説明

延伸ポリマー補強要素を含む曲面製品の製造方法およびそれによって得られる製品

本発明は、曲面製品の製造方法であって、複数の延伸ポリマー補強要素をマンドレル上に配置することと、その要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着することと、製品をマンドレルから取り外すこととを含む方法に関する。本発明はまた、曲面物品(好ましくは防護物品)を曲面製品から製造するための方法であって、曲面製品を金型内に入れることと、前記製品を高温高圧で圧縮することとを含む方法に関する。曲面防護物品は良好な耐衝撃特性を有し、実質的にしわがない。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、延伸ポリマー補強要素を含む曲面製品の製造方法に関する。本発明はまた、曲面防護物品(curved armour article)の製造方法に関する。本発明はさらに、その方法によって得られるヘルメット(好ましくは戦闘用ヘルメット)およびレードームに関する。
【0002】
曲面物品、特に曲面防護物品は、一般にはポリマーマトリックスに埋め込まれた高強度の繊維からなる複合材から作られる。そのような防護物品は、高速発射体の衝撃の防護が優れていると共に質量が小さい。必要とされる高品質の防護物品に確実になるようにするために、繊維−ポリマーの防護プリプレグが、特に耐衝撃性能のために開発されてきた。特に好適な防護プリプレグの一例として、DSMのDyneema(登録商標)HB25がある。防護物品を作り上げるには、そうしたプリプレグを積み重ね、高温高圧で圧縮する。
【0003】
ポリマー繊維のスタック層(stacked plies)の比較的平らなパッケージから、高温でスタックを立体形状に変形させることにより曲面物品を製造することが、国際公開第2005/065910号パンフレットで提案された。国際公開第2005/065910号パンフレットでは、平らなスタックを変形させて立体的な造形品にする際に、繊維を延伸するのに十分高い温度で繊維に引張り応力をかけることによって、層のしわの問題を解決することが提案されている。
【0004】
周知の方法によって好適な曲面物品が得られるが、その性能、特にその耐衝撃性能ついてはさらに改良することができる。
【0005】
本発明の目的は、実質的にしわのない曲面製品の製造方法を提供することである。別の目的は、少なくとも国際公開第2005/065910号パンフレットに記載されている曲面物品と似たような耐衝撃特性を有する曲面防護物品を製造するための方法を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明に従って請求項1に記載の方法によって達成される。本発明によれば、曲面製品の製造方法であって、複数の延伸ポリマー補強要素をマンドレル上に配置することと、その要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着することと、製品をマンドレルから取り外すこととを含む方法が提供される。本発明の方法により、補強要素が局部的に接着されているため実質的に形状が安定している曲面製品が提供される。但し、これは補強要素の大部分をポリマーマトリックスに埋め込まなくてもよい。補強要素の大部分とは、補強要素の総量の少なくとも80%、好ましくは補強要素の総量の少なくとも90%、より好ましくは補強要素の総量の少なくとも95%を意味する。曲面製品は、曲面防護物品を製造するための中間製品(プリフォームとも呼ばれる)として有利に使用できる。本発明によれば、曲面防護物品を製造するためのそのような方法は、曲面プリフォームを金型内に入れること、および前記プリフォームを高温高圧で圧縮することを含む。この方法では、曲面プリフォームは、圧縮される前に、最終物品に求められる曲面形状を実質的に有する。これによりしわの発生がほとんど防止され、このことは曲面物品の(耐衝撃)特性にとって有利である。
【0007】
本発明の方法により、1つまたは複数の方向に湾曲した、はっきり認められるようなしわのない製品および物品を、補強要素から直接製造することができる。曲面製品とは、本出願との関連においては、平面に配置されたときに、前記面に対する最大の高さと平面上の製品の突き出た表面内の最大の長さ寸法との比が、少なくとも0.20である製品を意味する。高曲面製品とは、本出願との関連においては、平面に配置されたときに、前記面に対する最大の高さと平面上の製品の突き出た表面内の最大の長さ寸法との比が、少なくとも1.00である製品を意味する。最終製品に求められる形状のマンドレル上に複数の延伸ポリマー補強要素を配置することにより、補強要素がプリフォームに作り上げられ、そのプリフォームは、その圧縮時に大幅に変形させる必要がない。内部変形性の低いプリフォームを作り上げることさえ可能になる。圧縮する前に、求められている形状に補強要素を配置することにより、プリフォームの変形性はもはや制限因子とはならず、事実上どんな形状にでもすることができる。
【0008】
本発明によれば、複数の延伸ポリマー補強要素がマンドレル上に配置される。好適な方法は、補強要素を、好ましくは回転するマンドレル上に巻き付けることを含む。立体曲面物品および(ヘルメットのような)立体高曲面物品は、これにより補強要素の直接配置によって、特にフィラメント巻き付けによって得ることができる。フィラメント巻き付け自体は、本質的に周知である。例えば、英国特許出願公開第2158471号明細書は、従来の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂をパターンに従って、巻き付け技法を用いてマンドレル上に配置する防護物品の製造方法を記載している。英国特許出願公開第2158471号明細書に開示されている方法とは対照的に、本発明による方法では、ポリマーマトリックスが存在しなくてもよい。曲面物品(防護物品など)、特にヘルメットが、実質的にポリマーマトリックスなしで、補強要素をマンドレル上に配置することによって得られることは決して報告されていない。意外にも、本発明によるフィラメント巻き曲面防護物品の品質は、物品が、当該技術分野において知られている、補強要素を埋め込むためにポリマーマトリックスを使用する最適化された防護プリプレグからではなく、実質的にポリマーマトリックスを含まない補強要素から作られるという事実にもかかわらず優れている。さらに、フィラメントが巻き付けられた物品は、一般に3つ以上の繊維方向を有するさまざまな場所を含む。これは、通常、その衝撃性能にとって不利な点である。プリフォームおよび物品が実質的にポリマーマトリックスを含まないという事実ゆえに、このことは本発明の曲面防護物品には当てはまらない。
【0009】
本発明による方法の更なる利点は、補強要素を、マンドレルの表面の端から端まで任意の所望の方向に向けることができ、それによってより均一な性質を持つしわのない物体を得ることができることである。
【0010】
本発明による方法は、1つまたは複数の方向に湾曲した物品の製造に特に有用である。その例として、レードーム、ヘルメット、肩の衝撃防護パネルまたは(例えば、兵士のための)他の防護手段および自動車または軍用ヘリコプター用の防護パネルがある。
【0011】
本発明は特にまた、本発明の方法で得られるレードームに関する。本発明はさらに、レーダーアンテナ(特に、航空機が搭載するタイプのもの)を取り囲んで保護するためのレードームであって、前記レードームが本発明の物品を含むものに関する。レードームは、本明細書では、電磁放射装置(例えば、航空機搭載用、地上配備用または艦船搭載用の、例えばレーダー装置)を保護するのに用いられる任意の構造物と理解される。レードームが航空機搭載用である場合、レードームは、航空機の機首(翼または胴体の一部)または航空機の尾部として形作り、配置することができる。本発明のレードームの利点は、剛性分布が改善されると共に、電界分布も改善されることである。
【0012】
本発明のレードームの更なる重要な利点は、前記レードームは、特に超高分子量ポリエチレンのゲル紡糸繊維がそれに使用されている場合、類似の構造を有する周知のレードームよりも重量が軽く、それと同時に構造機能および電磁機能(electromagnetic function)が改善されていることである。意外にも、本発明のレードームは、周知のレードームと比べて周波数帯域が狭くならないことが見出された。さらに本発明のレードームの更なる重要な利点は、例えば、軍用機の場合に、発射体に対する抵抗性が増大し、さらに鳥の衝突、雹などに対する抵抗性も増大することである。
【0013】
補強要素の相互の局部的接着は、幾つもの方法で行うことができる。局部的接着とは、補強要素の20%以下が、いずれかの方向に、すなわち、曲面プリフォームの表面の端から端までまたはその厚さ全体にわたって互いに接着されることを意味する。本発明による方法の好ましい実施態様は、延伸ポリマー補強要素をその溶融温度より上に局部的に上げてそれらを融合させることにより、補強要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着するステップを含む。補強要素をその溶融温度または軟化温度より上に上げてそれらを融合させることは、例えば、赤外線源、加熱切断要素などの局部加熱手段で遂行することができる。
【0014】
この方法の別の実施態様では、要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着するステップが、結合剤を延伸ポリマー補強要素に局部的に施し、結合剤を凝固させることを含む。結合剤は、接着性を有する任意の物質であってよく、吹付け、浸漬などによって施してよい。
【0015】
この方法のさらに別の実施態様では、この方法は、曲面製品に高分子フィルム層を設けることをさらに含み、その層は補強要素よりも低い融点を有する。そのような高分子フィルム層により、曲面プリフォームはさらに安定化される。高分子フィルム層はプリフォーム表面の一部、あるいは実質的にプリフォームの表面全体(その内面、外面および側面を含む)を覆うことができる。
【0016】
この方法のさらに別の好ましい実施態様では、この方法は、曲面プリフォームを高分子フィルムエンベロープ内に封じ込めることをさらに含み、そのエンベロープを真空にする。好ましくは、高分子フィルムエンベロープは、エンベロープ内が真空にされる前に、プリフォームの表面と実質的に完全に接触している。これにより、プリフォームは、真空圧がかけられたときに、変形またはさらには圧壊が防止される。この方法のそのような実施態様は、プリフォーム製品の輸送時における品質を保持し、さらにその合体性(coherence)を増大させる。さらに、曲面プリフォーム製品を、金型中において高温高圧で圧縮して曲面物品を製造するのに用いた場合、高分子フィルムエンベロープは取り除く必要がない。その代わり、それは少なくとも部分的に溶融して圧縮成形防護物品の一体部分になりうるか、または廃棄することができる。
【0017】
補強要素は、延伸高分子フィルムおよび/または延伸ポリマー繊維を含むことができる。そのような延伸高分子フィルムは、好ましくは細長く切ってテープにする。フィルムは、エンドレスベルトを組み合わせたものの間に高分子粉末を供給し、高分子粉末をその融点未満の温度で圧縮成形し、得られた圧縮成形ポリマーを圧延することでフィルムを形成することによって、調製することができる。フィルム形成の別の好ましい方法は、ポリマーを押出機に供給すること、フィルムの融点より上の温度でフィルムを押し出すこと、そして押出高分子フィルムを延伸することを含む。所望される場合には、ポリマーを押出機へ供給する前に、ポリマーを好適な液体有機化合物と混合して、例えばゲルを形成させることができる。好ましくは超高分子量ポリエチレンを使用する場合などがある。テープを作るためのフィルムの延伸(好ましくは一軸延伸)は、当該技術分野において知られている手段によって実施できる。そのような手段は、好適な延伸装置での押出延伸および引張延伸を含む。機械的強度およびスチフネスを増大させるために、延伸を複数のステップで実施できる。得られた延伸テープは、それ自体を曲面プリフォーム製品のフィラメント巻き付けに使用できるか、あるいは所望の幅に切断する、つまり延伸の方向に沿って裂くことができる。好適な一方向テープの幅は、普通はテープを作るもとになるフィルムの幅によって異なる。本発明による製品および方法では、テープの幅は、好ましくは少なくとも3mm、より好ましくは少なくとも5mmである。テープの幅は、巻き付け工程におけるしわをさらに防ぐために、好ましくは30mm未満、より好ましくは15mm未満、もっとも好ましくは10mm未満である。テープの面密度は、広い範囲にわたって、例えば5から200g/mまでの間でさまざまであってよい。好ましい面密度は、10から120g/mの間、より好ましくは15から80g/mの間、もっとも好ましくは20から60g/mの間である。
【0018】
本発明による方法によれば、さまざまな形態の繊維を使うことができる。「繊維」は、その長さが横断寸法よりはるかに大きい物体を含み、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、ストリップ、リボンまたはテープなどを含む。好適な繊維としては、マルチフィラメント糸があり、フィラメントの太さおよび数は重要ではない。好適な糸の繊度(titer)は、例えば100〜4000dtexである。糸を作るもとになるフィラメントの太さは、例えば、1dpfから20dpfまでさまざまであってよい。短フィラメントまたはステープルファイバーから紡糸される糸を使用することも可能である。しかし、好ましくはマルチフィラメント糸を使用する。
【0019】
繊維およびテープなどの好適なポリマー補強要素は、加えられた圧力の影響下において高分子が融点未満の温度で(すなわち固相状態で)ある程度の鎖滑りを示す高分子材料から作製する。その例として、さまざまなポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそのコポリマー(任意選択的に他のモノマーを有する)など)、ポリビニルアルコール、ならびにポリアミドおよびポリエステル、特に少なくとも1種の脂肪族モノマー単位を含んでいるポリアミドおよびポリエステルがある。好ましくは、ポリオレフィン、および特にポリエチレンを使用する。ポリエチレンの繊維またはテープは、好ましくは、線状ポリエチレン、すなわち100個の炭素原子につき少なくとも10個の炭素原子を含む側鎖が1本未満、より好ましくは300個の炭素原子につき側鎖が1本未満のポリエチレンから作られる。
【0020】
補強要素は、引張り強さが好ましくは少なくとも1.6GPa、より好ましくは少なくとも1.8GPa、もっとも好ましくは少なくとも2GPaであり、引張弾性率が少なくとも50GPaである。より好ましくは、引張り強さは少なくとも2.5、さらには3GPaであり、弾性率は少なくとも70、さらには90GPaである。補強要素の引張特性は、ASTM D885Mで規定された方法で測定する。そのように弾性率および引張り強さの大きな補強要素を使用すると、良好な曲げスチフネス(flexural stiffness)および衝撃特性を有し、かつ外部からの力に対する抵抗性の大きな物体(ヘルメットなど)を製造することができる。
【0021】
本発明による方法に使用するのに特に好ましい繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHPE)から調製された繊維を含む。UHPEは、好ましくは、固有粘度(IV、135℃においてデカリン溶液で測定)が少なくとも4dl/g、好ましくは少なくとも8dl/gである線状ポリエチレンと理解される。そうした繊維の調製および特性については、英国特許出願公開第204214A号明細書および国際公開第01/73171A1号パンフレットを含め多数の刊行物に記載されており、そのような繊維は、例えばDSM(NL)のDyneema(登録商標)という商品名で市販されている。
【0022】
補強要素は、すでに上述した補強要素に加えて、種々の繊維および/またはテープの組み合わせも含むことができる。種々の繊維および/またはテープを組み合わせることにより、物品の耐衝撃性能は、予想される衝撃の危険にさらによりうまく適合させることができる。本発明による製品に好適に使用される他の繊維および/またはテープとしては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ならびに、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO、Zylon(登録商標))、およびポリ(2,6−ジイミダゾ−(4,5b−4’,5’e)ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)繊維(M5繊維(登録商標)という名称の方がよく知られている)を含む他の延伸熱可塑性ポリマー繊維がある。
【0023】
本発明の方法によれば、曲面製品は、複数の補強要素(繊維またはテープなど)をマンドレル上に配置することにより作られる。この方法は、好ましくは張力下で補強要素のボビンから巻き出しすることを含む。好ましい実施態様では、曲面製品は、フィラメント巻き付け工程の間に供給手段を用いて、繊維束などの複数の補強要素をマンドレル上に同時に配置することによって製造する。好適な供給手段は、ボビンを備えたクリール、およびマンドレルの表面を覆うように補強要素を誘導するための最終誘導手段(例えば、分配管の形態)を含む。この方法は、仕掛けを簡単に保ちつつも、短縮された製造時間でフィラメント巻き付けを行うことが可能である。これは、大量の一連の製品を製造する場合には特に有利である。複数の補強要素は、好ましくは10から60の間の補強要素、より好ましくは24から48の間で構成される。このようにして、扱いやすさと製造時間との間で折り合いがつく。
【0024】
フィラメント巻き付け工程の間に、供給手段は、好ましくはマンドレルに対して移動する。さらに別の好ましい実施態様では、供給手段は、マンドレル表面と供給手段との間の間隔にまたがる補強要素の長さを調整する。この手段により、より一定の張力が補強要素にかけられ、それゆえにより品質のよい製品が生み出される。供給手段とマンドレル表面との間の補強要素の自由長さを調整することは、例えば、(繊維ボビンに作用する電気モーターを備えた)繊維分配管の形態の供給手段を用意することによって実施できる。好ましい実施態様によれば、供給手段は、マンドレル表面と供給手段との間の補強要素の張力を制御する。補強要素の張力を制御することは、製品または物品の機械的性質、特にそのスチフネスおよび強度にとって有利である。
【0025】
フィラメント巻き付けパターンは、好ましくは「ほぼ最短線のパターン」に限定されるが、このことは本発明にとって必要というわけではない。巻き付け経路は、製品の曲面上の2点間の最短距離に相当する場合、最短線である。巻き付けパターンのデザインでは、「ほぼ最短線のパターン」を実現しかつ特定位置での繊維の局部的な集積を防ぐようなパターンの選択に関して、特別の注意が求められる。最適な曲面製品は、好ましくは、局部的な集積が十分に「少なく」されるか、または製品の表面全体に散らされるような仕方で巻き付けが行われる。最近のソフトウェア(それ自体は知られている)を用いると、フィラメント巻き付けの専門家は、局部的な繊維の集積を十分に「少なくした」巻き付けパターンを設計することができる。また、試行錯誤法を用いて適切な巻き付けパターンを得ることもできる。
【0026】
好ましい実施態様では、曲面製品は、極曲面(polar surfaces)を有するマンドレル上に補強要素のフィラメント巻き付けを行うことによって製造するが、そのマンドレルは中心シャフトの回りを回転し、極曲面は中心シャフトが出し入れされるマンドレルの一部である。補強要素は、そのようなマンドレル上に、実質的にその表面およびその極曲面の全体にわたって配置される。このようにして、実質的に密閉された製品が得られ、これは後で二等分に分割されるので、2つの同様の曲面製品が一度に製造される。巻き付けの間はシャフトが存在するので、曲面製品の頂端には、一般に、巻き付け工程の後でシャフトが取り除かれたときに開口部があるであろう。そのような開口部は、巻き付けおよび/または圧縮の後に存在する場合、例えば、取り付け栓をそれに挿入することによって閉じることができる。この方法は、極曲面上で非最短線パターン(non−geodetic pattern)を採用することによってさらに向上させることができる。シャフトが存在するので、補強要素は、張力がかかった状態で(最終物品における)非最短線パターンでこのシャフトの回りに巻き付けることができる。シャフトを取り除く際に、張力下にある非最短線の補強要素は、その非最短線パターンから最短線パターンにより近いパターンに位置が変わり、それによって開口部および/または締め付けが減少し、かつ栓がよりきちんと取り付けられる。
【0027】
曲面製品は、ポリマーマトリックスがある場合にその乾燥および/または硬化を行わなくても、マンドレルから簡単に取り外され、それゆえに、例えば、エッジの切り取りによって(例えば、前述の加熱切断道具を用いて)簡単に仕上げを行うことができる。
【0028】
本発明はまた、曲面物品の製造方法であって、本発明による方法で得られる曲面プリフォームを金型に入れることと、前記プリフォームを高温高圧で圧縮することとを含む方法に関する。曲面プリフォームは実質的に曲面物品の形状を有するので、前記プリフォームを高温高圧で圧縮するステップにより、どんなしわや他のゆがみも製造された物品(好ましくは製造された防護物品)にはっきり認められるほど生じることはない。これにより、防護物品の耐衝撃特性が改善される。本発明の曲面製品はポリマーマトリックスがなくてもよいので、ポリマーマトリックスの量が少ないかまたはそれをまったく含まない防護物品を得ることができる。このことも防護物品の耐衝撃特性にとって有利である。
【0029】
本発明によれば、フィラメント巻き曲面プリフォームは補強要素(特に繊維)のみを含む。本発明による曲面防護物品の製造方法では、補強要素が、高温、圧力および時間の組み合わせによって、表面において部分的に軟化および溶融する(焼結としても知られている)。補強要素は、フィラメント巻き曲面プリフォームにおいて所望の数だけ所望の方向にすでに配置されているので、この製品は、金型中において高温高圧で若干変形させるだけで所望の特性および形状が得られる。そのような変形は、加熱されたダイおよび金型を用いた成形など、それ自体は知られている好適な技法を用いて生じさせることができる。圧縮成形の前に、中間製品は、例えばオーブン中で、好ましくは補強要素の融点未満の温度にすることができる。好ましくは、この温度は金型の温度とほぼ同じである。上述のように、真空にするエンベロープを用いることも好ましい。
【0030】
圧縮成形によってフィラメント巻きプリフォームから曲面物品を製造する方法では、一般に当業者は、十分に製品を合体させるために、高温、高圧および時間の好適な組み合わせを選ぶことができるであろう。所望の造形は、超高分子ポリエチレンで作られた繊維を含むプリフォームの場合には、一般に約1〜60分間、好ましくは約5〜45分間で行われるであろう。曲面物品(防護物品またはレードームなど)の製造の際にプリフォームに加える高圧は、非常にさまざまでありうるが、好ましくは約7MPaより大きく、より好ましくは約10MPaより大きく、さらにより好ましくは約15MPaより大きい。圧力が大きいほど得られる結果はよくなる。高圧が加えられるので、補強要素は実質的に張力が加えられた状態に保たれ、そのようにして、分子緩和の結果としての良好な機械的性質の消失または著しい減少が起きないようにされる。高温は、好ましくは80℃から補強要素の溶融温度または軟化温度より40℃下までの間から選択され、より好ましくは80℃から補強要素の溶融温度または軟化温度より20℃下までの間から選択されるが、その範囲は、ほとんどの実際的な用途では、80℃から145℃までの間である。高温高圧で成形された後、曲面物品は、補強要素のいかなる望ましくない緩和過程をも避けるために、好ましくは物品が約80℃未満の温度に達するまで冷やす。
【0031】
フィラメント巻き付け時にマンドレル上に配置される補強要素の数は、さまざまであってよく、一般には所望の厚さに達するようなものである。本発明による方法では、原則として、補強要素に関しては多くのいろいろな巻き付けパターンが可能である。本発明による方法では、耐衝撃性能にとって有利な、実質的にしわのない多種多様な肉厚を有するプリフォームおよび最終物品を製造することが可能である。巻き付け工程は、好ましくは実質的に製造物品の表面全体にわたって厚さが一定となるように行われる。耐衝撃性能の観点からすると、本発明による物品の肉厚は、好ましくは3mmより大きく、より好ましくは5mmより大きく、さらにより好ましくは9mmより大きく、もっとも好ましくは12mmより大きい。
【0032】
本発明による製品の好ましい実施態様では、フィラメント巻き付け工程で製品を製造する際に使用されるマンドレルは、類似の製品であるが、別の技術で作られる。さらにとりわけ、従来の肉薄シェルのヘルメットが、フィラメント巻き付けの金型として使用される。このようにして、ヘルメットの外側部分のみがフィラメント巻き材料で構成される。その利点は、薄いヘルメットは厚いヘルメットよりも従来の技術でいっそう容易に製造されることであり、しかもなお、かなり大きなフィラメント巻き付けの利点がある。さらに、より大きな危険に対してヘルメットを適合させるのが簡単であり、追加の巻き付けを行うだけで行える。
【0033】
ここで本発明を以下の実施例および比較実験によってさらに説明するが、それらに限定されることはない。
【0034】
[実施例I]
タイプSK76 1760dtexの耐衝撃性のDyneema(登録商標)UHMWPE繊維を、直径が20mmのシャフトで固定された円錐形マンドレルに巻き付けた。繊維は、巻き付け時に張力がかかった状態に維持した。UHWMPE繊維の最後の巻き付け部分に、繊維の全重量に対して0.1重量%の接着結合剤(adhesive binder)を軽く吹き付けてそれらを部分的に互いに接着させた。巻き付け製品は、ホットナイフで二等分に分割し、その後でマンドレルから取り外すことによって、戦闘用ヘルメットの形状をした2つの類似したプリフォームが得られ、それぞれの重量は1140グラムであった。シャフトを取り外した後に、直径が約20mmの開口部が頂端に存在していた。次いで両方のプリフォームをしっかり密着するポリエチレンフィルムエンベロープに封じ込め、それを真空にした。次いでエンベロープを有するプリフォームを圧縮成形機の2つの金型半体部分(mould halves)の間に入れ、閉じられた位置で2つの金型半体部分の間に自由空間を7mmだけ残した。金型半体部分を加熱して140℃の高温にした。165バールの高圧を、約60分間の間プリフォームに加えた。圧力下で80℃まで冷ました後、圧縮成形されたヘルメットを金型半体部分から取り出し、エッジ仕上げを行った。ヘルメットの最終重量は0.98kgであり、頭部の開口部の直径は圧縮成形時に縮小して10mmになった。開口部は、取り付け栓を挿入して閉じた。
【0035】
[比較実験A]
Dyneema(登録商標)HB25シートの38の層の平らなスタックを、140℃の温度、165バールの高圧において約60分間の間、2つの金型半体部分の間で圧縮成形した。圧縮成形の間に、その平らなスタックは変形して立体的形状のヘルメットになった。圧力下で80℃まで冷ました後、そのヘルメットを金型半体部分から取り出し、エッジ仕上げを行った。
【0036】
[結果]
本発明に従って製造されたヘルメットの特性の要約を表1に示す。
【0037】
【表1】



【0038】
ヘルメットに1.1グラム(17グレーン)の模擬破片発射物(Fragment Simulating Projectiles)(FSP)を発射した。得られた耐衝撃試験結果V50および吸収エネルギーEabsを表2に示す。ヘルメットには、いわゆる「両耳間の(ear−to−ear)」圧縮荷重も加えた。そのような試験では、圧縮力を着用者の両耳の部分のヘルメットの側壁に加え、そこで側壁の総内部変位を測定する。この試験の結果の要約を表3に示す。
【0039】
【表2】



【0040】
【表3】



【0041】
ヘルメットが吸収できるエネルギーに基づいて言えば、本発明によるフィラメント巻ヘルメットは、従来の圧縮ヘルメットよりも性能が向上している。従来のヘルメットの吸収エネルギーの典型的な値は、およそ30J/kg/mである。本発明によるヘルメットの吸収エネルギーは、40J/kg/mを超えており、少なくとも30%性能が向上している。
【0042】
「両耳間の」圧縮試験結果に関しては、本発明によるフィラメント巻きヘルメットは、従来の圧縮ヘルメットよりも性能が相当向上している。測定された「両耳間の」変位は17mmのみであるが、従来のヘルメットでは低い荷重で大きな変位が示される。
【0043】
性能の向上に加えて、フィラメント巻き付け方法には、好ましいことにポリマーマトリックスが存在しないこと共に、最終製品にしわがないこと、出発物質が安価になること、高価な直交積層(cross−ply)プリプレグの使用を避けられること、種々の材料を組み合わせる自由があること、廃棄物の量が少ないこと、および大規模な自動化の可能性など、他の利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面製品の製造方法であって、複数の延伸ポリマー補強要素をマンドレル上に配置することと、前記要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着することと、前記製品を前記マンドレルから取り外すこととを含む、方法。
【請求項2】
前記要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着するステップが、前記延伸ポリマー補強要素をその溶融温度より上に局部的に上げて、それらを融合させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要素の少なくとも一部を互いに局部的に接着するステップが、結合剤を前記延伸ポリマー補強要素に局部的に施し、前記結合剤を凝固させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記補強要素よりも低い融点を有する高分子フィルム層を前記曲面製品に設けることをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記曲面製品を、前記製品の外面および/または内面に接触する高分子フィルムのエンベロープ内に封入し、そのエンベロープを真空にする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記延伸ポリマー補強要素が、少なくとも1.6GPaの強さを有する繊維および/またはフィルムおよび/またはテープを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記延伸ポリマー補強要素が、超高分子量ポリエチレンの繊維および/またはフィルムおよび/またはテープを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の補強要素が供給手段によって同時にマンドレル上に配置される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給手段が、前記マンドレルの表面と前記供給手段との間の補強要素の張力を制御する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記補強要素の一部が、少なくとも部分的に非最短線のパターンで配置される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
曲面物品の製造方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で得られた曲面製品を金型内に入れ、前記プリフォームを高温高圧で圧縮することを含む、方法。
【請求項12】
前記高温が、前記補強要素の融点から前記融点より40℃下までの間から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記高温が、前記補強要素の融点から前記融点より20℃下までの間から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法で得ることができる曲面物品、好ましくは戦闘用ヘルメットまたはレードーム。

【公表番号】特表2010−524720(P2010−524720A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503413(P2010−503413)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003119
【国際公開番号】WO2008/128715
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】