荷を低減する延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPフィルムと呼ぶことがある)等の延伸フィルムは、その優れた透明性、機械的強度、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。
またポリ乳酸は植物を原料とし、また生分解性を有していることからその延伸フィルムはOPP代替として着目されてるが、その価格は高く、また物性も大きく異なるために現在もその用途は大きく広がっていない。
【0003】
そこでポリプロピレンとポリ乳酸を微分散する方法として相溶化剤として無水マレイン酸変性の非結晶ポリプロピレン及びエチレンとグリシジルメタクリレートを共重合してなるエポキシ基含有共重合体、エチレンとグリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルを共重合してなるエポキシ基含有共重合体を用いることが提案されている(特許文献1)。
またチタネート系カップリング剤及び脂肪酸金属塩により粒子表面を疏水化処理したタルクと、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート又はポリ(ヒドロキシブチレート−ヒドロキシヘキサノエート)を含む植物由来のポリエステルと、ポリプロピレンとを含有する樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
【0004】
更に非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイ及び有機フィラーを含有し、かつポリオレフィンの含有量が30〜60質量%であるポリ乳酸系樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。
【0005】
また、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂を含有した樹脂を多層フィルムが提案されている(特許文献4)。
また、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸に更に相溶化剤としてエチレン系エラストマー、及びスチレン系エラストマー等と1種のビニル系単量体から形成されるセグメントを有する共重合体からなるフィルムが提案されている(特許文献5)
しかし二軸延伸フィルムはシート成形した後に縦、横延伸する工程があり、ポリプロピレンとポリ乳酸の相溶性だけがその要因ではなく、その延伸温度下での特性の違いによる延伸成形中のフィルムの破れ易さやその他の種々の要因が影響して、安定して良好な延伸フィルムを得ることは容易ではない状況である。
【0006】
【特許文献1】特開2009−96892
【特許文献2】特開2008−239858
【特許文献3】特開2008−56743
【特許文献4】特開2009−12465
【特許文献5】特開2009−13405
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリプロピレン及びポリ乳酸を含む延伸フィルム、特に二延伸フィルムを製造する際の成形性及び延伸フィルムの物性を改良することを目的とする。
ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)はその融点、溶融特性が異なり、当然のことながらその延伸条件が大きく異なっている状況において、それらを含む組成から外観、物性共に優れた延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムを成形することは、極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
ポリプロピレン系重合体(A) 50〜88重量%
ポリ乳酸(B) 10〜50重量%
酸化チタンを除く微粒子(C) 1〜20重量%
酸化チタンの微粒子(D) 1〜20重量%
及び
相溶化剤(E) 0〜10重量%
((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、少なくとも一軸方向に延伸されてなる延伸フィルムに関する。
【0009】
また、本発明は、上記の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)
から得られ、二軸押機により混連された後少なくとも一方向に延伸されてなることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【0010】
また、本発明は、
ポリプロピレン系重合体(A) 50〜88重量%
ポリ乳酸(B) 10〜50重量%
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、
シリカ、カオリンの群から選ばれる
少なくとも1種類であって、
その平均粒径が 0.1〜12μmである微粒子(C1) 1〜20重量%
平均粒径が0.05〜3ミクロン(μm)で
ある酸化チタンの微粒子(D) 1〜20重量%
及び
オレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体、
エポキシ基含有オレフィン系重合体、
不飽和カルボン酸変性ポリマー、炭化水素樹脂、
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体の
群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(E) 0〜10重量%
((A)、(B)、(C1)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、少なくとも一方向に延伸成形されてなる延伸フィルムである。
【0011】
また、本発明は、上記の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、二軸押機により混連された後、少なくとも一方向に延伸されてなることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、ポリプロピレン系重合体(A)が、プロピレンと共にエチレン、炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のコモノマーとのランダム共重合体であって、その融点が150℃以下であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)であることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、ポリ乳酸(B)が融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸(B1)であることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、ポリ乳酸(B)が融点200℃以上のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸(B2)であることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【0015】
また、本発明は、上記の延伸フィルムからなる基材層(I)と、その片面または両面に被覆層(II)として
ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)
から選ばれる重合体(A11) 50〜100重量%
非結晶性ないし低結晶性ポリ乳酸(B3) 0〜 50重量%
及び
平均粒径0.1から12ミクロン(μm)
のブロッキング防止剤(C2) 0〜 1重量%
からなる組成物
((A11)、(B3)及び(C1)の合計で100重量%とする。)を共押出により積層して成形されてなることを特徴とする延伸多層フィルムに関する。
【0016】
また、本発明は、延伸倍率が少なくとも一軸方向に3ないし12倍であること特徴とする上記の延伸フィルム又は延伸多層フィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、包装用途であることを特徴とする上記の延伸フィルム又は延伸多層フィルムに関する。
【0018】
また、本発明は、二軸延伸されてなることを特徴とする上記のいずれかの延伸フィルムに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無機充填ポリプロピレン延伸フィルム本来の特徴である隠蔽性、化粧性、紫外線カット性を損なわずに、特に成形性を損なわずに、これに植物由来原料であるポリ乳酸を配合することができる。
また、本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)として、比較的低融点である、プロピレンと共に、エチレン及び炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれるコモノマーとのポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を選定するとにより、外観、物性がより優れた延伸フィルムの成形が可能となる。
さらに、相溶化剤(E)として、オレフィン・(メタ)アクリレート共重合体、エポキシ基含有オレフィン重合体、不飽和カルボン酸変性ポリマー、炭化水素樹脂、ポリ乳酸と他の樹脂との分散体からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶化剤(E)を用いることにより分散性が向上し、ポリ乳酸の配合量の割合を高めることが可能となる。
さらに、ポリ乳酸として融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸、より好ましくは融点200℃以上のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸を選定することにより、安定した延伸成形が可能となり、外観、物性の優れた延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムを得ることができる。
なお、本発明の延伸フィルムは従来のポリプロピレン二軸延伸フィルムよりもその密度を10%程度減らせることができる。このように、本発明によれば、植物由来原料が配合された材料であるだけでなく、通常の場合よりは密度が低くすることができるという2つの方向で環境負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ポリプロピレン系重合体(A)
本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)には、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているポリオレフィン樹脂が例示される。これらは通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分としエチレン、他のα−オレフィンとの共重合体があり、例えば、プロピレンと共に、エチレン、炭素数4から10のα−オレフィン、例えばブテン、ヘキセン−1等のコノマーとのランダム重合体がある。
本発明においては、特にその融点が150℃以下であるポリプロピレン系重合体、中でもプロピレンと共に、エチレン及び炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれるコモノマーとの共重合体であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を用いることが、延伸温度を約140〜160℃の範囲とし、ポリ乳酸(B)が軟化、融解するよりも早く延伸することができ、延伸性が改良されるために好ましい。
尚、これらポリプロピレン(A)は1種あるいは2種以上の組成物、例えば分子量が異なるプロピレンの単独重合体の組成物、プロピレン単独重合体とプロピレンとエチレン、あるいは炭素数4から10のα―オレフィンとのランダム共重合体との組成物であってもよい。
【0021】
ポリ乳酸(B)
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が140〜200℃のL−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体であり、それぞれ、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%未満、中でも3重量%未満のポリ乳酸が好ましい。ここでD−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%以上のものは融点が140℃未満、または非晶性ないし低結晶性となり、延伸成形時にポリ乳酸相が軟化、融解するおそれがある。これらの中では、融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸が好適でる。
また本発明に係わるポリ乳酸は、融点が200〜230℃のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸を用いると、延伸時にポリ乳酸相が軟化、融解することを防止でき、特に好ましい。
なお、ポリ乳酸共重合体におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
本発明において使用することのできるポリ乳酸としては、L−乳酸或いはD−乳酸の単独重合体、ポリ−L−乳酸に少量のD−乳酸を共重合したポリマー、ポリ−D−乳酸に少量のL−乳酸を共重合したポリマーが例示される。乳酸との共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものであってもよい。ポリ乳酸(B)の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものを使用することができる。
【0022】
ポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
またステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸は,例えば光学純度95%以上のポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を二軸押出機で混練して得る方法があげられる。ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を併用する割合は、実質的に等量とする場合の他、得られるSC晶タイプのポリ乳酸の融点、物性などに応じて比率を変えることができる。
【0023】
酸化チタンを除く微粒子(C)
本発明に使用される微粒子は、酸化チタン(D)及び酸化チタン以外の有機、無機の微粒子である。酸化チタン以外の微粒子(C)としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機微粒子、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリン、合成雲母等の無機微粒子が例示される。
これらの微粒子(C)は、その平均粒径が0.1から12ミクロン(μm)であることが好適である。
【0024】
中でも、本発明においては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリン、タルクからなる群から選ばれる無機微粒子が好適であり、延伸成形の際に、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分との界面に剥離が起こり、フィルム内にボイドが形成される。
【0025】
炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは、結晶形として、カルサナイト、アラゴナイト、バテライトのいずれも使用でき、中でも好適な平均粒径として0.3〜6ミクロン(μm)である。市販品として、NCC〔日東粉化工業(株)製、商品名〕、サンライト〔竹原化学(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0026】
硫酸バリウム
硫酸バリウムは、重晶石から化学反応により製造した沈降性硫酸バリウムで、中でも好適な平均粒径は0.1〜2ミクロン(μm)である。市販品としては、沈降性硫酸バリウムTH、沈降性硫酸バリウムST〔バライト工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0027】
タルク
タルクは、天然に産出する含水ケイ酸マグネシウムで、中でも好適な平均粒径が0.1〜10ミクロン(μm)である。市販品として、PK、LMS〔富士タルク工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0028】
シリカ
シリカは、天然または合成で得られるケイ酸で、中でも好適な平均粒径は0.1〜12ミクロン(μm)、好ましくは1〜12ミクロン(μm)である。市販品としては、サイリシア〔富士シリシア化学(株)製、商品名〕、ヒューズレックスクリスタライト〔タツモリ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0029】
カオリン
カオリンは、天然に産出する含水ケイ酸アルミニウムで、中でも好適な平均粒径は0.5〜10ミクロン(μm)であるる。また、結晶水を除去したタイプも使用できる。市販品として、NNカチオンクレー〔土屋カチオン工業(株)製、商品名〕、ASP、サテントン〔エンゲルハルト(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0030】
酸化チタン(D)
酸化チタン(D)は、延伸フィルムの白色のために必要な成分である。
酸化チタン(D)は、その結晶形からアナタース型、ルチル型、ブルカイト型に分類されるが、いずれも使用することができ、中でも好適な平均粒径は0.1〜1ミクロン(μm)であり、さらに好ましくは0.15〜0.5ミクロン(μm)である。
また、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分への分散性を向上させるために、表面をアルミナ、シリカ、酸化亜鉛等の酸化物で被覆したり、脂肪族ポリオール等で表面処理したものを用いることが好適である。
市販品として、タイペーク〔石原産業(株)製、商品名〕、タイトン〔堺化学工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0031】
相溶化剤(E)
本発明の好適な態様においては、相溶化剤(E)が併用され、中でもオレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体、エポキシ基含有オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性ポリマー、炭化水素樹脂、ポリ乳酸と他の樹脂との分散体の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(E)が好適に用いられる。
オレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体には、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、プロピレン・アクリレート共重合体などを挙げることができる。
エポキシ基含有オレフィン系重合体には、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)が挙げられる。
その他相溶化剤(E)には、マレイン酸変性ポリマー並びに炭化水素樹脂を挙げることができる。
これらの相溶化剤(E)は、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分における各成分の均一混合、優れた分散性に寄与する。
【0032】
エチレン−メチルアクリレ−ト共重合体(EMA)
EMAは、エチレンモノマーにアクリル酸メチルエステルを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から延伸フィルムを得る際の相溶化剤として優れている。
市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等がある。
【0033】
エチレン−エチルアクリレ−ト共重合体(EEA)
EEAは、エチレンモノマーにアクリル酸エチルエステルを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から延伸フィルムを得る際の相溶化剤として優れた効果を有する。
市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等が挙げられる。
【0034】
エチレン-メタクリル酸共重合体
EMMAは、エチレンモノマーにメタクリル酸メチルモノマーを共重合させた樹脂であり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。
EMMAは、エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から延伸フィルムを得る際の相溶化に優れた効果を有する。市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等が挙げられる。
【0035】
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)
E−GMAは、グリシジルメタクリレートとエチレンを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。
エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレンとポリ乳酸のポリマーから延伸フィルムを得る際の相溶化剤としての優れた効果を有する。
市販品として、ボンドファスト〔住友化学社製、商品名〕等が挙げられる。
【0036】
不飽和カルボン酸変性ポリマー
不飽和カルボン酸変性ポリマーは、不飽和カルボン酸又はその無水物、そのエステル(ハーフエステルを含む)で変性されたポリマーである。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、さらにはこれらの誘導体、例えばこれらの酸とモノエポキシ化合物とのエステル化合物などであってもよい。
中でも、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル(ハーフエステルの場合がある)をポリオレフィン、スチレン系エラストマー等に導入してマレイン酸系の官能基を有するポリマーである。このようなポリマーとして、無水マレイン酸変性SEPS、無水マレイン酸変性SEBSなどがあり、さらにエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合体(たとえば、住化シーディエフ化学製の商品名ボンダインなど)がある。
これらの中でも、ポリエチレン等のエチレン系重合体、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体にマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルを導入したマレイン酸系変性ポリオレフィンが好適である。
市販品として、三井化学株式会社社製、商品名アドマー、三菱化学株式会社製の商品名モディック等が挙げられる。
【0037】
炭化水素樹脂
炭化水素樹脂としては、石油樹脂も使用することができ、クマロン・インデン樹脂、p−第三−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂、β―ピネン樹脂、α―ピネン樹脂、ジペンテンベース樹脂及びスチレン変成テルペン樹脂、合成ポリテルペン樹脂等のテルペン系樹脂、極性基を有しないテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂及び水素添加炭化水素樹脂等の石油系炭化水素樹脂、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンのペンタエリスリトール・エステル、水素添加ロジンのメチル・エステル、水素添加ロジンのトリエチレングリコール・エステル、ロジンエステルの金属塩及び酸価10以下の特殊ロジンエステル等のロジン誘導体、ジシクロペンタジエン等を原料
から得られるDCPD系炭化水素樹脂等があり、常温で液体、または融点が200℃以下のもの範囲のものが好適である。
融点が200℃より高い炭化水素樹脂は、延伸時に軟化し難く延伸性を阻害するおそれがある。
【0038】
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体には、ポリ乳酸に予め他の樹脂を配合分散した分散体であって、ポリブチレンテレフテレートアジペート(PBTA)中にポリ乳酸を分散したBASF社製Eco−vio等を挙げることができる。
本発明の好適な態様においては、相溶化剤(E)として、上記の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(E)が用いられる。
【0039】
本発明の延伸フィルムの組成には、上記の各成分の他に、フィルムの優れた諸物性を発揮させ、維持するために必要に応じて、以下の各成分を配合することが行われる。
すなわち、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
耐熱安定剤(酸化防止剤)としては、例えば、3,5―ジーt−ブチルー4−ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5―ジーt―ブチルー4―ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n−オクタデシルー3−(4'―ヒドロキシー3,5−ジーt―ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
【0040】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、高級脂肪酸のグリセリンエステル類、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0041】
本発明の延伸フィルムを得るには、上記する各成分を予め混合し、ポリマー成分が溶融する条件下において、混合した組成物、中でも二軸延伸押出機により混練された組成物から、シート状物を押出成形し、これを延伸して延伸フィルムとされる。
本発明において、各成分の割合は、以下の通りである。

ポリプロピレン系重合体(A) 50〜88重量%
ポリ乳酸(B) 10〜50重量%
酸化チタンを除く微粒子(C) 1〜20重量%
酸化チタンの微粒子(D) 1〜20重量%
及び
相溶化剤(E) 0〜10重量%
((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)
【0042】
また、本発明の好適な態様においては、以下の通りである。

ポリプロピレン系重合体(A) 50〜88重量%
ポリ乳酸(B) 10〜50重量%
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、
シリカ、及びカオリンの群から選ばれる
少なくとも1種類であって、
その平均粒径が0.1〜12μmである微粒子(C1) 1〜20重量%
平均粒径が0.05〜3ミクロン(μm)
である酸化チタンの微粒子(D) 1〜20重量%
及び
オレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体、
エポキシ基含有オレフィン系重合体、
マレイン酸系変性ポリマー、炭化水素樹脂、
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体
の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(E) 0〜10重量%
((A)、(B)、(C1)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)
【0043】
ポリプロピレン系重合体(A)は50重量%以上であることが望ましい。
また、ポリプロピレン系重合体(A)は、88重量%以下が好ましい。ポリプロピレン系重合体(A)が50重量%未満では延伸性が不十分となり、88重量%を越えると、相対的にポリ乳酸(B)の割合が10重量%以下となり、植物由来度、環境負荷低減効果が不十分となる。
【0044】
このように、ポリ乳酸(B)の量は10重量%以上であり、50重量%以下である。ポリ乳酸(B)の量が10重量%未満では環境負荷低減効果が不十分であり、50重量%を越えると、ポリ乳酸(B)の相が大きくなり、延伸時に軟化融解し成形性を損なうおそれがある。
【0045】
酸化チタンを除く微粒子(C)の量は、1重量%以上である。また、20重量%以下である。1重量%未満では、延伸時のボイドの形成が不十分となる傾向があり、得られる延伸フィルムの白化が不十分で、隠蔽性が不十分となる傾向がある。また、20重量%を越えると、得られる延伸フィルムが十分な強度とならない傾向がある。
これらの微粒子(C)の平均粒径は、上記するように種々異なるが、一般的に0.1ミクロン(μm)から12ミクロン(μm)の範囲が通常である。
また、無機微粒子の中でも、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリンから選ばれる少なくとも1種類以上の無機微粒子(C1)の量も、同様に1重量%以上である。さらに、20重量%以下である。中でも3重量%以上が好適である。さらに、10重量%以下が好適である。
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリンから選ばれる微粒子(C1)の量が1重量%未満では延伸時におけるボイドの形成が不十分となる傾向があり、20重量%を越えると、得られる延伸フィルムが脆くなる虞がある。
【0046】
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリンの群から選ばれる微粒子(C1)は、それぞれの平均粒径があるが、それらの平均粒径は0.1ミクロン(μm)以上であり、12ミクロン(μm)以下である。
【0047】
一方、酸化チタン(D)の量は0.05重量%以上、中でも3重量%以上、その中でも5重量%以上が好適である。また、20重量%以下であるが、中でも15重量%以下が好適である。
酸化チタン(D)の量は0.05重量%未満では得られる延伸フィルムの白色発色が不十分で隠蔽性に劣る虞がある。
【0048】
酸化チタン(D)の平均粒径は0.05μm以上であり、3μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.15μm以上、0.5μm以下である。酸化チタンの平均粒径は0.05μm未満ではハンドリングが悪く混練時に不均一を起こす虞があり、3μmより大きいと得られる延伸フィルムの白色発色が不十分で隠蔽性に劣る虞がある。
【0049】
相溶化剤(E)は、併用することが好ましい。併用する場合は、その合計量は10重量%以下である。さらに好ましくは5重量%以下である。相溶化剤の量が10重量%より多いと延伸時に軟化融解し延伸成形性を損なうおそれがある。
【0050】
本発明の延伸フィルムは、上記した各成分を、それぞれ上記の範囲でヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練し、延伸する方法等により得られる。
この中で特に高回転の二軸押出機を具備した二軸延伸機で成形し、混練後ペレットとしないで、直接Tダイよりシートとして押し出し、二軸延伸することが、ポリ乳酸相の凝集を抑えるために好ましい。
また、延伸は、少なくとも1方向に延伸して行われ、一軸延伸、二軸延伸のフィルムが提供される。二軸延伸の方法には、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれも採用することができる。
【0051】
被覆層(II)
本発明の延伸フィルムは、印刷性、ヒートシール性の向上のために必要に応じて上記した延伸フィルムからなる基材層(I)の片面または両面に被覆層(II)を設けた多層フィルムとすることができる。
【0052】
被覆層(II)の組成としては、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)から選ばれる重合体(A11)50〜100重量%、非結晶性ない低結晶性ポリ乳酸(B30)0〜50重量%、並びに ブロッキング防止剤(C11)0〜 1重量%からなる組成物を共押出しにより積層して成形することが好適である。これにより、低温シール性を付与することができる。
ここで、ポリ乳酸(B30)が50重量%を越えると、ヒートシール性を阻害するおそれがあり、また結晶性ないし低結晶性のポリ乳酸(B30)も同様にヒートシール性を阻害するおそれがあるので、非晶性ないし低結晶性のポリ乳酸を用いることが好ましい。
またブロッキング防止剤(C11)は、必要に応じて最大1重量%配合される。その平均粒径は通常1〜12ミクロン(μm)である。ブロッキング防止剤(C11)を添加することにより、ブロッキングを防止することができる。
【0053】
なお、被覆層(II)には、予め組成物を製造する際に、または製膜時に直接押出し機に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0054】
また、ポリプロピレン系重合体(A)あるいは、ポリプロピレン系重合体(A1)を、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムの被覆層に用いる場合には、ブロッキング防止剤(C11)を0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%を添加しておくと、ブロッキング防止性を有する二軸延伸フィルムとすることができる。
ブロッキング防止剤の量が0.01重量%未満では、得られる二軸延伸フィルムのブロッキング防止効果が充分でなく、一方、3.0重量%を越えると、得られる二軸延伸フィルムの表面が白化するとともに、表面の光沢が損なわれる傾向にある。
これらブロッキング防止剤と(C11)しては、種々公知のもの、例えば、シリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等を用い得る。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性の面から特に好ましい。
【0055】
本発明の延伸フィルム、延伸多層フィルムの平均厚みは、一般に約0.03ミリメートル(mm)から2ミリメートル(mm)である。
【0056】
本発明の積層フィルムは、従来ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが用いられていた用途に広く利用することができる。なかでも、各種の包装材として利用することができ、各種の袋状に二次成形して用いることも行われる。特に、溶断シール強度に優れているため、溶断シール袋として包装袋をはじめとする各種用途に用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムは、また、コールドシールにより製袋して包装副をはじめとする上記の包装に用いることができる。コールドシールによれば、熱を使用することなくシールされるので,フィルムの熱収縮がおこることがない。
フィルムどうしの接合には、一般にかしめ、接着剤等が用いられ、接着剤としてはスチレン・ブタジエンラテックス、カゼイン等を使用することができる。 また凹陥部の底に塗布する接着剤として、一般に、シリコン系の接着剤が使用される。接着剤としては、耐熱性の高いDFK(ジフェノール誘導体)樹脂接着剤や、熱硬化型のメラミン系接着剤が使用される。
また、アクリレート系接着剤、中でもα−シアノアクリレート系接着剤は被接着物表面や空気中の水分等のアニオン種により容易にアニオン重合を起こし、短時間で重合硬化することが知られており、この性質により幅広い材料を接着する瞬間接着剤として用いられている。
さらに、ポリオールとポリイソシアネートとの硬化反応を利用したウレタン系樹脂組成物は、耐久性、耐薬品性、伸長性、耐衝撃性等において優れた塗膜物性を示すことから、幅広く使用されている。 その他の接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコールとその架橋剤を含む水溶液やイソシアネート系接着剤、さらにはエポキシ樹脂や、UV硬化型樹脂を使用してもよい。
コールドシールによれば、プロピレンランダム共重合体などの加熱による収縮を防止することができ、更に加熱の必要がないため、エネルギー量も少なく環境負荷も低減され、生産設備が低コストとなり工程管理が容易になる。
【0057】
本発明の積層フィルムを包装材として用いる場合は、例えば、冷凍食品及びチョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、化粧品等の嗜好品、また隠蔽性に優れることからカセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、およびそれらの集積包装材料等の、箱物包装の包装用フィルムとして好適に使用できる。
また、本発明の積層フィルムは、これら用途に限らず、例えば、ラーメン、うどん、そば、焼きそば等の即席カップ麺食品、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルム、さらには、エアゾール製品、インテリア製品、一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、調味料などの集積シュリンクパックや、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等、種々の包装用フィルム等に用いることができる。
【0058】
実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0059】
(1)ポリプロピレン
(1−1)r−PP(ランダムPP)
株式会社プライムポリマー社製 商品名:F327
Tm :138℃
MFR:7(g/10分)

(1−2)h−PP(ホモPP)
株式会社プライムポリマー社製 商品名:F153ZG
Tm :160℃
MFR:3(g/10分)
【0060】
(2)ポリ乳酸
D−乳酸含有量:1.9重量%、
MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7 (g/10分)
融点(Tm) :168.0℃
ガラス転移点(Tg):59.8℃
密度 :1.28(g/cm

【0061】
(3)炭酸カルシウム
日東粉化化学工業株式会社製 NCC410
比表面積:13,000(cm/g)、
平均粒径:1.71(μm)、
比重 :2.7
【0062】
(4)酸化チタン
石原産業株式会社製 タイペークPF739
比表面積:10(m/g)、
平均粒径:0.21(μm)、
比重 :4.2
【0063】
(5)相溶化剤
(5−1)EMMA
三井・デュポン ポリケミカル株式会社製 ニュクレルAN4213C
Tm :88℃
MFR(190℃):10(g/10分)

(5−2)EEA
三井・デュポン ポリケミカル株式会社社製 エルバロイ2715AC
Tm :97℃
MFR(190℃):7(g/10分)

(5−3)EMA
三井・デュポン ポリケミカル株式会社製 エルバロイ1820AC
Tm :92℃
MFR(190℃):8(g/10分)

(5−4)マレイン酸系変性ポリマー
無水マレイン酸変性プロピレン系ポリマー
三井化学社製 ADMER QE6014
Tm :140℃
MFR(230℃):4(g/10分)

(5−5)E−GMA
住友化学社製 ボンドファストE
Tm:95℃
MFR(190℃):3(g/10分)

(5−6)炭化水素樹脂
ジシクロペンタジエン系原料から得られるDCPD系炭化水素樹脂
分子量:132
融点 :33.6℃
沸点 :170℃

(5−7)ポリ乳酸と他の樹脂との分散体
BASF社製 Eco−vio
Tm:110℃、146℃
MFR(190℃):3(g/10分)
【0064】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)延伸性
同じ条件で3回バッチ延伸を行った際に3枚とも破れがなく延伸できたものを℃、3回の内2回は破れがなく延伸できたものを℃、3回の内1回のみの破れがなく延伸できたものを℃、また3回の内1回も破れがなく延伸できなかったものを×とした。
本評価は延伸条件のシビアリティを示しており、℃は非常に延伸しやすいことを、℃は延伸出来るがトラブルが起きる可能性もあることを、℃は延伸がシビアであり適正な範囲を外れるとトラブルを起こしやすいことを、×は延伸出来ないことを示している。
【0065】
(2)表面観察
延伸フィルムを目視で観察し、ムラのないものを℃、一部に延伸ムラがあるものを℃、延伸ムラの部分が50%を越えるものを℃、全面に延伸ムラがあるものを×とした。
【0066】
(3)隠蔽性
延伸フィルムを日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、光線透過率(TT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
【0067】
(4)引張り試験
延伸フィルムの試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断強度(MPa)、破断伸度(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0068】
(3)熱収縮率
延伸フィルムから長さ:120mm、幅:15mmのサンプルを切出し、100mm間隔で標線を記入した。次いで、該当フィルムを100〜120℃に設定したオーブン内に15分放置した後、取り出し室温に15分以上放置し、標線間の長さ(L:mm)を測定した。〔(100―L)/100〕×100(%)の値を加熱収縮率(%)とした。
【0069】
実施例1A〜7B
<組成物の製造>
表1の各原料を総量100gとなるように計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(二軸混練機)を用いて溶融混練して組成物を得た。
その際の混練条件は以下の通りである。

実施例1Aないし7A(r−PPベース)
温度:210℃、回転数:60rpm(1分)℃120rpm(9分)

実施例1Bないし7B(h−PPベース)
温度:250℃、回転数:60rpm(1分)℃120rpm(9分)
【0070】
<プレスシートの製造>
上記の組成物を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:2.5mm、大きさ:250mm×250mmのステンレス製矩形の金枠に入れてプレス成形し、プレスシートを得た。
その際のプレス条件は以下の通りである。

実施例1A〜7A(r−PPベース)
プレス温度:210℃、初圧:10分(圧力10kf)、ガス抜き:5回、
高圧時間:2分(圧力250kgf)、冷却温度:20℃、
冷却:5分(圧力250kgf)
【0071】
実施例1B〜7B(h−PPベース)
プレス温度:250℃、初圧:10分(圧力10kf)、ガス抜き:5回、
高圧時間:2分(圧力250kgf)、冷却温度:20℃、
冷却:5分(圧力250kgf)
【0072】
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシートを、バッチ二軸延伸装置(ブルックナー製KARO4)を用いて、延伸倍率:5×10、延伸速度:2.1m/分で逐次延伸した。その際には予熱温度と時間を検索し、表1(その1)、表記載の条件で良好な成形体を得た。条件は以下の通りである。

実施例1A〜7A(r−PPベース)
予熱温度:140℃、
予熱時間:30〜60秒
熱固定処理:150℃×30秒、緩和率:7%

実施例1B〜7B(h−PPベース)
予熱温度:150〜160℃、
予熱時間:30〜60秒
(約10〜20℃予熱温度が高い)
熱固定処理:160℃×60秒、緩和率:7%
【0073】
得られた二延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1(その1)、表1(その2)、表1(その3)及び表1(その4)に示す。








【0074】

表1(その1)








表1(その2)





表1(その3)






表1(その4)



【0075】
表1(その1)、表1(その2)、表1(その3)及び表1(その4)から明らかなように、ポリ乳酸を15重量%配合した実施例1A〜7Bではいずれも良好な隠蔽性を持った二軸延伸フィルムを得ることができる。
その中でも特にr−PPをベースとした実施例1A〜7Aの延伸フィルムは延伸性に優れている。また相溶化剤としてE−GMA、炭化水素樹脂を配合した実施例6A、7A、6Bは延伸フィルムのムラが小さく特に優れている。
【0076】
実施例9、10
中間層の構成を表2(その1)に示す構成とし、これらを東芝機械製二軸押出機で200℃×430rpmの条件で混練した。
また、被覆層として粒径3μmのシリカ1500ppmを配合したポリプロピレン(A)を準備した。
これらを用いて、被覆層/中間層/被覆層の3層フィルムをブルックナー製逐次二軸延伸機で連続成形し、実施例9、10の2種3層の延伸フィルムを得た。
延伸倍率は、長手方向4.0倍、幅方向8.0であり、延伸温度は 長手方向100℃、幅方向140℃であった。
その結果を表2(その2)に示す。













【0077】
表2(その1)










表2(その2)

【0078】
ポリ乳酸を配合した実施例9、10はポリ乳酸を配合しない参考例に比べて密度が約10%低下しており、フィルムの軽量化が図られている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系重合体(A)50〜88重量%、ポリ乳酸(B)10〜50重量%、酸化チタンを除く微粒子(C)1〜20重量%、酸化チタンの微粒子(D)1〜20重量%、及び相溶化剤(E)0〜10重量%((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、少なくとも一方向に延伸されてなる延伸フィルム。
【請求項2】
上記の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)((A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、二軸押機により混練された後に少なくとも一方向に延伸されてなることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
ポリプロピレン系重合体(A)50〜88重量%、ポリ乳酸(B)10〜50重量%、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリンの群から選ばれる少なくとも1種類であって、その平均粒径が 0.1〜12μmである微粒子(C1)1〜20重量%、平均粒径が0.05〜3ミクロン(μm)である酸化チタンの微粒子(D)1〜20重量%、及びオレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体、エポキシ基含有オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性ポリマー、炭化水素樹脂、及びポリ乳酸と他の樹脂との分散体の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(E)0〜10重量%((A)、(B)、(C1)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、少なくとも一方向に延伸成形されてなる延伸フィルム。
【請求項4】
上記の(A)、(B)、(C1)、(D)及び(E)((A)、(B)、(C1)、(D)及び(E)の合計で100重量%とする。)から得られ、二軸押機により混練された後に少なくとも一方向に延伸されてなることを特徴とする請求項3に記載の延伸フィルム。
【請求項5】
ポリプロピレン系重合体(A)が、プロピレンと共にエチレン、炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のコモノマーとのランダム共重合体であって、その融点が150℃以下であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項6】
ポリ乳酸(B)が、融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸(B1)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項7】
ポリ乳酸(B)が、融点200℃以上のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸(B2)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の二軸延伸フィルムからなる基材層(I)と、その片面または両面に被覆層(II)として、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)から選ばれる重合体(A11)50〜100重量%、非結晶性ないし低結晶性のポリ乳酸(B30)0〜50重量%、及び平均粒径0.1から12ミクロン(μm)のブロッキング防止剤(C11)0〜1重量%からなる組成物((A11)、(B30)及び(C11)の合計で100重量%とする。)を共押出により積層して成形されてなることを特徴とする延伸多層フィルム。
【請求項9】
延伸倍率が少なくとも一軸方向に3ないし12倍であること特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の延伸フィルム又は延伸多層フィルム。
【請求項10】
包装用途であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の延伸フィルム又は延伸多層フィルム。
【請求項11】
二軸延伸されてなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の延伸フィルム又は延伸多層フィルム。
【請求項12】
密度が0.72g/cc以下であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の延伸フィルム又は延伸多層フィルム。

【公開番号】特開2011−116929(P2011−116929A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64549(P2010−64549)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】