説明

延伸多層フィルムケーシングの製造方法

【課題】必要な熱収縮性を確保しつつ過大な熱収縮応力の発生を防止し、(半)流動性内容物の自動充填包装に適した延伸多層フィルムケーシングを与える。
【解決手段】同種のポリオレフィン系樹脂からなる両外層、ポリアミド系樹脂からなるガスバリア性中間層の少なくとも3層からなり、50℃における熱収縮応力が縦方向と横方向においてともに2MPa以下、90℃の熱水収縮率が5〜20%である熱収縮性を有する延伸多層フィルムを、両外層でバックシームしてなる延伸多層フィルムケーシング用の延伸多層フィルムを、適度の延伸倍率での二軸インフレーションと、比較的低温のスチームまたは温水による熱処理工程を経て製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系ガスバリア性樹脂からなる中間樹脂層、ポリオレフィン系樹脂からなる両外層の少なくとも3層からなり、特定の熱収縮性および熱収縮応力を有する二軸延伸多層フィルムからなるケーシングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二軸延伸フィルムからなるケーシングに、主として、ハム、ソーセージ、スティックチーズやその他の食品等からなる(半)流動性(すなわち半流動性または流動性の)内容物を自動充填包装することが広く行なわれている。
【0003】
ケーシングフィルムは、良好な機械特性、押出適性および延伸性を始めとする良好な加工適性、透明性、製品の保存性を維持するための良好なガスバリア性を有することが好ましい。また、ケーシングフィルムは、内容物を充填後に、ボイル殺菌等において、熱収縮性を示すことが、皺の発生を防止した良好な外観のみならず、空隙を残すことなく保存性の良好な食品等の製品を与える上で好ましい。
【0004】
また、自動包装により、易開封性に優れた(半)流動性物充填製品を与えるためには、熱収縮性の二軸延伸多層フィルムをバックシーム(一対の外表面層を相互に接合するシール形態であり、「封筒貼りシール」ともいう)によるセンターシーム加工を施したのち、内容物を充填包装する自動充填包装形態も好ましい。
【0005】
上述したような包装形態に用いられる熱収縮性の樹脂フィルムは、従来、多くの場合において、シール性や押出特性に優れたポリエチレン樹脂(以下、「PE」と略記することがある)やポリプロピレン系樹脂(以下、「PP」と略記することがある)あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略記することがある)に代表されるポリオレフィン系樹脂(以下、「PO」と略記することがある)、機械特性、延伸性、およびバスバリアー性が優れたポリアミド系樹脂(以下、「Ny」と略記することがある)、ガスバリアー性が特に優れた塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC」と略記することがある)あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂(以下「EVOH」と略記することがある)、更にはアイオノマー樹脂を含む変性ポリオレフィン系樹脂(以下「M−PO」と略記することがある)等の各樹脂の層を、種々の態様で積層した熱収縮性多層フィルムとして形成されている。特に機械特性、延伸性およびガスバリア性が優れたポリアミド系樹脂(Ny)を中間層とする多層フィルム(以下、「ポリアミド系多層フィルム」と呼ぶことがある)の代表的な積層形態としては、外表面層から内表面層へと向けて表示した際に、PO/Ny/PO、PE/Ny/PE、EVA/Ny/EVA、M−PO/Ny/EVOH/M−PO、EVA/EVOH/Ny/EVA、PP+PE/M−PO/EVOH/Ny/M−PO/PP+PE等(例えば、特公昭61−53218号、特公平3−80422号、特開平6−210810、特開平8−230035号など)が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したポリアミド系多層フィルムをバックシーム工程を含む(半)流動性内容物の自動充填包装に適用するに際して、その本来的な熱収縮性に起因して、いくつかの問題点が見出された。それら問題点は、例えば、以下の通りである。(イ)魚肉あるいは畜肉ソーセージなどの(半)流動性内容物を自動充填包装(例えば、呉羽化学工業(株)製「KAP包装機」などを用いる)に適用するに際して、シール時にフィルムが収縮しシールバーから外れて連続した包装が困難あるいは不可能となる、また包装可能であった場合でも、その後の加熱処理中にシール部が破れる、(ロ)フィルムの外層側と内層側をシールするバックシーム加工の際に、熱収縮性多層フィルムの収縮が発生するために十分なシール強度が得られにくく、かつ加工収率が著しく低下する。また加工後の寸法変化により、シームドケーシングの幅に斑が生じ、それにより一定量を内容物を充填した際に製品長さがバラツキ、商品価値が乏しくなる。その後の加熱処理時にシール部に破れが生じやすい。(ハ)上記したような問題点は、特に易開封性を担保すべく、および/または包装体に美麗な外観を付与すべく、シール幅を、例えば0.1〜1.5mm幅程度に低減してバックシームを行った際に、特に顕在化しがちである。
【0007】
従って、本発明の主要な目的は、上述したような問題点を解決し、自動包装に適したポリアミド系多層フィルムからなるバックシームによるフィルムケーシングあるいは包装体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上述の目的で研究した結果、上述した従来の熱収縮性ポリアミド系多層フィルムからなるフィルムケーシングの問題点の多くは、熱収縮率が過大であるために起るが、延伸条件の制御等により熱収縮率を適正なレベルに設定した後においても、ガスバリア性中間層をポリアミド系樹脂によって構成するために、熱収縮に際して多層フィルムの示す応力(すなわち熱収縮応力)が過大となるために生ずるものであることが見出された。
【0009】
そして、更に研究した結果、ポリアミド系多層フィルムに適正な条件下での二軸延伸を施した後に、適切なる熱処理(比較的低温で行われる均質緩和熱処理)を行うことにより、適正な熱収縮率を有するが、熱収縮応力の抑制されたポリアミド系多層フィルムが得られ、これをバックシームすることにより、自動充填包装に適したフィルムケーシングが形成されることが見出された。また、このような低温での均質緩和熱処理効果を及ぼす熱処理を好ましい熱処理プロセスとしてのインフレーションプロセスに導入して行うためには、熱処理媒体として熱容量の大きいスチームあるいは温水が著しく好ましいことも見出された。
【0010】
本発明法により製造する延伸多層フィルムケーシングは、上述の知見に基づくものであり、より詳しくは、同種のポリオレフィン系樹脂からなる両外層、ポリアミド系樹脂からなるガスバリア性中間層の少なくとも3層からなり、50℃における熱収縮応力が縦方向と横方向においてともに2MPa以下、90℃の熱水収縮率が5〜20%である熱収縮性を有する延伸多層フィルムを、両外層でバックシームしてなることを特徴とするものである。
【0011】
そして、本発明の延伸多層フィルムケーシングの製造方法は、溶融された少なくとも3種の熱可塑性樹脂を管状に共押出しして、ポリアミド系樹脂からなるガスバリア性中間層、ポリオレフィン系樹脂からなる両外層の少なくとも3層からなる管状体を形成し、次いで該管状体をその各層に占める主たる樹脂の融点以下に水冷却し、その後管状体の各層に占める主たる樹脂の融点以下の温度に再加熱し、管状体の内部に流体を入れながら管状体を垂直方向に引出しつつ垂直方向および円周方向に各2.5〜4倍に延伸して二軸延伸管状フィルムを形成し、これを折り畳み、次いで内部に流体を入れて再び形成した管状体の外表面層(a)側から60〜95℃のスチームもしくは温水により熱処理し、冷却することにより、50℃における熱収縮応力が縦方向と横方向においてともに2MPa以下であり、90℃の熱水収縮率が5〜20%である二軸延伸管状体フィルムを形成し、更に該二軸延伸管状体フィルムをスリット後、両外層でバックシームすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、必要な熱収縮性を確保しつつ、熱収縮に際しての過大な熱収縮応力の発生を防止したポリアミド系多層フィルムをバックシームすることにより、ソーセージ等の(半)流動性内容物の自動充填包装に適したフィルムケーシングが与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明法による延伸多層フィルムケーシングを構成するポリアミド系多層フィルムは、同種のポリオレフィン系樹脂からなる両外層およびポリアミド系樹脂からなるガスバリア性中間層の少なくとも3層からなる。
【0014】
両外層を形成するポリオレフィン樹脂としては、シングルサイト触媒例えばメタロセン触媒(以下「SSC」と略記することがある)を用いて重合されたポリオレフィン、例えばエチレン−αオレフィン共重合体として、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「SSC−LLDPE」と略記)、直鎖状超低密度ポリエチレン(以下「SSC−VLDPE」と略記)、従来のエチレン−αオレフィン共重合体((一般に「LLDPE」、「VLDPE」などと称されるもの)、これらはエチレンとCからC10のαオレフィン類から選択される1種以上のコモノマー類との共重合体であるが、特にC〜Cのαオレフィン類例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などとエチレンとの共重合体を含んでいる)、ポリプロピレン(以下「PP」と略記)、プロピレン−エチレン共重合体やプロピレン−エチレン−ブテン共重合体などに代表されるプロピレン系共重合体(以下「PP−Et」と略記)から選ばれたものが使用できる。ポリオレフィン樹脂は、融点が90℃乃至170℃の範囲にあるもの、特に95℃乃至150℃、更には100℃乃至140℃の範囲にあるものが好ましい。融点が上限値よりも大きい場合には、フィルムの延伸加工が難しくなり、下限値よりも小さい場合には、包装体をボイルした際にシール部が破裂しやすくなる。フィルムの透明性を大きく阻害しない範囲で、これらポリオレフィン樹脂を少なくとも1種含むブレンド物であってもよい。
【0015】
これらの中で、SSC−LLDPE、SSC−VLDPE、LLDPE、VLDPEとしては、密度が0.900g/cm以上、特に0.905g/cm以上のもの、PP−Etとしてはエチレンなどに代表されるコモノマーが1重量%以上、特に3重量%以上、更には5重量%以上含まれるものが、その優れた耐熱性、シール性、フィルムの製造性の面から好ましく用いられる。特にSSC系ポリオレフィンの中で有効なものに、拘束幾何触媒(ダウケミカル社(DowChemical Company)が開発したメタロセン触媒の1種)を用いて得られるものがある。拘束幾何触媒を用いて得られるエチレン−αオレフィン共重合体は、1000炭素数当たりの長鎖分岐(Long Chain Branching)の数が、約0.01乃至約3、好ましくは約0.01乃至約1、より好ましくは約0.05乃至約1の実質的に線状のポリエチレン系樹脂である。該エチレン−αオレフィン共重合体は、分子構造中に約6炭素数以上の線状の長鎖分岐が選択的に導入されているため、ポリマーに優れた物性と良好な成形加工性が付与される。その一例は、ダウケミカルから「アフィニティー」という名称で販売され、αオレフィンはオクテン−1である。
【0016】
この他のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エクソン(EXXON)社のエクザクト(EXACT)や宇部興産社のユメリット、三井化学社のエボリュー、日本ポリケム社製のカーネル、ダウケミカル社製のエリートがある。
【0017】
メタロセン触媒ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(多分散度)が3未満が好ましく、より好ましくは1.9乃至2.2である。
【0018】
得られるポリアミド系多層フィルムが良好なバックシーム適性を示すために、両外層を構成するポリオレフィン系樹脂は、同種のものであることが必要である。ここでポリオレフィン系樹脂について「同種」とは、典型的には、ともにポリエチレン、あるいはともにプロピレン・エチレン共重合体であることを意味するものであるが、例えば共重合体相互、あるいは、単独重合体と共重合体との間での、特定の成分(例えば、プロピレン−エチレン共重合体における、エチレン)の含量における8重量までの差異は許容される。また、両外層のポリオレフィン系樹脂は、融点差が30℃以下、特に10℃以下であることが好ましい。
【0019】
上述のポリオレフィン系樹脂は、必要に応じて、両外層以外に中間樹脂層として用いることも可能である。中間層として用いるポリオレフィン系樹脂は、両外層のポリオレフィン系樹脂と同種のものであっても、異種のものであってもよい。また、前述した好ましい樹脂以外の樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、アイオノマーなどのエチレン系共重合体を用いてもよい。
【0020】
ガスバリア性中間層を構成するポリアミド系樹脂(「Ny」)としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612などの脂肪族ポリアミド重合体、ナイロン6/66、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン6/69、ナイロン66/69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。これらのなかでは、ナイロン6/66やナイロン6/12が成形加工性の点で特に好ましい。これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体は、単独あるいは2種以上ブレンドして用いることが出来る。また、これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体を主体とし、芳香族ポリアミドとのブレンド物も用いられる。例えばナイロン66/610/MXD6(MXD6はポリメタキシリレンアジパミド)などの脂肪族ナイロンと芳香族ジアミン単位を含む芳香族ポリアミドとのブレンド物、ナイロン66/69/6I(6Iはポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロン6/6Iなどの脂肪族ナイロンと芳香族カルボン酸単位を含む共重合芳香族ポリアミドとのブレンド物、ナイロン6I/6T(すなわち、イソフタル酸、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンの共重合体であるポリヘキサメチレンイソフタラミド/テレフタラミド)などの芳香族カルボン酸を有する非晶性芳香族ポリアミドとのブレンド物、ナイロンMXD6などの芳香族ジアミンを有する芳香族ポリアミドとのブレンド物が挙げられる。これらポリアミド樹脂は、単独でまたは混合して、その主たる融点が160乃至210℃になるものが好ましく用いられる。
【0021】
ガスバリア性中間層は、ポリアミド系樹脂の単層のみにより構成することもできるが、他のガスバリア性樹脂層と積層して用いることもできる。この際、他のガスバリア性樹脂としては、ガスバリア性は優れるがポリアミド系樹脂層との共押出性が良くない塩素系樹脂(特にPVDC)よりは、非塩素系樹脂が好ましく用いられる。特に好ましい非塩素系ガスバリア性樹脂の例としては、成形加工性も良好なエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)が挙げられる。好ましい積層ガスバリア性中間層構造としては、Ny/EVOH、EVOH/Ny、Ny/EVOH/Nyが挙げられる。積層する場合、ガスバリア性樹脂中間層中のポリアミド系樹脂層の厚みは50%以上、特に50〜95%の範囲とすることが好ましい。Ny層とEVOH層の間には必要に応じて接着性樹脂層あるいはポリオレフィン系樹脂等の他の樹脂層を挿入することもできる。
【0022】
中間層のNy/EVOHが好ましい理由は、共押出性に優れること、両樹脂の接着性が極めて良好であり、中間に接着層を設ける必要がないことが挙げられる。Ny/EVOH/Nyが好ましい理由としては、両外層のポリオレフィン(特にポリオレフィンとガスバリア性中間層との間に配置される酸変性ポリオレフィン)に対する接着力が、EVOHよりもNyの方が優れていること、NyとEVOHの収縮挙動の違いから発生し得るカールを抑制しやすいこと、フィルムの強度が強いこと、更には同種のポリオレフィン系樹脂からなる両外層を配置した延伸多層フィルムケーシングでも顕著な効果を有することなどが挙げられる。
【0023】
接着性樹脂層は上記各層間の接着力が十分でない場合などに、必要に応じて中間層として設けることができる。より好ましくは、接着性樹脂として、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂(IO)、酸変性ポリオレフィン(オレフィン類の単独又は共重合体などとマレイン酸やフマル酸などの不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物や不飽和カルボン酸エステルもしくは金属塩などとの反応物など、例えば、酸変性VLDPE、酸変性LLDPE、酸変性EEA、酸変性EVA、酸変性PP、酸変性PP−Et)などが使用できる。好適なものとしては、マレイン酸などの酸、またはこれらの無水物などで変性された酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0024】
上記の層構成において、いずれかの層に滑剤、帯電防止剤を添加することができる。
【0025】
用いる滑剤としては、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪族アミド系滑剤、エステル系滑剤、金属石鹸類などがあげられる。滑剤は、液状であってもよいし、固体状であってもよい。具体的に、炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロワックスなどがあげられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸などがあげられる。脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、アラキジン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなどがあげられる。エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート、ステアリン酸モノグリセライドなどがあげられる。金属石鹸としては、炭素数12乃至30脂肪酸から誘導されるものであり、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム類が代表的にあげられる。これらの滑剤の中では、脂肪酸アミド系滑剤、金属石鹸類がポリオレフィン樹脂との相溶性が優れるという点から好ましく用いられる。
【0026】
無機系の滑剤(アンチブロッキング剤)としては、シリカ、ゼオライトなど公知のものを、両外層に添加する事ができる。
【0027】
脂肪族アミドやシリカなどの滑剤はマスターバッチの形で加えることができる。その好ましい添加量は滑剤20重量%含有マスターバッチの場合、0.1乃至10重量%である。
【0028】
帯電防止剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの混合物を使用することができる。帯電防止剤は添加すべき層の樹脂に対して0.05乃至2重量%、更には0.1乃至1重量%添加することが好ましい。
【0029】
本発明の多層フィルムを構成するポリアミド系多層フィルムの層構成の好ましい例を、外層から内層へ向かう層構成として次に記す。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(1)ポリオレフィン系樹脂/Ny/ポリオレフィン系樹脂
(2)ポリオレフィン系樹脂/Ny/EVOH/ポリオレフィン系樹脂
(3)ポリオレフィン系樹脂/Ny/EVOH/Ny/ポリオレフィン系樹脂
(4)ポリオレフィン系樹脂/Ny/ポリオレフィン系樹脂/Ny/ポリオレフィン系樹脂
(5)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/Ny/接着性樹脂/ポリオレフィン系樹脂
(6)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/Ny/EVOH/接着性樹脂/ポリオレフィン系樹脂
(7)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/Ny/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/ポリオレフィン系樹脂
(8)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/Ny/EVOH/Ny/接着性樹脂/ポリオレフィン系樹脂
(9)ポリオレフィン系樹脂/Ny/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂層/Ny/ポリオレフィン系樹脂
(10)ポリオレフィン系樹脂/Ny/接着性樹脂層/EVOH/ポリオレフィン系樹脂
【0030】
本発明法によるフィルムケーシングは、一枚のポリアミド系多層フィルムで構成してもよいが、フィルムを二枚、あるいはそれ以上重ねて構成することも可能である。二枚以上重ねる場合には、その必要に応じて、外表面と内表面が接触するように重ね合せてもよいし、外表面同士が接触するように重ね合せてもよいし、内表面同士を接触するように重ね合せてもよい。二枚のフィルムの貼り合わせは、表層樹脂の自己粘着により行なってもよいし、自己粘着力が不足している場合には、公知の接着剤を用いて貼り合せてもよい。フィルムを重ね合せることのメリットとしては、フィルム偏肉を改善出来得ることがあげられる。
【0031】
ポリアミド系多層フィルムは、上記各層を積層して、延伸することにより、最終的に厚さが10乃至120μm、特に10乃至80μmの範囲、更には15μm乃至60μmの多層フィルムとして形成し、本発明の延伸多層フィルムケーシングを構成することが好ましい。
【0032】
より詳しくは、ポリアミド系多層フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂からなる外表面層は、3乃至50μm、特に5乃至30μm、ポリアミド系樹脂(あるいは任意に用いる他のガスバリア性樹脂)層からなる中間層は個々に2乃至35μm、特に3乃至25μm、合計で4乃至30μm、特に6乃至30μm、ポリオレフィン系樹脂からなる内表面層は3乃至50μm、特に5乃至30μmの範囲の厚さとすることが好ましい。特に外表面層の合計厚みが少なくとも10μmであることが好ましい。これにより、熱水収縮率5〜20%(90℃)、熱収縮応力2MPa以下(50℃)の延伸多層フィルムをバックシームすることにより得られたケーシングの包装体が、熱殺菌やレトルト処理などの、熱処理に耐える耐久性が充分に付与される。
【0033】
接着性樹脂層は、複数設けることができるが、その厚さは各0.5乃至5μmの範囲が好適である。
【0034】
フィルムケーシングを構成するポリアミド系多層フィルムは、本発明の方法に従い、インフレーション法により製造される。図1を参照して、その好ましい一態様について説明する。
【0035】
多層フィルムを構成する積層樹脂種数に応じた台数(1台のみ図示)の押出機1より環状ダイ2を経て少なくともポリオレフィン系樹脂からなる外表面層、ポリアミド系樹脂からなる中間層、ポリオレフィン系樹脂からなる内表面層の3層を有する環状体(パリソン)3を共押出しし、水浴4(あるいは公知のシャワーリング装置)により各層に占める主たる樹脂の融点以下、好ましくは40℃以下、に冷却しつつピンチローラ5で引き取る。次いで、引き取った管状体フィルム3aに、必要に応じて大豆油やグリセリン脂肪酸エステルなどに代表される開封剤を内封しつつ、各層に占める主たる樹脂の融点以下の、例えば80乃至95℃の温水浴6中に導入して、加熱された管状体フィルム3bを上方に引き出し、一対のピンチローラ7および8間に導入した流体空気によりバブル状の管状体3cを形成し、10乃至20℃のエアリングで冷却しながら、垂直方向(MD)および横方向(TD)に、好ましくは各2乃至4倍、更に好ましくは各2.5乃至4倍、に同時二軸延伸する。延伸倍率が上限値を超えると製造したフィルムの熱収縮応力が過大になったり、インフレーションバブルの内圧が高くなりすぎフィルムの製造が難しくなりやすい。下限値を下回ると、延伸ムラが発生しやすく、その結果製造したフィルムの厚みムラが大きくなり、自動(充填)包装に適した性能が得られにくい。MDとTDの延伸倍率は、前述の範囲内で、同じであってもよいし、異なってもよい。次いで延伸後の管状体フィルム3dを下方に引き出し、一対のピンチローラ9および10間に導入した流体空気により再度バブル状の管状体3eを形成し、熱処理筒11中に保持する。そして、この熱処理筒11の吹き出し口12よりスチームを吹き付け(あるいは温水を噴霧して)、二軸延伸後の管状体フィルム3eを60乃至98℃、好ましくは65乃至95℃において、1乃至20秒、好ましくは1.5乃至10秒程度熱処理して、管状体フィルム3eを垂直方向(MD)および横方向(TD)に各0乃至25%、好ましくは5乃至20%弛緩させる。熱処理後の管状体フィルム3fは、本発明の延伸多層フィルムケーシングを構成するポリアミド系多層フィルムに相当するものであり、巻き取りロール13に巻き取られる。
【0036】
このようにして得られるポリアミド系多層フィルムは、90℃の熱水収縮率が、縦方向および横方向においてともに、5%乃至20%、好ましくは10%乃至20%であり、50℃における熱収縮応力が縦方向および横方向においてともに2.0MPa以下、好ましくは1.5MPa以下(更に好ましくは1.0MPa以下)となり、良好な自動包装適性を付与される。
【0037】
90℃の熱水収縮率が5%乃至20%、更には10%乃至20%のフィルムは、ソーセージやチーズなどバックシーム加工工程を含む自動充填包装プロセスにおいて、良好な機械適性を有し、かつ該包装において得られた包装体は美麗な外観を有する。熱水収縮率が大きすぎる場合には、包装機械適性が低下しやすくなる。逆に熱水収縮率が小さすぎる場合には、フィルムの収縮不足により包装体の表面に皺が発生し、商品価値が低下する。
【0038】
そして、50℃における熱収縮応力が2MPa、更には1.5MPa以下、(特に1.0MPa以下)であることにより、自動充填包装時の、包装機械適性や熱シール性に優れ、加工後の寸法(特に幅)変化が抑制され、極めて良好な外観を有する包装製品が製造可能となる。熱収縮応力が大きすぎる場合は、包装機械でシール不良を起こしたり、内容物を充填した包装体をボイル、レトルト等の熱処理した際に、包装体の破れや曲がり(ケーシングが直線形にはならず馬蹄形になってしまう)が発生する恐れがある。熱収縮応力が小さい場合には熱収縮率がほとんどなくフィルムに皺が生じ、包装体の外観が悪くなる。
【0039】
優れた機械適性を維持しつつ、適度な熱収縮率を有し、低い熱収縮応力を実現する上で、MD/TDにおいて、それぞれ2乃至4倍、更に好ましくは2.5乃至4倍の延伸倍率を確保し、熱容量の大きいスチームあるいは温水によって60℃乃至98℃、特に65℃乃至95℃の低温熱処理をすることが極めて好ましい。より低い延伸倍率では、熱処理後に必要な熱収縮性が確保できず、またフィルムの偏肉も大きくなり、自動包装機適性やセンターシーム加工適性が得られにくい。他方、加熱空気などの熱容量の小さい媒体や、60℃未満のより低い熱処理温度を採用した場合には、必要な熱収縮応力の低減効果が得られにくく、自動包装機適性やセンターシーム加工適性が悪化したり、フィルムの寸法変化により商品価値がなくなりやすい。
【0040】
上述したポリアミド系多層フィルムの製造方法の延伸前あるいは後において、公知の方法により放射線照射することもできる。放射線照射により延伸性や耐熱性、機械的強度などが未照射のものに比べ改善される。本発明では、α線、β線、電子線、γ線など公知の放射線を使用することができる。照射前後での架橋効果の観点から、電子線やγ線が好ましく、中でも電子線が成形物を製造する上での取り扱い性や処理能力の高さなどの点で好都合である。
【0041】
前述の放射線の照射条件は、目的とする用途に応じて、適宜設定すればよく、一例をあげるならば、電子線の場合は、加速電圧が150乃至500キロボルトの範囲、照射線量が10乃至200キログレイ(kGy)の範囲が好ましく、また、γ線の場合は、線量率が0.05乃至3kGy/時間の範囲が好ましい。
【0042】
上述したポリアミド系多層フィルムの内表面あるいは外表面もしくは両表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、炎処理をおこなってもよい。
【0043】
かくして得られたポリアミド系多層フィルムは、通常、形成されるフィルムケーシングの寸法に応じた幅に切断してフラット状フィルムとしてから、その両側端部を両外層が接するように、例えば3〜40mm、好ましくは5〜25mmの幅で重ね合わせ、重ね合せ幅の一部をシールして、バックシーム加工することによりフィルムケーシングとされるか、あるいはバックシーム加工によるフィルムケーシング形成工程を包む自動包装プロセスに供される。重ね合せ幅が大きすぎる場合には、重ね合せ部のフィルムの熱収縮応力によって、包装体に曲がりが生じる場合がある。重ね合せ部が小さすぎる場合には、バックシーム加工時の作業性が悪くなりやすい。
【0044】
上記のようなポリアミド系多層フィルムからの本発明のフィルムケーシング形成プロセスを含む好適な包装例を以下にいくつか挙げる。
【0045】
ソーセージやチーズなどの包装に使われている自動充填包装機の例として呉羽化学工業株式会社製のKAPがある。これは、フラット状のフィルムをホーミング部で筒状にし、フィルムの外表面と内表面とを、高周波方式、超音波方式、ホットジェット方式など種々の方式により縦シールし、ペースト状の内容物を充填後、砲弾型の包装体の両端をクリップあるいはシールにより閉じるものである。通常は、その後、該包装体を熱水中に浸漬処理を行なうことで、フィルムが収縮し、内容物とフィルムをタイトフィットさせるものである。KAPに使用されるフラット状フィルムの幅は、通常、40乃至450mmの範囲である。他の自動充填包装機としては、ポリクリップ社製TSA、カートリッジパック社製自動チューブ包装機などがあげられる。
【0046】
バック(センター)シーム加工は、フラット状フィルムを筒状にし、フィルムのシール面同士を、好ましくはフィルムの外表面と内表面とを、種々のシール方式でシールした後、ロール状に巻き取るか、最終使用用途に必要とされる長さに切断するか、内容物詰め込みの作業性を容易にするために、シール後の管状フィルムを折りたたむかひだを取ることにより(シャーリング)、長さを短くしてもよい。このように加工されたバックシームされたケーシング(またはバッグ)は両端をクリップでとめるか、シールすることにより内容物を包装することができるようになる。一般的には、まず一方の端をクリップ止めあるいはシールしたのち、内容物を充填し、その後、もう一方の端をクリップ止めあるいはシールする方法で、内容物の充填をおこなう。内容物を充填した包装体は、通常、熱水中に一定時間(例えば1秒ないし7時間)浸漬し、内容物の殺菌、調理、包装フィルムの収縮をさせる。この熱水浸漬処理は、包装体そのままの状態で行なってもよいし、包装体をリテナーに入れてから行なってもよい。バックシームされたケーシングあるいはバッグは、シームレスケーシングやシームレスバッグに比べて幅ムラが少ないことが特徴である。特に径の小さいシームレスケーシングは、延伸加工が不安定になりやすいため、幅ムラが大きくなりやすい。バックシーム加工に用いられるフラット状フィルムの幅は40乃至450mmが一般的である。
【0047】
バックシームされたケーシングの折幅は、15〜160mmが好ましい。15mm未満では手作業ではできるものの、自動包装がフィルムの滑りなどで難しくなったり、重ね合せ部分の面積比率が大きくなり、包装体に曲がりが発生しやすくなる。また、160mmを超えると、例えばボイル、レトルト処理などの加熱処理後の包装体に皺が発生しやすくなる。この皺発生を抑制するため、熱収縮応力の大きなフィルムを用いて包装すると、バックシーム加工が行いにくく、また、ボイル処理、レトルト処理などの加熱処理中にシール部が破れ易くなることがある。
【0048】
バックシームは一般に0.1〜10mmのシール幅にわたって行なうことが可能であるが、本発明の場合、易開封性を付与したり、美麗な包装体外観を付与するために0.1〜1.5mmという極めて低減されたシール幅で行なわれることが好ましい。このように狭いシール幅におけるバックシームであっても、その後の加熱処理に際し、シール部の破壊(パンク)が起らず確実にシールされることが、本発明のフィルムケーシングの極めて好ましい特徴の一つである。自動包装機のシール方法としては間接高周波シール、超音波シール、ホットジェット(設定300−350℃程度の熱風)、ヒートシールなどがある。
【0049】
上述のようにしてバックシームを経て形成された本発明の多層フィルムケーシングは、必要に応じて内容物充填の容易化のためのシャーリング処理等の充填前後処理に付される。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本願明細書に記載した物性の測定法は、以下の通りである。
【0051】
<物性測定法>
1.熱水収縮率
フィルムの機械方向(縦方向、MD)および機械方向に垂直な方向(横方向、TD)に10cmの距離で印を付けたフィルム試料を、90℃に調整した熱水に10秒間浸漬した後、取り出し、直ちに常温の水で冷却した。その後、印をつけた距離を測定し、10cmからの減少値の原長10cmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験をおこない、縦方向および横方向のそれぞれについて平均値で熱水収縮率を表示した。
【0052】
2.乾熱収縮率の測定方法
厚み3mmのダンボール紙を網棚の上に敷いておいたギアーオーブン(株式会社ロバート製、MOG−600型)を120℃まで加熱しておく。その中にフィルムの機械方向(縦方向、MD)および機械方向に垂直な方向(横方向、TD)に10cmの距離で印をつけたフィルム試料を入れる。この時、ギアーオーブンの扉は試料を入れた後、即座に閉めるようにする。扉の空いている時間は3秒以内とする。扉を閉め、30秒間ギアーオーブン中に測定用試料を放置した後、取り出し自然冷却する。その後、印をつけた距離を測定し、10cmからの減少値の原長10cmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験を行い、縦方向および横方向のそれぞれについて平均値で乾熱収縮率を表示した。
【0053】
3.熱収縮応力
得られた多層フィルムから、その縦方向(MD)および横方向(TD)に沿って、それぞれ250mm長、15mm幅の2種の試料フィルム帯を得、23℃に保持したインストロン社製恒温槽(「3119シリーズ」)中に保持したインストロン社製万能試験機(「5565型」)に掴み具間200mmでセットし、次いで恒温槽を2℃/分の速度で昇温する。昇温に従い試料フィルムに生ずる熱収縮応力は増大し、ある温度(通常50〜120℃)を超えると次第に減少する。以下の実施例、比較例においては、昇温とともに変化する熱収縮応力値の、50℃の値を表示する。
【0054】
4.結晶融解温度の測定
Perkin Elmer社製 示差走査熱量計DSC−7を用いて、結晶融解温度の測定を行った。測定は、試料を30℃から240℃まで20℃/分の条件で昇温し、240℃で1分間保持したのち、20℃/分の条件で30℃まで降温し、30℃で1分間保持した。その後、再度、20℃/分の条件で240℃まで昇温した際の結晶融解カーブのピークの値を読み取り、結晶融解温度とした。
【0055】
<フィルム製造例>
次に実施例、比較例による熱収縮性多層フィルムの製造例について記載する。以下の製造例において使用した樹脂を、その略号とともに後記表1にまとめて記す。
【0056】
(実施例1)
図1に概略構成を示す装置を用い、層構成が、外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、VL−1(10)/M−PE(1.5)/NY−1(12)/EVOH(5)/M−PE(1.5)/VL−1(20)となるように、各樹脂を複数の押出機1でそれぞれ押し出しし、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。ダイ2出口から流出した溶融管状体3を水浴4中で、10〜18℃に急冷し、偏平幅148mmの管状体3aとした。次いで、該偏平管状体3aを87℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状の管状体フィルム3cとし15〜20℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.7倍、横方向(TD)に2.7倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルム3dを、2mの筒長を有する熱処理筒11中に導き、バブル形状の管状体フィルム3eとし、吹き出し口12より吹き出させたスチームにより70℃に加熱し、縦方向に5%弛緩、横方向に5%弛緩させながら2秒間熱処理し、二軸延伸フィルム(ポリアミド系多層フィルム)3fを製造した。得られた二軸延伸フィルムの偏平幅は362mmで厚さは49μmであった。
【0057】
得られた二軸延伸フィルムの層構成および製膜(二軸延伸)条件の概略を、他の実施例および比較例のそれとともにまとめて表2に記す。
【0058】
(実施例2〜9、比較例1〜3)
層構成および製膜(二軸延伸)条件を表2に記載の通り、また緩和、熱処理条件を、それぞれ表2に記載の通り変更する以外は、実施例1と同様に各種二軸延伸フィルムを得た。
【0059】
(比較例4)
東セロ製未延伸ポリプロピレン系フィルムCPP GHC(厚み20μm)を、ナイロン6フィルムとして三菱化学興人パックス(株)のボニールSC(厚み15μm)を用い、ドライラミネート法によりCPP//Ny6//CPPなる構成のラミネートフィルムを製造した。CPPとNy6間の接着剤層(//で表わす)の厚みは2μmとし、公知のポリエステル系接着剤を用いた。
【0060】
上記実施例および比較例で得られた各種二軸延伸フィルムをそれぞれ、上記物性測定ならびに下記性能評価試験に付した。結果をまとめて、後記表3に記す。
【0061】
<性能評価試験>
1.ソーセージの自動充填試験
製造したチューブ状フィルムを、85mm幅にスリットしたのち、呉羽化学工業株式会社製自動充填包装機KAP−500を用いて、シール方法はホットジェット方式(加熱空気をフィルムに吹き付ける方式)とし、空気の温度を260℃、吹きつけ空気圧を0.8kg/cm、フィルムの送り速度を10m/分、シール幅約1.3mmの条件で、バックシームしてケーシングを形成し、直ちにソーセージの充填を行う、ソーセージの自動充填試験を行った。
【0062】
シール後のフィルムケーシングの折幅(チューブ状フィルムを偏平にした状態での幅)は37mm、クリップ間距離は200mm、充填後の重量は約65gであった。
【0063】
該包装体を80℃の熱水中で60分間ボイル処理を行なった後、即座に5〜10℃の冷却水中で30分間冷却した。その後、十分に冷却された包装体を90℃の熱水中に5秒間浸漬、冷却を行なった。以下の基準に従って、冷却後の包装体の外観を評価した。
A:シール性に問題が無く連続して自動充填包装が可能であった。また、充填後の包装体に皺の発生が見られず、良好な外観を示した。
B:シール性に問題が無く連続して自動充填包装が可能であったが、充填後の包装体に皺の発生が見られ、包装体に商品価値がなかった。
C:ホットジェットシールを行なった際に、フィルムの収縮により、フォーミング部などに接触し、連続して自動充填包装を行なうことが不可能であった。
【0064】
2.バックシーム試験
製造したチューブ状フィルムを、145mm幅にスリットしたのち、呉羽化学工業株式会社製バックシーム機S−70号機(シール方式:高周波シール)を用いて、ショット数48ショット/分、フィルム送り速度14m/分、シール部電流230mAの条件で、シール幅約1.0mmのバックシームの機械適性試験を行なった。
バックシーム後のフィルムの折幅(チューブ状フィルムを偏平にした状態での幅)は65mmであった。
得られたバックシームされたケーシングに、ポークソーセージ原料を約5%の余裕率で(ケーシングの体積100に対して、内容物の体積が95になるように)、充填したのち両端を金属製クリップで止め、80℃の熱水中に60分間浸漬処理し、包装体を得た。以下の基準に従って、センターシーム加工性および包装体外観の評価を行なった。
A:連続したバックシーム加工が可能であり、バックシームされたケーシングの幅ムラが2mm以下であった。得られた包装体は皺がなく、美麗な外観を有していた。
B:連続したセンターシーム加工が可能であったが、バックシームされたケーシングの幅ムラが2mm以下であった。得られた包装体に皺が見られ、包装体に商品価値がなかった。
C:連続したバックシーム加工が不可能。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明によるフィルムケーシング用のポリアミド系多層フィルムの製造方法を実施するに適した装置系の概略図。
【符号の説明】
【0069】
1 押出機
2 環状ダイ
3 溶融管状体(3c:インフレーション中、3e:熱処理中)
6 温水浴
9 冷風エアリング
11 熱処理筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された少なくとも3種の熱可塑性樹脂を管状に共押出しして、ポリアミド系樹脂からなるガスバリア性中間層、ポリオレフィン系樹脂からなる両外層の少なくとも3層からなる管状体を形成し、次いで該管状体をその各層に占める主たる樹脂の融点以下に水冷却し、その後管状体の各層に占める主たる樹脂の融点以下の温度に再加熱し、管状体の内部に流体を入れながら管状体を垂直方向に引出しつつ垂直方向および円周方向に各2.5〜4倍に延伸して二軸延伸管状フィルムを形成し、これを折り畳み、次いで内部に流体を入れて再び形成した管状体の外表面層側から60〜98℃のスチームもしくは温水により熱処理し、冷却することにより、50℃における熱収縮応力が縦方向と横方向においてともに2MPa以下であり、90℃の熱水収縮率が5〜20%である二軸延伸管状体フィルムを形成し、更に該二軸延伸管状体フィルムをスリット後、両外層でバックシームすることを特徴とする延伸多層フィルムケーシングの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−90671(P2009−90671A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290745(P2008−290745)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願平10−223760の分割
【原出願日】平成10年7月24日(1998.7.24)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】