説明

延性ポリマーバインダー及び該バインダーを使用する電池構成成分

本発明は、エチレンオキシド(EO)の第1モノマーと、EOの第1モノマーとは異なるアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル又はそれらの組合せから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーとを含むエチレンオキシド含有コポリマーを含む電池電極用のバインダーに関する(ここで、エチレンオキシド含有コポリマーは約200,000g/モル未満(例えば、約10,000〜約100,000)の重量平均分子量を有し、エチレンオキシド含有コポリマーにおけるEOの第1モノマーのモル分率(XEO)が0.80超(例えば、約0.80〜約0.995)であり、且つエチレンオキシド含有コポリマーは、約0.80〜約0.995の範囲における選択されたXEOについてのピーク融解温度(T、℃の単位)が、Tpmax=(60−150(1−XEO))の式を使用して計算される選択されたXEOにおけるTpmaxの最大値を超えない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国仮特許出願第61/151,739号(2009年2月11日出願)の利益を主張し、これは、本明細書により、すべての目的のためにその全体が参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般には、ポリマー型活性電池構成成分に関し、具体的には、バインダー材に分散される電気活性粒子を含む電池電極におけるバインダー材として使用することができるエチレンオキシド含有コポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
充電式電池が、近年、非常に多くの関心を集めている。そのような電池はまた、「二次電池」として、又は、「蓄電池」としてでさえ知られるようになってきている。充電式電池は、電荷を貯蔵するように操作することができ、また、その後では、その電荷を放出して、デバイスに対する電気の供給源を提供するように操作することができる。一般に、これらのタイプの電池は少数の活性な構成成分を有しており、それらには、可逆的な電気化学的反応を行うために一緒に協同する電極(具体的には、アノード及びカソード)が含まれる。一般に、充電式電池の耐久性及び効率を改善するための様々な試みが、多くの場合にはこれら電池の活性な構成成分の1つ又はそれ以上を改善することに集中している。
【0004】
1つのますます普及しているタイプの電池が、一般には電解質物質の凝集塊で金属イオン(例えば、リチウムイオン)を用いる電池である。そのような電池の電気化学的セルが放電中であるときには、一般に、アノードから取り出されるリチウムイオンがカソードへと流れる。セルが充電中であるときには、逆向きのプロセスが生じる。リチウムイオンがカソードから取り出され、アノードへと流れてアノード中に入る。
【0005】
示されたように、電解質物質の一般には凝集性の塊は、いくつかのそのような固体電解質がゲル特徴を有するとしても、固体電解質と見なされる。金属イオン(例えば、リチウムイオン)は、十分な濃度で存在し、またその金属イオンが電極の間を流れる場合にそのイオン流れの結果として電解質及び他の活性な構成成分が実際に寸法変動を受けることができるようなサイズである。従って、イオンが、ある領域に流入するにつれ、イオンはその領域を膨潤させることなり、また、イオンが流出した領域は収縮することになる。寸法変動はまた、電気化学的反応によって生じるエネルギーに起因する電解質における熱蓄積の結果として生じることがある。従って、充電式電池のための活性な構成成分の設計では、活性な構成成分のために用いられる材料は動的な周期的寸法変動に耐え得ることが重要である。
【0006】
理解され得るように、充電式電池のための電極として好適な材料は多くの場合、機械的特性及び電気的特性の適切なバランスを必要とし、しかし、そのようなバランスは通常、単一の均質な材料では存在しない。従って、特性の好適なバランスを達成するために、複合材料を用いること、すなわち、単一の材料に組み合わされる2つ以上の化学的及び/又は物理的に異なる成分材料を含む材料を用いることが提案されている。これらの成分材料は、単一の複合材料を形成するにもかかわらず、一般には2つ以上の離散相を生じさせる。これらの成分材料は、独立した異なる材料として複合材の内部に効果的に留まる。例として、活性な導電性材料の粒子(これは本明細書中では電気活性粒子又は「EAP」として示される)を好適なバインダー材(例えば、ポリマー物質から形成されるマトリックスなど)に分散させることができる。EAPは、所望される電気的特性を提供することを助け、バインダーは、適切な機械的特性又は他の特性を与えることを助ける。材料のこの組合せに対して、1つ又はそれ以上の電極材料(例えば、層間化合物)が混合され得ることもまた可能である。複合材の一例が米国特許第6,455,194号に例示され、この場合、フェノール−ホルムアルデヒド物質が単独又はポリビニリデンフルオリド(PDVF)とともにバインダーにおいて使用される。米国特許第6,855,273号及び同第6,174,623号もまた参照のこと。
【0007】
電気的特性を与えるためのEAPの負荷量を減らすための1つの可能な取り組みが、これまでは、導電性ポリマー(例えば、PVDFなど)をバインダーにおいて用いることであった。残念ながら、既存の導電性ポリマーは、その脆弱な特性又はその高い融解温度又は両方のために、EAPと組み合わせる能力が限られている。EAPと、ポリマーとの間における界面結合は、比較的弱い傾向がある。いくつかの場合には、とりわけ、上記で考察された周期的な寸法変動の結果として、バインダーポリマー及びEAPは、電池性能を損なう可能性を有する使用中の望ましくない程度の分離又は「プルアウト(pull-out)」を受けることがある。従って、長期間の耐久性に関する事項が問題となり得る。同様にまた、ポリマー(例えば、PVDFなど)の脆弱な特性は、容易に曲げること及び折り畳むことができず、このことはさらに、これらの材料を含む電池の形状的要因を制限する。
【0008】
ある種のエチレンオキシド含有ホモポリマー材料又はエチレンオキシド含有コポリマー材料は、充電式電池の活性な構成成分としての使用、例えば、電極のバインダーにおける使用又は電解質における使用などのための、魅力的な電気的特性を示すことができる。しかしながら、合成上の様々な制約、すなわち活性な構成成分を利用する場合に材料の加工及び/又は機械的要求を効果的に満たすよう材料の必要な機械的特性を達成することが困難であるため、これらの材料は一般には避けられている。
【0009】
充電式電池のための電極としての有用性を有する、耐久性があり、且つ、長持ちする複合材料を達成すること、特に、電気活性粒子に対する強い接着を、機械的変形(例えば、典型的には電池の周期的な充電の期間中における動的な周期的寸法変動など)を受けた後においてさえ有するそのような複合材料を達成することは特に注目される。加えて、形状的要因を(例えば、電極を自由に折り畳むことができることによって)改善することができ、電池へと加工すること(従って、製造収量を増大させること)をより容易にすることができ、また、比較的堅い包装の必要性を排除することができるより柔軟な電極を達成することは注目される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,455,194号明細書
【特許文献2】米国特許第6,855,273号明細書
【特許文献3】米国特許第6,174,623号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その様々な態様において、材料を充電式電池における使用のために、例えば、複合材電極などにおける使用のためにとりわけ魅力的にするエチレンオキシドコポリマーについての予測できない特性の実現によって上記の要求を満たし、且つ、先行技術の様々な欠点を克服する。従って、本発明の第1の態様が、エチレンオキシド(EO)の第1モノマーと、EOの第1モノマーとは異なるアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル又はそれらの組合せから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーとを含むエチレンオキシド含有コポリマー(例えば、ランダムコポリマー)を含む電池用のバインダー材料(例えば、電池電極用のバインダー材料)に関する(ここで、エチレンオキシド含有コポリマーは約200,000g/モル未満の重量平均分子量を有し、エチレンオキシド含有コポリマーにおけるEOの第1モノマーのモル分率(XEO)が0.80を超え、且つ、エチレンオキシド含有コポリマーは、約0.80〜約0.995の範囲において選択されたXEOについてのピーク融解温度(T、℃の単位)がTpmaxの最大値より低く、この選択されたXEOにおいてTpmax=(60−150(1−XEO))の等式を使用して計算される)。好ましくは、エチレンオキシド含有コポリマーにおけるEOの第1モノマーのモル分率が約0.80〜約0.995であるか、又はエチレンオキシド含有コポリマーは重量平均分子量が約10,000〜約100,000であるか、又はそれらの両方である。
【0012】
本発明の第2の態様が、本明細書中に開示されるバインダー材を含み、且つ、同じであっても異なってもよい複数の粒子をさらに含み、エチレンオキシド含有コポリマーがこの複数の粒子と接触している複合材電極(例えば、複合材カソード又は複合材アノードなど)に関する。複合材は、2つ、3つ又はそれ以上の相を含む複数の離散相を備える一般には固体状態の物質であり得る。粒子は好ましくは、1つ若しくはそれ以上の電気活性粒子(すなわち、EAP)、1つ若しくはそれ以上のグラファイト、1つ若しくはそれ以上の他の炭素含有物質、又は、それらの任意の組合せを含み、或いは、1つ若しくはそれ以上の電気活性粒子(すなわち、EAP)、1つ若しくはそれ以上のグラファイト、1つ若しくはそれ以上の他の炭素含有物質、又は、それらの任意の組合せから本質的になる。
【0013】
本発明の第3の態様が、本明細書中に開示されるエチレンオキシド含有コポリマー及び/又はバインダー材を含む固体ポリマー電解質に関する。本発明の固体ポリマー電解質は金属塩又は溶媒又は両方を含むことができる。
【0014】
本発明の第4の態様が、前述の態様のいずれかの特徴を有する本明細書中に開示される複合材電極を含むデバイスに関する。1つの実施形態において、デバイスは二次電池である。
【0015】
本発明の別の態様が、エチレンオキシド含有コポリマー(例えば、バインダー材における使用のための本明細書中に記載されるエチレンオキシド含有コポリマーなど)を重合するためのプロセスであって、EOの第1モノマー及び少なくとも1つのさらなるモノマーを、炭化水素希釈剤の存在下、活性化アルキルアルミニウム触媒と接触させることを含むプロセスに関する。好ましくは、エチレンオキシド及び触媒は、コポリマーを重合するためのモノマーを反応させるためにコポリマーの融解温度よりも少なくとも約5℃低い反応温度で接触させられる。
【0016】
他の態様が本発明の教示の他の箇所から見出され得る。
【0017】
本明細書中の教示から理解されるように、本発明は、電池用途のために必要とされる電気的特性及び機械的特性における以前には相容れないトレードオフのために制限されてきた、当該分野においてこれまで直面していた様々な問題に取り組むための驚くべきアプローチ及び解決策を示す。本発明のエチレンオキシド含有コポリマーは、本発明のエチレンオキシド含有コポリマーを電解質用途のためのバインダー材として特に好適にする高いエチレンオキシド濃度及び低い融点の驚くべきバランスを有する。これらのポリマーは(典型的にはある程度のイオン伝導率を示してもよい)、機械的変形(例えば、典型的には電池の周期的な充電の期間中における動的な周期的寸法変動など)を受けた後でさえ、電気活性粒子に対する驚くほどに強い接着を有することもまた見出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、エチレンオキシド含有コポリマー及び70パーセントの電気活性粒子を含む複合材の一例の引張り応力−引張り歪み曲線を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aの引張り応力 対 引張り歪み曲線の、約0パーセントの歪みから約1.5パーセントの歪みまでの領域を示す。
【図2】図2は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダムコポリマーと、電気活性粒子とを含む本発明の教示の複合材電極の一例を例示する走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真である。
【図3】図3は、PVDF及び70パーセントの電気活性粒子を含む複合材を用いた、引張り応力(MPaの単位)対 引張りひずみ(パーセントの単位)の曲線を示す。
【図4】図4は、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)及び電気活性粒子を含む例示的な複合材電極の粒子プルアウトの一例を示す走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真である。
【図5】図5は、金属塩及びポリエチレンオキシドホモポリマーを含むバインダー組成物について予想される例示的な伝導率 対 温度のプロットである。
【図6】図6は、金属塩と、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダムコポリマーとを含むバインダー組成物について予想される例示的な伝導率 対 温度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の教示による電極は一般には、ポリマーバインダー相(すなわち、バインダー材)と、粒子相とを含む多相の複合材料として調製することができる。粒子相は好ましくは、1つ若しくはそれ以上の電気活性粒子、1つ若しくはそれ以上のグラファイト、1つ若しくはそれ以上の他の炭素含有物質、又は、それらの任意の組合せを含み、或いは、1つ若しくはそれ以上の電気活性粒子、1つ若しくはそれ以上のグラファイト、1つ若しくはそれ以上の他の炭素含有物質、又は、それらの任意の組合せから本質的になる。限定されないが、ポリマーバインダー相におけるポリマーは、本明細書中に記載されるように、1つ又はそれ以上のエチレンオキシド含有コポリマーを含むことができ、具体的には1つ又はそれ以上のエチレンオキシド含有ランダムコポリマーを含むことができる。
【0020】
バインダー相におけるエチレンオキシド含有コポリマーの量は、バインダー相が延性であるように、又は、バインダー相がカチオンの流れのための一般には連続する経路を提供するように、又はその両方であるように十分に高くてもよい。エチレンオキシド含有コポリマーは、ポリマーバインダー相中の全ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量パーセントの濃度で存在させることができ、好ましくは少なくとも50重量パーセントの濃度で存在させることができ、より好ましくは少なくとも約70重量パーセントの濃度で存在させることができ、最も好ましくは少なくとも約90重量パーセントの濃度で存在させることができる。限定されないが、ポリマーバインダー相におけるポリマーはさらに、エチレンオキシドホモポリマー又はエチレンオキシドコポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーバインダー相は、米国特許第4,303,748号及び米国特許第3,644,224号に開示されるエチレンオキシドホモポリマー及びエチレンオキシドコポリマーの1つ又は任意の組合せを含むことができる(これらの米国特許はともに参照によって本明細書中に組み込まれる)。ポリマーバインダー相における総ポリマーの濃度は、ポリマーが一般にはバインダー相全体に分布するように十分に高くてもよい。ポリマーバインダー相における総ポリマーの濃度は、ポリマーバインダー相又は電極又は両者の総重量に基づいて約10重量パーセント超とすることができ、好ましくは少なくとも約20重量パーセントとすることができ、より好ましくは少なくとも約30重量パーセントとすることができ、最も好ましくは少なくとも約40重量パーセントとすることができる。ポリマーバインダー相における総ポリマーの濃度は、電極の総重量に基づいて約90重量パーセント未満とすることができ、好ましくは約70重量パーセント未満とすることができ、より好ましくは約60重量パーセント未満とすることができ、最も好ましくは約50重量パーセント未満とすることができる。
【0021】
粒子相は1つ又はそれ以上の活性な導電性物質の粒子を含むことができる。例として、その粒子は、(本明細書中以下に説明される)1つ又はそれ以上の電気活性粒子、1つ又はそれ以上のグラファイト、1つ又はそれ以上の他の炭素含有導電性物質、或いは、それらの任意の組合せを含むことができる。好ましくは、粒子相は1つ又はそれ以上の電気活性粒子を含むか、或いは、1つ又はそれ以上の電気活性粒子から本質的になる。粒子相は好ましくは、組成物が電極として機能できるように十分な量の電気活性粒子を含む。粒子相における電気活性粒子の濃度は、好ましくは、粒子相の総重量に基づいて約60重量パーセント以上であり、より好ましくは約95重量パーセント以上であり、最も好ましくは約98重量パーセント以上である。電極において用いられるとき、複合材電極における粒子の濃度(例えば、電気活性粒子の濃度)は、好ましくは、複合材電極の総重量に基づいて約20重量パーセント以上であり、より好ましくは約35重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約50重量パーセント以上であり、最も好ましくは約60重量パーセント以上である。複合材電極における粒子(例えば、電気活性粒子)の濃度は、好ましくは、複合材電極の総重量に基づいて約95重量パーセント以下であり、より好ましくは約90重量パーセント以下であり、一層より好ましくは約85重量パーセント以下であり、一層より好ましくは約80重量パーセント以下であり、最も好ましくは約70重量パーセント以下である。
【0022】
バインダー材は好ましくは連続相であり、その結果、バインダー材は、粒子相の粒子を運ぶための連続したマトリックス相を提供する。粒子(例えば、EAPなど)を、2つ以上の粒子の間に接続性を備える構造を有する離散相又は粒子群としてバインダー材に分散させることができる。1つの実施形態において、粒子が、隣接する凝集物として存在する。例えば、バインダー材は、バインダー材の少なくとも40パーセント(好ましくは少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント)がバインダー材の1つの連続した領域であるような連続相であり得る。粒子相は、粒子相の連続した領域の各々又は全てが約20パーセント未満(好ましくは約10パーセント未満、より好ましくは約5パーセント未満)の粒子を含有するような離散相であり得る。粒子の分散は一般に、バインダー材のマトリックス相の全体を通して均一であり得る。そのようなものとして、複合材料の約5パーセントを含有する体積はいずれも、好ましくは少なくとも約1パーセントの粒子を含有し、より好ましくは少なくとも約2パーセントの粒子を含有する。粒子をマトリックス相中に統計学的にランダムに分布させることができる。例えば、EAPをマトリックス相中に統計学的にランダムに分布させることができる。
【0023】
図1〜図4を参照することにより、本発明がその利点のいくつかをどのように引き出すかを理解することができる。図1A及び図1Bは、引張り応力及びひずみの特徴的なプロットの一例を例示する。図1A及び図1Bのプロットによって例示されるように、本発明の複合材料はまた、引張りひずみに供されたとき、材料が、いずれのキンク(例えば、図3において約0.2パーセント〜0.4パーセントのひずみにおける比較的水平な領域6及び/又は変曲点8によって示されるものであり、EAPのプルアウトの結果である延びと対応すると考えられる)を本質的に有しない応力プロファイル(例えば、応力をy軸にしてデカルト座標系でプロットされたときの応力プロファイル)を示す能力によって特徴づけることができる。加えて、図1Aは、本発明の複合材料がまた、引張り応力に供されたとき、材料が可塑性(すなわち、延性様式)で変形する能力、及び、破断前の引張り応力におけるピーク2(例えば、降伏点)を有る能力によって特徴づけられ得ることを示す。バインダー材と電気活性粒子との間における本発明の耐久性接着はさらに、低いひずみ(例えば、約2パーセント未満)での応力対ひずみ曲線において変曲点8がないこと、比較的水平な領域6がないこと、ピーク2がないこと、又はそれらの任意の組合せによって証明される。応力対ひずみ曲線は、本明細書中下記で記載されるように、ASTM D882−97に従って測定することができる。比較的水平な領域は、比較的水平な領域の直前の領域及び比較的水平な領域の直後の領域の両方よりも小さい傾きを有する領域である。
【0024】
図2に示されるような微細構造は(図4の微細構造とは対照的に)、これらの特有の機械的特性に寄与することを助けることが考えられる。より具体的には、図2は、例示的な微細構造を示す顕微鏡写真であり、ポリマーマトリックス中に概ね一様に分散される粒子を示す。粒子は、最大の大きさが平均して約10μm未満である概ね球状及び楕円状のEAPとして現れている(一部が細孔又は空洞を示す)。好ましい粒子は、最大の大きさが約0.5μm〜約7μmである。いくつかの粒子凝集物が認められ、材料全体に存在し得る。ポリマーマトリックスが、破断までの引張り応力に供された後におけるその予想される状態で示される。特有且つ予想外の特徴として、粒子がマトリックスのポリマー材との実質的な結合性接触の状態にあること、及び粒子のプルアウトを示すと考えられる多量の隙間が概ね存在しないことである。図2における複合材料は、例えば、ポリマーマトリックスの塑性変形から明白である整列した条線8によって示されるように、主として延性的な様式で破断している。対照的に、図4は、引張り応力に供されて破断した後における、EAPをPVDFのマトリックスに含む材料の予想された破断表面状態の微細構造を示す。図4は、PVDFのマトリックスを含有するこの材料は、EAP粒子が存在するために使用した場所であるが、引張り応力に耐えることができずにポリマーマトリックスから抜け出た場所を表す多数の黒色の間隙によって特徴づけられるより脆弱な材料であることを示す。従って、粒子がこの場合のバインダーのポリマーマトリックスの内部に分散されたままであるという事実はまさに、先行技術のPVDFマトリックス材を使用して達成可能な結合とは異なり、本発明のポリマーを使用して達成可能な強い結合を示していると考えられる。
【0025】
電極
本明細書中に開示されるバインダー材のコポリマーは好ましくは、電池(例えば、二次電池など)の電極(例えば、アノード又はカソード又は両方)において使用される。例えば、エチレンオキシド含有ポリマーなどのバインダー材は好ましくは、電気活性粒子(EAP)と混合されて、バインダーに由来するポリマーマトリックスにEAPが分散されている複合材電極を形成する。第2の例として、バインダー相を複合材電極における使用のためにグラファイト又は他の好適なインターカレーション物質と混合することができる。1つの実施形態において、そのような複合材は2つ以上の異なる相を含むことができる。そのような複合材は、2つの異なる相を有する二元系であってもよい。3つ以上の相を有する三元系又は他の系もまた可能である。
【0026】
本発明では、ポリマーが電池電極用のバインダー材において都合よく使用される。ポリマーは、電極が、下記特性のいくつか又はすべての実現(これらに限定されない)を含めて、電気的特性及び機械的特性の驚くべきバランスを実現するようなものである:(i)ASTM D638−03IVに記載されるサンプルタイプのサンプルを使用して、ASTM D882−97に従って測定されるような低いひずみ(好ましくは、約2パーセント未満のひずみ)での電極の引張り応力対ひずみ曲線において変曲点がないこと及びピークがないことによって証明されるような、バインダー材のポリマーと電気活性粒子との間における耐久性のある接着;(ii)エチレンオキシドホモポリマーを使用して調製される類似した電極よりも大きい30℃での電気伝導率(例えば、イオン伝導率);(iii)ASTM D638−03IVに記載されるサンプルタイプを使用して、ASTM D882−97に従って測定されるような少なくとも6パーセントの電極の破断時引張り延び;又は(iv)それらの任意の組合せ。本明細書における電極においてそのような特性を実現することは、一層より予想外のことである。これは、好ましいポリマーがエチレンオキシド含有コポリマー(例えば、エチレンオキシドの第1モノマーと、異なるアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーとを含むコポリマーなど)であるからである。これまでは、共重合されたモノマーの固有的脆弱性、不良な電気的特性、又は他の原因のために、そのような特徴を既存のエチレンオキシド含有ポリマー物質(例えば、ランダムコポリマーでないエチレンオキシド含有ポリマーなど)において達成することが困難であった。
【0027】
本明細書中の教示はまた、2つ以上の電極を含む二次電池の可能性を意図する。電極の少なくとも1つが好ましくは、本明細書中に教示されるバインダー材を用いる複合材電極である。1つの好ましい取り組みでは、電極の1つが複合材電極である少なくとも2つの隣接する電極又はさらに直接接触している電極が想定される。例えば、電池は、複合材アノードに隣接する(例えば、複合材アノードと直接に接触している)少なくとも1つの複合材カソードを含むことができる。好ましくは、カソード複合材の電気活性粒子はアノード複合材の粒子(例えば、アノード活性粒子)と接触しない。好ましいアノード活性粒子はグラファイト粒子である。カソード複合材(すなわち、第1の層)におけるカソード活性粒子(例えば、電気活性粒子)と、アノード複合材(すなわち、第2の層)におけるアノード活性粒子(例えば、グラファイト粒子)とを隔てるために、電池は第3の層(例えば、セパレーターなど)を用いることができる。代替では、第3の層は固体ポリマー電解質であり得る。好ましくは、第3の層はEAP及び/又はグラファイトを本質的に含まず、或いは、EAP及び/又はグラファイトを全く含まない。用いられる場合、第3の層におけるEAPの濃度、又は、グラファイト粒子の濃度、又は、両者の濃度は好ましくは、第3の層の総重量に基づいて約2重量パーセント以下である。本発明のバインダー材は電池セルの固体ポリマー電解質含有層のいずれか又はすべて(例えば、1つ、2つ又は3つ)において使用することができる。
【0028】
エチレンオキシド含有コポリマー
エチレンオキシド含有コポリマーは、少なくとも1つの第1モノマー及び少なくとも1つのさらなるモノマー(例えば、少なくとも1つの第2モノマー)のコポリマーであり得る。少なくとも1つの第1モノマーは好ましくは、エチレンオキシド又はその誘導体である。第2モノマーのための好適なモノマーには、エチレンオキシド以外のアルキレンオキシド(例えば、少なくとも3個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドなど)、アリルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル)、又は、それらの任意の組合せが含まれる。好ましくは、第2のモノマーには、アルキレンオキシド、アリルグリシジルエーテル又はアルキルグリシジルエーテル、或いは、それらの混合物が含まれる。より好ましくは、第2のモノマーには、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せが含まれる。より好ましくは、少なくとも1つの第2のモノマーはプロピレンオキシドを含むことができ、又は、プロピレンオキシドから本質的になることができ、又は、プロピレンオキシドからなることもできる。アルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル又はアリルグリシジルエーテル、或いは、それらの任意の組合せ(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド)からなる群より選択されるモノマーの総濃度は、好ましくは、エチレンオキシド含有コポリマーの総重量に基づいて約96重量パーセント以上であり、より好ましくは約98重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約99重量パーセント以上であり、最も好ましくは約100重量パーセントである。
【0029】
エチレンオキシド含有コポリマーは、比較的高濃度のエチレンオキシドを含むことができ、好ましくは、このようなコポリマー及び金属塩を含む電解質のイオン伝導率が、ポリエチレンオキシドホモポリマーをコポリマーの代わりに置換えた同一の電解質のイオン伝導率の少なくとも75パーセント(好ましくは少なくとも100パーセント、より好ましくは少なくとも125パーセント、最も好ましくは少なくとも約150パーセント)であるように十分に高濃度のエチレンオキシドを含むことができる。このような伝導率の増加は、好ましくは、伝導率が約50℃の温度又は約60℃の温度又は約60℃の温度又はそれらの任意の組合せで測定されるときに認められる。
【0030】
好都合なことに、エチレンオキシド含有コポリマーは十分に高濃度のエチレンオキシドを含み、その結果、エチレンオキシド含有コポリマーの電気伝導率(例えば、イオン伝導率)は、ポリマーが金属カチオンを含有する場合、エチレンオキシド含有コポリマーを電池適用のために好適にするための十分な量で実現される。理論によってとらわれることはないが、高いエチレンオキシド濃度により、金属塩、電気活性粒子、溶媒又はそれらの任意の組合せを含有する電極の伝導率が改善され得る。好ましいエチレンオキシド含有コポリマーは、コポリマーにおけるモノマーの総モル数に基づいて、約0.80以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができ、より好ましくは約0.85以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができ、一層より好ましくは約0.90以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができ、一層より好ましくは約0.94以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができ、一層より好ましくは約0.94以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができ、最も好ましくは約0.95以上のエチレンオキシドモル分率(XEO)を有することができる。好ましいエチレンオキシド含有コポリマーは、コポリマーにおけるモノマーの総モル数に基づいて約0.995以下のモル分率のエチレンオキシドを含有することができ、より好ましくは約0.98以下のモル分率のエチレンオキシドを含有することができ、一層より好ましくは約0.97以下のモル分率のエチレンオキシドを含有することができ、最も好ましくは約0.96以下のモル分率のエチレンオキシドを含有することができる。
【0031】
エチレンオキシド含有コポリマーにおける少なくとも1つのさらなるモノマーのモル分率は、エチレンオキシド含有コポリマーが一般には延性であるように十分に高くすることができる。エチレンオキシド含有コポリマーにおける少なくとも1つのさらなるモノマー(例えば、第2のモノマー)のモル分率は好ましくは約0.005以上であり、より好ましくは約0.02以上であり、一層より好ましくは約0.03以上であり、一層より好ましくは約0.04以上であり、最も好ましくは約0.05以上である。少なくとも1つのさらなるモノマー(例えば、第2のモノマー)のモル分率は好ましくは約0.20未満であり、より好ましくは約0.15未満であり、最も好ましくは約0.12未満である。例示的なエチレンオキシド含有コポリマーにはまた、エチレンオキシド以外のアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル若しくはアリルグリシジルエーテル、又は、それらの任意の組合せのモル分率が少なくとも約0.005(好ましくは少なくとも約0.02、より好ましくは少なくとも約0.03、最も好ましくは少なくとも約0.05)であるコポリマーが含まれる。エチレンオキシド以外のアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル若しくはアリルグリシジルエーテル、又は、それらの任意の組合せのモル分率は約0.20未満とすることができ、好ましくは約0.15未満とすることができ、より好ましくは約0.12未満とすることができる。
【0032】
エチレンオキシド含有コポリマーは好ましくは、少なくともある程度の結晶化度を示し、好ましくは、コポリマーが比較的剛性であり、且つ、粘性である十分な量の結晶化度を示す。エチレンオキシド含有コポリマーの結晶化度は、本明細書中下記において試験方法の節で記載されるように、示差走査熱量測定法を使用して測定することができる。エチレンオキシド含有コポリマーの結晶化度は好ましくは、コポリマーの総重量に基づいて約50重量パーセント以下であり、より好ましくは約40重量パーセント以下であり、一層より好ましくは約30重量パーセント以下であり、最も好ましくは約25重量パーセント以下である。コポリマーは好ましくは、結晶化度がコポリマーの総重量に基づいて約3重量パーセント以上であり、より好ましくは約6重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約10重量パーセント以上であり、最も好ましくは約15重量パーセント以上である。結晶性が予想され、また、好ましいにもかかわらず、好適なエチレンオキシド含有コポリマーは完全に非晶質であってもよいことが可能である。
【0033】
本発明の様々な態様のために有用なエチレンオキシド含有コポリマーは典型的には、同じ重量平均分子量を有するポリエチレンオキシドホモポリマーの融解温度よりも低い融解温度を有する。ポリエチレンオキシドホモポリマーは典型的には、約63℃の融解温度を有する。ブロックコポリマーであるエチレンオキシド含有コポリマーは典型的には、ポリエチレンオキシドホモポリマーの融解温度に類似する融解温度を有する。好ましくは、エチレンオキシドコポリマーは一般にはランダムコポリマーである。本発明のコポリマー(例えば、ランダムコポリマー)は驚くべきことに、高いエチレンオキシド濃度及び低い融解温度の両方を有することができる。例えば、好ましいコポリマーは、選択されたXEOにおけるTpmaxの最大値を超えない、エチレンオキシドの選択されたモル分率(XEO)についてのピーク融解温度(T、℃)を有することができ、この場合、Tpmaxは、Tpmax=(60−150(1−XEO))の式を使用して計算することができ、好ましくは、Tpmax=(60−175(1−XEO))の式を使用して計算することができ、より好ましくは、Tpmax=(60−200(1−XEO))の式を使用して計算することができ、一層より好ましくは、Tpmax=(60−250(1−XEO))の式を使用して計算することができ、最も好ましくは、Tpmax=(60−280(1−XEO))の式を使用して計算することができる。融解温度は、本明細書中下記において試験方法の節で記載されるように、示差走査熱量測定法によって測定することができる。そのようなコポリマーは好ましくは、約0.80〜約0.995のXEOを有する。
【0034】
好ましいエチレンオキシド含有コポリマーは、(本明細書中において「試験方法」と題される節で記載されるようにH−NMR分光法によって測定されるような)同じモル分率のエチレンオキシドを有し、同じ第2のモノマーを有し、且つ、比較的ブロック状であるランダムコポリマーを生じさせる触媒(例えば、カルシウム触媒)により作製されるコポリマーの融解温度よりも少なくとも3℃低い(好ましくは少なくとも6℃低い、より好ましくは少なくとも8℃低い、最も好ましくは少なくとも10℃低い)(示差走査熱量測定法によって測定されるような)融解温度を有することができる。
【0035】
バインダー材のポリマー(例えば、エチレンオキシド含有コポリマー)は、引張り弾性率(すなわち、ヤング率)が、ASTM D638−03に従って測定されるとき、少なくとも約5MPaであり得るし、好ましくは少なくとも約20MPaであり得るし、より好ましくは少なくとも約40MPaであり得る。引張り弾性率は約400MPa未満であり得るし、好ましくは約200MPa未満であり得るし、より好ましくは約150MPa未満であり得るし、最も好ましくは約100MPa未満であり得る。
【0036】
ランダムコポリマーにおけるブロック性の程度(BI)を、第2のモノマーに付加されたエチレンオキシドモノマーのジアド(diad)画分(f(EO−AO))に、エチレンオキシドに付加された第2のモノマーのジアド画分(f(AO−EO))を加えた濃度の、統計学的ランダムコポリマーについてのジアド画分の理論的濃度(2XEO(1−XEO)、式中、XEOはエチレンオキシドモノマーの体積分率である)に対する比率によって計算することができる:
BI=(f(EO−AO)+f(AO−EO))/(2XEO(1−XEO))
定義により、統計学的ランダムコポリマーはブロック性指数(BI)が1.0である。ブロック状ランダムコポリマーはより低い濃度のEO−AOジアド画分及びAO−EOジアド画分を有することになり、BIが1.0よりも小さくなる。ブロックコポリマーは非常に低い濃度のEO−AOジアド画分及びAO−EOジアド画分を有することになり、BIが1よりもはるかに小さくなり、ゼロに近づく。一方、XEOが0.5以上である交互コポリマーは、BI=1+(1/XEO)を有する。ジアド画分の濃度及びXEOは、Yi−Jun Huange他によって、「二重金属シアニド錯体触媒によって調製されるプロピレンオキシド及びエチレンオキシドのランダムコポリマー」、Chinese Journal of Polymer Science、20:5、2002、453頁〜459頁(これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるピークの割当及び技法を使用して、13C−NMR分光法を使用して測定することができる。
【0037】
好ましいエチレンオキシド含有コポリマーは約0.70以上のブロック性指数(BI)を有することができ、より好ましくは約0.75以上のブロック性指数(BI)を有することができ、一層より好ましくは約0.80以上のブロック性指数(BI)を有することができ、一層より好ましくは約0.85以上のブロック性指数(BI)を有することができ、一層より好ましくは約0.90以上のブロック性指数(BI)を有することができ、最も好ましくは約0.95以上のブロック性指数(BI)を有することができる。ブロック性指数(BI)は好ましくはおよそ1+(0.8/XEO)よりも小さく、より好ましくはおよそ1+(0.5/XEO)よりも小さく、一層より好ましくはおよそ1+(0.25/XEO)よりも小さく、最も好ましくはおよそ1+(0.10/XEO)よりも小さく、但し、式において、XEOはコポリマーにおけるエチレンオキシドモノマーのモル分率であり、且つ、XEOは少なくとも0.5である。
【0038】
コモノマーのブロック状配置がより少ない場合、典型的には、比較的低い融解温度を有するコポリマーがもたらされる。例えば、エチレンオキシド含有コポリマーは約54℃以下の融解温度(例えば、ピーク融解温度)を有することができ、好ましくは約52℃以下の融解温度(例えば、ピーク融解温度)を有することができ、より好ましくは約50℃以下の融解温度(例えば、ピーク融解温度)を有することができ、一層より好ましくは約48℃以下の融解温度(例えば、ピーク融解温度)を有することができ、最も好ましくは約46℃の融解温度(例えば、ピーク融解温度)又はそれよりも低い融解温度(例えば、ピーク融解温度)さえ有することができる。エチレンオキシド含有コポリマーは完全に非晶質であってもよく、例えば、室温よりも低いピーク融解温度を有することができる。エチレンオキシド含有コポリマーは好ましくは、融解温度(例えば、ピーク融解温度)が約25℃以上であり、より好ましくは約35℃以上であり、一層より好ましくは約40℃以上であり、一層より好ましくは約42℃以上であり、最も好ましくは約44℃以上である。
【0039】
バインダー材は好ましくは、比較的大きい剪断弾性率を有する延性物質である。剪断弾性率は典型的には、エチレンオキシド含有コポリマーにおけるコモノマーの濃度とともに低下するにもかかわらず、約94.3モルパーセントのエチレンオキシド濃度を有するコポリマーの剪断弾性率は約80MPaを超えることができ、好ましくは約100MPaを超えることができ、より好ましくは約110MPaを超えることができる。バインダー材は好ましくは、室温において延性であり、より好ましくは0℃において延性であり、最も好ましくは−20℃において延性である。エチレンオキシド含有コポリマー又は電極又は両者の延性は量的には、約10パーセントを超える引張り延びによって表すことができ、又は、約12パーセントさえ超える引張り延びによって表すことができる。
【0040】
エチレンオキシド含有コポリマーの合成では好都合なことに、分子量を小さくするための加工工程を用いることなく、例えば、照射工程又は他の鎖切断工程などを用いることなく、比較的低分子量のポリマーを達成することができる。例示として、エチレンオキシド含有コポリマーが約1,000,000未満ダルトン(好ましくは約500,000未満ダルトン、より好ましくは約200,000未満ダルトン、最も好ましくは約100,000未満ダルトン)の平均分子量(例えば、数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)又は両方)を有することが、本発明の教示に従って可能である。約1,000ダルトンを超える数平均分子量、好ましくは約3,000ダルトンを超える数平均分子量、より好ましくは約10,000ダルトンを超える数平均分子量、最も好ましくは約18,000ダルトンを超える数平均分子量を有するエチレンオキシド含有コポリマーを合成することもまた、本発明の教示に従って可能である。
【0041】
エチレンオキシド含有コポリマーは、比較的狭い分子量分布を有することができる。例えば、多分散性指数(PDI=Mw/Mn)が約3.0未満であり得るし、好ましくは約2.0未満であり得るし、より好ましくは約1.70未満であり得るし、最も好ましくは約1.30未満であり得る。限定されないが、本発明の教示による例示的なコポリマーは多分散性指数が約1.20未満であり、又は、約1.12未満でさえある。約1.10以下の多分散性さえ可能である。
【0042】
均一触媒を使用する重合プロセス
理論によってとらわれることを意図しないが、いくつかの本明細書中の予想外の利点が、合成を本発明の教示に限定する意図は全くないが、特に好ましい合成プロセスの結果として得られる。より具体的には、本発明によるエチレンオキシド含有コポリマーは、少なくとも1つの不均一触媒又は均一触媒又はそれらの組合せを使用する合成反応によって調製することができるにもかかわらず、1つの特に好ましい取り組みでは、少なくとも1つの均一触媒を使用して合成することを含む。好ましくは、エチレンオキシド含有コポリマーが、不均一触媒を用いることなく、少なくとも1つだけの均一触媒を使用して合成される。均一触媒は、金属含有触媒、例えば、アルミニウム触媒などであり得る。例示的なアルミニウム触媒には、限定されないが、1つ又はそれ以上のアルミニウム含有化合物、例えば、アルキルアルミニウム触媒など、具体的には、1つ又はそれ以上のトリアルキルアルミニウム化合物が含まれる。特に好ましい触媒がトリイソブチルアルミニウムである。トリアルキルアルミニウム触媒は1モルのエチレンオキシドあたり約1mmol〜30mmolのモル比で存在させることができ、好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約2mmol〜20mmolのモル比で存在させることができ、より好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約3mmol〜約8mmolのモル比で存在させることができる。
【0043】
重合プロセスはまた、ルイス塩基の使用を含むことができ、例えば、重合のための開始剤として作用するルイス塩基などの使用を含むことができる。従って、重合プロセスは、ルイス塩基及び触媒を反応させて活性化された触媒を形成する工程を含むことができる。触媒を活性化することができるルイス塩基はどれも使用することができる。ルイス塩基は、アミン、例えば、4個〜20個の炭素原子を有するアミンなどであり得る。例示的なルイス塩基には、限定されないが、モノアルキルアミン(例えば、n−ブチルアミン)、ジアルキルアミン(例えば、ジエチルアミン)、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン)、トリフェニルホスフィン及びピリジンなどが含まれる。重合プロセスは、触媒がルイス塩基(例えば、アミン)により活性化されるとき、開始し得る。触媒中のアルミニウムに対するルイス塩基(例えば、アミン)の比率は0.05を超えることができ、好ましくは0.10を超えることができ、より好ましくは0.20を超えることができ、最も好ましくは0.25を超えることができる。アルミニウムに対するルイス塩基(例えば、アミン)の比率は約1.5未満とすることができ、好ましくは0.90未満とすることができ、より好ましくは約0.80未満とすることができ、最も好ましくは約0.75未満とすることができる。
【0044】
重合プロセスは、炭化水素希釈剤を使用するスラリープロセスであり得る。好ましい炭化水素希釈剤には、5個〜約20個の炭素原子を有するアルカン、好ましくは、約5個〜約12個の炭素原子を有するアルカンが含まれる。炭化水素希釈剤は1つのアルカンからなり得るか、或いは、1つ、2つ、3つ若しくはそれ以上のアルカンを含む混合物、又は、1つ、2つ、3つ若しくはそれ以上のアルカンからなる混合物であり得る。限定されないが、例示的な炭化水素希釈剤には、各種ペンタン(例えば、イソペンタン)、各種ヘキサン(例えば、n−ヘキサン)、各種ヘプタン、各種オクタン及び各種デカンが含まれる。1つの特に好ましい炭化水素希釈剤がイソペンタンである。
【0045】
重合プロセスは、回分プロセス、連続プロセス又は任意の組合せであり得る。プロセスは、1つ又はそれ以上の反応容器に、エチレンオキシド、或いは、1つ又はそれ以上の第2のモノマー(例えば、プロピレンオキシド)、或いは、両者を供給する工程を含むことができる。供給することを、(例えば、触媒を活性化する前に)単回のみの投入として、或いは複数回の投入として、或いは一定の供給速度又は可変供給速度での連続供給として、或いは、それらの任意の組合せとして行うことができる。
【0046】
第2のモノマーは、アルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せであり得る。好ましくは、第2のモノマーには、アルキレンオキシド、アリルグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せが含まれる。限定されないが、例示的なアルキレンオキシドには、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド又は両方が含まれる。例示的なアルキルグリシジルエーテルには、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル及びブチルグリシジルエーテルが含まれる。最も好ましくは、第2のモノマーはプロピレンオキシドを含み、又は、本質的に(例えば、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント又は少なくとも99パーセントが)プロピレンオキシドからなり、又は、完全にプロピレンオキシドからなる。第2のモノマーを1モルのエチレンオキシドあたり約0.25モル未満のモル比で提供することができ、好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約0.12モル未満のモル比で提供することができ、より好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約0.10モル未満のモル比で提供することができ、一層より好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約0.06モル未満のモル比で提供することができ、最も好ましくは、1モルのエチレンオキシドあたり約0.04モル未満のモル比で提供することができる。
【0047】
重合プロセスは、エチレンオキシドを所定のモル速度FEOで供給する工程を含む、エチレンオキシドを提供する工程を含むことができる。第2のモノマーを提供するプロセスは、第2のモノマー(例えば、アルキレンオキシド)を所定のモル速度FAOで供給する工程を含むことができる。好ましくは、FAO/FEOが約0.010〜約0.150であり、より好ましくは約0.015〜約0.10であり、最も好ましくは約0.020〜約0.080である。
【0048】
プロセスはまた、反応を停止させる工程を含むことができる。停止工程は、反応が起こっている容器に、活性プロトンを有する化合物を加える工程、或いは、反応が起こっている1つ又はそれ以上の反応域内の温度を(例えば、少なくとも約12℃)下げる工程、或いは、両方を含むことができる。限定されないが、使用することができる、活性プロトンを有する化合物には、1個〜20個の炭素原子を有するアルコール(例えば、3個〜10個の炭素原子を有するアルコール)が含まれる。例示的なアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、2−プロパノール又はn−プロパノール)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール及びデカノールが含まれる。活性プロトンを有する化合物の混合物もまた使用することができる。活性プロトン含有化合物を約10:1〜約3:1の活性プロトン対金属(例えば、アルミニウム、例えば、アルキルアルミニウム触媒のアルミニウムなど)のモル比で加えることができる。1つの好ましいアルコールが2−プロパノールである。
【0049】
重合プロセスは好ましくは、金属酸化物又は他の好適なファウリング防止(anti-fouling)剤を反応容器に導入する工程を含む。当業者に公知であるファウリング防止剤はどれも使用することができる。1つの好ましい薬剤は、酸化アルミニウム又はシリカ(例えば、フュームドシリカ、例えば、親水性シリカなど)或いはそれらの組合せを含むことができる。本発明の1つの態様において、重合プロセスは、何らかの処理されたシリカ(例えば、疎水性シリカなど)を実質的に存在させることなく行うことができる。ファウリング防止剤が用いられる場合、ファウリング防止剤は好ましくは、エチレンオキシドの重量に基づいて約30重量パーセント以下で使用され、より好ましくは約10重量パーセント以下で使用され、一層より好ましくは約5重量パーセント以下で使用され、より好ましくは約3重量パーセント以下で使用される。ファウリング防止剤は好ましくは、エチレンオキシドの重量に基づいて約0.01重量パーセント以上の濃度で用いられ、より好ましくは約0.1重量パーセント以上の濃度で用いられ、最も好ましくは約1.0重量パーセント以上の濃度で用いられる。好ましくは、反応はカルシウムが存在しない(例えば、カルシウム触媒が存在しない)。存在する場合、カルシウム原子のモル分率が好ましくは、触媒におけるカルシウム原子及びアルミニウム原子の総モル数に基づいて約0.40以下であり、より好ましくは約0.20以下であり、一層より好ましくは約0.05以下であり、一層より好ましくは約0.01以下であり、最も好ましくは約0.005以下である。例えば、コポリマーは、カルシウムを本質的に有しない(すなわち、触媒の総重量に基づいて重量比で約1000パーツ・パー・ミリオン未満のカルシウムを含有する)触媒を使用する合成の反応生成物であり得る。
【0050】
好ましい重合プロセスは好ましくは、モノマー混合物(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド)をエチレンオキシド含有コポリマーの予想ピーク融解温度(℃単位、Tpe)よりも低い温度で重合する工程、好ましくは、Tpe−5℃よりも低い温度で重合する工程、より好ましくは、Tpe−8℃よりも低い温度で重合する工程、最も好ましくは、Tpe−10℃よりも低い温度で重合する工程を含む。従って、重合プロセスはスラリー重合プロセスであり得る。好ましい重合温度(例えば、反応容器の中心又は中心近くで測定される重合温度)には、約50℃以下の温度、好ましくは約45℃以下の温度、より好ましくは約40℃以下の温度、一層より好ましくは約37℃以下の温度、一層より好ましくは約35℃以下の温度、最も好ましくは約33℃以下の温度が含まれる。反応温度は約10℃以上にすることができ、好ましくは約20℃以上にすることができ、より好ましくは約25℃以上にすることができ、最も好ましくは約30℃以上にすることができる。例えば、プロセスは、(例えば、重合プロセスの全体について)重合温度を50℃未満で維持する工程、好ましくは45℃未満で維持する工程、より好ましくは40℃未満で維持する工程、一層より好ましくは37℃未満で維持する工程、最も好ましくは35℃未満で維持する工程を含むことができる。
【0051】
重合プロセスは望ましくは、ランダムコポリマーをもたらし、例えば、エチレンオキシド含有コポリマーについて上記で記載される特性の1つ又は任意の組合せなどをもたらす。例えば、ランダムコポリマーは下記特徴の1つ又は任意の組合せを有することができる:(i)選択されたXEOについての所定のピーク融解温度(T)、但し、ピーク融解温度(T)は、Tpmax=60−150(1−XEO)(好ましくは、Tpmax=60−175(1−XEO))の式(式中、XEOはエチレンオキシドのモル分率である(且つ、XEOは0.5を超え、好ましくは0.8を超える))を使用して、選択されたXEOにおけるTpmaxの最大値を超えない;(ii)同じエチレンオキシド濃度を有し、且つ、カルシウム触媒を使用して重合されるエチレンオキシドコポリマーの融解温度よりも少なくとも5℃低い融解温度(すなわち、ピーク融解温度);(iii)約3,000ダルトン〜約500,000ダルトン(例えば、約10,000ダルトン〜約200,000ダルトン)の数平均分子量;少なくとも10パーセント(例えば、少なくとも12パーセント)の破断時引張り延び;(iv)約200MPaを超える弾性モジュラス;約100MPaを超える剪断弾性率;(v)約3未満(好ましくは約1.7未満、より好ましくは約1.3未満、最も好ましくは約1.12未満)の多分散性指数;(vi)コポリマーにおけるモノマーの総モル数に基づいて約0.10未満(好ましくは約0.02〜約0.07)の第2のモノマー(例えば、プロピレンオキシド)のモル分率;(vii)リアクターのファウリングを実質的に有しないか、又は、完全にさえ有しない粉末形態又は他の粒子化形態;(viii)ランダムコポリマーは、約10μmを超える平均粒子サイズ(又は、最大粒子サイズでさえ)を有する無機の固体残渣を実質的に有しないか、又は、全く有しない;或いは、(ix)(i)〜(viii)の任意の組合せ。
【0052】
バインダー材
本発明ではまた、本明細書中に開示されるエチレンオキシド含有コポリマーを含むバインダー材(すなわち、バインダー相)を作製することが意図される。コポリマーに加えて、バインダー材はさらに、金属塩(例えば、リチウム塩)又は溶媒又は両方を含むことができる。バインダー材は最も好ましくは、固体ポリマー電解質である。バインダー材は架橋されてもよく、又は、架橋がなくてもよい。バインダー材は好ましくは、何らかの架橋を実質的に有していないか、又は、低い架橋密度を有する。バインダー材のポリマーが架橋を有する場合、架橋密度は、1gのポリマーあたりの架橋のマイクロモル数の単位で、好ましくは約500μモル/g以下であり、より好ましくは約100μモル/g以下又は一層より好ましくは約20μモル/g以下であり、最も好ましくは約10μモル/g以下である。バインダー材のポリマーは、例えば、約0.2重量パーセントの濃度で、水に可溶性であり得る。バインダー材は、粒子を含有することができるマトリックスを形成するための十分な量のポリマーを含むことができる。バインダー材のポリマーは一般に、バインダー材の総重量に基づいて約10重量パーセントを超える濃度で含まれ、好ましくは約20重量パーセントを超える濃度で含まれ、より好ましくは約30重量パーセントを超える濃度で含まれ、最も好ましくは約40重量パーセントを超える濃度で含まれる。バインダー材は、バインダー材のポリマーから実質的になることができ(例えば、バインダー材の総重量に基づいて約95パーセントを超える濃度又は約98重量パーセントを超える濃度)、又は、本質的に全体がバインダー材のポリマーからなることさえできる。バインダー材のポリマーをバインダー材の総重量に基づいて90重量パーセント未満の濃度で存在させることができ、好ましくは約85重量パーセント未満の濃度で存在させることができ、より好ましくは約80重量パーセント未満の濃度で存在させることができる。
【0053】
金属塩を、金属塩によりドープされたバインダー材が測定可能な伝導率を示すように十分に高い濃度で存在させることができる。金属塩の濃度は、バインダー材の総重量に基づいて、好ましくは約0.2重量パーセントを超え、より好ましくは約1重量パーセントを超え、最も好ましくは約3重量パーセントを超える。金属塩は、ポリマーバインダーの総重量に基づいて約45重量パーセント未満の濃度で存在させることができ、好ましくは約25重量パーセント未満の濃度で存在させることができ、より好ましくは約20重量パーセント未満の濃度で存在させることができ、最も好ましくは約14重量パーセント未満の濃度で存在させることができる。
【0054】
溶媒が用いられる場合、溶媒は、機械的特性及び電気的特性の所望されるバランスを提供する任意の濃度であり得る。典型的には、溶媒の濃度は、電解質組成物の総重量に基づいて少なくとも約5重量パーセントであり、より典型的には少なくとも約10重量パーセントであり、最も典型的には少なくとも約15重量パーセントである。溶媒は、電解質組成物の総重量に基づいて約90重量パーセントもの高い濃度で存在させることができ、より典型的には、電解質組成物の総重量に基づいて約70重量パーセント未満の濃度で存在させることができる。
【0055】
ただ1つだけの塩、又は、2つ以上の異なる塩の混合物を使用することができる。エチレンオキシド含有コポリマーを含む組成物のイオン伝導率に寄与し得る塩はどれも使用することができる。塩は1つ又はそれ以上の無機塩を含むことができ、或いは、1つ又はそれ以上の無機塩から本質的になることができる。例として、無機塩は、金属性カチオンを有する塩(すなわち、金属塩)であってもよく、又は、金属性カチオンを有しなくてもよい(例えば、アンモニウム塩などの場合)。どのような金属であれ、又は、金属のどのような組合せであれ、金属塩において用いることができる。好ましい金属塩には、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が含まれる。例として、金属塩は、リチウム、ナトリウム、ベリリウム、マグネシウム又はそれらの任意の組合せを含むことができる。特に好ましい金属塩がリチウム塩である。限定されないが、リチウム塩は、リチウムトリフルオロメタンスルホナート(リチウムトリフラート又はLiCFSO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムイミド(Li(CFSON)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)カーバイド(Li(CFSOC)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、LiBF、LiBr、LiCSO、LiCHSO、LiSbF、LiSCN、LiNbF、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムアルミニウムクロリド(LiAlCl)、LiB(CF、LiBF(CF、LiBF(CF、LiBF(CF)、LiB(C、LiBF(C、LiBF(C、LiBF(C)、LiB(CFSO、LiBF(CFSO、LiBF(CFSO、LiBF(CFSO)、LiB(CSO、LiBF(CSO、LiBF(CSO、LiBF(CSO)、LiCSO、リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(LiTFSA)又はそれらの任意の組合せを含むことができ、或いは、これらのリチウム塩又はそれらの任意の組合せから実質的になることができ、或いは、これらのリチウム塩又はそれらの任意の組合せから本質的になることができ、或いは、これらのリチウム塩又はそれらの任意の組合せからなることさえできる。リチウム塩の組合せもまた使用することができる。同様に、上記塩のどれもがまた、異なる塩と、例えば、異なる金属塩などと組み合わせることができ、又は、金属性カチオンを有しない塩(例えば、アンモニウム塩など)と組み合わせることさえできる。用いられる場合、1つ又はそれ以上のリチウム塩がバインダー材又は電解質組成物における塩の一部又は全てであり得る。金属塩の総量に基づくリチウム塩の量は、金属塩の単位重量あたりの金属イオンの濃度が一般に高くなるように十分に高くすることができる。好ましくは、リチウム塩の濃度(例えば、上記リチウム塩のいずれか1つ又は任意の組合せの濃度)は、無機塩の総重量に基づいて約30重量パーセント以上であり、より好ましくは約50重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約70重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約95重量パーセント以上であり、最も好ましくは約98重量パーセント以上である。1つの特に好ましいリチウム塩が、リチウムトリフラートを含むリチウム塩である。好ましくは、無機塩又はリチウム塩又は両者はリチウムトリフラートを約95重量パーセント以上の濃度で含み、より好ましくは約98重量パーセント以上の濃度で含む。最も好ましくは、無機塩又はリチウム塩又は両者はリチウムトリフラートから本質的になり、或いは、全体がリチウムトリフラートからなる。
【0056】
第2の相のポリマー(例えば、EOPポリマー)に由来する酸素原子のモル濃度(例えば、−C=O基、C−O−C基及び−C−OH基のモル数、式において、Cは炭素原子を示し、Oは酸素原子を示し、Hは水素原子を示す)の、金属塩に由来する金属アニオンのモル濃度(例えば、M+のモル数)に対する比率(すなわち、O:M比)。リチウム塩については、O:Li比は、第2の相のポリマー(例えば、EOPポリマー)に由来する酸素原子のモル濃度の、リチウム塩に由来するLiイオンのモル濃度に対する比率である。好ましくは、O:M比(例えば、O:Li比)が約1:1以上であり、より好ましくは約2:1以上であり、一層より好ましくは約4:1以上であり、最も好ましくは約10:1以上である。好ましい電解質組成物は、O:M比(例えば、O:Li比)が約120:1以下であり、より好ましくは約80:1以下であり、一層より好ましくは約60:1以下であり、一層より好ましくは約40:1以下であり、最も好ましくは約30:1以下である。例として、電解質組成物のO:M比(例えば、O:Li比)を、約10、約15、約20又は約25とすることができる。O:M比、又は、O:Li比、又は、両方を求めることにおいて、第1の相におけるポリマー(例えば、有機粒子におけるポリマー)における酸素は好ましくは、酸素原子のモル濃度を計算するときには含まれない。
【0057】
バインダー材はさらに、溶媒又は担体(これらはまとめて、溶媒として示される)を含むことができる。溶媒は、バインダー材におけるカチオン又はアニオンの移動度が増大するように選択することができる。溶媒は約25℃の温度で固体又は液体であり得る。好ましい溶媒は約25℃の温度で液体である。特に好ましい溶媒が、比較的大きい誘電率によって特徴づけられ得る。限定されないが、例示的な溶媒は、約15を超える誘電率を有することができ、好ましくは約27を超える誘電率を有することができ、より好ましくは約50を超える誘電率を有することができ、最も好ましくは約66を超える誘電率を有することができる。誘電率は、例えば、ASTM D150の方法論を使用して測定することができる。
【0058】
本発明の1つの態様において、溶媒には、モノヒドロキシ末端のエチレンオキシド型リガンドを有する化合物として、又は、有機ホスファートとして、又は、それらの両方として特徴づけられる溶媒が含まれる。例えば、溶媒は、モノヒドロキシ末端のエチレンオキシド型リガンドを有する有機ホスファート系溶媒である。溶媒は好ましくは、無水であり得る非プロトン性溶媒を含み、又は、無水であり得る非プロトン性溶媒から本質的になる。「無水」によって、溶媒、同様にまた、電解質組成物物質が水を約1,000ppm(重量比百万分の一)以下の濃度で含み、好ましくは約500ppm以下の濃度で含み、より好ましくは約100ppm以下の濃度で含むことが意味される。バインダー材を形成するための好ましい非プロトン性溶媒は、有機の非プロトン性担体又は非プロトン性溶媒、有機スルフィト、有機スルホン、有機カルボナート、有機エステル、有機エーテル、それらのフッ素化誘導体及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む。好ましい有機エステルには、ラクトン及びアセタートが含まれる。
【0059】
溶媒は好ましくは有機溶媒である。好ましい溶媒は、1つ若しくはそれ以上の環式カルボナート、1つ若しくはそれ以上の非環式カルボナート、又は、1つ若しくはそれ以上のフッ素含有カルボナート、1つ若しくはそれ以上の環式エステル、或いは、それらの任意の組合せを含むか、それともまた、1つ若しくはそれ以上の環式カルボナート、1つ若しくはそれ以上の非環式カルボナート、又は、1つ若しくはそれ以上のフッ素含有カルボナート、1つ若しくはそれ以上の環式エステル、或いは、それらの任意の組合せから本質的になる。非環式カルボナートには、線状の非環式カルボナートが含まれる。限定されないが、溶媒の例には、環式カルボナートが含まれ得るが、好ましくは、エチレンカルボナート(EC)、プロピレンカルボナート(PC)、フルオロエチレンカルボナート(FEC)及びブチレンカルボナート(BC)が含まれる。さらなる例には、C=C不飽和結合を有する環式カルボナート、例えば、ビニレンカルボナート(VC)、ビニルエチレンカルボナート(VEC)、ジビニルエチレンカルボナート、フェニルエチレンカルボナート、ジフェニルエチレンカルボナート又はそれらの任意の組合せなどが含まれ得る。
【0060】
線状の非環式カルボナートの様々な例、例えば、ジメチルカルボナート(DMC)、エチルメチルカルボナート(EMC)、ジエチルカルボナート(DEC)、ジプロピルカルボナート(DPC)、メチルプロピルカルボナート(MPC)、エチルプロピルカルボナート(EPC)及びメチルブチルカルボナートなどもまた、単独又は組合せで使用することができる。C=C不飽和結合を有する線状カルボナートの例には、メチルビニルカルボナート、エチルビニルカルボナート、ジビニルカルボナート、アリルメチルカルボナート、アリルエチルカルボナート、ジアリルカルボナート、アリルフェニルカルボナート、ジフェニルカルボナート又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0061】
使用することができる他のカルボナートには、フッ素含有カルボナートが含まれ、これには、ジフルオロエチレンカルボナート(DFEC)、ビス(トリフルオロエチル)カルボナート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カルボナート、トリフルオロエチルメチルカルボナート、ペンタフルオロエチルメチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルメチルカルボナート、ペルフルオロブチルメチルカルボナート、トリフルオロエチルエチルカルボナート、ペンタフルオロエチルエチルカルボナート、ヘプタフルオロプロピルエチルカルボナート、ペルフルオロブチルエチルカルボナート又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0062】
例示的な環式エステルには、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン又はそれらの任意の組合せが含まれる。C=C不飽和結合を有する環式エステルの例には、フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、α−アンゲリカラクトン又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0063】
使用することができる他の溶媒には、フッ素化オリゴマー、ジメトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル(すなわち、トリグリム)、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル(DME)、ポリエチレングリコール、ブロモγ−ブチロラクトン、フルオロクロロエチレンカルボナート、エチレンスルフィト、プロピレンスルフィト、フェニルビニレンカルボナート、カテコールカルボナート、ビニルアセタート、ジメチルスルフィト又はそれらの任意の組合せが含まれる。これらの溶媒の中で、EC、PC及びγ−BLが好ましく、PCが最も好ましい。カルボナート系溶媒の濃度(例えば、EC、PC、γ−BL又はそれらの任意の組合せの濃度)は好ましくは、有機溶媒の総重量に基づいて約50重量パーセント以上であり、より好ましくは約75重量パーセント以上であり、一層より好ましくは約90重量パーセント以上であり、最も好ましくは約95重量パーセント以上である。
【0064】
溶媒は、モノヒドロキシ末端のエチレンオキシド型リガンドを有する化合物として、又は、有機ホスファートとして、又は、それらの両方として特徴づけられる1つ又はそれ以上の溶媒を含むことができ、或いは、そのように特徴づけられる1つ又はそれ以上の溶媒から実質的になることができ(例えば、溶媒の総重量に基づいて少なくとも約95重量パーセント)、或いは、そのように特徴づけられる1つ又はそれ以上の溶媒からなることさえできる。例えば、溶媒は、モノヒドロキシ末端のエチレンオキシド型リガンドを有する有機ホスファート系溶媒である。限定されないが、使用することができる1つの例示的な有機ホスファートがO=P(OCOCOCHである。プロピレンオキシド、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの組合せ、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、モノプロピルエーテル、又は、3個〜5個のアルコキシド基などを含有する類似体もまた使用することができる。1つの取り組みでは、溶媒を、バインダーの難燃性が管理されるように選択し、用いることが意図される。例えば、有機ホスファートが除かれると同様に調製される電解質と比較して、電解質の難燃性特性を改善するために十分なタイプ及び量の有機ホスファートを用いることが可能である。電解質の難燃性特性における改善が、ASTM D635によって測定されるような水平燃焼速度における減少(例えば、少なくとも20パーセントの減少);例えば、ASTM D2863に従って測定されるような酸素指数における増大(例えば、絶対基準で少なくとも1パーセントの酸素指数における増大);クリーブランド・オープン・カップ(Cleveland Open Cup)法ASTM D92によって測定されるような引火点における増大(例えば、約10℃以上の増大、好ましくは約20℃以上の増大);又はそれらの任意の組合せによって特徴づけられ得る。例として、有機ホスファートはO=P(OCOCOCHであり得る。有機ホスファートが用いられる場合、有機ホスファートは、電極又は電解質の難燃性特性を改善するために十分な濃度で使用されなければならない。有機ホスファートが用いられる場合、有機ホスファートは好ましくは、電極又はポリマー電解質の総重量に基づいて約1重量パーセント以上の量で存在し、より好ましくは約5重量パーセント以上の量で存在し、一層より好ましくは約10重量パーセント以上の量で存在し、一層より好ましくは約15重量パーセント以上の量で存在し、最も好ましくは約30重量パーセント以上の量で存在する。有機ホスファートが用いられる場合、有機ホスファートは好ましくは、電極又はポリマー電解質の総重量に基づいて約60重量パーセント以下の量で存在し、好ましくは約50重量パーセント以下の量で存在し、最も好ましくは約40重量パーセント以下の量で存在する。
【0065】
バインダー組成物(すなわち、バインダー材)又はエチレンオキシド含有コポリマー又は両者は、比較的低いガラス転移温度によって特徴づけられ得る。例えば、ガラス転移温度が約−30℃未満であり得るし、好ましくは約−40℃未満であり得るし、より好ましくは約−50℃未満であり得るし、一層より好ましくは約−55℃未満であり得るし、最も好ましくは約−60℃未満であり得る。バインダー組成物は、約50℃で、又は、室温(例えば、約23℃)でさえ、実質的に完全に非晶質であり得るか、或いは、完全に非晶質であり得る。好ましくは、エチレンオキシド含有コポリマーは、バインダー組成物の融解温度が約50℃未満(好ましくは35℃未満、より好ましくは約23℃未満、最も好ましくは約15℃未満)であるような低い融解温度を有する。
【0066】
電気活性粒子
電気活性粒子は、複合材電極が形成され得るように任意のサイズ又は形状であり得る。電気活性粒子は好ましくは、粒子サイズ(例えば、メジアン直径、平均直径、メジアン長さ、平均長さ、最大粒子直径、最大粒子長さ又はそれらの任意の組合せ)が約100μm以下であり、より好ましくは約10μm以下であり、一層より好ましくは約3μm以下であり、最も好ましくは約1μm以下である。電気活性粒子は好ましくは、粒子サイズ(例えば、メジアン直径、平均直径、メジアン長さ、平均長さ、最大粒子直径、最大粒子長さ又はそれらの任意の組合せ)が約0.01μm以上であり、より好ましくは約0.05μm以上である。
【0067】
電気活性粒子は、重なる伝導帯及び価電子帯を有することができる。例えば、電気活性粒子は、金属、金属合金、金属酸化物又はそれらの任意の組合せを含むことができる。好ましくは、電気活性粒子は、V、Fe、Mn、Co、Ni、Ti、Zr、Ru、Re、Pt、Li又はそれらの任意の組合せを含むことができる。好ましくは、EAPは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の金属を含有する酸化物を含む。限定されないが、例示的なEAPはリチウムを含むことができる。より好ましくは、EAPは、Liと、Oと、Ni、Co、Mn、Ti又はそれらの任意の組合せから選択される別の金属とを含むことができる。多数の電気活性粒子は、ただ1つだけの化学的構造(例えば、ただ1つだけの金属、ただ1つだけの金属合金、又は、ただ1つだけの金属酸化物)の多数の粒子を含むことができ、或いは、異なる化学的構造を有する粒子(例えば、2つ以上の異なる金属含有粒子)を含むことができる。複合材電極において、非被覆粒子又は被覆粒子を使用することができる。好ましいEAPが非被覆粒子である。
【0068】
バインダー材又は複合材電極又は両方を、エチレンオキシド含有コポリマー、粒子(例えば、EAP)、金属塩、溶媒又はそれらの任意の組合せを混合して、一般には均質な混合物を形成する工程を含むプロセスによって調製することができる。混合することを、エチレンオキシド含有コポリマーの融解温度を超える配合温度で行うことができる。上記プロセスはまた、バインダー材又は電極を、例えば、押出し、成形、ミリング又はカレンダーリングによって(好ましくは、無孔性のフィルム、シート又はテープに)形成する工程を含むことができる。バインダー材は、(例えば、約0.2g未満の質量を有する)ペレットにすることができ、又は、さらなる加工のために好適な、例えば、バインダー材を粒子(例えば、EAP)と混合するさらなる混合工程などのために好適な任意の他の形状にすることができる。バインダー材及び電極はまた、バインダー材のポリマー(例えば、ポリマー及びEAPの混合物)を溶媒と、又は、溶媒及び金属塩の溶媒混合物と接触させることによって調製することができる。従って、上記プロセスは、ポリマーを溶媒又は溶媒混合物により膨潤させる工程を含むことができる。膨潤工程を、バインダー材又は複合材電極を形成する前に行うことができ、或いは、そのような形成工程の後で行うことができる。例えば、膨潤工程を、エチレンオキシド含有コポリマーを含む電池を組み立てた後で行うことができる。形成されたバインダー材は固体ポリマー電解質であり得る。
【0069】
複合材電極の引張り特性
本発明の複合材電極は、驚くほど大きい強度及び耐久性を有しており、このことが、本発明の複合材電極を、EAPと、バインダー材との間における界面強度の喪失を伴うことなく、電気的サイクリングから誘導される機械的応力を受ける二次電池において使用されるために満足できるものにしている。例えば、複合材電極は、破断時延びが約6パーセントを超え、好ましくは約8パーセントを超え、より好ましくは約10パーセントを超え、一層より好ましくは約12パーセントを超え、最も好ましくは約14パーセントを超えるような、(ASTM D638−03IVのサンプルタイプを使用して、ASTM D882−97に従って測定されるような)引張り特性を有することができる。そのような複合材電極は、EAPと、バインダー材との間における界面接触を維持することができる。例として、EAPの10パーセント未満が、好ましくは、EAPの約5パーセント未満が、又は、それどころか、EAPの1パーセント未満が、ASTM D638−03IVのサンプルタイプを使用して、ASTM D882−97に従って試験されるサンプルでの走査型電子顕微鏡観察を使用して観察されるような約2パーセントのひずみの後で、又は、約10パーセントのひずみの後でさえ、バインダー材から抜け出る。応力−ひずみ曲線は、約1.5パーセント未満のすべてのひずみで、好ましくは約2パーセント未満のすべてのひずみで、最も好ましくは約3パーセント未満のすべてのひずみでキンクを有しないことがある(例えば、変曲点を有しないこと及び極大値を有しないことがある)。
【0070】
本明細書中に記載されるバインダー材(例えば、固体ポリマー電解質)は、二次電池(例えば、無水の二次電池、例えば、リチウム電池など、或いは、水性の電池、例えば、Ni−金属水素化物電池、亜鉛/空気電池、リチウム/空気電池又は炭素/亜鉛電池など)、燃料電池(例えば、導電体がプロトンであるセル)、光起電性セル(例えば、Graetzelセル)、電気化学的デバイス及びセンサーデバイスにおいて使用することができる。
【0071】
バインダー組成物の電気的特性
本発明のエチレンオキシド含有コポリマーを使用して調製されるバインダー組成物は、エチレンオキシド含有コポリマーがエチレンオキシドホモポリマーで置き換えられる同様に調製されたバインダー組成物のイオン伝導率を超える(例えば、約60℃の温度での)イオン伝導率を有することができる。電気伝導率(例えば、イオン伝導率)は、下記の「試験方法」の節で記載されるようなACインピーダンス分光法を使用して測定することができる。理論によってとらわれることはないが、増大したイオン伝導率は、ランダムコポリマーのより低い融解温度の結果であると考えられる。金属塩(例えば、約2〜約30(好ましくは約4〜約20)のO:M比又はO:Li比で存在する金属塩又はリチウム塩)と、本明細書中に記載されるエチレンオキシド含有コポリマーとを含むバインダー組成物は好ましくは、エチレンオキシド含有コポリマーがエチレンオキシドホモポリマーで置き換えられる同様に調製されたバインダー組成物の電気伝導率の少なくとも2倍(好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、最も好ましくは少なくとも5倍)である、60℃で測定される電気伝導率(例えば、イオン伝導率)を有する。
【0072】
試験方法
融解温度(すなわち、ピーク融解温度T)、最終融解温度(T)及び融解熱(H)を、示差走査熱量測定法を使用して測定することができる。示差走査熱量測定法(DSC)が、TA Instruments DSC2920で、ヘリウムの流れのもと、密封されたパン中に1mg〜3mgのポリマーを使用して行われる。サンプルは−120℃に冷却され、その後、10℃/分の速度で120℃に加熱され、続いて、−120℃への再冷却及び120℃への再加熱がともに10℃/分の速度で行われる。ピーク融解温度、融解温度及び融解熱が、2回目の加熱のときに測定される。結晶化度Xcは、Hを、100パーセントの結晶化度を有するポリマー(すなわち、ポリエチレンオキシドホモポリマー)についての理論的融解熱(H)の熱によって除算し、100パーセントを乗算することによって計算される:
Xc=100パーセント×(H/H
式中、H=188J/gであり、且つ、完全な結晶についての理論的Tが、ポリエチレンオキシドホモポリマーについては66℃である(例えば、F. Rodriguez、Principles of Polymer Science、第2版(Hemisphere Publishing Co.、1982年、54頁)を参照のこと)。
【0073】
エチレンオキシドコポリマーにおけるエチレンオキシド及び第2のモノマーの配列分布を、13C−NMRを使用して測定することができる。配列分布を使用して、ブロック性指数を計算することができる。
【0074】
コポリマーのブロック性指数(BI)が、Y−Zコポリマーについては、下記のように定義される:
BI=(f(YZ)+f(ZY))/(2x
式中、f(YZ)+f(ZY)はYZジアド分画及びZYジアド分画の和であり、x及びxはそれぞれ、モノマーY及びモノマーZのモル分率である。交互型ポリマーは、BI=1/(1−x)(式中、Zは微量モノマーである(すなわち、x≦0.5))を有し、また、x=x=0.5の特別な場合については、BIが2である。完全なブロックコポリマー(例えば、ジブロックコポリマー)については、BIが約0である。
【0075】
エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの濃度を、H−NMRを使用して測定することができる。NMR測定を、300MHzで稼動するBruker AMX−300で行うことができる。鎖の骨格に位置する水素原子から生じるNMRピークの強度(I骨格)が、NMRスペクトルを約3.78ppmから約3.30ppmまで積分することによって求められる。ペンダントメチル基上の水素原子から生じるNMRピークの強度(Iメチル)が、NMRスペクトルを約1.18ppmから約1.13ppmまで積分することによって求められる。プロピレンオキシドの濃度が次式によって与えられる:
パーセントPO=100パーセント(Iメチル/3)/((Iメチル/3)+(I骨格/4)−(Iメチル/4))
例えば、I骨格=400及びIメチル=31.36である場合、パーセントPO=10.18モルパーセントである。
【0076】
GPC−分子量分布
エチレンオキシド含有コポリマーの分子量(数平均分子量及び重量平均分子量を含む)及び多分散性指数を、Polymer Liquids PL Aquagel−OH(15μm)のカラムを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。移動相が約0.05パーセントのNaNの水溶液であり、約0.8mL/分の流速が使用される。注入サイズが約200μLである。Waters590HPLCイソクラチックポンプ及びWaters717Plusオートサンプラーが使用される。測定システムは、Wyatt Technology Dawn DSPレーザー光度計及びWaters2410屈折率検出器を含む二重検出システムである。結果が、WTC−Astra4.72ソフトウエアを使用して分析され、解釈される。
【0077】
電気伝導率/イオン伝導率
ポリマーバインダー組成物の伝導率を、約10mVの交流(AC)振幅を使用して、SolartronでACインピーダンス分光法を使用して測定することができる。ACインピーダンス分光法による方法の詳細が、Handbook of Batteries、第3版(編者:David Linden及びThomas Reddy、McGraw-Hill、2001年、New York、NY、2.26頁〜2.29頁)に見出される(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0078】
剪断弾性率
ポリマー及びポリマー電解質組成物の剪断弾性率、損失弾性率及びtanδを、動的機械的分析を(例えば、ASTM D5279−08に従って)使用して測定することができる。別途具体的に述べられない限り、剪断弾性率は、約30℃の温度、及び、典型的には約0.04パーセントのひずみでの約1ラジアン/秒の振動剪断振動数において測定される。
【実施例】
【0079】
実施例EP−1
実施例EP−1は、スラリー重合プロセスを使用して調製されるエチレンオキシド含有ランダムコポリマーである。スチール製攪拌機を有する圧力定格リアクターを窒素により約75℃で約4時間パージする。リアクターを約32℃に冷却し、これに、約420gの乾燥イソペンタン、60gのヘキサンにおける約3.0gのCabot SpectrAL 51アルミナ、約1.7gのプロピレンオキシドを投入する。その後、ヘキサンにおけるトリイソブチルアルミニウムの1モル/L溶液の約6.6mLを、シリンジを使用してリアクターに注入する。次に、0.22gのトリエチルアミンを加える。アルミニウム対窒素原子のモル比(Al:N)が約3である。その後、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをそれぞれ約26.4g/h及び約2.6g/hの速度で供給する。約32℃の反応温度及び約7psi〜約10psiの反応圧力を維持する。約100gのエチレンオキシドを供給した後、反応を、シリンジを使用して約1.6gの2−プロパノールを加え、反応液を約0.5時間撹拌し続けることによって停止させる。その後、混合物を室温(約23℃)に冷却し、内容物を取り出し、ろ過し、ヘキサンにより洗浄し、室温において真空オーブン中で一晩乾燥する。ポリマーを約1000gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)により安定化させる。ポリマーは白色の粉末であり、収量が約79.6gである。ポリマーの0.2重量パーセント水溶液の換算粘度が、毛細管レオメーターを使用して測定された場合、約0.50である。分子量分布が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)がそれぞれ、約76,000及び72,000であり、多分散性指数が約1.06である。ポリマーの融解温度が、ポリマーを100℃に加熱し、10℃/分で−30℃に冷却し、その後、10℃/分で100℃に再加熱することによって示差走査熱量測定法を使用して1ミリグラム〜3ミリグラムのサンプルで求められる。2回目の加熱で測定される融解温度が約46.4℃である。エチレンオキシド濃度及びプロピレンオキシド濃度並びに配列分布が、NMR技術を使用して測定される。ポリマーにおけるプロピレンオキシド濃度が約4.5モルパーセントである。実施例EP−1のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。
【表1】

【0080】
実施例EP−2
実施例EP−2は、20gのヘキサンにおける1gのDegussa酸化アルミニウムCが、EP−1で使用されたCabot SpectrAL 51アルミナの代わりに添加されることを除いて、実施例EP−1と同じ様式で調製される。実施例EP−2のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。
【0081】
実施例EP−3
実施例EP−3は、トリエチルアミンが約0.11gに減らされ、且つ、プロピレンオキシドの予備投入が約3.3gに増大されることを除いて、実施例EP−1と同じ様式で調製される。実施例EP−3のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。
【表2】

【0082】
実施例EP−4
実施例EP−4は、Degussaから入手可能な、ポリジメチルシロキサンで処理されたAEROSIL(登録商標)R202フュームドシリカの約3gが使用され、且つ、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの供給速度がそれぞれ約19.8g/h及び約2.3g/hに減らされることを除いて、実施例EP−3と同じ様式で調製される。このフュームドシリカはBET表面積が約80m/g〜約120m/gであり、pHが約4.0〜約6.0であり、炭素濃度が約3.5重量パーセント〜約5.0重量パーセントである。EP−4のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。
【0083】
実施例EP−5
実施例EP−5は、反応温度が約38.5℃に上げられることを除いて、実施例EP−1と同じ様式で調製される。反応が、リアクターの壁及び底部における大量のファウリングのために、約70.1gのエチレンオキシド及び約6.5gのプロピレンオキシドを投入した後、早くに(約2.5時間後に)停止される。顆粒状又は粉末状の生成物が回収されない。生成物はワックス様物質であり、リアクター壁、リアクター底部及び攪拌機におけるどろっとした層として形成される。この層は容易に剥がすことができる。実施例EP−5のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。
【0084】
実施例EP−6
実施例EP−6は、反応温度が約38.5℃に上げられ、且つ、3.3gの疎水性シリカ(Cabot Corporationから入手可能なTS−720)がアルミナの代わりに使用されることを除いて、実施例EP−1と同じ様式で調製される。EP−6のための反応条件が表1に示され、特性が表2に示される。多分散性指数(約3.5)が、EP−1、EP−2、EP−3、EP−4及びEP−5の各実施例よりもはるかに大きい。
【0085】
実施例EP−7、実施例EP−8、実施例EP−9及び実施例EP−10
実施例EP−7、実施例EP−8及び実施例EP−9は、カルシウム含有触媒を使用して約40℃の温度でスラリー重合によって調製される、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーである。これらのコポリマーは、1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量及び少なくとも約3の多分散性指数を有しており、0.2重量パーセントの濃度で水に不溶性である。実施例EP−7、実施例EP−8及び実施例EP−9のピーク融解温度がそれぞれ、51.3℃、51.0℃及び50.0℃である。実施例EP−7、実施例EP−8及び実施例EP−9におけるプロピレンオキシドのモル濃度がそれぞれ、12.7パーセント、14.4パーセント及び10.2パーセントである。
【0086】
アルミニウム触媒を使用して調製されるこれらのコポリマーは、カルシウム触媒を使用して調製されるコポリマーよりも、より低い融解温度(同じ又はより低いコモノマー濃度で)、より低い分子量、より低い多分散性を有することが予想され、そしてより水溶性である。
【0087】
実施例EP−10が、分子量を低下させるために実施例EP−7に照射することによって調製される。実施例EP−10は、分子量が約300,000ダルトン未満であり、多分散性が約2であり、ピーク融解温度が約51.1℃であり、プロピレンオキシド濃度が約12.6モルパーセントである。実施例EP−10は約0.2重量パーセントの濃度で水に不溶性である。
【0088】
実施例EP−11(EP−11)
実施例EP−11は、分子量を増大させるため適宜変更した、実施例EP−1と同様なプロセスを使用して調製される、95.3モルパーセントのエチレンオキシド及び4.7モルパーセントのプロピレンオキシドのランダムコポリマーである。実施例EP−11は、約118,000の実施例EP−11の重量平均分子量、約1.10未満の多分散性指数、示差走査熱量測定法によって測定されるときの約−60℃のガラス転移温度、及び、動的機械的分析によって測定されるときの約−54℃のガラス転移温度、約49℃の融解温度、約47重量パーセントの結晶化度、30℃における約122MPaの剪断弾性率、約250MPaの弾性モジュラス、並びに、約114μmのクリスタリットサイズによって特徴づけられる。
【0089】
実施例EP−12(EP−12)
実施例EP−12は、カルシウム含有触媒を使用して調製される、約90モルパーセントのエチレンオキシド及び約10モルパーセントのプロピレンオキシドのランダムコポリマーである。実施例EP−12はその後、分子量を低下させるために照射される。実施例EP−12は、約84,100の重量平均分子量及び約26,400ダルトンの数平均分子量、約3.18の多分散性指数、示差走査熱量測定法によって測定されるときの約−65℃のガラス転移温度、及び、動的機械的分析によって測定されるときの約−57℃のガラス転移温度、約47℃の融解温度、約24重量パーセントの結晶化度、30℃における約16MPaの剪断弾性率、約22MPaの弾性モジュラス、並びに、約344μmのクリスタリットサイズによって特徴づけられる。
【0090】
実施例EP−13(EP−13)
実施例EP−13は、トリイソブチルアルミニウム触媒及びシリカを使用して調製される、約92モルパーセントのエチレンオキシド及び約8モルパーセントのプロピレンオキシドのランダムコポリマーである。シリカは、Cabot Corporationから入手可能なCab−o−Sil(登録商標)TS−720である。実施例EP−13は、約114,610ダルトンの重量平均分子量及び約18,530ダルトンの数平均分子量、約6.19の多分散性指数、示差走査熱量測定法によって測定されるときの約−64℃のガラス転移温度、及び、動的機械的分析によって測定されるときの約−55℃のガラス転移温度、約50℃の融解温度、約47重量パーセントの結晶化度、30℃における約55MPaの剪断弾性率、約180MPaの弾性モジュラス、並びに、約220μmのクリスタリットサイズによって特徴づけられる。
【0091】
実験−カソード複合材
カソード複合材1(CC−1)
カソード複合材1(CC−1)が、実施例EP−11のランダムコポリマーからなるバインダー材を、約30重量パーセントのバインダー及び70重量パーセントのLiCoO粒子の比率でLiCoO粒子(LICO Technology Corporationから入手可能なL056)と混合することによって調製される。これらの材料が90℃においてHaakeミキサーで混合される。CC−1の引張り特性が、D638−03IVのサンプルタイプを使用して、ASTM D882−97に従って測定される。引張り応力(MPa)対引張りひずみ(パーセント)が図1Aに示され、0パーセントのひずみから1.5パーセントのひずみまでのこの曲線の領域が図1Bに示される。図1Aは、CC−1の破断時引張りひずみが約12パーセント超(例えば、約15パーセント)であることを示す。図1A及び図1Bは、CC−1が約3パーセントのもとでのひずみ(例えば、約1.5パーセントのもとでのひずみ)で降伏しないことを示す。CC−1は延性様式で変形する。図2は、延性破壊を示す、CC−1の引張り破断表面の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真である。EP−11ランダムコポリマーマトリックスからの粒子プルアウトの証拠が図2では全く認められない。
【0092】
CC−1は、弾性モジュラスが約500MPaであり、破断時のひずみが約15パーセントである。
【0093】
比較のためのカソード複合材2(CC−2)
カソード複合材2(CC−2)が、ランダムコポリマーがポリ(ビニリデンフルオリド)(すなわち、PVDF)ポリマー(Atofinaから入手可能なKynar(登録商標)PowerFlex(版権))で置き換えられることを除いて、CC−1と同様に調製される。CC−2が約180℃の温度においてHaakeミキサーで混合される。CC−2の引張り特性が、D638−03IVのサンプルタイプを使用して、ASTM D882−97に従って測定される。引張り応力(MPa)対引張りひずみ(パーセント)が図3に示される。図3は、CC−2が非常に脆く、約5パーセント未満(例えば、約2パーセント)の破断時引張りひずみを有することを例示する。図3は、CC−2が、約2パーセントのもとでのひずみ(例えば、約1パーセントのもとでのひずみ)で、応力ひずみ曲線における「キンク」(例えば、変曲点)を有することを例示する。CC−2の走査型電子顕微鏡観察は、約0.5パーセントのひずみでの応力−ひずみ曲線におけるキンクがバインダーマトリックス相からの粒子のプルアウトに対応することを示している。CC−2は良好な機械的一体性を有していない。図4は、PVDFマトリックスからの粒子プルアウトを示す、CC−2の引張り破断表面の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真である。
【0094】
カソード複合材3(CC−3)
CC−3は、CC−1と同じプロセス及び同じ濃度のLiCoOを使用して、EP−12を使用して調製される。この複合材料は、約58MPaの弾性モジュラス及び約8パーセントの破断時ひずみによって特徴づけられる。
【0095】
CC−4は、CC−1と同じプロセス及び同じ濃度のLiCoOを使用して、EP−13を使用して調製される。この複合材料は、約340MPaの弾性モジュラス及び約4パーセントの破断時ひずみによって特徴づけられる。
【0096】
バインダー組成物
リチウム塩を含むバインダー組成物が、ポリマー及び塩を溶融混合することによって調製される。比較用のバインダーサンプル1(CBS−1)は、約100,000Daの重量平均分子量を有するエチレンオキシドホモポリマーを、リチウム(塩由来)に対する酸素(ホモポリマー由来)のモル比が約12であるリチウムトリフラートと混合することによって調製される。約30℃から約100℃までの伝導率が、上記において「試験方法」の節で記載されるようにACインピーダンス分光法を使用して測定される。温度の関数としてのCBS1のイオン伝導率が図5に示される。
【0097】
バインダーサンプル2(BS−2)が、本明細書中に記載されるようなエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダムコポリマー(実施例EP−11)を混合することによって調製される。BS−2についてのO:Liのモル比が約12である。バインダーサンプル2の電気伝導率(例えば、イオン伝導率)が約30℃から約100℃まで測定される。BS−2の電気伝導率(例えば、イオン伝導率)が図6に示される。
【0098】
ランダムEO−POコポリマー(ES2)を含有するバインダーサンプルは、約50℃から約70℃までの温度で、より大きい電気伝導率(例えば、イオン伝導率)を有する。例えば、約60℃において、BS−2の電気伝導率がCBS−1の電気伝導率の少なくとも5倍である。
【0099】
これらのサンプルの電気伝導率(例えば、イオン伝導率)の結果によって例示されるように、本明細書中に記載されるエチレンオキシド含有コポリマーを含むバインダー組成物(例えば、約4〜約30のO:Li比を有するバインダー組成物)は、エチレンオキシドホモポリマーをエチレンオキシド含有コポリマーの代わりに含有する同様に調製されたバインダー組成物の電気伝導率の少なくとも2倍(好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、最も好ましくは少なくとも5倍)である、(ACインピーダンス分光法によって測定されるような)60℃での電気伝導率(例えば、イオン伝導率)を有することができる。
【0100】
下記の考察が、全体として本教示に当てはまる。別途言及されない限り、すべての範囲が、両方の終点、及び、終点間のすべての数字を含む。範囲に関連しての「約」又は「およそ」の使用はその範囲の両端に当てはまる。従って、「約20〜30」は、指定された終点を少なくとも含む「約20〜約30」を包含することが意図される。
【0101】
特許出願及び刊行物を含めて、すべての論文及び参考文献の開示が、すべての目的のために参照によって組み込まれる。組合せを記載するための用語「consisting essentially of(から本質的になる)」に対する参照は、特定された要素、成分、構成成分又は工程、及び、当該組合せの基本的且つ新規な特徴に実質的に影響しないそのような他の要素、成分、構成成分又は工程を包含するものとする。本明細書中の要素、成分、構成成分又は工程の組合せを記載するための用語「comprising(含む)」又は用語「including(含む)」の使用もまた、本明細書中の要素、成分、構成成分又は工程から本質的になる実施形態、或いは、本明細書中の要素、成分、構成成分又は工程からなる実施形態さえも意図される。
【0102】
複数の要素、成分、構成成分又は工程を、ただ1つだけの統合された要素、成分、構成成分又は工程によって提供することができる。代替では、ただ1つだけの統合された要素、成分、構成成分又は工程が、別々の複数の要素、成分、構成成分又は工程に分割される場合がある。要素、成分、構成成分又は工程を記載するための「a」又は「one(1つ)」の開示は、付加的な要素、成分、構成成分又は工程を除外することが意図されない。同様に、「第1」又は「第2」の項目に対する参照はどれも、さらなる項目(例えば、第3、第4又はそれ以上の項目)を除外することが意図されない;別途言及されない限り、そのようなさらなる項目もまた意図される。特定の族に属する元素又は金属に対する本明細書中のすべての参照は、CRC Press,Inc.が1989年に発行し、版権を有する元素周期表を参照する。族(1つ又はそれ以上)に対する参照はどれも、族に番号を与えるためのIUPACシステムを使用してこの元素周期表に反映されるような当該族に対するものでなければならない。
【0103】
上記の記載は、限定ではなく、例示であることが意図されることが理解される。提供される例のほかに多くの実施形態、同様にまた、多くの適用が、上記の記載を読んで理解したとき、当業者には明らかとなる。本発明の異なる態様又は実施形態の特徴の組合せはどれも組み合わされ得ることがさらに意図される。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定されるべきではなく、その代わり、添付された請求項を参照し、そのような請求項に与えられる均等物の全体的な範囲と一緒にして決定されるべきである。特許出願及び特許公開を含めて、すべての論文及び参考文献の開示が、すべての目的のために参照によって組み込まれる。本明細書中に開示される主題のいずれか態様の、下記の請求項における省略は、そのような主題の除外ではなく、また、本発明者らが、そのような主題を開示された発明の主題の一部であるとは考えていないとは見なしてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i. エチレンオキシドの第1モノマー、及び
ii. 前記エチレンオキシドの第1モノマーとは異なるアルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル又はそれらの組合せから選択される少なくとも1つのさらなるモノマー
を含むエチレンオキシド含有コポリマーであって、
前記エチレンオキシド含有コポリマーは重量平均分子量が約200,000g/モル未満であり、
前記エチレンオキシド含有コポリマーは前記エチレンオキシドの第1モノマーのモル分率(XEO)が約0.80〜約0.995であり、且つ、
前記エチレンオキシド含有コポリマーは、約0.80〜約0.995の範囲における選択されたXEOについてのピーク融解温度(T、℃の単位)が、Tpmax=(60−150(1−XEO))の等式を使用して計算される、選択されたXEOにおけるTpmaxの最大値よりも低い、エチレンオキシド含有コポリマー
を含み、電池電極用のバインダー材として有用である、組成物。
【請求項2】
前記エチレンオキシド含有コポリマーが、アルキルアルミニウム触媒を使用して調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレンオキシド含有コポリマーがランダムコポリマーであり、且つ、前記さらなるモノマーがプロピレンオキシドを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレンオキシド含有コポリマーが、カルシウムを本質的に含まない触媒を使用する合成から得られる反応生成物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレンオキシド含有コポリマーが、
i) 約−30℃未満のガラス転移温度、
ii) 約40重量パーセント未満の結晶化度、又は
iii)(i)及び(ii)の両方
を有する、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記エチレンオキシド含有ポリマーが、約0.88を超えるエチレンオキシドのモル分率(XEO)を有する、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記コポリマーが、約0.75を超えるブロック性指数を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
複数の電気活性粒子を含み、前記エチレンオキシド含有コポリマーが前記電気活性粒子と接触している、請求項1から7のいずれかに記載される組成物を含む複合材電極。
【請求項9】
前記電気活性粒子が約10nm〜約20μmの平均直径を有し、且つ、前記電気活性粒子の濃度が前記複合材電極の総重量に基づいて約20重量パーセント〜約95重量パーセントである、請求項8に記載の複合材電極。
【請求項10】
i) 前記複合材電極の応力対ひずみ曲線が、ASTM D882−97に従って、D638−03IVのサンプルタイプを使用して測定されるような約0パーセントのひずみ〜約2パーセントのひずみの間においてピーク又は変曲点を有しない;
ii) 前記複合材電極が、ASTM D882−97に従って試験されるとき、約8パーセントを超える破損時引張りひずみを有する;又は
iii)(i)及び(ii)の両方である、
請求項8又は9に記載の複合材電極。
【請求項11】
前記金属塩が、1つ又はそれ以上のアルカリ金属塩、1つ又はそれ以上のアルカリ土類金属塩或いはそれらの任意の組合せを含む、請求項8から10のいずれかに記載の複合材電極。
【請求項12】
リチウムトリフルオロメタンスルホナート(すなわち、リチウムトリフラート又はLiCFSO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(すなわち、LiPF)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(すなわち、LiAsF)、リチウムイミド(すなわち、Li(CFSON)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)カーバイド(すなわち、Li(CFSOC)、テトラフルオロホウ酸リチウム(すなわち、LiBF)、LiBF、LiBr、LiCSO、LiCHSO、LiSbF、LiSCN、LiNbF、過塩素酸リチウム(すなわち、LiClO)、リチウムアルミニウムクロリド(すなわち、LiAlCl)、LiB(CF、LiBF(CF、LiBF(CF、LiBF(CF)、LiB(C、LiBF(C、LiBF(C、LiBF(C)、LiB(CFSO、LiBF(CFSO、LiBF(CFSO、LiBF(CFSO)、LiB(CSO、LiBF(CSO、LiBF(CSO、LiBF(CSO)、LiCSO、リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(すなわち、LiTFSA)又はそれらの任意の組合せからなる群より選択されるリチウム塩を含む、請求項8から11のいずれかに記載の複合材電極。
【請求項13】
炭酸塩溶媒をさらに含む、請求項8から12のいずれかに記載の複合材電極。
【請求項14】
請求項1から7のいずれかに記載される組成物を使用して調製される、金属塩又は溶媒又は両方を含む固体ポリマー電解質。
【請求項15】
請求項8から13のいずれかに記載される複合材電極を使用して調製される二次電池。
【請求項16】
請求項1から7のいずれかに記載される前記エチレンオキシド含有コポリマーを重合するためのプロセスであって、前記EOの第1モノマー及び前記少なくとも1つのさらなるモノマーを、の前記モノマーを反応させて前記コポリマーを重合するために前記コポリマーの融解温度よりも少なくとも約5℃低い温度で、炭化水素希釈剤の存在下で活性化アルキルアルミニウム触媒と接触させることを含む、プロセス。
【請求項17】
前記アルキルアルミニウム触媒をルイス塩基開始剤と接触させて、前記活性化アルキルアルミニウム触媒を形成することによって、前記アルキルアルミニウム触媒を活性化する工程をさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
活性プロトンを有する化合物を加えることによって前記触媒を反応停止させる工程をさらに含む、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記温度が約10℃〜約45℃である、請求項16から18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
前記アルキルアルミニウム触媒が、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム又はそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルキルアルミニウム触媒を含む、請求項16から19のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
前記トリアルキルアルミニウム触媒が、エチレンオキシド1モルあたり約1mmol〜30mmolの濃度で存在するトリイソブチルアルミニウムである、請求項16から20のいずれかに記載のプロセス。

【図1A】
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【図1B】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517519(P2012−517519A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550199(P2011−550199)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/023737
【国際公開番号】WO2010/093681
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】