説明

延伸フィルム

【課題】延伸フィルムに発生するシワの抑制と、延伸フィルムの二軸性を所望の範囲に抑えることが可能であり、また簡便な設備で製造可能であり、位相差板として好適に使用可能な光学特性を有する延伸フィルムの提供を課題とする。
【解決手段】幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを実施する。そして、長尺状フィルムの幅方向の片側端部は、屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動し、前記片側端部と対になる他方側端部は、屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動する。さらに、第1の工程又は第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の片側端部又は両側端部で屈曲進行を行う。また、第1の工程又は第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が同一の側に進行する進行形態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は延伸フィルムに関するものである。本発明は、特にフィルムのいずれかの辺に対して傾きのある分子配向軸を有し、優れた光学特性を有する延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやテレビジョン受信機用のモニター(ディスプレイ)に代表される液晶表示装置が、種々の表示手段として広く普及している。これらの液晶表示装置において、液晶セルの両側に偏光子を配置し、さらに液晶セルと偏光子の間に位相差フィルムを設けることで表示の視認性を向上させる技術が知られている。
【0003】
ここで位相差フィルムは、液晶表示装置の形状に合わせて長方形に成形される。また液晶表示装置に使用される位相差フィルムの性質として、長方形の各辺に対して斜め方向に分子配向されていることが要求される場合がある。このようなフィルムは、帯状の高分子フィルムを延伸したり、弛緩熱処理することによって所望の方向に分子配向させて製造することが一般的である。このような延伸フィルムの製造方法として特許文献1に開示されている方法がある。
【0004】
特許文献1に開示されている発明は、フィルム(ポリマーフィルム)の両端を保持して長手方向へ進行させる際に、一方の端の保持開始点から保持解除点までの距離を他方端の保持開始点から保持解除点までの距離に比べて長くするものである。そのことにより、開始時において長手方向(進行方向)の位置が同じである両端の保持位置が、フィルムが長手方向へ進行すると、一方端の保持位置が他方端の保持位置に対して進行方向の後方側にずれることとなる。そのため他方端の保持位置が進行方向後方側へ引っ張られたような状態となり、フィルムを斜め方向に延伸することができる。
【0005】
ここで高分子フィルムに延伸や弛緩熱処理を行うと、高分子フィルムにシワが発生してしまうという問題がある。高分子フィルムにシワが発生すると、形成する位相差フィルムの平面性が悪化して品質が劣化してしまう。そこで、高分子フィルムに発生するシワを抑制ないし除去しつつ高分子フィルムを延伸又は弛緩熱処理するための種々の方法が考案されている。そのような方法として、例えば、特許文献2に開示されている方法がある。
【0006】
特許文献2に開示されている方法では延伸フィルムを熱弛緩させる際に、フィルムの幅方向に引張力を与えると共に、フィルムの自重を支える手段を設けてフィルムのシワの発生を抑えている。
【0007】
また延伸フィルムの製造方法として、他に特許文献3,4に記載された先行技術がある。
特許文献3に記載の発明では、延伸フィルムの両端を保持して長手方向に進行させる際に、延伸フィルムの両端を共に外側に向かって広げるものである。そして特許文献3に記載の発明では、さらに延伸フィルムの両端を共に内側に向かって移動させている。
また特許文献4に記載の発明では、延伸フィルムの両端を保持して長手方向へ進行させる際に、その進路を全体的にカーブさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−86554号公報
【特許文献2】特開平8−108467号公報
【特許文献3】特開2009−119774号公報
【特許文献4】特開2005−262678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている方法を含めた従来のフィルムの製造方法では、高分子フィルムを延伸した際に発生するシワを十分に抑制できない場合があった。またシワの発生を抑制ないし防止できたとしても、作製した延伸フィルムを位相差フィルムとして用いた場合に、二軸性が極めて高くなってしまうという問題があった。この問題は、Nz係数が0.5乃至2.5の範囲にすることが困難であるという点である。より具体的には、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが一般的な位相差板に求められる下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
の関係を満たすことができないという問題である。
つまり、従来技術の製造方法では、シワの抑制又は防止と、二軸性の低減とを同時に実現することはできなかった。
【0010】
また特許文献1,3,4に記載された方法によると、製造装置が占有する床面積が大きく、工場内に多くの台数の製造装置を設置することができないという問題がある。さらに、特許文献3,4に記載された延伸フィルムの製造方法は、従来のテンター式延伸機では実施できないので、専用の延伸機が必要となる。つまり、特許文献3,4に記載された方法で延伸フィルムを製造しようとすると、新たな専用の延伸機を導入しなければならず、導入コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0011】
本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、延伸フィルムに発生するシワを抑制するとともに、延伸フィルムの二軸性を所望の範囲に抑えることが可能であり、簡便な設備で製造可能である延伸フィルムの製造方法によって製造された延伸フィルムであって、位相差板として好適に使用可能な光学特性を有する延伸フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための発明は、
長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で各端部をそれぞれ独立した一定の軌跡に沿って移動させ、長尺状フィルムを所望の方向に延伸する延伸フィルムの製造方法で製造された延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムの製造方法は、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、前記第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを少なくとも一度ずつ実施するものであり、
長尺状フィルムの幅方向の片側端部は、寸前の進行方向とは異なる方向へ進行する屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動するものであり、
前記片側端部と対になる他方側端部は、前記屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動するものであり、
前記第1の工程及び前記第2の工程では幅方向のいずれか一方又は両方の端部で屈曲進行が行なわれるものであって、
前記第1の工程又は第2の工程の少なくとも一方は、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部がいずれも進行方向に向かって右側又は左側の同一の側に屈曲進行される進行形態を含み、
最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの進行方向と、最後に行われた第2の工程の後での長尺状フィルムの進行方向が略同じであり、
前記延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
を満たすことを特徴とする延伸フィルムである。
【0013】
好ましくは、
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線は、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線に対して、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲するものであり、
前記第1の工程及び第2の工程を終了した延伸フィルムの幅は、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅より広くなっている。
【0014】
また、本発明は、
長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で各端部をそれぞれ独立した一定の軌跡に沿って移動させ、長尺状フィルムを所望の方向に延伸する延伸フィルムの製造方法で製造された延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムの製造方法は、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、前記第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを少なくとも一度ずつ実施するものであり、
長尺状フィルムの幅方向の片側端部は、寸前の進行方向とは異なる方向へ進行する屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動するものであり、
前記片側端部と対になる他方側端部は、前記屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動するものであり、
前記第1の工程及び前記第2の工程では幅方向のいずれか一方又は両方の端部で屈曲進行が行なわれるものであって、
前記第1の工程又は第2の工程の少なくとも一方は、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部がいずれも進行方向に向かって右側又は左側の同一の側に屈曲進行される進行形態を含み、
前記最初に行われた第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心線は、寸前の長尺状フィルムの幅方向の中心線に対して、寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲するものであり、
すべての第1の工程及び第2の工程を終了した延伸フィルムの幅は、最初に行われた第1の工程以前の状態の長尺状フィルムの幅より広くなっており、
すべての第1の工程の内で最初の第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と、すべての第1の工程又は第2の工程を終了した直後の長尺状フィルムの進行方向とが略同じとなっており、
前記延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
を満たすことを特徴とする延伸フィルムである。
【0015】
なお、第1の工程を複数回行う場合は、最初の第1の工程が行われる直前の長尺状フィルムの進行方向を基準として上記した要件を判断することが望ましい。
同様に、第2の工程を複数行う場合には、最後の第2の工程を終了した後の長尺状フィルムの進行方向を基準として上記した要件を判断することが望ましい。
【0016】
また「長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線」を単に「長尺状フィルムの中心線」(「高分子フィルムの中心線」)等と略称する場合がある。
そして「長尺状フィルムの幅方向の端部」を単に「長尺状フィルムの端部」と略称する場合がある。
また、以下の説明において、「第1の工程が行われる直前の長尺状フィルムの進行方向と、第2の工程を終了した後の長尺状フィルムの進行方向とが略同じ」とは、第1の工程が行われる直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と、第2の工程を終了した後の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線とがなす角が、0度以上3度以下であることとする。即ち、第2の工程を終了した後の長尺状フィルムの進行方向は、第1の工程が行われる直前の長尺状フィルムの進行方向に対して、同一の方向又は、±3°(プラスマイナス3度)傾斜した方向であるものとする。
【0017】
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを少なくとも一度ずつ実施する。そして第1の工程又は第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の片側端部又は両側端部を寸前の進行方向とは異なる方向へ進行する屈曲進行を行う。
また本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、長尺状フィルムの幅方向の片側端部側では屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動する。そして本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、前記片側端部と対になる他方側端部は前記屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動する。
さらに加えて、前記延伸フィルムの製造方法は、第1の工程又は第2の工程の少なくとも一方は、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が同一の向きに屈曲進行される進行形態又は幅方向の一方の端部が第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行となり他方が第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向に対して傾斜する方向に進行する進行形態を含む。
このように長尺状フィルムの両端部を屈曲進行させて延伸、収縮を行うことによって、長尺状フィルムの引き出し位置から巻き取り位置までの距離が短い場合であっても、長尺状フィルムの分子配向軸(以下単に配向軸とも称す)の傾斜角度及び位相差値(以下Re(レタデーション)とも称す。また、単にReとも称す)を大きくすることができる。
また本発明では、延伸と収縮を少なくとも1回ずつ行って長尺状フィルムの配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を大きくしている。本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、長尺状フィルムの幅方向の両端に大きな走行距離の差を設けることなく配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を大きくすることができる。
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、第1の工程及び第2の工程の内で最初の第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と、第1の工程又は第2の工程を終了した直後のフィルムの進行方向とが略同じとなっている。本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法は、長尺状フィルムの引き出し方向と巻き取り方向を略同じとすることにより、従来周知の幅方向の拡縮調整及び走行方向調整が可能なテンター式延伸機を使用して実施可能であり、新たに延伸機を開発する必要がなく、導入コストを低減できるという利点がある。
【0018】
前記延伸フィルムの製造方法では、第2の工程においては、長尺状のフィルムの幅方向の中心を結んだ中心線を、寸前の長尺状のフィルムの幅方向の中心を結んだ中心線に対して、寸前の長尺状のフィルム幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲させることが望ましい。
具体的に説明すると、第2の工程で長尺状フィルムの収縮を実施することにより、配向軸の傾斜角度を大きくすることができる。しかし、その反面、収縮を実施することでRe(レタデーション)が低減してしまう。そこで、第2の工程においては、長尺フィルムの中心線の向きを寸前の走行方向における中心線の向きに対して変更した状態で、長尺状フィルムの収縮を実施することが推奨される。そのことにより、寸前の進行方向と同じ方向へ進行させて長尺状フィルムを収縮する場合に比べて、Re(レタデーション)の低減量を抑制することができる。なお、収縮させる場合には、長尺状フィルムを加熱することが望ましい。
【0019】
先の発明において、前記延伸フィルムの製造方法は、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線は、最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線、又は当該中心線に平行な線の少なくともいずれかに対して屈曲するものであり、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線が最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲し、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線が、最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内の他方側へと屈曲することが推奨される。
【0020】
本態様では、第1の工程での長尺状フィルムが進行する方向と第2の工程での長尺状フィルムが進行する方向とが、それぞれ第1の工程の寸前の長尺状フィルムの進行方向に対して交わる方向となっている。そして、第1の工程の開始位置で進行方向に向かって左(又は右)側へ屈曲したのであれば、第2の工程での進行方向は、第1の工程の寸前の進行方向に対して右(又は左)側へと屈曲して延びている。
例えば、図11に示されるように、第1の工程(図11におけるエリアB)での進行方向103bが、寸前(図11におけるエリアA)の進行方向に対して左側(幅方向の片側端部101側へ近づく方向であり、図11における上側)へと屈曲する場合について考察する。その場合第2の工程(図11におけるエリアC)では、第1の工程の寸前(図11におけるエリアA)での進行方向103aに平行な線105に対して右側(幅方向のもう一方側の端部102側へ近付く方向であり、図11における下側)へと屈曲する。
つまり、本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、長尺状フィルムを延伸させるときの進行方向は、長尺状フィルムfの進行方向(引き出し側から巻き取り側へと向かう方向であり、図11の矢印Xで示される方向)の成分(以下進行方向成分)と、長尺状フィルムfの進行方向と直交する方向(図11における上下方向)の成分(以下直交方向成分)とを含んでいる。加えて、長尺状フィルムを収縮させるときの進行方向は、少なくとも長尺状フィルムfの進行方向成分を含んでいる。そしてさらに、長尺状フィルムを収縮させるときの進行方向が直交方向成分を含む場合においては、延伸させるときの直交方向成分の向きと、収縮させるときの直交方向成分の向きとが逆向きとなっている。
このような構成によると、第1の工程の開始位置で進行方向に向かって左(又は右)側へ屈曲し、且つ、第2の工程での進行方向が第1の工程の寸前の進行方向に対して左(又は右)側へ屈曲するような場合や、第1の工程又は第2の工程の進行方向が直前の進行方向と同方向である場合に比べて、シワの発生を抑制しつつ配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)の大きな延伸フィルムを製造することができる。
【0021】
また、前記延伸フィルムの製造方法は、長尺状フィルムの幅方向の両端において、前記屈曲進行をそれぞれ3回行うものであって、片側端部の3つの屈曲進行の開始位置が他方側端部の3つの屈曲進行の開始位置とそれぞれ長尺状フィルムの長手方向における同位置又は近傍に位置することが推奨される。
【0022】
本構成によると、長尺状フィルムの進行形態は、概ね図11の様な構成となる。
即ち本発明の基本構成として、第1の工程では、幅方向の一方の端部で屈曲進行が行なわれる。このとき、他方の端部では直線的に進行されている状態が維持されるか又は前記一方の端部の屈曲進行と同一の側に屈曲進行される。また、第2の工程においても、幅方向の一方の端部で屈曲進行が行なわれる。このとき、他方の端部では直線的に進行されている状態が維持されるか屈曲進行される。この条件下において、長尺状フィルムの幅両端で屈曲進行をそれぞれ3回行い、且つ両端の屈曲進行開始位置を合わせると、長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線の向きを変更した変更点を起点として長尺状フィルムの幅方向に延伸又は収縮が行われる。具体的に説明すると、図11で示される様に、長尺状フィルムの幅方向の中心を結ぶ中心部分を結んで形成される中心線103が、屈曲進行の開始位置となる境界線104の流れ方向上流側と流れ方向下流側(例えばエリアAとエリアB、エリアBとエリアC)とでその傾きを変えている。具体的には、中心線103の流れ方向上流側の進行方向に対して、中心線103の流れ方向下流側での進行方向(例えば、図11の矢印103aで示される方向に対する矢印103bで示される方向、又は図11の矢印103bで示される方向に対する矢印103cで示される方向)は斜め方向へと進んでいる。
つまり、第1の工程又は第2の工程を実施するとき、その開始位置である境界線104上において長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線103の進行方向の向きを変更し、その後で長尺状フィルムの幅方向への延伸又は収縮を行う。このことにより、第2の工程におけるRe(レタデーション)の低減量を抑制することができるため、収縮後の延伸フィルムのRe(レタデーション)が小さくなってしまうことがない。
【0023】
また前記延伸フィルムの製造方法は、長尺状フィルムを進行方向に縦延伸する第3の工程を前記第2の工程後に行うものであることも推奨される。
【0024】
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、第1の工程及び第2の工程に加えて、フィルムを進行方向に縦延伸する第3の工程を行う。このような構成によると、配向軸の傾斜角度の大きな延伸フィルムを製造する場合であっても、延伸フィルムにシワが発生しない製造が可能となる。詳説すると、製造する延伸フィルムの配向軸の傾斜角度を大きくする場合、前記第2の工程における収縮量を大きくする必要がある。しかしながら、第2の工程において収縮量を大きくし過ぎてしまうと、それに伴って長尺状フィルムにシワが発生してしまう懸念がある。そこで、長尺状フィルムを進行方向に縦延伸する第3の工程を実施することにより、シワの発生を抑制しつつ長尺状フィルムの配向軸の傾斜角度を調整する。そのことにより、配向軸の傾斜角度をさらに傾斜させた延伸フィルムをシワなく得ることができる。
【0025】
また上記した延伸フィルムの製造方法を実施する際における具体的な態様として、幅方向の拡縮調整が可能なテンター式延伸機により長尺状フィルムの両端を把持し、前記第1の工程及び前記第2の工程を行うものであって、すべての第1の工程及び第2の工程の前後で長尺状フィルムの進行方向を同一とする方策がある。
【0026】
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法では、幅方向の拡縮調整が可能なテンター式延伸機により長尺状フィルムの両端を把持し、前記第1の工程及び前記第2の工程を行うことで好適に実施することができる。また、進行方向の変更が可能なテンター式延伸機を使用することも好ましい。
【0027】
本発明の延伸フィルムは、延伸フィルムの幅方向に対する配向軸の傾斜角度が20度より大きく70度より小さいことを特徴とする延伸フィルムであることが望ましい。
【0028】
また本発明の延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが下記式(1)を満たす。
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
【0029】
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法によれば、幅方向に対して大きく傾斜した配向軸を有し、優れた光学特性を有する延伸フィルムをシワなく形成することができる。そのため、高品質の延伸フィルムを提供することができる。
また、本発明で採用する延伸フィルムの製造方法は、従来周知のテンター式延伸機を使用して実施することができる。
【0030】
本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法の説明に戻り、長尺状フィルムを延伸する際に推奨される具体的条件について説明する。
前記延伸フィルムの製造方法では、第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であることが推奨される。
なお、第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角は、135度以上であることが望ましい。即ち、この角が135度の未満の場合、製造した延伸フィルムにシワが発生してしまうおそれがある。したがって、延伸フィルムのシワの発生を抑制するという点においては、135度以上であることが望ましく、150度以上であることがより望ましく、160度以上であることがさらに望ましい。
【0031】
原幅Waの長尺状フィルムを本発明で採用する前記延伸フィルムの製造方法によって延伸し、最終幅Wbの延伸フィルムを製造する際に、
最初に行われた第1の工程の直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角と、最初に行われた第1の工程の直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角との合計が、下記の基準延伸工程によって同一の延伸率及び収縮率の延伸フィルムを製造する場合に比べて1度以上大きいことが推奨される。
基準延伸工程:
(1)原幅Waの長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で両端を平行に進行させる、
(2)(1)に続いて、第1の工程として、一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部を傾斜方向であって前記一方の端部から離れる方向に進行させる、
(3)(2)に続いて、第2の工程として、前記一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部の進行方向を変更して前記一方の端部に近づく方向に進行させる、
(4)(3)に続いて、前記一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部と前記一方の端部との間が最終幅Wbとなったところで進行方向を変更し、前記一方の端部と平行に進行させる。
なお、上記(1)〜(4)の工程は(1)〜(4)の順に行うものとする。また、この基準延伸工程は、後述するB−Bパターンに該当する。
【0032】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角よりも大きいことが推奨される。
【0033】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して前記第1の工程とは逆側に屈曲進行される状態を含むことが望ましい。
ここで「同一の側」とは、同じ直交方向成分を有する向きであり、「逆側」とは反対となる直交方向成分を有する向きである。
また、この軌跡で長尺状フィルムの両端を進行させるパターンをA−Aパターンと称する。
【0034】
パターン名称の定義は、次の通りである。
長尺状フィルムの幅方向の両方の端部を同じ直交方向成分を有する向きに進行させる進行形態をAと称する。
長尺状フィルムの幅方向の一方の端部を直線的に進行させ、他方は、直線的に進行させる端部に近づく(又は離反する)方向へ進行させる進行形態をBと称する。
長尺状フィルムの両方の端部を異なる直交方向成分を有する向きに進行させる進行形態をCと称する。
そしてハイフンの前を第1の工程の進行形態とし、ハイフンの後を第2の工程の進行形態として表記する。この定義に従って前記したパターンを分類分けすると、前記した様にA−Aパターンとなる。
【0035】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の一方の端部は基準方向に対して平行に進行し、且つ前記第2の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部に向かって屈曲進行する状態を含む進行形態とすることもできる。
ここで「同一の側」とは、同じ直交方向成分を有する向きである。
この進行形態を前記した定義に当てはめると、A−Bパターンである。
A−Bパターンにおいては、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、167度以下であることが推奨される。
なお、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角の下限については、先に述べた理由と同様の理由により、135度以上であることが望ましく、150度以上であることがより望ましく、160度以上であることがさらに望ましい。
【0036】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、前記第2の工程では、長尺状フィルムの両方の端部が基準方向に対して互いに異なる側に傾斜し且つ互いに近接する側に進行される状態を含む進行形態とすることもできる。
ここで「同一の側」とは、同じ直交方向成分を有する向きである。
この進行形態を前記した定義に当てはめると、A−Cパターンである。
A−Cパターンにおいては、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であることが推奨される。
なお、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角の下限については、先に述べた理由と同様の理由により、135度以上であることが望ましく、150度以上であることがより望ましく、160度以上であることがさらに望ましい。
【0037】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の一方の端部は基準方向と平行に進行し、且つ前記第1の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部から離れる方向に向かって屈曲進行する状態を含み、前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含む進行形態とすることもできる。
ここで「同一の側」とは、同じ直交方向成分を有する向きである。
この進行形態を前記した定義に当てはめると、B−Aパターンである。
B−Aパターンにおいては、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、167度以下であることが推奨される。
なお、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角の下限については、先に述べた理由と同様の理由により、135度以上であることが望ましく、150度以上であることがより望ましく、160度以上であることがさらに望ましい。
【0038】
前記延伸フィルムの製造方法では、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、前記第1の工程では、長尺状フィルムの両方の端部が基準方向に対して互いに異なる側に傾斜し且つ互いに離れる側に屈曲進行される状態を含み、前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に進行される状態を含む進行形態とすることもできる。
ここで「同一の側」とは、同じ直交方向成分を有する向きであり、「互いに異なる側」とは、それぞれ反対となる直交方向成分を有する向きである。
この進行形態を前記した定義に当てはめると、C−Aパターンである。
このパターンにおいては、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であることが推奨される。
【0039】
上記した様に、中心線の角度の条件を合致させて長尺状フィルムを延伸すると、屈折率nx、屈折率ny、屈折率nzを調整し易く、Nz係数を所望の範囲に調整することが容易である。また製造設備の小型化を図ることができると共に、配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を大きくすることができる。
【0040】
前記延伸フィルムの製造方法では、前記第1の工程の直後に前記第2の工程が実行されることが望ましい。
【0041】
また前記延伸フィルムの製造方法では、前記第1の工程の後、長尺状フィルムの双方の端部が最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行に進行する平行進行工程があり、その後に前記第2の工程が実行されてもよい。
【0042】
また前記延伸フィルムの製造方法では、前記第1の工程における幅方向の双方の端部の屈曲進行の開始位置が、長尺状フィルムの進行方向に対して同一の位置であってもよい。
【0043】
また前記延伸フィルムの製造方法では、前記第1の工程における幅方向の一方の端部の屈曲進行の開始位置と、他方の端部の屈曲進行の開始位置は、長尺状フィルムの進行方向に対して異なる位置であってもよい。
なおこの限定は、「長尺状フィルムの進行方向」に対する「端部の屈曲進行の開始位置」であり、あくまでも基準は、「長尺状フィルムの進行方向」に対する位置である。従って前記した「長尺状フィルムの長手方向」を基準とする限定とは必ずしも一致しない。
即ち長尺状フィルムの両端を平行に進行させる場合は、「長尺状フィルムの進行方向」の位置と、「長尺状フィルムの長手方向」は一致する。しかし長尺状フィルムの両端同士が広がる場合や狭まる場合は、フィルム自体が斜めに変形するから、「長尺状フィルムの進行方向」の位置と、「長尺状フィルムの長手方向」は一致しない。
【0044】
前記延伸フィルムの製造方法では、前記第1の工程から第2の工程に切り替わる際における幅方向の双方の端部の屈曲進行の開始位置は、長尺状フィルムの進行方向に対して同一の位置であってもよい。
ここで、「幅方向の双方の端部の屈曲進行の開始位置」とは、それぞれの端部において寸前の進行方向とは異なる方向への進行が開始される位置である。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、前記延伸フィルムの製造方法を採用しており、長尺状フィルムの幅方向の両端に大きな走行距離の差を設けることなく、配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)の少なくとも一方を大きくすることができるので狭い場所であっても製造設備を設置できるという効果がある。また、屈折率nx、屈折率ny、屈折率nzを調整し易く、Nz係数を所望の範囲に調整することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の第5の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の第6の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図7】本発明の第7の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の第8の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図9】本発明の第9の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図10】本発明の第10の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図11】高分子フィルムの進行方向を屈曲させた際の高分子フィルムの幅方向の中心を結んだ線の変化を示す説明図である。
【図12】フィルム延伸機におけるフィルムの進行方向を示す概念図であり、より実際に実施される進行方向に近い進行方向を示す。
【図13】実施例5における比較例の進行形態を図1にならって説明した説明図である。
【図14】実施例5の結果をパターンごとにまとめた説明図である。
【図15】実施例5の結果をパターンごとにまとめた説明図である。
【図16】幅方向に一軸延伸した高分子フィルムを収縮した際の配向軸の変化を示す説明図であり、(a)は収縮前の高分子フィルムを示し、(b)は収縮後の高分子フィルムを示す。
【図17】幅方向に傾斜する方向に延伸した高分子フィルムを収縮した際の配向軸の変化を示す説明図であり、(a)は収縮前の高分子フィルムを示し、(b)は収縮後の高分子フィルムを示す。
【図18】本発明の第11の実施形態で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図19】本発明に関連する技術の第1の具体例で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図20】本発明に関連する技術の第2の具体例で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図21】図20の延伸機の試運転時の状態の一例を示す平面図である。
【図22】上記した実施形態とは異なる位相差フィルムの製造方法に使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図23】本発明に関連する技術の比較例3で使用可能なフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【図24】各実施形態とは異なるフィルム延伸機の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0048】
本発明において延伸フィルムの材料たる高分子フィルム(熱可塑性樹脂フィルム)については原料樹脂に特に限定はなく、目的に応じて適宜、適切な熱可塑性樹脂からなるフィルムが選択される。具体例としては、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレートやポリアミド等が挙げられる。また、より好適にはポリカーボネート、および環状オレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0049】
本発明の第1の実施形態の延伸フィルムの製造方法は、前記したA−Aパターンを実現したものである。なお図1以下の各図は、説明を容易にするために、高分子フィルムfが屈曲進行する際の角度を実際よりも大きく図示している。
現実的なA−Aパターンは、図12で示されるように、長尺状フィルムが進行する際における端部の傾斜角度がより緩くなっている。
【0050】
本発明の第1の実施形態の延伸フィルムの製造方法は、基本的に連続的に供給される長尺状の高分子フィルムfを把持(保持)しながら搬送し、高分子フィルムfを搬送しつつ搬送方向の上流側から順に横延伸、横収縮を連続して行う方法である。
以下に本発明の第1の実施形態について、図1のテンター延伸機1を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。ただし、本発明において図1のテンター延伸機1を使用することが必須でないことは当然である。
【0051】
テンター延伸機1は、従来公知の延伸機であって把持部材6、引き出しロール8、巻き取り用ロール9、レール10を少なくとも備えている。そして、引き出しロール8に取り付けた高分子フィルムfを引き出し、高分子フィルムfの両端を把持部材6で把持して巻き取り用ロール9側へ向かって走行(進行)させ、適宜な場所(例えば、後述する加熱炉11を通過した直後)で高分子フィルムfを開放し、巻き取り用ロール9で巻き取ることが可能となっている。
また、テンター延伸機1は、幅方向の拡縮調整が可能である。
【0052】
ここで、把持部材6は引き出しロール8から引き出された高分子フィルムfの幅方向の両端を把持したまま、図示しないチェーンと一体にレール10上を走行するものである。ここで、レール10は対になるレール10aとレール10bより構成されるものであり、レール10a及びレール10b上をそれぞれ把持部材6が略同じ速度で走行する。なお、このことは後述する他の実施形態についても同様である。
即ち、本実施形態では、高分子フィルムfの一方の片側端部をレール10aの把持部材6で把持し、前記片側端部と対になる他方側端部を他方のレール10bの把持部材6で把持する。なお、本明細書では、片側端部と他方側端部は相対的なものであり、どちら側の幅方向端部が片側端部であってもよい。以下、他方側端部を単に「他端部」あるいは「他方端部」と略称する場合がある。
そして、片側端部側のレール10aの経路(片側端部を把持した把持部材6が走行する経路)は3つの地点P1、P2、P3で進行方向を変更して走行しており、他端部側のレール10bの経路(他端部を把持した把持部材6が走行する経路)も3つの地点P4、P5、P6で進行方向を変更している。このとき、片側端部側の進行方向が変更される3つの地点P1、P2、P3のそれぞれの位置と他端部側の進行方向が変更される3つの地点P4、P5、P6のそれぞれの位置は、引き出しロール8側から巻き取り用ロール9側へ向かう方向(図1の矢印Xで示される方向であり、以下基本走行方向とする)で略同一となっている。つまり、片側端部側の3つの地点P1、P2、P3の内で最も上流側にある第1の地点P1と、他端部側の3つの地点P4、P5、P6の内で最も上流側にある第1の地点P4とは基本走行方向における位置が略同じとなっている。そして同様に各端部の第2の地点P2、P3と、第3の地点P5、P6もそれぞれ基本走行方向における位置が略同じとなっている。
またこのとき、片側端部側のレール10aの経路は、他端部側のレール10bの経路に沿って延びている。つまり、片側端部側のレール10aの経路の3つの地点P1、P2、P3のそれぞれにおいて経路の進行方向が屈曲する方向は、他端部側のレール10bの経路の3つの地点P4、P5、P6のそれぞれにおいて経路の進行方向が屈曲する方向と、略同一となっている。
【0053】
なお本実施形態では、「長尺状フィルムの長手方向」を基準とする場合、進行方向が変更される一端側の3つの地点P1、P2、P3と他端側の3つの地点P4、P5、P6は同一又は略同一となる。
ここで、「長尺状フィルムの長手方向」を基準とする場合について、具体的に説明する。エリアA(走行開始位置からP1,P4を結んで形成される線分までの領域)においては、「長尺状フィルムの長手方向」は、基本走行方向と同一となっている。また、エリアB(P1,P4を結んで形成される線分から、P2,P5を結んで形成される線分までの間の領域)においては、「長尺状フィルムの長手方向」は、基本走行方向に対して幅方向の一端側(図1におけるレール10a側)に傾斜している。さらに、エリアC(P2,P5を結んで形成される線分から、P3,P6を結んで形成される線分までの間の領域)では、基本走行方向に対して幅方向の他端側(図1におけるレール10b側)に傾斜している。そして、エリアD(P3,P6を結んで形成される線分から、走行終了位置までの間の領域)では、基本走行方向と同一となっている。
即ち、エリアA,Dでは、「長尺状フィルムの長手方向」と基本走行方向は同一であり、エリアB,Cでは、「長尺状フィルムの長手方向」と基本走行方向は異なっている。
このため、エリアAの末端部分であるP1,P4は、「長尺状フィルムの長手方向」における位置が同一となっている。これに対して、エリアBの「長尺状フィルムの長手方向」は基本走行方向に対して傾斜し、且つ、P1からP2までの長さと、P4からP5までの長さとがそれぞれ異なっていることから、エリアBの末端部分であるP2,P5は、「長尺状フィルムの長手方向」において異なる位置にある。即ち、「長尺状フィルムの長手方向」において(図1で斜め上へと向かう方向において)、P5がP2より後方側(矢印M2の基端側)に位置する。同様に、エリアCの「長尺状フィルムの長手方向」も基本走行方向に対して傾斜し、P2からP3までの長さと、P5からP6までの長さとがそれぞれ異なっていることから、エリアCの末端部分であるP3,P6は、「長尺状フィルムの長手方向」において異なる位置にある。即ち、「長尺状フィルムの長手方向」において(図1で斜め下へと向かう方向において)、P3がP6より後方側(矢印M3の基端側)に位置する。
このように、「長尺状フィルムの長手方向」を基準とすると、進行方向が変更される一端側の3つの地点P1、P2、P3と他端側の3つの地点P4、P5、P6は、「長尺状フィルムの長手方向」における位置がP1とP4の組み合わせで同一の位置となり、P2とP5の組み合わせ及びP3とP6の組み合わせで僅かにずれて異なる位置となる。つまり、P2とP5の組み合わせ及びP3とP6の組み合わせは、「長尺状フィルムの長手方向」における位置が略同一となる。
このことは、後述する他の実施形態でも同様である。
【0054】
ここで、片側端部側(レール10a側)において第1の地点P1と第2の地点P2を結んで形成される線分と、第2の地点P2と第3の地点P3を結んで形成される線分との2つの線分が成す角α1について考える。この角α1は、他方端部側(レール10b側)において第1の地点P4と第2の地点P5を結んで形成される線分と、第2の地点P5と第3の地点P6を結んで形成される線分との2つの線分が成す角α2より小さくなっている。
【0055】
したがって、片側端部側レール10aの経路は他端部側のレール10bの経路に対してやや長くなっており、僅かに迂回する経路となっている。
【0056】
さらにテンター延伸機1は、図1で示されるように、引き出しロール8側から巻き取り用ロール9側へ向かってA、B、C、Dの4つの連続するエリアに分割されている。そして、各エリアにおいてそれぞれレール10の幅や高分子フィルムfの進行方向が異なっている。
【0057】
エリアAでは、2つのレール10a,10bは基本走行方向に沿って延びており、2つのレール10a,10bの幅は等間隔となっている。本実施形態では、エリアAは、最初に行われる第1の工程以前である。またエリアAであってエリアBとの境界近傍は、第1の工程が行われる寸前ともいえる。
【0058】
エリアAは、第1の工程の直前であり、高分子フィルムfの中心線の方向は、矢印M1の通りである。エリアAでは、高分子フィルムfの中心線の方向は、高分子フィルムfの進行方向(引き出し側から巻き取り側へと向かう方向であり、矢印Xで示される方向)と同一である。エリアBでは、高分子フィルムfの保持間隔がしだいに広げられ、高分子フィルムfが延伸される。
【0059】
またエリアBでは、2つのレール10a,10bはそれぞれエリアAでの走行方向(基本走行方向)たる矢印Xに対して斜めに延びている。より詳細には、エリアBでの2つのレール10a,10bの走行方向は、エリアAでの2つのレール10a,10bの走行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール10a側であり、図1における上側)にそれぞれ屈曲して延びている。即ち本実施形態では、第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が同一の向きに屈曲進行されている。
そしてこのとき、片側のレール10aが他方のレール10bより屈曲の角度が急になっている。つまり、エリアAとエリアBの境界線L1と、片側のレール10aが成す角の内で小さい方の角α3(エリアB側)の角度が、エリアAとエリアBの境界線L1と、他方のレール10bが成す角の内で小さい方の角α4(エリアB側)の角度より小さくなっている。したがって、エリアBでは2つのレール10a,10bの幅が下流側に向かうにつれて広がっていく。
【0060】
ところでエリアBにおいて2つのレール10a,10bをエリアAでの走行方向に対して屈曲させるとき、それぞれのレール10a,10bの屈曲の角度は所定の基準に基づいて決定される。具体的には、エリアBを走行する高分子フィルムfの幅方向の中心を結んだ中心線(図1における矢印M2であり、以下エリアB中心線とする)と、基本走行方向と平行な線(エリアA中心線)とが成す角α7(高分子フィルムfの幅方向の中心線の傾斜角度であり、以下エリアB中心線傾斜角とする)の角度を基準に変更される。即ち、エリアB中心線傾斜角α7の角度を、目的とする延伸フィルムの分子配向軸の傾斜角度(例えば45度)及び後述するエリアC中心線傾斜角α8(図1参照)に合わせて変更する。そして、エリアB中心線傾斜角α7の角度が所望の角度となるように、2つのレール10a,10bをエリアAでの走行方向に対して屈曲する。本実施形態では、エリアBであって、エリアBとエリアCとの境界近傍は、第2の工程が行われる寸前ともいえる。
【0061】
次にエリアCでは、2つのレール10a,10bはそれぞれ基本走行方向に対して斜めに延びている。より詳細には、エリアCでの2つのレール10a,10bそれぞれの走行方向は、エリアAでの2つのレール10a,10bそれぞれの走行方向に対して右側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール10b側であり、図1における下側)に屈曲して延びている。即ち、エリアCの2つのレール10a,10bの走行方向は、エリアBの2つのレール10a,10bの走行方向に対して、基本走行方向に直交する方向(図1の矢印Xで示される方向に直交する方向であって図1の上下方向、以下直交方向とする)の成分が逆側向きとなっている。本実施形態では、第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が前記第1の工程とは逆向きに屈曲進行されていると言える。
そしてこのとき、片側のレール10aが他方側のレール10bより屈曲の角度が急になっている。つまり、エリアBとエリアCの境界線L2と、エリアCに位置する片側のレール10aが成す角の内で小さい方の角α5の角度が、エリアBとエリアCの境界線L2と、エリアCに位置する他方のレール10bが成す角の内で小さい方の角α6の角度より小さくなっている。このことにより、エリアCでは2つのレール10a,10bの幅が下流側に向かうにつれて狭まっていく。つまり、エリアCでは、高分子フィルムfの保持間隔がしだいに狭められて高分子フィルムfが延伸される。
【0062】
ここでも2つのレール10a,10bをエリアBでの走行方向に対して屈曲させるとき、それぞれのレール10a,10bの屈曲の角度を所定の基準に基づいて決定する。ここでは、エリアCを走行する高分子フィルムfの幅方向の中心を結んだ線(図1における矢印M3であり、以下エリアC中心線とする)と、基本走行方向と平行な線とが成す角α8(高分子フィルムfの幅方向の中心線の傾斜角度であり、以下エリアC中心線傾斜角とする)の角度を基準に変更される。このエリアC中心線傾斜角α8の角度は、目的とする延伸フィルムの分子配向軸の傾斜角度(例えば45度)と、上記したエリアB中心線傾斜角α7の角度を基準に変更される。換言すると、目的とする延伸フィルムの分子配向軸の傾斜角度(例えば45度)によって、エリアB中心線傾斜角α7及びエリアC中心線傾斜角α8を設定し、エリアC中心線傾斜角α8の角度が所望の角度となるように、2つのレール10a,10bをエリアBでの走行方向に対して屈曲させる。
【0063】
最後にエリアDでは、2つのレール10a,10bは基本走行方向に沿って延びており、2つのレール10a,10bの幅は等間隔となっている。なおこのとき、2つのレール10a,10bの幅はエリアAの2つのレール10a,10bの幅に比べて広くなっている。本実施形態では、エリアDは、最後に行われた第2の工程の後である。
【0064】
ここでエリアBとエリアCの2つのエリアに注目すると、2つのレール10a,10bは、エリアBとエリアCの境界線L2を中央部分として、それぞれ山形の軌跡を描いて連続している。つまり、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3とが境界線L2で屈曲して連続している。なお、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3の走行方向に注目すると、上流側から下流側へ向かう方向(図1の矢印M2、M3で示される方向)となる。そしてこのとき、これらは直交方向において逆向きの成分を含んでいる。即ち、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3は基本走行方向の成分と直交方向の成分を有するものであって、エリアB中心線M2が直交方向のいずれか一方側へ向かう成分を有していることに対し、エリアC中心線M3が直交方向の他方側へ向かう成分を有している。
【0065】
また、2つのレール10a,10b上をそれぞれ走行する把持部材6に注目すると、エリアAでは、2つのレール10a,10bが平行に延びており、把持部材6が同じ速度で進むので、2つのレール10a,10b上をそれぞれ走行する把持部材6の基本走行方向における位置は同じとなる。これに対して、エリアBでは、2つのレール10a,10bが、それぞれ基本走行方向に対して異なる角度に屈曲して延びている。そのため、エリアBでは、2つのレール10a,10b上をそれぞれ走行する把持部材6の基本走行方向における位置は異なる。即ち、いずれか一方のレール(本実施形態ではレール10a)を走行する把持部材6が、他方のレール(本実施形態ではレール10b)より、基本走行方向において後方側に位置する。このことにより、高分子フィルムfが斜め方向に引っ張られることになり、高分子フィルムfの分子配向軸に傾斜角度がつく。
そして、エリアCにおいても同様に、2つのレール10a,10bが、それぞれ基本走行方向に対して異なる角度に屈曲して延びている。そのため、エリアCでも、2つのレール10a,10b上をそれぞれ走行する把持部材6の基本走行方向における位置は異なっている。このことにより、高分子フィルムfは幅方向に収縮されることになる。
なお、これらのことは、以下で説明する他の実施形態についても同様である。
【0066】
またテンター延伸機1には、加熱炉11が設けられており、高分子フィルムfを熱風によって加熱可能となっている。この加熱炉11はエリアB及びエリアCに跨って設置されている。より詳細には、エリアAの下流側の端部近傍からエリアDの上流側の端部近傍までを加熱可能な状態に設けられている。
【0067】
次に、上記したテンター延伸機1を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。
まず、引き出しロール8に長尺状の高分子フィルムfをロール状にして取り付ける。そして、エリアAにおいて、図示しないロール等の搬送装置を使用して高分子フィルムfを巻き取り用ロール9側に向かって走行させる。即ち、基本走行方向に沿って高分子フィルムfを走行させる。
高分子フィルムfを巻き取り用ロール9側に一定距離走行させると、高分子フィルムfはその幅方向両端を把持部材6によって把持される。そして引き続き、高分子フィルムfを巻き取り用ロール9側に向かって走行させる。
【0068】
次に、高分子フィルムfがエリアBに侵入すると、加熱炉11により高分子フィルムfが加熱され始める。さらに高分子フィルムfの両端部を把持している把持部材6がそれぞれ寸前の進行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール10a側の端部側であり、図1における上側)よりに斜行し始める。このことにより、寸前の進行方向に対して左側へ向かう力(レール10b側からレール10a側へと向かう力)が高分子フィルムfの幅方向の両端にそれぞれ加わり、高分子フィルムfの配向軸に緩やかな傾斜角度がつく。即ち、目的とする配向軸の傾斜角度(例えば45度)より緩やか(例えば5度以上15度未満)に高分子フィルムfの配向軸が幅方向に対して傾斜する。
そして、加熱炉11により高分子フィルムfが加熱されると共に高分子フィルムfの両端部を把持している把持部材6は、エリアBを進行するとき、エリアAの進行方向に対して傾斜する方向へ進行する。このとき、一方の端部を把持する把持部材6が進行する方向と、他方の端部を把持する把持部材6が進行する方向とは、エリアAの進行方向に対して同一の直交方向成分を有する方向へ傾斜しており、且つ、その傾斜角度が異なっている。
このことにより、高分子フィルムfの幅方向両端部にそれぞれ位置する把持部材6の間の距離は、エリアBの下流側へ向かうにつれて広がっていく。また、把持部材6の間の距離が広がっていくことで、高分子フィルムfの延伸倍率が大きくなっていき、Re(レタデーション)が上昇していく。
【0069】
さらに、高分子フィルムfがエリアCに進入すると加熱炉11により高分子フィルムfが加熱されて熱収縮する。そしてさらに、高分子フィルムfの両端部を把持している把持部材6がそれぞれ寸前の進行方向(又は基本走行方向)に対して右側(高分子フィルムfの幅方向のレール10b側の端部側であり、図1における下側)よりに斜行する。より具体的には、高分子フィルムfの両端部を把持している把持部材6がエリアCを進行するとき、エリアAの進行方向に対して傾斜する方向へ進行する。このとき、一方の端部を把持する把持部材6が進行する方向と、他方の端部を把持する把持部材6が進行する方向とは、エリアAの進行方向に対して同一の直交方向成分を有する方向へ傾斜しており、且つ、その傾斜角度が異なっている。加えて、エリアCでの進行方向における直交方向成分の向きは、エリアBでの進行方向における直交方向成分の向きと逆向きとなっている。このことにより、高分子フィルムfは幅方向に収縮され、収縮に伴って高分子フィルムfの配向軸の傾斜角度が上昇する。ここで、高分子フィルムfを収縮するとRe(レタデーション)が低下してしまう。しかしながら本実施形態では、熱収縮前に高分子フィルムfを斜行させることにより、収縮方向を傾けてから収縮を実施しているため、このRe(レタデーション)の低減量を抑制することができる。
【0070】
このように、本実施形態では、エリアBでは、エリアAでの進行方向に対して左側に屈曲進行しており、エリアCでは右側へ屈曲進行している。
【0071】
高分子フィルムfがエリアDに進入すると、高分子フィルムfの両端部を把持している把持部材6がそれぞれ基本走行方向に沿う方向へと走行し始める。そして、幅方向の長さが変化しないまま巻き取り用ロール9側に向かって走行して、巻き取り用ロール9に巻き取られる。そのことをもって高分子フィルムfに対する配向軸を傾斜させる工程がすべて終了し、延伸フィルムの製造が完了する。なお、巻き取られた延伸フィルムは次工程(例えば切り抜き等の工程)へ送られる。
【0072】
上記した実施形態では、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3は基本走行方向の成分と直交方向の成分を有し、エリアB中心線M2が直交方向のいずれか一方側へ向かう成分を有していることに対し、エリアC中心線M3が直交方向の他方側へ向かう成分を有するものであった。しかしながら、本発明のフィルム延伸方法の態様はこれに限るものではない。エリアC中心線M3は、基本走行方向の成分のみで構成されるものであっても構わない。
【0073】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態の延伸フィルムの製造方法は、上記した第1の実施形態で行った高分子フィルムfの延伸及び熱収縮の後に、高分子フィルムfを縦延伸させる工程を有する。つまり、上記した第1の実施形態は、第1の工程たるエリアBでの延伸によってRe(レタデーション)を上昇させ、第2の工程たるエリアCでの収縮によって分子配向軸の傾斜角度を上昇させている。それに対して第2の実施形態では、第1の工程と第2の工程に加えて第3の工程たる高分子フィルムfを縦延伸させる工程を行っている。そして、この第2の実施形態では、第3の工程によって、シワの発生を抑制すると共に分子配向軸の傾斜角度を調整している。即ち、第1の実施形態では第2の工程によって配向軸の傾斜角度を調整するが、第2の実施形態では第2の工程と第3の工程によって配向軸の傾斜角度を調整するものである。
以下に本発明の第2の実施形態について、図2のテンター延伸機1及び縦延伸機3を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。ただし、本発明において図2のテンター延伸機1及び縦延伸機3を使用することが必須でないことは当然である。
【0074】
第2の実施形態で使用されるテンター延伸機1は、第1の実施形態で使用されるテンター延伸機1と同一のものを使用することができる。
【0075】
縦延伸機3は、引き出しロール14、巻き取りロール15、上流側延伸用ロール16、下流側延伸用ロール17を少なくとも備えている。そして、引き出しロール14に取付けた高分子フィルムfを引き出し、巻き取りロール15へ向かって走行させ、巻き取りロール15で巻き取ることが可能となっている。このとき、引き出しロール14と巻き取りロール15の間には、上流側延伸用ロール16及び下流側延伸用ロール17が設けられている。上流側延伸用ロール16及び下流側延伸用ロール17は高分子フィルムfを厚さ方向の両側から挟み込んで回転するものであり、それぞれ周速が異なっている。
【0076】
またこの縦延伸機3には、加熱炉18が設けられており、高分子フィルムfを熱風によって加熱可能となっている。この加熱炉18は、上流側延伸用ロール16と下流側延伸用ロール17の間に設けられている。
【0077】
次に、テンター延伸機1及び縦延伸機3を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。なお、以下の説明では、第3の工程を単独で行っている場合について説明するが、第3の工程は第1の工程及び第2の工程と連続して行ってもかまわない。
まず、テンター延伸機1にて高分子フィルムfを延伸して仮延伸フィルムを作製する。テンター延伸機1による高分子フィルム1の延伸方法は、上記した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
ここで、仮延伸フィルムとは、第1の工程、第2の工程、第3の工程を順に行う延伸フィルムの製造方法において、第1の工程及び第2の工程を実施し、第3の工程を実施する前の高分子フィルムfとする。
【0078】
そして、テンター延伸機1にて延伸を行った(巻き取り用ロール9に巻き取った)高分子フィルムf(仮延伸フィルム)を縦延伸機3の引き出しロール14に取付け、巻き取りロール15へ向かって走行させる。このとき高分子フィルムfは、走行方向(引き出しロール14から巻き取りロール15へ向かう方向であり、高分子フィルムfの長手方向であって、図2の矢印Xで示される方向)の上流側と下流側でそれぞれ上流側延伸用ロール16と下流側延伸用ロール17に挟み込まれる。そして、上流側延伸用ロール16と下流側延伸用ロール17との間に位置する高分子フィルムfは、加熱炉18によって加熱されると共に、上流側延伸用ロール16と下流側延伸用ロール17の周速差により走行方向に延伸される。
そして、走行方向に延伸された(縦延伸された)高分子フィルムfは、巻き取りロール15へ向かって走行し、巻き取りロール15へ巻き取られる。このことをもって高分子フィルムfに対する分子配向軸を傾斜させる工程及びRe(レタデーション)を大きくする工程が全て終了し、延伸フィルムの製造が完了する。なお、巻き取られた延伸フィルム(高分子フィルムf)は次工程(例えば切り抜き等)へ送られる。
【0079】
ここで、第1の実施形態の方法と第2の実施形態の方法で高分子フィルムfの分子配向軸を同じだけ傾斜させる場合について考察する。上記したように、第1の実施形態では、第2の工程の熱収縮によって高分子フィルムfの分子配向軸の傾斜角度を調整している。そしてこの方法では、傾斜角度を大きくしたい場合、第2の工程の収縮量を大きくする必要がある。しかしながら、第2の工程での収縮量を大きくし過ぎてしまうと高分子フィルムfにシワが発生してしまうおそれがある。
それに対し、第2の実施形態では、第2の工程と第3の工程によって配向軸の傾斜角度を調整している。つまり第2の実施形態では、第2の工程の収縮と、第3の工程たる縦延伸機3での延伸によって高分子フィルムfの分子配向軸の傾斜角度を大きくしている。したがって、第2の実施形態でテンター延伸機1による延伸及び収縮が終了した時点(第1の工程と第2の工程が終了した時点)では、高分子フィルムfの分子配向軸の傾斜角度は目標とする傾斜角度より緩やかになっている。そして、第3の工程たる縦延伸機3での延伸によって高分子フィルムfの分子配向軸の傾斜角度を大きくすることにより、目標とする傾斜角度へと到達する。このように、配向軸を目標とする傾斜角度に傾ける前に目標とする角度より緩やかな仮の角度にすることによって、配向軸の傾斜角度を大きくする場合であっても高分子フィルムfにシワが発生しない(又はシワが発生しにくい)。つまり、2つの工程で傾斜角度を大きくするため、第2の工程のみで傾斜角度を大きくする場合に比べて、第2の工程で大きく収縮量を増加させる必要がない。そのため、高分子フィルムが収縮しきれずにシワが発生してしまうということがない(又は高分子フィルムが収縮しきれないことに起因するシワの発生が抑制される)。
【0080】
ところで、第1の工程の高分子フィルムfの幅方向の延伸と第2の工程の高分子フィルムfの幅方向の収縮とを実施するテンター延伸機1の2つのレールの経路は、上記したテンター延伸機1のレール10a,10bの経路に限るものではない。例えば図3乃至図10で示されるようなレールの経路を有するテンター延伸機で第1の工程及び第2の工程を行ってもよい。以下で図3乃至図10を参照しつつ、第3の実施形態乃至第10の実施形態についてそれぞれ説明する。なお、図1及び図2と同様の部材については同じ番号を付して説明を省略する。また、説明を簡易化するために要部についてのみ説明するものとする。さらに、図4以降については、Wa,Wb,α1・・・等の共通する符号を省略する。
【0081】
本発明の第3の実施形態は、A−Aパターンを実現したものである。
【0082】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第3の実施形態では、図3で示されるように、テンター延伸機80の第2の工程の収縮を実施するエリアCが、第1の工程の延伸を実施するエリアBに対して基本走行方向における距離(図3の矢印Xで示される方向における距離)が大きくなっている。即ち、本発明の延伸フィルムの製造方法では、エリアB中心線傾斜角α7とエリアC中心線傾斜角α8は同じでも異なっていてもよい。また、エリアB及びエリアCを走行する2つのレール60a,60bの経路は、エリアBとエリアCとで基本走行方向における距離が同じでもよく、異なっていてもよい。
【0083】
本発明の第4の実施形態は、A−Aパターンを実現したものである。
【0084】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第4の実施形態では、図4で示されるように、テンター延伸機81の片側端部側のレール61aの経路において進行方向を変更する3つの地点P1、P2、P3を結んで形成される線が曲線となっている。そしてさらに、他方端部側のレール61bの経路において進行方向を変更する3つの地点P4、P5、P6を結んで形成される線もまた曲線となっている。なお本発明の延伸フィルムの製造方法で使用するテンター延伸機は、図4のように2つの61a,61bのレールの両方が曲線を描く経路を形成してもよく、2つのレール61a,61bのいずれか一方が曲線を描く経路を形成してもよい。
【0085】
本発明の第5の実施形態は、A−Aパターンを実現したものである。
【0086】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第5の実施形態では、図5で示されるように、テンター延伸機83の第1の工程の延伸を実施するエリアBの基本走行方向における距離(図5の矢印Xで示される方向における距離)が、第2の工程の収縮を実施するエリアCの基本走行方向における距離に対して大きくなっている。本発明の延伸フィルムの製造方法はこのようなテンター延伸機83を使用して実施することもできる。
【0087】
本発明の第6の実施形態は、A−Cパターンを実現したものである。
【0088】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第6の実施形態では、図6で示されるように、テンター延伸機84の片側端部側のレール64aの経路が3つの地点P1、P2、P3で進行方向を変更して走行しており、他方端部側のレール64bの経路が2つの地点P4、P5で進行方向を変更して走行している。
【0089】
このときエリアBでの2つのレール64a,64bの走行方向は、それぞれエリアAでの走行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール64a側であり、図6における上側)へそれぞれ屈曲して延びている。このとき、片側端部側のレール64aが他方端部側のレール64bに比べて急な角度で屈曲している。
【0090】
そしてエリアCでは、片側端部側のレール64aはエリアAでの走行方向に対して右側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール64b側であり、図6における下側)へ屈曲して延びている。したがって、片側端部側のレール64aのエリアCでの走行方向は、同レール64aのエリアBでの走行方向に対して屈曲しており、エリアBとエリアCの各走行方向は直交方向(図6の矢印Xで示される基本走行方向に直交する方向であり、図6の上下方向)において逆向きの成分を含んでいる。したがってエリアB及びエリアCにおいて、片側端部側のレール64aはエリアBとエリアCの境界線L2上に頂点が位置するように屈曲している。またこのとき、エリアB及びエリアCでの片側端部側のレール64aの経路は、高分子フィルムfの幅方向の外側へ凸となっている。
それに対して他方端部側のレール64bはエリアCでは、エリアBと同じ方向に走行している。即ち、他方端部側のレール64bはエリアBとエリアCの境界線L2上で走行方向が屈曲しておらず、エリアBの上流端(P4)で屈曲したレール64bの経路はエリアCの下流端(P5)に至るまで直進している。
【0091】
このことにより、片側端部側のレール64aは、エリアBにおいては基本走行方向及び他方端部側のレール64bから離れる方向へ進み、エリアCでは基本走行方向及び他方端部側のレール64bに近づく方向へと進む。したがって、エリアBでは2つのレール64a,64bの走行方向がエリアAでの(寸前の)走行方向に対して左側へそれぞれ屈曲して延びている。即ち、直交方向において同じ方向へ屈曲して延びている。そしてエリアCでは、2つのレール64a,64bの走行方向が高分子フィルムfの幅方向の中心線に向かって互いに近づく方向へ進んでいる。このことにより、エリアBでは高分子フィルムfの延伸が可能となり、エリアCでは高分子フィルムの収縮が可能となっている。
【0092】
即ち、本発明の製造方法で使用するテンター延伸機84では、2つのレール64a,64bの間で走行方向を変更する回数が同じでなくてもよい。これらは片側のレールで3回以上、他方側のレールで2回以上行われればよい。
【0093】
本発明の第7の実施形態は、A−Cパターンを実現したものである。
【0094】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第7の実施形態では、図7で示されるように、テンター延伸機85の片側端部側のレール65aの経路が3つの地点P1、P2、P3で進行方向を変更して走行しており、他方端部側のレール65bの経路が3つの地点P4、P5、P6で進行方向を変更して走行している。
【0095】
このときエリアBでは、2つのレール65a,65bの走行方向は、それぞれエリアAでの走行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール65a側であり、図7における上側)へそれぞれ屈曲して延びている。このとき、片側端部側のレール65aが他方端部側のレール65bに比べて急な角度で屈曲している。
またエリアCでは、2つのレール65a,65bの走行方向が高分子フィルムfの幅方向の中心線に向かって互いに近づく方向へ進んでいる。即ち、片側端部側のレール65aがエリアAでの走行方向に対して右側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール65b側であり、図7における下側)へ屈曲して延びており、他方端部側のレール65bがエリアAでの走行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール65a側であり、図7における上側)へ屈曲して延びている。
【0096】
このときエリアBとエリアCの境界線L2に注目すると、エリアAとエリアBとの境界線L1、エリアCとエリアDとの境界線L3が基本走行方向(図7の矢印Xで示される方向)に対して直交する方向に延びているが、境界線L2は基本走行方向に対して直交する方向に延びていない。即ち、片側端部側のレール65aの経路の3つの地点P1、P2、P3の内で上流側から数えて2番目の地点P2の位置と、他方端部側のレール65bの経路の3つの地点P4、P5、P6の内で上流側から数えて2番目の地点P5の位置とが、基本走行方向における位置が異なっている。
【0097】
即ち、本発明の製造方法で使用するテンター延伸機85では、2つのレール65a,65bを基本走行方向における位置が同一の地点でそれぞれ屈曲させてもよいし、基本走行方向における位置が異なる地点でそれぞれ屈曲させてもよい。つまり、第1の工程の延伸又は第2の工程の収縮は、高分子フィルムfの幅方向の両端部分が基本走行方向の同一の地点に位置した状態で開始又は終了してもよく、高分子フィルムfの幅方向の両端部分が基本走行方向の異なる地点に位置した状態で開始又は終了してもよい。
【0098】
本発明の第8の実施形態は、B−Aパターンを実現したものである。
【0099】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第8の実施形態では、図8で示されるように、テンター延伸機87の第1の工程を実施するエリアBにおいて、片側のレール67bが寸前のエリアAの走行方向と同じ方向へ直進している。そして、他方のレール67aはこの直進するレール67bから離れる方向へ傾斜している。
またテンター延伸機87の第2の工程を実施するエリアCにおいて、2つのレール67a,67bが同一の方向に傾斜している。本発明の延伸フィルムの製造方法はこのようなテンター延伸機を使用して実施することもできる。
またテンター延伸機87の第2の工程を実施するエリアCにおいて、2つのレール67a,67bのそれぞれの走行方向は、エリアAでの2つのレール67a,67bそれぞれの走行方向に対して右側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール67b側であり、図8における下側)に屈曲して延びている。
【0100】
本発明の第9の実施形態は、A−Cパターンを実現したものである。また本実施形態では、第1の工程と、第2の工程との間に、平行進行工程を挟む場合の例を示している。
【0101】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第9の実施形態では、図9で示されるように、テンター延伸機88の第1の工程の延伸を実施するエリアBと、第2の工程の収縮を実施するエリアCとの間に、延伸及び収縮を実施しないエリアB2が位置している。当該エリアB2が平行進行工程となっている。
このときエリアBでは、2つのレール68a,68bがそれぞれ寸前のエリアAでの走行方向に対して左側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール68a側であり、図9における上側)へ屈曲して延びている。このとき片側端部側のレール68aが他方端部側のレール68bと比べて急な角度で屈曲している。
またエリアB2では、寸前のエリアBとの境界線L2上でエリアBでの走行方向に対してそれぞれ右側に屈曲している。そして2つのレール68a,68bは、基本走行方向(図9の矢印Xで示される方向)に沿う方向へ延びている。なおこのとき2つのレール68a,68bの間隔は一定となっている。
さらにまたエリアCでは、2つのレール68a,68bは幅方向の中央側へ互いに近づく方向へ傾斜している。
このように本発明の延伸フィルムの製造方法では、必ずしも第1の工程と第2の工程とを連続して行わなくてもよい。第1の工程と第2の工程は延伸フィルムの製造工程中で少なくとも一度ずつ行われればよい。
【0102】
本発明の第10の実施形態は、A−Aパターンを実現したものである。また本実施形態では、第1の工程と、第2の工程との間に、平行進行工程を挟む場合の例を示している。
【0103】
本発明の延伸フィルムの製造方法の第10の実施形態では、図10で示されるように、テンター延伸機89の第1の工程の延伸を実施するエリアBと、第2の工程の収縮を実施するエリアCとの間に、延伸及び収縮を実施しないエリアB2が位置している。当該エリアB2が平行進行工程となっている。
そして本実施形態で使用するテンター延伸機89は、エリアB及びエリアB2は上記した第10の実施形態と同一となっている。またエリアCでは、2つのレール68a,68bがそれぞれ寸前のエリアB2での走行方向に対して右側(高分子フィルムfの幅方向におけるレール69b側であり、図10における下側)へ屈曲して延びている。本発明の延伸フィルムの製造方法は、このようなテンター延伸機89を使用して実施してもよい。
【0104】
上記した各実施形態で示されるように、本発明の製造方法で使用するテンター延伸機では、第1の工程の延伸及び第2の工程の収縮を実施する際、2つのレールが直交方向において同じ方向へ屈曲して延びていてもよく、直交方向において異なる方向へ屈曲して延びていてもよい。また、高分子フィルムfの幅方向の中心線に向かって互いに近づく方向へ進んでもよく、互いに離れる方向へ進んでもよい。また、2つのレールの一方側のレールが直進し、それに対して他方側のレールが近接、離反してもよい。即ち、第1の工程の延伸又は第2の工程の収縮を実施するとき、少なくともいずれかで、2つのレールが直交方向において同じ方向へ屈曲して延びていればよい。このとき、エリアB及びエリアCにおいて第1の工程の延伸と第2の工程の収縮がそれぞれ実施可能であって、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3とが、基本走行方向へ向かう成分と直交方向の成分を有するものであり、エリアB中心線M2とエリアC中心線M3の直交方向の成分が逆向きとなることが望ましい。
【0105】
また上記した各実施形態において、第1の工程たるエリアBでの延伸と第2の工程たるエリアCでの収縮の2つの工程をそれぞれ1度ずつ行う場合について説明したが、本発明の延伸フィルムの製造方法はこれに限るものではない。これら2つの工程は何度行っても構わない。例えば第1の工程及び第2の工程を実施した後、さらに第1の工程又は第2の工程を行ってもよい。また第1の工程及び第2の工程を実施した後、もう一度ずつ第1の工程及び第2の工程を実施してもよい。これら2つの工程は少なくともそれぞれ1度ずつ行えばよく、その回数は適宜変更してよい。
【0106】
ところで上記した各実施形態では、第1の工程の後に第2の工程を行っている。そのため、第2の工程の収縮を行うときのエリアC中心線傾斜角α8の大きさや収縮率などの各種条件を決定するために、第1の工程の終了時に高分子フィルムfの分子配向軸の傾斜角度の大きさやRe(レタデーション)等を確認する必要がある。
【0107】
第1の工程における配向軸の傾斜角度を確認する方法として、例えば、2つのレールの走行方向を変更可能なテンター延伸機を使用するという方法が考えられる。即ち、エリアBの下流側の全ての範囲で2つのレールを等間隔にした状態で走行させるように2つのレールの走行方向を変更する。そして、そのテンター延伸機で高分子フィルムfを搬送することにより、第1の工程のみを実施した状態の高分子フィルムfを製造する。この高分子フィルムfの配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を測定することで、第1の工程の配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を確認する。
なおこの方法を実施した後で2つのレールの走行方向を変更し、エリアCでの収縮を実施可能にすることで、第1の工程での配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を確認した後に延伸フィルムの製造を行うことができる。
【0108】
また他の方法として、テンター延伸機を一次的に停止するという方法も考えられる。即ち、テンター延伸機を一時停止してエリアBとエリアCの境界部分で高分子フィルムfを切り抜く。そしてその高分子フィルムfの配向軸の傾斜角度及びRe(レタデーション)を確認するという方法である。
【0109】
上記した各実施形態において使用する各延伸機はとくに限定されるものではなく、テンター式、パンタグラフ式、リニアモータ式等の適宜の延伸機を使用することができる。
【0110】
また、上記した各実施形態における第1の工程において、フィルムの揮発分率は5%(パーセント)未満が好ましく、さらに好ましくは3%(パーセント)未満であることが好ましい。
【0111】
加えて、上記した各実施形態の高分子フィルムfの厚さについても特に限定されるものではない。高分子フィルムfの厚さは製造する延伸フィルムの使用目的などに応じて適宜に決定することができる。しかしながら、加熱収縮処理を安定させ均一の質の延伸フィルムを製造するという観点から、3mm以下が好ましく、1μm〜1mmがより好ましく、5μm〜500μmがさらに好ましい。
【0112】
本発明により製造される延伸フィルムは特に限定されるものでなく、例えばプラスチックフィルム等であってよい。
また、本発明により製造される延伸フィルムの長手方向の長さ及び幅方向の長さは特に限定されるものではなく、適宜の長さであってよい。
例えば、製造効率の向上や長尺の偏光板等と効率よく接着することを目的に、上記した適宜の延伸機で長尺のプラスチックフィルムを連続して延伸処理してもよい。
【0113】
本発明により製造される延伸フィルムの用途は特に限定されるものでなく、適宜の用途に使用可能である。しかしながら、配向軸が斜め方向に傾斜しているという観点から位相差板等に好適に使用することができる。より詳細には、配向軸の傾斜角度が20〜70度で、下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
[nxは位相差フィルムの遅相軸方向の屈折率を示し、ここで、遅相軸方向とは位相差フィルム面内の屈折率が最大となる方向を指し、nyは位相差フィルムの進相軸方向の屈折率を示し、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。]
の関係を満たす延伸フィルムを製造し、位相差板として用いることが好ましく、より好ましくは、下記式(2):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2・・・(2)
[nxは位相差フィルムの遅相軸方向の屈折率を示し、ここで、遅相軸方向とは位相差フィルム面内の屈折率が最大となる方向を指し、nyは位相差フィルムの進相軸方向の屈折率を示し、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。]
の関係を満たす延伸フィルムを製造し、位相差板として用いることが好ましい。
また、位相差板としては波長590nmで測定したRe(レターデーション)の値が10乃至1000nmを満たすことが好ましく、さらには100乃至170nm又は220乃至290nmを満たすことがより好ましい。
【0114】
なおこのような位相差板は、例えば液晶表示装置における複屈折特性の調節や視角変化による着色化の防止や視野角の拡大などの種々の目的で用いうる。また偏光板との接着による楕円偏光板や円偏光板等の各種光学素材の形成などにも用いうる。
【0115】
また、本発明で製造された延伸フィルムを位相差板に用いる場合、複数の延伸フィルムを重ね合わせた延伸フィルムの重畳体を位相差板として使用することが可能である。
この場合、重ね合わせる延伸フィルムの枚数は任意であるが、光の透過率などの観点から2〜5枚が好適である。
また、重ね合わせる各延伸フィルムの組み合わせは適宜変更可能であり、重ね合わせた延伸フィルムの配向軸の傾斜角度、原料、位相差等は同じでもよいし、異なっていてもよい。これらは適宜変更してよい。
【0116】
なお本発明の延伸フィルムを位相差板として使用する場合、例えば環状オレフィンのようなポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレートなどのように透明性に優れる延伸フィルムを使用することが好ましい。この位相差板の厚さは使用目的に応じた位相差等により任意に決定してよいが、好適には1mm以下が望ましく、より好適には1μmから500μmが望ましく、さらに好適には5μm〜300μmの厚さであることが望ましい。
【0117】
上記したような延伸フィルムを重ねて重畳体を形成する場合や位相差板(延伸フィルム)と偏光板を接着する場合等において、層間の屈折率の調節による反射の抑制や光学系のズレ防止、ゴミ等の異物の侵入防止などの観点より延伸フィルム間や位相差板と偏光板の間が固着処理されていることが好ましい。
なお、固着処理に使用される接着材等は特に限定されるものではなく、例えば透明な接着材等を好適に用いることができる。また、光学特性の変化防止等の観点から粘着剤を好適に使用することができる。
【0118】
またさらに、本発明によって製造された延伸フィルム(位相差板)は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理されたもののように紫外線吸収能をもたせたものであってもよい。
【0119】
以上説明した実施形態では、双方のレール(例えば、第1の実施形態であればレール10a,10b)の進行方向が変更される地点のうち、最も上流側にある第1の地点P1と、地点P4は、基本走行方向における位置が略同じとなっている。
しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではなく、基本走行方向における両者の位置が違っていてもよい。
図24で示されるテンター延伸機では、A−Aパターンの進行態様であり、且つ片側端部側の3つの地点P1、P2、P3と、他端部側の3つの地点P4、P5、P6がいずれも基本走行方向にずれている。このようなテンター延伸機では、先に進路が変更される側の地点P1から第1の工程が開始される。そして遅れた位置にある他端側の地点P4から、単位距離あたりの延伸の程度が変化する。
なお、A−Aパターンのみならず他のパターンであっても、このような構成を採用することができる。
【0120】
また、上記した各パターンのうち、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程を、Aで称されるパターン(長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が同一の向きに屈曲進行される状態)で行うことが望ましい。即ち、A−Xパターン(XはA,B,Cのいずれか)が望ましい。より具体的には、A−CパターンよりもA−Bパターンが望ましく、A−BパターンよりもA−Aパターンがさらに望ましい。
【0121】
また、上記した各パターンのうち、A−Aパターンでは、エリアBとエリアBにおける長尺状フィルムの軌跡は、略「く」字状、数学記号の不等号(>,<)に近似した形状、音楽記号のクレッシェンド、デクレッシェンドに近似した形状であることが望ましい。
【0122】
また上記した各実施形態では、第1の工程と第2の工程を一度ずつ実施したが、本発明はこれに限るものではない。第1の工程と第2の工程は、複数回繰り返して実施してもよい。この場合、第1の工程、第2の工程、第1の工程、第2の工程の順に実施してもよい。また、第1の工程、第1の工程、第2の工程の順に実施してもよく、第1の工程、第2の工程、第2の工程のように実施してもよい。即ち、第1の工程と第2の工程の組み合わせを複数回繰り返してもよく、第1の工程又は第2の工程のみを連続して実施してもよい。
なお、第1の工程を連続して実施する場合は、第1の工程と第1の工程の間で平行進行工程といった他の工程を実施することなく、第1の工程だけを連続して行うことが望ましい。
また、第1の工程と第2の工程の組み合わせを複数回繰り返す場合、第2工程が終了した後で高分子フィルムfの巻き取り動作を行うことが望ましい。具体的に説明すると、最初に延伸機で第1の工程と第2の工程を実施した後、一旦延伸機から高分子フィルムfを回収し、第1の工程と第2の工程を一度ずつ実施した延伸フィルム(高分子フィルムf)を再び延伸機に取り付け、再度第1の工程と第2の工程を実施することが望ましい。
【0123】
また、上記した第2実施形態では、第1の工程の延伸、第2の工程の収縮、第3の工程の縦延伸を順に実施する例について説明したが、本発明はこれに限るものではない。第1の工程と第2の工程は複数回実施してもよい。即ち、第1の工程、第2の工程、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順に実施してもよい。このように、第1の工程と第2の工程を複数回繰り返した後、第3の工程を実施してもよい。
さらにまた、第3の工程は必ずしも第1の工程と第2の工程の後に実施しなくてもよい。即ち、第3の工程、第1の工程、第2の工程の順に実施してもよい。このように、予め第3の工程である縦延伸を実施した高分子フィルムfに対して、第1の工程、第2の工程を実施してもよい。
また、第3の工程、第1の工程、第2の工程、第1の工程、第2の工程の順に実施してもよい。このように、第3の工程の縦延伸を最初に実施した後で第1の工程と第2の工程を複数回繰り返してもよい。
なお、第3の工程を第1の工程及び第2の工程の後に実施する場合、上記したように、シワの発生を抑制すると共に分子配向軸の傾斜角度を調整できる。対して、第3の工程を第1の工程及び第2の工程の前に実施する場合、分子配向軸の傾斜角度を調整した後で第1の工程及び第2の工程を実施できる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、本実施例で採用した各種物理物性や光学特性の測定方法は、以下の通りである。
【0125】
(1)Re(レターデーション)、Nz係数、配向軸の傾斜角度の測定
大塚電子製位相差フィルム検査装置RETSを用いて、測定波長590nmの値で幅手方向を5cm間隔で測定した。また、Nz係数の測定時の傾斜角度は45°で測定した。Re、Nz係数、及び配向軸の傾斜角度は平均値とした。ここで、Nz係数は、
Nz=(nx−nz)/(nx−ny)
[nxは位相差フィルムの遅相軸方向の屈折率を示し、ここで、遅相軸方向とは位相差フィルム面内の屈折率が最大となる方向を指し、nyは位相差フィルムの進相軸方向の屈折率を示し、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。]
である。
【0126】
(2)厚み
アンリツ(株)製触針式厚み計KG601Aを使用し、幅手方向の厚さを1mm間隔で測定した。得られた値の平均値を厚みとした。
【0127】
〔実施例1〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、160℃(度)に加熱して、幅方向に50%(パーセント)の延伸処理を施した。なおこのときのフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角α7)を9度とした。そして一時的に延伸機を停止し、フィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。
引き続いて同じ延伸機において、延伸処理を施したフィルムに対して162℃(度)に加熱して、幅方向に25%(パーセント)の収縮処理を施して仮延伸フィルムを得た。なおこのときのフィルム中心線の傾斜角(エリアC中心線傾斜角α8)を11度とした。そして得られた仮延伸フィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。
次いで、この仮延伸フィルムを図2の縦延伸機3に準じた延伸機に導入し、147℃(度)に加熱して、長手方向に1%(パーセント)の延伸処理を施して、目的とする延伸フィルムを得た。そして得られた延伸フィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表3に示す。
【0128】
〔実施例2〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、延伸時のフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角)を6度とし、収縮時のフィルム中心線の傾斜角(エリアC中心線傾斜角)を0度とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。
次いで、この仮延伸フィルムを図2の縦延伸機3に準じた延伸機に導入し、147℃(度)に加熱して、長手方向に2%(パーセント)の延伸処理を施して、目的とする延伸フィルムを得た。そして得られた延伸フィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表3に示す。
【0129】
〔実施例3〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、延伸時のフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角)を6度とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。なお、仮延伸フィルムの長手方向への延伸(第3の工程)は行わなかった。
【0130】
〔実施例4〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、収縮時のフィルム中心線の傾斜角(エリアC中心線傾斜角)を0度とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。なお、仮延伸フィルムの長手方向への延伸(第3の工程)は行わなかった。
【0131】
〔比較例1〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)をテンター延伸機に導入し、160℃(度)に加熱して、幅方向に50%(パーセント)の延伸処理を施して仮延伸フィルムを得た。なおこのときのフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角)を9度とした。つまり、収縮処理(第2の工程)を行わなかったこと以外は実施例1の仮延伸フィルムの製造方法に準じて仮延伸フィルムを製造した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。
次いで、この仮延伸フィルムを図2の縦延伸機3に準じた延伸機に導入し、147℃(度)に加熱して、長手方向に8%(パーセント)の延伸処理を施して、目的とする延伸フィルムを得た。そして得られた延伸フィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表3に示す。
【0132】
〔比較例2〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、延伸時のフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角)を6度とし、収縮処理時の収縮率を幅方向に40%(パーセント)とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。なお、仮延伸フィルムの長手方向への延伸(第3の工程)は行わなかった。
【0133】
〔比較例3〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、収縮処理時の収縮率を幅方向に40%(パーセント)とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。なお、仮延伸フィルムの長手方向への延伸(第3の工程)は行わなかった。
【0134】
〔比較例4〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図2のテンター延伸機1に準じた延伸機に導入し、延伸時のフィルム中心線の傾斜角(エリアB中心線傾斜角)、及び収縮時のフィルム中心線の傾斜角(エリアC中心線傾斜角)を共に0度とした以外は実施例1に準じて仮延伸フィルムを得た。そして延伸及び収縮の後でそれぞれフィルムのRe、配向軸の傾斜角度、Nz係数、シワの有無を測定した。これらの条件を表1に示し、これらの結果を表2に示す。なお、仮延伸フィルムの長手方向への延伸(第3の工程)は行わなかった。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
表2,3に示す様に、実施例1〜4の延伸フィルムは、いずれも高いReを有していた。またNz係数についても0.5〜2.5の範囲内の良好な値であった。また、シワの発生は認められなかった。
一方、第2の工程を行わない比較例1の延伸フィルムは、Reが低く、かつNz係数が上記範囲を逸脱していた。また、第2の工程における収縮率が高い比較例2と比較例3の延伸フィルムでは、いずれもシワの発生が認められた。
【0139】
〔実施例5〕
本実施例では、図1に示したα3、α4、α5、α6、α7、α8等の値を適宜設定し、各種の延伸フィルムを作製した。そして、各延伸フィルムについて、Re(レターデーション)、配向軸の傾斜角度(θr)、およびNz係数を測定した。一部については、必要な炉幅も調べた。延伸・収縮等の条件は、上記した実施例1−4に準じた。
実験は大きく3つの条件に分けて行った(実験1〜3)。
【0140】
以下の実験1〜3では、前記した特許文献1に開示された進行形態で延伸したフィルムを基準(比較例)とした。当該比較例の進行形態は、図13に示す。この比較例の進行形態は、第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の一方の端部は基準方向と平行に進行し、且つ第1の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部から離れる方向に向かって屈曲進行する状態を含む。また第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の前記一方の端部は基準方向に対して平行に進行し、且つ第2の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部に向かって屈曲進行する状態を含む。この進行形態を本明細書におけるパターンの定義に当てはめると、B−Bパターンとなる。図1のα3〜α6を用いて説明すると、この進行形態は「α3<90°,α4=90°,α5<90°,α6=90°」の場合に相当する。この比較例は、前述した、原幅Waの長尺状フィルムから最終幅Wbの延伸フィルムを製造する基準延伸工程を実施したものである。
【0141】
各延伸フィルムの評価は、Reとθrの値について上記比較例と比較することにより行った。すなわち、Reとθrの値が高いほど、フィルム特性が優れていると判断した。
【0142】
(実験1)
実験1では、B−Bパターンでかつ「α7=6°,α8=3°」の条件で作製した延伸フィルムを基準(比較例)とし、この延伸フィルムとの比較で各延伸フィルムの評価を行った。結果を表4、表5に示す。表4、表5において、「角度合計」とは、比較例(α7=6°,α8=3°)からみたα7とα8の増分の合計である。なお、α7とα8の値に併記された括弧書きは、それぞれ比較例のα7とα8からみた増分を表す。また「α10」はエリアB中心線とエリアC中心線とが成す角度であり、「180°−(α7+α8)」である。パターンとは、本明細書で定義した「A−Aパターン」等の各パターンを示す。
表5は表4をパターンごとに並べ替えたものであり、表4と表5の内容は実質的に同じである。
【0143】
実験1−2は、比較例のパターン(B−Bパターン)で実験1−1(A−Aパターン)のフィルム特性を再現したものである。同様に、実験1−12は、比較例のパターン(B−Bパターン)で実験1−3(A−Bパターン)のフィルム特性を再現したものである。これらの実験は、必要な炉幅を比較することを目的としている。
【0144】
表4に示すように、角度合計が1°以上の場合に、優れたフィルム特性が得られた。
また実験1−1(A−Aパターン)と実験1−2(B−Bパターン)の結果を比較すると、実験1−1の方が必要な炉幅が小さかった。これにより、同じ特性のフィルムを作製する場合に、A−Aパターンを採用することによって延伸装置のサイズをよりコンパクトにできることが示された。
また実験1−3(A−Bパターン)と実験1−12(B−Bパターン)の結果を比較すると、実験1−3の方が必要な炉幅が小さかった。これにより、同じ特性のフィルムを作製する場合に、A−Bパターンを採用することによって延伸装置のサイズをよりコンパクトにできることが示された。
【0145】
表5は表4をパターンごとに並べ替えたものである。Reとθrの値から各フィルムのフィルム特性を評価し、パターンごとに評価結果を整理した。
A−Aパターンの場合には、α10が163°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が17°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Bパターンの場合には、α10が167°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が13°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Cパターンの場合には、α10が170°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が10°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
B−Aパターンの場合には、α10が167°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が13°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
C−Aパターンの場合には、α10が170°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が10°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

【0148】
(実験2)
実験2では、B−Bパターンでかつ「α7=8°,α8=3°」の条件で作製した延伸フィルムを基準(比較例)とし、この延伸フィルムとの比較で各延伸フィルムの評価を行った。結果を表6、表7に示す。表6、表7における「角度合計」、「α10」、「パターン」は、表4、表5のものと同じ意味である。表7は表6をパターンごとに並べ替えたものであり、表6と表7の内容は実質的に同じである。
【0149】
実験2−2は、比較例のパターン(B−Bパターン)で実験2−1(A−Aパターン)のフィルム特性を再現したものである。この実験は、必要な炉幅を比較することを目的としている。
【0150】
表6に示すように、角度合計が1°以上の場合に、優れたフィルム特性が得られた。
また実験2−1(A−Aパターン)と実験2−2(B−Bパターン)の結果を比較すると、実験2−1の方が必要な炉幅が小さかった。これにより、同じ特性のフィルムを作製する場合に、A−Aパターンを採用することによって延伸装置のサイズをよりコンパクトにできることが示された。
【0151】
表7は表6をパターンごとに並べ替えたものである。Reとθrの値から各フィルムのフィルム特性を評価し、パターンごとに評価結果を整理した。
A−Aパターンの場合には、α10が161°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が19°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Bパターンの場合には、α10が165°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が15°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Cパターンの場合には、α10が168°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が12°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
B−Aパターンの場合には、α10が165°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が15°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
C−Aパターンの場合には、α10が167°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が13°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
【0152】
【表6】

【0153】
【表7】

【0154】
(実験3)
実験3では、B−Bパターンでかつ「α7=10°,α8=2°」の条件で作製した延伸フィルムを基準(比較例)とし、この延伸フィルムとの比較で各延伸フィルムの評価を行った。結果を表8、表9に示す。表8、表9における「角度合計」、「α10」、「パターン」は、表4、表5のものと同じ意味である。表9は表8をパターンごとに並べ替えたものであり、表8と表9の内容は実質的に同じである。
【0155】
実験3−2は、比較例のパターン(B−Bパターン)で実験3−1(A−Aパターン)のフィルム特性を再現したものである。この実験は、必要な炉幅を比較することを目的としている。
【0156】
表8に示すように、角度合計が1°以上の場合に、優れたフィルム特性が得られた。
また実験3−1(A−Aパターン)と実験3−2(B−Bパターン)の結果を比較すると、実験3−1の方が必要な炉幅が小さかった。これにより、同じ特性のフィルムを作製する場合に、A−Aパターンを採用することによって延伸装置のサイズをよりコンパクトにできることが示された。
【0157】
表9は表8をパターンごとに並べ替えたものである。Reとθrの値から各フィルムのフィルム特性を評価し、パターンごとに評価結果を整理した。
A−Aパターンの場合には、α10が160°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が20°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Bパターンの場合には、α10が164°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が16°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
A−Cパターンの場合には、α10が167°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が13°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
B−Aパターンの場合には、α10が164°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が16°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
C−Aパターンの場合には、α10が167°以下で優れたフィルム特性が得られると考えられた。また、「α7+α8」が13°以上で優れたフィルム特性が得られると考えられた。
【0158】
【表8】

【0159】
【表9】

【0160】
図14と図15に、各パターンの概略図と、上記したα10の好適な上限値をまとめて示した。
【0161】
ここで、各パターンと図1のα3〜α6との関係について説明する。
A−Aパターンは、典型的には「α3<90°,α4<90°,α5<90°,α6<90°」の場合である。
A−Bパターンは、典型的には「α3<90°,α4<90°,α5<90°,α6=90°」の場合である。
A−Cパターンは、典型的には「α3<90°,α4<90°,α5<90°,α6>90°」の場合である。
B−Aパターンは、典型的には「α3<90°,α4=90°,α5<90°,α6<90°」の場合である。
C−Aパターンは、典型的には「α3<90°,α4>90°,α5<90°,α6<90°」の場合である。
【0162】
以上で、本発明の実施例及びその比較例についての説明を終了する。
【0163】
ところで、前記した第2の実施形態では、第1の実施形態で行った高分子フィルムfの延伸及び熱収縮の後に、高分子フィルムfを縦延伸させた例を示した。しかしながら、高分子フィルムfの延伸及び熱収縮の後に、高分子フィルムfを熱収縮させることによっても、配向軸の傾斜角度を増大させることができる。
【0164】
具体的には、前記した各実施形態によって、長尺状のフィルムをプレ延伸した後に、当該フィルムを熱収縮させて配向軸の傾斜角度を増大させる。以下、この技術について具体的に説明する。
【0165】
本技術は、長尺状のフィルムであって、配向軸の傾斜角度が幅方向に対して5度以上20度未満にプレ延伸されたプレ延伸フィルムの幅方向両端を保持し、当該プレ延伸フィルムを加熱して熱収縮させつつ前記両端の保持間隔をしだいに狭めていくことを特徴とするものである。
【0166】
本技術では、熱収縮により配向軸を目的とする角度に傾ける前に、前もってより緩やかな角度に配向軸を傾斜させるプレ延伸の工程を有する。
そのことにより、配向軸を変更する際に高分子フィルムにかかる負担を分担することができる。したがって、高分子フィルム配向軸を一度に急激に傾けた場合に比べて、配向軸をより大きな角度まで傾斜させることができる。加えて、高分子フィルムの性質を段階的に変化させることができるので、製造された延伸フィルムの品質の均一化が容易である。
そして本技術では、高分子フィルムを熱収縮させて配向軸の傾斜角度を急なものとする。以下、この原理を説明する。
【0167】
例えば、図16の様に幅方向に延伸されたフィルム305であって、且つ配向軸(矢印)に傾斜角度が無いフィルム305を使用し、この幅Wを図16(a)から図16(b)のように縮めた場合を想定すると、図16に示すように、分子の配向軸の傾斜角度は何ら変化しない。
しかしながら、図17に示す様な幅方向に延伸されたフィルム306であって、且つ配向軸(矢印)が僅かに傾斜したフィルム306を使用し、このフィルム306の幅Wを図17(a)から図17(b)の様に縮めた場合を想定すると、図17の様に配向軸の傾斜角度が急角度になる。
即ち、当初のフィルム306の傾斜方向は、図17(a)の矢印a−b,c−d,e−f・・・で図示される方向である。
そして例えば、図17(a)のa点、b点、c点、d点・・・を保持し、フィルム306の幅Wを縮めると、図17(a)のa点、b点、c点、d点・・・の長手方向の位置が変化しないので、図17(b)の様に、配向軸の方向が寝る方向となり、傾斜角度が急角度になる。
したがって、小さい傾斜角度でプレ延伸されたプレ延伸フィルムの幅方向両端を保持し、当該プレ延伸フィルムを加熱して熱収縮させつつ前記両端の保持間隔をしだいに狭めて行くと、配向軸の傾斜角度が急傾斜に変化する。そしてフィルム両端の保持間隔を調整することにより、所望の傾斜角度に配向軸が傾斜した延伸フィルムを得ることができる。
【0168】
本技術は、長尺状のフィルムに対して配向軸の傾斜角度を幅方向に対して5度以上20度未満に延伸することによりプレ延伸フィルムを形成する工程と、形成したプレ延伸フィルムを加熱して熱収縮させつつ前記両端の保持間隔をしだいに狭めていく工程とを連続して行うことを特徴とするものでもある。
【0169】
本技術は、プレ延伸フィルムを形成後すぐに熱収縮するものでもある。このようにすると、延伸フィルム製造にかかる時間を短縮することができるので、製造作業の効率化を図ることができる。
【0170】
また熱収縮させつつ前記両端の保持間隔をしだいに狭めていく際に、プレ延伸フィルムの両端を幅方向中心線に対して均等に移動させることが望ましい。
【0171】
本技術では、幅方向中心線に対して均等に熱収縮させることにより、延伸フィルムの幅方向における各種特性のバラツキを低減することができる。
【0172】
さらに本技術では、プレ延伸フィルムを加熱して熱収縮することにより、プレ延伸フィルムの分子配向軸の幅方向に対する傾きを20度以上70度未満にすることが推奨される。
【0173】
本技術によると、分子配向軸を幅方向に対して大きく傾けた延伸フィルムを製造することができる。
【0174】
本技術による高分子フィルムの延伸は、幅方向の拡縮調整が可能なテンター式延伸機によりプレ延伸フィルムを加熱し、熱収縮させることが望ましい。即ち、幅方向の拡縮調整が可能なテンター式延伸機を使用しても好適に実施することができる。
【0175】
本技術により延伸されたフィルムは、延伸フィルムの幅方向に対する配向軸の傾斜角度が20度より大きく70度より小さいものであることが望ましい。
【0176】
本技術により製造された延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzが下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
を満たすことを特徴とする延伸フィルムであることが望ましい。
【0177】
本技術の延伸フィルムは前記した方策によって製造される。そのため、幅方向に対して大きく傾斜した配向軸を有する延伸フィルムや、優れた光学特性を有する延伸フィルムを提供することができる。
【0178】
また、こうして作られた延伸フィルムが少なくとも1枚以上含まれた位相差板も有用である。即ち、本技術により製造された延伸フィルムは、重ね合わせて位相差板として使用することができる。
【0179】
本技術は、高分子フィルムに過度の負担を掛けずに配向軸の傾斜角度を変更することができるという効果がある。そのため、配向軸の傾斜角度を大きくすることが可能であるという効果がある。加えて、製造された延伸フィルムの品質の均一化が容易であるという効果がある。
【0180】
以下、本技術につき、主に第11の実施形態及び、第1の具体例,第2の具体例に係る延伸フィルムの製造方法を例に挙げ、その概要を詳細に説明する。
【0181】
第11の実施形態及び、具体例1,2に係る延伸フィルムの製造方法は、基本的に連続的に供給される長尺状の高分子フィルムfを把持(保持)しながら搬送し、高分子フィルムfを搬送しつつ搬送方向に対して傾斜する方向へ延伸する方法である。そして、特徴的な工程として以下の3つの工程を含むものである。
(1)目的とする配向軸の傾斜角度(20度以上70度未満であり、例えば45度)より緩やかに傾斜(5度以上20度未満)させる工程(以下プレ延伸工程と称す)。
(2)プレ延伸工程を経て配向軸が緩やかに傾斜した延伸フィルム(プレ延伸フィルム)を一旦巻き取る工程(以下一時巻取工程と称す)。
(3)巻き取った延伸フィルムに対して角度調整のための加熱収縮処理を行う工程(以下角度調整工程と称す)。
【0182】
次に、本発明の第11の実施形態における延伸フィルムの製造方法について説明する。
【0183】
第11の実施形態における延伸フィルムの製造方法は、図18で示されるように、第1の実施形態に準ずるテンター延伸機1と、詳しくは後述する角度調整用熱収縮機203によって実施する。
【0184】
具体的には、まず、テンター延伸機1で高分子フィルムfを延伸し、その後収縮させる。ここで、収縮後の高分子フィルムfは、延伸前の高分子フィルムf(テンター延伸機1に取り付けた状態の高分子フィルムであり、延伸及び収縮を実施していない高分子フィルム)に対して延伸された状態となる。テンター延伸機1により延伸及び収縮を実施された高分子フィルムfは、目的とする配向軸の傾斜角度(20度以上70度未満であり、例えば45度)より緩やか(5度以上20度未満)に配向軸が高分子フィルムfの幅方向に対して傾斜した状態となる。このことにより、テンター延伸機1によるプレ延伸工程が終了する。
【0185】
次に、テンター延伸機1による延伸及び収縮が完了すると、高分子フィルムfが一旦巻き取られる(一時巻取工程)。そして、テンター延伸機1から巻き取られた高分子フィルムfが、角度調整用熱収縮機203へ取付けられる。
【0186】
そして、テンター延伸機1によるプレ延伸工程が終了した高分子フィルムfに対し、角度調整用熱収縮機203で加熱収縮処理を実施する(角度調整用熱収縮機203による角度調整工程については、詳しくは後述する)が完了する。このことにより、延伸フィルムの製造が完了する。
【0187】
次に上記技術の第1の具体例について、図19を参照しつつ説明する。
【0188】
図19における延伸フィルム製造装置201は、大きく分けてプレ延伸用延伸機202と角度調整用熱収縮機203から構成されている。
【0189】
本具体例のプレ延伸用延伸機202は、従来公知の延伸機等を使用することができる。なお、本具体例で使用するプレ延伸用延伸機202は、従来の延伸機に比べて両端の保持開始点から保持解除点までの距離の差が小さく、フィルムの延伸される角度が小さいものとした。
具体的に説明するとプレ延伸用延伸機202は、把持部材206、引き出しロール208、巻き取り用ロール209、レール210を少なくとも備えている。そして、引き出しロール208に取り付けた高分子フィルムfを引き出し、高分子フィルムfの両端を把持部材206で把持して巻き取り用ロール209側へ向かって走行させ、巻き取り用ロール209の手前で高分子フィルムfを開放し、巻き取り用ロール209で巻き取るものである。
【0190】
ここで、把持部材206は引き出しロール208から引き出された高分子フィルムfの両端を把持したまま、図示しないチェーンと一体にレール210上を走行するものである。ここで、レール210は対になるレール210aとレール210bより構成されるものであり、レール210a及びレール210b上をそれぞれ把持部材206が走行する。
そして、片側端部を把持した把持部材206が走行する経路は、他端部を把持した把持部材206が走行する経路より長くなっている。即ち、片側のレール210aに対し、レール210bは迂回する経路をとっている。なお、把持部材206がレール上を走行する速度は両端で略同じとする。
【0191】
つまり、プレ延伸用延伸機202は図19で示されるように引き出しロール208側から巻き取り用ロール209側へ向かってβA、βB、βCの3つの連続するエリアに分割されている。そして、各エリアにおいてそれぞれレール210の幅が異なっている。
エリアβAにおいてはレール210a,レール210bの幅が等間隔であり、エリアβBでは片側のレール(レール210b)が迂回しており、エリアβCにおいては再び等間隔で進行している。そして、エリアβAとエリアβCは共にレールの幅が等間隔であるが、エリアβAに比べてエリアβCのレール210の幅は広くなっている。
また、このプレ延伸用延伸機202は加熱炉を設ける構成としてもよく、その場合加熱炉はエリアβAからエリアβBに跨って配置されていることが好ましい。
【0192】
角度調整用熱収縮機203は、把持部材211、引き出しロール212、巻き取り用ロール213、レール214、加熱炉215を少なくとも備えている。そして、引き出しロール212に取り付けた高分子フィルムfを引き出し、高分子フィルムfの両端を把持部材211で把持した後、巻き取り用ロール213へ向かって走行させて巻き取り用ロール213で巻き取るものである。
ここで、把持部材211はレール214上を走行するものであり、引き出しロール212から引き出された高分子フィルムfの両端を把持して走行するものである。ここで、レール214は対になるレール214aとレール214bより構成されるものであり、レール214a及びレール214b上をそれぞれ把持部材211が走行する。
そして、高分子フィルムfの両端の把持部材211は巻き取り用ロール213に近づくにつれて、互いに近づく方向へ移動することにより幅方向の距離が近づくものである。つまり、引き出しロール212側から巻き取り用ロール213へ向かってレール214aとレール214bの距離は狭まっている。
【0193】
詳細に説明すると、角度調整用熱収縮機203は引き出しロール212側から巻き取り用ロール213側へ向かってβD、βE、βFの3つの連続するエリアに分割されている。そして、各エリアにおいてそれぞれレールの幅が異なっている。つまり、まずエリアβDにおいてはレール214の幅が等間隔となっている。次にエリアβEにおいては、走行方向へ進むにつれてレール214a及びレール214bがそれぞれ幅方向中央に向かって徐々に傾斜してレールの幅が狭くなっていく。そして、エリアβFにおいては再びレール214の幅が等間隔となっている。
ここで、エリアβDとエリアβFのレール214の幅は共に等間隔であるが、エリアβDに比べてエリアβFのレール214の幅が狭くなっている。加えて、エリアβEにおいて両端のレール214はそれぞれ幅方向中央に向かって傾斜しているが、走行方向における傾斜の開始地点及び傾斜の終了地点、さらに走行方向に対する傾斜の角度は同じとなっている。したがって、レール214は走行方向に沿って幅方向で左右対称に配置されている。
【0194】
また、加熱炉215はエリアβD〜βFに跨って設けられており、高分子フィルムfを熱風によって加熱するものである。
【0195】
次に、上記した延伸フィルム製造装置201を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。
まず、引き出しロール208に長尺状の高分子フィルムfをロール状にして取り付ける。そして、エリアβAにおいて、図示しないロール等の搬送装置を使用して高分子フィルムfを巻き取り用ロール209側に向かって走行させる。
高分子フィルムfを巻き取り用ロール209側に一定距離走行させると、高分子フィルムfはその幅方向両端を把持部材206によって把持される。そして、高分子フィルムfを引き続き巻き取り用ロール209側に向かって走行させる。
【0196】
次に高分子フィルムfがエリアβBに侵入すると「プレ延伸工程」が開始される。具体的には、片側端部を把持している把持部材206がもう一方の端部を把持している把持部材206から離れる方向に移動する。つまり、一方の把持部材206は巻き取り用ロール209側へ直進し、もう一方の把持部材206は高分子フィルムfの幅を広げながら巻き取り用ロール209側へ進む。言い換えると、一方の把持部材206が走行方向に対して斜行する。
このことにより、走行方向垂直に延伸されていた高分子フィルムfの延伸方向が走行方向垂直から傾斜して、高分子フィルムfに緩やかな配向軸の傾斜角度がつく。即ち、目的とする配向軸の傾斜角度(20度以上70度未満であり、例えば45度)より緩やか(5度以上20度未満)に高分子フィルムfの配向軸が幅方向に対して傾斜する。
また、エリアβA(高分子フィルムfの幅方向が等間隔)の部分で対向する位置にあった両端の把持部材206間の距離が進行と共に広がっていくことにより、高分子フィルムfを延伸する力も大きくなっていく。そして、高分子フィルムfを延伸する力が大きくなると共にRe(レタデーション)が上昇する。そして、「プレ延伸工程」が終了する。
【0197】
ここで、本具体例ではエリアβBの「プレ延伸工程」により、配向軸の傾斜角度を目標とする配向軸の傾斜角度より緩やかな角度にしている。そして、後述する「角度調整工程」にて配向軸の傾斜角度を目標とする配向軸の傾斜角度とするものである。このように、配向軸を目標とする傾斜角度に傾ける前に目標とする角度より緩やかな仮の角度にする工程を設けることにより、一度に目標とする傾斜角度にしてしまう延伸方法と比べて、高分子フィルムfの配向軸を急激に傾けずに配向軸の傾斜角度を傾けることができる。そのことにより、ツレ(不均一な引っ張り応力の結果生じる筋状ムラ)、シワ、フィルム寄り(局部的な厚みむら)等の問題が発生しにくいという利点がある。
【0198】
そして最後に、高分子フィルムfはエリアβCに侵入し、幅方向の長さが変化しないまま巻き取り用ロール209側に向かって走行して、巻き取り用ロール209に巻き取られる。このことにより、「一時巻取工程」が完了する。
【0199】
次に、プレ延伸工程を行った(巻き取り用ロール209に巻き取った)高分子フィルムfを角度調整用熱収縮機203の引き出しロール212に取り付ける。
そしてβDエリアにおいて、図示しないロール等の搬送装置を使用して高分子フィルムfを巻き取り用ロール213側に向かって走行させる。
高分子フィルムfが巻き取り用ロール213側に一定距離走行させられると、高分子フィルムfはその幅方向両端を把持部材211によって把持される。そして、高分子フィルムfは引き続き巻き取り用ロール213側に向かって走行させられる。
【0200】
次に高分子フィルムfがエリアβEに侵入すると、両端部分を把持している把持部材206が互いに近づく方向へ移動する。このとき、加熱処理を行うことにより高分子フィルムfを熱収縮させる。つまり、高分子フィルムfを加熱炉215によって加熱して熱収縮させると共に、幅方向中心側に向かって両側から熱収縮の縮み量に合わせて間隔を窄めることで、高分子フィルムfの配向軸の角度調整を行うものである。
このことにより、「角度調整工程」が完了する。
【0201】
最後に高分子フィルムfはエリアβFに侵入する。エリアβFでは高分子フィルムfは幅方向の長さが変化しないまま巻き取り用ロール213側に向かって走行し、巻き取り用ロール213に巻き取られる。そのことをもって高分子フィルムfに対する配向軸を傾斜させる工程がすべて終了し、延伸フィルムの製造が完了する。なお、巻き取られた延伸フィルムは次工程(例えば切り抜き等の工程)へ送られる。
【0202】
上記した具体例ではプレ延伸用延伸機202を使用して、プレ延伸(高分子フィルムを予め幅方向に対して若干斜交する角度方向に配向させる延伸)を行ったがプレ延伸を実施する方法及び延伸機はこれに限るものではない。プレ延伸に使用する方法及び延伸機は配向軸をフィルムの幅方向に対して5度以上傾斜させるものであれば特に制約されず、公知の方法及び延伸機を採用することができる。
なお加熱収縮前フィルムの配向軸の傾斜角度が5度未満である場合、配向軸の傾斜角度を20〜70度の範囲に調整する際に幅方向に大幅な収縮を要するため、収縮後のフィルムに弛み、シワが発生しやすく、本具体例においては好ましくない。
【0203】
次に、上記技術の第2の具体例について説明する。第2の具体例にかかる延伸フィルムの製造方法は、第1の具体例で行った「プレ延伸工程」と、「角度調整工程」とを連続して実施するものである。
以下に上記技術の第2の具体例について、図20の延伸機221を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。ただし、上記技術において図20の延伸機221を使用することが必須でないことは当然である。
【0204】
図20における延伸機221は、把持部材226、引き出しロール227、巻き取り用ロール228、レール229、加熱炉230を少なくとも備えている。そして、引き出しロール227に取り付けた高分子フィルムfを引き出し、高分子フィルムfの両端を把持部材226で把持して巻き取り用ロール228側へ向かって走行させ、加熱炉230の出口で高分子フィルムfを開放し、巻き取り用ロール228で巻き取るものである。
【0205】
ここで、把持部材226はレール229上を図示しないチェーンと一体に走行するものであり、引き出しロール227から引き出された高分子フィルムfの両端を把持して両端を同速で走行するものである。なお、レール229は対になるレール229aとレール229bより構成されるものであり、レール229a及びレール229b上をそれぞれ把持部材226が走行する。また、高分子フィルムfの両端部を把持した把持部材226が走行する経路は、延伸機221の前半部分と後半部分で異なっている。
【0206】
詳細に説明すると、延伸機221は大きく分けて前半部分のプレ延伸実施部222(図20のエリアβA)と、後半部分の熱収縮実施部223(図20のエリアβB)に分けることができる。
まずプレ延伸実施部222においては、把持部材226が走行するレール229a,229bはまず等間隔で引き出しロール227側から巻き取り用ロール228側へ進む。そしてその後、片側端部のレール229aはそのまま直進し、他端部のレール229bは直進するレール229aから離れる方向であり、引き出しロール227側から巻き取り用ロール228側へ向かう方向へ進む。つまり、片側のレール229bのみ走行方向に対して斜行する。
【0207】
次に熱収縮実施部223においては、まず、把持部材226が走行するレール229a,229bが両端側から幅方向の中央側へ向かって徐々に傾斜してレール229aとレール229bの幅が狭くなっていく。換言すると、高分子フィルムfの走行方向へ進むにつれて両端のレール229a,229bが互いに近づく方向へ緩やかに傾斜している。そして、レール229は幅が狭まった状態で等間隔を維持して巻き取り用ロール228へ向かって進む。
なお、このとき熱収縮実施部223の開始点(レール229a,229bが互いに近づく方向へ傾斜を開始する地点)から、各レールの幅方向への傾斜が終了する点までの間、即ち、両端のレール229a,229bが傾斜している部分は走行方向に十分長い距離が確保されている。
なお、この熱収縮実施部223には加熱炉230が設けられており、加熱炉230は高分子フィルムfを熱風によって加熱するものである。
【0208】
次に、上記した延伸機221を用いて延伸フィルムを製造する例について説明する。
まず、引き出しロール227に長尺状の高分子フィルムfをロール状にして取り付ける。そして、プレ延伸実施部222において図示しないロール等の搬送装置を使用して高分子フィルムfを巻き取り用ロール228側に向かって走行させる。
高分子フィルムfは巻き取り用ロール228側に一定距離走行させられると、その幅方向両端を把持部材226によって把持される。そして、高分子フィルムfは引き続き巻き取り用ロール228側に向かって走行させられる。
【0209】
そして、両端を把持部材226によって把持された高分子フィルムfが巻き取り用ロール228側へ向かって一定距離走行すると、片側端部を把持している把持部材226がもう一方の端部を把持している把持部材226から離れる方向に移動する。
このことにより、走行方向垂直に延伸されていた高分子フィルムfの延伸方向が走行方向垂直から傾斜する。そして、高分子フィルムfの配向軸が幅方向に対して緩やか(5度以上20度未満)に傾斜する。
また、初めに高分子フィルムfの幅方向において等間隔を維持して進んでいた両端の把持部材226のうち、片側端部の把持部材226が斜行する(もう一方の端部を把持している把持部材226から離れる方向に移動する)ことによって、高分子フィルムfを延伸する力が大きくなりRe(レタデーション)が上昇する。そして、「プレ延伸工程」が終了する。
【0210】
続いて、高分子フィルムfは熱収縮実施部223を走行する。ここで、熱収縮実施部223ではプレ延伸後の「角度調整工程」を行うものである。
【0211】
つまり熱収縮実施部223では、プレ延伸実施部222にて走行方向に対して傾いた方向へ延伸させた(プレ延伸の終了した)高分子フィルムfに対して、角度調整のための加熱収縮処理を行うものである。そのことにより、高分子フィルムfの配向は目的とする配向軸の傾斜角度(幅方向に対して20度以上70度未満であり、例えば45度)にする。
【0212】
具体的には、まず加熱炉230により高分子フィルムfを加熱して熱収縮させる。このとき、両端部分を把持している把持部材226を互いに近づく方向へ移動させ、高分子フィルムfの熱収縮の縮み量に合わせて幅方向中心側に向かって両側から間隔を窄めていく。そのことにより角度調整を行い高分子フィルムfの配向軸を目的とする配向軸の傾斜角度(20度以上70度未満であり、例えば45度)にする。
【0213】
高分子フィルムfの配向軸が目的とする傾斜角度になると、両端部分を把持している把持部材226は互いに近づく方向への移動を終了する。そして、把持部材226は高分子フィルムfの幅方向の距離を保ちながら、巻き取り用ロール228側へ走行する。
【0214】
続いて、把持部材226は巻き取り用ロール228の手前で高分子フィルムfを開放する。そして、開放された高分子フィルムfを巻き取り用ロール228が巻き取ることにより、高分子フィルムfの配向軸を傾斜させる工程が終了する。つまり、延伸フィルムの製造が完了する。なお、巻き取られた延伸フィルムは次工程(例えば切り抜き等の工程)へ送られる。
【0215】
ここで第2の具体例のように「プレ延伸工程」と「角度調整工程」を連続して行う場合、「プレ延伸工程」で配向軸の傾斜角度が所定の角度になるかどうかを予め確認しておく必要がある。即ち、第1の具体例のように「プレ延伸工程」の後で高分子フィルムfを一旦回収するという工程がないため、延伸機の試運転時等において「プレ延伸工程」で所定の配向軸の傾斜角度になるかどうかを確認してから延伸フィルムを製造する必要がある。
【0216】
「プレ延伸工程」における配向軸の傾斜角度を確認する方法として、例えば、レールの幅を変更可能なテンター延伸機を使用するという方法が考えられる。具体的に説明すると、まず試運転時において図20の延伸機221を図21のようにする。即ち、延伸機221の熱収縮実施部223におけるレール229を等間隔にする。そうして、その延伸機221で試運転を行うことにより高分子フィルムfに対して「プレ延伸工程」のみを実施する。このとき、延伸機221の外部まで高分子フィルムfを搬送して配向軸の傾斜角度を測定することで「プレ延伸工程」の配向軸の傾斜角度を確認する。
なお「プレ延伸工程」において所定の配向軸の傾斜角度になっていることが確認されると、熱収縮実施部223の前側部分においてレール229a,229bを両端側から幅方向の中央側へ向かって徐々に傾斜させる。即ち、図20の延伸機221と同じ状態にする。そして、上記した第2の具体例の延伸フィルムの製造を行う。この方法によると「プレ延伸工程」の角度を確認した後に延伸フィルムの製造を行うことができる。
【0217】
また他の方法として、延伸機を一旦停止するという方法も考えられる。即ち、図20の延伸機221を一時停止して、熱収縮実施部223の前側部分(プレ延伸実施部222よりの部分)で高分子フィルムfを切り抜いて配向軸の傾斜角度を確認するという方法である。
【0218】
また、上記した第1の具体例及び第2の具体例における「プレ延伸工程」において、フィルムの揮発分率は5%(パーセント)未満が好ましく、3%(パーセント)未満であることがさらに好ましい。
【0219】
上記した第2の具体例では、「角度調整工程」の際に高分子フィルムfの両端を幅方向において均等に収縮させたが、両端の保持間隔を狭めることができれば、収縮の方法はこれに限るものではない。例えば、図22のように一方の端部側からのみ収縮させてもよい。しかしながら、高分子フィルムfの幅方向の特性ばらつきを小さくするという観点から両端を均等に収縮させることが好ましい。
【0220】
また上記した第1の具体例及び第2の具体例において、加熱収縮処理による角度調整(「角度調整工程」)は幅方向に収縮させる際の収縮率、温度変化、収縮処理を行う時間等を制御することにより行うものである。したがって、これらは目的とする配向軸の傾斜角度等に応じて適宜に変更される。
しかしながら、幅方向に加熱収縮させる際に高分子フィルムの長手方向に延伸を行う(縦延伸を行う)と、製造する延伸フィルムに高い二軸性を発現してしまうため、縦延伸を行わないほうが好ましい。
【0221】
上記技術の第1の具体例及び第2の具体例について、実施例及び比較例をあげて具体的に説明するが、本実施例は上記技術を限定するものではない。
なお、本実施例で採用した各種物理物性や光学特性の測定方法は、以下の通りである。
【0222】
(1)Re(レターデーション)、Nz係数、配向軸の傾斜角度の測定
大塚電子製位相差フィルム検査装置RETSを用いて、測定波長590nmの値で幅手方向を5cm間隔で測定した。また、Nz係数測定時の傾斜角度は45°で測定した。Re(レターデーション)、Nz係数及び配向軸の傾斜角度は平均値とした。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny)
[nxは位相差フィルムの遅相軸方向の屈折率を示し、ここで、遅相軸方向とは位相差フィルム面内の屈折率が最大となる方向を指し、nyは位相差フィルムの進相軸方向の屈折率を示し、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。]
【0223】
(2)厚み
アンリツ(株)製触針式厚み計KG601Aを使用し、幅手方向の厚さを1mm間隔で測定した。得られた値の平均値を厚みとした。
【0224】
〔上記技術の実施例1〕
ポリカーボネートフィルム(株式会社カネカ製 エルメックR−フィルム無延伸品)を図19のプレ延伸用延伸機202に準じた延伸機に導入し、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が570nmで配向軸が幅方向に対して6度傾斜した厚さ40μmで幅1000mmのポリカーボネートフィルムを得た。そして、そのポリカーボネートフィルムを図19の角度調整用熱収縮機203に準じたテンター延伸機に導入し160℃に加熱して、両端把持具間の幅方向距離を均等に狭くすることにより、幅方向に40%の収縮処理を施して延伸フィルムを得た。次に大塚電子製位相差フィルム検査装置RETSを用いて、この延伸フィルムの特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が69〜71nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は44〜46度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は1.0〜1.1であった。
【0225】
〔上記技術の実施例2〕
配向軸が幅方向に対して6度傾斜したポリカーボネートフィルムを160℃に加熱して、両端把持具間の幅方向距離を均等に狭くすることにより、幅方向に35%の収縮処理を施して延伸フィルムを得た。即ち、収縮率を35%としたほかは上記技術の実施例1に準じて延伸フィルムを得た。この延伸フィルム特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が119〜122nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は26〜29度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は1.4〜1.5であった。
【0226】
〔上記技術の実施例3〕
配向軸が幅方向に対して6度傾斜したポリカーボネートフィルムを160℃に加熱して、両端把持具間の幅方向距離を片側だけ狭くすることにより、幅方向に40%の収縮処理を施して延伸フィルムを得た。即ち、両端把持具間の幅方向距離を片側だけ狭くしたほかは上記技術の実施例1に準じて延伸フィルムを得た。この延伸フィルム特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が67〜74nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は42〜47度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は0.9〜1.1であった。
【0227】
〔上記技術の実施例に対する比較例1〕
収縮率を0%としたほかは上記技術の実施例1に準じて延伸フィルムを得た。この延伸フィルム特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が540〜550nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は6度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は1.5であった。
【0228】
〔上記技術の実施例に対する比較例2〕
配向軸が幅方向に対して傾斜をもたない、すなわち配向軸が0度のポリカーボネートフィルムを使用した以外は上記技術の実施例1に準じて延伸フィルムを得た。この延伸フィルム特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が88〜92nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は0〜1度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は1.1であった。
【0229】
〔上記技術の実施例に対する比較例3〕
図23に示される延伸機240により、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が570nmで配向軸が幅方向に対して6度傾斜した厚さ40μmで幅1000mmのポリカーボネートフィルムを得た。そして、そのポリカーボネートフィルムを150℃に加熱してロール周速差による縦延伸機241に導入し、長手方向に5%の延伸処理を施して延伸フィルムを得た。この延伸フィルムの特性を測定した結果、波長590nmで測定したRe(レターデーション)が57〜71nm、幅方向に対する配向軸の傾斜角度は44〜46度、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzとしたときの(nx−nz)/(nx−ny)は7.0〜7.3であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で各端部をそれぞれ独立した一定の軌跡に沿って移動させ、長尺状フィルムを所望の方向に延伸する延伸フィルムの製造方法で製造された延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムの製造方法は、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、前記第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを少なくとも一度ずつ実施するものであり、
長尺状フィルムの幅方向の片側端部は、寸前の進行方向とは異なる方向へ進行する屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動するものであり、
前記片側端部と対になる他方側端部は、前記屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動するものであり、
前記第1の工程及び前記第2の工程では幅方向のいずれか一方又は両方の端部で屈曲進行が行なわれるものであって、
前記第1の工程又は第2の工程の少なくとも一方は、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部がいずれも進行方向に向かって右側又は左側の同一の側に屈曲進行される進行形態を含み、
最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの進行方向と、最後に行われた第2の工程の後での長尺状フィルムの進行方向が略同じであり、
前記延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
を満たすことを特徴とする延伸フィルム。
【請求項2】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線は、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線に対して、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲するものであり、
前記第1の工程及び第2の工程を終了した延伸フィルムの幅は、最初に行われた第1の工程以前の長尺状フィルムの幅より広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で各端部をそれぞれ独立した一定の軌跡に沿って移動させ、長尺状フィルムを所望の方向に延伸する延伸フィルムの製造方法で製造された延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムの製造方法は、幅方向の保持間隔を広げて長尺状フィルムを延伸する第1の工程と、前記第1の工程で延伸した長尺状フィルムを幅方向の保持間隔を狭めて収縮する第2の工程とを少なくとも一度ずつ実施するものであり、
長尺状フィルムの幅方向の片側端部は、寸前の進行方向とは異なる方向へ進行する屈曲進行を少なくとも3回以上行って移動するものであり、
前記片側端部と対になる他方側端部は、前記屈曲進行を少なくとも2回以上行って移動するものであり、
前記第1の工程及び前記第2の工程では幅方向のいずれか一方又は両方の端部で屈曲進行が行なわれるものであって、
前記第1の工程又は第2の工程の少なくとも一方は、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部がいずれも進行方向に向かって右側又は左側の同一の側に屈曲進行される進行形態を含み、
前記最初に行われた第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心線は、寸前の長尺状フィルムの幅方向の中心線に対して、寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲するものであり、
すべての第1の工程及び第2の工程を終了した延伸フィルムの幅は、最初に行われた第1の工程以前の状態の長尺状フィルムの幅より広くなっており、
すべての第1の工程の内で最初の第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と、すべての第1の工程又は第2の工程を終了した直後の長尺状フィルムの進行方向とが略同じとなっており、
前記延伸フィルムは、延伸フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが下記式(1):
0.5≦(nx−nz)/(nx−ny)≦2.5・・・(1)
を満たすことを特徴とする延伸フィルム。
【請求項4】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線は、最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線、又は当該中心線に平行な線の少なくともいずれかに対して屈曲するものであり、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線が最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内のいずれか一方側へと屈曲し、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線が、最初に行われた第1の工程の寸前の長尺状フィルムの幅方向両端側の内の他方側へと屈曲することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項5】
前記延伸フィルムの製造方法は、長尺状フィルムの幅方向の両端において、前記屈曲進行をそれぞれ3回行うものであって、片側端部の3つの屈曲進行の開始位置が他方側端部の3つの屈曲進行の開始位置とそれぞれ長尺状フィルムの長手方向における同位置又は近傍に位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項6】
前記延伸フィルムの製造方法は、長尺状フィルムを進行方向に縦延伸する第3の工程を前記第2の工程後に行うものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項7】
前記延伸フィルムの製造方法は、幅方向の拡縮調整が可能なテンター式延伸機により長尺状フィルムの両端を把持し、前記第1の工程及び前記第2の工程を行うものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項8】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であるものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項9】
原幅Waの長尺状フィルムを請求項1乃至8のいずれかで定義された延伸フィルムの製造方法によって延伸した延伸フィルムであり、最終幅がWbであり、
最初に行われた第1の工程の直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角と、最初に行われた第1の工程の直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角との合計が、下記の基準延伸工程によって同一の延伸率及び収縮率の延伸フィルムを製造する場合に比べて1度以上大きいことを特徴とする延伸フィルム。
基準延伸工程:
(1)原幅Waの長尺状フィルムの幅方向の両端を保持した状態で両端を平行に進行させる、
(2)(1)に続いて、第1の工程として、一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部を傾斜方向であって前記一方の端部から離れる方向に進行させる、
(3)(2)に続いて、第2の工程として、前記一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部の進行方向を変更して前記一方の端部に近づく方向に進行させる、
(4)(3)に続いて、前記一方の端部を引き続き直線進行させ、他方の端部と前記一方の端部との間が最終幅Wbとなったところで進行方向を変更し、前記一方の端部と平行に進行させる。
【請求項10】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と、前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行な直線と前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角よりも大きいものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項11】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、
前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、
前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して前記第1の工程とは逆側に屈曲進行される状態を含むものであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項12】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、
前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、
前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の一方の端部は基準方向に対して平行に進行し、且つ前記第2の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部に向かって屈曲進行する状態を含み、
前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、167度以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項13】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、
前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、
前記第2の工程では、長尺状フィルムの両方の端部が基準方向に対して互いに異なる側に傾斜し且つ互いに近接する側に進行される状態を含み、
前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項14】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、
前記第1の工程では、長尺状フィルムの幅方向の一方の端部は基準方向と平行に進行し、且つ前記第1の工程における長尺状フィルムの幅方向の他方の端部は前記一方の端部から離れる方向に向かって屈曲進行する状態を含み、
前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に屈曲進行される状態を含み、
前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、167度以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項15】
前記延伸フィルムの製造方法は、最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向を基準方向とし、
前記第1の工程では、長尺状フィルムの両方の端部が基準方向に対して互いに異なる側に傾斜し且つ互いに離れる側に屈曲進行される状態を含み、
前記第2の工程では、長尺状フィルムの幅方向の両方の端部が基準方向に対して同一の側に進行される状態を含み、
前記第1の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線と、前記第2の工程での長尺状フィルムの幅方向の中心を結んだ中心線とのなす角が、170度以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項16】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程の直後に前記第2の工程が実行されるものであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項17】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程の後、長尺状フィルムの双方の端部が最初に行われた第1の工程を実施する直前の長尺状フィルムの進行方向と平行に進行する平行進行工程があり、その後に前記第2の工程が実行されるものであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項18】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程における幅方向の双方の端部の屈曲進行の開始位置が、長尺状フィルムの進行方向に対して同一の位置であるものであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項19】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程における幅方向の一方の端部の屈曲進行の開始位置と、他方の端部の屈曲進行の開始位置は、長尺状フィルムの進行方向に対して異なる位置であるものであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項20】
前記延伸フィルムの製造方法は、前記第1の工程から第2の工程に切り替わる際における幅方向の双方の端部の屈曲進行の開始位置は、長尺状フィルムの進行方向に対して同一の位置であるものであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の延伸フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−158182(P2012−158182A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84881(P2012−84881)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【分割の表示】特願2012−516422(P2012−516422)の分割
【原出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】