説明

延焼防止機能付きソケット

【課題】排水管継手と上部受け口との接続部の目視確認を容易にするとともに、コンクリートスラブの下面からの排水管継手の突出寸法が変化しても対応が容易な延焼防止構造を提供する。
【解決手段】延焼防止機能付きソケットは、上部受け口410と下部受け口431とを備える管体41,43と、上部受け口410の下側で管体41,43の周囲に装着されており、火災の熱で膨張するように構成された延焼防止材44と、上部受け口410の外周面から延焼防止材44までを被覆するとともに、延焼防止材44を支持できる構成で、延焼防止材44の膨張方向をガイド可能な金属製カバー45とを有しており、金属製カバー45の外周面には段部451dが設けられており、その段部451dに対してコンクリートスラブの下面に取付けられた支持部材が下方から係合することで、金属製カバー45と管体41,43とが吊り支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時における延焼防止機能を備えるソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
火災時における延焼防止機能を備える排水設備が特許文献1に記載されている。
特許文献1の排水設備は、図10に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSの貫通孔CHに挿通される排水管継手101を備えている。排水管継手101は、その排水管継手101の下端挿し口101sが下階の排水立て管103の上部受け口103uに挿入されることで、下階の排水立て管103と水密な状態で連結される。さらに、排水管継手101の上部受け口101uには、上階の排水立て管103の下端挿し口(図示省略)が挿入されて、その上階の排水立て管103と排水管継手101とが水密な状態で連結される。
【0003】
また、下階の排水立て管103の上部受け口103uの周囲には、延焼防止装置104が配置されている。延焼防止装置104は、火災の熱で膨張するリング状の延焼防止材104nと、その延焼防止材104nを排水立て管103の上部受け口103uの下側に位置決め保持する筒状部材105とを備えている。筒状部材105は、筒部105tと、筒部105tの上端に形成されたフランジ部105fと、筒部105tの下端に形成された内フランジ部105eとから構成されている。筒状部材105のフランジ部105fは、ホールインアンカ&ボルト106によってコンクリートスラブCSの埋め戻しモルタルMに固定されるようになっている。そして、筒状部材105の内フランジ部105e上に延焼防止材104nがセットされている。即ち、コンクリートスラブCSから突出する排水管継手101の胴部、及び下端挿し口101sと、下階の排水立て管103の上部受け口103uの周囲が筒状部材105によって覆われるようになる。
これにより、延焼防止材104nは、火災時の熱で筒状部材105の筒部105tと内フランジ部105eとにガイドされて半径方向内側に膨張するようになり、排水立て管103が溶融した状態でも延焼防止材104nが排水管継手101の下端挿し口101sの下側を閉塞できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−208653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した排水設備では、排水管継手101の下端挿し口101sと排水立て管103の上部受け口103uの周囲が延焼防止装置104の筒状部材105によって覆われる構成である。このため、排水管継手101の下端挿し口101sと排水立て管103の上部受け口103uとの接続部を目視することができない。したがって、排水立て管103の上部受け口103uに対する排水管継手101の下端挿し口101sの挿入代を確認することが困難である。さらに、排水立て管103の上部受け口103uと排水管継手101の下端挿し口101s間の漏水確認も難しい。
また、延焼防止装置104の筒状部材105では、コンクリートスラブCSの下面に固定されるフランジ部105fから延焼防止材104nを支持する内フランジ部105eまでの寸法は一定である。このため、建物によってコンクリートスラブCSの厚み寸法が異なることで、そのコンクリートスラブCSの下面からの排水管継手101の突出寸法が変化した場合には、その排水管継手101の突出寸法に応じて前記筒状部材105を作り直す必要があり、経済的でない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、 排水管継手の下端挿し口と上部受け口との接続部の目視確認を容易にするとともに、コンクリートスラブの下面からの排水管継手の突出寸法が変化しても対応が容易な延焼防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の延焼防止機能付きソケットは、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通された排水管継手の下端挿し口が水密な状態で挿抜可能に連結される上部受け口と、排水立て管の上端挿し口が挿入固定される下部受け口とを備える樹脂製の管体と、前記上部受け口の下側で管体の周囲に装着されており、火災の熱で膨張するように構成された不燃性の延焼防止材と、前記管体の上部受け口の外周面から前記延焼防止材までを被覆するとともに、前記延焼防止材を支持できる構成で、前記延焼防止材が半径方向内側に膨張するように、その延焼防止材の膨張方向をガイド可能な金属製カバーとを有しており、前記金属製カバーの外周面には段部が設けられており、その段部に対して前記コンクリートスラブの下面に取付けられた支持部材が下方から係合することで、前記金属製カバーと前記管体とが吊り支持される構成であることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、管体の上部受け口の外周面から延焼防止材までを被覆する金属製カバーは、コンクリートスラブの下面に取付けられた支持部材によって吊り支持されるように構成されている。このため、火災時の熱で管体、及び排水立て管が溶融しても、金属製カバーの位置が変化することがなく、その金属製カバーに被覆、支持される延焼防止材は、定位置で半径方向内側に膨張して排水流路を閉塞できるようになる。即ち、延焼防止材が膨張することで排水管継手の下端挿し口の近傍を確実に閉塞できるようになる。
また、金属製カバーは、管体の上部受け口の外周面から延焼防止材までを被覆する構成で、排水管継手の周囲を覆うことはないため、その上部受け口と排水管継手の下端挿し口との接続部の目視確認が容易になる。また、前記接続部の漏水確認も容易になる。
さらに、金属製カバー及び管体は、支持部材を介してコンクリートスラブの下面に吊り支持される構成であるため、コンクリートスラブの下面からの排水管継手の突出寸法が変化しても、支持部材によって金属製カバー及び管体の高さ調整を行うことにより対応が容易である。
【0009】
請求項2の発明によると、金属製カバーの外周面、及びその金属製カバーから露出している管体の外周面は防音材によって覆われており、前記金属製カバーは前記防音材の外側から前記支持部材によって支持される構成であることを特徴とする。
このように、金属製カバーの外周面、及びその金属製カバーから露出している管体の外周面が防音材によって覆われているため、排水の流下音の伝播を抑えることができる。
さらに、金属製カバーが防音材に覆われるため、金属製カバーが外気に直接的にふれることがなく、防露性に優れている。
【0010】
請求項3の発明によると、上部受け口の外周面と金属製カバーとの間の空間には、防音材が詰められていることを特徴とする。
このため、防音材の表面を樹脂製の表面材(防水材)で覆う必要がなく、コスト的に有利になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、排水管継手の下端挿し口と上部受け口との接続部の目視確認が容易になる。また、コンクリートスラブの下面からの排水管継手の突出寸法が変化しても対応が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る延焼防止機能付きソケットと排水立て管の縦断面図である。
【図2】前記延焼防止機能付きソケットに使用される金属製カバーと延焼防止材とを表す拡大図(図1のII矢視拡大図)である。
【図3】前記延焼防止機能付きソケットと排水管継手との接続状態を表す縦断面図である。
【図4】前記延焼防止機能付きソケットの外形図である。
【図5】変更例に係る延焼防止機能付きソケットと排水立て管の縦断面図である。
【図6】変更例に係る延焼防止機能付きソケットの外形図である。
【図7】変更例に係る延焼防止機能付きソケットと排水立て管の縦断面図である。
【図8】変更例に係る延焼防止機能付きソケットの外形図である。
【図9】変更例に係る金属製カバーを内側から見た斜視図である。
【図10】従来の延焼防止装置を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1〜図9に基づいて本発明の実施形態1に係る延焼防止機能付きソケット40について説明する。延焼防止機能付きソケット40は、集合住宅の排水設備10において使用される排水立て管20の上端部に固定されるソケットであり、上階の排水管継手30の下端挿し口36が挿入可能に構成されている。
<排水設備10の概要について>
先ず、延焼防止機能付きソケット40の詳細について説明する前に、図3等に基づいて、排水設備10の概要について説明する。
排水設備10は、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSを貫通して各階に設置されている排水管継手30と、集合住宅の高さ方向に配管されて各階の排水管継手30をつなぐ排水立て管20と、各階でコンクリートスラブCS上を横方向に配管されて各機器からの排水を受ける排水横枝管(図示省略)とから構成されている。
排水管継手30は、上階の排水立て管(図示省略)、汚水用、及び雑排水用の排水横枝管(図示省略)を下階の排水立て管20に接続する鋳鉄製の管継手であり、前述のように、コンクリートスラブCSの貫通孔CHに通される円筒状の胴部31を備えている。なお、貫通孔CHは、排水管継手30の胴部31が通された後、モルタル(図示省略)にて埋め戻される。
【0014】
排水管継手30の胴部31の上端部には、上階の排水立て管の下端挿し口(図示省略)が挿入接続される上部受け口32が形成されている。また、胴部31の側面には、その胴部31の軸心に対してほぼ直角に汚水用、及び雑排水用の排水横枝管(図示省略)がそれぞれ挿入接続される横枝管受け口34,35が形成されている。さらに、排水管継手30の胴部31の下端部には、排水立て管2の上部に固定された延焼防止機能付きソケット40に挿入接続される下端挿し口36が設けられている。
排水管継手30の外周面は、例えば、裏側がウレタンフォーム、表側がオレフィン系樹脂等からなる防音材38によって覆われている。
さらに、排水管継手30は、継手支持治具39によって胴部31の軸線がコンクリートスラブCSの貫通孔CHの軸線と一致するように、かつ上部受け口32の高さ位置がコンクリートスラブCSの表面から予め決められた高さ位置となるように位置決め固定されている。
【0015】
排水立て管20は、硬質塩化ビニル製の樹脂管である内管22と、その内管22の外周面を覆う防音材24とから構成されている。防音材24は、内管22を覆うウレタンフォーム、又はグラスウールと、そのウレタンフォーム等を覆うオレフィン系樹脂と、そのオレフィン系樹脂を覆う表面材であるシュリンクフィルム等により構成されている。
排水立て管20の内管22は、一端側と他端側とが一定寸法だけ防音材24から露出することで上端挿し口22uと下端挿し口(図示省略)とが形成されている。そして、排水立て管20の上端挿し口22uが、図1に示すように、延焼防止機能付きソケット40の下部受け口431に挿入されて、例えば、接着剤により接着されることで、排水立て管20と延焼防止機能付きソケット40とが一体化される。
【0016】
<延焼防止機能付きソケット40について>
延焼防止機能付きソケット40は、図3に示すように、上階の排水管継手30と下階の排水立て管20とを接続するとともに、火災時に排水流路を閉塞することで下階の火災が上階に燃え広がるのを防止するためのソケットである。
延焼防止機能付きソケット40は、図1に示すように、上部受け口410を備える上部管体41と、下部受け口431を備える下部管体43と、上部受け口410の下側で下部管体43の周囲に装着された延焼防止材44と、上部受け口410の外周面から延焼防止材44までを被覆する金属製カバー45と、金属製カバー45の外周面を覆う上部防音材47と、その金属製カバー45から露出している下部管体43の外周面を覆う下部防音材48とから構成されている。
【0017】
<上部管体41、下部管体43について>
上部管体41は、上側に上部受け口410、下側に下部挿し口412を備える塩化ビニル製の管体であり、上部受け口410と下部挿し口412との間に段差状の境界部413が形成されている。上部受け口410の内径寸法は、排水管継手30の下端挿し口36の外径寸法より若干大きな値に設定されている。
ここで、排水管継手30の下端挿し口36の外径寸法は、排水立て管20の上端挿し口22u(下端挿し口)の外径寸法と等しい値に設定されている。
また、上部管体41の下部挿し口412の外径寸法は、排水立て管20の上端挿し口22uの外径寸法と等しい値に設定されている。このため、図1に示すように、上部管体41の下部挿し口412の内径寸法は上部受け口410の内径寸法よりも小さく設定されている。したがって、下部挿し口412と上部受け口410間の境界部413の内周面413tは、下部挿し口412から上部受け口410にかけて徐々に拡開するテーパ状に形成されている。
【0018】
上部管体41の上部受け口410の上端部にはリング状のシール材415が嵌め込まれる断面L形の溝410mが形成されている。そして、上部受け口410の上端部に前記シール材415の外れ防止を図るリンク状のキャップ416が被せられている。なお、キャップ416の中央開口416hの内径寸法は上部受け口410の内径寸法よりも若干大きな値に設定されている。
このため、上部管体41の上部受け口410に排水管継手30の下端挿し口36が挿入されると、シール材415の働きで排水管継手30の下端挿し口36と上部管体41の上部受け口410間が水密な状態にシールされる。
また、上部受け口410の外周面には、円周方向に延びる突条410tが高さ方向に複数本(図1では3本)形成されている。
【0019】
下部管体43は、上側と下側に等しい内径寸法の上部受け口430と下部受け口431を備える塩化ビニル製の管体であり、上部受け口430と下部受け口431との間に内フランジ状の挿入ストッパ433が形成されている。ここで、上部受け口430と下部受け口431の内径寸法は、排水立て管20の上端挿し口22u(下端挿し口)の外径寸法と等しい値に設定されている。
下部管体43の上部受け口430には、図1に示すように、接着剤が塗布された上部管体41の下部挿し口412が挿入される。これにより、上部管体41と下部管体43が接着により一体化される。
なお、本実施形態では、上部管体41と下部管体43とを別々に成形してから接着する例を示したが、上部管体41と下部管体43とを一体成形することも可能である。
【0020】
<延焼防止材44について>
延焼防止材44は、火災時の熱(約200℃以上)で発泡膨張する不燃性の部材であり、上部管体41、下部管体43、及び排水立て管20が熱で溶融したときに排水管継手30の下端挿し口36よりも下側の排水流路を閉塞するためのものである。延焼防止材44は、例えば、熱膨張性黒鉛等と、炭化水素等の有機物質、窒素含有有機化合物と、加熱により発泡する発泡剤と、膨張性の耐熱物質と、バインダー成分としての樹脂あるいはゴム等が混合されることで構成される。
延焼防止材44は、下部管体43の外径寸法よりも大きな内径寸法を備える円筒形に成形されており、その延焼防止材44の軸方向における寸法は、下部管体43の上部受け口430の深さ寸法(軸方向の寸法)よりも十分小さな値に設定されている。
延焼防止材44は、図2に示すように、火災時の熱で溶融しない材料からなる耐火性シート460よって覆われている。耐火性シート460は、延焼防止材44の軸長寸法の約3倍を超える幅寸法と、その延焼防止材44の外周面の長さ寸法より大きな長さ寸法とを備える角形のシートである。耐火性シート460は、延焼防止材44の外周面を覆う中央部分461と、延焼防止材44の上端面を覆って内周面側に折り込まれる上側部分462と、延焼防止材44の下端面を覆って内周面側に折り込まれ、前記上側部分462の上に重ねられる下側部分464とから構成されている。
ここで、耐火性シート460の材質としては、例えば、シリカ繊維布、アルミナ繊維布等が好適に使用される。
【0021】
<金属製カバー45について>
金属製カバー45は、上部管体41の上部受け口410の外周面から延焼防止材44までを被覆するとともに、その延焼防止材44を支持可能な二つ割りタイプの略円筒形カバーである。金属製カバー45は、延焼防止材44が火災時に半径方向内側に膨張できるように、その延焼防止材44の膨張方向をガイドできるように構成されている。
金属製カバー45は、図1に示すように、上部受け口410の外周面を覆う受け口カバー部451と、受け口カバー部451から縮径状態で上方に突出する突出部452と、上部管体41の境界部413を覆う溝状の境界カバー部453と、延焼防止材44を覆うとともに、その延焼防止材44を支持する延焼ガイド部455とから構成されている。
【0022】
受け口カバー部451は金属製カバー45の最大外径部分であり、空間を介した状態で上部受け口410の外周面を覆えるように構成されている。受け口カバー部451の途中位置には支持部材50(後記する)が下方から係合するリング状の段部451dが形成されている。
金属製カバー45の境界カバー部453は、図1に示すように、金属製カバー45の最小外径部分である。境界カバー部453と後記する延焼ガイド部455との間には、延焼防止材44の上面を押える天井部453eが形成されている。
【0023】
金属製カバー45の延焼ガイド部455は、図2に示すように、外壁部455wと、内フランジ部455bとにより縦長のL字形に形成されており、この内フランジ部455bの上に延焼防止材44が配置されるようになっている。
上記構成により、延焼防止材44が火災時の熱で膨張すると、前記延焼防止材44と、その延焼防止材44を覆う耐火性シート460は、金属製カバー45の延焼ガイド部455によって半径方向外側から押えられる。このため、膨張する延焼防止材44は耐火性シート460の上側部分462と下側部分464とを押し開き(展開させて)半径方向内側に移動するようになる。
【0024】
<上部防音材47、下部防音材48について>
金属製カバー45の受け口カバー部451から延焼ガイド部455の外壁部455wまでは、図1に示すように、上部防音材47によって覆われている。上部防音材47には、例えば、無機質混入オレフィン系樹脂等が使用される。
また、上部防音材47と延焼ガイド部455の外壁部455wとの間には、例えば、珪素繊維からなる断熱材47wが設けられている。
上部防音材47は、例えば、ポリエステル系樹脂収縮フィルム等からなる表面材(図示省略)でラッピングすることにより、金属製カバー45の外周面及び下部管体43の外周面に固定される。
さらに、金属製カバー45から露出する下部管体43の外周面は、下部防音材48によって覆われている。下部防音材48は、耐火性の防音材であり、例えば、ガラス繊維の周囲を無機質混入オレフィン系樹脂等で覆ったものが使用される。
【0025】
<支持部材50について>
上記構成の延焼防止機能付きソケット40は、図3に示すように、コンクリートスラブCSの下面に固定された支持部材50によって吊り支持される。
支持部材50は、コンクリートスラブCSの貫通孔CHと同軸位置で、予め決められた高さ位置となるように、延焼防止機能付きソケット40を位置決め支持するための部材である。
支持部材50は、図1、図4等に示すように、延焼防止機能付きソケット40の上部受け口410の下側部分を半径方向外側から締める半円状の第1バンド片51、第2バンド片52と、各々のバンド片51,52の中央外側面から半径方向外側に突出する横腕部511,521と、図3に示すように、各々の横腕部511,521の突出端をコンクリートスラブCSの下面に連結する連結軸部53,54とを備えている。
【0026】
半円状の第1バンド片51、第2バンド片52の円周方向両端部は、図4に示すように、略90°半径方向外側に折り曲げられることでフランジ部51f,52fが形成されている。そして、第1バンド片51の両フランジ部51fと第2バンド片52の両フランジ部52fとがボルト&ナットBNにより連結される。これにより、第1バンド片51、第2バンド片52が円環状に形成され、さらにボルト&ナットBNの締め付け量を調整することで前記円環の内径寸法を調整できるようになる。
なお、第1バンド片51と第2バンド片52との円周方向片側の連結構造として、フランジ部51f,52fとボルト&ナットBNの代わりに、例えば、ヒンジ機構等を使用することも可能である。
第1バンド片51、第2バンド片52は、図1に示すように、延焼防止機能付きソケット40の上部防音材47を介して金属製カバー45のリング状の段部451dに下方から係合可能なように、延焼防止機能付きソケット40の外周面に取付けられる。
【0027】
各々のバンド片51,52にそれぞれ形成された横腕部511,521の突出端には、図3、図4に示すように、連結軸部53,54の下側雄ネジ部53b,54bが通される貫通孔511h,521hが形成されている。そして、第1バンド片51、第2バンド片52の横腕部511,521が連結軸部53,54の下側雄ネジ部53b,54bに螺合された上下のナットNによって挟持されるようになっている。
また、前記連結軸部53,54の上部に形成された上側雄ネジ部53u,54uがコンクリートスラブCSの下面の定位置に固定されたホールインアンカ56の雌ネジにそれぞれ螺合できるように構成されている。
上記構成により、連結軸部53,54の下側雄ネジ部53b,54bに対するナットNの螺合状態を調整することで横腕部511,521を備える第1バンド片51、第2バンド片52、及び延焼防止機能付きソケット40の高さ調整が可能になる。
【0028】
<施工手順について>
次に、上記した延焼防止機能付きソケット40を使用した排水設備10の施工手順を簡単に説明する。
先ず、図1に示すように、所定長さ寸法に切断された排水立て管20の上端挿し口22uに、延焼防止機能付きソケット40の下部管体43の下部受け口431が接着剤を塗布された状態で接続される。
次に、延焼防止機能付きソケット40の下部防音材48と排水立て管20の防音材24との合わせ目を塞ぐようにジョイントテープ(図番省略)が巻かれる。これにより、排水立て管20に対する延焼防止機能付きソケット40の固定が完了する。
次に、下階に設置された排水管継手30(図示省略)の上部受け口32に対して、延焼防止機能付きソケット40を備える排水立て管20の下端挿し口(図示省略)が挿入接続される。そして、延焼防止機能付きソケット40が支持部材50によってコンクリートスラブCSの下面に吊り支持される。このとき、前記支持部材50の連結軸部53,54の長さ寸法を調整することで、コンクリートスラブCSの下面から突出する上階の排水管継手30の突出寸法に応じて延焼防止機能付きソケット40の高さ位置を調整できるようになる。
【0029】
次に、上階の排水管継手30の胴部31がコンクリートスラブCSの貫通孔CHに通され、その排水管継手30の下端挿し口36が延焼防止機能付きソケット40の上部管体41の上部受け口410に挿入接続される。そして、上階の排水管継手30が継手支持治具39によってコンクリートスラブCSの上面に固定される。
次に、排水管継手30の胴部31を覆う防音材38と延焼防止機能付きソケット40の金属製カバー45の突出部452との合わせ目を塞ぐようにジョイントテープ(図番省略)が巻かれる。これにより、延焼防止機能付きソケット40に対する上階の排水管継手30の接続が完了する。
このように、排水設備10は、下階の排水管継手30の上部受け口32に排水立て管20の下端挿し口が接続され、さらにその排水立て管20の上端の延焼防止機能付きソケット40に上階の排水管継手30の下端挿し口36が接続されるように、下から上に順番に積み上げられるように施工される。
【0030】
<延焼防止機能付きソケット40の火災時の動作について>
次に、延焼防止機能付きソケット40の火災時の動作について説明する。
火災が発生すると火災の熱で排水立て管20、及び延焼防止機能付きソケット40の上部管体41、下部管体43が共に溶融する。このとき、延焼防止機能付きソケット40の金属製カバー45は支持部材50によってコンクリートスラブCSの下面に吊り支持されているため、排水立て管20等が溶融しても上階の排水管継手30に対する金属製カバー45の位置が変化することはない。そして、火災の熱で金属製カバー45に支持されている延焼防止材44が発泡膨張するようになる。前述のように、延焼防止材44は、図1、図2に示すように、金属製カバー45の境界カバー部453と延焼ガイド部455によって上面側と外周面側と下面側との三方が覆われている。さらに、延焼防止材44は、耐火性シート460よって覆われている。
このため、延焼防止材44が火災時の熱で膨張すると、前記延焼防止材44と、その延焼防止材44を覆う耐火性シート460は、金属製カバー45の延焼ガイド部455によって半径方向外側から押えられる。このため、膨張する延焼防止材44は耐火性シート460の上側部分462と下側部分464とを押し開き(展開させて)半径方向内側に移動するようになる。これにより、排水管継手30の下端挿し口36より下側の排水流路が発泡膨張した延焼防止材44により閉塞されるようになる。この結果、火災の延焼防止が図られる。
【0031】
<延焼防止機能付きソケット40の長所について>
本発明によると、延焼防止機能付きソケット40の上部受け口410の外周面から延焼防止材44までを被覆する金属製カバー45は、コンクリートスラブCSの下面に取付けられた支持部材50によって支持されている。このため、火災時に延焼防止機能付きソケット40の管体41,43、及び排水立て管20が熱で溶融しても、金属製カバー45の位置が変化することがなく、その金属製カバー45に被覆される延焼防止材44は、定位置で半径方向内側に膨張して排水流路を閉塞できるようになる。即ち、排水管継手30の下端挿し口36の近傍を確実に閉塞できるようになる。
また、金属製カバー45は、管体41,43の上部受け口410の外周面から延焼防止材44までを被覆する構成で、排水管継手30の周囲を覆うことはないため、その上部受け口410と排水管継手30の下端挿し口36との接続部の目視確認が容易になる。また、前記接続部の漏水確認も容易になる。
【0032】
さらに、金属製カバー45及び管体41,43は、支持部材50を介してコンクリートスラブCSの下面に吊り支持される構成であるため、コンクリートスラブCSの下面からの排水管継手30の突出寸法が変化しても、支持部材50により金属製カバー45及び管体41,43の高さ調整を行うことで対応が容易である。
さらに、金属製カバー45の外周面、及びその金属製カバー45から露出している下部管体43の外周面が防音材47,48によって覆われているため、排水の流下音の伝播を抑えることができる。さらに、金属製カバー45が防音材47に覆われるため、金属製カバー45が外気に直接的にふれることがなく、防露性に優れている。
【0033】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図1に示すように、支持部材50の第1バンド片51、第2バンド片52で延焼防止材44を覆う金属製カバー45の延焼ガイド部455を半径方向外側から拘束できるようにするため、受け口カバー部451の中央よりも下側の位置に第1バンド片51、第2バンド片52が下方から係合するリング状の段部451dを形成する例を示した。しかし、図5、図6に示すように、金属製カバー45の形状を変えて、受け口カバー部451の上部に第1バンド片51、第2バンド片52が下方から係合するリング状の段部451dを形成することも可能である。
これにより、支持部材50の連結軸部53,54の長さ寸法を小さくすることが可能になる。
また、本実施形態では、金属製カバー45の外周面を上部防音材47で覆う例を示したが、図7、図8に示すように、金属製カバー45を露出させて、その金属製カバー45と上部管体41の上部受け口410との間の空間部に防音材49を詰める構成でも可能である。
ここで、防音材49には、例えば、耐熱性を有するグラスウール等が使用される。このように、防音材49を金属製カバー45の内側に詰める構造のため、防音材49の防水を考慮する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0034】
また、図7の二点鎖線で示すように、金属製カバー45の境界カバー部453にリング状の段部を形成するとともに、第1バンド片51、第2バンド片52でその金属製カバー45の延焼ガイド部455を半径方向外側から拘束することも可能である。これにより、延焼防止材44が膨張する際、その延焼防止材44を半径方向外側から押える際の強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、金属製カバー45の外周面にリング状の段部451dを形成し、これらの段部451dに第1バンド片51、第2バンド片52を下方から係合させる例を示した。しかし、図8に示すように、金属製カバー45の外周面に円弧状の突条部材52dを円周方向に複数個溶接等して、これらの突条部材52dにより形成された段部に第1バンド片51、第2バンド片52を下方から係合させる構成でも可能である。
また、本実施形態では、延焼防止材44を耐火性シート460で覆う例を示した。しかし、耐火性シート460を省略し、図9に示すように、金属製カバー45の延焼ガイド部455に折り返し部455kを形成しても良い。ここで、折り返し部455kには、その折り返し部455kの上端から下端(内フランジ部455b)まで到達する切欠き455cを円周方向複数箇所に形成するようにする。これにより、延焼防止材44が火災時の熱で膨張したときに、前記折り返し部455kが膨張する延焼防止材44に押されて半径方向内側に倒れ(展開し)、その延焼防止材44を半径方向内側にガイドするようになる。
また、本実施形態では、図3に示すように、排水設備10において使用される排水管継手30の外周面を裏側がウレタンフォーム、表側がオレフィン系樹脂等からなる防音材38で覆う例を示した。しかし、排水管継手30の外周面を覆う防音材38を省略することも可能である。
【0035】
また、本実施形態に係る延焼防止機能付きソケット40を構成する上部管体41及び下部管体43は透明塩ビ製であることが好ましい。特に、下部管体43を透明塩ビ製にすることで、現場において排水立て管20の上端挿し口22uを下部管体43に接続する際、仮に、接着剤の塗り忘れや挿入代不足があったとしても、その発見が容易になる。
さらに、本実施形態に係る延焼防止機能付きソケット40を、やりとり更新工法(本出願人による先願公報(特願2008-325855号(特開2009-174307号))参照)に使用できるように、上部受け口410の内径寸法Dと挿入深さ寸法H(図1参照)とを設定するのが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
20・・・・排水立て管
22u・・・上端挿し口
30・・・・排水管継手
36・・・・下端挿し口
40・・・・延焼防止機能付きソケット
41・・・・上部管体(管体)
410・・・上部受け口
43・・・・下部管体(管体)
44・・・・延焼防止材
45・・・・金属製カバー
47・・・・上部防音材(防音材)
48・・・・下部防音材(防音材)
49・・・・防音材
50・・・・支持部材
431・・・下部受け口
CH・・・・貫通孔
CS・・・・コンクリートスラブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブの貫通孔に挿通された排水管継手の下端挿し口が水密な状態で挿抜可能に連結される上部受け口と、排水立て管の上端挿し口が挿入固定される下部受け口とを備える樹脂製の管体と、
前記上部受け口の下側で管体の周囲に装着されており、火災の熱で膨張するように構成された不燃性の延焼防止材と、
前記管体の上部受け口の外周面から前記延焼防止材までを被覆するとともに、前記延焼防止材を支持できる構成で、前記延焼防止材が半径方向内側に膨張するように、その延焼防止材の膨張方向をガイド可能な金属製カバーとを有しており、
前記金属製カバーの外周面には段部が設けられており、その段部に対して前記コンクリートスラブの下面に取付けられた支持部材が下方から係合することで、前記金属製カバーと前記管体とが吊り支持される構成であることを特徴とする延焼防止機能付きソケット。
【請求項2】
請求項1に記載の延焼防止機能付きソケットであって、
前記金属製カバーの外周面、及びその金属製カバーから露出している前記管体の外周面は防音材によって覆われており、前記金属製カバーは前記防音材の外側から前記支持部材によって支持される構成であることを特徴とする延焼防止機能付きソケット。
【請求項3】
請求項1に記載の延焼防止機能付きソケットであって、
前記上部受け口の外周面と前記金属製カバーとの間の空間には、防音材が詰められていることを特徴とする延焼防止機能付きソケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96116(P2013−96116A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238798(P2011−238798)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】