説明

建材等の表面の熱変成加工方法および熱変成加工装置

【課題】 光線を利用して建材等の表面の機械的性質の改良または外観改善をする方法を提供する。
【解決手段】 熱線性光源11から放射される熱線を有焦点反射鏡12を介して収斂性光束Lに変換し、この収斂性光束Lの焦点スポットLS近傍において収斂性光束Lの光軸LXに直交する方向にワークWをX−Y移動または回転移動させながらワークWの表面を収斂性光束Lの焦点スポットLSに被曝させ、ワークWの内部に熱的なダメージを与えることなくワークWの表面にのみ熱変成層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材等の表面の機械的性質の改善および外観改良を目的とし、熱線性光源を収斂性光束とした場合の焦点位置近傍に発生する特殊な性質の熱作用を利用する手段によって、建材等の内部に加わる熱的負担を最小限に抑えながら、その表面のみを選択的に熱変成加工することができる、建材等の熱変成加工方法および建材等の熱変成加工装置に関する。
【0002】
なお、本発明において「建材等」とは、加工対象とするワークの代表例を示している。本発明の実施に用いる熱線性光源による収斂性光束は、利用可能な温度範囲が極めて広く、建材等以外の各種のワークや熱的披検体についての熱間加工や熱負荷試験等に応用することが可能であり、その対象を特定することが困難であることにより、建材等を代表例として掲げ、本発明が利用される産業分野を幾分とも明確にしようとするものである。
【背景技術】
【0003】
本発明が加工対象とする個々の建材等を例示して説明する。ブロック塀等に使用されるコンクリートブロックは、廉価であって工事に際しての工期も短期間で済むという利点を有する。しかし、コンクリートブロックは、殆ど流動性を有しない程度に硬練りしたコンクリートを加圧下において金型によって短時間で強引に成型する製品であることから、内部空隙が粗大であって脆く、地肌も粗くかつ外観的についてもいかにも貧相である。また、透水率が大きく酸性雨等によって比較的早期に初期性能を失う。このようなコンクリートブロックの機械的性質および外観を改善する簡単な方法は、現時点では提供されていない。
【0004】
生コンクリートを型枠成形した場合の地肌は、上記コンクリートブロックの地肌に比べれば格段に良好であり、ウレタン塗装することもできる。したがって、地下駐車場等の用途においては、通常、打ち放しの状態で使用されている例が多い。しかし、衆目に触れる場所においては何らかの内外装仕上げが必要である。内装仕上げの例としては、人口大理石や化粧合板の貼付、石膏プラスタボードおよびクロスの貼付等が代表的である。また、外装仕上げとしては、タイルやレンガ板の貼り付けが多く見受けられる。
【0005】
集成材用途に利用できない選定漏れの米松等からなる構造用合板は、廉価で強度にも優れているが、ラワン合板と異なり、年輪や節くれの存在による表面の凹凸が顕著である。構造用合板における表面の凹凸は、例えば、コンクリート打設用の型枠として使用する場合には、コンクリートの地肌に転写されて現れ、壁紙やクロスを貼付しても隠蔽することができないため、その利用価値を大きく損なっている。ただし、この合板における年輪はきわめて明確であり、この点に着目して表面を焼き拭き仕上げとした使用例が見られる。焼き拭き仕上げによって表面の凹凸が一層顕著になるとともに、黒茶色の落ち着いた色調を伴う特有の風合いを呈する。なお、焼き拭き仕上げには、ブタンやプロパンを燃料とするバーナ装置が使用されることが多く、焼き過ぎず、かつ焼き不足なくといった内容の熟練を要する。
【0006】
次に、建材等以外の本発明の加工対象例を挙げる。例えば、ブロンズ像の制作は、通常、実体的な形状の消失鋳型を利用してメス型である鋳型を製作し、この鋳型に溶融ブロンズを流し込んで冷却し、その後に鋳型を割って成形されたブロンズ像を得るという作業内容である。いわゆるロストワックス法である。また、例えば、瀬戸焼、信楽焼、萩焼、美濃焼等の伝統的な焼き物、および、これらの産地でそれぞれの技法を利用して行われる工芸品的または創作的焼物は、通常、粘土を所定の形状に成形してなる生地を前焼きし、前焼きした生地に採釉し、これをより高温で本焼きすることによって製造される。仕上がり製品の地肌の風合いや発色の具合は、経験によっておおむね推定することはできるものの、仕上がり製品を修正することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した建材等および建材等の製法における各々の長所を損ねることなく、それらの表面の機械的性質の改善、外観的改良およびそれらの製法における不都合点を解消することを目的とするものであり、従来、本発明に類似する技術は提供されていない。より具体的には、コンクリートブロックの表面を美麗に変質させるとともに、強度を高め、透水性を弱めることであり、生コンクリートの打ち放し地肌に関しては、タイルやレンガ等を貼付することなく美麗な地肌に改質することであり、複雑な工程を経ることなく簡単にブロンズ仕上げを実現することであり、焼き物については、本焼き後にも表面の風合い等を自由に修正等することができる多用途的な熱変成加工方法および熱変成加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための手段として、本発明は、次のような構成を採用する。
【0009】
本発明の請求項1に記載の建材等の熱変成加工方法は、熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、この収斂性光束の焦点スポット近傍において収斂性光束の光軸に直交する方向にワークをX−Y移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする。
【0010】
上記構成において、熱線性光源から不定方向に放射される熱線は、有焦点反射鏡によって、焦点に向かう方向性を有する収斂性光束に変換される。したがって、有焦点反射鏡の焦点位置に熱線の密度が高められた焦点スポットを形成することができる。ここで形成される焦点スポットは、熱源が光であるために、電源投入後、瞬時に最高温度にまで立ち上がるとともに、電源排除または光線の中間遮断によって瞬時に立ち下げることができる。また、空気は、光の伝播媒体に過ぎないので、焦点スポットに物体を置かない限りは温度上昇が生じない。さらに、熱線の密度が熱線性光源からの距離の2乗に正確に反比例するという特殊な性質を有する。ワークは、収斂性光束の焦点スポット近傍において、収斂性光束の光軸に直交する方向に移動させながら焦点スポットによって被曝される。すなわち、ワークは、収斂性光束における最も熱線密度の高い領域を利用し、この領域においてX−Y移動させることによって、結果として、収斂性光束の焦点スポットによってワークの表面を走査するように被曝させることができる。なお、この熱変成加工方法は、ワークの平面を加工するのに適用され、熱線性光源の出力容量は、ワークの融点付近に調節するものとする。また、X−Y移動に際しての送り速度は、ワークの表面が溶融し始めると同時に焦点スポットの通過が終了する程度の速度に設定することが好ましい。そして、上記した収斂性光束に特有の熱作用によって、焦点スポットが通過すると同時にワークに対する加熱作用が消失するので、ワークの内部に熱的損傷を与えることなく、その表面のみを熱変成させることができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の建材等の熱変成加工方法は、熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、該収斂性光束の焦点スポット近傍に位置決めしたワークに対し、収斂性光束をワークの表面に沿ってX‐Y移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする。
【0012】
本構成は、請求項1に記載の構成が熱線性光源に対してワークをX−Y移動させるのに対して、ワークに対して収斂性光束をX−Y移動させるという点が異なる。ワークが既設の建造物等であって移動させることができないものである場合においても、本発明の方法を適用することができるという利点がある。
【0013】
本発明の請求項3に記載の建材等の熱変成加工方法は、熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、この収斂性光束の焦点スポット近傍において収斂性光束の光軸に直交する向きの回転軸を中心にワークを回転させるとともに回転軸に沿って移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、回転するワークの表面は収斂性光束の焦点スポットに対して周方向と軸方向に移動するので、円柱状や円筒状のワークの表面を走査するように万遍なく焦点スポットに曝すことができる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の建材等の熱変成加工方法は、ワークの表面に熱変成対象組成物を付与した後、ワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによって母材であるワークの表面に母材とは異質の熱変成層を形成することを特徴とする。
【0016】
ワーク自体の表面を熱変成させた場合に良好な外観を得ることができない場合や、ワーク自体を熱変成加工方法させるには過分の熱容量を要するような場合において、前処理としてワークの表面に、例えば、低温で溶融し、しかも美麗な外観を得られる熱変成対象組成物を付与しておくことによって、経済的にかつ効率よく本発明の熱変成加工方法を実施することができるとともに、加工後のワークの外観は、熱変成対象組成物によって決定するので、例えば、石膏像やモルタル像を母材として銅合金粉を含む熱変成対象組成物を適用することによって、石膏像やモルタル像をブロンズ像のような外観に仕上げることが可能となる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の建材等の熱変成加工装置は、熱線性光源としての放電ランプに、放電ランプから放射される熱線を収斂性光束に変換する有焦点反射鏡を組み合わせてなる光源装置と、光源装置における収斂性光束の焦点スポット近傍においてワークを搭載するX‐Yテーブルまたはロータリテーブルを備え、そして、光源装置とX‐Yテーブルまたはロータリテーブルとは、距離調節自在に組み合わされていることを特徴とする。
【0018】
上記構成における光源装置は、放電ランプと有焦点反射鏡との組合せによって、焦点スポットを有する収斂性光束を作り出すことができる。なお、このような組合せによって作られる焦点スポットは、通常、放電ランプが完全な点光源であり得ないこと、および、有焦点反射鏡の収差に起因して完全な点とはならず、一定の面積を伴うスポット光となる。そして、この焦点スポットには、放電ランプから不定方向に放射された熱線が、焦点スポットの面積に略反比例しながら収束する。焦点スポット近傍に設置されるX−Yテーブルまたはロータリテーブルは、ワークをX−Y移動または回転移動させることでワークの外形に応じてワークの表面を焦点スポットに被曝させることができる。この際、光源装置とX−Yテーブルまたはロータリテーブルとの間の距離を変化させることによって、ワークの表面位置を焦点スポットの位置に一致するように調節することができる。
【0019】
本発明の請求項6に記載の建材等の熱変成加工装置は、光源装置を複数基備え、これらの複数基の光源装置によってワークの異なる加工箇所または同一の加工箇所を同時加工可能としたことを特徴とする。
【0020】
上記構成を有する熱変成加工装置は、ワークの異なる表面位置を複数の光源装置に分担させて加工することができるので、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、X−Yテーブルまたはロータリテーブルの送りストロークについても、各光源装置が担当する範囲で足りるので、X−Yテーブルまたはロータリテーブルを小型化することができる。また、複数基の光源装置によってワークの同じ加工箇所を加工する場合においては、複数基の光源装置の焦点スポットが同じ加工箇所に照射され、焦点スポットにおける熱線密度が高められるので、1基の光源装置では処理できない高融点ワークを熱変成加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の建材等の熱変成加工方法は、ワークの外部で発生させた熱をワークに熱伝導するのではなく、空間を伝播する光線である熱線を焦点スポットに収斂させてワークに照射することにより、ワークの表面において発生する熱を利用するので、ワークの内部に熱的損傷を与えることなくその表面のみを熱変成加工し、ワークの表面の機械的性質の改良および外観の改善をすることができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の建材等の熱変成加工装置は、熱線性光源と有焦点反射鏡との組合せによる光源装置によって焦点スポットを有する収斂性光束を形成することができるとともに、光源装置にX−Yテーブルまたはロータリテーブルを組み合わせることにより、焦点スポットに被曝させるワークの表面位置を機械的に規則正しく移動させることができるので、ワークの表面を万遍なく熱変成加工することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を引用しながら本発明に係る建材等の熱変成加工方法および熱変成加工装置の実施の形態を説明する。なお、熱変成加工方法は、熱変成加工装置の作用ないし使用方法として説明する。
【0024】
本発明の熱変成加工装置は、メインフレーム50を組み立て、このメインフレーム50によって光源装置10を吊下げ支持するとともに、光源装置10の下方に作業台60を介してX−Yテーブル30を設置してなる(図1)。
【0025】
メインフレーム50は、アングルやH型鋼を柱55,55や梁材とする鉄骨骨組み構造物である。メインフレーム50の天井梁51には、ベースボード53を有するサブフレーム52が下垂姿勢で取り付けられ、サブフレーム52のベースボード53には、リニアスライド機構20を介して光源装置10が下向き姿勢で搭載されている。リニアスライド機構20は、左右一対のガイドレール22,22にスライド自在に組み付けたスライダ21を駆動モータM1を備える送りねじ23で往復直動させる方式のものであり、光源装置10は、スライダ21に搭載されている。この結果、光源装置10は、作業台60上のワークWに対する関係において距離調節自在である。
【0026】
作業台60は、重作業用の堅牢なワークテーブルであり、取り扱うワークWに応じて任意に選定することができる。作業台60上のX−Yテーブル30の基本構造は、2基のリニアスライド機構を直交方向に組み合わせた構造である。具体的には、X方向送り機構31のスライダ32上に、スライドテーブル34を備えるY方向送り機構33を組み付けたものである。したがって、スライドテーブル34上のワークWは、X−Y移動することができる。また、ワークWとの関係における光源装置10は、Z方向に移動することができる。なお、X−Yテーブル30におけるX方向送り速度と送り範囲およびY方向送り速度と送り範囲は、図示しない制御コンソールによって取り扱うワークWの種類に応じてプログラムすることができる。また、リニアスライド機構20による光源装置10のZ方向の送り量は、ワークWの厚みに応じてプログラムすることができる。
【0027】
光源装置10は、熱線性光源11としての不活性ガスを封入した放電ランプ11Aと有焦点反射鏡12を鏡筒15内に仕込んでなる(図2)。鏡筒15は、支持筒5Aとガイド筒5Cとバックプレート5Bとからなる。支持筒5Aは、有焦点反射鏡12および放電ランプ11Aを内部支持するとともに、光源装置10全体を外部支持する部分である。ガイド筒5Cは、有焦点反射鏡12で反射されなかった光成分を前方に振り向けるとともに、放電ランプ11Aからの光が操作者等を直射しないように遮光する機能を有する。また、バックプレート5Bは、鏡筒15の後部の開口を塞ぐものであり、光を反射する機能は負担していない。
【0028】
光源装置10における放電ランプ11Aは、支持筒5A内に固定する有焦点反射鏡12と支持ステー13によって位置調節可能に設置されている。有焦点反射鏡12は、内面に銀を蒸着してなるほぼ半楕円の断面形状を有する反射鏡であり、中心部に円筒形のフランジ12Fを有する。この有焦点反射鏡12は、周縁部を支持筒5Aに内接する状態で固定されている。一方、支持ステー13は、放射状に配置された3脚を有するステーであって、中心部に円筒形のフランジ13Fを有する。この支持ステー13は、3脚を介して支持筒5Aに内接する状態で有焦点反射鏡12の前面に配置されている。
【0029】
熱線性光源11として用いられる放電ランプ11Aは、両端に端子筒を備え、この端子筒を有焦点反射鏡12のフランジ12Fと支持ステー13のフランジ13Fに挿通させた状態でねじ固定されている。有焦点反射鏡12に対する放電ランプ11Aの位置は、鏡筒15のバックプレート5Bを取り外して放電ランプ11Aを光軸LXに沿って移動させることによって簡単に調節することができる。有焦点反射鏡12は、ほぼ2メートル前方位置に焦点Fを有し、放電ランプ11Aから放射される熱線を焦点Fに向かう収斂性光束Lには変換することができる。この際、収斂性光束Lは、焦点Fの位置において点とはならず、一定の面積を有するスポット光である焦点スポットLSを形成する。なお、放電ランプ11Aの位置調節は、通常、焦点スポットLSの面積が最小となるように調節する。
【0030】
なお、本実施の形態において使用している放電ランプ11Aは、バルブ内にクセノンガスを封入してなるクセノン球であるが、次のような理由による。光線が奏する基本的作用としては、(a)光化学作用、(b)光熱作用、(c)光電子作用、(d)光化学作用(二光子反応)が知られている。本発明は、これらの作用のうちの(b)光熱作用を利用するものである。そして、光熱作用は、光成分のうちの近赤外領域から遠赤外領域に属する、いわゆる熱線成分による作用であるところ、各種のガス封入ランプを比較検討した結果、クセノンを封入したものにおいて、最も広範囲に熱線成分が含まれることが判明したためである。また、放電発光の方式を選択したのは、大出力のものが市場に提供されているという理由による。例えば、本実施の形態において出力6kWのクセノン球を用いた場合、焦点スポットLSにおいて照射対象物の表面を少なくとも1500℃に瞬時に昇温することができる。
【0031】
上記実施の形態に係る建材等の熱変成加工装置は、X−Yテーブル30上にワークWを被加工面を上にして搭載し、被加工面に光源装置10から照射される収斂性光束Lの焦点スポットLSが結像するようにリニアスライド機構20を介して光源装置10の上下位置を調節した後、X−Yテーブル30を作動させる手順で使用する。X−Yテーブル30を作動させると、ワークWの被加工面は、焦点スポットLSの結像位置において、収斂性光束Lの光軸LXに直交する向きに往復移動し、被加工面は焦点スポットLSによって被曝される。この結果、ワークWの被加工面に、ワークWの種類に応じた熱変成層を形成することができる。ワークWが例えば、コンクリートブロックである場合には、コンクリートブロックを構成している組成物のうち、融点の低い組成物が溶解して融点の高い組成物間に浸透したような状態が実現される。この結果、コンクリートブロックの被加工面は、ガラス光沢感を有する美麗な表面に変化するとともに、透水性を失う。また、破壊強度も向上する。
【0032】
本発明の建材等の熱変成加工装置は、定位置に位置決めされたワークWに対して、光源装置10を移動させるように構成することもできる(図3)。この構成におけるメインフレーム50の左右の柱55,55の高所位置には、水平姿勢の天井走行レール5L,5LがX方向に向けて配置され、左右一対の天井走行レール5L,5L間には、走行輪5R,5Rを介して可動梁54が横設されている。可動梁54には、駆動モータM2が搭載されており、天井走行レール5L,5Lに沿ってX方向に自走することができる。
【0033】
また、可動梁54には、独立の駆動モータを備える走行ボード56が走行輪6R,6Rを介して組み付けられている。この走行ボード56は、可動梁54に沿ってY方向に自走することができる。さらに、走行ボード56には、前実施の形態に用いたのと同様のリニアスライド機構20が上下方向、すなわち、Z方向に向けて取り付けられ、光源装置10は、リニアスライド機構20のスライダ21に下向き姿勢で搭載されている。したがって、光源装置10は、X、YおよびZ方向に移動することができる。
【0034】
一方、ワークWは、作業台60のテーブル面上に固定的に位置決めされている。なお、同図は、同一規格のワークW…を同時加工する場合を例示している。ワークW…の被加工面に収斂性光束Lの焦点スポットLSを合焦させ、光源装置10をX−Y移動させるようにして使用することができる。なお、光源装置10は、リニアスライド機構20のスライダ21に水平姿勢で搭載することもできる外、搭載姿勢を変更することができるように搭載することも容易である。
【0035】
本発明の建材等の熱変成加工装置は、複数基の光源装置10を用いて、ワークWの異なる加工箇所を同時加工またはワークWの同じ加工箇所を同時加工するように構成することができる(図4)。なお、同図に示す熱変成加工装置は、ワークWの同じ加工箇所を同時加工する場合の例である。
【0036】
本実施の形態においては、2基の光源装置10,10を使用している。光源装置10が2基であるということ以外の構成は、前実施の形態におけると同様である。ただし、光源装置10を2基搭載するため、リニアスライド機構20のスライダ21が大型化されている。2基の光源装置10,10は、鉛直線に対して対称配置され、かつ、焦点スポットLSを共有するように等角度配置されている。したがって、焦点スポットLSにおける熱線の密度は、光源装置10が1基の場合に比べて略2倍に達する。なお、本実施の形態の熱変成加工装置の使用要領は、前実施の形態におけると同様であるが、加工対象としては、より高融点の物体を熱変成加工することができる。また、2基の光源装置10,10を焦点スポットLSを共有しないように配置してワークWの異なる加工箇所を同時に加工することができることは、無論である。
【0037】
本発明の建材等の熱変成加工装置は、光源装置10とロータリテーブル40との組合せを主体として構成することができる(図5)。光源装置10は、ガイドレール4L上に走行自在に設置された台車兼用の電源装置EB上にブラケット15Bを介して鏡筒15部分を支持して水平姿勢で取り付けられている。ただし、光源装置10は、ブラケット15Bの支持軸を中心として一定範囲で上下に首振り動作をすることができる。
【0038】
ロータリテーブル40は、ガイドフレーム41とガイドフレーム41内に上下動自在に内装された可動フレーム42と、可動フレーム42上に回転自在に取り付けられた回転テーブル43とからなる。ガイドフレーム41の底面には、駆動モータM4によって回転駆動する送りねじ軸4Bが立設され、可動フレーム42は、ナットブラケット4Nを介して送りねじ軸4Bに螺合している。すなわち、送りねじ軸4Bが回転駆動されることによって、可動フレーム42は上下動する。回転テーブル43は、その裏面側にリングギヤ4Gを備え、リングギヤ4Gは、可動フレーム42に搭載する駆動モータM3によって駆動される。したがって、回転テーブル43は、駆動モータM3によって回転しながら駆動モータM4によって上下動することができる。
【0039】
上記実施の形態に示される熱変成加工装置は、例えば、円筒状、円柱状、球状、碗状等、いわゆる軸ものを加工対象とすることができる。これらのワークWは、通常、その中心軸を回転テーブル43の軸に一致させるようにして回転テーブル43上に位置決めする。次いで、ガイドレール4Lに沿ってこそ10を移動させて、収斂性光束Lの焦点スポットLSをワークWの表面に合焦させる。その後は、ワークWの種類に応じて回転テーブル43の回転速度と上下方向の送り速度を調節することによってワークWの表面全体WP焦点スポットLSに被曝させて熱変成加工することができる。
【0040】
上記いずれの実施の形態に示す熱変成加工装置においても、ワークWを熱変成加工するに際しては、前もってワークWの表面に熱変成対象組成物HMを付与した後に加工を実施することができる((図6(A),(B))。例えば、同図のワークWが石膏ブロックであって、熱変成対象組成物HMが銅合金粉末である場合においては、まずワークWの表面に適量の熱変成対象組成物HMを均一に振りかける(図6(A))。次いで、収斂性光束Lの焦点スポットLSを熱変成対象組成物HMに合焦させて加工を実施すると、熱変成対象組成物HMは短時間内に溶融状態となり、ワークWの表面を銅合金で被覆することができる(図6(B))。なお、銅合金のように融点の低い金属の場合は、焦点スポットLSの温度に十分の余裕があるため、ワークWの表面に凹凸がある場合においても、その都度ワークの凹凸に応じて焦点スポットを調節する必要はない。また、ワークWの形状によっては、単に熱変成対象組成物HMを振りかけた状態で維持することができない場合があるが、そのような場合には、熱変成対象組成物HMを適当なバインダを用いて練り上げて使用することもできる。
【0041】
以上の説明における光源装置10に関しては、焦点スポットLSの面積を絞り込むためのレンズを組み合わせることができるものとする。これによって精密加工分野への適用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】建材等の熱変成加工装置の実施の形態を示す正面図である。
【図2】上記実施の形態における要部の断面図である。
【図3】建材等の熱変成加工装置の他の実施の形態を示す正面図である。
【図4】建材等の熱変成加工装置の他の実施の形態を示す正面図である。
【図5】建材等の熱変成加工装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【図6】建材等の熱変成加工方法の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
W ワーク
F 焦点
L 収斂性光束
LS 焦点スポット
HM 熱変成対象組成物
10 光源装置
11 熱線性光源
11A 放電ランプ
12 有焦点反射鏡
30 X−Yテーブル
40 ロータリテーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、該収斂性光束の焦点スポット近傍において収斂性光束の光軸に直交する方向にワークをX−Y移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする建材等の熱変成加工方法。
【請求項2】
熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、該収斂性光束の焦点スポット近傍に位置決めしたワークに対し、収斂性光束をワークの表面に沿ってX‐Y移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする建材等の熱変成加工方法。
【請求項3】
熱線性光源から放射される熱線を有焦点反射鏡を介して収斂性光束に変換し、該収斂性光束の焦点スポット近傍において収斂性光束の光軸に直交する向きの回転軸を中心にワークを回転させるとともに回転軸に沿って移動させながらワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによってワークの表面に熱変成層を形成することを特徴とする建材等の熱変成加工方法。
【請求項4】
ワークの表面に熱変成対象組成物を付与した後、ワークの表面を収斂性光束の焦点スポットに被曝させることによって母材であるワークの表面に母材とは異質の熱変成層を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の建材等の熱変成加工方法。
【請求項5】
熱線性光源としての放電ランプに該放電ランプから放射される熱線を収斂性光束に変換する有焦点反射鏡を組み合わせてなる光源装置と、該光源装置における収斂性光束の焦点スポット近傍においてワークを搭載するX−Yテーブルまたはロータリテーブルを備え、
前記光源装置とX−Yテーブルまたはロータリテーブルとは、距離調節自在に組み合わされていることを特徴とする建材等の熱変成加工装置。
【請求項6】
前記光源装置を複数基備え、複数基の光源装置によってワークの異なる加工箇所または同一の加工箇所を同時加工可能としてなる請求項5に記載の建材等の熱変成加工装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−7361(P2008−7361A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178256(P2006−178256)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(392031620)
【出願人】(594079349)
【出願人】(305001917)有限会社アークコーポレーション (6)
【出願人】(501342366)株式会社サトカンパニー (5)