説明

延伸ポリオレフィン材料およびそれから製造された製品

【課題】本発明は、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率、および少なくとも400MPaの強度を有し、ポリオレフィンと核剤などのナノ材料とを含む延伸ポリオレフィン材料を提供する。
【解決手段】本発明の材料は、少なくとも16の延伸比で延伸される延伸ステップを含む方法によって得ることができる材料であり、ナノ材料が、好ましくは分子規模で前記ポリオレフィン材料中に分散されるポリオレフィン材料と核形成剤などのナノ材料との複合物を製造するステップと、この複合物を押出成形するステップと、引き続き、前記材料が少なくとも16の全延伸比まで延伸される延伸ステップとからなる方法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された機械的性質、特に、改善された強度および剛性(E弾性率)を有する延伸ポリオレフィン材料に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、これらの延伸ポリオレフィン材料から製造された製品(布、板材、および三次元構造物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第03/08190号公報により、非常に高い強度および剛性の同時押出ポリオレフィン材料(テープ、フィルム、または糸)は、これらの材料を高い延伸比
(すなわち12を超える)で延伸することによって製造することができることが知られている。これらの材料のE弾性率は、少なくとも10GPaの高さにすることができ、一方、引張強度は、容易に、少なくとも250MPaにすることができる。国際公開第03/08190号公報による好ましい延伸方法では、好ましくは異なる温度での多段階延伸が行われる。
【0003】
米国特許出願公開第2007/0007688号公報には、ゲル紡糸によって得られるポリマーが開示されている。米国公開第5
118 566号公報には、スチレンポリマーなどの樹脂を加えることによって機械的性質が改善される二軸配向ポリオレフィン材料が開示されている。この文献では、高延伸比は、開示も示唆もされていない。
【0004】
国際公開第2004/101660号公報には、ミクロ多孔質である二軸配向ポリオレフィンフィルムが開示されている。米国特許出願公開第2007/0007688号公報、米国公開第5
118 666号公報、および国際公開第2004/101660号公報には、ポリオレフィン系材料を一軸延伸して高い剛性値を得ることは記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/08190号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0007688号公報
【特許文献3】米国公開第5 118 566号公報
【特許文献4】国際公開第2004/101660号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0007688号公報
【特許文献6】米国公開第5 118 666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、国際公開第03/08190号公報により得られる材料と比較して、類似または同等の改善された機械的性質を有し、同時押出材料には限定されない延伸ポリオレフィン材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある種の添加物、特に核形成剤などのナノ材料を、ポリオレフィンと併用することによって、はるかに高い延伸比で延伸されたポリオレフィンの延伸製品が得られ、それによって、非常に好都合な最終的な機械的性質、特に優れた剛性および/または強度を有するポリオレフィン材料を提供できることが分かった。
【0008】
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率、および少なくとも400MPaの強度を有し、ポリオレフィンと1種類以上のナノ材料を含み、このポリオレフィン材料は、材料が少なくとも16の延伸比で延伸される延伸ステップからなる方法によって得ることができる延伸ポリオレフィン材料に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
好ましくは、本発明の延伸ポリオレフィン材料は、少なくとも24GPa、より好ましくは少なくとも26GPa、さらにより好ましくは少なくとも29GPaのE弾性率を有するものである。
【0010】
好ましくは、本発明の延伸ポリオレフィン材料は、少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも750MPa、さらにより好ましくは少なくとも860MPaの強度を有するものである。
【0011】
本発明の製品は、ナノ材料が、好ましくは分子規模でポリオレフィン材料中に分散される、ポリオレフィン材料とナノ材料との複合物を提供するステップと、この複合物を押出成形するステップと、引き続き、材料を少なくとも16の全延伸比で延伸する延伸ステップからなる方法によって好適に製造される。
【0012】
核形成剤などのナノ材料の分散は、押出成形ステップの前に、ナノ材料をポリオレフィン系材料の最初の部分と混合してマスターバッチ(たとえば、50重量%までの核形成剤などのナノの材料の含有率を有する)を製造し、続いて、このマスターバッチを、ポリオレフィン系材料の残りの部分と混合する別のステップによって行うことができる。これによって、ポリオレフィン系材料全体へのナノ材料の良好な分散が促進される。
【0013】
本発明の場合、材料は、全延伸比(TSR)の最小レベルに適合するように定義される。TSRは、等方性溶融物から最終テープまたはフィルムへの(一軸)延伸の程度として定義される。これは、一般に、延伸ローラーの間の速度差によって規定される。TSRの実際の値は、最終フィルム、テープ、または糸(の延伸方向における)複屈折および/またはE弾性率から決定することができる。
【0014】
前述の方法によって得ることができる本発明のポリオレフィン系材料は、同時押出ポリオレフィン材料、ならびに1つの組成の材料、たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレンの単一材料であってよい。同時押出繊維または単一材料繊維のいずれかを主成分とするマルチフィラメント繊維も本発明に含まれる。国際公開第03/08190号公報の同時押出材料が本発明により使用される場合、剛性および/または機械的強度の値がさらに改善された製品を得ることができる。
【0015】
本発明のポリオレフィン系材料は、それ自体が新規であり、特に、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaの高い剛性(E弾性率)を考慮すれば、従来技術の材料とは異なるものと考えられる。この剛性は、好適にはISO 527によって決定される。
【0016】
本発明の材料の強度も、従来技術の材料と比較して、高いものである。典型的には、400MPaを超える、さらには500MPaを超える引張強度を得ることができる。引張強度は、好適にはISO 527によって決定される。
【0017】
本発明において使用されるナノ材料は、核形成剤として、好ましくは無機核形成材料として機能することができる。好ましい無機核形成剤は、天然または合成のナノクレイ、有機基で修飾されたナノクレイなどの板形状(層状)の無機材料;金属ウィスカー、炭素ウィスカー、またはナノチューブなどの繊維状または針状の材料;球状材料;ゼオライト;アルミナ;シリカ;およびアルミノケイ酸塩またはケイ酸マグネシウム材料から選択される1つ以上の成分から選択される。
【0018】
これらの材料は、好ましくは、ナノ材料(たとえば、ナノクレイ)とも、通常、呼ばれる非常に微粉化された形態で使用される。これらの材料を構成する粒子は、たとえば、少なくとも1つの寸法がナノ分子規模、たとえば、1〜100nmであることができ、一方、他の寸法は、数十または数百nm、たとえば10〜1000nmであることができる。
【0019】
好適なクレイは、たとえば、市販品として入手できるNanocor(登録商標)などのスメクタイト型、特に、モンモリロナイト型のクレイであるが、針状材料も挙げられる。好適なゼオライトは、たとえば、ZSM−5、ゼオライトベータ、モルデナイト、フェリエライト、および/またはゼオライトYである。
【0020】
ナノ材料は、必ずしも、核形成剤、すなわちポリマー材料の核形成特性に寄与する化合物として機能する必要はない。何らかの別の方法で、ポリオレフィンの延伸特性に寄与し、その結果として材料の改善された機械的性質、特に、強度および剛性に寄与することも可能である。たとえば、理論によって縛られることを望むものではないが、たとえば、材料中に結果として生じる結晶部分と非晶質相との間の界面の構造を変化させることによって、ナノ材料は、延伸プロセスを促進することができると考えられる。
【0021】
有機核形成剤を使用することもできる。一般に、有機核形成剤は、無機核形成剤と比較すると、改善された機械的性質を得るために、より高い延伸比が必要とされる。好適な有機核形成剤は、1,3:2,4−ジ(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)などのソルビトール誘導体であり、商品名Millad(登録商標)、たとえば、Millad(登録商標)3988で、市販品として入手可能である。他の好適な核形成剤は、商品名Hyperform(登録商標)で入手可能な核剤である。
【0022】
好ましくは、ナノ材料の量は、最終(延伸)材料の重量を規準にして10%以下、より好ましくは5%以下、さらにより好ましくは3重量%以下、さらにより好ましくは2重量%以下、最も好ましくは約1重量%である。添加物の最小量は変動してもよく、典型的には約0.01重量%、好ましくは約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%である。
【0023】
ナノ材料(特に、ナノクレイ)のポリマー材料中への分散の程度は、インターカレーション構造から完全に剥離した構造(すなわち、ナノ材料を構成する粒子がポリマー材料によって互いに完全に分離し、ナノ材料の凝集が防止される最高程度の分散)までの範囲であってよい。
【0024】
最も好ましくは、ナノ材料は、ほぼ完全ないし完全に剥離している。ナノ材料は、別々にまたはポリマーとともに、液体、粉末、またはペレットの形態で提供することができる。単独、または残りのポリマー材料と共に、(濃縮された)マスターバッチとしても提供することもできる。これは、押出機に供給する前に、ポリマー材料と予備混合および/または配合することもできる。
【0025】
これらの低使用量のナノ材料添加物によって、ポリオレフィン材料の延伸性に対して、このような顕著な影響が生じ、その結果、延伸後のそれらの機械的性質にも影響を与えることは、非常に意外なことである(材料は、さらに延伸することができるので、それらの機械的性質は、従来技術の材料よりも改善され得る)。
【0026】
理論によって縛られることを望むものではないが、十分に分散したナノ粒子は、核剤または核形成剤として、さらには、「超核形成剤」として機能することができ、そのため、ポリマーの結晶化プロセスを制御できると考えられる。
【0027】
ナノ粒子は、延伸プロセスを促進する。この結果、高い延伸比が実現され、この値は、理論的に最大値に近づき得る。米国公開第7
074 483号公報は、核形成剤、特に、ある種のソルビトール誘導体を押出混合物に添加することによって、溶融物の結晶化速度に対して好ましい効果を与えることができると教示している。
【0028】
ナノ材料は、別の方法で、ポリオレフィンの延伸を促進することもできる。本発明の一態様は、非常に高い延伸比までの延伸比で、ポリマー材料の剛性が直線的に増加することである。本発明によると、21.3以上の、好ましくは22以上の、より好ましくは25以上の、全延伸比を実現することができる。
【0029】
たとえば、22GPaの高さの剛性および800MPaの強度を有するポリプロピレン材料は、延伸比26まで延伸することによって製造することができる。典型的な従来の製造方法においては、ポリプロピレンは、通常、20またはそれ以下の延伸時で破断する傾向にあるため、このことは、注目に値する。
【0030】
本明細書で前述したように、有機核形成剤が使用される場合、延伸比は、好ましくは22以上である。無機核形成剤の場合、より低い延伸比、たとえば、16以下で十分となり得る。
【0031】
本発明において使用されるポリオレフィン系材料は、好ましくはポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)、あるいはそれらのブレンドからなる。より好ましくは、ポリマー材料は、ポリプロピレンからなる。ポリオレフィンのフィルム、テープ、および糸から製造された製品の再利用に関して、材料のすべての成分がポリプロピレンまたはポリエチレンなどの同じ材料に分類できる場合に好都合である。
【0032】
本明細書において、用語「ポリプロピレン」は、通常の意味で使用され、プロピレンモノマー単位と他のモノマー単位(特に、エチレンモノマー単位)とのコポリマーも含んでいるが、モノマー単位の総数の大部分がプロピレンである。同様に、用語「ポリエチレン」は、エチレンと他のモノマー(特に、プロピレンモノマー)とのコポリマーを含むが、このコポリマー中のモノマーの総数の大部分がエチレンである。
【0033】
再利用可能な材料を製造することは非常に有利である。このためには、結果として再利用される材料が、種々の成分(汚染物質なし)の混合物ではなく、1種類の材料と見なされることが必要である。このことは、本発明によっても可能となる。
【0034】
延伸は、1ステップで行うことができるが、複数の延伸ステップを使用することもできる。複数の延伸ステップ、特に、第1の延伸を第2の延伸よりも低温で行う2段階延伸を使用することによって、さらに高い延伸比を実現することができ、それによって、さらに高い値の剛性および/または強度を有する製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態において、同時押出材料の1つ以上の層、特に、国際公開第03/08190号公報に調製法が詳述されているPURE(登録商標)に類似の材料を製造するために、核形成添加物などのナノ材料が加えられる。この目的のために、クレイまたは他のナノ材料が、同時押出材料を構成する1つ以上の層が製造されるポリオレフィンブレンドに加えられる。
【0036】
これらの同時押出テープに基づく本発明による材料の延伸比は、さらに低くすることができ、たとえば、15以下とすることができる。すでに、これらの低延伸比において、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率、および少なくとも400MPaの強度を有する(同時押出)材料を得ることができる。他方、こうして製造した同時押出テープは、国際公開第03/08190号公報に記載されるよりも、さらに高い延伸比に供することができる。
【0037】
その結果、非常に高い剛性を有する材料を得ることができる。たとえば、特定の一実施形態においては、本発明は、15以上の延伸比を有し、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率を有し、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選択されるポリオレフィンの中心層(B)と、中心層Bの材料と同じ種類のポリオレフィンの1つまたは2つの別の層(A)とから実質的になり、前記別の層(A)の材料のDSC融点が、前記中心層(B)の材料のDSC融点よりも低く、中心層(B)が、材料の50〜99重量%であり、別の層(A)が、1〜50重量%の間である、AB型またはABA型の一軸延伸ポリオレフィン多層フィルム、テープ、または糸に係るものである。
【0038】
核形成添加物などのナノ材料が、この実施形態の層(A)または(B)のいずれか1つの中に存在することができる。好ましくは(B)層中または両方の層中に存在する。本発明の延伸ポリオレフィン材料は、染料および顔料、難燃剤、UV安定剤、酸化防止剤、カーボンブラック、老化防止添加剤、加工用添加剤、およびそれらの組み合わせから選択される添加剤を含有することができる。本発明の材料が異なる層を含む場合、これらの従来の添加物は、これらの異なる層の1つ以上の中、好ましくはすべての層中に存在することができる。
【0039】
本発明の材料は、テープ、フィルム、糸、および/またはマルチフィラメントの形態であってよい。実際には、本発明のテープ、フィルム、または糸の厚さは、最大300μm、好ましくは10〜300μmの間となる。これは、元のフィルムの厚さ、および延伸比、特に、延伸ローラーの速度比によって決定される。テープの幅は、25μmから最大50cm以上などの広範囲にわたって変動させることができる。フィルムの幅も、たとえば、1cmから最大150cm以上の広範囲にわたって変動させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、一軸延伸テープ層は、1つの方向に十分に延伸したテープを配向することによって製造され、その後で、熱および圧力を加えることによって、材料を緻密化することができる。さらに、圧密化の前に、1つ(または2つ以上)の第2の一方向層を第1の一方向層に、第1の層とは異なる方向のテープの方向に加えることで、多方向積層体を形成して、いわゆる重層構造を形成することができる。非同時押出材料(単一材料)の場合には、熱および圧力を加えた後で材料を互いに溶着させるために、通常は、一方向テープ層の間にポリマーフィルムまたはテープをさらに適用する必要がある。
【0041】
本発明のさらなる一実施形態において、本発明の材料、すなわち、たとえばテープ、フィルム、糸、および/またはマルチフィラメントの形態は、テープから布地を編むことなどによるそれ自体公知の方法を使用して、シートにさらに加工することができ、この後で、たとえば、国際公開第03/008190号公報に記載されるような、さらなるステップを行うことができる。
【0042】
この目的のために、複数の材料を組み合わせて、織布または不織布を形成し、続いて、これを熱処理およびプレス加工することができる。これは、前述の同時押出材料を使用して、または単一材料を使用することによって行うことができる。非同時押出材料(単一材料)の場合には、熱および圧力を加えた後で、材料を互いに溶着させるために、通常は、本発明の材料(たとえば、テープ)の間にポリマーフィルムまたはテープをさらに適用する必要がある。これらのさらなるフィルムまたはテープは、通常は、非常に薄く、たとえば、10μm〜1000μmの厚さを有する。
【0043】
複数の同時押出材料または非同時押出材料は、織布または不織布の形態で組み合わせることができる。これらの布(織布または不織布)は、熱処理の前に、布地の外観を有し、これらは、可撓性であり、ひだを付けることができ、金型内に容易に配置することができる。このような布は、その剛性および強度がはるかに高いという点で、従来技術の材料とは異なる。典型的には、本発明の織布の場合、厚さが130nmであり、面密度が0.10kg/mである均一の織物で、テープの破断時に布幅1cm当たり少なくとも250Nの荷重が測定される(DIN 53857に準拠)。
【0044】
個々の材料、たとえば、テープ、フィルム、糸、および/またはマルチフィラメントの形態から布地を織ること以外に、個々の材料を手による応用に適用することもできる。たとえば、複数のテープを平行に配置した後、金型に圧力および熱を加える。
【0045】
熱処理によって、個々の繊維は、互いに溶着する。この方法では、布地の構造的完全性が保証され、冷却すると、堅いシートが形成される。金型中でプレス加工ステップを行って、三次元形状の製品を得ることができるが、この方法で、平坦な板を製造することもできる。
【0046】
典型的には、熱処理は、外層(A)の材料の軟化点と中央層(B)の材料の軟化点との間の温度で行われる。熱処理された材料の性質として、改善された耐摩耗性、および個々の繊維の剥離に対する抵抗性が挙げられる。
【0047】
この実施形態の成形製品(三次元物体または板)を構成する本発明の材料の改善された機械的性質は、これらの製品自体の優れた機械的性質に反映される。本発明の材料(たとえば、テープ、フィルム、糸、および/またはマルチフィラメントの形態)の剛性値(E弾性率)は、それらから製造された製品(板および三次元構造)のE弾性率とは、典型的には、異なることに留意されたい。同じことが、引張強度値についても言える。この差は、構造の違いによるものである。
【0048】
テープ(あるいはフィルム、糸、またはマルチフィラメント)の剛性および引張強度は、典型的には、前述したようにISO 527に準拠して測定される。この方法では、テープの長さ方向でテープの両端をクランプで留める。留められた両端を互いに反対方向に移動させ(すなわち両端を移動させる、または一端のみを移動させ;一般には、一端が移動しないような設定が使用される)、応力−ひずみ曲線を記録する。原点におけるこの応力−ひずみ曲線に対する接線の傾きから、E弾性率が決定される。
【0049】
これらの材料(すなわち、板および三次元構造)から製造された製品の剛性および引張強度が決定される場合に、典型的にはISO 527−4などの別の試験方法が使用される。この試験方法では、典型的には、数平方センチメートルの寸法の製品の試験片をクランプで留め、応力−ひずみ測定を行う。
【0050】
こうして記録された値は、通常、その製品を構成するテープの値よりも低く、テープの実質的なパーセント値(均一の織物を主成分とするシートの場合、典型的には、約50%)が、応力が適用される方向に対して垂直の方向にあるためである。したがって、一般に、剛性および引張強度の測定値は、これに対応して低くなる。それにもかかわらず、これらの製品での測定値、特に、剛性値は、従来技術の材料で記録される値よりも依然としてはるかに大きい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、ISO 527−4による測定で、少なくとも5.5GPa、好ましくは少なくとも7GPa、より好ましくは少なくとも8GPaのE弾性率を有する製品(板および三次元構造)を製造することが可能である。これらの製品の引張強度は、200MPa以上、好ましくは少なくとも250MPaまでの高さとなり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率、および少なくとも400MPaの強度を有する延伸ポリオレフィン材料であって、ポリオレフィンおよびナノ添加物材料から構成され、該材料が、少なくとも16の延伸比で延伸される延伸工程を含む方法によって得ることができる延伸ポリオレフィン材料。
【請求項2】
前記ナノ材料が、無機核形成剤および有機核形成剤から選択される核形成剤である、請求項1に記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項3】
前記核形成剤が、板形状(層状)の無機材料(特に、天然ナノクレイ、合成ナノクレイ、または有機基で修飾されたナノクレイ);繊維状または針状の材料(特に、金属ウィスカー、ナノクレイ、炭素ウィスカー、またはナノチューブ);球状材料;ゼオライト;アルミナ;シリカ;アルミノケイ酸塩材料;ならびにそれらの組み合わせから選択される無機核形成剤からなる、請求項2に記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項4】
前記核形成剤が、ソルビトール誘導体から選択される有機核形成剤からなり、該材料が、好ましくは22を超える延伸比において得られる、請求項2に記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項5】
前記ナノ材料は、少なくとも1つの寸法が1−100nmである粒子からなる、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項6】
前記添加物が、最終の延伸材料の重量を規準にして0.01から10重量%の量で使用される、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項7】
前記延伸比が、20を超える、好ましくは25を超える、より好ましくは26を超える、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項8】
2種類の異なる材料が、同時押出ポリオレフィン材料、特に2種類の異なるポリプロピレン材料であり、前記ナノ材料が、前記異なる材料の少なくとも1つの中に存在する、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項9】
15を超える延伸比を有し、少なくとも17GPa、好ましくは少なくとも20GPaのE弾性率を有し、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの組み合わせから選択されるポリオレフィンの中心層(B)と、前記中心層Bの材料と同じ種類のポリオレフィンの1つまたは2つの別の層(A)とから実質的になり、前記別の層(A)の材料のDSC融点が、前記中心層(B)の材料のDSC融点よりも低く、前記中心層(B)が、前記材料の50および99重量%の間であり、前記別の層(A)が、1および50重量%の間である、AB型またはABA型の一軸延伸ポリオレフィン多層フィルム、テープ、または糸である、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項10】
前記ナノ材料が、前記中央層に存在する、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項11】
テープ、フィルム、または糸の形態である、前記請求項のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料。
【請求項12】
請求項1−10のいずれかに記載のテープまたはフィルムからなる一方向性板材ないし重層板材。
【請求項13】
ナノ材料が、好ましくは分子規模で前記ポリオレフィン材料中に分散される、ポリオレフィン材料と該ナノ材料との複合物を準備するステップと、この複合物を押出成形するステップと、引き続き、前記材料が少なくとも16の全延伸比まで延伸される延伸ステップとからなる、延伸材料の製造方法。
【請求項14】
押出成形ステップの前に、前記ナノ材料を最初に前記ポリオレフィン系材料の最初の部分と混合することでマスターバッチを製造し、続いて、このマスターバッチを前記ポリオレフィン系材料の残りの部分と混合するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記延伸が、好ましくは異なる温度で行われる1つ以上の延伸ステップを含む、請求項13−14に記載の方法。
【請求項16】
前記延伸材料の少なくとも1つが、別のポリオレフィン系材料と同時押出され、その別のポリオレフィン系材料が、請求項13−15のいずれかに記載の方法により製造される、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
板材または三次元構造の製品であって、延伸ポリオレフィン材料からなり、ISO 527−4により測定して、少なくとも5.5GPa、好ましくは少なくとも7GPa、より好ましくは少なくとも8GPaのE弾性率;およびISO 527−4により測定して、少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも250MPaの引張強度を有する、板材または三次元構造物の製品。
【請求項18】
前記延伸ポリオレフィン材料が、請求項1−10のいずれかに記載の延伸ポリオレフィン材料、または請求項13−16のいずれかに記載の方法によって得ることができる延伸ポリオレフィン材料である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
織布または不織布、板材、あるいは三次元構造物である、請求項17または18に記載の製品。
【請求項20】
厚さが130nmで、面密度が0.10kg/mである織物材料であって、破断時荷重が布幅cm当たり250Nである、請求項1−11のいずれかに記載の材料からなる織布または不織布。

【公表番号】特表2010−517812(P2010−517812A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548183(P2009−548183)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050065
【国際公開番号】WO2008/097086
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509220471)ランクホルスト ピューレ コンポジッツ ビー.ブイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】LANKHORST PURE COMPOSITES B.V.
【住所又は居所原語表記】Prinsengracht2 NL−8607 AD Sneek The Netherlands
【Fターム(参考)】