説明

建材

【課題】安価でかつ意匠性及び保温性を有する建材を提供する。
【解決手段】金属板からなる基板上に、芯材、金属板及び樹脂シートが、この順に積層されている建材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート積層金属板を有する建材に関する。より詳細には、住宅や構造物において、床材、天井材あるいは壁材などの建材などとして安価に用いることができる樹脂シート積層金属板を有する建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築材料に使用される建材としては、ラワン材に、下から順次HDF(高密度ファイバーボード)、突板を積層し、表層からHDFまで切り込みが入るようにV字カットがされていた。
しかし、近年ラワン材が不足してきている一方、ラワン材が建材として使えるようになるまでラワン材が成長するには数十年の期間が必要であり、ラワン材が高価格となってきた。また、HDF(高密度ファイバーボード)もラワン材から作られていて、建材が高価なものとなってきた。安価な建材を作る方策として、代替材として安価で成長が速いユーカリやアカシア等の植林木合板を使うことも考えられるが、これらの植林木合板はねじれや節が多く、吸水によって形状が変化しやすく、建材として使うことが困難であった。
一方、金属板の表面に、意匠性を持った化粧紙を接着剤を介して積層し、さらに化粧紙の上にポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂などのトップコート層を積層した化粧紙積層金属板が提案されている(特許文献1)。又、金属板の表面に、塗装・焼付けにより形成した着色層が設けられ、その上に、粘着層、化粧紙及びトップコート層が設けられた化粧紙積層金属板が提案されている(特許文献2)。しかし、これらの化粧紙積層金属板は外部から水が浸入した場合、有機樹脂のトップコートだけでは、防水効果が小さいので、化粧紙は吸水によって変形が懸念されるとともに、これらの化粧紙積層金属板は、ラワン材などの建材の代替品として過去に用いられた例がない。
【0003】
【特許文献1】特開平11−320759号公報
【特許文献2】特開2001−9969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決することを目的として、樹脂シート積層金属板を用い、かつ安価でかつ意匠性及び保温性を有する建材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建材は、金属板からなる基板上に、芯材、金属板及び樹脂シートが、この順に積層されていることを特徴とする建材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、安価で保温性を有する木材、有機樹脂、紙などからなる芯材を使い、かつこれらの欠点である吸水による形状変化を、芯材の両面あるいは片面にある金属板が防水することによって抑えることができるので、安価でかつ意匠性及び防水性を有する建材を提供することができる。又、本発明の建材は、芯材を金属板が挟んでいるので、ねじれや節が多く、吸水性にも問題がある植林木合板を芯材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる基板は金属板からなり、好ましくは厚みが0.05〜1.0mm(より好ましくは、0.08〜0.2mm)の表面処理鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板あるいはステンレス鋼板などが適用できる。アルミニウム板、アルミニウム合金板としては、JIS H 4000に記載されたものが使える。また、表面処理鋼板として、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛合金めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、ニッケル合金めっき鋼板、銅めっき鋼板など公知の材料が使える。表面からのみの水の浸入が考えられる場合、基板はなくても良い。
この基板の表面に、ユーカリやアカシヤ等の植林木合板からなる木材(ラワン材等を用いることもできる)、有機樹脂、無機物、紙、段ボール及び発泡体からなる芯材を積層する。この場合、木材は合板でも良い。植林木合板は、安価ではあるが、節やねじれが多く、水分を吸収することによって形状が変化しやすいが、芯材を金属板が挟んでいるので、本発明ではこれらを問題なく使用することができる。同様に無機物、紙あるいは段ボールなどからなる芯材も水分を吸収すると形状が変化するが同様の理由により好適に用いることができる。発泡体として、ポリプロピレンからなる発泡体も適用できる。また、HDF(High Density Fiberboard)、MDF(Medium Density Fiberboard)なども適用できる。
芯材の厚みは、5〜24mmが好ましく、より好ましくは、9〜15mmである。
芯材は、金属板からなる基板の片面に、金属と対象とする芯材を接着することができる接着剤を用いて接着させる。このような接着剤は、当業界で公知であり、例えば、ホットメルトタイプの接着剤があげられる。
【0008】
建材として使う場合、基板は芯材を積層していない面では、接着剤を介して躯体に積層されるが、この際、鋼板を使った基板を用いる場合、IH(Induction Heatingの略字、電磁誘導加熱)工法が適用できる。すなわち、躯体表面又は基板表面に接着剤を塗布し、接着剤が介在するように躯体と基板を重ねた後、誘導加熱で、躯体と基板の間の接着剤を融解して、基板と躯体を接着する。また、逆に、誘導加熱により躯体と基板の間の接着剤を融解して、基板と躯体を分離することができる。このため、接着剤はホットメルトタイプの接着剤が望ましい。すなわち、この接着剤は、本発明の建材に使われている接着剤より融点が低いことが望ましい。このように、IH工法を用いて、本発明の建材を新しいものに容易に取り替えできる。
【0009】
次に、この芯材の上層(基板に接着していない面)に、金属板及び樹脂シートを、この順に積層する。金属板と芯材の接着には、芯材と基板の接着に用いたのと同じ接着剤を用いるのが好ましい。又、金属板と樹脂シートの接着にも公知の接着剤を用いることができるが、金属板及び樹脂シートを、この順に積層する代わりに、樹脂シート積層金属板を用いることができる。この場合には、樹脂シート積層金属板と芯材との間に接着剤を介して、金属板が芯材に接するように積層する。樹脂シート積層金属板は、樹脂シートを金属板にラミネート、あるいは溶融した樹脂を金属板に直接積層する押出しラミネートなど公知の方法によって得ることができる。芯材の両面を樹脂シート積層金属板と金属板からなる基板で積層することによって、表面及び裏面からの水の浸入を遮断することができる。また、裏面からの水の浸入がない場合、基板がなくても、表面からの水の浸入を遮断することができる。このため、水分の吸収による芯材の形状変化を抑制することができる。金属板としては、上記の基板に使う金属板と同じものが使える。樹脂シートとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂)などの公知のものが使える。ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはポリブチレンテレフタレート樹脂などが適用できる。積層する方法として、公知の方法が適用でき、例えば、熱圧着法などが使える。樹脂シートとしては、厚みが0.2〜1.0mmのものが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8mmである。このような厚みのものを用いると、後述する凹部が金属板まで達することがなく、その結果錆びにくくなるとの利点がある。
【0010】
樹脂シートの表面には突板あるいは化粧シートを積層しても良い。化粧シートとしては、片面に印刷したシートを積層するのが望ましい。印刷したシートは、印刷面を樹脂シートに接着剤等を介して積層するのが好ましい。シートは特に限定されるものではなく、要求される用途に対応して選択すべきであるが、樹脂シートが好ましい。化粧シートの厚みは0.1〜0.5mmが好ましい。
突板としては、ナラ、タモ、ハードメープル、ブナ、キリ、ケヤキ、カエデ、クス、カツラあるいはウォールナットなどの広葉樹、またはイチイ、カヤ、サワラ、ヒバ、クロマツ、杉あるいは檜などの針葉樹から形成されたものを用いるのが好ましい。又、厚みが0.1〜0.5mmであるのが好ましい。
突板を積層する場合、突板同士が接する面は、意匠の違いをわかりにくくするために凹部を入れても良い。凹部は、突板の下層にある樹脂シートまで達しても良い。凹部の深さは0.2〜1mmであるのが好ましい。突板表面及び凹部表面には、有機樹脂または塗料を塗布しても良い。有機樹脂または塗料を塗布すると、外部から水が付着しても、凹部から水が浸み込みにくくなる。凹部の形状は三角形(V字形)以外に、四角形、r形あるいは半円形でも良い。
【0011】
次に、本発明の建材の形成方法について説明する。図1、図2、図3はそれぞれ本発明の建材の実施形態の一例を示したものである。
図1に示す建材1は以下のようにして作成される。例えば溶融亜鉛めっきからなる基板上に例えば木材などの芯材を接着剤を介して積層する。次いで、芯材の上に接着剤を介して例えばポリカーボネート樹脂シートを積層した樹脂シート積層金属板を積層する。さらにポリカーボネート樹脂シートの上に接着剤を介して突板5を積層する。突板を積層後、突板同士の接合面に凹部6(V字形)に溝をポリカーボネート樹脂シートが露出するまで作る。このようにして建材を得ることができる。
【0012】
図2に示す建材1は以下のようにして作成される。例えば溶融亜鉛めっきからなる基板上に例えば段ボールなどの芯材を接着剤を介して積層する。次いで、芯材の上に接着剤を介して例えばポリエステル樹脂シートを積層した樹脂シート積層金属板を積層する。さらにポリエステル樹脂シートの上に接着剤を介して突板5を積層する。突板を積層後、突板同士の接合面に凹部6(V字形)に溝をポリエステル樹脂シートが露出するまで作る。引き続き、突板及び凹部の表面に有機樹脂または塗料を塗布することによって、塗膜7を形成し、建材を得ることができる。
【0013】
図3に示す建材1は以下のようにして作製される。例えば溶融亜鉛めっきからなる基板上に例えば木材などの芯材を接着剤を介して積層する。次いで、芯材の上に接着剤を介して例えばポリプロピレン樹脂シートを積層した樹脂シート積層金属板を積層する。このようにして建材を得ることができる。
【実施例】
【0014】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
板厚0.1mmの電気亜鉛めっき鋼板(片面のZnめっき量:20g/m2、両面めっき)からなる基板の表面に、ユーカリからなる植林木合板(厚み:11.5mm)をエポキシ系接着剤を介して積層した、この植林木合板の電気亜鉛めっき鋼板を積層していない面に、厚み0.5mmのポリエステル樹脂シートを積層した板厚0.2mmの溶融亜鉛めっき鋼板(片面の亜鉛めっき量:100g/m2、両面めっき)を、溶融亜鉛めっき面を当接し、エポキシ系の接着剤を介して積層した。さらに、ポリエステル層の表面にエポキシ系接着剤を介して板厚0.2mmの突板(材料:ナラ)を積層した。突板を積層した後、突板同士の接合箇所において、突板表面から深さ0.5mm、最表面の幅2mmのV字形に除去して凹部を作った。このようにして製造した建材の上から水をかけても、水は芯材には浸透しなかった。
【0015】
(実施例2)
板厚0.2mmの溶融亜鉛めっき鋼板(片面のZnめっき量:120g/m2、両面めっき)からなる基板の表面に、ユーカリからなる植林木合板(厚み:11.5mm)をエポキシ系接着剤を介して積層した、この植林木合板の溶融亜鉛めっき鋼板を積層していない面に、厚み0.5mmのポリエステル樹脂シートを積層した板厚0.3mmのアルミニウム合金板3003(JIS H4000)を、アルミニウムが露出した面を当接し、エポキシ系の接着剤を介して積層した。さらに、ポリエステル層の表面にエポキシ系接着剤介して板厚0.2mmの突板(材料:タモ)を積層した。突板を積層した後、突板同士の接合箇所において、突板表面から深さ0.5mm、最表面の幅2mmのV字形に除去して凹部を作った。このようにして製造した建材の上から水をかけても、水は芯材には浸透しなかった。
【0016】
(実施例3)
板厚0.1mmの電気亜鉛めっき鋼板(片面のZnめっき量:20g/m2、両面めっき)からなる基板の表面に、段ボール紙(厚み:11.5mm)をエポキシ系接着剤を介して積層した、この段ボール紙の電気亜鉛めっき鋼板を積層していない面に、厚み0.5mmのポリエステル樹脂シートを積層した板厚0.2mmの溶融亜鉛ー55%アルミニウムめっき鋼板(片面のめっき量:100g/m2、両面めっき)を、溶融亜鉛ーアルミニウムめっき面を当接し、エポキシ系の接着剤を介して積層した。さらに、ポリエステル層の表面にエポキシ系接着剤を介して板厚0.2mmの突板を積層した。突板(材料:ウォールナット)を積層した後、突板同士の接合箇所において、突板表面から深さ0.5mm、最表面の幅3mmのr形に除去して凹部を作った。このようにして製造した建材の上から水をかけても、水は芯材には浸透しなかった。
【0017】
(実施例4)
板厚0.1mmの電気亜鉛めっき鋼板(片面のZnめっき量:20g/m2、両面めっき)からなる基板の表面に、ユーカリからなる植林木合板(厚み:11.5mm)をエポキシ系接着剤を介して積層した、この植林木合板の電気亜鉛めっき鋼板を積層していない面に、厚み0.5mmのポリエステル樹脂シートを積層した板厚0.2mmの溶融亜鉛ーアルミニウムーマグネシウムめっき鋼板(片面の亜鉛めっき量:100g/m2、両面めっき)を、溶融亜鉛ーアルミニウムーマグネシウムめっき面を当接し、エポキシ系の接着剤を介して積層した。さらに、ポリエステル層の表面にエポキシ系接着剤介して板厚0.2mmの突板(材料:ハードメープル)を積層した。突板を積層した後、突板同士の接合箇所において、突板表面から深さ0.5mm、最表面の幅2mmのV字形(凹部)に除去して凹部を作った。この凹部に厚み20μmのポリエステル樹脂を塗布した。このようにして製造した建材の上から水をかけても、水は芯材には浸透しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の建材の一例を示す概略断面図。
【図2】本発明の建材の他の一例を示す概略断面図。
【図3】本発明の建材の他の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 : 建材
2 : 基板
3 : 芯材
4 : 樹脂シート積層金属板
5 : 突板
6 : 凹部
7 : 塗膜
8 : 樹脂シート
9 : 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板からなる基板上に、芯材、金属板及び樹脂シートが、この順に積層されていることを特徴とする建材。
【請求項2】
樹脂シートの表面に、突板または化粧シートが積層されている請求項1記載の建材。
【請求項3】
突板が、表面に凹部を有する請求項2記載の建材。
【請求項4】
凹部が、樹脂シートおよび突板に形成されている請求項3記載の建材。
【請求項5】
突板及び凹部の表面に有機樹脂または塗料が塗布されている請求項3または4記載の建材。
【請求項6】
凹部が、三角形、四角形、r形あるいは半円形である請求項3乃至5のいずれか1項記載の建材。
【請求項7】
樹脂シートが、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂からなる群から選ばれる請求項1乃至6のいずれか1項記載の建材。
【請求項8】
芯材が、木材、有機樹脂、無機物、紙、段ボール及び発泡体からなる群から選ばれる請求項1乃至7のいずれか1項記載の建材。
【請求項9】
金属板及び樹脂シートが、樹脂シート積層金属板からもたらされる請求項1記載の建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−174979(P2008−174979A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9875(P2007−9875)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【出願人】(592172884)株式会社ジューテック (1)
【Fターム(参考)】