説明

建材

【課題】基材の表面に塗装層が形成された建材において、塗装層に劣化が生じていることを好適に確認する。
【解決手段】外壁材10は、基材11と、基材11の表面に形成された塗装層12とを備えている。基材11の表面には、円錐状に形成された頭部21と、頭部21の底面から延びる軸部22とを有する劣化マーカ20が、軸部22が基材11に打ち込まれることにより取り付けられている。この取付状態において、頭部21は基材11の表面から突出しており、その突出高さが塗装層12の膜厚よりも小さくなっている。そして、頭部21が設けられている部位の塗装層12の膜厚が、他の部位における膜厚よりも小さくなっている。これにより、塗装層12の経年劣化等により塗装層12の膜厚が小さくなった場合には、基材11の表面が露出するよりも先に頭部21が露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、屋根材や外壁材等の外装材の表面側に耐候性や意匠性を向上させるために塗装を施すことがある。この場合、外装材の表面には、所定の膜厚を有する塗装層が形成される。この塗装層は紫外線や風雨等の影響により経年劣化するものであるため、その劣化に伴い塗装層の膜厚は次第に小さくなっていく。そこで、塗装が劣化した場合には再塗装を行う等により外装材の補修を実施することとしている。
【0003】
また、塗装の劣化が進行するとやがて塗装層の一部が剥離し、基材の表面の一部が露出するためその露出した部分から基材の腐食が生じるおそれがある。腐食が生じると、再塗装による修復が困難になるため、塗装が経年劣化した場合には、塗装が剥離する前に再塗装を実施することが求められる。
【0004】
ところで、塗装の経年劣化は、外装材の表面全域において緩やかに生じるものであるため塗装表面を単に目視するだけでは劣化を確認することは困難である。そこで、塗装の劣化を判断する際には、例えばJISK5600−8−6に基づく劣化判断方法が用いられる(非特許文献1)。この方法は、粘着テープを塗装層に貼り付け、その後粘着テープを剥離することによりテープの粘着面に付着した塗料の量により劣化の度合いを判断するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本規格協会発行「JIS塗料一般試験方法 第8部:塗膜劣化の評価−、第6節:白亜化の等級JISK5600−8−6」,平成11年4月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外装材は屋外に設置されていることから外装材の塗装面にはごみ等の微細な異物が付くことが考えられる。そのため、上記非特許文献1に基づく劣化判断方法を採用すると、粘着テープにはかかる異物が付着することが想定され、その場合接着テープに付着したものが塗料であるのか異物であるのかを判別するのが困難となり、ひいては塗装層に劣化が生じているか否かを判断するのが困難となる。
【0007】
また、上記非特許文献1の方法では、粘着テープの種類や貼り付け方等により粘着テープへの塗料の付着量にばらつきが生じることが考えられる。したがって、かかる方法に基づき塗装劣化が生じていないとの判断がなされた場合でも、実際は劣化が進行していることがあり、その場合基材に対して再塗装を実施する機会を逃し、その結果塗装層の一部が剥離してしまうおそれがある。つまり、従来の劣化判断方法では、塗装層が劣化したことを適切に確認することが困難であるといえる。
【0008】
なお、塗装層の劣化は、外装材に形成された塗装層のみならず、内壁材等その他の建材に形成された塗装層にも同様に生じうる。例えば日当たりのよい部屋に設置された内壁材であれば、外装材と同じように紫外線の影響により塗装層が経年劣化することが考えられる。そして、かかる内壁材において塗装の劣化を確認しようとする際には、上記同様の問題が生じることが考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材の表面に塗装層が形成された建材において、塗装層に劣化が生じていることを好適に確認することができることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建材は、基材と、前記基材の表面に所定の膜厚で形成された塗装層とを備える建材であって、前記基材の表面には、前記塗装層の膜厚よりも突出高さが小さい突出部が設けられており、前記突出部の表面側には、前記所定の膜厚よりも小さい膜厚で前記塗装層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、建材の基材表面には、突出部が設けられている部位における塗装層の膜厚が他の部位における膜厚よりも小さくなるように塗装層が形成されているため、塗装層の経年劣化等により塗装層の膜厚が小さくなった場合には、基材の表面が露出するよりも先に突出部が露出する。この場合、突出部が露出したことをもって、塗装層に劣化が生じていることを基材が露出する前に確認することができるため、塗装層に劣化が生じていることを好適に確認することができる。
【0012】
また、突出部は、塗装層の塗装色とは異なる色で着色されていることが好ましい。そうすれば、突出部が露出したことを確認し易くすることができる。
【0013】
第2の発明の建材は、第1の発明において、前記突出部は、山形状に形成されており、前記突出部の表面側には前記突出部の頂部において、前記所定の膜厚よりも小さい膜厚で前記塗装層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
基材の表面に塗料を塗布する工程では、塗料を塗布した直後に、基材表面を上側に向けた状態で基材を放置すると、塗布された塗料が時間の経過に伴い徐々にならされて平坦状になる。但し、突出部の上面が平坦面として形成されていると、その平坦面上に塗料が残って塗装面に段差が生じるおそれがある。この点、本発明では、突出部が山形状に形成されているため、突出部が設けられている部位においても他の部位と同様に塗料がならされ、その結果全体的に平坦状の塗装面を形成することができる。この場合、突出部の頂部における塗装層の膜厚を突出部が設けられていない部位における膜厚よりも確実に小さくする効果が期待できるため、上記第1の発明の効果を得るに際し好適な構成といえる。
【0015】
第3の発明の建材は、第1又は第2の発明において、前記基材の素地面の一部を平坦化した平坦領域が設けられ、その平坦領域に前記突出部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
基材の素地においては表面に微細な凹凸が多数存在しており、この基材に突出部を設けることを考えると、突出部がある部位における塗装層の膜厚を突出部がない部位における膜厚よりも小さくすることができない場合が生じうる。そこで、本発明ではその点に鑑み、基材の素地面の一部を平坦化した平坦領域を設け、その平坦領域に突出部を設ける構成としている。これにより、素地に微細な凹凸が多数存在する基材においても、突出部がある部位における塗装層の膜厚を他の部位における膜厚よりも確実に小さくすることができる。
【0017】
第4の発明の建材は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記突出部として、突出高さが異なる複数の突出部を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、基材の表面に突出高さが異なる複数の突出部が設けられているため、塗装層の劣化の度合いを複数の段階で確認することができる。これにより、再塗装を行うに際し塗装層の劣化度合いに応じた対応をとることが可能となる。
【0019】
第5の発明の建材は、第4の発明において、前記塗装層として、前記基材の表面に形成された第1塗装層と、前記第1塗装層の表面に形成された第2塗装層とを備え、前記複数の突出部として、前記第1塗装層の膜厚よりも突出高さが大きくかつ前記第1塗装層の膜厚と前記第2塗装層の膜厚との和よりも突出高さが小さい第1突出部と、前記第1塗装層の膜厚よりも突出高さが小さい第2突出部とが設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第1突出部の突出高さが第1塗装層の膜厚よりも大きく、かつ、第1塗装層の膜厚と第2塗装層の膜厚との和よりも小さくなっているため、第2塗装層の劣化が生じた場合には第1塗装層が露出するよりも先に第1突出部が露出する。これにより、第2塗装層に劣化が生じていることを第1塗装層が露出する前に確認することができる。また、第2突出部の突出高さが第1塗装層の膜厚よりも小さくなっているため、第1塗装層の劣化が生じた場合には基材の表面が露出するよりも先に第2突出部が露出する。これにより、第1塗装層に劣化が生じていることを基材の表面が露出する前に確認することができる。よって、以上より2層からなる塗装層が基材の表面に形成されている場合において、各塗装層の劣化をそれぞれ好適に確認することができる。
【0021】
第6の発明の建材は、第4又は第5の発明において、前記複数の突出部は、それぞれ異なる色に着色されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、突出高さが異なる複数の突出部がそれぞれ異なる色に着色されているため、塗装層が劣化した場合にいずれの突出部が露出したのかを容易に確認することができる。この場合、上記第4の発明の効果を得るに際し好適な構成といえる。また、複数の突出部のうち突出高さの低い(例えば最も低い)突出部については赤色や黄色等の警告色で着色することが望ましい。これにより、突出高さが低い突出部が露出した場合には、すなわち塗装膜の劣化が著しく進行している場合等にはその旨を視覚に訴えることができるため早期の再塗装を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態における外壁材を示す正面図。
【図2】外壁材の構成を示す断面図。
【図3】劣化マーカ周辺の構成を示す縦断面図。
【図4】第2の実施形態における劣化マーカ周辺の構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建材として、建物の外壁面を形成する外壁材に対して本発明を具体化している。外壁材は、その裏側にブラケットが取り付けられて、ブラケットが梁等の構造体に固定されることにより建物の外周部に設置される。なお、図1は外壁材を示す正面図であり、(a)が外壁材の全体を示し、(b)が外壁材の要部を拡大して示している。図2は外壁材の構成を示す断面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、外壁材10は、矩形平板状の基材11を有し、基材11の表面には塗装層12が形成されている。基材11は、窯業系サイディングボードにより構成されており、その素地表面には微細な凹凸が多数存在している。
【0026】
基材11の表面には凹凸模様の柄が施されている。具体的には、基材11の表面には、幅方向全域に延びる横溝15が上下方向に所定間隔をおいて複数形成されている一方、横溝15と直交する方向に延びるとともに隣り合う横溝15同士を繋ぐ縦溝16が幅(左右)方向に所定間隔をおいて複数形成されている。これら横溝15及び縦溝16により囲まれた部分は凸部17となっており、凸部17の表面は矩形形状に形成された略平坦面となっている。また、より詳しくは、各溝15,16の側面は傾斜面となっており、その傾斜面を介して各溝15,16の底面と凸部17の表面とが連続している。したがって、本実施形態では、基材11の表面が凸部17の表面と各溝15,16の表面(底面及び側面)とにより構成されており、全体として凹凸状に形成されている。
【0027】
塗装層12は、耐候性を有する塗料により形成されており、例えばアクリルシリコン系材料の塗料からなる。塗装層12は、基材11の表面(つまり溝15、16の表面と凸部17の表面)に沿って膜状に形成されており、その膜厚が基材11全域においてほぼ均一となっている。また、塗装層12は、例えばスプレー塗装により形成される。但し、塗装方法は、スプレー塗装に限定されることなくロール塗装等その他の方法を用いてもよい。
【0028】
基材11の表面には、塗装層12の膜厚よりも突出高さが小さい突出部が設けられている。本実施形態は、この突出部が設けられている点に特徴を有しており、以下その詳細について説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、基材11の表面側には、劣化マーカ20が取り付けられている。劣化マーカ20は、基材11に設けられた複数の凸部17のうち、所定の凸部17(以下、劣化確認凸部17aという)に複数(図1では9個)取り付けられており、これら各劣化マーカ20は劣化確認凸部17aにおいて密集した状態でマーカ群として設けられている。また、本実施形態では、劣化確認凸部17aが基材11における隅部に設定されており、具体的には基材11を建物に設置した状態で下側となる方の隅部(図1では左右両側の隅部)に設定されている。但し、劣化確認凸部17aは必ずしも基材11の隅部に設ける必要はなく、基材11の中央部等その他の部位に設けてもよい。
【0030】
ここで、上述したように基材11の素地表面には微細な凹凸が多数存在しているところ、劣化マーカ20が取り付けられている劣化確認凸部17aについては表面加工により凹凸が除去されて他の凸部17と比べて表面が平滑となっている。また、本実施形態では、劣化確認凸部17aの表面全域において凹凸が除去されている。なおここで、劣化確認凸部17aの表面が平坦領域に相当する。
【0031】
次に、劣化マーカ20周辺の構成について図3に基づいて説明する。なお、図3は、劣化マーカ20周辺の構成を示す縦断面図である。
【0032】
図3に示すように、劣化マーカ20は、基材11の表面側に取り付けられている。劣化マーカ20は例えば金属製のものであり、略円錐状に形成された頭部21と、頭部21の底面から延びる軸部22とを有している。頭部21の高さH(以下、頭部高さHという)は、塗装層12の膜厚t(詳しくは基材11の表面から塗装層12の表面25までの距離)よりも小さい寸法に設定されている。軸部22は、頭部21の外径よりも小さい径を有して形成されており、それ故頭部21の一部が軸部22の外周面から突出している。
【0033】
なお、劣化マーカ20の頭部21は必ずしも円錐形状とする必要はなく、三角錐状等その他の山形形状としてもよい。また、必ずしも頭部21を山形形状にする必要はなく、板状やブロック状等その他の形状としてもよい。
【0034】
劣化マーカ20は、軸部22が基材11に打ち込まれることにより同基材11に対して取り付けられている。この場合、劣化マーカ20において頭部21が基材11の表面から突出した状態となっており、これにより基材11の表面には、同表面からの突出高さがHとなる突出部(つまり頭部21)が設けられている。そして、Hは上述したように塗装層12の膜厚tよりも小さいことから頭部21は塗装層12に埋没されている。ここで、塗装層12の表面25(露出面)は基材11の表面と平行でかつ平坦に形成されているため、この場合劣化マーカ20の頭部21の表面26と塗装層12の表面25との間の距離が、基材11の表面と塗装層12の表面25との間の距離よりも小さくなっている。すなわち、劣化マーカ20(頭部21)の設置部位における塗装層12の膜厚ta(劣化マーカ20の設置部位以外での膜厚と区別するためにtaとする)が、劣化マーカ20が設置されていない部位における膜厚tと比べ小さくなっている。例えば、頭部21の頂部21aにおいては、塗装層12の膜厚taが劣化マーカ20が設置されていない部位における膜厚tと比べ頭部高さH分小さくなっている。
【0035】
次に、外壁材10を塗装する際の作業内容について説明する。
【0036】
まず、基材11に対して塗装を行う前に基材11に劣化マーカ20を取り付ける作業が行われる。この作業では、まず基材11の劣化確認凸部17aの表面を平滑に加工する作業が行われる。この加工は、例えば基材11の表面の凹凸模様を専用のマシニング装置により形成する際に併せて行われる。かかる加工が終了した後、基材11に対して劣化マーカ20を取り付ける作業が行われる。劣化マーカ20は、例えば専用の治具により位置合わせされた状態で劣化確認凸部17aの表面に取り付けられる。
【0037】
次に、基材11に対して塗装を施す塗装作業を行う。この塗装作業は、劣化マーカ20が取り付けられた基材11がベルトコンベア上に載置された状態で行われる。具体的には、基材11は、その表面側が上方に向けられた状態でベルトコンベア上に載置される。そして、ベルトコンベアの上方に設置されたスプレー装置により塗料が基材11の表面に吹き付けられることにより塗装が行われる。
【0038】
次に、塗装された基材11を所定期間(例えば5分)放置する放置作業が行われる。この放置作業では、基材11は、ベルトコンベア上にてその表面側が上方に向けられたままの状態で放置される。基材11の表面に塗布された塗料は時間の経過に伴い徐々にならされて平坦状になる。但し、劣化マーカ20の頭部21の上面が平坦面として形成されていると、その平坦面上に塗料が残り塗装面に段差が生じる。この点、本実施形態では、劣化マーカ20の頭部21が山形状に形成されているため、劣化マーカ20の設置部位においても他の部位と同様に塗料がならされ、その結果全体的に平坦状の塗装面が形成される。
【0039】
放置作業の終了後、基材11が乾燥炉の中に入れられ乾燥作業が行われる。この作業により基材11に塗布された塗料に含まれる水分が除去され塗料が固化する。これにより、基材11の表面に塗装層12が形成され、塗装作業が終了する。
【0040】
次に、劣化マーカ20により塗装層12の劣化を確認する場合の作用について説明する。
【0041】
塗装層12が風雨や紫外線等の影響により経年劣化すると、塗装層12の膜厚が次第に小さくなっていく。ここで、塗装層12の膜厚は上述したように劣化マーカ20の設置部位において他の部位よりも小さくなっているため、基材11の表面が露出するよりも先に劣化マーカ20の頭部21が露出する。したがって、この頭部21が露出したことをもって、基材11の表面が露出する前に塗装層12が劣化していることを確認できる。具体的には、外壁材10を設置(多くは建物施工)してから所定期間(例えば5年)が経過した後、劣化マーカ20が取り付けられている外壁材10の隅部を肉眼で又はルーペ等の拡大鏡を用いて確認する。これにより、劣化マーカ20(頭部21)が露出していることが確認された場合には、基材11の露出する前に再塗装をする等の対応をとることができる。
【0042】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0043】
基材11の表面に、塗装層12の膜厚よりも突出高さの小さい突出部を、具体的には劣化マーカ20の頭部21を設け、頭部21が設けられている部位における塗装層12の膜厚を他の部位における膜厚よりも小さくした。これにより、塗装層12の経年劣化等により塗装層12の膜厚が小さくなった場合には、塗装層12の剥離等により基材11の表面が露出するよりも先に劣化マーカ20の頭部21が露出する。そのため、頭部21が露出したことをもって、塗装層12に劣化が生じていることを基材11が露出する前に確認することができるため、塗装層12に劣化が生じていることを好適に確認することができる。
【0044】
劣化マーカ20の頭部21を山形状に形成した。この場合、基材11の表面に塗料が塗布された後その塗料が固化する前に基材11の表面を上側に向けた状態で基材11を放置すると、頭部21が設けられている部位においても他の部位と同様に塗料がならされて全体的に平坦状の塗装面を形成することができる。これにより、頭部21が設けられている部位における塗装層12の膜厚を頭部21が設けられていない部位における膜厚よりも確実に小さくする効果が期待できるため、上記の効果を得るに際し好適な構成といえる。
【0045】
基材11の素地面の一部に平坦化の加工を施した平坦領域を設け、その平坦領域に頭部21を設けた。これにより、素地に微細な凹凸が多数存在する基材11においても、頭部21が設けられた部位における塗装層12の膜厚を他の部位における膜厚よりも確実に小さくすることができる。
【0046】
具体的には、劣化確認凸部17aの表面全域を平坦領域とし、その平坦領域に劣化マーカ20を設けた。この場合、頭部21が設けられている部位の塗装層12の膜厚が基材11の素地表面の微細な凸部における塗装層12の膜厚よりも小さくなるという不都合を確実に回避することができる。
【0047】
基材11の表面に凹凸模様の柄等が形成されている場合には、屋外側に突出している凸部側の表面の方が凹部側の表面よりも風雨や紫外線の影響を受け易いことが考えられる。そこで、上記構成では、その点に鑑みて、表面に凹部(詳細には溝部15,16)と凸部とを有する基材11において凸部側となる凸部17に対して劣化マーカ20(頭部21)を設けた。これにより、基材11の表面において劣化し易い部位について塗装の劣化を確認することができるため、基材11が露出する前に塗装劣化が生じたことを確認するに際し好都合である。
【0048】
〔第2の実施形態〕
本実施形態では、基材11の表面に突出高さの異なる複数の突出部を設けることとする。以下に、本実施形態の構成を図4に基づいて第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、図4は、劣化マーカ周辺の構成を示す縦断面図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態における外壁材30において、基材11の表面には第1塗装層31が形成され、第1塗装層31の表面41には第2塗装層32が形成されている。第1塗装層31は、基材11の素地表面に多数存在する微細な凹部を埋めるためのものであり、例えば目止め用のシーラからなる。この第1塗装層31が基材11の表面に形成されることにより、第2塗装層32が塗装される塗装面が平坦化され、その結果外壁材30において屋外側に露出する第2塗装層32の表面42に基材11素地の凹凸が現れるのが防止されている。
【0050】
第2塗装層32は、耐候性を有する塗料により形成されており、例えばアクリルシリコン系材料の塗料からなる。第2塗装層32は着色層となっており、本実施形態では茶色に着色されている。これら各塗装層31,32の表面41,42は共に基材11の表面と平行でかつ平坦に形成されており、それ故第1塗装層31の膜厚t1と第2塗装層32の膜厚t2とは基材11の表面全域においてほぼ均一となっている(但し、後述する劣化マーカ35,36が設置される部位については除く。)。なお、第1塗装層31及び第2塗装層32は、例えばスプレー塗装により形成される。
【0051】
基材11の表面には、第1劣化マーカ35と第2劣化マーカ36とが設けられている。本実施形態では、基材11における各劣化確認凸部17aの表面にそれぞれ双方の劣化マーカ35,36が設けられている。第1劣化マーカ35と第2劣化マーカ36とは互いに頭部38,39の高さが異なっており、第1劣化マーカ35の頭部高さH1が第2劣化マーカ36の頭部高さH2よりも大きくなっている。具体的には、第1劣化マーカ35の頭部高さH1は第1塗装層31の膜厚t1よりも大きく、かつ、第1塗装層31の膜厚t1と第2塗装層32の膜厚t2との和よりも小さい寸法に設定されており、第2劣化マーカ36の頭部高さH2は第1塗装層31の膜厚t1よりも小さい寸法に設定されている。そのため、各劣化マーカ35,36が基材11に取り付けられた状態では、第1劣化マーカ35の頭部38の突出高さがH1となり、第1劣化マーカ35の設置部位における第2塗装層32の膜厚が他の部位における第2塗装層32の膜厚t2よりも小さくなっている。一方、第2劣化マーカ36の頭部39の突出高さはH2となり、第2劣化マーカ36の設置部位における第1塗装層31の膜厚が他の部位における第1塗装層31の膜厚t1よりも小さくなっている。なおここで、第1劣化マーカ35の頭部38が第1突出部に相当し、第2劣化マーカ36の頭部39が第2突出部に相当する。
【0052】
また、第1劣化マーカ35と第2劣化マーカ36とは異なる色で着色されており、さらに第2劣化マーカ36については視覚に訴え易い警告色により着色されている。本実施形態では、第1劣化マーカ35が青色に、第2劣化マーカ36が赤色に着色されている。また、本実施形態では各劣化マーカ35,36が、第2塗装層32の塗装色(茶色)とも異なる色で着色されている。なお、かかる着色は各劣化マーカ35,36において少なくとも頭部38,39に行われていればよい。
【0053】
次に、劣化マーカ35,36を用いて各塗装層31,32の劣化を確認する場合の作用について説明する。
【0054】
本実施形態の場合、第1劣化マーカ35(頭部38)の設置部位における第2塗装層32の膜厚が、他の部位における第2塗装層32の膜厚よりも小さくなっているため、第2塗装層32が経年劣化して第2塗装層32の膜厚が小さくなると、第1塗装層31が露出するよりも先に第1劣化マーカ35の頭部38が露出する。そのため、第1塗装層31が露出して第1塗装層31の劣化が始める前に第2塗装層32を再塗装することが可能となる。また、この段階では第1塗装層31により未だ基材11が保護されていることから、建物メーカー等にとっては居住者に対し再塗装を推奨するにとどめる等柔軟な対応をとることができる。
【0055】
第2塗装層32の経年劣化が進行すると、やがて第1塗装層31が露出し第1塗装層31の劣化が始まる。ここで、第2劣化マーカ36(頭部39)の設置部位における第1塗装層31の膜厚が、他の部位における第1塗装層31の膜厚よりも小さくなっているため、第1塗装層31が経年劣化して第1塗装層31の膜厚が小さくなると、基材11の表面が露出するよりも先に第2劣化マーカ36の頭部39が露出する。そのため、基材11が露出して基材11の劣化が始める前に第1塗装層31を再塗装することが可能となる。そして、この場合まもなく基材11が露出する状況であることから建物メーカーにとっては居住者に再塗装を促す(警告する)等の強い対応をとることが可能となる。
【0056】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0057】
基材11の表面に突出高さが異なる複数の突出部を、具体的には劣化マーカ35,36の頭部38,39を設けた。この場合、突出高さが大きい頭部38が露出した場合には塗装の劣化が進行し始めであると判断したり、突出高さが小さい頭部39が露出した場合には塗装の劣化が著しく進行していると判断したりする等、塗装層31,32の劣化の度合いを複数の段階で確認することができる。これにより、塗装の劣化が進行し始めであると判断した場合は再塗装の実施を見送ったり塗装の劣化が著しく進行していると判断した場合は再塗装を至急実施したりする等、再塗装を行うに際し塗装層の劣化度合いに応じた対応をとることが可能となる。
【0058】
第1劣化マーカ35の頭部38と、第2劣化マーカ36の頭部39とを異なる色に着色したため、塗装層31,32が劣化した場合にいずれの頭部38,39が露出したのかを容易に確認することができる。この場合、上記効果を得るに際し好適な構成といえる。
【0059】
また、突出高さの低い方の頭部39については警告色で着色したため、突出高さが低い頭部39が露出した場合には、すなわち塗装の劣化が第1塗装層31まで進行している場合にはその旨を視覚に訴えることができるため早期の再塗装を促すことができる。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0061】
(1)上記各実施形態では、基材11に劣化マーカ20,35,36を取り付けることで劣化マーカ20,35,36の頭部21,38,39により突出部を構成したが、突出部の構成は必ずしもこれに限定されない。例えば、全体が針状に形成された針状部材を基材11に対して一部基材11の表面から突出させた状態で取り付けることで、その突出した部分により突出部を構成してもよい。また、この場合、針状部材を基材11の表面における所定の領域に複数密集させて設けてもよい。そうすれば、塗装層12が劣化して針状部材が露出した場合に露出したことを確認し易くすることができる。そして、この場合針状部材の露出状況によって、すなわち露出した針状部材の個数によって劣化の度合いを確認することも期待できる。
【0062】
また、突出部は、必ずしも基材11と別体として構成する必要はなく、突出部を基材11と一体形成してもよい。そうすれば、基材11を製造する際に併せて突出部を形成することができるため、突出部を別体として製造し基材に取り付ける場合と比べ、突出部を設ける際の作業工数を低減させることができる。
【0063】
(2)上記各実施形態では、基材11において凸部17の表面に劣化マーカ20,35,36を設けたが、溝15,16の表面(底面)等その他の部位に劣化マーカ20,35,36を設けてもよい。また、上記実施形態では、基材11における隅部にのみ劣化マーカ20,35,36を設けたが、基材11における複数の箇所に、例えば各凸部17の表面に対し劣化マーカ20,35,36を設ける構成としてもよい。塗装の劣化の進行速度は基材11における部位によりばらつきがあると考えられるため、このように複数の箇所に劣化マーカ20,35,36を設けることで塗装が劣化したことをより確実に確認することできる。さらに上記各実施形態では、劣化確認凸部17aに複数の劣化マーカ20,35,36を密集状態で設けたが、劣化確認凸部17aにひとつの劣化マーカ20,35,36のみを設けてもよい。
【0064】
(3)上記各実施形態では、基材11において素地表面の凹凸が除去されて平滑化された劣化確認凸部17aの表面に劣化マーカ20,35,36を設けたが、基材11の表面において微細な凹凸が存在する部分に劣化マーカ20,35,36を設けてもよい。また、上記各実施形態では、劣化確認凸部17aの表面全域を平滑化したが、これを変更して、劣化確認凸部17aの表面の一部のみを平滑化し、その平滑化した領域に劣化マーカ20,35,36を設けてもよい。そうすれば、基材11表面を平滑化する際の加工作業を容易とすることができる。
【0065】
(4)上記第2の実施形態では、基材11の表面に2層の塗装層31,32が形成された外壁材30に対して本発明を適用したが、3層以上の塗装層が形成された外壁材に対し本発明を適用してもよい。その場合、塗装層の層数に応じて頭部高さの異なる劣化マーカを用意するのがよい。
【0066】
(5)上記第2の実施形態では、基材11の表面に突出高さの異なる2つの頭部38,39を設けたが、突出高さの異なる3つ以上の頭部を設けてもよい。
【0067】
(6)上記第2の実施形態では、2層からなる塗装層31,32を有する外壁材30に対し突出高さが異なる複数の頭部38,39を設けたが、1層からなる塗装層を有する外壁材、例えば第1の実施形態の外壁材10に対し突出高さが異なる複数の頭部を設けてもよい。この場合においても、塗装層12の劣化の程度を確認することができるため、再塗装に際し劣化の程度に応じた対応をとることができる。
【0068】
(7)上記各実施形態では、基材11として窯業系サイディングボードを用いたが、押出セメント板やALC等その他の窯業系材料を用いてもよいし、また塩化ビニル等の樹脂系材料を用いてもよい。また、上記実施形態では、表面に凹凸模様の柄が施された基材11に本発明を適用したが、柄が施されてないフラット形状の基材等その他の形状の基材に本発明を適用してもよい。
【0069】
(8)上記各実施形態では、外装材としての外壁材10に対して本発明を適用したが、屋根材等その他の外装材に対し本発明を適用してもよい。また、外装材のみならず内壁材等の内装材に対して、すなわち建材一般に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…建材としての外装材、11…基材、12…塗装層、20…劣化マーカ、21…突出部としての頭部、30…建材としての外装材、31…第1塗装層、32…第2塗装層、35…第1劣化マーカ、36…第2劣化マーカ、38…第1突出部としての頭部、39…第2突出部としての頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に所定の膜厚で形成された塗装層とを備える建材であって、
前記基材の表面には、前記塗装層の膜厚よりも突出高さが小さい突出部が設けられており、
前記突出部の表面側には、前記所定の膜厚よりも小さい膜厚で前記塗装層が形成されていることを特徴とする建材。
【請求項2】
前記突出部は、山形状に形成されており、
前記突出部の表面側には前記突出部の頂部において、前記所定の膜厚よりも小さい膜厚で前記塗装層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記基材の素地面の一部を平坦化した平坦領域が設けられ、その平坦領域に前記突出部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建材。
【請求項4】
前記突出部として、突出高さが異なる複数の突出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建材。
【請求項5】
前記塗装層として、前記基材の表面に形成された第1塗装層と、前記第1塗装層の表面に形成された第2塗装層とを備え、
前記複数の突出部として、前記第1塗装層の膜厚よりも突出高さが大きくかつ前記第1塗装層の膜厚と前記第2塗装層の膜厚との和よりも突出高さが小さい第1突出部と、前記第1塗装層の膜厚よりも突出高さが小さい第2突出部とが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の建材。
【請求項6】
前記複数の突出部は、それぞれ異なる色に着色されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196081(P2011−196081A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63550(P2010−63550)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】