説明

建材の無害化処理方法

【課題】本発明は、アスベストを含有する複数の建材1を積み重ねた状態でこの建材に加熱処理を施すにあたり、建材の反りを充分に抑制すると共に建材を充分に加熱することができる建材の無害化処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る建材1の無害化処理方法は、アスベストを含有する複数の建材1と、錘3とを準備するステップと、複数の前記建材1を積み重ねて積載物2を構成すると共にこの積載物2における最上段に位置する建材1の上に前記錘3を載置するステップと、前記錘3が載置された前記積載物2を加熱処理するステップとを含む。前記錘3に上下に貫通する開口4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを含有する建材に加熱処理を施すことでこの建材中のアスベストを無害化する建材の無害化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石綿スレートや石綿セメント板などの、アスベスト(石綿)を含有する瓦材などの建材を廃棄するにあたっては、アスベストの無害化が必要とされる。これらの建材におけるアスベストの無害化のためには、主として加熱処理が採用されている。すなわち、これらの建材が加熱されることで、この建材中のアスベストが熱変性し、無害化する。アスベストは針状結晶を有することで障害を引き起こすものであるが、アスベストが一定温度以上まで加熱されると結晶性が変性して無害化することが知られている。
【0003】
石綿スレートや石綿セメント板などの建材に加熱処理が施される場合には、処理効率向上の観点から、複数の建材が積み重ねられた状態で加熱処理が施されることが一般的である。
【0004】
特許文献1には、アスベストを含有するセメント硬化板を加熱炉内に供給して加熱することにより無害化するにあたり、マイクロ波を照射する加熱炉を使用することが、開示されている。更に、アスベストを含有するセメント硬化板を保持具の上に複数枚重ねて保持させ、最上段のセメント硬化板の上に錘を重ねることで、ローラーハースキルンなどの連続式の加熱炉内でセメント硬化板の熱による反りや変形を抑制することができ、これにより加熱炉内のマイクロ波発振器などの設備にセメント硬化板が引っ掛かったり、セメント硬化板が保持具から脱落したりすることを防止することも、開示されている。
【0005】
しかし、複数の建材が積み重ねられた状態で更にその上に錘が重ねられると、錘の影響によって建材が充分に加熱されなくなる場合がある。一方、建材を充分に加熱するために錘の量を少なくすると、錘から建材へかけられる荷重が不充分になり、このため建材の反りや変形が大きくなってしまうことがある。建材の反りや変形が大きくなると、上記のように加熱炉内の設備に建材が引っ掛かることがあるだけでなく、複数の建材中の各建材間に生じる隙間が大きくなってしまい、それにより建材間の熱の伝達が阻害されて建材の温度にバラツキが生じるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−149080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、アスベストを含有する複数の建材を積み重ねた状態でこの建材に加熱処理を施すにあたり、建材の反りを充分に抑制すると共に建材を充分に加熱することができる建材の無害化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建材の無害化処理方法は、
アスベストを含有する複数の建材と、錘とを準備するステップと、
複数の前記建材を積み重ねて積載物を構成すると共にこの積載物における最上段に位置する建材の上に前記錘を載置するステップと、
前記錘が載置された前記積載物を加熱処理するステップとを含み、
前記錘に上下に貫通する開口が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記錘がマイクロ波吸収性材料から形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記積載物を構成するにあたって、前記積載物における最上段に位置する前記建材を複数の部材に分断し、前記積載物における最上段に位置する前記建材の上に前記錘を載置するにあたって、複数の前記部材の各々の上に前記錘を載せることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アスベストを含有する複数の建材を積み重ねた状態でこの建材に加熱処理を施すにあたり、建材の反りを充分に抑制すると共に建材を充分に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態の第一例における錘、積載物及び保持具を示す平面図、図1(b)は図1(a)の正面図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施形態の第二例における錘、積載物及び保持具を示す平面図、図2(b)は図2(a)の正面図である。
【図3】本発明の実施形態における積載物に加熱処理を施す工程を示す概略図である。
【図4】図4(a)は比較例1における錘、積載物及び保持具を示す平面図、図4(b)は比較例2における錘、積載物及び保持具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態において、アスベストを含有する建材1としては、アスベストを含有する石綿スレート、石綿セメント板、石綿セメントサイディングなどの適宜の建材1が挙げられる。アスベストを含有する建材1の代表的な一例として、アスベストを含有する石綿スレートからなる瓦材が挙げられる。
【0014】
加熱処理の前に、図1(a)及び図1(b)に示されるように、複数の建材1が積み重ねられる。以下、この積み上げられた複数の建材1からなる集合を、積載物2とよぶ。一つの積載物2を構成する建材1の数は、加熱炉6の能力や処理効率等を考慮して適宜決定されるものであって、特に制限されない。この積載物2は保持具5上に保持されてもよい。保持具5としては、例えば耐熱性の高いムライト等のアルミナ系の材料から形成されている板材等が挙げられる。
【0015】
この積載物2における最上段の建材1は、予めカッターなどで切断されることで複数の部材に分断されることが好ましい。例えば図1(a)及び図1(b)に示されるように最上段の建材1がその長手方向と直交する方向に切断されることで、同じサイズ(ほぼ同じサイズを含む)の二つの部材11,12に分断されることが好ましい。
【0016】
この積載物2における最上段の建材1の上には、錘3が載せられる。積載物2の上には、一つの錘3のみが載せられても、複数の錘3が載せられてもよい。積載物2における最上段の建材1が複数の部材に分断されている場合には、各部材の上に錘3が載せられることによって積載物2上に複数の錘3が載せられることが好ましい。
【0017】
錘3には上下に貫通する開口4が形成されている。錘3は、例えば四角枠状の形状を有している。
【0018】
図1に示す例では、錘3は平面視矩形状の外形形状を有し、且つこの錘3にはこの錘3の外形形状と相似する(ほぼ相似する場合を含む)矩形状の一つの開口4が形成されている。図1に示す例では、二つの錘31,32が、二つの部材11,12上にそれぞれ載せられている。
【0019】
図2に示す例でも、図1に示す例と同様に、複数の建材1が積み重ねられて積載物2が構成され、積載物2が保持具5上に保持されている。また積載物2における最上段の建材1が二つの部材11,12に分断されている。
【0020】
図2に示す例では、錘3は平面視矩形状の外形形状を有し、且つこの錘3には矩形状の二つの開口4が形成されている。図2に示す例では、二つの錘31,32が、二つの部材11,12上にそれぞれ載せられている。
【0021】
尚、錘3の形状は、上下に貫通する開口4が形成されているのであれば、図1及び図2に示す形状に限られない。
【0022】
このように錘3に開口4が形成されていると、この開口4の分だけ建材1上における錘3と接する部分の面積が少なくなり、またそれにもかかわらず、錘3から建材1上の広い領域に亘って効果的に荷重がかけられるようになる。
【0023】
本実施形態において、一つの錘3は、一つの部材から構成され、或いは互いに連結されている複数の部材から構成される。すなわち、複数の部材が連結することなく集合しただけでは、これらの部材の集合は一つの錘3とはみなされない。このような複数の部材の単なる集合は建材1が僅かに変形するだけで互いに分離されてしまうため、開口4を有する錘3として機能しなくなるためである。
【0024】
開口4を含む錘3全体の平面視面積に対する開口4のみの平面視面積の割合は、建材1上における錘3と接する部分の面積が充分に少なくなるように適宜設定されるが、特に加熱処理時に適用されるマイクロ波の周波数が2.45GHzの場合、マイクロ波の波長が121.5〜123.0mmであることから、15129mm2以上であることが好ましい。また、開口4の少なくとも一辺の寸法がマイクロ波の波長以上であることが好ましく、この場合、マイクロ波が建材1に直接吸収されやすくなる。また、積載物2における最上段の建材1の平面視面積に対する、開口4を含む錘3全体の平面視面積(錘3が複数の場合には合計面積)の割合は、15〜40%の範囲であることが好ましく、この場合、建材1上における充分に広い範囲に亘って錘3から建材1へ荷重がかけられる。また、積載物2における最上段の建材1が複数の部材に分断されている場合には、各部材の平面積に対する、各部材上の錘3の開口4を含む平面積面積の割合が、15〜40%の範囲であることが好ましく、この場合、各部材上における充分に広い範囲に亘って錘3から各部材へ荷重がかけられる。
【0025】
錘3の質量は、加熱処理による建材1の反り及び変形が充分に抑制されるように適宜設定されるが、特に建材1の単位面積あたりの錘3の質量が4〜14kg/m2の範囲であることが好ましい。
【0026】
錘3の材質に制限はないが、加熱処理時にマイクロ波によって建材1が加熱される場合には、錘3がマイクロ波吸収性材料から形成されていることが好ましい。この場合、建材1が錘3によって遮蔽されていても、錘3がマイクロ波によって加熱され、更にこの錘3から建材1へ熱が伝達されるため、錘3が用いられるにもかかわらず建材1の加熱効率の低下が抑制される。マイクロ波吸収性材料としては、炭化珪素、ジルコニア、酸化鉄等が挙げられるが、マイクロ波吸収特性が良い炭化ケイ素が好ましい。
【0027】
このように錘3が載せられた積載物2に対して加熱処理が施される。加熱処理のためには連続式の加熱炉6が使用される。図3は、連続式の加熱炉6の一例を、概略的に示す。この加熱炉6は細長いトンネル炉である。この加熱炉6の長手方向の一端には入口61が、他端には出口62が、それぞれ形成されている。
【0028】
加熱炉6は、この加熱路4内で積載物2を搬送するための搬送装置を備える。本実施形態では、加熱炉6は搬送装置としてローラーコンベア7を備える。尚、搬送装置はローラーコンベアには限定されず、例えばローラーコンベア7以外のコンベアであっても、台車であってもよい。
【0029】
加熱処理時には、複数の建材1から積載物2が構成され、この積載物2上に錘3が載せられると共にこの積載物2が保持具5に保持された状態で、積載物2が入口61から加熱炉6内に導入される。続いて積載物2は搬送装置によって加熱炉6内を移動させられ、続いて出口62から加熱炉6外へ送り出される。これにより積載物2が加熱される。
【0030】
加熱炉6内は、例えば入口61側から順に、第1加熱ゾーン、第2加熱ゾーン、第3加熱ゾーン、及び冷却ゾーンに区切られている。各ゾーン間は、カーテンなどで仕切られてもよく、或いは仕切られていなくてもよい。
【0031】
第1乃至第3の加熱ゾーン内にはそれぞれ、外部加熱手段と内部加熱手段が設けられている。外部加熱手段は、それ自体が熱を放出することによって、建材1に外側から熱を加えて、建材1を外部から加熱させる手段であり、その具体例としては電気ヒータなどのヒータが挙げられる。内部加熱手段は、それ自体が熱を放出することはなく、建材1を内部から加熱させる手段であり、その具体例としてマイクロ波発振器が挙げられる。マイクロ波発振器が使用されると、マイクロ波(高周波)による高周波誘電加熱によって建材1自体が発熱し、建材1が内部から加熱される。マイクロ波の周波数としては、日本国の電波法で許可されている915MHz帯、及び2.45GHz帯が挙げられる。
【0032】
建材1の加熱処理にあたっては、積載物2が入口61から加熱炉6内に導入され、第1加熱ゾーン、第2加熱ゾーン、第3加熱ゾーンで、順次加熱された後、冷却ゾーンで冷却され、更に出口62から外部に送り出される。
【0033】
例えば第1加熱ゾーンでは、建材1が加熱されることにより、建材1中の自由水及び結晶水が飛散する。第1加熱ゾーンでは内部加熱手段が比較的小さな出力で作動すると、建材1の内部での昇温速度が緩やかになり、このため建材1から自由水や結晶水が徐々に蒸発するようになる。自由水とは、建材1に取り込まれている、結露水、気中水分、雨水等や、水硬反応により建材1が作製される場合の反応の余剰水などを指す。これにより建材1の内部での自由水及び結晶水の急激な蒸発が抑制され、このような急激な水の蒸発による建材1の爆裂が抑制される。
【0034】
第2加熱ゾーンで建材1が更に加熱される。第2加熱ゾーンでは例えば内部加熱手段の出力が第1加熱ゾーンよりも高くされることで、建材1の内部の温度上昇が大きくなり、建材1の内部と表面の温度とが近づけられる。
【0035】
第3加熱ゾーンでは、建材1がアスベストの結晶性が変性する温度まで加熱される。これにより、建材1に含まれるアスベストが無害化される。
【0036】
尚、加熱炉6内は複数の加熱ゾーンに区切られていなくてもよい。また、加熱炉6が加熱手段として外部加熱手段と内部加熱手段のうち、外部加熱手段のみを備えていてもよく、内部加熱手段のみを備えていてもよい。
【0037】
このようにして建材1が加熱される際、積載物2上に錘3が載せられるため、積載物2を構成する複数の建材1の反り及び変形が抑制される。このため、建材1が加熱路内を移動する間に加熱炉6内の設備に建材1が引っ掛かったり、建材1が保持具5から脱落したりすることが、抑制される。
【0038】
また、本実施形態のように錘3に開口4が形成されていると、錘3のサイズを低減しながら、錘3から建材1上の広い領域に亘って効果的に荷重がかけられるようにすることができ、このため建材1の反り及び変形が効果的に抑制される。
【0039】
このように建材1の反りや変形が抑制されると、加熱炉6内のマイクロ波発振器などの設備に建材1が引っ掛かったり、建材1が保持具5から脱落したりすることが抑制される。
【0040】
また、建材1に反りや変形が生じてしまうと、積載物2中の隣合う建材1間に隙間が生じると共にこの隙間が大きくなってしまい、このため建材1間の熱の移動が阻害されて建材1の温度に不均一が生じてしまうおそれがある。このような温度の不均一が生じると、建材1における温度が低い箇所においてアスベストが充分に無害化されなくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態のように建材1の反り及び変形が効果的に抑制されると、積載物2中の隣合う建材1間に隙間が生じにくくなり、また隙間が生じるとしてもこの隙間が大きくなりにくくなる。このため、積載物2内における熱の伝達性が向上し、積載物2内における加熱温度の不均一が抑制される。
【0041】
しかも、錘3には開口4が形成されているため、上述の通りこの開口4の分だけ錘3のサイズが小さくなり、このため錘3によって熱が遮蔽されることが抑制される。このため、積載物2の加熱効率が向上する。
【0042】
また、積載物2中における錘3の下方の領域は、錘3を介して伝導するする熱と、錘3の外側から伝導する熱とによって加熱されるが、錘3を介すると熱の伝導性はどうしても低下し、錘3の外側から伝導する熱はある程度の距離を伝導する必要があるため、錘3の下方では加熱効率は低下してしまう。しかし、本実施形態のように錘3に開口4が形成されると、開口4の内側では積載物2が遮蔽されていないため、錘3の下方において錘3の外側から伝導する熱が伝導すべき距離が短くなる。更に、特に加熱処理時にマイクロ波が適用される場合には、開口4を通じてマイクロ波が、積載されている建材1の深くまで到達しやすくなる。このため、錘3の下方の領域における積載物2の加熱効率が更に向上する。
【0043】
本実施形態ではこのように積載物1内における加熱温度の不均一が抑制されると共に加熱効率が向上することで、建材1に含まれるアスベストが効率良く無害化される。
【0044】
また本実施形態のように建材1が複数の部材に分断されていると、たとえ建材1に反りや変形が生じたとしても、この建材1の浮き上がり量は建材1が分断されていない場合よりも小さくなる。このため、加熱炉6内の設備に建材1が引っ掛かったり、建材1が保持具5から脱落したりすることが、更に効果的に抑制されるようになる。
【実施例】
【0045】
以下に、本実施形態による建材1の無害化処理方法の具体的な実施例を示す。尚、本発明は以下の実施例に制限されることはない。
【0046】
建材1として、アスベストを含有する化粧スレート(カラーベスト(登録商標)の従来品)の廃材を用意した。この建材1は、図1に示す形状を有し、その寸法は414×910mm、平面視面積は0.294m2、質量は約2.5kgであった。
【0047】
この建材1を、炭化珪素製の保持具5の上に7枚重ねることで積載物2を構成した。積載物2の最上段に配置される建材1については、この建材1をその長手方向と直交する方向に切断することで二つの部材11,12に分断した。この積載物2上に錘3を載置した。
【0048】
実施例1では、図1に示されるものと同様にして錘3、積載物2、及び保持具5を用意した。すなわち、実施例1では、下記表1に示すように、炭化珪素製であり、平面視矩形状であり、且つ一つの開口4が形成されている錘3を、二つ使用した。錘3の寸法及び質量は、下記表に示す通りである。この二つの錘3を、積載物2の最上段の二つの部材11,12上にそれぞれ載置した。
【0049】
実施例2では、図2に示されるものと同様にして錘3、積載物2、及び保持具5を用意した。すなわち、実施例2では、下記表1に示すように、炭化珪素製であり、平面視矩形状であり、且つ二つの開口4が形成されている錘3を、二つ使用した。錘3の寸法及び質量は、下記表に示す通りである。この二つの錘3を、積載物2の最上段の二つの部材11,12上にそれぞれ載置した。
【0050】
実施例3でも、図2に示されるものと同様にして錘3、積載物2、及び保持具5を用意した。すなわち、実施例3では、下記表1に示すように、炭化珪素の含有量が80質量%、酸化鉄の含有量が20質量%であり、平面視矩形状であり、且つ二つの開口4が形成されている錘3を、二つ使用した。錘3の寸法及び質量は、下記表に示す通りである。この二つの錘3を、積載物2の最上段の二つの部材11,12上にそれぞれ載置した。
【0051】
比較例1では、図4(a)に示されるように錘3、積載物2、及び保持具5を用意した。すなわち比較例1では、下記表1に示すように、炭化珪素製であり、平面視矩形状であり、且つ開口4が形成されていない錘3を、二つ使用した。錘3の寸法及び質量は、下記表に示す通りである。この二つの錘3を、積載物2の最上段の二つの部材11,12上にそれぞれ載置した。
【0052】
比較例2では、図4(b)に示されるように錘3、積載物2、及び保持具5を用意した。すなわち比較例2では、下記表1に示すように、炭化珪素製であり、平面視L字状であり、且つ開口4が形成されていない錘3を、四つ使用した。この錘3は、実施例1で使用されている錘3を分断した形状を有する。錘3の寸法及び質量は、下記表に示す通りである。この四つの錘3を二つの錘3から成る二つの集合にわけて、各集合では二つの錘3を実施例1における錘3と同じ形状になるように組み合わせ、この二つの集合を、積載物2の最上段の二つの部材11,12上にそれぞれ載置した(図4(b)参照)。
【0053】
各実施例及び比較例において、連続式の加熱炉6として、マイクロ波発振器と電気ヒータとを備えるハイブリッド式のローラハースキルンを用意した。この加熱炉6を用い、加熱炉6内で錘3を載せた積載物2をその移動方向とこの積載物2中の建材1の長手方向とが一致するように移動させながら、この積層物を雰囲気温度1000℃、マイクロ波出力30kWの条件で加熱した。
【0054】
加熱処理後の積載物2中における、5mm以上の隙間発生箇所数を調査し、その結果を、建材1の反り及び変形の程度の指標とした。その結果を下記表1に示す。これによると、実施例1〜3では建材1の反り及び変形が比較例1の同等以下まで抑制された。
【0055】
また、加熱処理後の積載物2中の四段目の建材1における、加熱処理時の進行方向の前側における錘3の直下、中央部、並びに進行方向の後側における錘3の直下から、測定用試料を採取し、各測定用試料をX線回折法により測定し、その結果に基づいて各測定用試料中のオケルマイトの生成量を導出した。このオケルマイトの生成量に基づいて加熱処理時の建材1の到達温度を導出した。この建材1の到達温度の導出にあたっては、前記の場合と同様に、建材1の加熱温度と建材1中のオケルマイトの生成量との関係を予め調査しておき、この関係を利用した。その結果を下記表に示す。これによると、比較例1では建材1内の到達温度のバラツキが大きいのに対して、実施例1〜3では到達温度のバラツキは少なかった。
【0056】
また、上記の加熱処理後の積載物2中の四段目の建材1における、錘直下の温度の、比較例1の場合との温度差を、{(進行方向の前側における錘3の直下での温度の、比較例1の場合との差)+(進行方向の後側における錘3の直下での温度の、比較例1の場合との差)}÷2の式により算出される値で評価した。その結果を下記表に示す。これによると、実施例1〜3における錘3の直下の温度は、比較例1の場合よりも高温であった。
【0057】
尚、比較例2の場合は、加熱処理時に積載物2から錘3が落下してしまったため、評価をすることはできなかった。
【0058】
【表1】

【符号の説明】
【0059】
1 建材
2 積載物
3 錘
4 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含有する複数の建材と、錘とを準備するステップと、
複数の前記建材を積み重ねて積載物を構成すると共にこの積載物における最上段に位置する建材の上に前記錘を載置するステップと、
前記錘が載置された前記積載物を加熱処理するステップとを含み、
前記錘に上下に貫通する開口が形成されていることを特徴とする建材の無害化処理方法。
【請求項2】
前記錘がマイクロ波吸収性材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建材の無害化処理方法。
【請求項3】
前記積載物を構成するにあたって、前記積載物における最上段に位置する前記建材を複数の部材に分断し、
前記積載物における最上段に位置する前記建材の上に前記錘を載置するにあたって、複数の前記部材の各々の上に前記錘を載せることを特徴とする請求項1又は2に記載の建材の無害化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49032(P2013−49032A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189627(P2011−189627)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】