説明

延長された生体内半減期を有するPEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体及びその製造方法

【課題】 延長された生体内半減期を有するPEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体及びその製造方法の提供。
【解決手段】 PEGリンカーと二分子の生理活性ポリペプチドを含み、前記二分子の生理活性ポリペプチドがPEGリンカーによって連結され、二分子の生理活性ポリペプチドの各々が一分子のPEGで修飾された、PEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体は延長された血中半減期を有するポリペプチド薬物の開発に有用に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延長された生体内半減期(in vivo half-life)を有するポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)によって生理活性ポリペプチド二分子が結合されてなる同種二量体(homodimer)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドは、血液、肝又は腎臓で変性又は酵素的分解(enzymatic degradation)に敏感である。ポリペプチドのこのような低い安定性のため、活性成分の效果的な血漿濃度を維持するためには患者にあらかじめ指定された頻度でポリペプチド薬物を投与することが要求される。また、ポリペプチド薬物は、通常注入(infusion)によって投与されるので、この頻繁な注入は患者に相当な不便を招く。従って、高い薬理学的効果は維持しつつ血液内でより長い血中半減期を有するポリペプチド薬物を開発するため、多くの研究が行われてきた。このようなポリペプチド薬物は、また患者に投与された際、向上された血清安定性(serum stability)、高活性、多様なポリペプチドに対する適用性(applicability)及び好ましくない免疫反応を誘発する可能性が低いという要件を満たさなければならない。
【0003】
ポリペプチドの安定性を向上させるため、一番幅広く用いられている方法の一つは、ポリペプチドがタンパク質分解酵素(protease)と接触することを防止するポリエチレングリコール(PEG)のような高溶解性高分子(highly soluble macromolecule)を用いて得られるポリペプチドの化学的変形(chemical modification)である。ポリペプチド薬物に特異的に或いは非特異的に結合した際、PEGがポリペプチド薬物の溶解度(solubility)を増加させ、前記薬物の加水分解(hydrolysis)を防止し、その結果、低い抗原性(antigenicity)によっていかなる免疫反応も誘発せずにポリペプチド薬物の血清安定性を増加させ得るということは公知である(Sada et al., J. Fermentation Bioengineering, 1991, 71: 137-139)。しかし、PEGは、ポリペプチドの自由リジン残基(free lysine residue)と無作為に共有結合(covalent bond)を形成するため、ペギレート化されたポリペプチド(pegylated polypeptide)はPEGの分子量が増加するほど低い活性を有する傾向がある。
【0004】
ポリペプチドの活性を維持するため、ポリペプチドの特定部位を選択的にペギレート化させる方法が米国特許第5,766,897号及び第5,985,265号に開示されている。しかし、これらの方法は、生体内ポリペプチドの活性増加維持の面では全く効果がなかった。
【0005】
従って、満足できる水準の活性と延長された生体内半減期とを有するポリペプチド結合体を開発する必要性が依然として要求されている状況である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,766,897号
【特許文献2】米国特許第5,985,265号
【非特許文献1】Sada et al., J. Fermentation Bioengineering, 1991, 71: 137-139
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、二分子の生理活性ポリペプチドを小さい分子量を有するPEGリンカーによって連結させて同種二量体を製造し、大きな分子量を有するPEGで前記同種二量体を修飾(modifying)してポリペプチドの生物学的活性の低下を最少化すると共に、前記ポリペプチドの生体内活性を延長するために生理活性ポリペプチドの生体内安定性は増加させた、PEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記PEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は一分子のPEGリンカーと二分子の生理活性ポリペプチドを含み、前記二分子の生理活性ポリペプチドが前記PEGリンカーによって連結され、二分子の生理活性ポリペプチドの各々が一分子のPEGによって修飾されたPEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるPEG−生理活性ポリペプチドの同種二量体結合体は、PEGリンカーを用いて血中半減期の短い生理活性ポリペプチドの同種二量体を製造した後、さらに生理活性ポリペプチドのリジン残基のアミノ基をPEGで修飾したもので、生理活性ポリペプチドの血中半減期を増加させて、生理活性を改善しながら、免疫反応を誘発するおそれがないため、徐放出性剤形の製造に有用に適用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい実施例に用いられ得る生理活性ポリペプチドとしては、ヒト成長ホルモン(hGH)、インターフェロン(IFN)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、17番システインがセリンで置換されたアミノ酸配列を有する顆粒球コロニー刺激因子誘導体(17S−G−CSF)、赤血球生成因子(EPO)、インシュリン、インターロイキン、顆粒球大食細胞コロニー刺激因子(GM−CSF)又は腫瘍壊死因子受容体(TNFR)などを含む。本発明が適用され得る生理活性ポリペプチドは前記に言及されたものに限定されなく、生体内半減期を増加させるのに有用なすべての生理活性ポリペプチドが包含され得る。
【0012】
本発明の生理活性ポリペプチドは、哺乳動物から分離された野生型であるか、或いは化学的に合成し得る。また、前記ポリペプチドは、遺伝工学(genetic engineering)によって形質転換された原核細胞又は真核細胞から製造し得る。
【0013】
本発明の好ましい実施様態では、同種二量体が水性媒質中で沈殿しないようにPEGリンカーが親水性を帯びなければならない。また、前記PEGリンカーは、二分子の生理活性ポリペプチドのアミノ末端の各々に特異的に結合できるように両末端に反応基を有するものが好ましい。このようなPEGリンカーの反応基としてはアルデヒド基(aldehyde group)又はプロピオン(propionic)アルデヒド基が適当である。
【0014】
本発明の好ましい実施様態では、PEGリンカーの分子量が1〜100kDaの範囲のものが望ましく、2〜20kDaの範囲のものがより好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施様態では、PEG分子が通常の水溶性PEG分子であって、PEGの活性基によってポリペプチドのリジン残基、システイン残基又はヒスチジン残基のε−アミノ基に結合し得る。
【0016】
本発明の好ましい実施様態では、二分子の生理活性ポリペプチドを修飾するために用いられるPEGの分子量は1〜100kDaの範囲のものが望ましく、20〜40kDaの範囲のものがより好ましい。
【0017】
この修飾用のPEG分子の反応基は、マレイミド基(maleimide)又はスクシンアミド基(succinamide)であることが望ましく、スクシンアミド誘導体は、スクシンイミジルプロピオネート(succinimidyl propionate)、スクシンイミジルカルボキシメチル(succinimidyl carboxymethyl)及びスクシンイミジルカルボネート(succinimidyl carbonate)を含む。
【0018】
また、本発明に用いられるPEG分子は線型や分枝型であってもよく、分枝型PEGがより好ましい。
【0019】
本発明の他の目的によって、本発明はさらに下記段階を含む、PEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体の製造方法を提供する:
a)PEGリンカーで二分子の生理活性ポリペプチドを連結させて同種二量体を製造する段階;及び
b)一分子のPEGで前記同種二量体の生理活性ポリペプチドの各々を修飾する(modifying)段階。
【0020】
本発明の好ましい実施様態によれば、段階(a)で用いられたPEGリンカーに対する生理活性ポリペプチドのモル比は1:0.25〜1:10の範囲のものが望ましく、1:0.5〜1:1がより好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施例で、段階(a)はナトリウムシアノボロヒドリド(sodium cyanoborohydride, NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム(sodium borogydride)、ジメチルアミンホウ酸塩(dimethylamine borate)、トリメチルアミンホウ酸塩(trimethylamine borate)及びピリジンホウ酸塩(pyridine borate)からなる群から選択される還元剤の存在下で2〜10℃範囲の温度で行われることが好ましい。
【0022】
段階(a)が終決した後、これから形成されたポリペプチド同種二量体は、大きさ排除(size exclusion)クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーのようなタンパク質精製に有用な通常の方法のいずれかを用いて分離し得る。
【0023】
段階(b)で生理活性ポリペプチド同種二量体のPEG修飾(modification)が終決した後、これから形成された同種二量体結合体は大きさ排除クロマトグラフィーを用いて精製し得る。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を下記実施例によってより詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、これらに限定されない。
【0025】
[実施例1]:hGH同種二量体の製造及び精製
組替えhGHは、韓国特許第316347号の方法によって製造され、本発明のhGHは野生型(native form)である。前記で製造されたhGHを100mMリン酸塩緩衝溶液に溶解させてhGH溶液5mg/mlを用意した。hGHとPEGリンカーを連結するために両末端にアルデヒド基を有し、分子量が3.4kDaであるPEGリンカー(Shearwater Inc., 米国)をhGH:PEGリンカーのモル比が1:0.5、1:1、1:2.5、1:5、1:10又は1:20に相応する量で前記hGH溶液に各々添加した。これに還元剤であるナトリウムシアノボロヒドリド(NaCNBH)を最終濃度が20mMになるように添加した。反応溶液を4℃で3時間攪拌し、二つのhGH分子のアミノ末端の各々にPEGリンカーが選択的に連結されたhGH同種二量体(hGH−PEGリンカー−hGH)を分離するためにスーパーデックス200(Superdex 200, Pharmacia)を用いた大きさ排除クロマトグラフィーを行った。50mMナトリウムリン酸塩緩衝溶液(pH8.0)を用いてhGH同種二量体を溶出し、未反応のhGH及びPEGリンカーを除去した。同種二量体を得るためのhGH:PEGリンカーの最適モル比は1:0.5〜1:2の範囲であることを確認した。前記で得られたhGH同種二量体分画をアニオン交換樹脂カラムでさらに精製した。具体的に、ポリワックスLPカラム(PolyWAX LP, PolywaxInc., 米国)3mlを10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝溶液で平衡化させ、hGH同種二量体分画を1ml/分の流速で前記カラムに点滴した後、前記カラムを5カラム体積(column volume)、即ちTris−HCl緩衝溶液15mlで洗浄した。0〜100%範囲の多様な濃度勾配で30分以上10カラム体積(30ml)の1M NaCl緩衝溶液を適用しつつ、塩濃度勾配方法によって一つのhGH分子が連結されたモノPEGリンカーからhGH同種二量体を分離した。
【0026】
[実施例2]:分枝型40kDa PEGで修飾されたhGH同種二量体の製造
分子量40kDaである分枝型N−ヒドロキシスクシンイミジル(N-hydroxysuccinimidyl)-PEG(NHS-PEG)(Shearwater Inc., 米国)を室温で2時間100mMナトリウムリン酸塩緩衝溶液(pH8.0)上で、実施例1で精製されたhGH同種二量体のリジン残基と反応させた。同種二量体:NHS−PEGのモル比は1:2、1:5、1:10及び1:20になるようにした。反応終了後、二つのhGH分子の各々が一分子のNHS−PEGで修飾されたジ−PEG−hGH同種二量体を精製するためにスーパーデックス大きさ排除クロマトグラフィーを行った。PEGが修飾されていないhGH同種二量体及びただ一分子のNHS−PEGが連結されたモノ−NHS−PEG−hGH同種二量体を除去するためにリン酸塩緩衝食塩水を緩衝溶液として用いた。モノ−NHS−PEG−hGH同種二量体及びジ−PEG−hGH同種二量体産物の割合は、約60%:40%であった。これからジ−PEG−hGH同種二量体を得るためのNHS−PEGに対するhGH同種二量体の最適モル比は1:10であることを確認した。
【0027】
[実施例3]:分枝型40kDa PEGで修飾されたIFN同種二量体の製造
実施例1と同様な方法でIFN同種二量体(IFN−PEGリンカー−IFN)を製造し、実施例2と同様な方法でhGHの代わりにIFNを用いて前記IFN同種二量体を分子量40kDaの分枝型NHS−PEG二分子で修飾した。モノ−PEG−IFN同種二量体産物とジ−PEG−IFN同種二量体産物との割合は約60%:40%であった。
【0028】
[実施例4]:分枝型40kDa PEGで修飾されたG−CSF同種二量体の製造
実施例1と同様な方法でG−CSF同種二量体(G−CSF−PEGリンカー−G−CSF)を製造し、実施例2と同様な方法でhGHの代わりにG−CSFを用いて前記G−CSF同種二量体を分子量40kDaである分枝型NHS−PEG二分子で修飾した。モノ−PEG−G−CSF同種二量体産物とジ−PEG−G−CSF同種二量体産物との割合は約60%:40%であった。
【0029】
[比較例1]:分枝型PEGで修飾されたhGHモノマーの製造
hGHをリン酸塩緩衝溶液100mMに溶解させてhGH溶液1mg/mlを三つ用意した後、分子量40kDaの分枝型メトキシ−PEG−アルデヒド(Shearwater Inc., 米国)をhGH:PEGのモル比が1:4になるように前記溶液に添加した。前記反応溶液にナトリウムシアノボロヒドリド(NaCNBH3, Sigma)を最終濃度20mMになるように添加した後、4℃で18時間徐々に攪拌させながら反応させた。hGHのアミノ末端に一つのPEG分子が修飾されたモノ−PEG−hGHを分離するためにアニオン交換クロマトグラフィーを行った。10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝溶液で平衡化されたポリワックスLP(PolyWAX LP、Polywax Inc., 米国)カラムにペギレート化された反応混合物を点滴した後、1ml/分の流速で溶出し、5カラム体積(15ml)の同一な緩衝溶液で前記カラムを洗浄した。その後、0から100%まで濃度勾配を自動的に変化させて30分以上10カラム体積(30ml)の1M NaCl緩衝溶液を適用させながら塩濃度勾配方法によってトリ−、ジ−及びモノ−PEG−hGH分画を反応物から分離した。
【0030】
モノ−PEG−hGH分画を濃縮し、10mMリン酸塩緩衝溶液(pH7.0)で平衡化させたスーパーデックス200(Superdex 200、Pharmacia、米国)大きさ排除クロマトグラフィーに点滴した後、同一な緩衝溶液を用いて1ml/分の流速で溶出した。モノ−PEG−hGHより相対的に早く溶出されたトリ−及びジ−PEG−hGHを除去してモノ−PEG−hGHのみを得た。
【0031】
[比較例2及び3]:分枝型PEGで修飾されたIFN及びG−CSFモノマーの製造
hGHの代わりにIFN(比較例2)及びG−CSF(比較例3)の各々を用いて前記比較例1と同様な方法で分枝型PEGが修飾されたIFNと分枝型PEGが修飾されたG−CSFを製造して分離した。
【0032】
[試験例1]:PEG結合体の確認及び定量
前記実施例で製造されたポリペプチド結合体を各々の濃度及び純度をクマシー(Coomassie)染色、SDS−PAGE及び大きさ排除クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、この際、前記濃度はベール・ランバートの法則(Beer-Lambert law)によって280nmで測定した(Bollag et al., Protein Methods Chapter 3, press in Wiley-Liss)。
【0033】
hGH同種二量体の見掛分子量は約48kDaであり、IFN同種二量体及びG−CSF同種二量体の見掛分子量もこれと同様であった。分子量40kDaのPEG分子一つが修飾された際、モノ−PEG−hGH同種二量体の見掛分子量は150kDaであり;分子量40kDaのPEG分子二つで修飾された際、ジ−PEG−hGH同種二量体結合体の見掛分子量は240kDaであった。なお、モノ−PEG−hGHの分子量は約120kDaであり、IFN及びG−CSFの分子量も同様であった。
【0034】
図1はhGH(レイン1)、hGH同種二量体(レイン2)及びジ−PEG−hGH同種二量体結合体(レイン4)の各々から得たSDS−PAGEの結果である。レイン3は標準分子量タンパク質(Invitron、下から40、50、60、70、80、90、100、120、160及び220kDaを意味するベンチマーカー)を示す。図1に示すように、ジ−PEG−hGH同種二量体結合体の見掛分子量は約240kDaであり、前記結合体は単一バンドとして現れて非常に高い純度を有していることが分かる。
【0035】
[試験例2]:ジ−PEG−hGH同種二量体結合体の試験管内(in vitro)活性測定
ジ−PEG−hGH同種二量体結合体(実施例2)及びモノ−PEG−hGH(比較例1)の試験管内活性度をhGH依存性有糸分裂を経るラットノードリンパ腫(Rat node lymphoma)細胞株であるNb2(European Collection of Cell Cultures, ECCC#97041101)を用いて測定した。
【0036】
Nb2細胞を10%牛胎児血清(FBS)、0.075%のNaCO、0.05mM 2−メルカプトエタノール及び2mMグルタミンが調整されたフィッシャー培地(Fisher’s medium)で培養した。前記細胞を10%牛胎児血清が添加されていない同一な培地で24時間さらに培養した。ウェル当たり約2×10細胞を96−ウェルプレートの各ウェルに添加した後、ジ−PEG−hGH同種二量体結合体とモノ−PEG−hGH、野生型hGH及び対照群(National Institute for Biological Standards and Control, NIBSC)の多様な希釈液を各ウェルに添加し、前記プレートを48時間37℃、CO培養器で培養した。細胞成長程度(各ウェルに存在する細胞数)を測定するため、細胞力価96アクアスワン溶液(cell titer 96 Aqueous One Solution; Promega, 米国)25μlを各ウェルに添加して4時間培養した。490nmで吸光度を測定して各試料の力価を計算し、その計算された力価を下記表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
前記表1から分かるように、PEG修飾されたhGHの試験管内活性は修飾されていないhGHより低かった。
【0039】
[試験例3]:ジ−PEG−IFN同種二量体結合体の試験管内活性測定
ジ−PEG−IFN同種二量体結合体(実施例3)及びモノ−PEG−IFN(比較例2)の試験管内活性を水胞性口炎ウイルス(vesicular stomatitis virus, VSV)で飽和させたマジン−ダービ牛腎臓細胞(Madin-Darby bovine kidney cells, MDBK cells;ATCC CCL-22)を用いた細胞培養生検方法(cell culture biopsy method)で測定した。PEGが修飾されていないIFN α 2b(NIBSC IFN)を対照群として用いた。
【0040】
MDBK細胞を10%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンが添加されたMEM(minimum essential medium, JBI)で37℃、5%CO培養器で培養した。試料と対照群(NIBSCインターフェロン)を同一な細胞培養培地を用いて一定濃度に希釈し、各々の希釈液を100μlずつ96−ウェルプレートに分注した。100μlの培養された細胞溶液を各ウェルに添加し、前記細胞を37℃、5%CO培養器で約1時間培養した。1時間後、5〜7×10PFUのウイルス濃度を有するVSV50μlを各ウェルに添加し、37℃、5%COの条件で16〜20時間さらに培養した。試料又は対照群を添加せずに細胞とウイルスのみを含むウェルを陰性対照群として、ウイルスを添加せずに細胞のみを含むウェルを陽性対照群として用いた。
【0041】
培養培地を除去して生きている細胞を染色するために、100μlのニュートラルレッド(neutral red)溶液を各ウェルに添加し、37℃、5%CO培養器で2時間培養した。吸込み(aspirating)によって上澄液を除去した後、抽出溶液(100%エタノールと1%アセテートとの混合物100μl(1:1))を各ウェルに添加した。染色された細胞をよく振って前記抽出溶液に溶解させた後、540nmで吸光度を測定した。最大細胞成長の50%を表すED50を陰性対照群の細胞成長に対して陽性対照群の細胞成長を100%とみなして計算した。
【0042】
【表2】

【0043】
前記表2から分かるように、PEG修飾されたIFNの試験管内活性は修飾されていないIFNに比べて低かった。
【0044】
[試験例4]:ジ−PEG−G−CSF同種二量体結合体の試験管内活性測定
ジ−PEG−G−CSF同種二量体結合体(実施例4)及びモノ−PEG−C−CSF(比較例3)の試験管内活性を次のように測定した。
【0045】
まず、ヒト骨髄(myelogenous)由来細胞、HL-60(ATCC CCL-240, Promyelocytic leukemia patient/36 yr old Caucasian female)細胞を10%牛胎児血清を含むRPMI 1640培地で培養し、細胞数を約2.2×10細胞/mlになるように調整した。これにDMSO(dimethylsulfoxide, culture grade, SIGMA)を濃度が1.25%(v/v)になるように添加した。ウェル当たり約2×10個の浮遊細胞を含むDMSO処理された培養液90μlを96−ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)に添加し、37℃、5%CO培養器で約48時間培養した。
【0046】
試料と対照群(NIBSC G−CSF)を最終濃度が500ng/mlになるようにRPMI 1640培地を用いて適切な割合で希釈し、これから得た溶液を同一な培地で二倍ずつ連続的に10回希釈した。
【0047】
このように用意された各々の試料10μlを培養中のHL−60細胞株が含まれた各ウェルに添加し、濃度を50ng/mlから連続的に半減させた。試料が処理されたマイクロプレートを37℃培養器で48時間さらに培養した。
【0048】
培養後、細胞成長程度を調査するため、細胞数をCellTiter96TM(Promega, USA)を用いて670nmで吸光度を測定して決定した。
【0049】
【表3】

【0050】
前記表3から分かるように、PEG修飾されたG−CSFの試験管内活性は修飾されていないG−CSFより低かった。しかし、hGH及びIFNの試験管内活性とは異なって、本発明のジ−PEG−G−CSF同種二量体結合体の野生型G−CSFに対する相対的活性は、モノ−PEG−G−CSFより約4倍高く表れた。このような結果は、本発明のジ−PEG−G−CSF同種二量体結合体がG−CSF同種二量体の形成に起因して高い生体内活性を発揮することを示す。
【0051】
[試験例5]:薬物動態学分析
各群当り5匹のスプラグ−ダウリ(Sprague−Dawley、SD)ラットを下記実験で用いた。前記マウスに100μg/kgの野生型生理活性ポリペプチド(対照群)、及び前記実施例及び比較例で製造されたポリペプチド結合体(試験群)の各々を皮下注射した。対照群は0.5、1、2、4、6、12、24、30及び48時間後に血液試料を採取し、試験群は注射後1、6、12、24、30、48、72、96及び120時間後に血液試料を採取した。血液試料を、凝固防止のため、ヘパリンでコーティングされたチューブに集めた後、高速マイクロ遠心分離機で5分間遠心分離して細胞を除去した。血漿内タンパク質濃度は各々の生理活性ポリペプチドに特異的な抗体を用いるELISA方法で測定した。
【0052】
野生型タンパク質とポリペプチド結合体との薬物動態学グラフをの各々図2A〜2Cに表し、T1/2(血液内薬物の半減期)は表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
表4に示したように、ジ−PEG−ポリペプチド同種二量体結合体の各々の半減期は、野生型タンパク質より遥かに高く、比較例で製造された相応するモノ−PEG−ポリペプチド結合体よりは約2倍ほど高かった。前記結果から分かるように、本発明のジ−PEG−ポリペプチド同種二量体結合体が遥かに優れた生体内持続性(durability)を示すことが確認できた。
【0055】
[試験例6]:ジ−PEG−hGH同種二量体結合体の生体内活性測定
各群当り脳下垂体が除去された雄性スプラグ−ダウリラット(pituitary-removed Sprague Dawley rat、5週齢、SLC、日本)5匹を用いた体重増加試験を通じてジ−PEG−hGH同種二量体結合体及びモノ−PEG−hGHの生体内活性を測定した。溶媒対照群、野生型hGH、モノ−PEG−hGH及びジ−PEG−hGH同種二量体結合体の各々を下記表5に記載された投与スケジュールと容量によって26ケージ注射器(1ml、(株)韓国ワクチン)を用いてラットの肩背部に皮下注射した。ラットの体重を注射前及び注射してから16時間後測定した。最終注射してから24時間後、ラットをエーテル麻酔で致死させて肉眼で脳下垂体の残存有無を検査し、脳下垂体の残存物が観察されたラットは結果から除外させた。
【0056】
【表5】

【0057】
各試料の投与後、体重の変化を図3に示す。標準品(対照群)に用いられた野生型hGHは、その生体内活性を維持するために毎日投与が必要であるため、6日間毎日投与し、従ってグループ2のラットは投与期間の間体重が増加した。6日おきに一度モノ−PEG−hGHが投与されたグループ3のラットは、投与後3日目までは持続的に体重が増加したが、その以降は増加の趨勢が鈍化し、5日以後は減少した。一方、ジ−PEG−hGH同種二量体結合体が6日おきに一度投与されたグループ4のラットはグループ3のラットより徐々に体重が増加したが、増加の趨勢はグループ2と同様であった。また、増加率は投与後5日が経過された後にも増加した。従って、本発明のジ−PEG−hGH同種二量体結合体は、生理活性ポリペプチドの活性を維持しつつ延長された半減期を有する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明によって製造されたhGH同種二量体及びPEG−hGH同種二量体結合体のSDS−PAGEのゲル写真である。
【図2A】本発明によって製造されたジ−PEG−hGH同種二量体結合体の血中半減期をモノ−PEG−hGHと比較した薬物動態学グラフである。
【図2B】本発明によって製造されたジ−PEG−IFN同種二量体結合体の血中半減期をモノ−PEG−IFNと比較した薬物動態学グラフである。
【図2C】本発明によって製造されたジ−PEG−G−CSF同種二量体結合体の血中半減期をモノ−PEG−G−CSFと比較した薬物動態学グラフである。
【図3】本発明によって製造されたジ−PEG−hGH同種二量体結合体の生体内活性をモノ−PEG−hGHと比較するために脳下垂体が除去されたラットを用いた体重増加試験結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)リンカーと二分子の生理活性ポリペプチドを含み、前記二分子の生理活性ポリペプチドが前記PEGリンカーによって連結され、前記二分子の生理活性ポリペプチドの各々が一分子のPEGで修飾されたPEG−生理活性ポリペプチド同種二量体結合体。
【請求項2】
前記二分子の生理活性ポリペプチドのアミノ末端が、各々PEGリンカーによって連結されることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記生理活性ポリペプチドのリジン残基のアミノ基が、一分子のPEGで修飾されることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、17番システインがセリンで置換されたアミノ酸配列を有する顆粒球コロニー刺激因子誘導体、赤血球生成因子、インシュリン、インターロイキン、顆粒球大食細胞コロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子受容体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
前記PEGリンカーが、両末端にアルデヒド基又はプロピオンアルデヒド基を有することを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項6】
前記PEGリンカーの分子量が、1〜100kDaの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項7】
前記PEGリンカーの分子量が、2〜20kDaの範囲であることを特徴とする請求項6に記載の結合体。
【請求項8】
前記生理活性ポリペプチドを修飾するためのPEGが、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルカルボネート及びマレイミド(maleimide)からなる群から選択される反応基を一方の末端に有することを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項9】
前記生理活性ポリペプチドを修飾するためのPEGが、線形又は分枝型であることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項10】
前記生理活性ポリペプチドを修飾するためのPEGの分子量が、1〜100kDaの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の結合体。
【請求項11】
前記生理活性ポリペプチドを修飾するためのPEGの分子量が、20〜40kDaの範囲であることを特徴とする請求項10に記載の結合体。
【請求項12】
下記段階を含む、PEG−ポリペプチド同種二量体結合体の製造方法:
(a)PEGリンカーで二分子の生理活性ポリペプチドを連結させて同種二量体を形成する段階;及び
(b)一分子のPEGで前記同種二量体の生理活性ポリペプチドの各々を修飾する(modifying)段階。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−528347(P2007−528347A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500669(P2006−500669)
【出願日】平成16年4月3日(2004.4.3)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000781
【国際公開番号】WO2004/087739
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】