説明

建材および建築物

【課題】建材内部に配設可能なリチウムイオン二次電池を備えた建材を用いた建築物を提供する。
【解決手段】正極11と、負極12と、これら正極11および負極12間に介在されリチウム(Li)、リン(P)および硫黄(S)を含む固体電解質13とを備え、建材の内部に配設されたリチウムイオン二次電池1。内部に、上述のリチウムイオン二次電池1が配設された建材。上述の建材を備えて構成された建築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池を備えた建材および建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の機能が付与された壁パネルなどの建材が多数提案されている。例えば、特許文献1には、微細粒子の調湿材料、芳香材料、発光材料、抗菌剤等を充填した機能性パネルが開示されている。また、特許文献2には、面状発熱体を備え暖房としての利用が可能な暖房畳床が開示されている。これら機能性建材によれば、建築現場での作業内容は何ら変更することなく、使用する建材を変更するのみで建築物に様々な機能を付加できる。
ところで、建築物におけるエネルギーの効率的な利用方法が種々検討されている。例えば、特許文献3には、発電した電気と発電時に生成した熱とを効率的に利用することができる燃料電池排熱回収システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−198796号公報
【特許文献2】特開2001−193264号公報
【特許文献3】特開2002−289242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に記載のような従来のエネルギー利用方法では、電力を貯蔵することができず、柔軟な電力利用が不可能である結果、非効率となる場合があった。
例えば、特許文献3に記載の燃料電池排熱回収システムでは、熱と電気の需要のタイミングが異なることから、熱および電気の一方しか使用されず非効率となる場合があった。
ここで、建築物に二次電池を設ければ、熱の利用時に余った電気を貯蔵しておき、必要なときに効率的に利用できる。しかし、建築物で必要とされる電気の容量は大きいため、サイズの大きい二次電池が必要となり、多大なスペースを占有して好ましくない。二次電池を建材に埋め込み、充放電機能を付与した機能性建材とすることが考えられるが、従来の二次電池では性能や安全性の問題から実現が困難であった。
本発明の目的は、上述の問題点等に鑑みて、建材内部に配設可能なリチウムイオン二次電池を備えた建材および建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建材は、建材であって、正極と、負極と、これら正極および負極間に介在されリチウム(Li)、リン(P)および硫黄(S)を含む固体電解質と、を備えたリチウムイオン二次電池が、内部に配設されたことを特徴とする。
なお、本発明における建材は、建築物を構成するために用いられる部材を意味し、例えば、杭、鉄筋、柱、板などの材料や、窓、戸、扉などの建具、また、壁や床、天井などを構成するパネル、組立て家屋を構成するユニットなどが挙げられる。
【0006】
そして、本発明では、前記固体電解質は、硫化リチウムと硫化リンとを原料として加熱処理した硫化物系焼成体である構成とすることが好ましい。
【0007】
また、本発明では、縦芯材及び横芯材を有し矩形枠形状に構成された枠体と、前記枠体の表裏両面に貼着された面材と、前記枠体の内部に設けられた補強芯材と、を備え、前記枠体と前記面材が形成する内部空間を複数の小空間に区画する壁パネルであり、前記リチウムイオン二次電池は、前記複数の小空間に配設された構成とすることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明では、前記リチウムイオン二次電池は、前記建材の内部から取り外し可能に配設された構成とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、畳表と、畳床とを備えた畳であり、前記リチウムイオン二次電池は、シート状に形成され、前記畳床は、前記リチウムイオン二次電池と、前記リチウムイオン二次電池の少なくとも一面に積層された畳床構成部材とを有し、前記畳表は、前記畳床構成部材の前記リチウムイオン二次電池と反対側の表面を被覆している構成とすることが好ましい。
【0010】
本発明の建築物は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の建材を備えて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建材内部に配設したリチウムイオン二次電池に電力を貯蔵することにより、建築物における柔軟な電力利用が可能となり、エネルギーの利用効率を飛躍的に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
ただし、本発明は、本実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
[第1実施形態]
図1に、本実施形態のリチウムイオン二次電池の概略断面図を示す。
リチウムイオン二次電池1は、正極11と、負極12と、これら正極11及び負極12間に介在されリチウム(Li)、リン(P)及び硫黄(S)を含む固体電解質13と、これらを一体化する図示しないパッケージと、を備え、後述する建材の内部に配設される。
このように、リチウムイオン二次電池1は、リチウム(Li)、リン(P)および硫黄(S)を含む固体電解質を備えるため、イオン伝導度が高く、高温または低温の環境下においても電池としての十分な性能を有し、物理的な衝撃にも強いので、建築物2の安全性を害することなく、電力の貯蔵等が可能となる。その上、大面積化することで大容量を容易に得られ、断熱や吸音等の効果も得られる。
そして、正極11及び負極12は、例えば、ステンレス鋼、金、白金、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、チタンなどの金属、及び、これらの合金にて、シート、箔、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状などに形成されたものが用いられる。特に、正極ではアルミニウム箔、負極ではアルミニウム箔やスズ箔が、集電性、加工性、コストの点で好ましい。
【0014】
本発明の電極は、下記極材(正極材または負極材)を集電体の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、極材を溶液に混合した混合液を集電体に塗布することにより、電極を形成することができる。また、上述した電池用部材の製造と同様、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法または溶射法等が挙げられる。このような方法により製膜することで、極材層の空隙率をより小さくすることができ、イオン伝導度を向上させることができる。
また、固体電解質層の製造法で記載されている他の同様の方法で電極層を製作することが可能である。
【0015】
正極材としては、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系では、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)および硫化ニッケル(Ni32)等が使用できる。好ましくは、TiSが使用できる。
また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi23)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb25)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V613)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸系として、鉄オリビン(LiFePO)、ニッケルオリビン(LiNiPO)、マンガンオリビン(LiMnPO)等が使用できる。なお、これらを混合して用いることも可能である。好ましくは、コバルト酸リチウムが使用できる。
なお、上記の他にはセレン化ニオブ(NbSe3)が使用できる。
【0016】
導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするための電気的に導電性を有す物質を適宜添加してもよい。前記、電気的に導電性を有する物質としては特に限定しないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性物質、またはポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を単独または混合して用いることができる。
【0017】
負極材としては、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛および難黒鉛化性炭素、チタン酸リチウム(LTO、LiTiO)が挙げられる。またはその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素や、これらの金属自体や他の元素、化合物と組み合わせた合金を、負極材としてもちいることができる。
更に、極材に電解質層で使用する固体電解物質を混合して使用してもよい。
【0018】
固体電解質13は、リチウム元素(Li)、リン元素(P)及び硫黄元素(S)を主成分としたものである。特に、硫化リチウム(Li2S)と硫化リン(P25)とをモル比で65:35〜75:25の混合原料から製造、特に混合原料を窒素などの不活性ガス雰囲気中において150℃以上360℃以下で加熱処理した硫化物系焼成体である硫化物系ガラスであることが好ましい。この組成比により、高いリチウムイオン伝導度が得られる。
また、リチウムイオン二次電池1の固体電解質として、硫化リチウムと硫化リンとを原料として加熱処理した硫化物系焼成体を用いているので、0℃から−40℃の比較的に低温でもイオン伝導度の急激な低下がなく、また、約400℃程度の高い温度まで実質的に変成しない安定した特性を備えるため、電力を安定して供給できる。
【0019】
さらに、硫化物系ガラスの平均粒径は、0.1μm以上20μm以下が好ましい。平均粒径が0.1μmより細かくなると取扱性が低下し、精勤粒径が20μmより粗くなると高エネルギー密度化および高出力化が得られにくくなるとともに、正極および負極と固体電解質との界面抵抗を低減できなくなるおそれがある。さらには、シート状に形成する際の分散性が低下してシート化が困難となるおそれもある。
【0020】
なお、硫化物系ガラスの微粒子は、例えば、非水系溶媒による湿式粉砕、あるいは乾式粉砕により製造する。
湿式粉砕としては、各種粉砕機を用いることができる。例えば、ビーズミル、ボールミル振動ミルなどが利用できる。なお、粉砕条件の設定自由度が高い点で、ボールを粉砕メディアに用いるものが好ましい。特に、転動ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、Nメチルピロリドン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネートなどを用いることができる。特に、水分含有量が100ppm以下、より好ましくは50ppm以下のものを用いるとよい。
非水系溶媒は、効率性および適度なスラリー粘度による取扱性などの点で、スラリー全体に示す固体の割合が5質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で用いるとよい。
また、分散安定剤を適宜添加してもよい。
【0021】
一方、乾式粉砕としては、各種粉砕機を用いることができ、特に微粒子の製造が容易であるとともに非接触による粉砕のために不純物の混入を抑制できる点で、ジェット粉砕機が有効である。
そして、変性防止のため、低露点環境で粉砕する。好ましくは−100℃以上−25℃以下、特に好ましくは−90℃以上−30℃以下で粉砕する。
【0022】
[建材の構成]
本実施形態の建材の概略構成を図2に示す。
建材2は、図2に示すように、縦芯材21(21A,21B)及び横芯材22(22A,22B)を有し矩形枠形状に構成された枠体23と、枠体23の表裏両面に貼着された面材24と、を備えた壁パネル2Aである。
枠体23と面材24が形成する壁パネル2Aの内部空間25には、リチウムイオン二次電池1が配設されている。ここで、内部空間25は、枠体23の内部に縦芯材21または横芯材22に略並行に設けられた補強芯材26によって複数の小空間27に区画されている。そして、この複数の小空間27に、略矩形形状のリチウムイオン二次電池1が複数配設されている。なお、リチウムイオン二次電池1は、小空間27(すなわち建材2の内部空間25)から取り外し可能に配設されている。
このように、壁パネル2A内部に配設したリチウムイオン二次電池1に電力を貯蔵するで、建材2の内部空間を有効利用できる。このため、建築物3内に区画形成される居住空間も容易に拡大できる。断熱および吸音の効果も期待できる。また、これらと併用することで、より一層優れた効果を得られる。
また、2つの縦芯材21A,21Bの一端外側には、互いに接続可能な雄コネクタ211および雌コネクタ212が、それぞれ設けられている。雄コネクタ211および雌コネクタ212は、複数のリチウムイオン二次電池1に電気的に接続されている。すなわち、雄コネクタ211および雌コネクタ212は、一の壁パネル2Aのリチウムイオン二次電池1と他の壁パネル2Aのリチウムイオン二次電池1とを電気的に接続する接続手段28として利用できる。
【0023】
図3に、小空間27から取り外したリチウムイオン二次電池1の概略斜視図を示す。
図3に示すように、小空間27の底辺、つまり横芯材22Bまたはこれに平行な補強芯材26の図3における上面には、小雄コネクタ271が設けられている。これに対し、リチウムイオン二次電池1の一側面(図3の下側側面)には、小雄コネクタ271と接続可能な小雌コネクタ272が設けられている。図示しないが、小雄コネクタ271は雌コネクタ212および雄コネクタ211に接続されているので、小雄コネクタ271と小雌コネクタ272とを接続することにより、リチウムイオン二次電池1が雌コネクタ212および雄コネクタ211に接続できる。
また、面材24の小空間27側の面24A(図3の手前側面)には、小雄コネクタ271と小雌コネクタ272とが接続した状態においてリチウムイオン二次電池1の背面1Aに設けられた穴部14に係合する突起部273が設けられている。突起部273は、上方に向かって突き出た板状の外形を有する。リチウムイオン二次電池1の下端で小雌コネクタ272を小雄コネクタ271に接続させ、上端を面材24側へ押し付けると、突起部273が穴部14に係合され、リチウムイオン二次電池1が小空間27に係止される。この状態で、リチウムイオン二次電池1の上端を手前側に引けば、小空間27から取り出すことが可能である。
このように、リチウムイオン二次電池1を取り外し可能に配設することで、耐用年数が長い建築物の耐用期間中に仮にリチウムイオン二次電池1の寿命が切れても、新しいものと交換するなどすればよく、寿命により容量が低下した状態で利用する不都合を防止でき、建造物とともに長期間安定利用できる。
【0024】
[建築物の構成]
本実施形態の建築物の概略構成を図4に示す。
建築物3は、図4に示すように、建材2(複数のリチウムイオン二次電池1を備える建築用パネルである壁パネル2A)を複数備えて構成される。また、建築物3は、リチウムイオン二次電池1の充電および放電を制御する制御手段31と、リチウムイオン二次電池1を充電する発電手段32と、建築物3内部に電力を供給するコンセント等の建築物内電力供給手段33と、を備える。
複数の壁パネル2Aに配設されたリチウムイオン二次電池1は、雌コネクタ212、雄コネクタ211、小雄コネクタ271および小雌コネクタ272等によって互いに電気的に接続され、最終的には制御手段31に接続されている。発電手段32としては、例えば、太陽電池、燃料電池などが挙げられるが、本実施形態では太陽電池を発電手段32としている。発電手段32は、発電した電気を制御手段31に伝達する。
制御手段31には、壁パネル2A内のリチウムイオン二次電池1、発電手段32および建築物内電力供給手段33に加え、電力会社等から供給される外部電源4も接続されており、制御手段31は、建築物3内における電気の流れを制御する。具体的には、(i)発電手段32または外部電源4からの電気をリチウムイオン二次電池1に伝達し、これを充電し、(ii)発電手段32、外部電源4またはリチウムイオン二次電池1からの電気を建築物内電力供給手段33に伝達し、建築物3内における電力利用に供する。
【0025】
[第1実施形態の作用効果]
このような本実施形態によれば、例えば、下記のような優れた作用効果が得られる。
本実施形態によれば、壁パネル2A内部に配設したリチウムイオン二次電池1に電力を貯蔵するで、エネルギーの利用効率を飛躍的に向上することができる。
例えば、発電手段32としての太陽電池が昼間に発電した電気を貯蔵しておき、発電ができない夜間に利用できる。また、例えば、価格の安い昼間に外部電源4からの電気を貯蔵しておき、価格の高い夜間は外部電源4を利用しないこととして、電力コストを削減できる。
【0026】
[第2実施形態]
本実施形態は、建材2としての畳の内部に、リチウムイオン二次電池1を配設する点のみが、上述の第1実施形態と異なる。
このため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、適宜説明を省略する。
【0027】
[建材の構成]
図5は、本実施形態の建材2の概略断面図である。
本実施形態の建材2は、図5に示すように、畳表41と、畳床42とを備えた畳2Bである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、シート状に形成され、畳床42に配設されている。
畳床42は、リチウムイオン二次電池1と、リチウムイオン二次電池1の両面に積層された畳床構成部材421とを有し、畳表41は、一方の畳床構成部材421Aのリチウムイオン二次電池1と反対側の表面を被覆している。
畳表41は、畳床42から取り外しが可能であり、さらに、リチウムイオン二次電池1の両面に積層された畳床構成部材421もまた、取り外しが可能である。すなわち、リチウムイオン二次電池1は、建材2(畳2B)の内部から取り外し可能に配設されている。
また、図示しないが、建築物3の内部に配置された状態で、一の畳2B中のリチウムイオン二次電池1は、接続手段28によって他の複数の畳2Bのリチウムイオン二次電池1と相互に接続されており、最終的には上述の制御手段31に接続されている。
このような本実施形態によれば、例えば、畳床構成部材421によって従来の畳と同様の性能が得られ、リチウムイオン二次電池1によって畳2Bに電気の貯蔵という新しい機能を付与できる。
なお、畳床42内にリチウムイオン二次電池1を設けた畳を例示したが、畳表41と畳床42との間に、シート状に形成したリチウムイオン二次電池を配設した構成とするなどしてもよい。
【0028】
[変形例]
以上に説明した各態様は本発明の一態様を示したものであり、本発明は前記した実施形態に限定されない。本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良は、本発明の内容に含まれ、具体的な構造および形状等は、他の構造や形状等としても問題ない。
上述の実施形態において、建材2として、壁パネル2Aおよび畳2Bを例示したが、これに限定されない。例えば、建材2は、図6に示すようなユニットバス2Cであってもよい。この場合、リチウムイオン二次電池1は、例えば、図6に示すように、ユニットバス2Cの床下に配設できる。これにより床下の余ったスペースを有効に活用できる。また、図6に示すように床下面に貼り付けるようにリチウムイオン二次電池1を配設することで、その断熱効果により、ユニットバス2C内部の温度変化を抑制でき、暖かい空気を長時間維持できる。また、その吸音効果により、水音等の物音が外部に漏れることを防止できる。なお、リチウムイオン二次電池1は、床下のみならず、ユニットバス2Cの壁面や天井にも配設できることはもちろんである。このとき、ユニットバス2Cの室外側のみならず、室内側に設けてもよいが、この場合は特に、防水容器に内蔵する等、リチウムイオン二次電池1に適切な防水手段を設けることが好ましい。
【0029】
また、建材2は、図7に示すような鉄筋2Dであってもよい。図7において、リチウムイオン二次電池1は、鉄筋2Dの上下のフランジ51とウェブ52との間に嵌まり込む形状に形成されている。この状態において周囲にコンクリートが打設され、リチウムイオン二次電池1が内部に配設された壁面や柱が形成される。なお、リチウムイオン二次電池1の一面(図7の手前側の面)にコンクリートが入り込まないようにして打設をし、リチウムイオン二次電池1を鉄筋2D、壁または柱などから取り外し可能に構成してもよい。
さらに、建材2は、図8に示すような補強杭2Eであってもよい。
図8において、建材2は、コンクリート基礎6の補強杭2Eである。コンクリート基礎6は、地面に溝状に掘削された根切り溝61の底面に所定の厚さ寸法で砕石62が敷き詰められ、この敷き詰められた砕石62上に現場コンクリート打ちにより形成される。補強杭2Eの外周面には、螺旋状にスクリュー翼63が設けられている。リチウムイオン二次電池1は、この補強杭2Eのスクリュー翼63と反対側の端部(すなわち上端)に配設されている。この場合、リチウムイオン二次電池1の取り外しは困難であるものの、その他の効果は上述の各実施形態と同様である。
そして、建築物3としては、居住空間を内部に区画する家屋に限らず、学校、商業施設、工場や体育館などの他、橋、高架など、各種建築物を対象とすることができる。
また、リチウムイオン二次電池を防湿性を有するケース体に収容することで、後述するユニットバスなどの湿気等の水分が入り込みやすい建材2に適用するなどしても、漏れ等によるリチウムイオン二次電池への悪影響が懸念される空間でも、水分による影響を排除でき、安定して利用できる。
そして、リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する制御手段を備えることにより、状況に合わせて充電、放電を実施することで、様々な効果、利益が得られる。例えば、電気料金が安い夜間に充電し、充電した電気を、電気料金が高い昼間に利用することで、電気料金を低減できる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制約されるものではない。
【0031】
(イオン伝導度算出方法)
直径10mmφの錠剤成形器(SPECAC社製)に質量150mgの各種電解質を入れ、4MPaで加圧する。各種電解質としては、以下の表1に示す硫化物系固体電解質(実施例1)、有機系電解質(比較例1)、ポリマー電解質(比較例2)を用いた。
その後、錠剤成形器中のペレットの軸方向における両端面に、炭素:電解質=1:1の割合で混合したものを10mg入れて均一になるようにならす。その後さらに、4MPaで加圧する。加圧後の成形ペレットを内抜き評価ペレットとした。
この内抜き評価ペレットをイオン伝導度測定用セルに設置し、複素インピダンス測定を行った。機器はソーラトロン社製 1260型を用い、測定周波数は10Hz〜10MHzで行い、印加電圧10mVで測定した。測定温度は、室温(25℃)〜200℃の範囲で実施した。これから得られた測定結果から、アレニウスの式よりイオン伝導度を算出した。
その結果を、表1に示す。
【0032】
(リチウムイオン輸率)
イオン輸率は、以下のようなモデル電池を作成したブロッキング電極法により、固体電解質内のイオンの動きを測定して算定する。
具体的には、一方の電極は固体電解質をサンドイッチ状に挟み込んだ2枚のリチウム電極(ノンブロッキング電極)とし、他方の電極は固体電解質を挟み込んだ2枚のステンレス電極(ブロッキング電極)とする。各種電解質としては、以下の表1に示す硫化物系固体電解質(実施例1)、有機系電解質(比較例1)、ポリマー電解質(比較例2)を用いた。
機器はソーラトロン社製 1287型を用い、印加電圧0.1Vで測定した。測定は室温(25℃)で実施した。得られた測定結果から以下に示す式に基づいてイオン輸率を算出した。
イオン輸率=σion/(σion+σe)>0.9999
σion:ノンブロッキング電極の伝導度
σe :ブロッキング電極の伝導度=4×10-9[S/cm]
その結果を、表1に示す。
【0033】
(結果)
表1に示す結果から、比較例1のものはイオン伝導度が高いがリチウムイオン輸率が低く、大きな電力の供給が困難である。比較例2のものはリチウムイオン輸率は高めだが、イオン伝導度が低く、大きな電力供給のためにはリチウムイオン二次電池1が大型化してしまう。
一方、実施例1では、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率とも高く大きな電力を供給できることがわかる。また、室温(25℃)〜200℃の広い温度範囲で、安定した高いイオン伝導度が認められた。
このように、実施例1では、広い温度範囲でも良好な電気特性を示すので、建材2の内部に配設しても電池として良好に機能する。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、リチウムイオン二次電池を備えた建材および建築物として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す概略断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る建材の概略構成を示す図。
【図3】第1実施形態において、小空間から取り外したリチウムイオン二次電池の概略を示す斜視図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る建築物の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る建材の概略構成を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態に係る変形例の建材を示す断面図。
【図7】本発明の実施形態に係る変形例の建材を示す斜視図。
【図8】本発明の実施形態に係る変形例の建材を示す断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 リチウムイオン二次電池
2 建材
2A 建築用パネルである壁パネル
2B 畳
3 建築物
11 正極
12 負極
13 固体電解質
23 枠体
24 面材
25 内部空間
41 畳表
42 畳床
421 畳床構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材であって、
正極と、負極と、これら正極および負極間に介在されリチウム(Li)、リン(P)および硫黄(S)を含む固体電解質と、を備えたリチウムイオン二次電池が、内部に配設されたことを特徴とした建材。
【請求項2】
縦芯材及び横芯材を有し矩形枠形状に構成された枠体と、前記枠体の表裏両面に貼着された面材と、前記枠体の内部に設けられた補強芯材と、を備え、前記枠体と前記面材が形成する内部空間を複数の小空間に区画する壁パネルであり、
前記リチウムイオン二次電池は、前記複数の小空間に配設されたことを特徴とした請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記リチウムイオン二次電池は、前記建材の内部から取り外し可能に配設されたことを特徴とした請求項1または2に記載の建材。
【請求項4】
畳表と、畳床とを備えた畳であり、
前記リチウムイオン二次電池は、シート状に形成され、
前記畳床は、前記リチウムイオン二次電池と、前記リチウムイオン二次電池の少なくとも一面に積層された畳床構成部材とを有し、
前記畳表は、前記畳床構成部材の前記リチウムイオン二次電池と反対側の表面を被覆していることを特徴とした請求項1に記載の建材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の建材を備えて構成されたことを特徴とした建築物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−37881(P2010−37881A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204876(P2008−204876)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】