説明

延伸フィルム

【課題】 帯電防止性に優れた延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して有機化層状粘土0.1〜30重量部からなる延伸フィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機化層状粘土からなる延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物の促成栽培などを目的に、ハウス栽培やトンネル栽培が行われており、ハウス材やトンネル材に用いられる農業用フィルムは、塩化ビニルやポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂が用いられている。
【0003】
しかし、ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂は、水をはじき易い為フィルム内面に付着した水によりフィルムが曇り、農作物に障害を引き起こす等の課題があるため、防曇性が求められている。
【0004】
また、ポリオレフィンは構造上帯電しやすい性質を有しており、埃などの付着による透明性低下や印刷不良等様々な問題が発生する。
そこで、従来から各種改善方法が提案されている。
【0005】
第一の方法は、ポリオレフィン樹脂に防曇剤、帯電防止剤と呼ばれる低分子界面活性剤を練り込み、フィルム成形後ポリオレフィンフィルム表面に界面活性剤が滲み出し、防曇性、帯電防止性を発現させるものであり、練り込み型と呼ばれる。界面活性剤として脂肪酸エステル系が頻繁に使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この方法は、通常のフィルム製造装置によりフィルム化することが可能であり、コスト面で優れている。
【0006】
第二の方法は、ポリオレフィン系樹脂をフィルム化した後、液状の界面活性剤、或いはシリカやアルミナ等のゾルをバインダーを介し、コーティングまたは噴霧し、防曇性、帯電防止性を発現させるものであり、塗布型と呼ばれている(例えば、特許文献3参照)。この方法は、一般的に防曇性の持続性に優れている。
【0007】
第三の方法は、ポリオレフィン樹脂に高分子型帯電防止剤を練り込み、その相構造を制御することにより、帯電防止性能を発現させるものである(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−209940号公報
【特許文献2】特開平9−87421号公報
【特許文献3】特開平7−266518号公報
【特許文献4】特開平1−163234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に記載の第一の方法は、フィルム表面に滲み出した界面活性剤がハウス内面の付着水分により流出したり、揮発したり、削れることにより、防曇性、帯電防止性が持続しないといった問題がある。また、特許文献3に記載の第二の方法は、コーティング設備等の費用が高いといった問題がある。さらに、特許文献4に記載の第三の方法は、帯電防止効果がある程度持続するものの、その帯電防止効果は小さいという課題があった。
【0010】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、特にハウス材、トンネル材等農業用フィルム及び食品等の包装材料等に要求される、帯電防止性に優れた延伸フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土からなる延伸フィルムが、帯電防止性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して有機化層状粘土0.1〜30重量部からなる延伸フィルムに関するものである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、特に制限は無く公知のものを用いることができる。中でも、得られる延伸フィルムが柔軟であることからJIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定した酢酸ビニル含量が、3〜50重量%であることが好ましく、5〜45重量%がさらに好ましく、5〜42重量%が特に好ましい。
【0014】
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体の、JIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定したメルトマスフローレート(以下、MFRと記す。)は、得られる延伸フィルムの加工性に優れることから、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.2〜50g/10分がより好ましく、0.5〜30g/10分であることが更に好ましい。
【0015】
また、本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、不飽和カルボン酸、及び/又はその誘導体で変性されていても良い。不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル等が挙げられる。中でも得られる後述する有機化層状粘土の樹脂中への分散性が向上することから無水マレイン酸が好ましい。
【0016】
エチレン−酢酸ビニル共重合体中の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の量は、有機化層状粘土との相溶性が向上することから0.01〜2.0重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましい。
【0017】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルは部分的に鹸化されていても構わない。
【0018】
本発明で用いる有機化層状粘土は、特に制限は無く公知のものを用いることができる。中でも、得られる延伸フィルムの透明性に優れることから有機化層状粘土は有機オニウムイオン変性層状粘土であることが好ましい。
【0019】
有機オニウムイオンとしては、例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン等が挙げられる。中でも得られる延伸フィルムの透明性が向上することからアンモニウムイオンが好ましい。
【0020】
アンモニウムイオンとしては特に制限は無く、例えばメチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、水素化タローアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン,トリオクチルアンモニウムイオン,トリメチルステアリルアンモニウムイオン、トリメチルオクタデシルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリメチル水素化タローアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、水素化タロージメチルベンジルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシル水素化タローメチルアンモニウムイオン、ジ水素化タローメチルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムイオン等のアルキルアンモニウムイオン;ジヒドロキシエチルタローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチルタローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチル水素化タローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルオレイルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチルオレイルアンモニウムイオン、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン等のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン;ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオン等のポリオキシアルキルアンモニウムイオンを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
中でも得られる延伸フィルムの透明性が特に向上することから、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオンが好ましく、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0022】
層状粘土としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト;合成マイカ等のマイカ;バーミキュライト、パイロフィライト等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも樹脂中への分散性が良いことからモンモリロナイト、合成マイカが好ましい。
【0023】
本発明で用いる有機化層状粘土は、樹脂中への分散性が向上することから、450℃に加熱した際の熱減量が20〜60wt%であることが好ましく、25〜45%であることが更に好ましい。熱減量は、有機化層状粘土を室温から10℃/分で450℃まで加熱した際の加熱前と加熱後の重量の差である。
【0024】
本発明で用いる有機化層状粘土の量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し0.1〜30重量部であり、0.5〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部が特に好ましい。0.1重量部未満では得られる延伸フィルムの帯電防止効果が発現しない。又、30重量部を超えると、樹脂の溶融粘度が高くなり、フィルム加工性が悪くなってしまう。
【0025】
本発明で用いる有機化層状粘土は、例えば層状粘土の層間の陽イオンを有機オニウムイオンでイオン交換することにより得られる。
【0026】
具体的には、例えば層状粘土を水中に分散させた後、有機塩を添加し攪拌後に生成物を固液分離、洗浄して副生塩を除去した後、乾燥、粉砕して得ることができる。
【0027】
有機塩としては、有機オニウム塩等が挙げられる。有機オニウム塩としては、例えばアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えばトリオクチルメチルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジ水素化タロージメチルアンモニウム塩、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム塩、及び/又はジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウム塩等のアンモニウム塩を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
有機イオンの対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
有機塩の量は、樹脂中への分散性が優れることから、層状粘土100重量部に対して25〜150重量部が好ましく、30〜100重量%が更に好ましい。
【0030】
本発明の延伸フィルムは、着色を抑制できることから酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。
【0031】
酸化防止剤としては、何ら制限はなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられ、これらの酸化防止剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることができる。
【0032】
これらの酸化防止剤の中でも、着色を抑制する効果が大きいことから、フェノール系酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0033】
酸化防止剤の量は、得られる延伸フィルムの着色を抑制できることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.1〜5000ppm添加することが好ましく、5〜4000ppmがさらに好ましく、10〜3000ppmが特に好ましい。
【0034】
本発明の延伸フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で各種ポリマー、各種添加剤を含有していても良い。
【0035】
各種ポリマーとしては、何ら制限はなく、例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、さらにこれらポリオレフィン樹脂の塩素化物等を挙げることができる。さらに詳しくは、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
各種添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工補強剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、有機充填剤等の他、農業用ハウス材やトンネル材に使用される保温剤、防霧剤等を挙げることができる。
保温剤としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が例示され、防霧剤としては、フッ素化多価アルコール類やフッ素化ポリエステルオリゴマー等のフッ素系化合物等が例示される。
本発明の延伸フィルムを得る方法は、本発明の延伸フィルムを製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土を、例えば溶液混合、溶融混合等の方法により混合した後、フィルム化と延伸を同時に、又は別々に行うことにより製造することが可能であり、混合方法は中でも効率良く混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0036】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点以上で、エチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土が分解しない温度以下であることが好ましく、例えば70〜200℃が好ましく、特に好ましくは90〜160℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂組成物の温度が100℃以上160℃以下になるように温度設定することが好ましい。
延伸方法は、樹脂に延伸操作が加わるものであれば特に限定するものではなく、例えば、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダー成形、押出成形等が挙げられる。インフレーション成形やTダイキャスト成形においては共押出法により、またこれら成形法により得られた延伸フィルムを、サンドウィッチラミネート法、ドライラミネート法、サーマルラミネート法等の張り合わせにより、多層フィルムとすることも可能である。
【0037】
インフレーション法による成形では、リングダイから溶融押し出しされた円筒状シートに対して、所定のドロー比(MD方向の延伸倍率に相当する)およびブロー比(TD方向の延伸倍率に相当する)で延伸してもよい。
Tダイキャスト法による成形では、Tダイから押し出した溶融体シートを、ロール法、テンター法等の公知の方法により、室温から樹脂の軟化点付近において、少なくとも1軸方向に延伸を行う。フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)、及び、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)に対して同時二軸延伸、又は逐次二軸延伸してもよい。
【0038】
本発明の延伸フィルムを作製する際のTD方向とMD方向の延伸倍率は、得られる延伸フィルムの表面抵抗率が低下し、帯電防止性が向上することから、MD方向の延伸倍率(またはドロー比)として、1.1〜50が好ましく、1.2〜40がさらに好ましく、1.3〜30が特に好ましい。また、TD方向の延伸倍率(又はブロー比)として、1.1〜20が好ましく、1.2〜15がさらに好ましく、1.3〜10が特に好ましい。
本発明の延伸フィルムを作製する際のTD方向とMD方向の延伸倍率の積は、本発明で得られる延伸フィルムの表面抵抗率が低下し、帯電防止性が向上することから、1.2以上であることが好ましく、2以上がさらに好ましく、3以上が特に好ましい。
本発明の延伸フィルムの厚みは、本発明の目的が達成させる限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が少ないことから、1μm〜2mmの厚みであることが好ましい。
【0039】
また本発明の延伸フィルムは、少なくとも1層以上の該フィルムからなる多層フィルムとしてもよい。
【0040】
上記の多層フィルムに供されるその他の層に関する樹脂としては、特に限定されるものではないが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等を例示することができる。
本発明の延伸フィルムの表面抵抗率は、帯電防止性に優れることから、1×1012Ω以下が好ましく、5×1011Ω以下が更に好ましく、1×1011以下が特に好ましい。
本発明の延伸フィルムは、帯電防止性が要求される用途に使用することができ、例えばハウス材やトンネル材等の農業用フィルム、粉末や顆粒状の医薬品包装フィルム;青果、粉末食品等の包装、プリン、ゼリー、茶碗蒸等容器の蓋材、ラップ等の食品用フィルム;電気部品、電子部品、半導体、IC等の電気・電子部品包装用フィルム;フラットパネルディスプレイ、金属板、木板、化粧板、樹脂板等のマスキングフィルムに使用することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明で得られる延伸フィルムは、帯電防止性に優れており、例えば、農業用フィルム、医薬品包装フィルム、食品用フィルム、電気・電子部品包装用フィルム、マスキングフィルムに有用である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0043】
[原料]
実施例、比較例の中で用いた試薬等は、以下の略号を用いて表す。
【0044】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体>
EVA−1;ウルトラセン(商標登録)630(酢酸ビニル含量15重量%、MFR=1.5g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−2;ウルトラセン(商標登録)537(酢酸ビニル含量6重量%、MFR=8.5g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−3;ウルトラセン(商標登録)634(酢酸ビニル含量26重量%、MFR=4.3g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−4;ウルトラセン(登録商標)750(酢酸ビニル含量32重量%、MFR=30g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−5;ウルトラセン(登録商標)760(酢酸ビニル含量42重量%、MFR=70g/10分)、東ソー株式会社製
<有機化層状粘土>
有機化モンモリロナイト−1;Cloisite(登録商標)30B(ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオン変性モンモリロナイト、450℃加熱減量;25wt%)、SOUTHERN CLAY PRODUCTS社製
<層状粘土>
マイカ−1;ソマシフ(登録商標)ME−100(層間にナトリウムイオンを有する膨潤性合成フッ素マイカ)、コープケミカル株式会社製
<酸化防止剤>
イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤)、日本チバガイギー株式会社
[物性試験方法]
(1)帯電防止性
JIS K6911準拠し、表面抵抗率を測定した。0.5mmの厚さの延伸前、延伸後のフィルムを、23℃、50RHの環境下で24h静置させ、測定用サンプルとした。
【0045】
表面抵抗率測定機としてアドバンテスト社製R8340AとR12702Aを用い、23℃、50%RHの環境下で、加電圧500Vにおける1分後の表面抵抗率を測定した。帯電防止性能は、表面抵抗率が1×1012Ω以下であるものを良好とした。
(2)熱減量
示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA6200、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、有機化層状粘土を室温から10℃/分で450℃まで加熱し、加熱前の重量と加熱後の重量の差より熱減量を求めた。
【0046】
参考例1
水500mlに合成マイカ−1を15g分散させた。これに、水150mlにヤシアルキルメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライドを5.4g溶解した水溶液を撹拌しながら添加し2時間撹拌した。生成物を固液分離、洗浄して副生塩類を除去した後、乾燥、粉砕しアンモニウムイオン変性合成マイカを得た。これを有機化合成マイカ−1とする。450℃に加熱された際の熱減量は26wt%であった。
【0047】
参考例2
ヤシアルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド5.4gの代わりに、ジメチルジ水素化タローアンモニウムクロライド10.2gを使用した以外は参考例1と同様にしてアンモニウムイオン変性合成マイカを得た。これを有機化合成マイカ−2とする。450℃に加熱された際の熱減量は40wt%であった。
【0048】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−1を100重量部、有機化層状粘土として有機化合成マイカ−1を5重量部の比率で、タンブラーブレンダーを用いて混合した。混合原料を2軸押出機(日本製鋼所製;TEX−30)を用いて、温度140℃、押出量3kg/hの条件にて溶融混練し、エチレン−酢酸ビニル樹脂組成物のペレットを作製した。このペレットを圧縮成形機で150℃の条件にてプレスし、延伸前のフィルムとして表面抵抗率を測定した。
得られたペレットを押出機に供給し、樹脂温度150℃で、MD方向の延伸倍率5倍、TD方向の延伸倍率2倍の条件でインフレーション成形し、厚さ0.5mmの延伸フィルムを作製した。
【0049】
【表1】

得られた延伸フィルムは、表面抵抗率が低く、帯電防止性が優れていた。
【0050】
比較例1〜3
表1に示した配合でエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、層状粘土を混合したこと以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。帯電防止性の評価結果を表1に示す。
比較例4
表1に示した配合でエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、層状粘土を混合しペレットを得た後、圧縮成形機((株)神藤金属工業所社製)にて、温度150℃、時間3分、圧力10MPaの条件でプレスし、厚さ0.5mmの延伸していないフィルムを作製した。帯電防止性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1では、有機化層状粘土を添加しなかったため、帯電防止性が劣っていた。
【0051】
比較例2では、有機化層状粘土の量が多かった為、延伸操作中にフィルムが裂けてしまった。
比較例3では、有機化粘土ではなく、有機化していない層状粘土を使用したため、帯電防止効果が劣っていた。
比較例4では、延伸を施さなかった為、帯電防止性が劣っていた。
【0052】
実施例2〜5
表1に示した配合でエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、酸化防止を混合し、表1に示した延伸倍率で延伸したこと以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。帯電防止性の評価結果を表1に示す。
【0053】
得られた延伸フィルムは、表面抵抗率が低く、帯電防止性が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び有機化層状粘土0.1〜30重量部からなることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項2】
延伸フィルムの表面抵抗率が1×1012Ω以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
有機化層状粘土が有機オニウムイオン変性層状粘土であることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかの項に記載の延伸フィルム。
【請求項4】
有機化層状粘土がアンモニウムイオン変性層状粘土であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の延伸フィルム。
【請求項5】
有機化層状粘土の層状粘土がモンモリロナイト及び/又は合成マイカであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の延伸フィルム。
【請求項6】
エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFR(JIS K6924−1(1997年版)に準拠)が0.1〜100g/10分であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の延伸フィルム。
【請求項7】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量(JIS K6924−1(1997年版)に準拠)が5〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の延伸フィルム。


【公開番号】特開2012−136664(P2012−136664A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291321(P2010−291321)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】