延伸試験装置および延伸試験方法
【課題】延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、延伸機により連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを得ることができる延伸試験装置を提供すること。
【解決手段】一端部が始点となり、他端部が終点となる第1のレール11と、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる他端部が第1のレールの終点側にある第2のレール12と、第1のレールに沿って始点から終点に向かって走行する第1のクリップ16の一群17と、第2のレールに沿って始点から終点に向かって走行する第2のクリップ18の一群19と、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を走行させる駆動装置20とを備えた延伸試験装置。
【解決手段】一端部が始点となり、他端部が終点となる第1のレール11と、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる他端部が第1のレールの終点側にある第2のレール12と、第1のレールに沿って始点から終点に向かって走行する第1のクリップ16の一群17と、第2のレールに沿って始点から終点に向かって走行する第2のクリップ18の一群19と、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を走行させる駆動装置20とを備えた延伸試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸試験装置および延伸試験方法に係り、特に、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験装置,および、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用や基材用のフィルムを連続して生産する装置として、二軸延伸フィルム製造装置が知られている。二軸延伸フィルム製造装置の延伸工程には、フィルムの原料や用途に応じて、種々の形式の延伸機が採用されている。
【0003】
特許文献1には、原反シートを縦延伸機で流れ方向に延伸した後に、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、チェーンを介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸する横延伸機が開示されている。
特許文献2には、延伸前のシート・フィルムを、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、リンク部材を介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸するとともに、リンク部材の開閉により隣り合うクリップの間隔を変化させて、流れ方向にも延伸するリンク式同時二軸延伸機が開示されている。
そして、特許文献3には、等長リンク装置を備えた延伸機のレールの屈曲部において、掴み装置の掴みピッチに変化が生じることが開示されている。
特許文献4には、延伸前のフィルムを、レールで形成される一対の無端状の軌道を、リニアモータで駆動する複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸するとともに、隣り合うクリップの間隔を変化させて、流れ方向にも延伸するリニア式同時二軸延伸機が開示されている。
【0004】
また、光学フィルム等の機能性フィルムの製造に対応するため、様々な延伸方法および延伸機が開発されている。
特許文献5には、レールで形成される一対の無端状の軌道に対し、一方の軌道と他方の軌道の距離を変えて、フィルムまたはシートを斜めに延伸する方法が開示されている。
特許文献6には、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道に対し、一方の軌道を走行するクリップと他方の軌道を走行するクリップのピッチが拡大を開始する位置に差を与え、シート・フィルムを斜めに延伸する方法およびシート・フィルムを斜めに延伸する装置が開示されている。
【0005】
上述した種々の延伸機および延伸方法を採用した二軸延伸フィルム製造装置を用いてフィルムを連続生産するに当たっては、所望の物性を有したフィルムが生産されることを事前確認するために、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片を延伸試験装置により延伸し、得られたフィルムサンプルにて物性評価が行われる。
特許文献7には、引っ張り試験機で延伸前のフィルム片を一軸方向に引っ張り、延伸サンプルを得たことが開示されている。
特許文献8には、シート状試料を、パンタグラフ機構を構成するリンクを用いて二軸に延伸する二軸延伸試験機が開示されている。
特許文献9には、リンク装置と、縦延伸手段と、横延伸手段とを具備し、縦延伸手段と横延伸手段の変化時間を制御する制御手段を設けたシート状物の延伸用試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−249934号公報
【特許文献2】特開2008−44339号公報
【特許文献3】特開2004−122640号公報
【特許文献4】特開2002−103445号公報
【特許文献5】特開平2−113920号公報
【特許文献6】特開2008−23775号公報
【特許文献7】特開2009−258571号公報
【特許文献8】特開昭61−112628号公報
【特許文献9】特開2004−148694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献7〜9で開示された延伸試験装置で延伸されたフィルムサンプルの物性評価を基に、特許文献1〜6の延伸機および延伸方法を採用した二軸延伸フィルム製造装置でフィルムを連続生産する場合、延伸試験装置と延伸機との構造の相違や延伸時の挙動の相違により、フィルムサンプルと同等の物性を有するフィルムが得られない場合がある。
【0008】
特許文献7に開示された引っ張り試験機および特許文献8に開示された二軸延伸試験機は、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片が静止した状態で延伸しているので、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うことができない。
【0009】
特許文献9に開示された延伸用試験装置は、リンク装置の等長リンクを開き、末広がり状に配置された一対のレールの一端部から他端部に向かって掴み装置が延びることにより、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を実現しようとするものである。この延伸用試験装置では、先端の掴み装置のみが他端部に到達し、それに把持されたシート状物の先端のみが延伸完了となるが、シート状物の先端は切り口となっており連続していないことから、延伸機でのフィルムの連続生産状態と同等の延伸試験を行っているとは言い難い。
また、延伸機のレールの屈曲部では、特許文献3で開示されているように、隣り合うクリップとの間隔に変化が生じるが、特許文献9に開示された延伸用試験装置には、この屈曲部での挙動は考慮されていない。さらに、特許文献5および特許文献6に開示されたフィルムまたはシートを斜めに延伸する方法についての延伸試験を実施することができない。
【0010】
本発明の目的は、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、延伸機により連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを、連続生産以前に得ることができる延伸試験装置および延伸試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の延伸試験装置は、長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールと、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が第1のレールの終点側にある第2のレールと、第1のレールに沿って、第1のレールの始点から終点に向かって走行する第1のクリップの一群と、第2のレールに沿って、第2のレールの始点から終点に向かって走行する第2のクリップの一群と、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を走行させる駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の延伸試験方法は、長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールに沿って走行する第1のクリップの一群に試験片の一方の縁を把持させ、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が第1のレールの終点側にある 第2のレールに沿って走行する第2のクリップの一群に試験片の他方の縁を把持させ、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を、それぞれ、第1のレールおよび第2のレールの始点から終点に向けて走行させることを特徴とする。
【0013】
このような本発明では、試験片を把持した第1のクリップの一群および第2のクリップの一群が、それぞれ、第1のレールおよび第2のレールの始点から終点に向かって走行するので、延伸試験条件に基づき始点と終点の間に設定された延伸区間を通過して、試験片全体に延伸が施されたサンプルフィルムを得ることができる。少なくとも試験片の中央部は連続しているので、得られたサンプルフィルムは二軸延伸フィルム製造装置の延伸機で連続生産されるフィルムと同等の物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の延伸試験装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、原反シートまたは原反フィルムを二方向に同時に延伸するリンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを得ることを主目的とした本発明に基づく延伸試験装置10が示されている。なお、図1においては、紙面に対して上下の方向を流れ方向とし、上を流れ方向上流、下を流れ方向下流とする。また、紙面に対して左右の方向を幅方向とする。
【0016】
延伸試験装置10は、対となる第1のレール11および第2のレール12と、第1のレール11に案内される第1の支持装置13および第2のレール12に案内される第2の支持装置14と、試験片15の一方の縁を把持する複数の第1のクリップ16が第1の支持装置13に取り付けられることにより形成された第1のクリップの一群17と、試験片15の他方の縁を把持する複数の第2のクリップ18が第2の支持装置14に取り付けられることにより形成された第2のクリップの一群19と、第1の支持装置13を駆動することにより、第1のクリップの一群17を第1のレール11に沿って走行させる第1の駆動装置20と、第2の支持装置14を駆動することにより、第2のクリップの一群19を第2のレール12に沿って走行させる第2の駆動装置21と、試験片15を加熱する加熱装置22を備えている。
【0017】
第1のレール11は、長手方向の一端部を始点S1、他端部を終点E1とし、始点S1が流れ方向上流側となり、終点E1が流れ方向下流側となるように配置されている。
第2のレール12は、長手方向の一端部を始点S2、他端部を終点E2とし、第1のレール11と同様に、始点S2が流れ方向上流側となり、終点E2が流れ方向下流側となるように配置されている。
第1のレール11および第2のレール12は、それぞれ流れ方向および幅方向へ移動可能に構成されており、さらに、それら自身の長手方向の輪郭も変形可能に構成されている。
第1のレール11と第2のレール12との間は、試験片15の延伸試験条件に基づき、所定の間隔Dpとなるように移動および長手方向の輪郭が変形される。
なお、第1のレール11および第2のレール12の詳細な構造については、後に説明する。
【0018】
本実施形態においては、試験片15の延伸試験条件に基づき、第1のレール11と第2のレール12が流れ方向中心線CLに対して対象に配置され、始点S1および始点S2と終点E1および終点E2の間に、流れ方向上流側から順に、間隔Dpが一定である予熱区間Aと、間隔Dpが下流側に向けて拡大する延伸区間Bと、間隔Dpが予熱区間Aよりも広く、かつ一定である熱処理区間Cが設けられている。そして、予熱区間A,延伸区間B,熱処理区間Cはそれぞれオーブン式の加熱装置22a,22b,22cで覆われている。
ここで、予熱区間Aは、試験片15を予熱する区間であり、延伸区間Bは、間隔Dpを拡大することにより第1のクリップの一群17と第2のクリップの一群19との間隔を拡大し、両側縁を把持された試験片15を幅方向に延伸する区間であり、熱処理区間Cは、試験片15を延伸することにより形成されたフィルムサンプル23の物性を安定させる区間である。
上述のように、第1のレール11と第2のレール12との間隔Dpは、試験片15の延伸試験条件に基づき、流れ方向の各位置ごとに定められる。
【0019】
第1の支持装置13は、2つのリンクを一つの関節で開閉自在に接続した第1のリンク機構24が回動自在に複数連結されることにより構成されている。第1のリンク機構24のリンク開閉側には、第1のレール11に案内されて転動するベアリングが設けられ、リンクの関節側には、第1のレール11に対して間隔L1pを開けて配置された第1のピッチ調節レール25に案内されて転動するベアリングが設けられている。複数の第1のクリップ14は、第1のリンク機構24と対となって、リンク開閉側に取り付けられる。したがって、第1のレール11と第1のピッチ調節レール25との間隔L1pが変化すると、それに対応して、第1のリンク機構24の開閉状態が変化し、隣り合う第1のクリップ14との間隔、すなわちクリップピッチが変化する。
【0020】
第2の支持装置14は、第1の支持装置13と同様に、2つのリンクを一つの関節で開閉自在に接続した第2のリンク機構26が回動自在に複数連結されることにより、構成されている。第2のリンク機構26のリンク開閉側には、第2のレール12に案内されて転動するベアリングが設けられ、リンクの関節側には、第2のレール12に対して間隔L2pを開けて配置された第2のピッチ調節レール27に案内されて転動するベアリングが設けられている。複数の第2のクリップ18は、第2のリンク機構26と対となって、リンク開閉側に取り付けられる。したがって、第2のレール12と第2のピッチ調節レール27との間隔L2pが変化すると、それに対応して、第2のリンク機構26の開閉状態が変化し、隣り合う第2のクリップ18との間隔、すなわちクリップピッチが変化する。
【0021】
第1のレール11および第2のレール12は、試験片15の延伸試験条件に基づく長手方向の輪郭を形成するために、直線状のレール部材28が取り付けられたレール台29を、それぞれ、第1のレールベース30および第2のレールベース31上に複数配列して固定し、レール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。第1のレールベース30および第2のレールベース31はベース33に載置され、第1のレール11と第2のレール12との間が所定の間隔Dpとなるように固定される。
【0022】
第1のピッチ調節レール25は、第2のレール12とは反対の側に、第1のレール11に対して所定の間隔L1pを開けてレール台29に配置されたレール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。第2のピッチ調節レール27も同様に、第1のレール11とは反対の側に、第2のレール12に対して所定の間隔L2pを開けてレール台29に配置されたレール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。したがって、第1の支持装置13および第2の支持装置14を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に配置した際に、第1のクリップ16および第2のクリップ18は中心線CLに向き、対向するように配置される。
【0023】
本実施形態においては、間隔L1pおよび間隔L2pが縮小すると、第1のリンク機構24およびが第2のリンク機構26が開いてクリップピッチが拡大し、把持された試験片15はクリップピッチが拡大する方向に延伸される。
間隔L1pおよび間隔L2pは、試験片15の延伸試験条件に基づき、流れ方向の各位置ごとに定められる。本実施形態では、試験片15が幅方向および流れ方向に同時に延伸されるように、延伸区間Bにおいて、間隔L1pおよび間隔L2pが下流側に向けて縮小するように設定されている。
【0024】
第1の駆動装置20は、一端が第1の支持装置13に接続されたワイヤー34と、ワイヤー34を巻き取るドラム35と、ドラム35を回転するモータ36を備え、ドラム35とモータ36は第1のレールベース30の下流側に配置されている。第1の駆動装置20で始点E1にある第1の支持装置13を終点S1まで牽引することにより、第1の支持装置13は第1のレール11と第1のピッチ調整レール25に案内されて走行し、第1のクリップの一群16が第1のレール11に沿って走行する。
第2の駆動装置21も同様に、一端が第2の支持装置14に接続されたワイヤー34と、ワイヤー34を巻き取るドラム35と、ドラム35を回転するモータ36を備え、ドラム35とモータ36は第2のレールベース31の下流側に配置されている。第2の駆動装置21で始点S2にある第2の支持装置14を終点E2まで牽引することにより、第2の支持装置14は第2のレール12と第2のピッチ調整レール26に案内されて走行し、第2のクリップの一群18が第2のレール12に沿って走行する。
【0025】
このような本実施形態においては、原反シートまたは原反フィルムを二方向に同時に延伸するリンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、リンク式同時二軸延伸機により連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを得ることを主目的として、次の手順で、延伸試験装置10による試験片15の延伸試験を行う。
【0026】
試験片15の流れ方向の延伸倍率や幅方向の延伸倍率などの延伸試験条件を基に、第1のレール11と第2のレール12を移動および輪郭の変形をし、間隔Dpを開けて中心線CLに対して対象に配置するとともに、第1のレール11に対して間隔L1pを開けて第1のピッチ設定レール25を、第2のレール12に対して間隔L1pと等しい間隔L2p(L1p=L2p)を開けて第2のピッチ設定レール27を配置する。このとき、始点S1および始点S2と終点E1および終点E2との間に、試験片15を幅方向および流れ方向の二方向に同時に延伸する延伸区間Bを設定し、幅方向の延伸を施すために間隔Dpを拡大すると共に、クリップピッチを拡大して流れ方向の延伸を施すために間隔L1pおよび間隔L2pを縮小する。また、延伸区間B上流側に予熱区間Aを、下流側に熱処理区間Cを設定する。
【0027】
延伸試験条件に基づいて第1のレール11および第2のレール12と第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27を配置した後に、第1のレール11の始点S1にある第1のクリップの一群17に試験片15の一方の縁を把持させ、第2のレール12の始点S2にある第2のクリップの一群19に試験片15の他方の縁を把持させる。
【0028】
次いで、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動して第1の支持装置13および第2の支持装置14を牽引し、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に沿って走行させ、予熱区間Aに進入させて一時停止する。予熱区間Aでは、加熱装置22aにより試験片15を所定の予熱温度で加熱する。
【0029】
予熱区間Aでの試験片15の予熱が完了した後、再び第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動し、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に沿って走行させ、加熱装置22bにより所定の延伸温度に上昇した延伸区間Bを通過させる。このとき、試験片15は、間隔Dpの拡大により幅方向に延伸されると共に、間隔L1pおよび間隔L2pの縮小に応じたクリップピッチの拡大により流れ方向に延伸される。
そして、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19が延伸区間Bを通過することにより、試験片15全体が幅方向と流れ方向に延伸される。
【0030】
次いで、延伸区間Bを通過した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を熱処理区間Cに進入させて一時停止する。熱処理区間Cでは、加熱装置22cにより試験片15を延伸して形成されたフィルムサンプル23を所定の熱処理温度で加熱し、その物性を安定させる。
【0031】
熱処理区間Cでサンプルフィルム23の熱処理が完了した後、再び第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動し、サンプルフィルム23を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、終点E1および終点E2に到着させる。そして第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19に把持されたサンプルフィルム23を取り出す。
【0032】
サンプルフィルム23を取り出した後、次の延伸試験のために、第1のクリップの一群17を備えた第1の支持装置13と第2のクリップの一群19を備えた第2の支持装置14を、それぞれ、終点E1および終点E2から取り外し、始点S1および始点S2に取り付ける。なお、第1の支持装置13と第2の支持装置14の終点E1および終点E2から始点S1および始点S2への移動は、始点S1および始点S2側に牽引装置を設けて移動させてもよく、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21が、それぞれ、第1の支持装置13および第2の支持装置14を始点S1および始点S2と終点E1および終点E2とを往復するように構成してもよい。
【0033】
本実施形態では、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19が、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行するので、それらの間に設定される延伸区間Bを通過し、試験片15全体が延伸されて形成されたフィルムサンプル23を得ることができる。少なくとも、試験片15の中央部は連続しているので、得られたフィルムサンプル23は、二軸延伸フィルム製造装置で連続生産されるフィルムと同等の物性を有する。
【0034】
また、リンク式同時二軸延伸機で延伸試験をしようとすると、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、リンク部材を介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップを連続して走行させなければならず、大掛かりで効率の悪い試験となる。
本実施形態では、試験片15を把持する第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を形成し、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行させているので、最小限で効率の良い延伸試験が可能となる。
【0035】
本実施形態においては、第1のレール11と第2のレール12を中心線CLに対して対象に配置しているが、これは試験片15の延伸試験条件に基づいて設定されたものであり、その条件により、第1のレール11と第2のレール12の長さや配置や長手方向の輪郭は適宜変更される。
例えば、第1のレール11と第2のレール12の配置を対象とせずに、第1のレール11に対して第2のレール12の長さを変え、異なった輪郭を形成することにより試験片15を斜めに延伸する試験が可能となる。
また、例えば、第1のクリップの一群17のクリップピッチが拡大を開始する位置と第2のクリップの一群19のクリップピッチが拡大を開始する位置に差を与えることにより、試験片15を斜めに延伸する試験が可能となる。
【0036】
本実施形態においては、延伸区間Bの前後に予熱区間A,熱処理区間Cを設けたが、これは試験片15の延伸試験条件に基づいて設定されたのもであり、その条件により、区間の追加や変更や省略がされる。また、それにあわせて加熱装置22A,22B,22Cも適宜組み合わせの変更や入れ替えがなされる。
【0037】
本実施形態においては、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21が、それぞれ、第1の支持装置13および第2の支持装置14を牽引する速度を一定としてもよいが、走行中の第1のリンク機構24および第2のリンク機構26が開閉するとにより第1のクリップ16および第2のクリップ18の走行速度が変化することを考慮し、延伸試験条件に基づいて、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21の牽引速度を流れ方向の位置ごとに補正することが望ましい。
【0038】
本実施形態においては、予熱区間Aおよび熱処理区間Cで、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を一時停止し、予熱および熱処理を行っている。このとき、試験片15の延伸試験条件に基づいて、予熱および熱処理の時間や、予熱温度および熱処理温度の上昇パターンや下降パターンを設定してもよい。これにより、延伸機の長い予熱区間や熱処理区間を原反シートまたは原反フィルムが走行する状態と同等の延伸試験を行うことができる。
【0039】
また、ベース33に対する第1のレールベース30および第2のレールベース31の移動や、第1のレールベース30および第2のレールベース31に対するレール台29の移動や、レール台29に取り付けられた第1のレール11および第2のレール12に対する第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27の移動については、ボールねじ機構とサーボモータを組み合わせた直動機構などを用いることにより自動化してもよく、これにより、第1のレール11および第2のレール12と第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27の移動および輪郭の変更が容易となり、予熱区間Aおよび熱処理区間Cでの試験片15およびフィルムサンプル23の膨張や収縮などの熱変形に応じて、間隔Dpや間隔L1pおよび間隔L2pを調節することも可能となる。
【0040】
第1のクリップ16と第2のクリップ18の形状は、延伸試験条件に基づいて、同じであってもよく、異なる形状にしてもよい。
第1のリンク機構24と第2のリンク機構25の形状は、延伸試験条件に基づいて、同じであってもよく、中心線CLに対して対称であってもよく、異なる形状にしてもよい。
レール部材28とレール台29は、延伸試験条件に基づく第1のレール11および第2のレール12の様々な長手方向の輪郭に対応するために、種々の長さのものを用意してもよい。
【0041】
第1のクリップの一群17を形成する複数の第1のクリップ16および第2のクリップの一群19を形成する複数の第2のクリップ18は、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行したときに、把持した試験片15が延伸区間Bを通過することができる個数であることが望ましい。
【0042】
上述の実施形態では、リンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置10について述べたが、第1のクリップの一群17を備えた第1の支持装置13と第2のクリップの一群19を備えた第2の支持装置14を、それぞれ、チェーンにより連結されたクリップ台により構成し、第1のレール11および第2のレール12をクリップ台に対応したレ−ルとして、横延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置を構成してもよい。また、リニアモータで駆動するクリップ台として、リニア式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験装置,および、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…延伸試験装置、11…第1のレール、12…第2のレール、13…第1の支持装置、14…第2の支持装置、15…試験片、16…第1のクリップ、17…第1のクリップの一群、18…第2のクリップ、19…第2のクリップの一群、20…第1の駆動装置、21…第2の駆動装置、22…加熱装置、23…フィルムサンプル、24…第1のリンク機構、25…第1のピッチ調節レール、26…第2のリンク機構、27…第2のピッチ調節レール、28…レール部材、29…レール台、30…第1のレールベース、31…第2のレールベース、32…湾曲レール部材、33…ベース、34…ワイヤー、35…ドラム、36…モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸試験装置および延伸試験方法に係り、特に、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験装置,および、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用や基材用のフィルムを連続して生産する装置として、二軸延伸フィルム製造装置が知られている。二軸延伸フィルム製造装置の延伸工程には、フィルムの原料や用途に応じて、種々の形式の延伸機が採用されている。
【0003】
特許文献1には、原反シートを縦延伸機で流れ方向に延伸した後に、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、チェーンを介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸する横延伸機が開示されている。
特許文献2には、延伸前のシート・フィルムを、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、リンク部材を介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸するとともに、リンク部材の開閉により隣り合うクリップの間隔を変化させて、流れ方向にも延伸するリンク式同時二軸延伸機が開示されている。
そして、特許文献3には、等長リンク装置を備えた延伸機のレールの屈曲部において、掴み装置の掴みピッチに変化が生じることが開示されている。
特許文献4には、延伸前のフィルムを、レールで形成される一対の無端状の軌道を、リニアモータで駆動する複数個のクリップが連続して走行することにより幅方向に延伸するとともに、隣り合うクリップの間隔を変化させて、流れ方向にも延伸するリニア式同時二軸延伸機が開示されている。
【0004】
また、光学フィルム等の機能性フィルムの製造に対応するため、様々な延伸方法および延伸機が開発されている。
特許文献5には、レールで形成される一対の無端状の軌道に対し、一方の軌道と他方の軌道の距離を変えて、フィルムまたはシートを斜めに延伸する方法が開示されている。
特許文献6には、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道に対し、一方の軌道を走行するクリップと他方の軌道を走行するクリップのピッチが拡大を開始する位置に差を与え、シート・フィルムを斜めに延伸する方法およびシート・フィルムを斜めに延伸する装置が開示されている。
【0005】
上述した種々の延伸機および延伸方法を採用した二軸延伸フィルム製造装置を用いてフィルムを連続生産するに当たっては、所望の物性を有したフィルムが生産されることを事前確認するために、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片を延伸試験装置により延伸し、得られたフィルムサンプルにて物性評価が行われる。
特許文献7には、引っ張り試験機で延伸前のフィルム片を一軸方向に引っ張り、延伸サンプルを得たことが開示されている。
特許文献8には、シート状試料を、パンタグラフ機構を構成するリンクを用いて二軸に延伸する二軸延伸試験機が開示されている。
特許文献9には、リンク装置と、縦延伸手段と、横延伸手段とを具備し、縦延伸手段と横延伸手段の変化時間を制御する制御手段を設けたシート状物の延伸用試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−249934号公報
【特許文献2】特開2008−44339号公報
【特許文献3】特開2004−122640号公報
【特許文献4】特開2002−103445号公報
【特許文献5】特開平2−113920号公報
【特許文献6】特開2008−23775号公報
【特許文献7】特開2009−258571号公報
【特許文献8】特開昭61−112628号公報
【特許文献9】特開2004−148694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献7〜9で開示された延伸試験装置で延伸されたフィルムサンプルの物性評価を基に、特許文献1〜6の延伸機および延伸方法を採用した二軸延伸フィルム製造装置でフィルムを連続生産する場合、延伸試験装置と延伸機との構造の相違や延伸時の挙動の相違により、フィルムサンプルと同等の物性を有するフィルムが得られない場合がある。
【0008】
特許文献7に開示された引っ張り試験機および特許文献8に開示された二軸延伸試験機は、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片が静止した状態で延伸しているので、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うことができない。
【0009】
特許文献9に開示された延伸用試験装置は、リンク装置の等長リンクを開き、末広がり状に配置された一対のレールの一端部から他端部に向かって掴み装置が延びることにより、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を実現しようとするものである。この延伸用試験装置では、先端の掴み装置のみが他端部に到達し、それに把持されたシート状物の先端のみが延伸完了となるが、シート状物の先端は切り口となっており連続していないことから、延伸機でのフィルムの連続生産状態と同等の延伸試験を行っているとは言い難い。
また、延伸機のレールの屈曲部では、特許文献3で開示されているように、隣り合うクリップとの間隔に変化が生じるが、特許文献9に開示された延伸用試験装置には、この屈曲部での挙動は考慮されていない。さらに、特許文献5および特許文献6に開示されたフィルムまたはシートを斜めに延伸する方法についての延伸試験を実施することができない。
【0010】
本発明の目的は、二軸延伸フィルム製造装置の延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、延伸機により連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを、連続生産以前に得ることができる延伸試験装置および延伸試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の延伸試験装置は、長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールと、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が第1のレールの終点側にある第2のレールと、第1のレールに沿って、第1のレールの始点から終点に向かって走行する第1のクリップの一群と、第2のレールに沿って、第2のレールの始点から終点に向かって走行する第2のクリップの一群と、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を走行させる駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の延伸試験方法は、長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールに沿って走行する第1のクリップの一群に試験片の一方の縁を把持させ、第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が第1のレールの終点側にある 第2のレールに沿って走行する第2のクリップの一群に試験片の他方の縁を把持させ、第1のクリップの一群と第2のクリップの一群を、それぞれ、第1のレールおよび第2のレールの始点から終点に向けて走行させることを特徴とする。
【0013】
このような本発明では、試験片を把持した第1のクリップの一群および第2のクリップの一群が、それぞれ、第1のレールおよび第2のレールの始点から終点に向かって走行するので、延伸試験条件に基づき始点と終点の間に設定された延伸区間を通過して、試験片全体に延伸が施されたサンプルフィルムを得ることができる。少なくとも試験片の中央部は連続しているので、得られたサンプルフィルムは二軸延伸フィルム製造装置の延伸機で連続生産されるフィルムと同等の物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の延伸試験装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、原反シートまたは原反フィルムを二方向に同時に延伸するリンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを得ることを主目的とした本発明に基づく延伸試験装置10が示されている。なお、図1においては、紙面に対して上下の方向を流れ方向とし、上を流れ方向上流、下を流れ方向下流とする。また、紙面に対して左右の方向を幅方向とする。
【0016】
延伸試験装置10は、対となる第1のレール11および第2のレール12と、第1のレール11に案内される第1の支持装置13および第2のレール12に案内される第2の支持装置14と、試験片15の一方の縁を把持する複数の第1のクリップ16が第1の支持装置13に取り付けられることにより形成された第1のクリップの一群17と、試験片15の他方の縁を把持する複数の第2のクリップ18が第2の支持装置14に取り付けられることにより形成された第2のクリップの一群19と、第1の支持装置13を駆動することにより、第1のクリップの一群17を第1のレール11に沿って走行させる第1の駆動装置20と、第2の支持装置14を駆動することにより、第2のクリップの一群19を第2のレール12に沿って走行させる第2の駆動装置21と、試験片15を加熱する加熱装置22を備えている。
【0017】
第1のレール11は、長手方向の一端部を始点S1、他端部を終点E1とし、始点S1が流れ方向上流側となり、終点E1が流れ方向下流側となるように配置されている。
第2のレール12は、長手方向の一端部を始点S2、他端部を終点E2とし、第1のレール11と同様に、始点S2が流れ方向上流側となり、終点E2が流れ方向下流側となるように配置されている。
第1のレール11および第2のレール12は、それぞれ流れ方向および幅方向へ移動可能に構成されており、さらに、それら自身の長手方向の輪郭も変形可能に構成されている。
第1のレール11と第2のレール12との間は、試験片15の延伸試験条件に基づき、所定の間隔Dpとなるように移動および長手方向の輪郭が変形される。
なお、第1のレール11および第2のレール12の詳細な構造については、後に説明する。
【0018】
本実施形態においては、試験片15の延伸試験条件に基づき、第1のレール11と第2のレール12が流れ方向中心線CLに対して対象に配置され、始点S1および始点S2と終点E1および終点E2の間に、流れ方向上流側から順に、間隔Dpが一定である予熱区間Aと、間隔Dpが下流側に向けて拡大する延伸区間Bと、間隔Dpが予熱区間Aよりも広く、かつ一定である熱処理区間Cが設けられている。そして、予熱区間A,延伸区間B,熱処理区間Cはそれぞれオーブン式の加熱装置22a,22b,22cで覆われている。
ここで、予熱区間Aは、試験片15を予熱する区間であり、延伸区間Bは、間隔Dpを拡大することにより第1のクリップの一群17と第2のクリップの一群19との間隔を拡大し、両側縁を把持された試験片15を幅方向に延伸する区間であり、熱処理区間Cは、試験片15を延伸することにより形成されたフィルムサンプル23の物性を安定させる区間である。
上述のように、第1のレール11と第2のレール12との間隔Dpは、試験片15の延伸試験条件に基づき、流れ方向の各位置ごとに定められる。
【0019】
第1の支持装置13は、2つのリンクを一つの関節で開閉自在に接続した第1のリンク機構24が回動自在に複数連結されることにより構成されている。第1のリンク機構24のリンク開閉側には、第1のレール11に案内されて転動するベアリングが設けられ、リンクの関節側には、第1のレール11に対して間隔L1pを開けて配置された第1のピッチ調節レール25に案内されて転動するベアリングが設けられている。複数の第1のクリップ14は、第1のリンク機構24と対となって、リンク開閉側に取り付けられる。したがって、第1のレール11と第1のピッチ調節レール25との間隔L1pが変化すると、それに対応して、第1のリンク機構24の開閉状態が変化し、隣り合う第1のクリップ14との間隔、すなわちクリップピッチが変化する。
【0020】
第2の支持装置14は、第1の支持装置13と同様に、2つのリンクを一つの関節で開閉自在に接続した第2のリンク機構26が回動自在に複数連結されることにより、構成されている。第2のリンク機構26のリンク開閉側には、第2のレール12に案内されて転動するベアリングが設けられ、リンクの関節側には、第2のレール12に対して間隔L2pを開けて配置された第2のピッチ調節レール27に案内されて転動するベアリングが設けられている。複数の第2のクリップ18は、第2のリンク機構26と対となって、リンク開閉側に取り付けられる。したがって、第2のレール12と第2のピッチ調節レール27との間隔L2pが変化すると、それに対応して、第2のリンク機構26の開閉状態が変化し、隣り合う第2のクリップ18との間隔、すなわちクリップピッチが変化する。
【0021】
第1のレール11および第2のレール12は、試験片15の延伸試験条件に基づく長手方向の輪郭を形成するために、直線状のレール部材28が取り付けられたレール台29を、それぞれ、第1のレールベース30および第2のレールベース31上に複数配列して固定し、レール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。第1のレールベース30および第2のレールベース31はベース33に載置され、第1のレール11と第2のレール12との間が所定の間隔Dpとなるように固定される。
【0022】
第1のピッチ調節レール25は、第2のレール12とは反対の側に、第1のレール11に対して所定の間隔L1pを開けてレール台29に配置されたレール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。第2のピッチ調節レール27も同様に、第1のレール11とは反対の側に、第2のレール12に対して所定の間隔L2pを開けてレール台29に配置されたレール部材28同士を湾曲レール部材32で連結することにより形成される。したがって、第1の支持装置13および第2の支持装置14を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に配置した際に、第1のクリップ16および第2のクリップ18は中心線CLに向き、対向するように配置される。
【0023】
本実施形態においては、間隔L1pおよび間隔L2pが縮小すると、第1のリンク機構24およびが第2のリンク機構26が開いてクリップピッチが拡大し、把持された試験片15はクリップピッチが拡大する方向に延伸される。
間隔L1pおよび間隔L2pは、試験片15の延伸試験条件に基づき、流れ方向の各位置ごとに定められる。本実施形態では、試験片15が幅方向および流れ方向に同時に延伸されるように、延伸区間Bにおいて、間隔L1pおよび間隔L2pが下流側に向けて縮小するように設定されている。
【0024】
第1の駆動装置20は、一端が第1の支持装置13に接続されたワイヤー34と、ワイヤー34を巻き取るドラム35と、ドラム35を回転するモータ36を備え、ドラム35とモータ36は第1のレールベース30の下流側に配置されている。第1の駆動装置20で始点E1にある第1の支持装置13を終点S1まで牽引することにより、第1の支持装置13は第1のレール11と第1のピッチ調整レール25に案内されて走行し、第1のクリップの一群16が第1のレール11に沿って走行する。
第2の駆動装置21も同様に、一端が第2の支持装置14に接続されたワイヤー34と、ワイヤー34を巻き取るドラム35と、ドラム35を回転するモータ36を備え、ドラム35とモータ36は第2のレールベース31の下流側に配置されている。第2の駆動装置21で始点S2にある第2の支持装置14を終点E2まで牽引することにより、第2の支持装置14は第2のレール12と第2のピッチ調整レール26に案内されて走行し、第2のクリップの一群18が第2のレール12に沿って走行する。
【0025】
このような本実施形態においては、原反シートまたは原反フィルムを二方向に同時に延伸するリンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行い、リンク式同時二軸延伸機により連続生産されるフィルムと同等のフィルムサンプルを得ることを主目的として、次の手順で、延伸試験装置10による試験片15の延伸試験を行う。
【0026】
試験片15の流れ方向の延伸倍率や幅方向の延伸倍率などの延伸試験条件を基に、第1のレール11と第2のレール12を移動および輪郭の変形をし、間隔Dpを開けて中心線CLに対して対象に配置するとともに、第1のレール11に対して間隔L1pを開けて第1のピッチ設定レール25を、第2のレール12に対して間隔L1pと等しい間隔L2p(L1p=L2p)を開けて第2のピッチ設定レール27を配置する。このとき、始点S1および始点S2と終点E1および終点E2との間に、試験片15を幅方向および流れ方向の二方向に同時に延伸する延伸区間Bを設定し、幅方向の延伸を施すために間隔Dpを拡大すると共に、クリップピッチを拡大して流れ方向の延伸を施すために間隔L1pおよび間隔L2pを縮小する。また、延伸区間B上流側に予熱区間Aを、下流側に熱処理区間Cを設定する。
【0027】
延伸試験条件に基づいて第1のレール11および第2のレール12と第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27を配置した後に、第1のレール11の始点S1にある第1のクリップの一群17に試験片15の一方の縁を把持させ、第2のレール12の始点S2にある第2のクリップの一群19に試験片15の他方の縁を把持させる。
【0028】
次いで、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動して第1の支持装置13および第2の支持装置14を牽引し、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に沿って走行させ、予熱区間Aに進入させて一時停止する。予熱区間Aでは、加熱装置22aにより試験片15を所定の予熱温度で加熱する。
【0029】
予熱区間Aでの試験片15の予熱が完了した後、再び第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動し、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12に沿って走行させ、加熱装置22bにより所定の延伸温度に上昇した延伸区間Bを通過させる。このとき、試験片15は、間隔Dpの拡大により幅方向に延伸されると共に、間隔L1pおよび間隔L2pの縮小に応じたクリップピッチの拡大により流れ方向に延伸される。
そして、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19が延伸区間Bを通過することにより、試験片15全体が幅方向と流れ方向に延伸される。
【0030】
次いで、延伸区間Bを通過した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を熱処理区間Cに進入させて一時停止する。熱処理区間Cでは、加熱装置22cにより試験片15を延伸して形成されたフィルムサンプル23を所定の熱処理温度で加熱し、その物性を安定させる。
【0031】
熱処理区間Cでサンプルフィルム23の熱処理が完了した後、再び第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を作動し、サンプルフィルム23を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を、それぞれ、終点E1および終点E2に到着させる。そして第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19に把持されたサンプルフィルム23を取り出す。
【0032】
サンプルフィルム23を取り出した後、次の延伸試験のために、第1のクリップの一群17を備えた第1の支持装置13と第2のクリップの一群19を備えた第2の支持装置14を、それぞれ、終点E1および終点E2から取り外し、始点S1および始点S2に取り付ける。なお、第1の支持装置13と第2の支持装置14の終点E1および終点E2から始点S1および始点S2への移動は、始点S1および始点S2側に牽引装置を設けて移動させてもよく、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21が、それぞれ、第1の支持装置13および第2の支持装置14を始点S1および始点S2と終点E1および終点E2とを往復するように構成してもよい。
【0033】
本実施形態では、試験片15を把持した第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19が、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行するので、それらの間に設定される延伸区間Bを通過し、試験片15全体が延伸されて形成されたフィルムサンプル23を得ることができる。少なくとも、試験片15の中央部は連続しているので、得られたフィルムサンプル23は、二軸延伸フィルム製造装置で連続生産されるフィルムと同等の物性を有する。
【0034】
また、リンク式同時二軸延伸機で延伸試験をしようとすると、レールとスプロケットで形成される一対の無端状の軌道を、リンク部材を介して一連にかつ無端状に連結された複数個のクリップを連続して走行させなければならず、大掛かりで効率の悪い試験となる。
本実施形態では、試験片15を把持する第1のクリップの一群17および第2のクリップの一群19を形成し、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行させているので、最小限で効率の良い延伸試験が可能となる。
【0035】
本実施形態においては、第1のレール11と第2のレール12を中心線CLに対して対象に配置しているが、これは試験片15の延伸試験条件に基づいて設定されたものであり、その条件により、第1のレール11と第2のレール12の長さや配置や長手方向の輪郭は適宜変更される。
例えば、第1のレール11と第2のレール12の配置を対象とせずに、第1のレール11に対して第2のレール12の長さを変え、異なった輪郭を形成することにより試験片15を斜めに延伸する試験が可能となる。
また、例えば、第1のクリップの一群17のクリップピッチが拡大を開始する位置と第2のクリップの一群19のクリップピッチが拡大を開始する位置に差を与えることにより、試験片15を斜めに延伸する試験が可能となる。
【0036】
本実施形態においては、延伸区間Bの前後に予熱区間A,熱処理区間Cを設けたが、これは試験片15の延伸試験条件に基づいて設定されたのもであり、その条件により、区間の追加や変更や省略がされる。また、それにあわせて加熱装置22A,22B,22Cも適宜組み合わせの変更や入れ替えがなされる。
【0037】
本実施形態においては、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21が、それぞれ、第1の支持装置13および第2の支持装置14を牽引する速度を一定としてもよいが、走行中の第1のリンク機構24および第2のリンク機構26が開閉するとにより第1のクリップ16および第2のクリップ18の走行速度が変化することを考慮し、延伸試験条件に基づいて、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21の牽引速度を流れ方向の位置ごとに補正することが望ましい。
【0038】
本実施形態においては、予熱区間Aおよび熱処理区間Cで、第1の駆動装置20および第2の駆動装置21を一時停止し、予熱および熱処理を行っている。このとき、試験片15の延伸試験条件に基づいて、予熱および熱処理の時間や、予熱温度および熱処理温度の上昇パターンや下降パターンを設定してもよい。これにより、延伸機の長い予熱区間や熱処理区間を原反シートまたは原反フィルムが走行する状態と同等の延伸試験を行うことができる。
【0039】
また、ベース33に対する第1のレールベース30および第2のレールベース31の移動や、第1のレールベース30および第2のレールベース31に対するレール台29の移動や、レール台29に取り付けられた第1のレール11および第2のレール12に対する第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27の移動については、ボールねじ機構とサーボモータを組み合わせた直動機構などを用いることにより自動化してもよく、これにより、第1のレール11および第2のレール12と第1のピッチ設定レール25および第2のピッチ設定レール27の移動および輪郭の変更が容易となり、予熱区間Aおよび熱処理区間Cでの試験片15およびフィルムサンプル23の膨張や収縮などの熱変形に応じて、間隔Dpや間隔L1pおよび間隔L2pを調節することも可能となる。
【0040】
第1のクリップ16と第2のクリップ18の形状は、延伸試験条件に基づいて、同じであってもよく、異なる形状にしてもよい。
第1のリンク機構24と第2のリンク機構25の形状は、延伸試験条件に基づいて、同じであってもよく、中心線CLに対して対称であってもよく、異なる形状にしてもよい。
レール部材28とレール台29は、延伸試験条件に基づく第1のレール11および第2のレール12の様々な長手方向の輪郭に対応するために、種々の長さのものを用意してもよい。
【0041】
第1のクリップの一群17を形成する複数の第1のクリップ16および第2のクリップの一群19を形成する複数の第2のクリップ18は、それぞれ、第1のレール11および第2のレール12の始点S1および始点S2から終点E1および終点E2に向かって走行したときに、把持した試験片15が延伸区間Bを通過することができる個数であることが望ましい。
【0042】
上述の実施形態では、リンク式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置10について述べたが、第1のクリップの一群17を備えた第1の支持装置13と第2のクリップの一群19を備えた第2の支持装置14を、それぞれ、チェーンにより連結されたクリップ台により構成し、第1のレール11および第2のレール12をクリップ台に対応したレ−ルとして、横延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置を構成してもよい。また、リニアモータで駆動するクリップ台として、リニア式同時二軸延伸機による連続生産状態と同等の延伸試験を行うための延伸試験装置を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験装置,および、原反シートの試験片または原反フィルムの試験片をクリップで把持して延伸する延伸試験方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…延伸試験装置、11…第1のレール、12…第2のレール、13…第1の支持装置、14…第2の支持装置、15…試験片、16…第1のクリップ、17…第1のクリップの一群、18…第2のクリップ、19…第2のクリップの一群、20…第1の駆動装置、21…第2の駆動装置、22…加熱装置、23…フィルムサンプル、24…第1のリンク機構、25…第1のピッチ調節レール、26…第2のリンク機構、27…第2のピッチ調節レール、28…レール部材、29…レール台、30…第1のレールベース、31…第2のレールベース、32…湾曲レール部材、33…ベース、34…ワイヤー、35…ドラム、36…モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールと、前記第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が前記第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が前記第1のレールの終点側にある 第2のレールと、前記第1のレールに沿って、前記第1のレールの始点から終点に向かって走行する第1のクリップの一群と、前記第2のレールに沿って、前記第2のレールの始点から終点に向かって走行する第2のクリップの一群と、前記第1のクリップの一群と前記第2のクリップの一群を走行させる駆動装置と、を備えたことを特徴とする延伸試験装置。
【請求項2】
前記第1のレールと前記第2のレールは長手方向に所定の輪郭に形成され、前記第1のレールの始点および前記第2のレールの始点と前記第1のレールの終点および前記第2のレールの終点との間に、前記第1のクリップの一群および前記第2のクリップの一群に把持された試験片を延伸する延伸区間が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の延伸試験装置。
【請求項3】
長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールに 沿って走行する第1のクリップの一群に試験片の一方の縁を把持させ、前記第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が前記第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が前記第1のレールの終点側にある第2のレールに沿って走行する第2のクリップの一群に前記試験片の他方の縁を把持させ、前記第1のクリップの一群と前記第2のクリップの一群を、それぞれ、前記第1のレールおよび前記第2のレールの始点から終点に向けて走行させることを特徴とする延伸試験方法
【請求項1】
長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールと、前記第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が前記第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が前記第1のレールの終点側にある 第2のレールと、前記第1のレールに沿って、前記第1のレールの始点から終点に向かって走行する第1のクリップの一群と、前記第2のレールに沿って、前記第2のレールの始点から終点に向かって走行する第2のクリップの一群と、前記第1のクリップの一群と前記第2のクリップの一群を走行させる駆動装置と、を備えたことを特徴とする延伸試験装置。
【請求項2】
前記第1のレールと前記第2のレールは長手方向に所定の輪郭に形成され、前記第1のレールの始点および前記第2のレールの始点と前記第1のレールの終点および前記第2のレールの終点との間に、前記第1のクリップの一群および前記第2のクリップの一群に把持された試験片を延伸する延伸区間が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の延伸試験装置。
【請求項3】
長手方向の一端部が始点となり、長手方向の他端部が終点となる第1のレールに 沿って走行する第1のクリップの一群に試験片の一方の縁を把持させ、前記第1のレールと間隔を開けて配置され、始点となる長手方向の一端部が前記第1のレールの始点側にあり、終点となる長手方向の他端部が前記第1のレールの終点側にある第2のレールに沿って走行する第2のクリップの一群に前記試験片の他方の縁を把持させ、前記第1のクリップの一群と前記第2のクリップの一群を、それぞれ、前記第1のレールおよび前記第2のレールの始点から終点に向けて走行させることを特徴とする延伸試験方法
【図1】
【公開番号】特開2011−240621(P2011−240621A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115248(P2010−115248)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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