延命効果物質、および感染防御効果・ワクチン効果促進物質、前記物質の検定用コンストラクト、並びにそれらの用途
【課題】延命・抗老化効果を有する物質や感染防御効果・ワクチン効果を有する物質、およびこれらの物質を効率的に検定するための手段を提供すること。
【解決手段】サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質、AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質、前記のいずれかの物質を含有する食品、医薬品、化粧品または試薬;サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト、およびこれらのコンストラクトを利用する前記各物質の検定方法。
【解決手段】サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質、AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質、前記のいずれかの物質を含有する食品、医薬品、化粧品または試薬;サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト、およびこれらのコンストラクトを利用する前記各物質の検定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延命効果物質、および感染防御効果・ワクチン効果促進物質、前記物質の検定用コンストラクト、並びにそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
老化・寿命制御に関するこれまでの研究で、酵母、線虫、ショウジョウバエ等においてはカロリー制限が延命・抗老化を実現するための有効な処理であること、更には、熱や有毒化学薬品などのストレスに対する抵抗性も増強すること、そして、それらのカロリー制限による延命の実現には、NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するサーチュイン(Sirtuin)であるSir2が関与していることが明らかになっている。酵母Sir2の哺乳類ホモログとしてはSIRT1〜7が知られており、なかでもSIRT1は脂肪動員の増強、神経軸索変性の抑制、β細胞からのインスリン分泌、肝臓での糖新生等の制御に係わり(非特許文献1参照)、その制御を通じて延命を実現しているものと考えられている。
サーチュインを増強あるいは活性化する因子としては、赤ワイン中のポリフェノールであるレスベラトロールをはじめとした植物性ポリフェノール類が知られているに過ぎない(非特許文献2参照)。従って、サーチュイン遺伝子を増強する物質や、該物質を探索するための手段が望まれていた。
【0003】
一方、B細胞のクラススイッチ(class−switch recombination;CSR)に必須の遺伝子であるAID(Activation−Induced cytidine Deaminase)遺伝子は、老化に伴いその発現が低下し、同時に抗体レパトアも減少することが報告されている(非特許文献3および4参照)。すなわち、AIDの減少により高齢者は感染症にかかりやすくなる可能性が示唆され、感染防御におけるAID発現が重要なファクターである可能性がある。また、感染防御において最も重要な免疫器官の1つである腸管においてIgA濃度が上昇すると病原菌などを体外に排除する力が強くなるが、IgAへの産生にはAID活性化による抗体のクラススイッチが必須である。
【0004】
AIDはこのように種々の免疫系疾患治療の為のターゲット因子になりうるものと認識されながら、その制御機構、さらにはその発現・活性を制御するような食品成分に関しては報告されていない。また、タンパク質−核酸複合体がB細胞レセプター(B cell receptor;BCR)とToll様レセプター(Toll−like receptor;TLR)の両方に結合すると、BCRのみに結合するときよりもB細胞の活性化や抗体産生が促進されることが知られている(非特許文献5および6参照)。しかし、特に非タンパク質性抗原に対しては親和性と持続性に優れた中和抗体を誘導することは難しく、そのため有効なワクチンが未開発な例も多かった。そこで、抗体産生応答だけでなくB細胞の親和性成熟過程をも活性化することのできる物質、および該物質を探索するための手段が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】Genes Dev.,20:2913−2921(2006)
【非特許文献2】Nature,425:191−196(2003)
【非特許文献3】Exp. Gerontol.,37:427−439(2002)
【非特許文献4】Seminars Immunol.,17:378−384(2005)
【非特許文献5】Nature,416:603−607(2002)
【非特許文献6】J.Exp.Med.,202:1171−1177(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、延命・抗老化効果を有する物質や感染防御効果・ワクチン効果を有する物質を選抜することは、機能性食品、医薬品、化粧品の開発につながるものである。しかし、このような因子は従来知られていなかった上に、これらの因子を正確に、短時間で効率よく検定する方法は、従来知られていなかった。
【0007】
本発明の目的は、延命・抗老化効果を有する物質や感染防御効果・ワクチン効果を有する物質、およびこれらの物質を効率的に検定するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはヒトSIRT1(hSIRT1)のプロモーター領域を取得し、その転写活性化をGFP蛍光強度で追跡することのできるシステムを構築した。本システムを動物培養細胞に導入し、hSIRT1プロモーターを活性化しうる乳酸菌群を探索した結果、各種乳酸菌及びビフィズス菌が、hSIRT1プロモーターを活性化することが明らかとなった。
【0009】
また、本発明者らはヒトAIDのプロモーター領域を取得し、その転写活性化をGFP蛍光強度で追跡することのできるシステムを構築した。本システムを動物培養細胞に導入し、AIDプロモーターを活性化しうる乳酸菌群を探索した結果、各種乳酸菌が、AIDプロモーターを活性化することが明らかとなった。本システムを用いることで、感染防御能を有する乳酸菌やワクチン生産への応用が可能な乳酸菌の育種も可能になるものと考えられる。
【0010】
本発明は、以下の各発明を提供するものである。
〔1〕 サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質。
〔2〕 サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、〔1〕記載の延命効果物質。
〔3〕 乳酸菌または乳酸菌由来成分である、〔1〕または〔2〕に記載の延命効果物質。
〔4〕 乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔3〕に記載の延命効果物質。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の延命効果物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
〔6〕 サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト。
〔7〕 サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、〔6〕記載のコンストラクト。
〔8〕 〔6〕または〔7〕に記載のコンストラクトを含む細胞。
〔9〕 〔6〕または〔7〕に記載のコンストラクトまたは〔8〕に記載の細胞を含む、延命効果物質の検定用キット。
〔10〕 〔8〕に記載の細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、延命効果物質の検定方法。
〔11〕 前記延命効果物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である〔10〕に記載の検定方法。
〔12〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔11〕に記載の検定方法。
〔13〕 AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔14〕 乳酸菌または乳酸菌由来成分である、〔13〕に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔15〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔14〕に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔16〕 〔13〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
〔17〕 AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト。
〔18〕 〔17〕に記載のコンストラクトを含む細胞。
〔19〕 〔17〕に記載のコンストラクトまたは〔18〕に記載の細胞を含む、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キット。
〔20〕 〔18〕に記載の細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法。
〔21〕 前記感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である〔20〕に記載の検定方法。
〔22〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔21〕に記載の検定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、延命・抗老化という新たな機能性を有する物質が提供されると共に、該物質を検定し、選抜することができるので、延命を実現する新たな機能性食品の開発に繋げることができる。
また、本発明は、hSIRT1プロモーターの活性化を通じて延命を実現しうる相互作用の解明、つまり乳酸菌菌体の有する糖鎖・DNA等のリガンドとサーチュイン遺伝子を発現する動物細胞上のToll like receptorとの間の相互作用の解明に応用することができ、延命を実現しうるスーパーアンチエイジング乳酸菌の探索・創製への応用が期待できる。
【0012】
更に、本系は、乳酸菌の刺激で活性化されていることから、本系で検索される物質は、中でも、乳酸菌由来物質は、Toll like receptorを刺激しうる物質であり、Toll like receptorによる抗原提示細胞の活性化を通じた、抗癌作用に働く免疫系の増強が期待されることより、間接的ではあるが、免疫の抗癌作用を高める物質としても期待しうる物質である。
【0013】
更に、本発明により、感染防御効果やワクチン効果を促進する物質といった機能性物質が提供されると共に、該物質を検定し、選抜することができるので、感染防御を実現する新規機能性食品の開発や、新規ワクチンの開発に繋げることができる。
また、本発明によれば、AIDプロモーターの活性化を通じてAID活性化メカニズムの解明も可能であり、抗体産生応答の異常とそれに伴う疾病の改善を目的とした創薬の検索への応用も期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質
本発明は、延命効果物質と、感染防御効果・ワクチン効果促進物質との両者を提供するものである。以下、両発明のそれぞれに特徴的な部分について先に説明し、続いて共通する部分について説明する。
【0015】
(延命効果物質)
本発明の延命効果物質は、延命効果、すなわち抗癌作用をはじめとして生物の寿命を延長する効果を発揮する物質であり、サーチュイン遺伝子の活性を増強(活性化)することを特徴とする。サーチュインとは、酵母、線虫、ショウジョウバエの延命に寄与するとされるNAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するSir2のホモログを指し、哺乳類ではSIRT1〜7を挙げることができる。サーチュイン遺伝子の活性を増強することの確認は、下記の延命効果物質検定用コンストラクトによりそのサーチュイン遺伝子のプロモーター活性を分析して行うことができる。
【0016】
(感染防御効果・ワクチン効果促進物質)
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、感染防御効果およびワクチン効果のうちいずれかの効果、または両方の効果を発揮する物質であり、AID遺伝子の活性を増強(活性化)することを特徴とする。AID(Activation−Induced cytidine Deaminase)遺伝子とは、B細胞のクラススイッチ(class−switch recombination;CSR)に必須の遺伝子である。AID遺伝子の活性を増強することの確認は、下記の感染防御効果・ワクチン効果促進物質検定用コンストラクトによりそのAID遺伝子のプロモーター活性を分析して行うことができる。
【0017】
本発明の延命効果物質、および感染防御効果・ワクチン効果促進物質としては、乳酸菌や他の菌類・酵母類、他の動植物由来の成分である蛋白質、糖類、核酸、脂質、ポリフェノール、食物繊維、ミネラル、ビタミン等を挙げることができ、特に菌類やその成分が好ましい。菌類としては、乳酸菌を挙げることができる。
【0018】
乳酸菌は、腸内細菌にも分類されるものが好ましく、例えば、ラクトバチルス属乳酸菌、ビフィドバクテリウム属乳酸菌、ラクトコッカス属乳酸菌、スタフィロコッカス属乳酸菌などを挙げることができる。
【0019】
ラクトバチルス属乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボルス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・ラクティスなどがある。
ビフィドバクテリウム属乳酸菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどがある。
ラクトコッカス属乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクティスなどがある。
スタフィロコッカス属乳酸菌としては、スタフィロコッカス・サーモフィルスなどがある。
【0020】
これらの乳酸菌のうち、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、特にラクトバチルス・アシドフィルスは、サーチュイン遺伝子の活性を増強することが確認されている。
【0021】
また、これらの実施例のうち、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、特にラクトバチルス・アシドフィルスは、AID遺伝子を活性化するものであり、感染防御効果・ワクチン効果促進物質として有用である。
【0022】
本発明の延命効果物質は、各種の食品、化粧品、医薬品等の成分として利用することができ、特に、延命を実現しうる新たな機能性食品として有用である。
また、本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質も、各種の食品、化粧品、医薬品等の成分として利用することができ、特に、感染防御を実現する新規機能性食品や新規ワクチンの開発に繋げることができる。
【0023】
2.延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定
本発明においては、延命効果物質の検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトの2つを提供する。以下、両発明のそれぞれに特徴的な部分について先に説明し、続いて共通する部分について説明する。
【0024】
(延命効果物質検定用コンストラクト)
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトは、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備える。サーチュイン遺伝子については既に延命効果物質の欄において述べたとおりである。
【0025】
hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するとは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドのhSIRT1のプロモーター活性の90%以上、好ましくは95%以上の活性を有することを意味し、好ましくは実質的に同等以上の活性を有することを意味する。hSIRT1のプロモーター活性の確認は、hSIRT1遺伝子の発現が増強または活性化されるかどうかの確認により行うことができる。
【0026】
hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、配列表の配列番号1記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列表の配列番号1記載の塩基配列は、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製されるhSIRT1遺伝子の上流−1593〜−1塩基部分(+1がhSIRT1遺伝子の翻訳開始点とする。)の領域である。
【0027】
また、hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであれば、配列表の配列番号1記載の塩基配列に改変を加えた塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。例えば、配列番号1に記載の塩基配列と相同性が80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であるポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0028】
本発明において、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、PCR等により得ることができる。例えば、hSIRT1遺伝子の場合、配列番号1に記載の塩基配列を増幅するプライマーセットを用いて、ヒト由来の鋳型ゲノムDNAをPCR等により増幅することにより、配列表の配列番号1記載の塩基配列を得ることができる。一方、配列番号1に記載の塩基配列に基づき設計したプローブを用いて、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることによっても、配列表の配列番号1記載の塩基配列を得ることができる。
【0029】
(感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト)
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトは、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備える。AID遺伝子については既に延命効果物質の欄において述べたとおりである。
【0030】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するとは、配列表の配列番号2記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドのAID遺伝子のプロモーター活性の90%以上の活性を有することを意味し、好ましくは実質的に同等以上の活性を有することを意味する。AID遺伝子のプロモーター活性の確認は、AID遺伝子の発現が増強または活性化されるかどうかの確認により行うことができる。
【0031】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、配列表の配列番号2記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列表の配列番号2記載の塩基配列は、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1から得られるヒトAID遺伝子の上流−520〜−1塩基部分(+1がAID遺伝子の翻訳開始点とする。)の領域である。
【0032】
また、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであれば、配列表の配列番号2記載の塩基配列に改変を加えた塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。例えば、配列番号2に記載の塩基配列と相同性が80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であるポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0033】
本発明において、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、PCR等により得ることができる。例えば、配列番号2に記載の塩基配列を増幅するプライマーセットを用いて、ヒト由来の鋳型ゲノムDNAをPCR等により増幅することにより、配列表の配列番号2記載の塩基配列を得ることができる。一方、配列番号2に記載の塩基配列に基づき設計したプローブを用いて、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることによっても、配列表の配列番号2記載の塩基配列を得ることができる。
【0034】
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトとは、更にリポーター活性を有するポリヌクレオチドなどを含むものであってもよい。リポーター活性を有するポリヌクレオチドを含むことにより、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性やAID遺伝子のプロモーター活性の確認を容易に行うことができる。
【0035】
リポーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、細胞内において遺伝子発現の指標として使用することのできる公知のリポータータンパク質をコードする遺伝子を用いることができる。リポータータンパク質としては、GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)をはじめとする各種蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ等を挙げることができる。このうち、本発明においてはGFPが好ましい。
【0036】
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトの調製は、例えば、hSIRT1のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを、レポーター活性を有するポリヌクレオチドを含むベクターのレポーターの発現を制御するプロモーターと置換することで行うことができる。このようなベクターとしては、リポータータンパク質がGFPの場合には、pEGFP−C3ベクター(TaKaRa)を挙げることができる。
【0037】
(各コンストラクトを含む細胞)
上記本発明の延命効果物質検定用コンストラクトか、或いは感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトは、細胞に導入して各物質の検索システムとして機能させることができる。
【0038】
各コンストラクトの導入先となる宿主細胞としては、ヒトをはじめとする各種生物の細胞を挙げることができ、動物細胞が好ましい。また、細胞の種類には特に限定はない。代表的なものとしては、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン由来細胞株A549、ヒト大腸ガン由来細胞株CaCo−2、ヒト正常線維芽細胞TIG−1、ヒトB細胞白血病細胞株BALL−1、ヒトB骨髄腫細胞株U−266、エプスタインバールウイルスにより不死化したヒトB細胞株(EBV−B)を挙げることができる。
【0039】
宿主細胞に上記本発明のコンストラクトを取り込ませる方法は、リポフェクション法及びエレクトロポレーション法などによることができ、市販のトランスフェクション試薬(LipofectAMINE(Invitrogen社製)など)やNucleofector Device及びNucleofector Solution(Amaxa社)等を利用してもよい。
【0040】
本発明の細胞は、宿主細胞の種類に応じて培地を選択して(例えば、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、CaCo−2及びTIG−1の場合にはMEM培地、BALL−1及びU−266の場合にはRPMI640培地、EBV−Bの場合にはERDF培地など)、常法により培養することができる。
【0041】
(本発明の検定用キット)
上述の本発明のコンストラクトおよび細胞は、それぞれ、有用物質の検定用キットとして利用することができる。
すなわち、本発明の第1のキットは、延命効果物質の検定用キットであって、上述の延命効果物質検定用コンストラクトまたは該コンストラクトを含む細胞を含むものである。本発明の第2のキットは、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キットであって、上述の感染防御効果・ワクチン効果促進物質検定用コンストラクトまたは該コンストラクトを含む細胞を含むものである。
各コンストラクト、細胞については、既に述べたとおりである。
【0042】
本発明のキットにおいて、それぞれのコンストラクトを含む場合は、コンストラクトの導入先である宿主細胞や、細胞を導入するための培地、細胞へコンストラクトを取り込ませるための試薬、検体と細胞とを接触させるための培地等を一緒に含めることができる。宿主細胞や培地については既に述べたとおりであり、試薬についても既に述べた細胞の取り込み方法のいずれかの方法において用いる試薬を適宜選択することができる。検体と細胞とを接触させるための培地については、後述する本発明の検出方法の欄において説明するとおりである。
一方、本発明のキットにおいて細胞を含む場合には、検体と細胞とを接触させるための培地を含めることができる。
【0043】
(本発明の検定方法)
上述の本発明の細胞は、それぞれ、有用物質の検定に用いることができる。
すなわち、本発明の第一の検定方法は、延命効果物質の検定方法であって、延命効果物質検定用コンストラクトを含有する細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする。
本発明の第二の検定方法は、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法であって、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトを含む細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする。
【0044】
本発明の2つの検定方法は、細胞と試料とを接触させ、プロモーター活性を測定する点においては共通である。
試料としては、特に限定されるものではないが、例えば、食品成分・生薬成分・医薬品成分・化粧品成分等の天然及び化学合成成分等であれば良く、より具体的には、乳酸菌や他の菌類・酵母類、他の動植物由来の成分である蛋白質、糖類、核酸、脂質、ポリフェノール、食物繊維、ミネラル、ビタミン等を挙げることができ、特に菌類やその成分が好ましい。菌類としては、乳酸菌を挙げることができる。乳酸菌は、腸内細菌にも分類されるものが好ましく、例えば、ラクトバチルス属乳酸菌、ビフィドバクテリウム属乳酸菌、ラクトコッカス属乳酸菌、スタフィロコッカス属乳酸菌などを挙げることができる。各属の乳酸菌の具体例については、上述の延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質の説明の欄で列挙したとおりである。
【0045】
試料としての菌類の形態は、生菌体、死菌体、培養上清などが挙げられ、中でも死菌体が好ましい。死菌体は、生菌体を加熱(例えば、60〜120℃で20分〜1時間程度)、凍結乾燥、アルコール処理等、更には食品用途以外であればホルマリン処理することにより調製され得る。
【0046】
本発明の分析方法においては、まず試料と細胞とを接触させる。試料と細胞との接触は、細胞に対し試料を添加して一定時間静置することにより行うことができる。試料が上記乳酸菌の場合の例を示すと、乳酸菌の加熱死菌体を細胞に対し終濃度0.1〜10μg/mlとなるように添加し、12時間〜3日間程度処理を行う。
【0047】
本発明の各検定方法においては、続いてプロモーター活性を測定する。プロモーター活性の測定は、細胞にリポーター活性を有するポリヌクレオチドが含まれている場合には、その発現強度の変化を追跡することにより行うことができる。追跡は、蛍光強度の観察によることができる。蛍光強度は、フローサイトメーターにより測定することができる。
【0048】
本発明の第一の検定方法、すなわち、延命効果物質の検定方法により、試料の延命効果を検定することができる。すなわち、試料が延命効果を有するか否かの確認、延命効果の程度の確認などを行うことができるほか、複数ある試料の中から、延命効果を有する物質を選抜することができる。
【0049】
例えば、延命効果物質としての各種乳酸菌または乳酸菌由来成分の探索に用いることができる。具体的には、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)を延命効果物質として選抜することができ、特にラクトバチルス・アシドフィルスを優れた延命効果物質として選抜することができる。
【0050】
本発明の延命効果物質の検定方法によれば、乳酸菌が直接接触をする可能性のある腸管系の細胞株を宿主細胞として用いることで、腸管細胞でのSIRT1発現増強と延命実現に対するSIRT1の新たな関連が明らかになるとともに、乳酸菌による腸管細胞の機能修飾を通じた延命実現の可能性についても解析を行うことが可能である。
【0051】
本発明の第二の検定方法、すなわち、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法により、試料の感染防御効果・ワクチン効果(いずれかの効果、または両方の効果)を検定することができる。すなわち、試料が感染防御効果・ワクチン効果を有するか否かの確認、感染防御効果・ワクチン効果の程度の確認などを行うことができるほか、複数ある試料の中から、感染防御効果・ワクチン効果を有する物質を選抜することができる。
【0052】
例えば、感染防御効果・ワクチン効果促進物質としての各種乳酸菌または乳酸菌由来成分の探索に用いることができる。具体的には、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)を感染防御効果・ワクチン効果促進物質として選抜することができ、特にラクトバチルス・アシドフィルスを優れた感染防御効果・ワクチン効果促進物質として選抜することができる。
【0053】
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法によれば、試料の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を検定することができる。すなわち、抗体産生応答だけでなくB細胞のCSR過程の活性化及びB細胞の親和性成熟過程の活性化が可能であり、非タンパク質性抗原に対しては親和性と持続性に優れた中和抗体を誘導することができる物質、特に乳酸菌を選抜することが可能であり、ワクチンへの応用が可能である。
【実施例】
【0054】
実施例1〔hSIRT1プロモーター転写活性化乳酸菌の同定〕
(1)hSIRT1プロモーター(hSIRT1p)の取得
hSIRT1pとして、ATG翻訳開始点より−1593bp〜−1bp(+1は翻訳開始点を示すものとする。)を、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製したゲノムDNAを鋳型として用いるPCRにより取得した。PCR反応には、宝酒造のTaKaRa LA Taq(TaKaRa,Shiga,Japan)を用い、指定のプロトコールに従って反応を進めた。PCRの反応液組成は、以下に示すとおりである。PCR反応条件は94℃にて2分間変性を行ったあと、98℃;20秒、68℃;1分を35サイクルとした。なお、非特異的反応を抑えるために、全ての操作は氷上にて速やかに行った。
【0055】
(PCR反応液組成)
滅菌水 25.9μl
10xPCR Buffer 5μl
25mM MgCl2 5μl
2.5mM dNTP 8μl
10pmol/μl primer(5') 1μl
10pmol/μl primer(3') 1μl
TIG−1ゲノムDNA 3.6μl
LA−Taq 1μl
合 計 50μl
【0056】
PCRに使用したプライマーhSIRTp−AseI(F)およびhSIRTp−NheI(R)のそれぞれの配列は、配列表の配列番号3および4、並びに表1に示した。尚、表1に示す配列中、大文字はhSIRT1プロモーター内の配列を示し、小文字はPCRにより付加するそれぞれの制限酵素認識配列を示し、表2以降に示すプライマー配列においても同じである。GFP発現ベクターの構築にはhSIRTp−AseI(F)およびhSIRTp−NheI(R)をそれぞれ用いた。また、すべてのオリゴ合成はニッポンEGT社(Toyama,Japan)に依頼した。
【0057】
【表1】
【0058】
それぞれ反応終了後、1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドを切り出した後、ゲル抽出を行った。ゲル抽出はプロメガ社のWizard SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega,Madison,WI)を使用し、製品のプロトコールに従って行った。
次に、これらのPCR産物をTAクローニング用のベクターであるpGEM−T Easy vector(Promega)へサブクローニングした(pGEM−hSIRT1p)。
【0059】
(2)点変異の導入
得られたヒトSIRT1プロモーター(hSIRT1p)全長のシークエンスを確認した。その結果3カ所に点変異が確認されたため、部位特異的変異導入法により点変異の修正を行った。
すなわち、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用い、製品付属のプロトコールに従いPCR法にて修正を行った。PCRの反応条件は95℃;30秒のあと、95℃;30秒、55℃;1分を12サイクルとした。修正に使用したプライマーquichchange−1436、quichchange−1401、quichchange−160のそれぞれの配列は、配列表の配列番号5、6および7、並びに表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
このPCR産物に制限酵素DpnIを加えて37℃で1時間処理し、鋳型DNAの消化を行った。上記サンプル1μlにつきSupercompetent cell XL−1−blueを100μl加えて、氷上にて30分静置し、42℃で45秒間熱処理を行った後、さらに氷上にて2分間静置した。その後、SOC培地を400μl加え、200〜250rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。その後、遠心して得られた菌体ペレットをLB(Amp+)プレートに播種し、37℃にて一晩培養した。翌日、適当なコロニーをピックアップし、それぞれシークエンスを確認した。
【0062】
(3)pEGFP−C3への組換え
上記により点変異を修正したpGEM−hSIRT1pから、AseI/NheI消化にてプロモーター断片を切り出し、AseI/NheI消化によりCMVプロモーターを除去したpEGFP−C3ベクター(TaKaRa)に挿入し、GFP発現コンストラクトを構築した(phSIRT1p−GFP)。phSIRT1p−GFPのベクターマップを、図1に示した。
【0063】
(4)phSIRT1p−GFP安定発現動物細胞の樹立
phSIRT1p−GFP安定発現動物細胞株の作製には、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン由来細胞株A549、ヒト大腸ガン由来細胞株CaCo−2を用いた。
また、生体の正常組織におけるSIRT1制御に対する乳酸菌の効果を検証可能とするために、ヒト正常線維芽細胞(TIG−1)を用いた。
各細胞の培養には、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、CaCo−2及びTIG−1の場合にはMEM培地を用いた。
【0064】
(5)遺伝子導入
上記hSIRT1p駆動のGFPリポーターベクター(phSIRT1p−GFP)を、ヒト子宮頸ガン細胞株(HeLa)、ヒト肺ガン細胞株(A549)及びヒト大腸がん細胞株(Caco−2)にリポフェクション法により導入した。
すなわち、上記接着系動物細胞へのphSIRT1p−GFP導入に当たっては、LipofectAMINE(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いた。トランスフェクションの前日に細胞を1x106cells/10ml dishの細胞密度で準備した。翌日、phSIRT1p−GFP遺伝子を10μg分(液量85μl)とLipofectAMINE試薬15μlをOpit−MEM培地1.4mlで希釈し、室温にて15分間インキュベートした。この間に、細胞の培養培地を、血清を含まない新鮮なERDF培地(5ml/10ml dish)と交換し、混合液を添加した。その後、遺伝子導入から3時間後に血清を含む新鮮な通常培地に培地交換を行い、また同時にG418(1mg/ml)による遺伝子導入細胞の薬剤選択を開始した。
このようにして、phSIRT1p−GFPを安定に発現するHeLa,A549及びCaco−2細胞株を樹立した。
【0065】
一方、TIG−1細胞に対して、他の細胞と同様phSIRT1p−GFPを導入することを試みたが、従来のリポフェクション法では遺伝子導入効率が低く、安定株を作ることは困難であった。そこで、Nucleofector Device(Amaxa社)及びNucleofector Solution(Amaxa社)を用いたエレクトロポレーション法による遺伝子導入を試みた。ところがTIG−1用として特化された遺伝子導入条件及びNucleofector Solutionはなかったので、様々な条件でエレクトロポレーションを行い、TIG−1細胞に対する遺伝子導入の最適条件を決定し、実際にはR Solution試薬を用い、U−23プログラムを用いて遺伝子導入を行った。詳細はNucleofectorキットに付属のプロトコールに従い行った。
【0066】
(6)乳酸菌
乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(L1,3,4),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)(L5.6),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(L7),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)(L8),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(L10),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(L22),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)(L34),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)(B1,2),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)(B5),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)(B8),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)(B11),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(SK303),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(L25)を用いた。
【0067】
(7)乳酸菌処理
100℃で30分間処理後凍結乾燥した乳酸菌の凍結乾燥加熱死菌体をサンプルとして用いた。凍結乾燥死菌体は、上記遺伝子導入動物細胞に終濃度10μg/mlとなるように添加し、2日間培養を行った。
ポジティブコントロールは、カロリー制限をin vitro培養系で模倣し、SIRT1発現増強効果があるとされている血清及び糖抜き培地での16時間培養処理(CR処理)とした。
【0068】
(8)フローサイトメーター解析
フローサイトメーター(Beckman Coulter,Miami,FL)を用いてGFPの発現強度の変化を追跡した。この蛍光強度の変化がhSIRT1プロモーター活性の変化として捉えることができる。蛍光強度をヒストグラムとして展開し、未処理区においてピークの頻度値を示す蛍光強度よりも強い蛍光強度を示す細胞数の割合を数値化し、グラフに示した。HeLa、A549及びCaco−2の各細胞株における結果を、それぞれ図2、図3、図4に示した。また、TIG−1細胞における結果を、図5に示した。
【0069】
図2〜4から明らかなように、Lactobacillus acidophilus(L1,3,4)は、全ての細胞株で、Lactobacillus amylovorus(L5.6)はA549及びCaco−2細胞で、Lactobacillus brevis(L7)は全ての細胞株で、Lactobacillus crispatus(L8)はA549及びCaco−2細胞で、Lactobacillus gasseri(L10)はHeLa及びA549細胞で、Lactobacillus reuteri(L22)はA549細胞で、Bifidobacterium bifidum(B1,2)はA549細胞で、Bifidobacterium breve(B5)はA549細胞で、Bifidobacterium adolescentis(B8)はA549細胞で、Bifidobacterium infantis(B11)はA549細胞で、Lactococcus lactis(SK303)はA549細胞でそれぞれ再現性良く強い活性が、Lactobacillus salivarius(L34)はHeLa及びA549で再現性良く弱めの活性が観察された。
【0070】
また図5から明らかなように、TIG−1細胞では、Lactobacillus acidophilus(L4)、Lactobacillus amylovorus(L6)及びLactobacillus brevis(L7)で高い活性が観察された。
【0071】
(9)ルシフェラーゼアッセイ
先に構築したpGEM−hSIRT1pよりNotI消化によりhSIRT1pを切り出し、NotI消化したBluescriptIIに挿入した。さらにSacI/BamHI消化によりhSIRT1pを切り出し、SacI/BglII消化したpGL3−Basic(Promega)に挿入し、ルシフェラーゼ活性を指標としてhSIRT1p活性を測定するレポーターベクターを作製した(pGL3−hSIRT1p)。HeLa,A549,Caco−2,TIG−1細胞に対しpGL3−hSIRT1p及び遺伝子導入効率を推定するためのコントロールプラスミド(pRL−TK)をLipofectoamine試薬により導入し、3時間後に培地交換を行った。
【0072】
通常はここからphSIRT1p−GFPのときと同様48時間に渡り10μg/mlの濃度で乳酸菌の加熱死菌体を添加・培養し、Dual−Luciferase assayキットのプロトコールに則って、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性の測定を行う。ところがこの条件では、サンプル間のデータのばらつきが大きかった。そこで細胞毎に、乳酸菌加熱死菌体処理及び培養時間の至適化を行った。その結果、HeLaでは遺伝子導入後3時間後に培地交換、さらに21時間後に培地交換とともに乳酸菌添加(10μg/ml)し、24時間後にプロモーターアッセイを行うことにより、再現性良く、サンプル間のデータのばらつきの少ないデータを得ることができた。また、A549では遺伝子導入後3時間後に培地交換とともに乳酸菌を添加して、さらに3日間培養後プロモーターアッセイを行うことにより、再現性良く、サンプル間のデータのばらつきの少ないデータを得ることができた。この為、以後、この条件で乳酸菌加熱死菌体のhSIRT1p活性に与える影響を検証した。HeLaおよびA549の各細胞株における結果を、それぞれ図6および図7に示す。
【0073】
その結果、図6からわかるように、HeLa細胞では、Bifidobacterium adolescentis(B8)以外の乳酸菌で高いSIRT1pの転写活性化を観察することができた。また、図7からわかるように、A549細胞では、Lactobacillus acidophilus(L4)以外の乳酸菌で高いSIRT1pの転写活性化を観察することができた。
【0074】
(10)Quantitative Realtime PCRによる遺伝子発現の解析
phSIRT1−GFP及びpGL3−hSIRT1を用いた解析から再現性良く、hSIRT1pを活性化しうる乳酸菌を選抜し、それら乳酸菌存在下で培養したHeLa,A549,TIG−1,Caco−2における内在性hSIRT1遺伝子の発現量の変化をQuantitative real−time PCR法により追跡した。この際、各細胞における乳酸菌の処理条件は、前記実験と同様に至適化を行ってから決定するものとした。内在性hSIRT1遺伝子の発現を測定するためのReal−time PCR用のプライマーは、以下のものを用いた。
HA044263−F:GCCTCACATGCAAGCTCTAGTGAC(配列番号10)
HA044263−R:TTCGAGGATCTGTGCCAATCATAA(配列番号11)
【0075】
また内部コントロールとしてはヒトβアクチンあるいはヒトグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子を用いた。その際のプライマーは、以下のものを用いた。
【0076】
βアクチンの場合:
HA067803−F:TGGCACCCAGCACAATGAA(配列番号12)
HA067803−R:CTAAGTCATAGTCCGCCTAGAAGCA(配列番号13)
【0077】
GAPDHの場合:
HA031578−F:GCACCGTCAAGGCTGAGAAC(配列番号14)
HA031578−R:ATGGTGGTGAAGACGCCAGT(配列番号15)
【0078】
cDNA合成は、M−MLV Reverse Transcriptase RNase H Minus(Promega)を用い常法に基づき行った。PCR反応はSYBR Premix Ex Taq(TaKaRa)を用い、thermal Cycler Dice(TaKaRa)を用いて行った。
【0079】
実施例2〔ヒトAIDプロモーター転写活性化乳酸菌の同定〕
(1)ヒトAIDプロモーター(hAIDp)の取得
hAIDプロモーターとして、ATG翻訳開始点より−520bp〜−1bp(+1は翻訳開始点を示すものとする。)を、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製したゲノムDNAを鋳型として用いるPCR法により取得した。PCR反応には、宝酒造のTaKaRa LA Taq(TaKaRa,Shiga,Japan)を用い、指定のプロトコールに従って反応を進めた。PCRの反応液組成は、以下に示すとおりである。PCR反応条件は94℃にて2分間変性を行ったあと、98℃;20秒、68℃;1分を35サイクルとした。なお、非特異的反応を抑えるために、全ての操作は氷上にて速やかに行った。
【0080】
(PCR反応液組成)
滅菌水 25.9μl
10x PCR Buffer 5μl
25mM MgCl2 5μl
2.5mM dNTP 8μl
10pmol/μl primer(5') 1μl
10pmol/μl primer(3') 1μl
TIG−1 ゲノムDNA 3.6μl
LA−Taq 1μl
合 計 50μl
【0081】
PCRに使用したプライマーの配列は表3に示した。GFP発現ベクターの構築にはhAIDp−NdeI(F)およびhAIDp−XbaI(R)をそれぞれ用いた。また、すべての合成はニッポンEGT社(Toyama,Japan)に依頼した。
【0082】
【表3】
【0083】
それぞれ反応終了後、1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドを切り出した後、ゲル抽出を行った。ゲル抽出はプロメガ社のWizard SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega,Madison,WI)を使用し、製品のプロトコールに従って行った。
次に、このPCR産物はTAクローニング用のベクターであるpGEM−T Easy vector(Promega)へサブクローニングした(pGEM−hAIDp)。
【0084】
(2)pEGFP−C3への組換え
シークエンスを確認したあとのpGEM−hAIDpから、NdeIおよびXbaI消化にてプロモーター断片を切り出し、AseI及びNheI消化によりCMVプロモーターを除去したpEGFP−C3ベクター(TaKaRa)に挿入し、GFP発現コンストラクトを構築した(phAIDp−GFP)。phAIDp−GFPのベクターマップを、図8に示した。
【0085】
(3)phAIDp−GFP安定発現動物細胞株の樹立及び遺伝子導入
hAIDp−GFP安定発現動物細胞株の作製には、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン細胞株(A549)、ヒトB細胞白血病細胞株BALL−1、ヒトB骨髄腫細胞株U−266、エプスタインバールウイルスにより不死化したヒトB細胞株(EBV−B)を用いた。
各細胞の培養には、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、BALL−1及びU−266の場合にはRPMI640培地、EBV−Bの場合にはERDF培地を用いた。
【0086】
上記hAIDp駆動のGFPリポーターベクター(phAIDp−GFP)を、リポフェクション法により、LipofectAMINE(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてヒト子宮頸ガン細胞株(HeLa)及びヒト肺ガン細胞株(A549)に導入した。
【0087】
トランスフェクションの前日に細胞を1x106cells/10ml dishの細胞密度で準備しておいた。翌日、phAIDp−GFP遺伝子を10μg分(液量85μl)とLipofectAMINE試薬15μlをOpit−MEM(Invitrogen)培地1.4mlで希釈し、室温にて15分間インキュベートした。この間に、細胞の培養培地を、血清を含まない新鮮なERDF培地(5ml/10ml dish)と交換し、混合液を添加した。遺伝子導入から3時間後に血清を含む新鮮な通常培地に培地交換を行い、また同時にG418(1mg/ml)によるセレクションを開始した。
このようにして、phAIDp−GFPを安定に発現するHeLa及びA549細胞株を樹立した。
【0088】
一方、BALL−1,U−266,EBV−Bはいずれも浮遊細胞で、phAIDp−GFP遺伝子導入が困難な細胞であった。そのため様々な遺伝子導入方法及び条件を検討し、接着系細胞で高い遺伝子導入効率が観察されていたFuGENE(Roche社)を試したが、満足できるものではなかった。そこでさらにNucleofector Device(Amaxa社)及びNucleofector Solution(Amaxa社)を用いたエレクトロポレーション法による遺伝子導入を試みた。その際、至適試薬及びプログラムは、Cell Line Nucleofector Optimization Kit(Amaxa社)を用い決定した。BALL−1,U−266,EBV−BともにV solution試薬を用い、T−16プログラムにより遺伝子導入を行った。詳細はNucleofectorキットに付属のプロトコールに従い行った。
【0089】
(4)乳酸菌
乳酸菌としては、以下の菌株を用いた。
ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(L25)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(L1〜4),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)(L5,6),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(L7,8),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(L9〜12,15,33),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)(L16,17),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)(L28),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)(L34),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus)(L26),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)(B2),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)(B8),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)(B12),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)(B13)を用いた。
【0090】
(5)乳酸菌処理
100℃で30分処理後凍結乾燥した乳酸菌の凍結乾燥加熱死菌体をサンプルとして用いた。凍結乾燥加熱死菌体は、上記hAIDp−GFP安定発現細胞株に終濃度10μg/mlとなるように添加し、2日間処理を行った。
【0091】
(6)フローサイトメーター解析
フローサイトメーター(Beckman Coulter,Miami,FL)を用いてGFPの発光強度の変化を追跡した。この蛍光強度の変化がhAIDプロモーター活性の変化として捉えることができる。無処理のものをコントロール(ctrl)とした。蛍光強度をヒストグラムとして展開し、未処理区においてピークの頻度値を示す蛍光強度よりも強い蛍光強度を示す細胞数の割合を数値化し、グラフに示した。HeLa、A549、BALL、U266の各細胞株の結果を、それぞれ図9、図10、図11、図12にそれぞれ示した。
【0092】
その結果、図9から明らかなように、Lactobacillus acidophilus(L1〜4)、Lactobacillus amylovorus(L5,6)、Lactobacillus brevis(L7)、Lactobacillus gasseri(L10)、Bifidobacterium bifidum(B2)で強いhAIDp転写活性化能が、Lactobacillus gasseri(L11,12,15,33)、Lactobacillus johnsonii(L16,17)、Lactobacillus lactis(L28)、Lactobacillus salivarius(L34)、Staphylococcus thermophilus(L26)、Bifidobacterium adolescentis(B8)、Bifidobacterium infantis(B12)、Bifidobacterium longum(B13)は中程度のAIDp転写活性化能が、それ以外の菌には弱いAIDp転写活性化能が認められた。
【0093】
図10の結果から、A549細胞においては、いずれの乳酸菌においても強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0094】
図11の結果から、BALL−1細胞においては、Lactobacillus amylovorus(L6)、Lactobacillus gasseri(L33),Lactobacillus salivarius(L34),Staphylococcus thermophilus(L26),Bifidobacterium adolescentis(B8),Bifidobacterium infantis(B12)、Bifidobacterium longum(B13)以外の乳酸菌に強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0095】
図12の結果から、U−266細胞においては、Staphylococcus thermophilus(L26)で弱いhAIDp転写活性化能が、Lactobacillus casei(L25)、Lactobacillus acidophilus(L1〜4)で中程度のhAIDp転写活性化能が、それ以外の乳酸菌で強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0096】
(7)ルシフェラーゼアッセイ
先に構築したpGEM−hAIDpよりEcoRI処理によりhAIDpを切り出し、EcoRI処理をしたBluescriptIIに挿入した。さらにSacI/HindIII消化によりhAIDpを切り出し、SacI/HindIII消化したpGL3−Basicに挿入し、ルシフェラーゼ活性を指標としてhAIDp活性を測定するレポーターベクターを作製した(pGL3−hAIDp)。BALL−1,U266,EBV−B各細胞に対しpGL3−hAIDp及び遺伝子導入効率を推定するためのコントロールプラスミド(pRK−TK)をNucleofector試薬により導入し、3時間後に培地交換を行った。phSIRT1p−GFPのときと同様48時間に渡り10μg/mlの濃度で乳酸菌の加熱死菌体を添加・培養し、Dual−Luciferase assayキットのプロトコールに則って、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性の測定を行った。
【0097】
(8)Quantitative Realtime PCRによる遺伝子発現の解析
phAIDp−GFP及びpGL3−hAIDpを用いた解析から再現性良く、hAIDpを活性化しうる乳酸菌を選抜し、それら乳酸菌存在下で培養したHeLa,A549,BALL−1,U266,EBV−Bにおける内在性hAID遺伝子の発現量の変化をQuantitative real−time PCR法により追跡した。
【0098】
内在性hAID遺伝子の発現を測定するためのReal−time PCR用のプライマーは、以下のものを用いた。
HA050797−F:CACCCTAATAATGGGTTGATGTCTG(配列番号16)
HA050797−R:CTGATTGGCATTTCTGAGATGAAG(配列番号17)
【0099】
また内部コントロールは上記実施例1と同様ヒトβアクチンあるいはヒトグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子を用いた。cDNA合成及びPCR反応も上記と同様に行った。
【0100】
実施例3(遺伝子発現を誘導するTLRの同定)
微生物を認識するレセプターとして機能しうる各種TLRの発現を、phSIRT1−GFPおよびphAID−GFPのそれぞれを導入したHeLa,A549,TIG−1,Caco−2,BALL−1,U266,EBV−Bにおいて検証した。
【0101】
Quantitative realtime PCR法用のプライマーとしては、以下の組み合わせを用い、方法は上記実施例1および実施例2の方法にならって行った。
【0102】
TLR1:
HA037841−F:CAGAGTGAATGGTGCCATTATGAAC(配列番号18)
HA037841−R:CCTTGGGCCATTCCAAATAAGTC(配列番号19)
【0103】
TLR2:
HA037842−F:ACTGGTGTCTGGCATGTGCTG(配列番号20)
HA037842−R:AGTAGGCATCCCGCTCACTGTAA(配列番号21)
【0104】
TLR3:
CH000255−F:CCCTGAGCTGTCAAGCCACTA(配列番号22)
CH000255−R:GGGCACTGTCTTTGCAAGATG(配列番号23)
【0105】
TLR4:
CH000256−F:CTGGGTGTGTTTCCATGTCTCA(配列番号24)
CH000256−R:CATGCGGACACACACACTTTC(配列番号25)
【0106】
TLR5:
HA037849−F:CAGTATTTGAGGTGGCCTGAGGA(配列番号26)
HA037849−R:GTTGCTACAGTTTGCAACGGAATG(配列番号27)
【0107】
TLR9:
HA048138−F:AGTCCTCGACCTGGCAGGAA(配列番号28)
HA048138−R:GCGTTGGCGCTAAGGTTGA(配列番号29)
【0108】
各種TLRリガンド(Human TLR1−9 Agonist Kit,InvivoGen)を購入し、phSIRT1−GFPを導入したHeLa,A549,Caco−2,TIG−1細胞及びphAID−GFPを導入したHeLa,A549,BALL−1,U266と共培養することで、それぞれの細胞内でのGFP強度が増強するTLRを同定した。GFP発現強度は、フローサイトメーターにより追跡した。
【0109】
phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞における結果を図13−1〜図13−12に示す。また、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞における結果を図14−1〜図14−12に示す。図13−1及び図14−13のconは、ネガティブコントロールを示す。図13−11および図14−11のL1、図14−12のL5、および図13−12のL7は、ポジティブコントロールを示す。点線が反応時のデータを示し、このデータが動いているものが反応を示したTLRとなる、具体的には、HeLaでは、TLR1(図13−2)、TLR2(図13−3)、TLR3(図13−4)、TLR9(図13−10)が反応を示し、A549では、ほぼ全てのTLRに反応性を示していた(図14−2〜図14−10)。これらのことより、乳酸菌のSIRT1への反応の少なくとも一部は、TLRを介して生じていることが示された。
【0110】
実施例4(GFPmutを用いたSHM増強乳酸菌のスクリーニング)
AID遺伝子は抗体のクラススイッチに加え、体細胞高頻度突然変異(Somatic hyper mutation:SHM)誘導能を有していることが知られている。そこでGFP遺伝子のコード領域内のAIDによるSHMのターゲットとなるような領域に停止コドンを人為的に導入したGFPmutというコンストラクトを作製した。GFPmutはhAID非存在下では無蛍光、hAID活性に応じて緑色蛍光を発する。このコンストラクトを安定に発現する細胞株を樹立することができれば、AIDのSHM活性を増強しうる乳酸菌の探索に応用できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、phSIRT1p−GFPのベクターマップである。
【図2】図2は、phSIRT1p−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図3】図3は、phSIRT1p−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図4】図4は、phSIRT1p−GFPを含むCaco−2細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図5】図5は、phSIRT1p−GFPを含むTIG−1細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図6】図6は、phSIRT1p−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果(ルシフェラーゼアッセイ)を示すグラフである。
【図7】図7は、phSIRT1p−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(ルシフェラーゼアッセイ)を示すグラフである。
【図8】図8は、phAIDp−GFPのベクターマップである。
【図9】図9は、phAIDp−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、phAIDp−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図11】図11は、phAIDp−GFPを含むBALL−1細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図12】図12は、phAIDp−GFPを含むU−266細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図13−1】図13−1は、実施例3のHeLa細胞におけるネガティブコントロールの結果を示す図である。
【図13−2】図13−2は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−1発現の結果を示す図である。
【図13−3】図13−3は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−2発現の結果を示す図である。
【図13−4】図13−4は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−3発現の結果を示す図である。
【図13−5】図13−5は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−4発現の結果を示す図である。
【図13−6】図13−6は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−5発現の結果を示す図である。
【図13−7】図13−7は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−6発現の結果を示す図である。
【図13−8】図13−8は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−7発現の結果を示す図である。
【図13−9】図13−9は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−8発現の結果を示す図である。
【図13−10】図13−10は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−9発現の結果を示す図である。
【図13−11】図13−11は、実施例3のHeLa細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図13−12】図13−12は、実施例3のHeLa細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−1】図14−1は、実施例3のA549細胞におけるネガティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−2】図14−2は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−1発現の結果を示す図である。
【図14−3】図14−3は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−2発現の結果を示す図である。
【図14−4】図14−4は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−3発現の結果を示す図である。
【図14−5】図14−5は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−4発現の結果を示す図である。
【図14−6】図14−6は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−5発現の結果を示す図である。
【図14−7】図14−7は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−6発現の結果を示す図である。
【図14−8】図14−8は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−7発現の結果を示す図である。
【図14−9】図14−9は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−8発現の結果を示す図である。
【図14−10】図14−10は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−9発現の結果を示す図である。
【図14−11】図14−11は、実施例3のA549細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−12】図14−12は、実施例3のA549細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、延命効果物質、および感染防御効果・ワクチン効果促進物質、前記物質の検定用コンストラクト、並びにそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
老化・寿命制御に関するこれまでの研究で、酵母、線虫、ショウジョウバエ等においてはカロリー制限が延命・抗老化を実現するための有効な処理であること、更には、熱や有毒化学薬品などのストレスに対する抵抗性も増強すること、そして、それらのカロリー制限による延命の実現には、NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するサーチュイン(Sirtuin)であるSir2が関与していることが明らかになっている。酵母Sir2の哺乳類ホモログとしてはSIRT1〜7が知られており、なかでもSIRT1は脂肪動員の増強、神経軸索変性の抑制、β細胞からのインスリン分泌、肝臓での糖新生等の制御に係わり(非特許文献1参照)、その制御を通じて延命を実現しているものと考えられている。
サーチュインを増強あるいは活性化する因子としては、赤ワイン中のポリフェノールであるレスベラトロールをはじめとした植物性ポリフェノール類が知られているに過ぎない(非特許文献2参照)。従って、サーチュイン遺伝子を増強する物質や、該物質を探索するための手段が望まれていた。
【0003】
一方、B細胞のクラススイッチ(class−switch recombination;CSR)に必須の遺伝子であるAID(Activation−Induced cytidine Deaminase)遺伝子は、老化に伴いその発現が低下し、同時に抗体レパトアも減少することが報告されている(非特許文献3および4参照)。すなわち、AIDの減少により高齢者は感染症にかかりやすくなる可能性が示唆され、感染防御におけるAID発現が重要なファクターである可能性がある。また、感染防御において最も重要な免疫器官の1つである腸管においてIgA濃度が上昇すると病原菌などを体外に排除する力が強くなるが、IgAへの産生にはAID活性化による抗体のクラススイッチが必須である。
【0004】
AIDはこのように種々の免疫系疾患治療の為のターゲット因子になりうるものと認識されながら、その制御機構、さらにはその発現・活性を制御するような食品成分に関しては報告されていない。また、タンパク質−核酸複合体がB細胞レセプター(B cell receptor;BCR)とToll様レセプター(Toll−like receptor;TLR)の両方に結合すると、BCRのみに結合するときよりもB細胞の活性化や抗体産生が促進されることが知られている(非特許文献5および6参照)。しかし、特に非タンパク質性抗原に対しては親和性と持続性に優れた中和抗体を誘導することは難しく、そのため有効なワクチンが未開発な例も多かった。そこで、抗体産生応答だけでなくB細胞の親和性成熟過程をも活性化することのできる物質、および該物質を探索するための手段が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】Genes Dev.,20:2913−2921(2006)
【非特許文献2】Nature,425:191−196(2003)
【非特許文献3】Exp. Gerontol.,37:427−439(2002)
【非特許文献4】Seminars Immunol.,17:378−384(2005)
【非特許文献5】Nature,416:603−607(2002)
【非特許文献6】J.Exp.Med.,202:1171−1177(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、延命・抗老化効果を有する物質や感染防御効果・ワクチン効果を有する物質を選抜することは、機能性食品、医薬品、化粧品の開発につながるものである。しかし、このような因子は従来知られていなかった上に、これらの因子を正確に、短時間で効率よく検定する方法は、従来知られていなかった。
【0007】
本発明の目的は、延命・抗老化効果を有する物質や感染防御効果・ワクチン効果を有する物質、およびこれらの物質を効率的に検定するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはヒトSIRT1(hSIRT1)のプロモーター領域を取得し、その転写活性化をGFP蛍光強度で追跡することのできるシステムを構築した。本システムを動物培養細胞に導入し、hSIRT1プロモーターを活性化しうる乳酸菌群を探索した結果、各種乳酸菌及びビフィズス菌が、hSIRT1プロモーターを活性化することが明らかとなった。
【0009】
また、本発明者らはヒトAIDのプロモーター領域を取得し、その転写活性化をGFP蛍光強度で追跡することのできるシステムを構築した。本システムを動物培養細胞に導入し、AIDプロモーターを活性化しうる乳酸菌群を探索した結果、各種乳酸菌が、AIDプロモーターを活性化することが明らかとなった。本システムを用いることで、感染防御能を有する乳酸菌やワクチン生産への応用が可能な乳酸菌の育種も可能になるものと考えられる。
【0010】
本発明は、以下の各発明を提供するものである。
〔1〕 サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質。
〔2〕 サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、〔1〕記載の延命効果物質。
〔3〕 乳酸菌または乳酸菌由来成分である、〔1〕または〔2〕に記載の延命効果物質。
〔4〕 乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔3〕に記載の延命効果物質。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の延命効果物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
〔6〕 サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト。
〔7〕 サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、〔6〕記載のコンストラクト。
〔8〕 〔6〕または〔7〕に記載のコンストラクトを含む細胞。
〔9〕 〔6〕または〔7〕に記載のコンストラクトまたは〔8〕に記載の細胞を含む、延命効果物質の検定用キット。
〔10〕 〔8〕に記載の細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、延命効果物質の検定方法。
〔11〕 前記延命効果物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である〔10〕に記載の検定方法。
〔12〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔11〕に記載の検定方法。
〔13〕 AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔14〕 乳酸菌または乳酸菌由来成分である、〔13〕に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔15〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔14〕に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
〔16〕 〔13〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
〔17〕 AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト。
〔18〕 〔17〕に記載のコンストラクトを含む細胞。
〔19〕 〔17〕に記載のコンストラクトまたは〔18〕に記載の細胞を含む、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キット。
〔20〕 〔18〕に記載の細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法。
〔21〕 前記感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である〔20〕に記載の検定方法。
〔22〕 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである〔21〕に記載の検定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、延命・抗老化という新たな機能性を有する物質が提供されると共に、該物質を検定し、選抜することができるので、延命を実現する新たな機能性食品の開発に繋げることができる。
また、本発明は、hSIRT1プロモーターの活性化を通じて延命を実現しうる相互作用の解明、つまり乳酸菌菌体の有する糖鎖・DNA等のリガンドとサーチュイン遺伝子を発現する動物細胞上のToll like receptorとの間の相互作用の解明に応用することができ、延命を実現しうるスーパーアンチエイジング乳酸菌の探索・創製への応用が期待できる。
【0012】
更に、本系は、乳酸菌の刺激で活性化されていることから、本系で検索される物質は、中でも、乳酸菌由来物質は、Toll like receptorを刺激しうる物質であり、Toll like receptorによる抗原提示細胞の活性化を通じた、抗癌作用に働く免疫系の増強が期待されることより、間接的ではあるが、免疫の抗癌作用を高める物質としても期待しうる物質である。
【0013】
更に、本発明により、感染防御効果やワクチン効果を促進する物質といった機能性物質が提供されると共に、該物質を検定し、選抜することができるので、感染防御を実現する新規機能性食品の開発や、新規ワクチンの開発に繋げることができる。
また、本発明によれば、AIDプロモーターの活性化を通じてAID活性化メカニズムの解明も可能であり、抗体産生応答の異常とそれに伴う疾病の改善を目的とした創薬の検索への応用も期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質
本発明は、延命効果物質と、感染防御効果・ワクチン効果促進物質との両者を提供するものである。以下、両発明のそれぞれに特徴的な部分について先に説明し、続いて共通する部分について説明する。
【0015】
(延命効果物質)
本発明の延命効果物質は、延命効果、すなわち抗癌作用をはじめとして生物の寿命を延長する効果を発揮する物質であり、サーチュイン遺伝子の活性を増強(活性化)することを特徴とする。サーチュインとは、酵母、線虫、ショウジョウバエの延命に寄与するとされるNAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するSir2のホモログを指し、哺乳類ではSIRT1〜7を挙げることができる。サーチュイン遺伝子の活性を増強することの確認は、下記の延命効果物質検定用コンストラクトによりそのサーチュイン遺伝子のプロモーター活性を分析して行うことができる。
【0016】
(感染防御効果・ワクチン効果促進物質)
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、感染防御効果およびワクチン効果のうちいずれかの効果、または両方の効果を発揮する物質であり、AID遺伝子の活性を増強(活性化)することを特徴とする。AID(Activation−Induced cytidine Deaminase)遺伝子とは、B細胞のクラススイッチ(class−switch recombination;CSR)に必須の遺伝子である。AID遺伝子の活性を増強することの確認は、下記の感染防御効果・ワクチン効果促進物質検定用コンストラクトによりそのAID遺伝子のプロモーター活性を分析して行うことができる。
【0017】
本発明の延命効果物質、および感染防御効果・ワクチン効果促進物質としては、乳酸菌や他の菌類・酵母類、他の動植物由来の成分である蛋白質、糖類、核酸、脂質、ポリフェノール、食物繊維、ミネラル、ビタミン等を挙げることができ、特に菌類やその成分が好ましい。菌類としては、乳酸菌を挙げることができる。
【0018】
乳酸菌は、腸内細菌にも分類されるものが好ましく、例えば、ラクトバチルス属乳酸菌、ビフィドバクテリウム属乳酸菌、ラクトコッカス属乳酸菌、スタフィロコッカス属乳酸菌などを挙げることができる。
【0019】
ラクトバチルス属乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボルス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・ラクティスなどがある。
ビフィドバクテリウム属乳酸菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどがある。
ラクトコッカス属乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクティスなどがある。
スタフィロコッカス属乳酸菌としては、スタフィロコッカス・サーモフィルスなどがある。
【0020】
これらの乳酸菌のうち、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、特にラクトバチルス・アシドフィルスは、サーチュイン遺伝子の活性を増強することが確認されている。
【0021】
また、これらの実施例のうち、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、特にラクトバチルス・アシドフィルスは、AID遺伝子を活性化するものであり、感染防御効果・ワクチン効果促進物質として有用である。
【0022】
本発明の延命効果物質は、各種の食品、化粧品、医薬品等の成分として利用することができ、特に、延命を実現しうる新たな機能性食品として有用である。
また、本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質も、各種の食品、化粧品、医薬品等の成分として利用することができ、特に、感染防御を実現する新規機能性食品や新規ワクチンの開発に繋げることができる。
【0023】
2.延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定
本発明においては、延命効果物質の検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトの2つを提供する。以下、両発明のそれぞれに特徴的な部分について先に説明し、続いて共通する部分について説明する。
【0024】
(延命効果物質検定用コンストラクト)
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトは、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備える。サーチュイン遺伝子については既に延命効果物質の欄において述べたとおりである。
【0025】
hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するとは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドのhSIRT1のプロモーター活性の90%以上、好ましくは95%以上の活性を有することを意味し、好ましくは実質的に同等以上の活性を有することを意味する。hSIRT1のプロモーター活性の確認は、hSIRT1遺伝子の発現が増強または活性化されるかどうかの確認により行うことができる。
【0026】
hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、配列表の配列番号1記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列表の配列番号1記載の塩基配列は、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製されるhSIRT1遺伝子の上流−1593〜−1塩基部分(+1がhSIRT1遺伝子の翻訳開始点とする。)の領域である。
【0027】
また、hSIRT1遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであれば、配列表の配列番号1記載の塩基配列に改変を加えた塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。例えば、配列番号1に記載の塩基配列と相同性が80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であるポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0028】
本発明において、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、PCR等により得ることができる。例えば、hSIRT1遺伝子の場合、配列番号1に記載の塩基配列を増幅するプライマーセットを用いて、ヒト由来の鋳型ゲノムDNAをPCR等により増幅することにより、配列表の配列番号1記載の塩基配列を得ることができる。一方、配列番号1に記載の塩基配列に基づき設計したプローブを用いて、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることによっても、配列表の配列番号1記載の塩基配列を得ることができる。
【0029】
(感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト)
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトは、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備える。AID遺伝子については既に延命効果物質の欄において述べたとおりである。
【0030】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するとは、配列表の配列番号2記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドのAID遺伝子のプロモーター活性の90%以上の活性を有することを意味し、好ましくは実質的に同等以上の活性を有することを意味する。AID遺伝子のプロモーター活性の確認は、AID遺伝子の発現が増強または活性化されるかどうかの確認により行うことができる。
【0031】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、配列表の配列番号2記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは、配列表の配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列表の配列番号2記載の塩基配列は、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1から得られるヒトAID遺伝子の上流−520〜−1塩基部分(+1がAID遺伝子の翻訳開始点とする。)の領域である。
【0032】
また、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであれば、配列表の配列番号2記載の塩基配列に改変を加えた塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。例えば、配列番号2に記載の塩基配列と相同性が80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であるポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0033】
本発明において、AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、PCR等により得ることができる。例えば、配列番号2に記載の塩基配列を増幅するプライマーセットを用いて、ヒト由来の鋳型ゲノムDNAをPCR等により増幅することにより、配列表の配列番号2記載の塩基配列を得ることができる。一方、配列番号2に記載の塩基配列に基づき設計したプローブを用いて、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることによっても、配列表の配列番号2記載の塩基配列を得ることができる。
【0034】
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトとは、更にリポーター活性を有するポリヌクレオチドなどを含むものであってもよい。リポーター活性を有するポリヌクレオチドを含むことにより、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性やAID遺伝子のプロモーター活性の確認を容易に行うことができる。
【0035】
リポーター活性を有するポリヌクレオチドとしては、細胞内において遺伝子発現の指標として使用することのできる公知のリポータータンパク質をコードする遺伝子を用いることができる。リポータータンパク質としては、GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)をはじめとする各種蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ等を挙げることができる。このうち、本発明においてはGFPが好ましい。
【0036】
本発明の延命効果物質検定用コンストラクトと、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトの調製は、例えば、hSIRT1のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを、レポーター活性を有するポリヌクレオチドを含むベクターのレポーターの発現を制御するプロモーターと置換することで行うことができる。このようなベクターとしては、リポータータンパク質がGFPの場合には、pEGFP−C3ベクター(TaKaRa)を挙げることができる。
【0037】
(各コンストラクトを含む細胞)
上記本発明の延命効果物質検定用コンストラクトか、或いは感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトは、細胞に導入して各物質の検索システムとして機能させることができる。
【0038】
各コンストラクトの導入先となる宿主細胞としては、ヒトをはじめとする各種生物の細胞を挙げることができ、動物細胞が好ましい。また、細胞の種類には特に限定はない。代表的なものとしては、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン由来細胞株A549、ヒト大腸ガン由来細胞株CaCo−2、ヒト正常線維芽細胞TIG−1、ヒトB細胞白血病細胞株BALL−1、ヒトB骨髄腫細胞株U−266、エプスタインバールウイルスにより不死化したヒトB細胞株(EBV−B)を挙げることができる。
【0039】
宿主細胞に上記本発明のコンストラクトを取り込ませる方法は、リポフェクション法及びエレクトロポレーション法などによることができ、市販のトランスフェクション試薬(LipofectAMINE(Invitrogen社製)など)やNucleofector Device及びNucleofector Solution(Amaxa社)等を利用してもよい。
【0040】
本発明の細胞は、宿主細胞の種類に応じて培地を選択して(例えば、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、CaCo−2及びTIG−1の場合にはMEM培地、BALL−1及びU−266の場合にはRPMI640培地、EBV−Bの場合にはERDF培地など)、常法により培養することができる。
【0041】
(本発明の検定用キット)
上述の本発明のコンストラクトおよび細胞は、それぞれ、有用物質の検定用キットとして利用することができる。
すなわち、本発明の第1のキットは、延命効果物質の検定用キットであって、上述の延命効果物質検定用コンストラクトまたは該コンストラクトを含む細胞を含むものである。本発明の第2のキットは、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キットであって、上述の感染防御効果・ワクチン効果促進物質検定用コンストラクトまたは該コンストラクトを含む細胞を含むものである。
各コンストラクト、細胞については、既に述べたとおりである。
【0042】
本発明のキットにおいて、それぞれのコンストラクトを含む場合は、コンストラクトの導入先である宿主細胞や、細胞を導入するための培地、細胞へコンストラクトを取り込ませるための試薬、検体と細胞とを接触させるための培地等を一緒に含めることができる。宿主細胞や培地については既に述べたとおりであり、試薬についても既に述べた細胞の取り込み方法のいずれかの方法において用いる試薬を適宜選択することができる。検体と細胞とを接触させるための培地については、後述する本発明の検出方法の欄において説明するとおりである。
一方、本発明のキットにおいて細胞を含む場合には、検体と細胞とを接触させるための培地を含めることができる。
【0043】
(本発明の検定方法)
上述の本発明の細胞は、それぞれ、有用物質の検定に用いることができる。
すなわち、本発明の第一の検定方法は、延命効果物質の検定方法であって、延命効果物質検定用コンストラクトを含有する細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする。
本発明の第二の検定方法は、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法であって、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクトを含む細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする。
【0044】
本発明の2つの検定方法は、細胞と試料とを接触させ、プロモーター活性を測定する点においては共通である。
試料としては、特に限定されるものではないが、例えば、食品成分・生薬成分・医薬品成分・化粧品成分等の天然及び化学合成成分等であれば良く、より具体的には、乳酸菌や他の菌類・酵母類、他の動植物由来の成分である蛋白質、糖類、核酸、脂質、ポリフェノール、食物繊維、ミネラル、ビタミン等を挙げることができ、特に菌類やその成分が好ましい。菌類としては、乳酸菌を挙げることができる。乳酸菌は、腸内細菌にも分類されるものが好ましく、例えば、ラクトバチルス属乳酸菌、ビフィドバクテリウム属乳酸菌、ラクトコッカス属乳酸菌、スタフィロコッカス属乳酸菌などを挙げることができる。各属の乳酸菌の具体例については、上述の延命効果物質および感染防御効果・ワクチン効果促進物質の説明の欄で列挙したとおりである。
【0045】
試料としての菌類の形態は、生菌体、死菌体、培養上清などが挙げられ、中でも死菌体が好ましい。死菌体は、生菌体を加熱(例えば、60〜120℃で20分〜1時間程度)、凍結乾燥、アルコール処理等、更には食品用途以外であればホルマリン処理することにより調製され得る。
【0046】
本発明の分析方法においては、まず試料と細胞とを接触させる。試料と細胞との接触は、細胞に対し試料を添加して一定時間静置することにより行うことができる。試料が上記乳酸菌の場合の例を示すと、乳酸菌の加熱死菌体を細胞に対し終濃度0.1〜10μg/mlとなるように添加し、12時間〜3日間程度処理を行う。
【0047】
本発明の各検定方法においては、続いてプロモーター活性を測定する。プロモーター活性の測定は、細胞にリポーター活性を有するポリヌクレオチドが含まれている場合には、その発現強度の変化を追跡することにより行うことができる。追跡は、蛍光強度の観察によることができる。蛍光強度は、フローサイトメーターにより測定することができる。
【0048】
本発明の第一の検定方法、すなわち、延命効果物質の検定方法により、試料の延命効果を検定することができる。すなわち、試料が延命効果を有するか否かの確認、延命効果の程度の確認などを行うことができるほか、複数ある試料の中から、延命効果を有する物質を選抜することができる。
【0049】
例えば、延命効果物質としての各種乳酸菌または乳酸菌由来成分の探索に用いることができる。具体的には、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)を延命効果物質として選抜することができ、特にラクトバチルス・アシドフィルスを優れた延命効果物質として選抜することができる。
【0050】
本発明の延命効果物質の検定方法によれば、乳酸菌が直接接触をする可能性のある腸管系の細胞株を宿主細胞として用いることで、腸管細胞でのSIRT1発現増強と延命実現に対するSIRT1の新たな関連が明らかになるとともに、乳酸菌による腸管細胞の機能修飾を通じた延命実現の可能性についても解析を行うことが可能である。
【0051】
本発明の第二の検定方法、すなわち、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法により、試料の感染防御効果・ワクチン効果(いずれかの効果、または両方の効果)を検定することができる。すなわち、試料が感染防御効果・ワクチン効果を有するか否かの確認、感染防御効果・ワクチン効果の程度の確認などを行うことができるほか、複数ある試料の中から、感染防御効果・ワクチン効果を有する物質を選抜することができる。
【0052】
例えば、感染防御効果・ワクチン効果促進物質としての各種乳酸菌または乳酸菌由来成分の探索に用いることができる。具体的には、後述の実施例に示すように、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)を感染防御効果・ワクチン効果促進物質として選抜することができ、特にラクトバチルス・アシドフィルスを優れた感染防御効果・ワクチン効果促進物質として選抜することができる。
【0053】
本発明の感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法によれば、試料の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を検定することができる。すなわち、抗体産生応答だけでなくB細胞のCSR過程の活性化及びB細胞の親和性成熟過程の活性化が可能であり、非タンパク質性抗原に対しては親和性と持続性に優れた中和抗体を誘導することができる物質、特に乳酸菌を選抜することが可能であり、ワクチンへの応用が可能である。
【実施例】
【0054】
実施例1〔hSIRT1プロモーター転写活性化乳酸菌の同定〕
(1)hSIRT1プロモーター(hSIRT1p)の取得
hSIRT1pとして、ATG翻訳開始点より−1593bp〜−1bp(+1は翻訳開始点を示すものとする。)を、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製したゲノムDNAを鋳型として用いるPCRにより取得した。PCR反応には、宝酒造のTaKaRa LA Taq(TaKaRa,Shiga,Japan)を用い、指定のプロトコールに従って反応を進めた。PCRの反応液組成は、以下に示すとおりである。PCR反応条件は94℃にて2分間変性を行ったあと、98℃;20秒、68℃;1分を35サイクルとした。なお、非特異的反応を抑えるために、全ての操作は氷上にて速やかに行った。
【0055】
(PCR反応液組成)
滅菌水 25.9μl
10xPCR Buffer 5μl
25mM MgCl2 5μl
2.5mM dNTP 8μl
10pmol/μl primer(5') 1μl
10pmol/μl primer(3') 1μl
TIG−1ゲノムDNA 3.6μl
LA−Taq 1μl
合 計 50μl
【0056】
PCRに使用したプライマーhSIRTp−AseI(F)およびhSIRTp−NheI(R)のそれぞれの配列は、配列表の配列番号3および4、並びに表1に示した。尚、表1に示す配列中、大文字はhSIRT1プロモーター内の配列を示し、小文字はPCRにより付加するそれぞれの制限酵素認識配列を示し、表2以降に示すプライマー配列においても同じである。GFP発現ベクターの構築にはhSIRTp−AseI(F)およびhSIRTp−NheI(R)をそれぞれ用いた。また、すべてのオリゴ合成はニッポンEGT社(Toyama,Japan)に依頼した。
【0057】
【表1】
【0058】
それぞれ反応終了後、1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドを切り出した後、ゲル抽出を行った。ゲル抽出はプロメガ社のWizard SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega,Madison,WI)を使用し、製品のプロトコールに従って行った。
次に、これらのPCR産物をTAクローニング用のベクターであるpGEM−T Easy vector(Promega)へサブクローニングした(pGEM−hSIRT1p)。
【0059】
(2)点変異の導入
得られたヒトSIRT1プロモーター(hSIRT1p)全長のシークエンスを確認した。その結果3カ所に点変異が確認されたため、部位特異的変異導入法により点変異の修正を行った。
すなわち、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用い、製品付属のプロトコールに従いPCR法にて修正を行った。PCRの反応条件は95℃;30秒のあと、95℃;30秒、55℃;1分を12サイクルとした。修正に使用したプライマーquichchange−1436、quichchange−1401、quichchange−160のそれぞれの配列は、配列表の配列番号5、6および7、並びに表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
このPCR産物に制限酵素DpnIを加えて37℃で1時間処理し、鋳型DNAの消化を行った。上記サンプル1μlにつきSupercompetent cell XL−1−blueを100μl加えて、氷上にて30分静置し、42℃で45秒間熱処理を行った後、さらに氷上にて2分間静置した。その後、SOC培地を400μl加え、200〜250rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。その後、遠心して得られた菌体ペレットをLB(Amp+)プレートに播種し、37℃にて一晩培養した。翌日、適当なコロニーをピックアップし、それぞれシークエンスを確認した。
【0062】
(3)pEGFP−C3への組換え
上記により点変異を修正したpGEM−hSIRT1pから、AseI/NheI消化にてプロモーター断片を切り出し、AseI/NheI消化によりCMVプロモーターを除去したpEGFP−C3ベクター(TaKaRa)に挿入し、GFP発現コンストラクトを構築した(phSIRT1p−GFP)。phSIRT1p−GFPのベクターマップを、図1に示した。
【0063】
(4)phSIRT1p−GFP安定発現動物細胞の樹立
phSIRT1p−GFP安定発現動物細胞株の作製には、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン由来細胞株A549、ヒト大腸ガン由来細胞株CaCo−2を用いた。
また、生体の正常組織におけるSIRT1制御に対する乳酸菌の効果を検証可能とするために、ヒト正常線維芽細胞(TIG−1)を用いた。
各細胞の培養には、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、CaCo−2及びTIG−1の場合にはMEM培地を用いた。
【0064】
(5)遺伝子導入
上記hSIRT1p駆動のGFPリポーターベクター(phSIRT1p−GFP)を、ヒト子宮頸ガン細胞株(HeLa)、ヒト肺ガン細胞株(A549)及びヒト大腸がん細胞株(Caco−2)にリポフェクション法により導入した。
すなわち、上記接着系動物細胞へのphSIRT1p−GFP導入に当たっては、LipofectAMINE(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いた。トランスフェクションの前日に細胞を1x106cells/10ml dishの細胞密度で準備した。翌日、phSIRT1p−GFP遺伝子を10μg分(液量85μl)とLipofectAMINE試薬15μlをOpit−MEM培地1.4mlで希釈し、室温にて15分間インキュベートした。この間に、細胞の培養培地を、血清を含まない新鮮なERDF培地(5ml/10ml dish)と交換し、混合液を添加した。その後、遺伝子導入から3時間後に血清を含む新鮮な通常培地に培地交換を行い、また同時にG418(1mg/ml)による遺伝子導入細胞の薬剤選択を開始した。
このようにして、phSIRT1p−GFPを安定に発現するHeLa,A549及びCaco−2細胞株を樹立した。
【0065】
一方、TIG−1細胞に対して、他の細胞と同様phSIRT1p−GFPを導入することを試みたが、従来のリポフェクション法では遺伝子導入効率が低く、安定株を作ることは困難であった。そこで、Nucleofector Device(Amaxa社)及びNucleofector Solution(Amaxa社)を用いたエレクトロポレーション法による遺伝子導入を試みた。ところがTIG−1用として特化された遺伝子導入条件及びNucleofector Solutionはなかったので、様々な条件でエレクトロポレーションを行い、TIG−1細胞に対する遺伝子導入の最適条件を決定し、実際にはR Solution試薬を用い、U−23プログラムを用いて遺伝子導入を行った。詳細はNucleofectorキットに付属のプロトコールに従い行った。
【0066】
(6)乳酸菌
乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(L1,3,4),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)(L5.6),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(L7),ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)(L8),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(L10),ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(L22),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)(L34),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)(B1,2),ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)(B5),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)(B8),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)(B11),ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(SK303),ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(L25)を用いた。
【0067】
(7)乳酸菌処理
100℃で30分間処理後凍結乾燥した乳酸菌の凍結乾燥加熱死菌体をサンプルとして用いた。凍結乾燥死菌体は、上記遺伝子導入動物細胞に終濃度10μg/mlとなるように添加し、2日間培養を行った。
ポジティブコントロールは、カロリー制限をin vitro培養系で模倣し、SIRT1発現増強効果があるとされている血清及び糖抜き培地での16時間培養処理(CR処理)とした。
【0068】
(8)フローサイトメーター解析
フローサイトメーター(Beckman Coulter,Miami,FL)を用いてGFPの発現強度の変化を追跡した。この蛍光強度の変化がhSIRT1プロモーター活性の変化として捉えることができる。蛍光強度をヒストグラムとして展開し、未処理区においてピークの頻度値を示す蛍光強度よりも強い蛍光強度を示す細胞数の割合を数値化し、グラフに示した。HeLa、A549及びCaco−2の各細胞株における結果を、それぞれ図2、図3、図4に示した。また、TIG−1細胞における結果を、図5に示した。
【0069】
図2〜4から明らかなように、Lactobacillus acidophilus(L1,3,4)は、全ての細胞株で、Lactobacillus amylovorus(L5.6)はA549及びCaco−2細胞で、Lactobacillus brevis(L7)は全ての細胞株で、Lactobacillus crispatus(L8)はA549及びCaco−2細胞で、Lactobacillus gasseri(L10)はHeLa及びA549細胞で、Lactobacillus reuteri(L22)はA549細胞で、Bifidobacterium bifidum(B1,2)はA549細胞で、Bifidobacterium breve(B5)はA549細胞で、Bifidobacterium adolescentis(B8)はA549細胞で、Bifidobacterium infantis(B11)はA549細胞で、Lactococcus lactis(SK303)はA549細胞でそれぞれ再現性良く強い活性が、Lactobacillus salivarius(L34)はHeLa及びA549で再現性良く弱めの活性が観察された。
【0070】
また図5から明らかなように、TIG−1細胞では、Lactobacillus acidophilus(L4)、Lactobacillus amylovorus(L6)及びLactobacillus brevis(L7)で高い活性が観察された。
【0071】
(9)ルシフェラーゼアッセイ
先に構築したpGEM−hSIRT1pよりNotI消化によりhSIRT1pを切り出し、NotI消化したBluescriptIIに挿入した。さらにSacI/BamHI消化によりhSIRT1pを切り出し、SacI/BglII消化したpGL3−Basic(Promega)に挿入し、ルシフェラーゼ活性を指標としてhSIRT1p活性を測定するレポーターベクターを作製した(pGL3−hSIRT1p)。HeLa,A549,Caco−2,TIG−1細胞に対しpGL3−hSIRT1p及び遺伝子導入効率を推定するためのコントロールプラスミド(pRL−TK)をLipofectoamine試薬により導入し、3時間後に培地交換を行った。
【0072】
通常はここからphSIRT1p−GFPのときと同様48時間に渡り10μg/mlの濃度で乳酸菌の加熱死菌体を添加・培養し、Dual−Luciferase assayキットのプロトコールに則って、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性の測定を行う。ところがこの条件では、サンプル間のデータのばらつきが大きかった。そこで細胞毎に、乳酸菌加熱死菌体処理及び培養時間の至適化を行った。その結果、HeLaでは遺伝子導入後3時間後に培地交換、さらに21時間後に培地交換とともに乳酸菌添加(10μg/ml)し、24時間後にプロモーターアッセイを行うことにより、再現性良く、サンプル間のデータのばらつきの少ないデータを得ることができた。また、A549では遺伝子導入後3時間後に培地交換とともに乳酸菌を添加して、さらに3日間培養後プロモーターアッセイを行うことにより、再現性良く、サンプル間のデータのばらつきの少ないデータを得ることができた。この為、以後、この条件で乳酸菌加熱死菌体のhSIRT1p活性に与える影響を検証した。HeLaおよびA549の各細胞株における結果を、それぞれ図6および図7に示す。
【0073】
その結果、図6からわかるように、HeLa細胞では、Bifidobacterium adolescentis(B8)以外の乳酸菌で高いSIRT1pの転写活性化を観察することができた。また、図7からわかるように、A549細胞では、Lactobacillus acidophilus(L4)以外の乳酸菌で高いSIRT1pの転写活性化を観察することができた。
【0074】
(10)Quantitative Realtime PCRによる遺伝子発現の解析
phSIRT1−GFP及びpGL3−hSIRT1を用いた解析から再現性良く、hSIRT1pを活性化しうる乳酸菌を選抜し、それら乳酸菌存在下で培養したHeLa,A549,TIG−1,Caco−2における内在性hSIRT1遺伝子の発現量の変化をQuantitative real−time PCR法により追跡した。この際、各細胞における乳酸菌の処理条件は、前記実験と同様に至適化を行ってから決定するものとした。内在性hSIRT1遺伝子の発現を測定するためのReal−time PCR用のプライマーは、以下のものを用いた。
HA044263−F:GCCTCACATGCAAGCTCTAGTGAC(配列番号10)
HA044263−R:TTCGAGGATCTGTGCCAATCATAA(配列番号11)
【0075】
また内部コントロールとしてはヒトβアクチンあるいはヒトグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子を用いた。その際のプライマーは、以下のものを用いた。
【0076】
βアクチンの場合:
HA067803−F:TGGCACCCAGCACAATGAA(配列番号12)
HA067803−R:CTAAGTCATAGTCCGCCTAGAAGCA(配列番号13)
【0077】
GAPDHの場合:
HA031578−F:GCACCGTCAAGGCTGAGAAC(配列番号14)
HA031578−R:ATGGTGGTGAAGACGCCAGT(配列番号15)
【0078】
cDNA合成は、M−MLV Reverse Transcriptase RNase H Minus(Promega)を用い常法に基づき行った。PCR反応はSYBR Premix Ex Taq(TaKaRa)を用い、thermal Cycler Dice(TaKaRa)を用いて行った。
【0079】
実施例2〔ヒトAIDプロモーター転写活性化乳酸菌の同定〕
(1)ヒトAIDプロモーター(hAIDp)の取得
hAIDプロモーターとして、ATG翻訳開始点より−520bp〜−1bp(+1は翻訳開始点を示すものとする。)を、ヒト正常線維芽細胞株TIG−1より調製したゲノムDNAを鋳型として用いるPCR法により取得した。PCR反応には、宝酒造のTaKaRa LA Taq(TaKaRa,Shiga,Japan)を用い、指定のプロトコールに従って反応を進めた。PCRの反応液組成は、以下に示すとおりである。PCR反応条件は94℃にて2分間変性を行ったあと、98℃;20秒、68℃;1分を35サイクルとした。なお、非特異的反応を抑えるために、全ての操作は氷上にて速やかに行った。
【0080】
(PCR反応液組成)
滅菌水 25.9μl
10x PCR Buffer 5μl
25mM MgCl2 5μl
2.5mM dNTP 8μl
10pmol/μl primer(5') 1μl
10pmol/μl primer(3') 1μl
TIG−1 ゲノムDNA 3.6μl
LA−Taq 1μl
合 計 50μl
【0081】
PCRに使用したプライマーの配列は表3に示した。GFP発現ベクターの構築にはhAIDp−NdeI(F)およびhAIDp−XbaI(R)をそれぞれ用いた。また、すべての合成はニッポンEGT社(Toyama,Japan)に依頼した。
【0082】
【表3】
【0083】
それぞれ反応終了後、1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドを切り出した後、ゲル抽出を行った。ゲル抽出はプロメガ社のWizard SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega,Madison,WI)を使用し、製品のプロトコールに従って行った。
次に、このPCR産物はTAクローニング用のベクターであるpGEM−T Easy vector(Promega)へサブクローニングした(pGEM−hAIDp)。
【0084】
(2)pEGFP−C3への組換え
シークエンスを確認したあとのpGEM−hAIDpから、NdeIおよびXbaI消化にてプロモーター断片を切り出し、AseI及びNheI消化によりCMVプロモーターを除去したpEGFP−C3ベクター(TaKaRa)に挿入し、GFP発現コンストラクトを構築した(phAIDp−GFP)。phAIDp−GFPのベクターマップを、図8に示した。
【0085】
(3)phAIDp−GFP安定発現動物細胞株の樹立及び遺伝子導入
hAIDp−GFP安定発現動物細胞株の作製には、ヒト子宮頸ガン由来細胞株HeLa、ヒト肺ガン細胞株(A549)、ヒトB細胞白血病細胞株BALL−1、ヒトB骨髄腫細胞株U−266、エプスタインバールウイルスにより不死化したヒトB細胞株(EBV−B)を用いた。
各細胞の培養には、HeLaの場合にはDMEM培地、A549の場合にはERDF培地、BALL−1及びU−266の場合にはRPMI640培地、EBV−Bの場合にはERDF培地を用いた。
【0086】
上記hAIDp駆動のGFPリポーターベクター(phAIDp−GFP)を、リポフェクション法により、LipofectAMINE(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてヒト子宮頸ガン細胞株(HeLa)及びヒト肺ガン細胞株(A549)に導入した。
【0087】
トランスフェクションの前日に細胞を1x106cells/10ml dishの細胞密度で準備しておいた。翌日、phAIDp−GFP遺伝子を10μg分(液量85μl)とLipofectAMINE試薬15μlをOpit−MEM(Invitrogen)培地1.4mlで希釈し、室温にて15分間インキュベートした。この間に、細胞の培養培地を、血清を含まない新鮮なERDF培地(5ml/10ml dish)と交換し、混合液を添加した。遺伝子導入から3時間後に血清を含む新鮮な通常培地に培地交換を行い、また同時にG418(1mg/ml)によるセレクションを開始した。
このようにして、phAIDp−GFPを安定に発現するHeLa及びA549細胞株を樹立した。
【0088】
一方、BALL−1,U−266,EBV−Bはいずれも浮遊細胞で、phAIDp−GFP遺伝子導入が困難な細胞であった。そのため様々な遺伝子導入方法及び条件を検討し、接着系細胞で高い遺伝子導入効率が観察されていたFuGENE(Roche社)を試したが、満足できるものではなかった。そこでさらにNucleofector Device(Amaxa社)及びNucleofector Solution(Amaxa社)を用いたエレクトロポレーション法による遺伝子導入を試みた。その際、至適試薬及びプログラムは、Cell Line Nucleofector Optimization Kit(Amaxa社)を用い決定した。BALL−1,U−266,EBV−BともにV solution試薬を用い、T−16プログラムにより遺伝子導入を行った。詳細はNucleofectorキットに付属のプロトコールに従い行った。
【0089】
(4)乳酸菌
乳酸菌としては、以下の菌株を用いた。
ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(L25)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(L1〜4),ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)(L5,6),ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(L7,8),ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(L9〜12,15,33),ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)(L16,17),ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)(L28),ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)(L34),スタフィロコッカス・サーモフィルス(Staphylococcus thermophilus)(L26),ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)(B2),ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)(B8),ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)(B12),ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)(B13)を用いた。
【0090】
(5)乳酸菌処理
100℃で30分処理後凍結乾燥した乳酸菌の凍結乾燥加熱死菌体をサンプルとして用いた。凍結乾燥加熱死菌体は、上記hAIDp−GFP安定発現細胞株に終濃度10μg/mlとなるように添加し、2日間処理を行った。
【0091】
(6)フローサイトメーター解析
フローサイトメーター(Beckman Coulter,Miami,FL)を用いてGFPの発光強度の変化を追跡した。この蛍光強度の変化がhAIDプロモーター活性の変化として捉えることができる。無処理のものをコントロール(ctrl)とした。蛍光強度をヒストグラムとして展開し、未処理区においてピークの頻度値を示す蛍光強度よりも強い蛍光強度を示す細胞数の割合を数値化し、グラフに示した。HeLa、A549、BALL、U266の各細胞株の結果を、それぞれ図9、図10、図11、図12にそれぞれ示した。
【0092】
その結果、図9から明らかなように、Lactobacillus acidophilus(L1〜4)、Lactobacillus amylovorus(L5,6)、Lactobacillus brevis(L7)、Lactobacillus gasseri(L10)、Bifidobacterium bifidum(B2)で強いhAIDp転写活性化能が、Lactobacillus gasseri(L11,12,15,33)、Lactobacillus johnsonii(L16,17)、Lactobacillus lactis(L28)、Lactobacillus salivarius(L34)、Staphylococcus thermophilus(L26)、Bifidobacterium adolescentis(B8)、Bifidobacterium infantis(B12)、Bifidobacterium longum(B13)は中程度のAIDp転写活性化能が、それ以外の菌には弱いAIDp転写活性化能が認められた。
【0093】
図10の結果から、A549細胞においては、いずれの乳酸菌においても強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0094】
図11の結果から、BALL−1細胞においては、Lactobacillus amylovorus(L6)、Lactobacillus gasseri(L33),Lactobacillus salivarius(L34),Staphylococcus thermophilus(L26),Bifidobacterium adolescentis(B8),Bifidobacterium infantis(B12)、Bifidobacterium longum(B13)以外の乳酸菌に強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0095】
図12の結果から、U−266細胞においては、Staphylococcus thermophilus(L26)で弱いhAIDp転写活性化能が、Lactobacillus casei(L25)、Lactobacillus acidophilus(L1〜4)で中程度のhAIDp転写活性化能が、それ以外の乳酸菌で強いhAIDp転写活性化能が認められた。
【0096】
(7)ルシフェラーゼアッセイ
先に構築したpGEM−hAIDpよりEcoRI処理によりhAIDpを切り出し、EcoRI処理をしたBluescriptIIに挿入した。さらにSacI/HindIII消化によりhAIDpを切り出し、SacI/HindIII消化したpGL3−Basicに挿入し、ルシフェラーゼ活性を指標としてhAIDp活性を測定するレポーターベクターを作製した(pGL3−hAIDp)。BALL−1,U266,EBV−B各細胞に対しpGL3−hAIDp及び遺伝子導入効率を推定するためのコントロールプラスミド(pRK−TK)をNucleofector試薬により導入し、3時間後に培地交換を行った。phSIRT1p−GFPのときと同様48時間に渡り10μg/mlの濃度で乳酸菌の加熱死菌体を添加・培養し、Dual−Luciferase assayキットのプロトコールに則って、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性の測定を行った。
【0097】
(8)Quantitative Realtime PCRによる遺伝子発現の解析
phAIDp−GFP及びpGL3−hAIDpを用いた解析から再現性良く、hAIDpを活性化しうる乳酸菌を選抜し、それら乳酸菌存在下で培養したHeLa,A549,BALL−1,U266,EBV−Bにおける内在性hAID遺伝子の発現量の変化をQuantitative real−time PCR法により追跡した。
【0098】
内在性hAID遺伝子の発現を測定するためのReal−time PCR用のプライマーは、以下のものを用いた。
HA050797−F:CACCCTAATAATGGGTTGATGTCTG(配列番号16)
HA050797−R:CTGATTGGCATTTCTGAGATGAAG(配列番号17)
【0099】
また内部コントロールは上記実施例1と同様ヒトβアクチンあるいはヒトグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子を用いた。cDNA合成及びPCR反応も上記と同様に行った。
【0100】
実施例3(遺伝子発現を誘導するTLRの同定)
微生物を認識するレセプターとして機能しうる各種TLRの発現を、phSIRT1−GFPおよびphAID−GFPのそれぞれを導入したHeLa,A549,TIG−1,Caco−2,BALL−1,U266,EBV−Bにおいて検証した。
【0101】
Quantitative realtime PCR法用のプライマーとしては、以下の組み合わせを用い、方法は上記実施例1および実施例2の方法にならって行った。
【0102】
TLR1:
HA037841−F:CAGAGTGAATGGTGCCATTATGAAC(配列番号18)
HA037841−R:CCTTGGGCCATTCCAAATAAGTC(配列番号19)
【0103】
TLR2:
HA037842−F:ACTGGTGTCTGGCATGTGCTG(配列番号20)
HA037842−R:AGTAGGCATCCCGCTCACTGTAA(配列番号21)
【0104】
TLR3:
CH000255−F:CCCTGAGCTGTCAAGCCACTA(配列番号22)
CH000255−R:GGGCACTGTCTTTGCAAGATG(配列番号23)
【0105】
TLR4:
CH000256−F:CTGGGTGTGTTTCCATGTCTCA(配列番号24)
CH000256−R:CATGCGGACACACACACTTTC(配列番号25)
【0106】
TLR5:
HA037849−F:CAGTATTTGAGGTGGCCTGAGGA(配列番号26)
HA037849−R:GTTGCTACAGTTTGCAACGGAATG(配列番号27)
【0107】
TLR9:
HA048138−F:AGTCCTCGACCTGGCAGGAA(配列番号28)
HA048138−R:GCGTTGGCGCTAAGGTTGA(配列番号29)
【0108】
各種TLRリガンド(Human TLR1−9 Agonist Kit,InvivoGen)を購入し、phSIRT1−GFPを導入したHeLa,A549,Caco−2,TIG−1細胞及びphAID−GFPを導入したHeLa,A549,BALL−1,U266と共培養することで、それぞれの細胞内でのGFP強度が増強するTLRを同定した。GFP発現強度は、フローサイトメーターにより追跡した。
【0109】
phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞における結果を図13−1〜図13−12に示す。また、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞における結果を図14−1〜図14−12に示す。図13−1及び図14−13のconは、ネガティブコントロールを示す。図13−11および図14−11のL1、図14−12のL5、および図13−12のL7は、ポジティブコントロールを示す。点線が反応時のデータを示し、このデータが動いているものが反応を示したTLRとなる、具体的には、HeLaでは、TLR1(図13−2)、TLR2(図13−3)、TLR3(図13−4)、TLR9(図13−10)が反応を示し、A549では、ほぼ全てのTLRに反応性を示していた(図14−2〜図14−10)。これらのことより、乳酸菌のSIRT1への反応の少なくとも一部は、TLRを介して生じていることが示された。
【0110】
実施例4(GFPmutを用いたSHM増強乳酸菌のスクリーニング)
AID遺伝子は抗体のクラススイッチに加え、体細胞高頻度突然変異(Somatic hyper mutation:SHM)誘導能を有していることが知られている。そこでGFP遺伝子のコード領域内のAIDによるSHMのターゲットとなるような領域に停止コドンを人為的に導入したGFPmutというコンストラクトを作製した。GFPmutはhAID非存在下では無蛍光、hAID活性に応じて緑色蛍光を発する。このコンストラクトを安定に発現する細胞株を樹立することができれば、AIDのSHM活性を増強しうる乳酸菌の探索に応用できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、phSIRT1p−GFPのベクターマップである。
【図2】図2は、phSIRT1p−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図3】図3は、phSIRT1p−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図4】図4は、phSIRT1p−GFPを含むCaco−2細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図5】図5は、phSIRT1p−GFPを含むTIG−1細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図6】図6は、phSIRT1p−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果(ルシフェラーゼアッセイ)を示すグラフである。
【図7】図7は、phSIRT1p−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(ルシフェラーゼアッセイ)を示すグラフである。
【図8】図8は、phAIDp−GFPのベクターマップである。
【図9】図9は、phAIDp−GFPを含むHeLa細胞による、各乳酸菌の検定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、phAIDp−GFPを含むA549細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図11】図11は、phAIDp−GFPを含むBALL−1細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図12】図12は、phAIDp−GFPを含むU−266細胞による、各乳酸菌の検定結果(フローサイトメーター解析)を示すグラフである。
【図13−1】図13−1は、実施例3のHeLa細胞におけるネガティブコントロールの結果を示す図である。
【図13−2】図13−2は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−1発現の結果を示す図である。
【図13−3】図13−3は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−2発現の結果を示す図である。
【図13−4】図13−4は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−3発現の結果を示す図である。
【図13−5】図13−5は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−4発現の結果を示す図である。
【図13−6】図13−6は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−5発現の結果を示す図である。
【図13−7】図13−7は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−6発現の結果を示す図である。
【図13−8】図13−8は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−7発現の結果を示す図である。
【図13−9】図13−9は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−8発現の結果を示す図である。
【図13−10】図13−10は、phSIRT1−GFPを導入したHeLa細胞におけるTLR−9発現の結果を示す図である。
【図13−11】図13−11は、実施例3のHeLa細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図13−12】図13−12は、実施例3のHeLa細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−1】図14−1は、実施例3のA549細胞におけるネガティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−2】図14−2は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−1発現の結果を示す図である。
【図14−3】図14−3は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−2発現の結果を示す図である。
【図14−4】図14−4は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−3発現の結果を示す図である。
【図14−5】図14−5は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−4発現の結果を示す図である。
【図14−6】図14−6は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−5発現の結果を示す図である。
【図14−7】図14−7は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−6発現の結果を示す図である。
【図14−8】図14−8は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−7発現の結果を示す図である。
【図14−9】図14−9は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−8発現の結果を示す図である。
【図14−10】図14−10は、phSIRT1−GFPを導入したA549細胞におけるTLR−9発現の結果を示す図である。
【図14−11】図14−11は、実施例3のA549細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【図14−12】図14−12は、実施例3のA549細胞におけるポジティブコントロールの結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質。
【請求項2】
サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、請求項1記載の延命効果物質。
【請求項3】
乳酸菌または乳酸菌由来成分である、請求項1または2に記載の延命効果物質。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項3に記載の延命効果物質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の延命効果物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
【請求項6】
サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト。
【請求項7】
サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、請求項6記載のコンストラクト。
【請求項8】
請求項6または7に記載のコンストラクトを含む細胞。
【請求項9】
請求項6または7に記載のコンストラクトまたは請求項8に記載の細胞を含む、延命効果物質の検定用キット。
【請求項10】
請求項8に記載の細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、延命効果物質の検定方法。
【請求項11】
前記延命効果物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である請求項10に記載の検定方法。
【請求項12】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項11に記載の検定方法。
【請求項13】
AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項14】
乳酸菌または乳酸菌由来成分である、請求項13に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項15】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項14に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
【請求項17】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト。
【請求項18】
請求項17に記載のコンストラクトを含む細胞。
【請求項19】
請求項17に記載のコンストラクトまたは請求項18に記載の細胞を含む、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キット。
【請求項20】
請求項18に記載の細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法。
【請求項21】
前記感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である請求項20に記載の検定方法。
【請求項22】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項21に記載の検定方法。
【請求項1】
サーチュイン遺伝子の活性を増強することを特徴とする延命効果物質。
【請求項2】
サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、請求項1記載の延命効果物質。
【請求項3】
乳酸菌または乳酸菌由来成分である、請求項1または2に記載の延命効果物質。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項3に記載の延命効果物質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の延命効果物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
【請求項6】
サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、延命効果物質検定用コンストラクト。
【請求項7】
サーチュイン遺伝子が、SIRT1遺伝子またはSir2遺伝子である、請求項6記載のコンストラクト。
【請求項8】
請求項6または7に記載のコンストラクトを含む細胞。
【請求項9】
請求項6または7に記載のコンストラクトまたは請求項8に記載の細胞を含む、延命効果物質の検定用キット。
【請求項10】
請求項8に記載の細胞と試料とを接触させ、サーチュイン遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、延命効果物質の検定方法。
【請求項11】
前記延命効果物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である請求項10に記載の検定方法。
【請求項12】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項11に記載の検定方法。
【請求項13】
AID遺伝子の活性を増強することを特徴とする感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項14】
乳酸菌または乳酸菌由来成分である、請求項13に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項15】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項14に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の感染防御効果・ワクチン効果促進物質を含有する食品、医薬品または化粧品。
【請求項17】
AID遺伝子のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用コンストラクト。
【請求項18】
請求項17に記載のコンストラクトを含む細胞。
【請求項19】
請求項17に記載のコンストラクトまたは請求項18に記載の細胞を含む、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定用キット。
【請求項20】
請求項18に記載の細胞と試料とを接触させ、AID遺伝子のプロモーター活性を測定することを特徴とする、感染防御効果・ワクチン効果促進物質の検定方法。
【請求項21】
前記感染防御効果・ワクチン効果促進物質は、乳酸菌または乳酸菌由来成分である請求項20に記載の検定方法。
【請求項22】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルスである請求項21に記載の検定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【図13−12】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図14−4】
【図14−5】
【図14−6】
【図14−7】
【図14−8】
【図14−9】
【図14−10】
【図14−11】
【図14−12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【図13−12】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図14−4】
【図14−5】
【図14−6】
【図14−7】
【図14−8】
【図14−9】
【図14−10】
【図14−11】
【図14−12】
【公開番号】特開2008−195673(P2008−195673A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34115(P2007−34115)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
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