説明

建材

【課題】アレルゲンを不活性化する塩基性化合物に対する人体の接触を低減できる、抗アレルゲン性を有する建材を提供する。
【解決手段】基材2表面にアレルゲンを不活性化する塩基性化合物を含有するアレルゲン低減層3が形成され、このアレルゲン低減層3の表面3aに凹凸形状を有する保護層4が形成されている。保護層4は、平面視で、凸部5を海領域とし凹部6を島領域とする海島構造又は凹部を海領域とし凸部を島領域とする海島構造を有し、凹部6は、アレルゲンが通過可能でありアレルゲン低減層3表面3aに臨む開口7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アレルゲンを不活性化できる抗アレルゲン性を有する建材が知られている(例えば特許文献1参照)。この建材は、建材を構成する基材表面に、アレルゲンを不活性化するジルコニウム塩などのアレルゲン不活性化剤が塗布や浸漬などの方法により付与されており、アレルゲン不活性化剤に接触するアレルゲンを不活性化している。
【0003】
ところで、アレルゲン不活性化剤として、上記したジルコニウム塩よりも化合物の安定性が良好であり抗アレルゲン性の効果を安定して持続できる酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどの塩基性化合物が知られている(例えば特許文献2参照)。塩基性化合物は、そのアルカリ性成分がアレルゲン化合物の構造を切断するためアレルゲンの不活性化に非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−212806号公報
【特許文献2】特開2006−57212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塩基性化合物は皮膚刺激性を有するため、肌などが触れると刺激などの不快感を与えてしまうことがある。このため、人体と接触する機会のある建材への使用には改善すべき点がある。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、アレルゲンを不活性化する塩基性化合物に対する人体の接触を低減できる、抗アレルゲン性を有する建材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の建材は、基材表面にアレルゲンを不活性化する塩基性化合物を含有するアレルゲン低減層が形成され、このアレルゲン低減層の表面に凹凸形状を有する保護層が形成され、保護層は、平面視で、凸部を海領域とし凹部を島領域とする海島構造又は凹部を海領域とし凸部を島領域とする海島構造を有し、凹部は、アレルゲンが通過可能でありアレルゲン低減層表面に臨む開口を有することを特徴とする。
【0008】
この建材においては、保護層は、面方向と交わる方向の貫通孔を有する板状又はシート状の部材で形成されており、貫通孔が凹部を構成し、この貫通孔の周囲の部分が凸部を構成することが好ましい。
【0009】
この建材においては、保護層は、アレルゲン低減層に分散しその表面から突出する複数の粒子で形成されており、粒子間の間隙が凹部を構成し、粒子が凸部を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アレルゲンを不活性化することができ、また、アレルゲンを不活性化する塩基性化合物に対する人体の接触を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の建材の一実施形態を示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1の建材の要部拡大図である。
【図3】本発明の建材の別の一実施形態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の建材の一実施形態を示した一部切欠斜視図である。図2は、図1の建材の要部拡大図である。
【0013】
図1の建材1は、基材2表面に、アレルゲンを不活性化する塩基性化合物を含有するアレルゲン低減層3を備える。
【0014】
基材2としては、柱材、床材、ドア材、壁材、窓枠材、天井材、造作材などの内装材やその周辺部材に用いられる各種の建材の基材から選択され、特に限定されない。具体例として、合板、MDF、パーティクルボード、ファイバーボード、集成材などの木質基材、樹脂成形品などのプラスチック基材を挙げることができる。また、ガラス、ホーロー、セラミックス、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ロックウール板、セメント板、粘土板、陶磁器質タイル、スレートなどの無機質基材、各種シート、紙、繊維質シート、不織布などのシート状基材も挙げることができる。さらに、上記した基材に有機塗装を施した基材やこれらの基材を複数積層した積層基材でもよい。
【0015】
アレルゲンを不活性化する塩基性化合物は、代表的には無機物質(固体)であり、塩基性を示す酸化物を挙げることができる。耐水性を考慮すると、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物が好ましく用いられる。また、これらの水酸化物も使用可能である。その他、複合酸化物で塩基性を示すものが可能である。塩基性を示す複合酸化物の具体例として、SiO−MgO、SiO−CaO、SiO−SrO、SiO−BaO、ZnO−SiO、ThO−ZrO、ZnO−ZrO、SiO−Al、SiO−ZrO、SiO−ThO、Al−ZrO、Al−ThOなどを挙げることができる。
【0016】
塩基性化合物は、バインダーなどによって基材2表面に保持、固定され、アレルゲン低減層3を構成する。塩基性化合物の形状は、例えば、粉末状、塊状、板状などが挙げられるが、加工性や分散性などを考慮すると、粉末状であることが好ましい。
【0017】
塩基性化合物を保持、固定するバインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、フッ素系、シリコン系、アクリルシリコン系など各種の樹脂成分が挙げられる。塩基性化合物を樹脂成分及びアルコールなどの適当な溶剤に混合し、この混合物をスプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピングなどの手法で基材2表面に塗布し、乾燥、硬化させることでアレルゲン低減層3を形成することができる。アクリルシリコン系やシリコン系の樹脂成分からなるバインダーは、高強度で均一な塗膜を与えることから好ましい。分散性や安定性の向上、着色などの目的に応じて、混合物に分散剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料などを添加することができる。
【0018】
アレルゲン低減層3には、その表面に、凹凸形状を有する保護層4が形成されている。この保護層4は、その表面側からの人体とアレルゲン低減層3との接触を防止するとともに、その表面側からのアレルゲンの侵入を可能としアレルゲンとアレルゲン低減層3との接触を可能とするものである。
【0019】
凹凸形状を有する保護層4は、凹部6と凸部5を有し、それらは面方向に連なって配されている。保護層4の凹部6は、アレルゲンが通過可能でありアレルゲン低減層3表面3aに臨む開口7を有している。この開口7の大きさは、人の指などが通過できない大きさであることが考慮される。アレルゲンはこの開口7を通じて保護層4内に侵入する。侵入したアレルゲンは、アレルゲン低減層3と接触し、塩基性化合物と反応して不活性化される。
【0020】
保護層4の凸部5は、アレルゲン低減層3よりも表面側に突出して形成されており、人体とアレルゲン低減層3との直接の接触を防止する。
【0021】
凹部6及び凸部5の形状は特に限定されるものではない。例えば、凹部6の開口7の外形形状は、平面視で、円形状、楕円形状、不定形な円形状、多角形状、それらが連なった形状であってもよい。また、相互に形状が異なっていてもよい。凸部5の外形形状についても、平面視で、円形状、楕円形状、不定形な円形状、多角形状、それらが連なった形状であってよく、相互に形状が異なっていてもよい。
【0022】
本実施形態の保護層4は、平面視で、凸部5を海領域(連続相)とし、凹部6を島領域(不連続相)とする海島構造を有している。
【0023】
より具体的には、保護層4は、板状の部材8で形成され、表裏を貫通する貫通孔61を有する。この貫通孔61が凹部6を構成し、貫通孔61の周囲の部分51が凸部5を構成する。貫通孔61は、アレルゲンが通過可能でありアレルゲン低減層3表面3aに臨む開口71を有する。
【0024】
このような構成の保護層4は、例えば、貫通孔61を有する板状の部材8の裏面に接着剤などを塗布し、アレルゲン低減層3の表面3aに積層して接着することで得ることができる。また他の方法としては、印刷法を用いて、貫通孔61を形成しようとする部分は塗料を供給せず、貫通孔61の周囲の部分のみに塗料を供給して凸部5を形成することができる。また更に他の方法としては、アレルゲンが通過可能な大きさの孔の多孔質の塗膜を形成できる塗料を全体に塗布して塗膜を形成するようにしても良い。
【0025】
図2に示される保護層4の貫通孔61は、面方向に対して略垂直な方向に形成されているが、これに特に限定されるものではない。例えば、貫通孔の貫通方向が面方向に対して鋭角(鈍角)な方向に貫通孔が形成されていてもよい。また、本実施形態の貫通孔61の外形形状は、平面視で円形状を有するが、上述した凹部6の開口7の外形形状のように、各種の形状とすることができる。さらに、貫通方向に沿って略同一形状、略同一の大きさに形成されているが、貫通方向に沿ってその形状や大きさが異なっていてもよい。
【0026】
貫通孔61の開口71の大きさは、上述したように、人の指などが通過できない大きさであることが考慮される。この観点から、例えば、平面視で円形状である場合、直径が5mm以下であることが望ましい。また、ダニアレルゲンの大きさは一般的には1〜5μm程度であるので、ダニアレルゲンを通過可能とするために直径10μm以上であることが望ましい。花粉アレルゲンの大きさはダニアレルゲンよりも大きいため、各種アレルゲンを不活性化するためには直径50μm以上とすることが望ましい。
【0027】
板状の部材8は、人の指などとアレルゲン低減層3との接触を避けるために、適度な厚みを持たせることが望ましい。例えば、5μm〜1mmとすることができる。
【0028】
板状の部材8の材質としては、上記した基材2に挙げたものと同様のものが例示される。また、保護層4は、板状の部材8に限らずシート状の部材であってもよく、この場合の材質としては、上記した基材2に挙げたものと同様のものが例示される。
【0029】
このように本実施形態の建材1は、アレルゲン低減層3の表面3aに保護層4を有しているので、アレルゲンを不活性化することができる。また、アレルゲンを不活性化する塩基性化合物に対する人体の接触も低減できる。本実施形態の建材1は、保護層4が貫通孔61を有する多孔質の板状の部材8で形成されているため、保護層4の形成が容易であるとともに、アレルゲン低減層3表面3aへの配設も容易であるなど加工性に優れる。さらに、保護層4を構成する凸部5が海島構造の海領域(連続層)とされ、凹部6を囲むように形成されているため、人の指などは凹部6を通過しにくくなり、人体とアレルゲン低減層3との接触をより効果的に低減することができる。さらにまた、板状の部材8の表面に塗装を施すことが可能であるため、意匠性に優れ、外観が良好な建材1を得ることができる。
【0030】
図3は、本発明の建材の別の一実施形態を示した断面図である。図1−図2に示した実施形態と同じ部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
本実施形態の建材10の保護層11は、図2に示される保護層4の海島構造の海領域(連続相)と島領域(不連続相)とを反転した例である。すなわち、本実施形態の保護層11は、平面視で、凹部6を海領域(連続相)とし、凸部5を島領域(不連続相)とする海島構造を有している。
【0032】
この保護層11は、アレルゲン低減層3に分散し、このアレルゲン低減層3の表面3aから突出する複数の粒子9で形成されている。粒子9,9間の間隙62が凹部6を構成し、粒子9が凸部5を構成する。粒子9,9間の間隙62は、アレルゲンが通過可能でありアレルゲン低減層3表面3aに臨む開口72を有する。
【0033】
このような構成の保護層11は、例えば、アレルゲン低減層3形成のための、塩基性化合物、樹脂成分及び溶剤の混合物を基材2表面に塗布した後、その塗膜31の硬化前に粒子9を塗膜31に散布し、粒子9が沈み込む前に硬化させることで得ることができる。
【0034】
粒子9の平均粒径は塩基性化合物よりも大きいことが好ましい。これによって、アレルゲン低減層3の表面3aからの粒子9の突出が容易となる。ただ、粒子9の粒径が大きすぎると、塗膜31の硬化前に沈降したり、表面の凹凸構造を均一に形成することができない場合がある。この観点から、粒子9の平均粒径は5〜50μmであることが望ましい。
【0035】
本実施形態の保護層11の場合、上記した板状の部材8やシート状の部材を使用した保護層4と比べて保護層11に厚みを持たせることが難しいため、人の指などとアレルゲン低減層3との接触を避けるために、粒子9,9間の間隙62を小さくする。例えば、隣接する粒子9,9間の間隙距離Lの最大値を5μm〜1mm程度とする。もちろん、粒子9,9間の間隙62はアレルゲンが通過可能に設定されることが考慮される。このような粒子9,9間の間隙62の調整は、アレルゲン低減層3形成時の塗膜31への粒子9の散布量や塗膜31を形成する混合物における粒子9の混合比を調節することによって可能である。
【0036】
粒子9としては、無機質の粒子や高分子の粒子を採用できる。いわゆるつや消し材といわれるものも使用することができる。無機質の粒子の具体例としては、タルク、マイカ、シリカ、ケイ砂、ガラスフレーク、砂などが挙げられる。高分子の粒子としては、ウレタンビーズ、アクリルビーズなどが挙げられる。
【0037】
このように本実施形態の建材10においても、アレルゲン低減層3の表面3aに保護層11を有しているので、アレルゲンを不活性化することができる。また、アレルゲンを不活性化する塩基性化合物に対する人体の接触も低減できる。本実施形態の建材10は、保護層11がアレルゲン低減層3の表面3aから突出する複数の粒子9で形成されているため、アレルゲン低減層3と保護層11を同一工程で形成できるなど加工性に優れる。さらに、保護層11を構成する凹部6が海島構造の海領域(連続層)とされているため、より広い領域においてアレルゲンの通過が可能となり、アレルゲン低減層3との接触によるアレルゲンの不活性化をより効果的に行うことができる。さらにまた、粒子9の材質を選択することによって、意匠性に優れ、外観が良好な建材を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1,10 建材
2 基材
3 アレルゲン低減層
3a 表面
4,11 保護層
5 凸部
51 貫通孔の周囲の部分
6 凹部
61 貫通孔
62 間隙
7,71,72 開口
8 板状の部材
9 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面にアレルゲンを不活性化する塩基性化合物を含有するアレルゲン低減層が形成され、このアレルゲン低減層の表面に凹凸形状を有する保護層が形成され、前記保護層は、平面視で、凸部を海領域とし凹部を島領域とする海島構造又は凹部を海領域とし凸部を島領域とする海島構造を有し、前記凹部は、アレルゲンが通過可能であり前記アレルゲン低減層表面に臨む開口を有することを特徴とする建材。
【請求項2】
前記保護層は、面方向と交わる方向の貫通孔を有する板状又はシート状の部材で形成されており、前記貫通孔が前記凹部を構成し、この貫通孔の周囲の部分が前記凸部を構成することを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記保護層は、前記アレルゲン低減層に分散しその表面から突出する複数の粒子で形成されており、前記粒子間の間隙が前記凹部を構成し、前記粒子が前記凸部を構成することを特徴とする請求項1に記載の建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67945(P2013−67945A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205153(P2011−205153)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】