説明

建材パネル

【課題】建築用パネルの、例えば室内側の表面材と室外側の裏面材との温度や湿度等の相違によって反りが発生することを防ぎ、かつ外観性に優れた建材パネルを提供することである。
【解決手段】枠材からなる枠体Wの表面側に取着される表面材1と該枠体Wの裏面側に取着される裏面材2とからなり、上記表面材1と枠体Wとの間および裏面材2と枠体Wとの間にはそれぞれ抗張材4を介装するとともに、上記枠体Wと抗張材4とで形成される空間には断熱材3が充填されてなる建材パネルA。上記断熱材3の少なくとも一部に真空断熱材31が使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は建材パネルに関する。さらに詳しくは、上下縦枠と左右横枠とからなる枠体の両側に表面材と裏面材とを取着してなる建材パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建住宅やマンション等の集合住宅の建物の外装や内装には、上下縦枠と左右横枠とからなる枠体の表面側に表面材を、裏面側に裏面材を貼着あるいは固着してなる建材パネルが使用されている。通常、上記表面材と裏面材との間にはグラスウールやロックウール等の断熱材が充填され、上記表面材を室内側に、裏面材を室外側に配設したとき、夏期は高い外気温を遮り、冬期は冷気を防ぎ室内において結露等の問題が生じることがなく、四季を通じて室内の居住環境を良好に保つことが図られている。
【0003】
一方、上記した建材パネルを木造建築物に用いる場合、耐火性能も要求される。そこで、特開2007−039915号公報には、木質材料で構成された木質下地と、木質下地の室内側に取り付けられた第1石膏ボードと、第1石膏ボードの室内側に取り付けられたアルミ層付ガラス繊維シートと、アルミ層付ガラス繊維シートの室内側に取り付けられた第2石膏ボードとを含む木造建築物の耐火構造であって、アルミ層付ガラス繊維シートは、少なくとも一方の面がアルミ箔によって覆われたガラス繊維シートからなる木造建築物の耐火構造が提案されている。
【0004】
そして、上記アルミ層付ガラス繊維シートは、例えば重量が130〜170g/m2、厚さが0.13〜0.17mmであり、アルミ箔の厚さは0.01〜0.03mmであることが好ましいと述べられている。
【0005】
上記耐火構造の実施例として、該特開2007−039915号公報の図2に示されるように2枚の耐火構造の間にグラスウール保温板が設置された形態が記載され、上記構成の木造建築物の耐火構造は優れた輻射断熱機能と耐火性能とを容易に備えることができる、とその効果が述べられている。
【0006】
しかしながら、本願図5に模式的に示すように、例えば枠体Wと表面材1および裏面材2とで形成される空間に断熱材3が充填された建材パネルEを建物の外装に用いたとき、建材パネルEの厚み方向に対称な構造をとっていても、室内と室外との温度差あるいは湿度差等の環境が異なる場合、反りが発生するという問題がある。
【0007】
例えば、冬期に室外気温が約5℃のときに室内で暖房して室温を約20℃に保った場合、室内側の表面材1は暖房熱や湿度によって本願図5に示すように引張応力が働いて伸長する。一方、室外側の裏面材2は低温の外気温や冬期の低湿度によって圧縮応力が働いて収縮する。そして室内に凸となるような反りが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−039915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように建材パネルに反りが発生すると外観性が劣ったものとなるばかりでなく、建て付けが悪くなり家屋自体の構造に悪影響を及ぼすという問題が生じる。本願発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、建物の外装用として用いたときや室内で部屋と部屋との間仕切りに使用した場合等において、表面材側と裏面材側との温度や湿度等の相違によって反りが発生することを防ぎ、かつ外観性に優れた建材パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る建材パネルは、枠材からなる枠体の表面側に取着される表面材と該枠体の裏面側に取着される裏面材とからなり、上記表面材と枠体との間および裏面材と枠体との間にはそれぞれ抗張材を介装するとともに、上記枠体と抗張材とで形成される空間には断熱材が充填されてなることを特徴とする。
【0011】
本願請求項2に記載の発明に係る建材パネルは、上記請求項1に記載の発明において、上記断熱材の少なくとも一部に真空断熱材が使用されてなることを特徴とする。
【0012】
本願請求項3に記載の発明に係る建材パネルは、上記請求項1に記載の発明において、上記表面材と裏面材とをそれぞれ防湿層で被覆してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1記載の発明に係る建材パネルにおいては、枠体の表面側に取着される表面材と該枠体の裏面側に取着される裏面材とのそれぞれの間には、引張力に対する抵抗力の強い材料、例えば、ガラス繊維を糸状に撚って網状に編み込んだガラスネット、あるいはガラス繊維紙等からなる抗張材が介装されているため、例えば、建物の外装用として用いたとき、冬期に室内と室外の温度差や湿度の差等によって室内側に凸となるように反ることを防ぐことができる。
【0014】
そして、上記表面材と裏面材との間に充填されたグラスウールやロックウール等無機系の断熱材や発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、ビーズ法ポリスチレン、エポキシフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等の硬質合成樹脂発泡体の圧縮成形品、あるいは真空断熱材等が、夏期は高い外気温を遮り、冬期は冷気を防いで室内において結露等の問題が生じることがなく、四季を通じて室内の居住環境を良好に保つことができる。
【0015】
本願請求項2記載の発明に係る建材パネルにおいては、上記断熱材の少なくとも一部に真空断熱材が使用されてなるため、真空断熱材の有する特性によって建材パネル自体を高断熱性で薄型かつ軽量とすることが可能となる。そして、運搬や工事現場への搬入が容易となり、作業性よく建材パネルの施工を行うことができる。
【0016】
本願請求項3記載の発明に係る建材パネルにおいては、表面材と裏面材とをそれぞれ、さらに防湿層で被覆してなるため、抗張材を介装することによる室内、室外温度差による表面材や裏面材の伸長、収縮の防止に加えて、雰囲気空気中の水分が表面材や裏面材に浸透することを防ぐため、より寸法安定性に優れた建材パネルとすることができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る建材パネルを示す横断面説明図。
【図2】本願発明の第2実施形態に係る建材パネルを示す横断面説明図。
【図3】本願発明の第3実施形態に係る建材パネルを示す横断面説明図。
【図4】本願発明の第4実施形態に係る建材パネルを示す横断面説明図。
【図5】断熱材が充填された公知の建材パネルを建物の外装に用いたときの反りの発生を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明に係る建材パネルを住宅の外装用として用いた場合の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本願発明の第1実施形態に係る建材パネルAを示す横断面説明図である。図1に示すように、上記建材パネルAはフレームである枠体Wと抗張材4とで形成される空間に断熱材3が充填されるとともに、枠体Wの表面側に取着される表面材1が室内側に配設され、枠体Wの裏面側に取着される裏面材2が室外側に配設されている。
【0019】
上記表面材1としては、合板、化粧合板、MDF等の木質系材料、石膏ボード、火山性ガラス質複層板等の無機質系材料等の種々のボード体を用いることができる。また裏面材2としては上記と同様に合板、化粧合板、MDF等の木質系材料、石膏ボード、火山性ガラス質複層板等の無機質系材料等のボード体が用いられ、表面材1として木質系材料を用い、裏面材2として同系統の木質系材料を用いてもよい。
【0020】
また、表面材1として木質系材料、例えば化粧合板等を用い、裏面材2として無機質系材料、例えば石膏ボードを用いてもよい。このように、表面材1と裏面材2の材料の組み合わせは限定されることなく、外装用、内装用等、使用場面に応じて適宜材料を選択して用いればよい。
【0021】
上記断熱材としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、ビーズ法ポリスチレン、エポキシフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等の硬質合成樹脂発泡体の圧縮成形品や、これらをボード状に成形したものをあげることができる。また、無機系の高密度のグラスウールマット、ロックウールマット等も用いることができる。また、後記する真空断熱材を用いることもできる。
【0022】
上記枠体Wとしては、枠材すなわち、合板、集積材、MDF等の木質材料を上下縦枠、左右横枠としてフレーム構造としたものが用いられる。あるいはアルミ等の軽量金属を枠体に加工して用いてもよく、とくに材料に限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、上記表面材1と枠体Wとの間および裏面材2と枠体Wとの間にはそれぞれ抗張材4が介装されるとともに、上記枠体Wと抗張材4とで形成される空間には断熱材3が充填されている。この断熱材3が介在することによって夏期は高い外気温を遮り、冬期は冷気を防いで断熱材の断熱効果によって省エネルギー化を図ることができる。
【0024】
上記表面材1と枠体Wとの間および裏面材2と枠体Wとの間にそれぞれ介装される抗張材4としては、引張力に対する抵抗力の強い材料、例えば、ガラス繊維を糸状に撚って網状に編み込んだガラスネット41(第3、第4実施形態において表面側の抗張材4として使用)、あるいはガラス繊維そのものを不織布のようにシート状に形成したガラス繊維紙42(各実施形態において抗張材4として使用)等をあげることができる。
【0025】
この第1実施形態においては、上下の抗張材4、4のいずれもガラス繊維紙42、42で構成している。
【0026】
上記抗張材4は、予め枠体Wの表面側と裏面側にアクリル系接着剤等で接着され、その外表面に表面材1と裏面材2とを接着、釘打ち等の手段で取着し、かくして表面材1と枠体Wとの間および裏面材2と枠体Wとの間にそれぞれ抗張材4を介装することができる。
【0027】
該抗張材4の装着操作性を良くするために、予めアルミ箔の表面に抗張材4をアクリル系エマルジョン等を用いて一体的に貼着し、上記アルミ箔でバッキングされた抗張材4を枠体Wの表裏面に接着してもよい。
【0028】
また、アルミ箔付きガラス繊維紙42からなる抗張材4を予め表面材1および裏面材2に接着した後に、これらの表面材1および裏面材2を枠体Wの表裏面に接着してもよい。
【0029】
上記のように構成された第1実施形態にかかる建材パネルAは、図1に示すように表面材1を室内側、裏面材2を室外側に配設する外装用として用いた場合、例えば、冬期に室内を暖房によって、例えば約20℃に保持するとき、表面材1の温度上昇による伸びは、抗張材4を構成するガラス繊維の抗張力によって抑えることができる。そして表面材1の寸法安定性をしっかりと保つことができる。
【0030】
一方、裏面材2は夏期の屋外温度が、例えば約30℃のとき、該屋外温度による裏面材2の伸長力は抗張材4を構成するガラス繊維紙42の抗張力によって抑えられ、裏面材2の寸法安定性をしっかりと保つことができる。このようにして、表面材1と裏面材2とが温度変化による伸長が抑制され枠体Wの両側で十分に寸法安定性が保たれるため、反りの生じることのない優れた建材パネルAを得ることができる。
【0031】
図2は本願第2実施形態に係る建材パネルBを示す横断面説明図である。図2に示す形態においては、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリフェノールフォーム等のボード状の成形品を断熱材3として使用し、この断熱材3の周囲を残して中央部に凹部を設け、この凹部に真空断熱材31が納装されている。すなわち、上記断熱材3の少なくとも一部には真空断熱材31が使用されている。
【0032】
この第2実施形態においては、断熱材3の周囲が枠体Wを代用形成し、この枠体Wの内部に真空断熱材31を納装するとともに、ガラス繊維紙42からなる抗張材4を介して裏面材2を該断熱材3で形成された代用の枠体Wに取着する。一方、上記凹部の底面を構成する断熱材3に表面側のガラス繊維紙42からなる抗張材4を接着し、その上に表面材1を接着する。
【0033】
ここで、真空断熱材31とは、例えばグラスウール等の断熱材を芯材とし、この芯材をラミネートフィルムで包んだうえ、その内部を高い真空空間率(90%超)で多孔質構造としたものであり、真空による高断熱性を備えた、例えば厚さ4mmの薄型断熱材を示す。
【0034】
第2実施形態においても、ボード状の断熱材3と表面材1との間、および、真空断熱材31と裏面材2との間にはそれぞれガラス繊維紙42からなる抗張材4が介装されているため、枠体Wの両側の表面材1と裏面材2の温度による伸長、収縮が抑制され該建材パネルの寸法安定性が保たれる。従って、反りの生じにくい優れた建材パネルBとすることができる。
【0035】
図3は、本願第3実施形態に係る建材パネルCを示す横断面説明図である。図3に示す形態においては、第2実施形態における表面側のガラス繊維紙42からなる抗張材4に代えて、ガラス繊維を糸状に撚って網状に編み込んだガラスネット41からなる薄型の抗張材4を使用したものである。
【0036】
また、上記凹部の周囲を構成する断熱材3からなる代用の枠体Wとこの凹部に納装された真空断熱材31とにはガラス繊維紙42で形成した抗張材4を貼着し、且つ、該抗張材4そのものが裏面材2とされている。このようにすることにより、枠体Wの両側で表面材1と裏面材との寸法安定性が保たれた薄型で反りの生じることのない優れた建材パネルCを得ることができる。
【0037】
図4は、本願第4実施形態に係る建材パネルDを示す横断面説明図である。本願第4実施形態においては、図3に示す上記第3実施形態において、表面材1の上面に防湿層51が被覆するとともに、代用の裏面材として用いられたガラス繊維紙42からなる抗張材4の外表面にも防湿層52を被覆したものである。
【0038】
上記防湿層51、52としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等公知の熱可塑性樹脂をシート状に成形したオレフィン系シートもしくはオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。上記防湿層51、52を設けることによって、雰囲気空気中の水分が表面材1や裏面材2と兼用して用いられた抗張材4に浸透することを防ぐため、温度による表面材1や裏面材2の伸長、収縮の抑止に加えて、湿気による伸長、収縮をも防いで、さらに寸法安定性に優れた建材パネルDを得ることができる。
【0039】
上記した実施形態においては、本願発明の建材パネルを室内と室外とを隔てる外装用として用いた場合について述べたが、外装用のみならず内装用、例えば、エアコンを備えたリビングルームを室内側とし、廊下やトイレ等の温度調整が十分でない室内空間を各実施例における室外として、室内空間の間仕切り用として用いてもよい。
【0040】
さらに本願発明に係る建材パネルは、他の建材、例えば石膏ボード、化粧合板、アルミ建材等と複合して用いることも可能である。このように他の建材と複合させることにより、本願発明の建材パネルの有する薄型で断熱性の優れた特性と他の建材の有する遮音性等の特性を組み合わせることによって、さらに優れた建材パネルとすることができる。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
A 本願発明の第1実施形態に係る建材パネル
B 本願発明の第2実施形態に係る建材パネル
C 本願発明の第3実施形態に係る建材パネル
D 本願発明の第4実施形態に係る建材パネル
E 断熱材が充填された公知の建材パネル
W 枠体
1 表面材
2 裏面材
3 断熱材
31 真空断熱材
4 抗張材
41 抗張材であるガラスネット
42 抗張材であるガラス繊維紙
51 防湿層
52 防湿層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材からなる枠体の表面側に取着される表面材と該枠体の裏面側に取着される裏面材とからなり、上記表面材と枠体との間および裏面材と枠体との間にはそれぞれ抗張材を介装するとともに、上記枠体と抗張材とで形成される空間には断熱材が充填されてなる建材パネル。
【請求項2】
上記断熱材の少なくとも一部に真空断熱材が使用されてなる請求項1に記載の建材パネル。
【請求項3】
上記表面材と裏面材とをそれぞれ防湿層で被覆してなる請求項1に記載の建材パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67973(P2013−67973A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206196(P2011−206196)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術           開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建           材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条           の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】