説明

延伸樹脂多孔膜の製造方法

【課題】ろ水処理膜、電池セパレータ等の分離膜等として有用な樹脂多孔膜について、機械的強度および空孔率の増大等を目的として行う延伸に際して、分離性能を支配する表層近傍の緻密層の空孔率の低下を防止し、高い透液性を維持した樹脂多孔膜を与える。
【解決手段】樹脂多孔膜を、その外表面から5μm以上、且つ膜厚さの1/2以下の深さまで選択的に湿潤液により湿潤させた状態で延伸することを特徴とする、延伸樹脂多孔膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密ろ過膜あるいは電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学素子用セパレータ等の分離多孔膜を初めとする各種用途に用いられる樹脂多孔膜であって、延伸により機械的強度、空孔率等を向上した延伸樹脂多孔膜、の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種樹脂製多孔膜、特に合成樹脂系多孔膜は、気体隔膜分離、気液分離、固液分離等の分離膜として、あるいは絶縁材、保温材、遮音材、断熱材などとして多方面に利用されている。これらの内、特に分離膜として使用される場合には分離機能に影響を与える以下の特性が要求される。まず、多孔質膜の分離効率を目的とする適度な空孔率を有すること、分離精度の向上を目的とした均一な孔径分布を有すること、加えて分離対象物に最適な孔径を有することが求められる。また、膜構成素材の性質としては、分離対象物の特性に対する耐薬品性、耐候性、耐熱性、強度等が要求される。さらに、多孔質膜使用時における機械的強度として充分な破断点伸度、破断点応力などが要求される。
【0003】
多孔膜材料樹脂としては、ポリオレフィン樹脂が多く用いられている(たとえば特許文献1および2)ほか、近年はより耐薬品性、耐候性、耐熱性に優れるフッ化ビニリデン系樹脂も広く用いられている(特許文献3〜10)。これら樹脂多孔膜の製造方法においては、その後半において、機械的強度あるいは空孔率の増大を目的とする延伸工程が含まれることが多い(例えば、特許文献1,2および7〜10)。
【0004】
延伸工程を含む樹脂多孔膜の製造方法には各種の態様があり、例えば、樹脂と孔形成剤との混合物を膜状に成形した後、この膜状成形体を、(a)孔形成剤を含んだ状態で延伸する(特許文献9)、(b)孔形成剤を抽出溶媒あるいは凝固溶媒で置換した後、溶媒を含んだ状態で延伸する(特許文献10)、(c)孔形成剤を抽出溶媒あるいは凝固溶媒で置換し、次いで溶媒を除去した後、乾燥状態で延伸する(特許文献7、8、9)、等の方法が提案されている。上記(a)および(b)の場合は、延伸に際して、膜状成形体が延伸方向以外の方向には比較的大なる寸法収縮を生じて概ね等積変形に近い延伸挙動を示すため、空孔率の増大効果が小さいのに対して、上記(c)の場合は、延伸に際して、膜状成形体が延伸方向以外の方向には比較的小なる寸法収縮を示して概ね膨張変形に近い延伸挙動を示すため、空孔率の増大効果が大きい。また上記(b)の場合には、その後の寸法安定化のために通常行われる緩和工程の熱入力が溶媒の気化熱により困難となる問題もある。一般には空孔率を増大させるために上記(c)の乾式延伸が有利である。しかしながら、本発明者らの研究によれば、この乾式延伸において、多孔膜全体の平均の空孔率は増大するものの、多孔膜の表層における空孔率が所望の程度に増大しないという不都合が見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭46−40119号公報
【特許文献2】特公昭50−2176号公報
【特許文献3】特開昭63−296940号公報
【特許文献4】特開平3−215535号公報
【特許文献5】WO99/47593A
【特許文献6】WO03/031038A
【特許文献7】WO2004/081109A
【特許文献8】WO2005/099879A
【特許文献9】特開2001−179062号公報
【特許文献10】特開2003−210954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した樹脂多孔膜の製造方法、特にその延伸工程、の改良を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等の研究によれば、特に乾式延伸において、既に形成された空孔を有する樹脂多孔膜に作用する延伸応力が、表層においては空孔の拡大につながらず、却って厚さ減少等を通じて空孔を縮小する方向の応力として作用することが判明した。このような表層空孔率の低下は、樹脂多孔膜を分離膜として用いる際の表層目詰まりあるいは膜全体としての透液性の低下の原因となり、極力抑制すべきである。本発明者等の更なる研究によれば、概ね乾式延伸の範疇に属するが、既に形成された樹脂多孔膜表層部を選択的に湿潤させた状態で延伸することにより、上述の問題に対する本質的な改善が得られることが見出された。すなわち、本発明の樹脂多孔膜の製造方法は、樹脂多孔膜を、その外表面から5μm以上、且つ膜厚さの1/2以下の深さまで選択的に湿潤液により湿潤させた状態で延伸することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例および比較例で得られた中空糸多孔膜の透水量を評価するために用いた装置の概略説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(樹脂多孔膜)
本発明の樹脂多孔膜の製造方法は、基本的に、既に形成された乾燥状態にある樹脂多孔膜に施す延伸工程を主たる特徴とし、その樹脂多孔膜の種類ならびに形成方法には、本質的な制約は受けない。多孔膜が、平膜であると、中空糸膜であるとに拘わらず適用可能である。又、多孔膜を形成する樹脂も、親水性樹脂と疎水性樹脂のいずれも可能であり、天然樹脂と合成樹脂のいずれも用いることができる。但し、分離膜として用いる際の被処理液が水性液である場合等の耐久性を考慮すれば、水に不溶な樹脂であることが好ましいであろう。このような水に不溶な樹脂の代表例として、ポリオレフィン系樹脂(例えば特許文献1および2)、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(例えば特許文献3〜10)、ポリ4フッ化エチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂(WO02/058828A1)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、酢酸セルロース樹脂(特開2003−311133号公報)、等が本発明でも好ましい樹脂材料として用いられる。
【0010】
中でも、耐薬品性、耐候性、耐熱性を兼ね備えたフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜への適用が最も好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、一般に、(A)フッ化ビニリデン系樹脂と、これと少なくとも上昇温度においては相溶性である有機液状体との混合物を冷却することにより、有機液状体とフッ化ビニリデン系樹脂との相分離を起こし、相分離した有機液状体を含むフッ化ビニリデン系樹脂の膜状成形体から有機液状体を抽出等により除去して多孔膜を得る方法(熱誘起相分離法;特許文献5〜9)、あるいは(B)前記フッ化ビニリデン系樹脂と有機液状体の混合物の膜状成形体を前記有機液状体と相溶性であるフッ化ビニリデン系樹脂の非溶媒と接触させ、非溶媒により前記有機液状体を置換しつつ有機液状体とフッ化ビニリデン系樹脂との相分離を起させて、非溶媒を含むフッ化ビニリデン系樹脂の膜状成形体を形成する方法(非溶媒誘起相分離法;特許文献3および10)、あるいは(C)フッ化ビニリデン系樹脂、これとは非相溶である有機液状体、無機微粉体との機械的混練物を膜状に成形した後、この膜状成形体から有機液状体および無機微粉体を抽出除去して多孔膜を得る方法(特許文献4)、により製造される場合が多いが、本発明法は上記方法のいずれを経て得られた多孔膜にも適用可能である。
【0011】
前述したように、本発明法は、平膜および中空糸膜のいずれにも形成可能であるが、一般に、ろ水処理においては、ろ過装置当りの膜面積を大きくすることが容易な中空糸膜として形成されることが好ましく、電池をはじめとする電気化学素子セパレータ用には平膜形状が好ましい。以下、主として中空糸形態を有するフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を熱誘起相分離法により形成し、それに、本発明の延伸法を適用する態様について、順次説明するが、当業者には、わずかな条件変更によって従来法に従って形成された平膜を含む各種形態および素材の樹脂多孔膜に適用可能であることは容易に理解できよう。
【0012】
(フッ化ビニリデン系樹脂)
主たる膜原料であるフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、すなわちポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体あるいはこれらの混合物で、重量平均分子量が60万〜120万、より好ましくは65万〜100万、特に好ましくは70万〜90万のものが好ましく用いられる。重量平均分子量が60万未満であると、高い空孔率を得るために有機液状体の割合を増加した場合に、粘度低下して膜状に成形することが難しくなり、120万超過であるとフッ化ビニリデン系樹脂と有機液状体を均一に混合するのに長い時間を要する。
【0013】
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニル等の一種又は二種以上を用いることができる。フッ化ビニリデン系樹脂は、構成単位としてフッ化ビニリデンを70モル%以上含有することが好ましい。
【0014】
多孔膜製造過程においてフッ化ビニリデン系樹脂と有機液状体との溶融混合物の膜状成形体を冷却することにより相分離を生じさせる方法(すなわち熱誘起相分離法)を用いる場合には、フッ化ビニリデン系樹脂の結晶化によって相分離が生じるため、結晶性の高いフッ化ビニリデン系樹脂を用いることで空孔率が高い多孔膜が得られる傾向にある。このため熱誘起相分離法ではフッ化ビニリデン100モル%からなる単独重合体を用いることが好ましい。
【0015】
熱誘起相分離法においては球晶の生成を抑制する目的で、重量平均分子量(Mw)が45万〜100万、好ましくは49万〜90万、さらに好ましくは、60万〜80万の中高分子量のマトリクス用フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF−I)25〜98重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%に対して、重量平均分子量(Mw)が中高分子量フッ化ビニリデン系樹脂の1.4倍以上、且つ150万以下、好ましくは140万以下、更に好ましくは130万以下、である超高分子量の結晶特性改質用フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF−II)2〜75重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%を添加することも好ましい。超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF−II)のMwが中高分子量樹脂(PVDF−I)のMwの1.4倍未満であると球晶の形成を十分には抑制し難く、一方、150万を超えるとマトリックス樹脂中に均一に分散させることが困難である。また、超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂の添加量が2重量%未満では球晶抑制効果が十分でなく、一方、75重量%を超えると、紡糸時のメルトフラクチャー発生により安定した膜形成が困難になる傾向がある。
【0016】
得られる多孔膜の性能の観点からは、多くの用途において、耐薬品性と機械的強度の高さからフッ化ビニリデン100モル%からなる単独重合体を用いることが好ましい。
【0017】
他方、得られる多孔膜の性能として柔軟性や伸縮性が求められる場合、あるいは電池セパレータ用途において過熱時に膜が軟化することによって自動的に孔が閉塞して電流を遮断する温度、すなわちシャットダウン温度を低下させたい場合には、共重合によってこれらの特性を調整することが可能であり、フッ化ビニリデン系樹脂として共重合体を用いることが好ましい。
【0018】
上記したような比較的高分子量のフッ化ビニリデン系樹脂は、好ましくは乳化重合あるいは懸濁重合、特に好ましくは懸濁重合により得ることができる。
【0019】
熱誘起相分離法による樹脂多孔膜の製造のためには、上記のフッ化ビニリデン系樹脂に、有機液状体を加えて膜形成用の原料組成物を形成する。
【0020】
(有機液状体)
フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、主として上記したフッ化ビニリデン系樹脂により形成されるが、その製造のためには、フッ化ビニリデン系樹脂に加えて、孔形成剤としての有機液状体を用いる。有機液状体としては、少なくとも上昇温度において、フッ化ビニリデン系樹脂と相溶性を有し、冷却によりあるいは非溶媒との接触により、フッ化ビニリデン系樹脂と相分離を起す任意の有機液状体(室温において固体であり、上昇温度において始めて液状化するものを含む)が用いられる。熱誘起相分離法による多孔膜の製造のためには上述したフッ化ビニリデン系樹脂に加えて、好ましくはその可塑剤からなる有機液状体を孔形成剤として用いる。このような有機液状体としては、フッ化ビニリデン系樹脂に対するモノメリック可塑剤およびポリメリック可塑剤が好ましく用いられ、溶融混練温度において、フッ化ビニリデン系樹脂と相溶性を有するとともに、下記(i)〜(iii)の特性を有するものが特に好ましく用いられる。これにより、全層空孔率(A0)を高く且つ冷却側表面に近接する緻密層の厚さを薄く空孔率(A1)を高く維持することが可能になる。
【0021】
(i)フッ化ビニリデン系樹脂との溶融混練物に、フッ化ビニリデン系樹脂単独の結晶化温度Tc(℃)より6℃以上低い、好ましくは9℃以上低い、更に好ましくは12℃以上低い、結晶化温度Tc′(℃)を与え、
(ii)その溶融混練物を冷却して固化した膜状成形体に、示差走査熱量計(DSC)で測定したときのフッ化ビニリデン系樹脂質量基準での結晶融解エンタルピーΔH’(J/g)として、5J/g以上、好ましくは10J/g以上、更に好ましくは25J/g以上、最も好ましくは50J/g以上を与え、且つ
(iii)JIS K7117−2(円すい−平板型回転粘度計使用)に準拠して温度25℃で測定した粘度が200mPa・s〜1000Pa・s、より好ましくは400mPa・s〜100Pa・s、更に好ましくは500mPa・s〜50Pa・s。
有機液状体の粘度が高いほど、形成される多孔膜中の空孔径が小さくなる傾向がある。
【0022】
上記の特性を有する有機液状体の好ましい例として、脂肪族二塩基酸とグリコールとからなる(ポリ)エステル、すなわちポリエステルまたはエステル(脂肪族二塩基酸のモノまたはジグリコールエステル)の少なくとも一方、好ましくは双方の末端を一価の芳香族カルボン酸で封止したポリエステル系可塑剤が用いられる。
【0023】
上記のポリエステル系可塑剤の中央部の(ポリ)エステルを構成する脂肪族二塩基酸成分としては、炭素数4〜12、特に6〜10の脂肪族二塩基酸が好ましい。このような脂肪族二塩基酸成分としては、例えばコハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、なかでも工業的な入手の容易性からアジピン酸が最も好ましい。これら脂肪族二塩基酸は、単独使用でも、二種以上を併用してもよい。
【0024】
上記のポリエステル系可塑剤の中央部の(ポリ)エステルを構成するグリコール成分としては、炭素数2〜18、特に3〜10のグリコール類が好ましく、例えば脂肪族二価アルコール、あるいはポリアルキレングリコール等が用いられる。これらグリコール類は、単独使用でも、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記のポリエステル系可塑剤は、その分子鎖末端が芳香族一価カルボン酸によって封止されていることが好ましい。芳香族一価カルボン酸は、2種以上を併用してもよいが、特に工業的な入手の容易性から安息香酸が好ましい。
【0026】
本発明においては、有機液状体全体として、上記特性を満たす限り、上記ポリエステル系可塑剤に加えて、モノメリック系可塑剤あるいは非水溶性の溶媒を併用することもできる。
【0027】
このような好ましい有機液状体の選択により、前記したような好ましい分子量特性を有するフッ化ビニリデン系樹脂への有機液状体の多量添加が可能になり、かつ溶融押出後の冷却により固化した成形物がフッ化ビニリデン樹脂相と有機液状体相に分離して、後の抽出工程において有機液状体相を除去した後に、全層空孔率および緻密層空孔率(測定法は後述)がともに高い多孔膜が得られる。
【0028】
(組成物)
熱誘起相分離法による多孔膜形成用の原料組成物は、フッ化ビニリデン系樹脂100容量部に対して、有機液状体を、少なくとも200容量部以上、より好ましくは300容量部以上、更に好ましくは400容量部以上、上限は1000容量部以下、より好ましくは700容量部以下、を混合して形成するのが良い。有機液状体として上記ポリエステル系可塑剤を用いる場合にも、これに加えて、原料組成物の溶融混練下での溶融粘度等を考慮して、必要に応じてモノメリックエステル系可塑剤、非水溶性の溶媒等を添加することができる。
【0029】
有機液状体量が少な過ぎると本発明の目的とする空孔率の上昇を得難くなり、多過ぎると溶融粘度が過度に低下し、中空糸の場合は糸つぶれが発生し易くなり、また得られる多孔膜の機械的強度が低下するおそれがある。
【0030】
有機液状体の添加量は、上記範囲内でフッ化ビニリデン系樹脂との溶融混練物のTc′が120〜140℃、より好ましくは125〜139℃、更に好ましくは130〜138℃になるように調整することが好ましい。
【0031】
(混合・溶融押出し)
一例として熱誘起相分離法により膜状成形体を形成する場合、バレル温度180〜250℃、好ましくは200〜240℃で溶融混練された溶融押出組成物は、一般に150〜270℃、好ましくは170〜240℃、の温度で、Tダイあるいは中空ノズルから押出されて膜状化される。従って、最終的に、上記温度範囲の均質組成物が得られる限りにおいて、フッ化ビニリデン系樹脂と、有機液状体の混合並びに溶融形態は任意である。このような組成物を得るための好ましい態様の一つによれば、二軸混練押出機が用いられ、(好ましくは主体樹脂と結晶特性改質用樹脂の混合物からなる)フッ化ビニリデン系樹脂は、該押出機の上流側から供給され、有機液状体が、下流で供給され、押出機を通過して吐出されるまでに均質混合物とされる。この二軸押出機は、その長手軸方向に沿って、複数のブロックに分けて独立の温度制御が可能であり、それぞれの部位の通過物の内容により適切な温度調節がなされる。
【0032】
(冷却)
熱誘起相分離法による場合、次いで溶融押出された中空糸膜状物を、フッ化ビニリデン系樹脂に対して不活性(すなわち非溶媒且つ非反応性)な液体(好ましくは水)からなり、熱誘起相分離を起すに十分に低い温度Tqの冷却浴中に導入して、好ましくはその外側面から優先的に冷却して固化成膜させる。平膜形成のためには、冷却液のシャワーの外、チルロールによる片側面からの冷却も用いられる。冷却温度Tqが低いほど、形成される空孔径が小さくなる傾向がある。
【0033】
(抽出)
冷却・固化された膜状物は、次いで抽出液浴中に導入され、有機液状体の抽出除去を受ける。抽出液としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解せず、可塑剤等を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばアルコール類ではメタノール、イソプロピルアルコールなど、ハロゲン化溶媒ではジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンなど、の沸点が30〜100℃程度の極性溶媒が適当である。長尺の中空糸膜の抽出は、これをボビンに巻き取って行うことが効率的である。
【0034】
なかでもハロゲン化溶媒は、フッ化ビニリデン系樹脂に対する膨潤性(下記の方法により測定した膨潤率が2〜20重量%、特に5〜10重量%のものが好ましい)が高く、有機液状体の抽出効果が大である。しかし、その膨潤性の故に、抽出等によりハロゲン化溶媒を含むフッ化ビニリデン系樹脂の膜状物をそのまま乾燥工程に移行すると、形成された空孔が収縮する傾向が見られる。この傾向は、孔径が小さい膜ほど顕著になる。従って、一旦、ハロゲン化溶媒抽出により形成された孔中にハロゲン化溶媒を含むフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を、好ましくはハロゲン化溶媒と相溶性を有し、フッ化ビニリデン系樹脂に対して膨潤性を有さない溶媒(下記方法により測定した膨潤率が1重量%未満のものが好ましい)からなるリンス液に浸漬する等によりハロゲン化溶媒を置換した後、乾燥することが好ましい。非膨潤性であり且つハロゲン化溶媒と相溶性を有する溶媒の具体例としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、ヘキサン等が挙げられる。なお、イソプロピルアルコールやエタノールのように水とも相溶性を有する溶媒を用いた場合には、引き続いて水等のフッ化ビニリデン系樹脂に対して非膨潤性であり且つ不燃性の溶媒に置換してから、乾燥あるいは熱処理を行うことも好ましい。
【0035】
<膨潤率測定>
フッ化ビニリデン系樹脂を温度230℃で5分間加熱プレスした後、温度20℃の冷却プレスで冷却固化して厚さ0.5mmのプレスシートを作製する。このプレスシートを50mm四方に裁断して試験片とする。この試験片の重量W1を測定した後、室温で溶媒に120時間浸漬する。その後に試験片を取り出して表面に付着した溶媒をろ紙で拭き取り、試験片の重量W2を測定する。下式により膨潤率(%)を測定する。
【0036】
膨潤率(%)=(W2−W1)/W1×100。
【0037】
(延伸)
一例として上記のようにして得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を含む、好ましくは空孔率が50%以上、より好ましくは60%以上、上限は90%以下の各種樹脂多孔膜については、一般に空孔率および孔径の増大並びに強伸度の改善を目的として延伸を行うが、本発明においては、延伸に先立って、樹脂多孔膜の外表面から一定の深さまで選択的に湿潤させ、この状態で延伸する(以下、「部分湿潤延伸」と称する)。これにより湿潤させた表層の空孔率(表面から深さ5μmまでの部分の空孔率を緻密層空孔率A1と称する)を増大させる。一般に分離膜として使用される樹脂多孔膜は厚さ方向に均一な空孔率分布を有するものではなく、表層に孔径の小さい緻密層が形成され、これが分離性能を支配する場合が多い。また、例えば熱誘起相分離法により形成された樹脂多孔膜はその傾向が強く、主たる二表面のうち直接冷却媒体と接触した一方の表面孔径が他方の表面孔径に比べて小さい傾斜多孔膜が得られる。本発明による部分湿潤延伸は、この緻密層空孔率A1を増大させ、良好な分離性と透液性の調和を与える上で極めて効果的である。
【0038】
より詳しくは、延伸に先立って多孔膜の外表面から5μm以上、好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上、かつ膜厚さの1/2以下、好ましくは1/3以下、更に好ましくは1/4以下の深さを選択的に湿潤させる。湿潤させる深さが5μm未満では緻密層空孔率A1の増大が十分でなく、1/2を超えると延伸後に乾熱緩和する場合に、湿潤液の乾燥が不均一になり、熱処理あるいは緩和処理が不均一になる恐れがある。
【0039】
上記部分湿潤延伸によると、何故、緻密層空孔率A1が向上するのか、その理由は明らかになっていないが本発明者らは次のように推定している。すなわち、長手方向に延伸する際に膜厚さ方向には圧縮応力が働くと考えられるが、外表面から一定の深さを湿潤することによって、(イ)加熱雰囲気中での熱伝達が改善され、特に緻密層の温度勾配が緩和されて膜厚さ方向への圧縮応力が低減すること、(ロ)空隙内に液体が充満した状態であるため、延伸によって膜厚さ方向への圧縮応力が働いても孔がつぶれにくくなること、が推定される。
【0040】
樹脂多孔膜の外表面から所定の深さのみを湿潤させる操作は、樹脂多孔膜の外表面に表面張力を調整した部分湿潤液を接液させることにより行うことが好ましい。部分湿潤液としては、樹脂多孔膜をぬらす溶媒あるいはその水溶液を使用することも可能であるが、延伸後の洗浄除去が容易、あるいは特別な除去操作が不要である点で界面活性剤水溶液(エマルジョン溶液も含む)が好ましい。
【0041】
部分湿潤液の表面張力は、ポリオレフィン系樹脂やフッ化ビニリデン系樹脂等の臨界表面張力γcが72mN/m未満(多くは60mN/m未満)である疎水性樹脂多孔膜の場合には、多孔膜の臨界表面張力γc(mN/m)(測定方法は後述する)に応じて、界面活性剤水溶液の表面張力を(γc−10)〜(γc+5)(mN/m)、好ましくは(γc−8)〜(γc+3)(mN/m)、の範囲で選択し、接液時間を5秒〜10000秒で制御することにより樹脂多孔膜の表面から所定の深さのみを界面活性剤水溶液で湿潤することが出来る。
【0042】
一方、酢酸セルロース系樹脂等の臨界表面張力γcが72mN/m以上である親水性樹脂多孔膜の場合には、界面活性剤水溶液の表面張力で湿潤深さを制御することは困難である。この場合は、添加する界面活性剤のHLB(親水性疎水性バランス)が3.5〜10の界面活性剤を選択し、接液時間を5秒〜600秒に制御することにより、樹脂多孔膜の表面から所定の深さのみを界面活性剤水溶液で湿潤することが出来る。このようにHLBを選択すると、界面活性剤水溶液中に分散するエマルジョン粒子径が膜の表面孔径と近接するため、エマルジョン粒子の目詰まり効果により湿潤深さが制御されると考えられる。
【0043】
なお、このようなエマルジョン粒子の目詰まり効果による湿潤深さの制御は、疎水性樹脂の場合にも利用することが出来る。ただし、疎水性樹脂の場合には、部分湿潤液の表面張力を低下させることとの兼ね合いでHLBは8〜20とすることが好ましい。
【0044】
疎水性樹脂と親水性樹脂のいずれも場合も、部分湿潤液の粘度に特に制約はないが、部分湿潤液の塗布方法に応じて、部分湿潤液を高粘度にすることにより浸透速度を適度に遅くすること、あるいは低粘度にして浸透速度を速くすることが可能である。また部分湿潤液の温度も、特に制約はないが、部分湿潤液の塗布方法に応じて、部分湿潤液を低温度にすることにより浸透速度を適度に遅くすること、あるいは高温度にして浸透速度を速くすることが可能である。このように部分湿潤液の粘度と温度は互いに逆方向に作用するものであり、部分湿潤液の浸透速度の調整のために補完的に制御することができる。
【0045】
たとえば浸透速度を抑制したい場合は、部分湿潤液の温度は好ましくは0〜25℃、より好ましくは3〜15℃、更に好ましくは5〜10℃が例示できる。
【0046】
一例として、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)からなる多孔膜(PVDFホモポリマーからなる多孔膜の臨界表面張力γcは35〜40mN/m)に外表面から一定の深さまでを選択的に湿潤させるためには、多孔膜の外表面にメタノール、エタノール等のフッ化ビニリデン系樹脂を濡らす溶媒あるいはその水溶液を塗布することも可能であるが、一定の深さまでを確実に湿潤させるためには、表面張力が25〜45mN/mである部分湿潤液の塗布(浸漬による場合を含む)が好ましい。表面張力が25mN/m未満であるとPVDF多孔膜への浸透速度が速すぎるため外表面に選択的に部分湿潤液を塗布することが難しい場合があり、表面張力が45mN/mを越えると外表面ではじかれてしまう(PVDF多孔膜への濡れ性あるいは浸透性が不十分である)ために外表面に均一に部分湿潤液を塗布することが難しい場合がある。特に部分湿潤液として、界面活性剤を水に添加して得られる界面活性剤水溶液(すなわち界面活性剤の水溶液ないしエマルジョン水溶液)の使用が好ましい。界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤では、脂肪族モノカルボン酸塩などのカルボン酸塩型、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸型、硫酸アルキル塩などの硫酸エステル型、リン酸アルキル塩などのリン酸エステル型;カチオン系界面活性剤では、アルキルアミン塩などのアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩型;非イオン系界面活性剤では、グリセリン脂肪酸エステルなどのエステル型、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのエーテル型、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのエステルエーテル型;両性界面活性剤では、N,N−ジメチル−N−アルキルアミノ酢酸ベタインなどのカルボキシベタイン型、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタインなどのグリシン型などが挙げられる。特に、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、最終的に多孔膜に残留しても衛生上問題のない部分湿潤液として好ましく使用される。
【0047】
界面活性剤はHLB(親水性親油性バランス)が8以上のものが好ましい。HLBが8未満であると、界面活性剤が水に細かく分散せず、結果的に均一な湿潤性改善が困難になる。特に好ましく用いられる界面活性剤として、HLBが8〜20、さらには10〜18の非イオン系界面活性剤あるいはイオン系(アニオン系、カチオン系および両性)界面活性剤が挙げられ、なかでも非イオン系界面活性剤が好ましい。
【0048】
多くの場合において、多孔膜外表面への部分湿潤液の塗布は、多孔膜のバッチ的あるいは連続的な浸漬によることが好ましい。この浸漬処理は、平膜に対しては両面塗布処理、中空糸膜に対しては片面塗布処理になる。平膜のバッチ浸漬処理は適当な大きさに裁断したものを重ねて浸漬することにより、中空糸膜のバッチ浸漬処理は、ボビン巻きあるいはカセ巻きにより束ねられた中空糸膜の浸漬により行われる。バッチ処理の場合、上記範囲内で比較的低いHLB、より具体的には8〜13のHLBを有する界面活性剤を用いて、比較的大きなエマルジョン粒子を形成することが好ましい。連続処理は、平膜の場合も、中空糸膜の場合も、長尺の多孔膜を連続的に処理液中に送通浸漬することにより行われる。平膜の片面のみに選択的に塗布する場合には、処理液の散布も好ましく用いられる。連続処理の場合、上記範囲内で比較的高いHLB、より具体的には8〜20、より好ましくは10〜18のHLBを有する界面活性剤を用いて、比較的小さなエマルジョン粒子を形成することが好ましい。
【0049】
部分湿潤させた樹脂多孔膜の延伸は、樹脂多孔膜に対し非湿潤性の雰囲気(あるいは媒体)中で行う。非湿潤性の雰囲気としては、室温付近で多孔膜の臨界表面張力γcより10mN/m以上大きな表面張力(JIS K6768)を有する非湿潤性の液体、あるいは空気を初めとするほぼすべての気体が用いられる。疎水性樹脂多孔膜(多くはγcが60mN/m未満)の場合には好ましくは水あるいは空気、より好ましくは水が用いられる。一方、親水性樹脂多孔膜である場合には、水は湿潤性であるため使用できないが、空気を初めとするほぼすべての気体が好ましく用いられる。
【0050】
延伸方法自体は、それぞれの樹脂の中空糸膜および平膜について、それぞれ公知の方法で実施すればよい。例えばフッ化ビニリデン系樹脂中空糸膜の延伸は、一般に、周速度の異なるローラ対等による中空糸膜の長手方向への一軸延伸として行うことが好ましい。延伸倍率は、1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上、上限は4倍以下が適当である。延伸倍率を過大にすると、中空糸膜の破断の傾向が大となる。延伸温度は25〜90℃、特に45〜80℃、が好ましい。延伸温度が低過ぎると延伸が不均一になり、中空糸膜の破断が生じ易くなる。他方、延伸温度が高過ぎると、延伸倍率を上げても空孔率の増大が得難い。平膜の場合には、一軸あるいは逐次又は同時の二軸延伸が可能であり、延伸倍率は、面積倍率として1.5〜20倍、好ましくは2.0〜10倍程度が適当である。延伸操作性の向上のために、予め80〜160℃、好ましくは100〜140℃の範囲の温度で1秒〜18000秒、好ましくは3秒〜3600秒、熱処理して、結晶化度を増大させ、それから本発明の部分湿潤延伸を適用することも好ましい。
【0051】
(熱処理)
上記のようにして得られた延伸多孔膜については、一般に緩和または定長条件下での熱処理を行い、延伸後の多孔膜の寸法安定性を向上することが好ましい。疎水性樹脂からなる延伸多孔膜の熱処理は、樹脂多孔膜に対する非湿潤性の雰囲気中、上昇温度、例えば 結晶性樹脂については50℃〜(融点Tm1−5℃)の範囲、非晶性樹脂、すなわち融点Tm1が検出されない樹脂については、50℃〜(ガラス転移温度−5℃)の範囲、で一段階または二段階の処理をすることが好ましい。例えばフッ化ビニリデン系樹脂等の疎水性樹脂に対する非湿潤性の雰囲気は、室温付近で当該疎水性樹脂の濡れ張力よりも大きな表面張力(JIS K6768)を有する非湿潤性の液体、代表的には水、あるいは空気をはじめとするほぼ全ての気体が用いられる。
【0052】
一例として、フッ化ビニリデン系樹脂についての緩和条件を述べると、中空糸のように一軸延伸された多孔膜の緩和処理は、周速が次第に低減する上流ローラと下流ローラの間に配置された上記した非湿潤性の好ましくは加熱された雰囲気中を、先に得られた延伸された多孔膜を送通することにより得られる。(1−(下流ローラ周速/上流ローラ周速))×100(%)で定まる緩和率は、合計で0%(定長熱処理)〜50%の範囲とすることが好ましく、特に1〜20%の範囲の緩和熱処理とすることが好ましい。20%を超える緩和率は、前工程での延伸倍率にもよるが、実現し難いか、あるいは実現しても延伸効果が飽和するか、あるいは却って低下するため好ましくない。平膜の場合の一軸または二軸緩和率は、面積緩和率として1〜30%程度が適当である。二段階処理をする場合、初段の定長または緩和熱処理温度は、50〜100℃、特に80〜100℃が好ましい。処理時間は、所望の熱固定効果、緩和率が得られる限り、短時間でも、長時間でもよい。一般には5秒〜1分程度であるが、この範囲内である必要はない。後段の定長または緩和熱処理温度は、80〜170℃、特に120〜160℃で、初段との合計で所望の緩和率が得られる程度が好ましい。
【0053】
(延伸多孔膜)
上記延伸(および熱処理)等の工程を経て得られる多孔膜は、樹脂によっても異なるが、好ましい態様によれば、小孔径側表面の平均孔径およびハーフドライ法平均孔径が、それぞれ好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.2μm以下(、下限は0.01μm)を維持した範囲内で、小孔径側表面に近接する緻密層の空孔率ならびに膜全体としての透液性を高く維持できるという特徴が与えられる。
【実施例】
【0054】
以下、熱誘起相分離法によるフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜に本発明の部分湿潤延伸工程を適用する実施例、比較例により、本発明の延伸樹脂多孔膜の製造方法を更に具体的に説明するが、本発明の範囲内でより多様な樹脂の平膜あるいは中空糸多孔膜の製造にも本発明の方法が適用可能であることは当業者に容易に理解可能であろう。以下の記載を含め、本明細書に記載の特性値は、以下の方法による測定値に基くものである。
【0055】
(結晶融点Tm1,Tm2および結晶化温度Tc、Tc′)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで一旦昇温し、ついで250℃で1分間保持した後、250℃から10℃/分の降温速度で30℃まで降温してDSC曲線を求めた。このDSC曲線における昇温過程における吸熱ピーク速度を融点Tm1(℃)とし、降温過程における発熱ピーク温度を結晶化温度Tc(℃)とした。引き続いて、温度30℃で1分間保持した後、再び30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温してDSC曲線を測定した。この再昇温DSC曲線における吸熱ピーク温度を本発明のフッ化ビニリデン系樹脂の結晶特性を規定する本来の樹脂融点Tm2(℃)とした。
【0056】
また膜原料としてのフッ化ビニリデン系樹脂と可塑剤等との混合物の結晶化温度Tc′(℃)とは、押出機で溶融混練した後、ノズルから押出され冷却固化された第1中間成形体の10mgを試料として上記と同様の昇降温サイクルにかけてDSC曲線を得、降温過程において検出した発熱ピーク温度をいう。
【0057】
(相溶性)
ポリエステル系可塑剤およびモノメリックエステル系可塑剤からなる有機液状体(以下、本項で単に「可塑剤」と称する)のフッ化ビニリデン系樹脂に対する相溶性は、次の方法により判定した:
フッ化ビニリデン系樹脂23.73gと、可塑剤46.27gとを、室温で混ぜ合わせてスラリー状混合物を得る。次に、東洋精機(株)製「ラボプラストミル」(ミキサータイプ:「R−60」)のバレルをフッ化ビニリデン系樹脂の融点より10℃以上高い(例えば約17〜37℃高い)所定の温度に調整しておいて,上記スラリー状混合物を投入して3分間予熱し、続いてミキサー回転数50rpmで溶融混練する。混練開始後、10分以内に清澄な(すなわち目視で濁りの原因となる分散物のない程度に透明な)溶融混練物が得られる場合には、その可塑剤はフッ化ビニリデン系樹脂に対して相溶性であると判定する。なお、溶融混練物の粘度が高い場合などには気泡の抱きこみにより白濁して見えることがあるので、そのときは、適宜、熱プレスするなどの方法により脱気して判定する。一旦、冷却固化した場合には、再度加熱して溶融状態にしてから清澄か否かを判定する。
【0058】
(重量平均分子量(Mw))
日本分光社製のGPC装置「GPC−900」を用い、カラムに昭和電工社製の「Shodex KD−806M」、プレカラムに「Shodex KD−G」、溶媒にNMPを使用し、温度40℃、流量10mL/分にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定した。
【0059】
(全層空孔率A2)
平膜および中空糸膜を含む多孔膜の見掛け体積V(cm)を算出し、更に多孔膜の重量W(g)を測定して次式より全層空孔率A2を求めた:
[数1]
全層空孔率A2(%)=(1−W/(V×ρ))×100
ρ:PVDFの比重(=1.78g/cm)。
【0060】
(平均孔径)
ASTM F316−86およびASTM E1294−89に準拠し、Porous Materials, Inc.社製「パームポロメータCFP−200AEX」を用いてハーフドライ法により平均孔径Pm(μm)を測定した。試液はパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いた。
【0061】
(最大孔径)
ASTM F316−86およびASTM E1294−89に準拠し、Porous Materials, Inc.社製「パームポロメータCFP−200AEX」を用いてバブルポイント法により最大孔径Pmax(μm)を測定した。試液はパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いた。
【0062】
(被処理水側表面孔径P1および透過水側表面孔径P2)
平膜または中空糸状の多孔膜試料について、被処理水側表面(中空糸においては外表面)の平均孔径P1および透過水側表面(中空糸においては内表面)の平均孔径P2を、SEM法により測定した(SEM平均孔径)。以下、中空糸多孔膜試料を例にとって、測定法を説明する。中空糸膜試料の外表面および内表面について、それぞれ観察倍率1万5千倍でSEM写真撮影を行う。次に、それぞれのSEM写真について、孔と認識できるすべてのものについて孔径を測定する。孔径は各孔の長径と短径を測定し、孔径=(長径+短径)/2として求める。測定した孔径の算術平均を求め、外表面平均孔径P1および内表面平均孔径P2とする。なお写真内に観察される孔数が多すぎる場合には、写真画像を4等分して、その1つの区域(1/4画面)について、上記の孔径測定を行うことで簡略化してもよい。本発明の中空糸膜の外表面について1/4画面で測定する場合には、測定孔数は概ね200〜300個となる。
【0063】
(緻密層空孔率)
平膜または中空糸状の多孔膜試料について、小孔径側表面(中空糸膜については外表面)に接する厚さ5μmの部分の空孔率A1(%)(以下、「緻密層空孔率A1」と称する)を含浸法により測定する。以下、中空糸多孔膜試料を例にとって、測定法を説明する。まず中空糸多孔膜試料を、長さL=約300mmに切り出し、加熱圧着もしくは接着剤により中空部の両端を封じ、重さW0(g)を測定する。次に、この両端を封じた中空糸膜試料を、染料(紀和化学工業(株)製「Cation Red」)0.05重量%と、脂肪酸グリセリンエステル(阪本薬品化学工業(株)製「MO−7S」;HLB値=12.9)約1.0重量%とを溶解したグリセリン(ライオン(株)製「精製グリセリンD」)からなる試験液に浸漬した後、取り出して表面の試験液をふき取り、再び重さW(mg)を測定する。ついで計量後の試料を剃刀で輪切りにし、光学顕微鏡(KEYENS社製「VQ−Z50」を使用して、試験液が含浸した部分(=染色部分)の厚さt(μm)を測定する。含浸厚さtは、試験液への浸漬時間および試験液中の脂肪族グリセリンエステル濃度を調整することで、t=5±1(μm)に調整する。上記試料の外径OD(mm)、長さL(mm)および含浸厚さt(μm)から試験液が含浸した試料の部分の体積V(ml)を、次式により算出する:
V=π×((OD/2)−(OD/2−t/1000))×L/1000
浸漬前の試料の重さW0(g)と浸漬後の試料の重さW(g)の差から次式により含浸した試験液の体積VL(ml)を算出する:
VL=(W−W0)/(ρs×1000)
ここでρsは試験液の比重であり、1.261(g/ml)とする。
【0064】
次式により、緻密層空孔率A1(%)を算出する。
【0065】
A1=VL/V×100。
【0066】
(透水量)
試長L(図1参照)=200mmの試料中空糸多孔膜をエタノールに15分間浸漬し、次いで純水に15分間浸漬して湿潤化した後、水温25℃、差圧100kPaで測定した1日当りの透水量(m/day)を、中空糸多孔膜の膜面積(m)(=外径×π×試長Lとして計算)で除して得た。測定値は、F(100kPa,L=200mm)と表記し、単位はm/day(=m/m・day)で表わす。
【0067】
(表面張力)
デュヌイ表面張力試験器を用いてJIS−K3362に従って輪環法により、温度25℃での湿潤処理液の表面張力を測定した。
【0068】
(臨界表面張力)
水とエタノールの比率を変えて混合し、表面張力の異なる水溶液を用意した。エタノール濃度と表面張力の関係は化学工学便覧(丸善株式会社、改定第5版)の記載を参照した。前記透水量の測定において、エタノールによる多孔膜の湿潤に代えて、上記水溶液を使用して、純水透水量F’(m/day)(=m/m/day)を測定した。エタノール単独を用いて湿潤して測定した純水透水量Fとの比F’/Fが0.9以上となる最大の表面張力を、多孔膜の臨界表面張力と定義する。因みに、後記実施例1〜5で形成したフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の臨界表面張力γcは38mN/mと測定された。
【0069】
(引っ張り試験)
引っ張り試験機(東洋ボールドウィン社製「RTM−100」)を使用して、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で初期試料長100mm、クロスヘッド速度200mm/分の条件下で測定した。
【0070】
(実施例1)
重量平均分子量(Mw)が4.9×10のマトリクス用ポリフッ化ビニリデン(PVDF−I)(粉体)とMwが9.7×10の結晶特性改質用ポリフッ化ビニリデン(PVDF−II)(粉体)を、それぞれ75重量%および25重量%となる割合で、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、Mwが6.1×10であるPVDF混合物を得た。
【0071】
有機液状体として、ポリエステル系可塑剤(末端をイソノニルアルコールで封止したアジピン酸と1,2−ブタンジオールのポリエステル;株式会社ジェイ・プラス製「D623N」、数平均分子量約1800、JIS K7117−2(円すい−平板型回転粘度計)による25℃での測定粘度3000mPa・s、比重1.090g/ml)と、モノメリックエステル系可塑剤であるアジピン酸ジイソノニル(株式会社ジェイ・プラス製「DINA」)とを、88重量%/12重量%の割合で、常温にて攪拌混合した可塑剤混合物を用いた。
【0072】
同方向回転噛み合い型二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」、スクリュー直径26mm、L/D=60)を使用し、粉体供給部から混合物Aを供給し、バレル温度220℃で溶融混練して、続いて押出機シリンダの粉体供給部より下流に設けられた液体供給部から可塑剤を、混合物A/可塑剤=27.9重量%/72.1重量%の割合で供給して、バレル温度220℃で混練し、混合物を外径6mm、内径4mmの円形スリットを有するノズル(190℃)から中空糸状に押し出した。この際、ノズル中心部に設けた通気口から空気を中空糸の空洞部に注入して内径を調節した。
【0073】
押し出された混合物を溶融状態のまま、温度45℃に維持されかつノズルから280mm離れた位置に水面を有する(すなわちエアギャップが280mmの)温度Tq=45℃の水冷却浴中に導き冷却固化させ(冷却浴中の滞留時間:約6秒)、3.8m/分の引取速度で引き取った後、これをボビンに長さ500m巻き取って、外径1.80mm、内径1.20mmの第1中間成形体を得た。
【0074】
次に、この第1中間成形体をボビンに巻いた状態で、ジクロロメタン中に室温で30分間浸漬して可塑剤を抽出した。この際ジクロロメタンが糸に満遍なく行き渡るようにボビンを回転させながら抽出を行った。次いでジクロロメタンを新しいものに取り替えて再び同条件にて抽出する操作を繰り返し、合計3回の抽出を行った。
【0075】
次に、ジクロロメタンを含有した第1中間成形体を実質的に乾燥させることなく(すなわち目視で第1中間成形体に白化が認められることなく)、イソプロピルアルコール(IPA)に室温で30分間浸漬して第1中間成形体に含浸したジクロロメタンをIPAに置換した。この際IPAが糸に満遍なく行き渡るようにボビンを回転させながら置換を行った。次いでIPAを新しいものに取り替えて再び同条件にて置換する操作を繰り返し、合計2回の置換を行った。
【0076】
次に室温で24時間風乾してIPAを除去し、続いて温度120℃のオーブン中で1時間加熱してIPAを除去するとともに熱処理を行い、第2中間成形体を得た。この際、ボビンの直径が自由に収縮するようにして、糸の収縮を拘束することなく乾燥と、熱処理を行った。
【0077】
次にこの第2中間成形体をボビンに巻いた状態で、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスター ML−310」、HLB=1
0.3)を濃度0.05重量%で純水に溶解したエマルジョン水溶液(表面張力=32.4mN/m)に常温で30分間浸漬して部分湿潤を行った。
【0078】
更にボビンをエマルジョン水溶液に浸漬したまま、ボビンを回転しつつ第2中間成形体を引き出し、第1のロール速度を20.0m/分にして、60℃の水浴中を通過させ、第2のロール速度を35.0m/分にすることで長手方向に1.75倍に延伸した。次いで温度90℃に制御した温水浴中を通過させ第1段緩和率を8%で緩和を行い、さらに空間温度140℃に制御した乾熱槽を通過させ第2段緩和率を1.5%で緩和を行った。これを巻き取ってフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0079】
(実施例2)
溶融押出後の冷却水浴温度Tqを30℃に変更したこと;延伸倍率を1.85倍に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を得た。
【0080】
(実施例3)
有機液状体として、ポリエステル系可塑剤(末端を安息香酸で封止した二塩基酸とグリコールとのポリエステル;株式会社DIC製「W−83」、数平均分子量約500、JIS K7117−2(円すい−平板型回転粘度計)による25℃での測定粘度750mPa・s、比重1.155g/ml)を用いたこと;フッ化ビニリデン系樹脂/可塑剤=26.9重量%/73.1重量%の割合で供給したこと;溶融押出後の冷却水浴温度Tqを50℃に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を得た。
【0081】
(実施例4)
有機液状体として、モノメリックエステル可塑剤であるアルキレングリコールジベンゾエート(株式会社DIC製「PB−10」、数平均分子量約300、JIS K7117−2(円すい−平板型回転粘度計)による25℃での測定粘度81mPa・s、比重1.147g/ml)を用いたこと;フッ化ビニリデン系樹脂/可塑剤=26.9重量%/73.1重量%の割合で供給したこと;溶融押出後の冷却水浴温度Tqを60℃に変更したこと第2段緩和率を1.5%に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を得た。
【0082】
(実施例5)
本質的に特許文献4に開示される方法に従って未延伸のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を得て、次いでこの未延伸糸を部分湿潤した後に延伸を行った。
【0083】
すなわち、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製「アエロジルR−972」、一次粒子の平均径16ナノメートル、比表面積110m/g)14.8容量%、フタル酸ジオクチル(DOP)48.5容量%、フタル酸ジブチル(DBP)4.4容量%を、ヘンシェルミキサーで混合し、これに重量平均分子量(Mw)が2.4×10のポリフッ化ビニリデン(粉体)32.3容量%を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合した。
【0084】
この混合物を同方向回転噛み合い型二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」、スクリュー直径26mm、L/D=60)に供給して、バレル温度240℃で混練し、混合物を外径6mm、内径4mmの円形スリットを有するノズル(温度240℃)から中空糸状に押し出した。この際、ノズル中心部に設けた通気口から空気を中空糸の空洞部に注入して内径を調節した。
【0085】
押し出された混合物を溶融状態のまま、温度70℃に維持されかつノズルから140mm離れた位置に水面を有する(すなわちエアギャップが140mmの)温度Tq=70℃の水冷却浴中に導き冷却固化させ(冷却浴中の滞留時間:約9秒)、2.5m/分の引取速度で引き取って、外径2.87mm、内径1.90mmの第1中間成形体を得た。
【0086】
次に、この第1中間成形体をジクロロメタン中に室温で30分間浸漬して可塑剤を抽出した。次いでジクロロメタンを新しいものに取り替えて再び同条件にて抽出する操作を繰り返し、合計4回の抽出を行った。次に温度30℃の真空乾燥機で24時間乾燥してジクロロメタンを除去した。
【0087】
次に、50%エタノール水溶液に30分間浸漬し、更に純水に30分間浸漬して、中空糸を湿潤した。更に70℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬して疎水性シリカを除去した後、水洗して水酸化ナトリウムを除去し、温度30℃の真空乾燥機で24時間乾燥して第2中間成形体を得た。なお、抽出から乾燥まで一連の操作の間、中空糸の両端は固定しないで自由に収縮するようにして行った。
【0088】
次に、この第2中間成形体の両端部を目止めした後、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスター ML−310」、HLB=10.3)を濃度0.05重量%で純水に溶解したエマルジョン水溶液(表面張力=32.4mN/m)に常温で60分間浸漬して部分湿潤を行った。次いで室温雰囲気下で長手方向に1.5倍に手で延伸した後、長さを固定した状態で温度140℃の熱風オーブン中で5分間熱処理を行ってフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0089】
(比較例1)
延伸に先立って部分湿潤を行わなかった以外は実施例1と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0090】
(比較例2)
延伸に先立って部分湿潤を行わなかった以外は実施例2と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0091】
(比較例3)
部分湿潤液としてアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムを濃度0.05重量%で純水に溶解した水溶液(表面張力=28.9mN/m)を用いた以外は実施例2と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0092】
(比較例4)
延伸に先立って部分湿潤を行わなかった以外は実施例3と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0093】
(比較例5)
延伸に先立って部分湿潤を行わなかった以外は実施例4と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0094】
(比較例6)
延伸に先立って部分湿潤を行わなかった以外は実施例5と同様にしてフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を得た。
【0095】
上記実施例および比較例の製造条件の概容および得られたポリフッ化ビニリデン系中空糸多孔膜の物性を、まとめて下記表1〜2に記す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0098】
上記表1〜2に示す実施例および比較例の結果を対比すれば理解されるように、本発明の方法によれば、一旦形成された樹脂多孔膜について、表層近傍を選択的に部分湿潤してから延伸することにより、延伸中での表層近傍での空孔率の低下を防止し、結果的に分離性能を支配する表層近傍の緻密層の空孔率A1を高く且つ膜全体としての透液性を高く維持した樹脂多孔膜が得られる。特に、この結果は、分離性能を支配する小孔径側表面孔径P1が1μm程度と比較的大きい場合(実施例5、比較例6)に比べて、小孔径側表面孔径P1が0.2μm以下と小さい場合(実施例1〜4、比較例1〜5)において、特に顕著に認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂多孔膜を、その外表面から5μm以上、且つ膜厚さの1/2以下の深さまで選択的に湿潤液により湿潤させた状態で延伸することを特徴とする、延伸樹脂多孔膜の製造方法。
【請求項2】
外表面から7μm以上、且つ膜厚さの1/2以下の深さまで選択的に湿潤させた状態で延伸する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
空孔率が50%以上である樹脂多孔膜を延伸する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂多孔膜が、その主たる二表面の孔径が異なる非対称構造膜であって、孔径が小さい側の表面のみを湿潤させる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
延伸倍率が1.5倍以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂多孔膜が疎水性樹脂からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
樹脂多孔膜がフッ化ビニリデン系樹脂からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
湿潤液が水溶液である、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
湿潤液が界面活性剤水溶液である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
湿潤液がポリグリセリン脂肪酸エステルの水溶液である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
延伸後の樹脂多孔膜の孔径が小さい側の表面孔径が0.5μm以下である請求項1〜0のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
延伸後の樹脂多孔膜のハーフドライ法平均孔径が0.5μm以下である請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
延伸温度が25〜90℃である、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
延伸後に樹脂多孔膜を湿潤させない液体または気体中での緩和工程を含む請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−12242(P2011−12242A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237025(P2009−237025)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】