説明

建材

【課題】 無垢材を用いつつ外部からの熱を蓄熱することのできる建材を提供する。
【解決手段】 木材中に薬液を含浸させてなり、室内において用いられる建材において、木材は無垢材からなると共に、室内露出面2a、3aを有して構成され、薬液は潜熱型蓄熱剤を含む。また、潜熱型蓄熱剤としては、ポリエチレングリコールを用い、建材は床材2や柱材3として住宅1内に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内において用いられる建材に関し、特に潜熱型蓄熱剤を含浸させてなり蓄熱を行うことのできる建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内においては、床材として木材が多く用いられている。床材として木材を用いる際には、床暖房システムを採用する場合がある。床暖房システムは、床内部に面ヒータを設け、床表面を木材により形成された板材で覆ってなるものであり、エネルギー効率をよくするために面ヒータと板材の間に蓄熱材を設けることが多い。
【0003】
一方、床暖房システムを用いる場合には、暖房を使用しているときと使用していないときの床材の温度変化が大きいので、通常の無垢材を床材とすると、温度変化に伴う木材の乾燥度合いの変化により反りなどの変形を生じる。そのため、床材としては変形しにくい合板が広く用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、床暖房システムを用いつつも、床材として自然の風合いを有した無垢材を用いたいというニーズが存在する。また、床暖房システムには蓄熱材を用いているものの、床内部に設けられているために、面ヒータからの熱を蓄熱することはできても、太陽光からの熱など外部からの熱を蓄熱することはできなかった。また、床材に限らず他の部材においても、外部からの熱を蓄熱するものは存在しなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、無垢材を用いつつ外部からの熱を蓄熱することのできる建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る建材は、木材中に薬液を含浸させてなり、室内において用いられる建材において、
上記木材は無垢材からなると共に、室内露出面を有して構成され、上記薬液は潜熱型蓄熱剤を含んでなることを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係る建材は、上記潜熱型蓄熱剤はポリエチレングリコールであることを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係る建材は、上記木材は薄板状に形成されて片面を上記室内露出面とした床材または壁材として構成することを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係る建材は、上記木材は角柱状または円柱状に形成されて周面を上記室内露出面とした柱材として構成することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建材によれば、無垢材である木材中に潜熱型蓄熱剤を含浸させていることにより、室内露出面からの熱を建材内部に蓄熱することができ、室内の暖房効率を向上させることができる。また、潜熱型蓄熱剤を木材中に含浸させていることにより、寸法安定性を向上させて、温度変化に伴う木材の乾燥度合いの変化による変形をも防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1は、本実施形態における建材を住宅に用いた状態の概念図を示している。本実施形態における建材は、住宅1内において床材2及び柱材3として用いられるものである。床材2とする場合には、無垢材を薄板状に形成しており、柱材3とする場合には、無垢材を角柱状または円柱状に形成している。床材2は、片面が室内露出面2aとなり、柱材3は、周面が室内露出面3aとなり、それぞれ住宅1外部または内部からの熱を受けることができるようにされている。
【0012】
これら床材2及び柱材3は、無垢材からなると共に、潜熱型蓄熱剤を含む薬液を内部に含浸させてなるものである。本実施形態では、薬液に含む潜熱型蓄熱剤としてポリエチレングリコールを用いている。
【0013】
ポリエチレングリコールを含浸された床材2及び柱材3は、図1に示すように住宅1に窓1aを介して差し込む日光からの熱を吸収する。ポリエチレングリコールの融点は、暖房時の温度範囲で相変化するように適宜設定する。これによって、日光からの熱を吸収することにより、ポリエチレングリコールは固体から液体に相変化し、その際の潜熱として大きな熱量を蓄熱することができる。また、ストーブやエアコンなど室内の暖房機器からの熱も吸収して蓄熱することができる。
【0014】
図2には、気温が低下した場合における住宅の概念図を示している。昼間に日光からの熱を蓄熱した床材2及び柱材3は、夜間になって気温が低下すると、室内露出面2a、3aから室内に対して蓄熱した熱を放熱する。これにより室内の温度変化は外気温の低下に比べると小さくすることができ、したがって暖房効率を向上させることができる。また、室内の暖房機器からの熱も蓄熱できるので、暖房効率をさらに向上させることができる。
【0015】
また、床材2については、床暖房システムを組み込んでいる。図3には、床暖房システムを組み込んだ床の断面図を示している。この図に示すように、建物躯体10と床の表面である床材2との間は、根太13を介して空間が形成されている。この空間に面ヒータ12を設け、さらに面ヒータ12を挟むように蓄熱材11を設けている。また、床材2は合板14を介して根太13に支持されている。
【0016】
面ヒータ12は、面状に加熱できるものであればよく、電気ヒータによるものや、温水により加熱を行うものであってもよい。また、蓄熱材11としては、酢酸ナトリウム3水塩などの潜熱型蓄熱剤を用いてもよいし、水やコンクリートなどの顕熱型蓄熱材を用いてもよい。
【0017】
面ヒータ12から発生する熱は、蓄熱材11に蓄熱されて床材2を介して室内に放熱される。蓄熱材11を設けていることにより、室内の温度変動を小さくすることができ、また面ヒータ12の電源または温水供給を停止した後でも放熱を続けて、温度を一定水準に保つことができる。
【0018】
ここで、上述のように床材2は、ポリエチレングリコールが含浸されていて蓄熱をすることができるので、蓄熱材11による蓄熱と併せてより高い蓄熱効果を発揮することができる。また、グリコール類を含浸させた木材は、未処理の木材に比べて熱伝導率が高くなるため、効率よく蓄熱をなすことができる。
【0019】
さらに、ポリエチレングリコールは、蓄熱材としての性質の他に、木材の寸法を安定させる効果も有している。したがって、ポリエチレングリコールを含浸させた床材2は、変形しやすい無垢材からなるにもかかわらず、床暖房の温度変化に伴う木材の乾燥度合いの変化による変形が生じにくい。
【0020】
次に、本実施形態における床材2や柱材3の製造方法について説明する。図4には、潜熱型蓄熱剤を含浸させる装置の概要図を示している。この装置は、処理槽20に木材を納め、処理槽20を注薬缶21に挿入して処理を行うものである。木材を薬液中に浸した状態で加圧することで、短時間に木材内部まで薬液を含浸させることができる。
【0021】
注薬缶21は、加圧可能な圧力容器として形成されており、空気圧縮機22と減圧装置23とが接続されている。処理槽20は、木材を納めて薬液に浸すことができる水槽であればよく、FRPなどで形成することができる。
【0022】
製造工程は以下の通りである。まず、予め無垢材を加工して床材2または柱材3の形状に近い形状に形成しておく。これを処理槽20内に固定し台車で注薬缶21に挿入する。処理槽20を注薬缶21に挿入したら、処理槽20内に薬液を満たし、注薬缶21を密閉する。
【0023】
次に、木材中に残存している空気を除去するために、減圧装置23により注薬缶21内を減圧する。その後、空気圧縮機22により注薬缶21内を加圧して、薬液に浸された木材中に薬液を含浸させる。
【0024】
加圧が終了したら、注薬缶21内を大気圧まで解圧し、密閉を解除して処理槽20を注薬缶21から取り出す。その上で床材2または柱材3の正確な形状に仕上げ加工する。このようにして得られた床材2または柱材3を住宅の建材として用いることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこの実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では、床暖房システムにおいて、蓄熱材11を設けているが、床材2が蓄熱効果を有しているので、蓄熱材11を設けないようにすることもでき、この場合には蓄熱材11が不要であるためにコストダウンを図ることができる。
【0026】
また、本実施形態では、空圧方式により薬液の注入処理を行っているが、処理方法はこれに限られず、例えば液圧方式などを用いることもできる。さらに、本実施形態では潜熱型蓄熱剤としてポリエチレングリコールを用いているが、その他蓄熱効果を有するグリコール類をも用いることができる。
【0027】
さらにまた、本実施形態では建材として床材2または柱材3を形成しているが、無垢材を床材2と同様に薄板状に形成することで壁材としても形成することができる。床材2や柱材3と併せて、または単独で潜熱型蓄熱剤を含浸させた壁材を建材として用いることにより、壁面において建物外部または室内の暖房機器からの熱を蓄熱することができ、更なる暖房効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態における建材を用いた住宅の概要図である。
【図2】図1において外気温が低下した場合の概要図である。
【図3】床暖房システムを備えた床の断面図である。
【図4】本実施形態における建材の製造装置の概要図である。
【符号の説明】
【0029】
1 住宅
1a 窓
2 床材
2a 室内露出面
3 柱材
3a 室内露出面
10 建物躯体
11 蓄熱材
12 面ヒータ
20 処理槽
21 注薬缶
22 空気圧縮機
23 減圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材中に薬液を含浸させてなり、室内において用いられる建材において、
上記木材は無垢材からなると共に、室内露出面を有して構成され、上記薬液は潜熱型蓄熱剤を含んでなることを特徴とする建材。
【請求項2】
上記潜熱型蓄熱剤はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載の建材。
【請求項3】
上記木材は薄板状に形成されて片面を上記室内露出面とした床材または壁材として構成することを特徴とする請求項1または2記載の建材。
【請求項4】
上記木材は角柱状または円柱状に形成されて周面を上記室内露出面とした柱材として構成することを特徴とする請求項1または2記載の建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−241826(P2006−241826A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58694(P2005−58694)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591228708)株式会社アルコン (1)
【出願人】(594091042)日本床工事工業株式会社 (2)
【出願人】(505079095)矢島木材乾燥株式会社 (1)
【Fターム(参考)】