延伸光学フィルムの製造方法
【課題】フィルムの延長方向に対して傾斜した遅相軸を有し、且つ厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、前記延伸前フィルムを斜め延伸する工程を含み、前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
【解決手段】長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、前記延伸前フィルムを斜め延伸する工程を含み、前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸光学フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、性能向上のために位相差フィルム等の光学部材が使用されている。位相差フィルムは、通常、その遅相軸が、偏光子の透過軸に対し、平行でも垂直でもない角度であることが求められる。一方、偏光子の透過軸は、通常装置の矩形の表示面の長辺又は短辺方向と平行である。したがって、矩形の位相差フィルムであって、その辺に対して斜め方向に遅相軸を有するものが求められている。
【0003】
従来、位相差フィルムは、長尺の延伸前フィルムを縦延伸(すなわち長尺フィルムの延長方向への延伸)、又は横延伸(すなわち長尺フィルムの幅方向への延伸)することにより製造されている。このような長尺フィルムから斜め方向に遅相軸を有する矩形フィルムを得るには、長尺フィルムの延長方向から斜めの方向に辺が向くよう、フィルムを切り出すことが必要になる。そのような製造を行うと、廃棄するフィルム量が多くなり且つロール・トゥ・ロールの製造が不可能となり、その結果製造効率が低くなる。
【0004】
製造効率を向上させるため、長尺の延伸前フィルムを、斜め方向に延伸することが提案されている。しかしながら、かかる斜め方向の延伸を行うと、縦延伸及び横延伸により製造したフィルムに比べて、得られるフィルムの厚みや光学特性が不均一になりやすいという問題点がある。このような問題を解決するための手段として、特許文献1や特許文献2では、斜め延伸時の繰出し方向と延伸後の製品の巻取り方向が特定の関係を満たすようなテンターレールパターンを提案している。さらに、特許文献3や特許文献4では、延伸後のフィルムの配向方向とオーブンの延伸、熱固定、冷却ゾーンの境界の成す角度を可能な限り一致させようという試みがなされているが、上記の問題を解決するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90532号公報
【特許文献2】特開2007−153926号公報
【特許文献3】特開2003−311823号公報
【特許文献4】特開2007−175974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、フィルムの延長方向に対して傾斜した遅相軸を有し、且つ厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために検討した結果、斜め延伸において延伸の態様と供給する延伸前フィルムとの関係を所定の態様とすることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、下記のものが提供される:
【0008】
〔1〕 長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、
前記延伸前フィルムを、前記延伸機に連続的に供給する工程(A)と、
前記延伸前フィルムの端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、
前記把持子X1およびY1を移動させることにより前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)と
を含み、
前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
〔2〕 前記延伸前フィルムが、複数の層からなり、前記複数の層のうち少なくとも一層が、前記幅方向の厚み勾配を有する層である、〔1〕に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
〔3〕 前記幅方向の厚み勾配を有する層が、前記工程(C)において光学異方性を付与される層である、〔2〕に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【0009】
本発明において、把持子X1およびY1の「移動距離」とは、文脈上別の意味であることが明らかである場合および別に断る場合を除き、把持子がフィルムを把持してからフィルムを離すまでに把持子が移動する距離である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製造方法によれば、厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを斜め延伸により製造することができ、したがって、フィルムの延長方向に対して傾斜した遅相軸を有し、且つ厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施するための斜め延伸用の延伸機の一例における、リンク装置による延伸の機構を概略的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS2を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図4】図4は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図6】図6は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS2を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図7】図7は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図8】図8は、本願実施例1における、延伸前フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図9】図9は、本願実施例1における、延伸前フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図11】図11は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの面内方向のレターデーションReの測定結果を示すグラフである。
【図13】図13は、本願比較例1における、延伸前フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図14】図14は、本願比較例1における、延伸前フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図15】図15は、本願比較例1における、延伸光学フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図16】図16は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図17】図17は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの面内方向のレターデーションReの測定結果を示すグラフである。
【図18】図18は、図1に示されるフィルム11B〜11Aのさらに別の一例を、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図19】図19は、図1に示されるフィルム11B〜11Aのさらに別の一例を、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明を、図面を参照して具体的に説明する。
本発明の延伸光学フィルムの製造方法は、長尺の延伸光学フィルムの製造方法である。長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するもの(フィルムロール)としうる。長尺のフィルムの製造方法では、フィルムを連続的に製造することにより、所望の任意の長さにフィルムを製造しうる。
【0013】
本発明の延伸光学フィルムの製造方法では、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する延伸光学フィルムを製造する。ここで、フィルムの延長方向に対する角度とは、フィルム面内における角度である。遅相軸は、通常延伸方向又は延伸方向に直角な方向に発現するので、本発明の製造方法では、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度で延伸を行うことにより、かかる遅相軸を有する延伸光学フィルムを製造しうる。
【0014】
フィルムの延長方向と遅相軸とがなす角は、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができるが、好ましくは40〜50°であり、具体例としては45°とすることができる。
【0015】
本発明の延伸光学フィルムの製造方法は、長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸する製造方法であって、延伸前フィルムを、延伸機に連続的に供給する工程(A)と、前記延伸前フィルムの両端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、前記把持子X1およびY1を移動させることにより、延伸ラインにおいて前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)とを含む。
【0016】
以下において、本発明の製造方法の具体例を、斜め延伸を行う装置の具体例を参照して説明する。図1は、本発明の製造方法を実施するための斜め延伸用の延伸機の一例における、リンク装置による延伸の機構を概略的に示す上面図である。
【0017】
図1において、延伸機1は、一対のリンク装置101R及びリンク装置101Lを有し、それぞれのリンク装置101R及び101Lは把持子110R及び110Lを有する。リンク装置101R及び101Lは輪状の装置とするが、図1においてはその一部を省略して図示している。リンク装置101Rはスプロケット12R及び13Rにより駆動され、リンク装置101Lはスプロケット12L及び13Lにより駆動され、適切なレール(不図示)により、流れ方向の上流から下流を観察した場合における左方向へ、フィルムの進行方向を曲げるよう導かれる。
【0018】
延伸前フィルム11Bは、矢印D1の方向に沿って上流(図1における左上側)から延伸機1に連続的に供給され(工程(A))、リンク装置101R及び101Lが有する把持子110R及び110Lにより把持される(工程(B))。
【0019】
リンク装置101R及び101Lのそれぞれをレールに沿って周回するよう駆動させると、フィルムの進行方向が左方向へ曲がることにより、リンク装置101Rがフィルム11Bを把持しながら搬送する軌道の長さが、リンク装置101Lがフィルム11Bを把持しながら搬送する軌道の長さより長くなる。これにより、リンク装置101Rがフィルム11Bを延伸する長さが、リンク装置101Lがフィルム11Bを延伸する長さより長くなり、斜め延伸が達成される(工程(C))。得られた延伸光学フィルムは、把持子が開くことにより解放され、矢印D3の方向に搬出される。
【0020】
具体的には、点線CS1上にあった把持子110R及び110Lが移動し点線CS2で示される位置上に到達すると、フィルムは点線CS2方向に延伸され、かかる点線CS2に直交する方向である矢印AA1方向に遅相軸を有する光学異方性が発生する。把持子110R及び110Lがさらに移動し点線CS3で示される位置上に到達すると、延伸倍率はさらに大きくなり、点線CS3に直交する方向である矢印AA2方向に遅相軸を有する光学異方性を有する延伸光学フィルム11Aが得られる。
【0021】
本発明では、前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する。そのような延伸前フィルムを前記工程(A)において供給することにより、厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを製造することができる。
【0022】
図1に示した延伸機1の例では、延伸前フィルムとして、リンク装置101Rの把持子に把持される側が、リンク装置101Lの把持子に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有するフィルムが供給される。
【0023】
このようなフィルム及びそれが延伸される際の変化を、図2〜図4を参照して説明する。図2、図3及び図4は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、それぞれ点線CS1、CS2及びCS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面(以下において単に「断面CS1」「断面CS2」及び「断面CS3」という。)を概略的に示す縦断面図である。
【0024】
図2に示す断面CS1の通り、延伸前フィルム11Bは、流れ方向の上流から下流を観察した場合における右側の端部E1Rの総厚みT1Rが、左側の端部E1Lの総厚みT1Lより厚く、右側端部E1Rから左側端部E1Lにかけて総厚みの勾配を有している。このような延伸前フィルム11Bが図1に示す延伸機1で延伸されると、リンク装置101Rがフィルム11Bを延伸しながら搬送する軌道の長さが長いことにより、右側端部E1Rに近い位置ほど、フィルム延長方向及びフィルム幅方向の両方にフィルムが延伸される倍率が大きくなり、その結果フィルムの総厚みが薄くなる。そのため図3に示す断面CS2の通り、延伸が進行するにしたがって右側端部E1R及び左側端部E1Lの総厚みは、T2R及びT2Lで示す通り薄くなり、且つそれらの差が小さくなる。
【0025】
さらに延伸が進行し、延伸が完了した位置における断面CS3においては、図3に示す通り、右側端部E1R及び左側端部E1Lの総厚みは、T3R及びT3Lで示す通り同一となり、これにより、斜め延伸による、均一な総厚みの延伸光学フィルムの製造が達成される。
【0026】
延伸が完了した位置におけるフィルム厚みを最も均一なものとしうるような延伸前フィルムの厚みの勾配は、実験的に厚み勾配を様々に変化させたフィルムを延伸することにより、経験的に求めることができる。延伸前フィルムの厚みの勾配は、例えば、厚みの厚い側の端部の厚みが、厚みの薄い側の端部よりも0.5〜3%程度厚くなるように調整することができる。
【0027】
一方、従来技術においてなされる通り、延伸前フィルムの総厚みが均一である場合、点線CS1、CS2及びCS3における断面は、それぞれ図5、図6及び図7のようになり、結果として、延伸が完了した位置における断面CS3で、延伸光学フィルムの総厚みが不均一となる。
【0028】
本発明の製造方法においては、延伸倍率は、所望の条件に応じて適宜調節することができるが、斜め方向の延伸倍率として、好ましくは1.3〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.5倍である。ここで斜め方向の延伸倍率とは、延伸開始位置における相対する一対の把持子の間隔に対する、延伸終了位置へかかる一対の把持子が移動した時点でのこれらの間隔の比であり、図1に示す延伸機1の例では、点線CS1上の一対の把持子の間隔に対する、点線CS3上の一対の把持子の間隔となる。
【0029】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムは、図2に示したような、総厚みにおいて所定の勾配を有するものだけでなく、延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが所定の勾配を有するものであってもよい。この場合、延伸前フィルムを構成する層すべてが所定の勾配を有することが好ましいが、延伸前フィルムを構成する層の一部が所定の勾配を有しないものであってもよい。そのような延伸前フィルムの例を図18に示す。
【0030】
図18に示す断面CS1における延伸前フィルムは、内層2と、内層2の両面に設けられた外層3からなる2種3層の層構成を有している。この延伸前フィルムは、内層2においては、流れ方向の上流から下流を観察した場合における右側の端部E2Rにおける厚みT4Rが左側の端部E2Lにおける厚みT4Lより厚く、右側端部E2Rから左側端部E2Lにかけて厚みの勾配を有している。一方、外層3においては、右側の端部E2Rにおける厚みT5Rと左側の端部E2Lにおける厚みT5Lがそのような関係を有しておらず、したがって厚み勾配を有していない。
【0031】
このような延伸前フィルムを延伸すると、図19に示す断面CS3を有する延伸光学フィルムを得ることができる。この延伸光学フィルムは、内層2においては、右側の端部E2Rにおける厚みT6Rと左側の端部E2Lにおける厚みT6Lとが同一となり、したがって斜め延伸による、均一な内層厚みの延伸光学フィルムとなっている。一方、外層3においては、右側の端部E2Rにおける厚みT7Rが左側の端部E2Lにおける厚みT7Lより薄くなり、したがって厚みは均一となっていない。しかしながら、内層2においては均一な厚み及び光学特性を有することが求められ、一方外層3においてはそれほど均一な厚み及び光学特性が求められない場合においては、このような延伸光学フィルムも有用に用いうる。
【0032】
例えば、内層2と外層3の材質及び延伸の条件を適宜選択し、延伸を、内層2のガラス転移温度より低い且つ外層3のガラス転移温度より高い温度にて行うことにより、内層2のみに均質な光学異方性を付与することができる。この場合、外層3の厚みが不均一であっても、延伸光学フィルムの機械的強度や全光線透過率などの特性が許容範囲内であれば、延伸光学フィルムとして有用なものとすることができる。
【0033】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムの幅は、特に限定されないが、450〜2000mm、好ましくは1000〜1500mmとすることができる。また、フィルムの総厚さは、特に限定されないが、40〜400μm、好ましくは60〜300μmの範囲内で勾配を有するものとすることができる。
【0034】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムの各層に用いることができる材質としては、透明であれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、脂環式オレフィン樹脂(ノルボルネン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂などを挙げることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添加スチレン−イソプレン共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、エチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系エチレン系アイオノマー樹脂などが挙げられる。
ここで、多層フィルムとしては、所望の位相差を得やすいという観点から、アクリル樹脂からなる層とスチレン樹脂からなる層との多層フィルムとすることが好ましい。
【0035】
前記延伸前フィルムは、公知の方法、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などによって得ることができる。これらのうち押出成形法が残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。特に延伸前フィルムとして2層以上の積層フィルムを用いる場合、かかる積層フィルムは共押出成形法、フィルムラミネイション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法が好ましい。延伸前フィルムは、このような方法で得られたフィルムそのままであってもよく、任意の処理、例えば表面処理や予備的な延伸が施されたフィルムであってもよい。
【0036】
本発明の製造方法により得られた延伸光学フィルムは、それ単独あるいは他の部材と組み合わせて、位相差板や視野角補償フィルムとして、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに広く応用が可能である。
【0037】
上記の開示は、説明のため、本発明を、好ましい実施例を参照して記載したものであるが、本発明は、本願請求の範囲及びその均等の全範囲のみにより限定されるものであるため、上記実施の形態において、さらにさまざまな修正及び変更を行うことができる。
例えば、上記実施形態においては、把持子X1および把持子Y1を移動させるリンク装置及びとして、各リンク装置上において隣接する把持子の間隔を伸縮させる機能を有さず、把持子の間隔が一定の状態のままレール上を周回するものを具体的に説明及び図示したが、本発明の製造方法に用いるリンク装置及びは、これには限定されず、既知のパンタグラフ構造など、各リンク装置上の隣接する把持子の間隔を伸縮させる構造を有するリンク装置を用い、かかる構造による縦方向の延伸を併せて行う延伸を行ってもよい。また、より均一な厚みを有する延伸光学フィルムを得るため、搬出される延伸光学フィルムの厚み及び光学特性を測定し、かかる測定結果に応じて、スプロケットの回転速度等の延伸条件を、リンク装置及びのそれぞれについて独立に制御することを行ってもよい。
【実施例】
【0038】
以下において、本発明を、実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
(1−1:延伸機)
二軸延伸を実施するための延伸機として、図1に概略的に示す斜め延伸方式の延伸機1を用意した。当該延伸機1は、作業環境温度を一定に保つオーブン内に設置され、一対のループ状のリンク装置101L及び101Rを備え、当該リンク装置で延伸前フィルム11Bを水平な方向に延伸しながら搬送し、延伸光学フィルム11Aを得る装置である。それぞれのリンク装置を導くレール(不図示)は、関節で連結された12個のブロックからなり、各ブロックの長さは2000mmであった。図1に示される通り、レールは、フィルムの進行方向を左へ曲げることにより斜め延伸を行うよう配置した。
【0040】
(1−2:延伸前フィルムの製造及び供給)
内層樹脂としてのポリスチレン樹脂(ノバケミカル製、商品名「ダイラークD332」、無水マレイン酸共重合物)と、外層樹脂としてのアクリル樹脂(住友化学製、製品名「スミペックスHT55Z」)とを、溶融状態でTダイからシート状に押出して冷却することにより、幅1200mmで、内層樹脂が外層樹脂に挟まれた、2種3層の多層フィルムを、延伸前フィルムとして連続的に製造した。得られた延伸前フィルムの総厚みと内層厚みを、インライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、インラインで測定間隔は幅方向5mm間隔で、ラインスピードは5m/分で、フィルム幅方向に254回測定した平均値の結果を、それぞれ図8及び図9に示す。図8〜図17のグラフにおいて、横軸の「フィルム幅」は、流れ方向の上流から下流を観察した場合におけるフィルムの左端から測定点までの距離をフィルムの幅方向に測った値を示す。これらに示すとおり、延伸前フィルムは、左端より右端のほうが厚い厚み勾配を有していた。
【0041】
(1−3:延伸光学フィルムの製造)
供給される延伸前フィルムを延伸機に供給し、延伸機による斜め延伸を開始した。把持子による把持は、延伸前フィルムの幅方向の200〜1000mmの領域が少なくとも延伸領域に含まれるよう行った。延伸倍率は1.8倍とし、延伸前フィルムの幅方向の200〜1000mmの領域に相当する領域を残して両側の耳を切り落として、幅1350mmの延伸光学フィルムとした。得られた延伸光学フィルムの総厚みと内層厚みを、インライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、インラインで測定間隔は幅方向5mm間隔で、ラインスピードは5m/分で、フィルム幅方向に254回測定して平均値を求めた。また、得られた延伸工学フィルムの面内方向のリターデーションReを、インライン位相差計(王子計測機器社製:KOBRA−WIST/2RT)を用いて測定した。結果を図10〜12に示す。得られた延伸光学フィルムの面内の遅相軸が、フィルムの長さ方向となす角は45°であった。
【0042】
図10〜図12の結果から明らかなとおり、本発明の延伸光学フィルムの製造方法によれば、斜め延伸による延伸で、フィルムの幅方向の厚みの勾配及びReのばらつきが少ないフィルムを得ることができる。
【0043】
<比較例1>
工程(1−2)において、Tダイの開口の形状を変更したほかは、実施例1と同様に操作し、延伸前フィルムを製造し、これを延伸し、延伸光学フィルムを得た。延伸前フィルムの総厚み及び内層厚み、ならびに延伸光学フィルムの総厚み、内層厚み及びReの測定結果を、それぞれ図13〜図17に示す。
【0044】
図13〜図17の結果から明らかなとおり、延伸前フィルムの幅方向の厚み勾配を設けなかった本比較例では、得られた延伸光学フィルムの幅方向の厚みの勾配及びReのばらつきが、実施例1に比べて大きく現れた。
【符号の説明】
【0045】
1 延伸機
2 フィルム内層
3 フィルム外層
12R、12L スプロケット
13R、13L スプロケット
101R、101L リンク装置
110R、110L 把持子
11A 延伸光学フィルム
11B 延伸前フィルム
D1 フィルム供給方向
D3 フィルム搬出方向
E1R、E2R フィルム右側端部
E1L、E2L フィルム左側端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸光学フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、性能向上のために位相差フィルム等の光学部材が使用されている。位相差フィルムは、通常、その遅相軸が、偏光子の透過軸に対し、平行でも垂直でもない角度であることが求められる。一方、偏光子の透過軸は、通常装置の矩形の表示面の長辺又は短辺方向と平行である。したがって、矩形の位相差フィルムであって、その辺に対して斜め方向に遅相軸を有するものが求められている。
【0003】
従来、位相差フィルムは、長尺の延伸前フィルムを縦延伸(すなわち長尺フィルムの延長方向への延伸)、又は横延伸(すなわち長尺フィルムの幅方向への延伸)することにより製造されている。このような長尺フィルムから斜め方向に遅相軸を有する矩形フィルムを得るには、長尺フィルムの延長方向から斜めの方向に辺が向くよう、フィルムを切り出すことが必要になる。そのような製造を行うと、廃棄するフィルム量が多くなり且つロール・トゥ・ロールの製造が不可能となり、その結果製造効率が低くなる。
【0004】
製造効率を向上させるため、長尺の延伸前フィルムを、斜め方向に延伸することが提案されている。しかしながら、かかる斜め方向の延伸を行うと、縦延伸及び横延伸により製造したフィルムに比べて、得られるフィルムの厚みや光学特性が不均一になりやすいという問題点がある。このような問題を解決するための手段として、特許文献1や特許文献2では、斜め延伸時の繰出し方向と延伸後の製品の巻取り方向が特定の関係を満たすようなテンターレールパターンを提案している。さらに、特許文献3や特許文献4では、延伸後のフィルムの配向方向とオーブンの延伸、熱固定、冷却ゾーンの境界の成す角度を可能な限り一致させようという試みがなされているが、上記の問題を解決するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90532号公報
【特許文献2】特開2007−153926号公報
【特許文献3】特開2003−311823号公報
【特許文献4】特開2007−175974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、フィルムの延長方向に対して傾斜した遅相軸を有し、且つ厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために検討した結果、斜め延伸において延伸の態様と供給する延伸前フィルムとの関係を所定の態様とすることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、下記のものが提供される:
【0008】
〔1〕 長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、
前記延伸前フィルムを、前記延伸機に連続的に供給する工程(A)と、
前記延伸前フィルムの端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、
前記把持子X1およびY1を移動させることにより前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)と
を含み、
前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
〔2〕 前記延伸前フィルムが、複数の層からなり、前記複数の層のうち少なくとも一層が、前記幅方向の厚み勾配を有する層である、〔1〕に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
〔3〕 前記幅方向の厚み勾配を有する層が、前記工程(C)において光学異方性を付与される層である、〔2〕に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【0009】
本発明において、把持子X1およびY1の「移動距離」とは、文脈上別の意味であることが明らかである場合および別に断る場合を除き、把持子がフィルムを把持してからフィルムを離すまでに把持子が移動する距離である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製造方法によれば、厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを斜め延伸により製造することができ、したがって、フィルムの延長方向に対して傾斜した遅相軸を有し、且つ厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施するための斜め延伸用の延伸機の一例における、リンク装置による延伸の機構を概略的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS2を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図4】図4は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図6】図6は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS2を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図7】図7は、図1に示されるフィルム11B〜11Aの別の一例を、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図8】図8は、本願実施例1における、延伸前フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図9】図9は、本願実施例1における、延伸前フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図11】図11は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの面内方向のレターデーションReの測定結果を示すグラフである。
【図13】図13は、本願比較例1における、延伸前フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図14】図14は、本願比較例1における、延伸前フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図15】図15は、本願比較例1における、延伸光学フィルムの総厚みの測定結果を示すグラフである。
【図16】図16は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの内層厚みの測定結果を示すグラフである。
【図17】図17は、本願実施例1における、延伸光学フィルムの面内方向のレターデーションReの測定結果を示すグラフである。
【図18】図18は、図1に示されるフィルム11B〜11Aのさらに別の一例を、点線CS1を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【図19】図19は、図1に示されるフィルム11B〜11Aのさらに別の一例を、点線CS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明を、図面を参照して具体的に説明する。
本発明の延伸光学フィルムの製造方法は、長尺の延伸光学フィルムの製造方法である。長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するもの(フィルムロール)としうる。長尺のフィルムの製造方法では、フィルムを連続的に製造することにより、所望の任意の長さにフィルムを製造しうる。
【0013】
本発明の延伸光学フィルムの製造方法では、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する延伸光学フィルムを製造する。ここで、フィルムの延長方向に対する角度とは、フィルム面内における角度である。遅相軸は、通常延伸方向又は延伸方向に直角な方向に発現するので、本発明の製造方法では、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度で延伸を行うことにより、かかる遅相軸を有する延伸光学フィルムを製造しうる。
【0014】
フィルムの延長方向と遅相軸とがなす角は、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができるが、好ましくは40〜50°であり、具体例としては45°とすることができる。
【0015】
本発明の延伸光学フィルムの製造方法は、長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸する製造方法であって、延伸前フィルムを、延伸機に連続的に供給する工程(A)と、前記延伸前フィルムの両端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、前記把持子X1およびY1を移動させることにより、延伸ラインにおいて前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)とを含む。
【0016】
以下において、本発明の製造方法の具体例を、斜め延伸を行う装置の具体例を参照して説明する。図1は、本発明の製造方法を実施するための斜め延伸用の延伸機の一例における、リンク装置による延伸の機構を概略的に示す上面図である。
【0017】
図1において、延伸機1は、一対のリンク装置101R及びリンク装置101Lを有し、それぞれのリンク装置101R及び101Lは把持子110R及び110Lを有する。リンク装置101R及び101Lは輪状の装置とするが、図1においてはその一部を省略して図示している。リンク装置101Rはスプロケット12R及び13Rにより駆動され、リンク装置101Lはスプロケット12L及び13Lにより駆動され、適切なレール(不図示)により、流れ方向の上流から下流を観察した場合における左方向へ、フィルムの進行方向を曲げるよう導かれる。
【0018】
延伸前フィルム11Bは、矢印D1の方向に沿って上流(図1における左上側)から延伸機1に連続的に供給され(工程(A))、リンク装置101R及び101Lが有する把持子110R及び110Lにより把持される(工程(B))。
【0019】
リンク装置101R及び101Lのそれぞれをレールに沿って周回するよう駆動させると、フィルムの進行方向が左方向へ曲がることにより、リンク装置101Rがフィルム11Bを把持しながら搬送する軌道の長さが、リンク装置101Lがフィルム11Bを把持しながら搬送する軌道の長さより長くなる。これにより、リンク装置101Rがフィルム11Bを延伸する長さが、リンク装置101Lがフィルム11Bを延伸する長さより長くなり、斜め延伸が達成される(工程(C))。得られた延伸光学フィルムは、把持子が開くことにより解放され、矢印D3の方向に搬出される。
【0020】
具体的には、点線CS1上にあった把持子110R及び110Lが移動し点線CS2で示される位置上に到達すると、フィルムは点線CS2方向に延伸され、かかる点線CS2に直交する方向である矢印AA1方向に遅相軸を有する光学異方性が発生する。把持子110R及び110Lがさらに移動し点線CS3で示される位置上に到達すると、延伸倍率はさらに大きくなり、点線CS3に直交する方向である矢印AA2方向に遅相軸を有する光学異方性を有する延伸光学フィルム11Aが得られる。
【0021】
本発明では、前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する。そのような延伸前フィルムを前記工程(A)において供給することにより、厚み及び光学特性のバラツキが少ない延伸光学フィルムを製造することができる。
【0022】
図1に示した延伸機1の例では、延伸前フィルムとして、リンク装置101Rの把持子に把持される側が、リンク装置101Lの把持子に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有するフィルムが供給される。
【0023】
このようなフィルム及びそれが延伸される際の変化を、図2〜図4を参照して説明する。図2、図3及び図4は、図1に示されるフィルム11B〜11Aを、それぞれ点線CS1、CS2及びCS3を通りフィルム面方向に垂直な面で切断した断面(以下において単に「断面CS1」「断面CS2」及び「断面CS3」という。)を概略的に示す縦断面図である。
【0024】
図2に示す断面CS1の通り、延伸前フィルム11Bは、流れ方向の上流から下流を観察した場合における右側の端部E1Rの総厚みT1Rが、左側の端部E1Lの総厚みT1Lより厚く、右側端部E1Rから左側端部E1Lにかけて総厚みの勾配を有している。このような延伸前フィルム11Bが図1に示す延伸機1で延伸されると、リンク装置101Rがフィルム11Bを延伸しながら搬送する軌道の長さが長いことにより、右側端部E1Rに近い位置ほど、フィルム延長方向及びフィルム幅方向の両方にフィルムが延伸される倍率が大きくなり、その結果フィルムの総厚みが薄くなる。そのため図3に示す断面CS2の通り、延伸が進行するにしたがって右側端部E1R及び左側端部E1Lの総厚みは、T2R及びT2Lで示す通り薄くなり、且つそれらの差が小さくなる。
【0025】
さらに延伸が進行し、延伸が完了した位置における断面CS3においては、図3に示す通り、右側端部E1R及び左側端部E1Lの総厚みは、T3R及びT3Lで示す通り同一となり、これにより、斜め延伸による、均一な総厚みの延伸光学フィルムの製造が達成される。
【0026】
延伸が完了した位置におけるフィルム厚みを最も均一なものとしうるような延伸前フィルムの厚みの勾配は、実験的に厚み勾配を様々に変化させたフィルムを延伸することにより、経験的に求めることができる。延伸前フィルムの厚みの勾配は、例えば、厚みの厚い側の端部の厚みが、厚みの薄い側の端部よりも0.5〜3%程度厚くなるように調整することができる。
【0027】
一方、従来技術においてなされる通り、延伸前フィルムの総厚みが均一である場合、点線CS1、CS2及びCS3における断面は、それぞれ図5、図6及び図7のようになり、結果として、延伸が完了した位置における断面CS3で、延伸光学フィルムの総厚みが不均一となる。
【0028】
本発明の製造方法においては、延伸倍率は、所望の条件に応じて適宜調節することができるが、斜め方向の延伸倍率として、好ましくは1.3〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.5倍である。ここで斜め方向の延伸倍率とは、延伸開始位置における相対する一対の把持子の間隔に対する、延伸終了位置へかかる一対の把持子が移動した時点でのこれらの間隔の比であり、図1に示す延伸機1の例では、点線CS1上の一対の把持子の間隔に対する、点線CS3上の一対の把持子の間隔となる。
【0029】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムは、図2に示したような、総厚みにおいて所定の勾配を有するものだけでなく、延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが所定の勾配を有するものであってもよい。この場合、延伸前フィルムを構成する層すべてが所定の勾配を有することが好ましいが、延伸前フィルムを構成する層の一部が所定の勾配を有しないものであってもよい。そのような延伸前フィルムの例を図18に示す。
【0030】
図18に示す断面CS1における延伸前フィルムは、内層2と、内層2の両面に設けられた外層3からなる2種3層の層構成を有している。この延伸前フィルムは、内層2においては、流れ方向の上流から下流を観察した場合における右側の端部E2Rにおける厚みT4Rが左側の端部E2Lにおける厚みT4Lより厚く、右側端部E2Rから左側端部E2Lにかけて厚みの勾配を有している。一方、外層3においては、右側の端部E2Rにおける厚みT5Rと左側の端部E2Lにおける厚みT5Lがそのような関係を有しておらず、したがって厚み勾配を有していない。
【0031】
このような延伸前フィルムを延伸すると、図19に示す断面CS3を有する延伸光学フィルムを得ることができる。この延伸光学フィルムは、内層2においては、右側の端部E2Rにおける厚みT6Rと左側の端部E2Lにおける厚みT6Lとが同一となり、したがって斜め延伸による、均一な内層厚みの延伸光学フィルムとなっている。一方、外層3においては、右側の端部E2Rにおける厚みT7Rが左側の端部E2Lにおける厚みT7Lより薄くなり、したがって厚みは均一となっていない。しかしながら、内層2においては均一な厚み及び光学特性を有することが求められ、一方外層3においてはそれほど均一な厚み及び光学特性が求められない場合においては、このような延伸光学フィルムも有用に用いうる。
【0032】
例えば、内層2と外層3の材質及び延伸の条件を適宜選択し、延伸を、内層2のガラス転移温度より低い且つ外層3のガラス転移温度より高い温度にて行うことにより、内層2のみに均質な光学異方性を付与することができる。この場合、外層3の厚みが不均一であっても、延伸光学フィルムの機械的強度や全光線透過率などの特性が許容範囲内であれば、延伸光学フィルムとして有用なものとすることができる。
【0033】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムの幅は、特に限定されないが、450〜2000mm、好ましくは1000〜1500mmとすることができる。また、フィルムの総厚さは、特に限定されないが、40〜400μm、好ましくは60〜300μmの範囲内で勾配を有するものとすることができる。
【0034】
本発明の製造方法に用いる延伸前フィルムの各層に用いることができる材質としては、透明であれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、脂環式オレフィン樹脂(ノルボルネン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂などを挙げることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添加スチレン−イソプレン共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、エチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系エチレン系アイオノマー樹脂などが挙げられる。
ここで、多層フィルムとしては、所望の位相差を得やすいという観点から、アクリル樹脂からなる層とスチレン樹脂からなる層との多層フィルムとすることが好ましい。
【0035】
前記延伸前フィルムは、公知の方法、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などによって得ることができる。これらのうち押出成形法が残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。特に延伸前フィルムとして2層以上の積層フィルムを用いる場合、かかる積層フィルムは共押出成形法、フィルムラミネイション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法が好ましい。延伸前フィルムは、このような方法で得られたフィルムそのままであってもよく、任意の処理、例えば表面処理や予備的な延伸が施されたフィルムであってもよい。
【0036】
本発明の製造方法により得られた延伸光学フィルムは、それ単独あるいは他の部材と組み合わせて、位相差板や視野角補償フィルムとして、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに広く応用が可能である。
【0037】
上記の開示は、説明のため、本発明を、好ましい実施例を参照して記載したものであるが、本発明は、本願請求の範囲及びその均等の全範囲のみにより限定されるものであるため、上記実施の形態において、さらにさまざまな修正及び変更を行うことができる。
例えば、上記実施形態においては、把持子X1および把持子Y1を移動させるリンク装置及びとして、各リンク装置上において隣接する把持子の間隔を伸縮させる機能を有さず、把持子の間隔が一定の状態のままレール上を周回するものを具体的に説明及び図示したが、本発明の製造方法に用いるリンク装置及びは、これには限定されず、既知のパンタグラフ構造など、各リンク装置上の隣接する把持子の間隔を伸縮させる構造を有するリンク装置を用い、かかる構造による縦方向の延伸を併せて行う延伸を行ってもよい。また、より均一な厚みを有する延伸光学フィルムを得るため、搬出される延伸光学フィルムの厚み及び光学特性を測定し、かかる測定結果に応じて、スプロケットの回転速度等の延伸条件を、リンク装置及びのそれぞれについて独立に制御することを行ってもよい。
【実施例】
【0038】
以下において、本発明を、実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
(1−1:延伸機)
二軸延伸を実施するための延伸機として、図1に概略的に示す斜め延伸方式の延伸機1を用意した。当該延伸機1は、作業環境温度を一定に保つオーブン内に設置され、一対のループ状のリンク装置101L及び101Rを備え、当該リンク装置で延伸前フィルム11Bを水平な方向に延伸しながら搬送し、延伸光学フィルム11Aを得る装置である。それぞれのリンク装置を導くレール(不図示)は、関節で連結された12個のブロックからなり、各ブロックの長さは2000mmであった。図1に示される通り、レールは、フィルムの進行方向を左へ曲げることにより斜め延伸を行うよう配置した。
【0040】
(1−2:延伸前フィルムの製造及び供給)
内層樹脂としてのポリスチレン樹脂(ノバケミカル製、商品名「ダイラークD332」、無水マレイン酸共重合物)と、外層樹脂としてのアクリル樹脂(住友化学製、製品名「スミペックスHT55Z」)とを、溶融状態でTダイからシート状に押出して冷却することにより、幅1200mmで、内層樹脂が外層樹脂に挟まれた、2種3層の多層フィルムを、延伸前フィルムとして連続的に製造した。得られた延伸前フィルムの総厚みと内層厚みを、インライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、インラインで測定間隔は幅方向5mm間隔で、ラインスピードは5m/分で、フィルム幅方向に254回測定した平均値の結果を、それぞれ図8及び図9に示す。図8〜図17のグラフにおいて、横軸の「フィルム幅」は、流れ方向の上流から下流を観察した場合におけるフィルムの左端から測定点までの距離をフィルムの幅方向に測った値を示す。これらに示すとおり、延伸前フィルムは、左端より右端のほうが厚い厚み勾配を有していた。
【0041】
(1−3:延伸光学フィルムの製造)
供給される延伸前フィルムを延伸機に供給し、延伸機による斜め延伸を開始した。把持子による把持は、延伸前フィルムの幅方向の200〜1000mmの領域が少なくとも延伸領域に含まれるよう行った。延伸倍率は1.8倍とし、延伸前フィルムの幅方向の200〜1000mmの領域に相当する領域を残して両側の耳を切り落として、幅1350mmの延伸光学フィルムとした。得られた延伸光学フィルムの総厚みと内層厚みを、インライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、インラインで測定間隔は幅方向5mm間隔で、ラインスピードは5m/分で、フィルム幅方向に254回測定して平均値を求めた。また、得られた延伸工学フィルムの面内方向のリターデーションReを、インライン位相差計(王子計測機器社製:KOBRA−WIST/2RT)を用いて測定した。結果を図10〜12に示す。得られた延伸光学フィルムの面内の遅相軸が、フィルムの長さ方向となす角は45°であった。
【0042】
図10〜図12の結果から明らかなとおり、本発明の延伸光学フィルムの製造方法によれば、斜め延伸による延伸で、フィルムの幅方向の厚みの勾配及びReのばらつきが少ないフィルムを得ることができる。
【0043】
<比較例1>
工程(1−2)において、Tダイの開口の形状を変更したほかは、実施例1と同様に操作し、延伸前フィルムを製造し、これを延伸し、延伸光学フィルムを得た。延伸前フィルムの総厚み及び内層厚み、ならびに延伸光学フィルムの総厚み、内層厚み及びReの測定結果を、それぞれ図13〜図17に示す。
【0044】
図13〜図17の結果から明らかなとおり、延伸前フィルムの幅方向の厚み勾配を設けなかった本比較例では、得られた延伸光学フィルムの幅方向の厚みの勾配及びReのばらつきが、実施例1に比べて大きく現れた。
【符号の説明】
【0045】
1 延伸機
2 フィルム内層
3 フィルム外層
12R、12L スプロケット
13R、13L スプロケット
101R、101L リンク装置
110R、110L 把持子
11A 延伸光学フィルム
11B 延伸前フィルム
D1 フィルム供給方向
D3 フィルム搬出方向
E1R、E2R フィルム右側端部
E1L、E2L フィルム左側端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、
前記延伸前フィルムを、前記延伸機に連続的に供給する工程(A)と、
前記延伸前フィルムの端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、
前記把持子X1およびY1を移動させることにより前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)と
を含み、
前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記延伸前フィルムが、複数の層からなり、前記複数の層のうち少なくとも一層が、前記幅方向の厚み勾配を有する層である、請求項1に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記幅方向の厚み勾配を有する層が、前記工程(C)において光学異方性を付与される層である、請求項2に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【請求項1】
長尺状の延伸前フィルムの両端部をそれぞれ把持する、把持子X1および把持子Y1からなる一対の把持部を備える延伸機を用いて、前記把持子X1の移動距離と前記把持子Y1の移動距離に基づいて、前記延伸前フィルムを斜め延伸することにより、その長手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺状の延伸光学フィルムを製造する、延伸光学フィルムの製造方法であって、
前記延伸前フィルムを、前記延伸機に連続的に供給する工程(A)と、
前記延伸前フィルムの端部を前記把持子X1およびY1でそれぞれ把持する工程(B)と、
前記把持子X1およびY1を移動させることにより前記延伸前フィルムを延伸する工程であって、延伸時における前記把持子X1の移動距離が、延伸時における前記把持子Y1の移動距離より長くなるように斜め延伸する工程(C)と
を含み、
前記延伸前フィルムの総厚み又は前記延伸前フィルムを構成する層のうち少なくとも一層の厚みが、前記把持子X1に把持される側が前記把持子Y1に把持される側より厚い、幅方向の厚み勾配を有する、延伸光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記延伸前フィルムが、複数の層からなり、前記複数の層のうち少なくとも一層が、前記幅方向の厚み勾配を有する層である、請求項1に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記幅方向の厚み勾配を有する層が、前記工程(C)において光学異方性を付与される層である、請求項2に記載の延伸光学フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
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【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−173261(P2010−173261A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20724(P2009−20724)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】
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