説明

建物の基礎構造及び建物

【課題】基礎構造を構築するときの作業工数の増加を抑制すると共に基礎本体の底面の幅を狭くすることができる建物の基礎構造及び建物を得る。
【解決手段】基礎構造体20は、杭32と基礎本体34とを有しており、杭32は、基礎本体34の長手方向に見て、基礎本体34の底面34Cの角を通る45°の破壊線Cよりも鉛直方向の下側にある境界線MKによって上部32Aと下部32Bに区分され、上部32Aの固化材の添加量が下部32Bの固化材の添加量よりも多くなっている。ここで、上部32Aの圧縮強度が下部32Bの圧縮強度よりも高くなっており、杭32の圧壊を抑制できるので、基礎本体34の底面34Cの幅W1を杭32の直径dに対して狭くすることができる。さらに、上部32Aと下部32Bで固化材の量を変更するだけでよいので、作業工数の増加を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の鋼製橋脚とコンクリート杭の定着方法は、鋼製橋脚の下端部に筒状の鋼殻を一体に取り付け、地盤に埋設したコンクリート杭の上側に鋼製橋脚の下端部の鋼殻を配置して、鋼殻の内側にコンクリート杭の杭頭の主鉄筋を収納させている。そして、鋼殻内にコンクリートを充填している。
【0003】
特許文献2のコンクリートの基礎構造は、杭の杭頭部に芯ずれ吸収用の杭頭ベース材が設けられ、該杭頭ベース材上に立ち上がり基礎板が支承されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−045370号公報
【特許文献2】特開2006−104675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1、2に開示された先行技術による場合、鋼殻や杭頭ベース材といった杭とは別の部材を杭の上端部に設け、その上に基礎本体を設ける構造となっており、杭及び基礎本体(基礎構造)を構築するときの作業工数が増加していた。さらに、杭とは別の部材によって基礎本体の底面に相当する部位の幅が拡がるため、基礎本体の底面の幅を狭くすることが困難であった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、基礎構造を構築するときの作業工数の増加を抑制すると共に基礎本体の底面の幅を狭くすることができる建物の基礎構造及び建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る建物の基礎構造は、地盤内に設けられた柱状改良体と、前記柱状改良体の上端に載置された基礎本体と、を有し、前記柱状改良体は、前記基礎本体の長手方向に見て、前記基礎本体の底面の角を通る所定の角度の破壊線よりも鉛直方向の下側にある境界によって上部と下部に区分され、前記上部の固化材の添加量が前記下部の固化材の添加量よりも多くなっている。なお、基礎本体の底面とは、基礎本体に形成されたフーチングの底面、フーチングが形成されていない立上り部のみの底面の両方を含む。
【0008】
請求項1の発明に係る建物の基礎構造では、柱状改良体の下部よりも上部の固化材の量を多くすることで、柱状改良体の上部の圧縮強度が下部の圧縮強度よりも高くなる。これにより、柱状改良体上に載置される基礎本体の底面の幅を柱状改良体の直径に対して短く設定しても、柱状改良体の圧壊が抑制されるので、基礎本体の底面の幅を狭くすることができる。さらに、柱状改良体の上部と下部で固化材の量を変更するだけでよく、別途、部材を設ける必要が無いので、基礎構造を構築するときの作業工数の増加を抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明に係る建物の基礎構造は、前記基礎本体の前記底面の幅が複数設定され、前記底面の幅に合わせて前記上部の鉛直方向の長さを変えた複数の前記柱状改良体が設けられている。
【0010】
請求項2の発明に係る建物の基礎構造では、基礎本体の底面の幅に合わせて固化材の量を変えることで、柱状改良体の上部の設定長さ及び圧縮強度が変えられるので、複数箇所それぞれで柱状改良体の外径を変えずに済み、底面の幅が複数種類ある基礎本体を有する基礎構造の施工を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明に係る建物の基礎構造は、建物の最も外周に設けられている前記基礎本体は、立上り部のみで構成されている。
【0012】
請求項3の発明に係る建物の基礎構造では、基礎構造の最外周を構成する基礎本体が立上り部のみであるので、フーチングによって工事範囲が狭められることが抑制され、災害時の沈下修復等の復旧工事の対応範囲を拡大することができる。
【0013】
請求項4の発明に係る建物の基礎構造は、前記破壊線の角度が45°である。
【0014】
請求項4の発明に係る建物の基礎構造では、圧縮強度を高める柱状改良体の上部の範囲が必要最小限の範囲となるので、固化材の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0015】
請求項5の発明に係る建物は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建物の基礎構造と、前記基礎本体で支持される建物躯体と、を有する。
【0016】
請求項5の発明に係る建物では、基礎本体の底面の幅を減らすことが可能となるので、隣地との敷地境界線からの建物の離隔距離を狭くして、建築面積を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る建物の基礎構造によれば、基礎構造を構築するときの作業工数の増加を抑制すると共に基礎本体の底面の幅を狭くすることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項2に記載の本発明に係る建物の基礎構造によれば、底面の幅が複数種類ある基礎本体を有する基礎構造の施工を容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係る建物の基礎構造によれば、災害時の沈下修復等の復旧工事の対応範囲を拡大することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項4の発明に係る建物の基礎構造では、固化材の使用量を必要最小限に抑えることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項5に記載の本発明に係る建物によれば、隣地との敷地境界線からの建物の離隔距離を狭くして、建築面積を大きくすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るユニット建物の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る基礎本体及び杭の配置状態を示す説明図である。
【図3】(A)、(B)本実施形態に係る基礎本体及び杭の縦断面の模式図である。
【図4】本実施形態に係る基礎本体及び杭の縦断面の模式図である。
【図5】本実施形態に係る基礎本体及び杭の配置状態の他の実施例を示す説明図である。
【図6】第1比較例に係る基礎本体及び杭の縦断面の模式図である。
【図7】(A)本実施形態に係る杭基礎の隣地との境界線からの離隔距離を示す模式図である。(B)第2比較例に係る杭基礎の隣地との境界線からの離隔距離を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る建物の基礎構造及び建物の一例について説明する。
【0024】
図1には、本実施形態の建物の一例としてのユニット建物10の一部が示されている。ユニット建物10は、複数の建物ユニット18が、地盤22上に設けられた建物の基礎構造の一例としての基礎構造体20上において桁方向(矢印X方向)及び妻方向(矢印Y方向)に隣接して配置され、順次据え付けられていくことにより構成されている。また、建物ユニット18は、建物躯体の一例としての複数本の柱12、天井大梁14、及び床大梁16にて箱形状に骨組みが配置された構成となっている。
【0025】
なお、図1のユニット建物10は1階のみが示されているが、建物ユニット18を1階の建物ユニット18の上に配置して2階建て以上にすることもできる。また、ユニット建物10の構成は、上記構成に限られることなく、他の箱形の架構構造であっても良い。ここで、図2に示すように、ユニット建物10は、隣地Eとの敷地境界線Kで囲まれた敷地11に設けられている。
【0026】
図2において、基礎構造体20は、一例として、フーチングが無く基礎の外周部を形成する基礎本体44と、フーチング34Bを有し基礎本体44よりも内側の敷地11に格子状に設けられた基礎本体34と、基礎本体34の複数箇所に設けられた第1杭基礎30と、基礎本体44の複数箇所に設けられた第2杭基礎40とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、第1杭基礎30及び第2杭基礎40が桁方向、妻方向で同様の構成であるとして、桁方向の第1杭基礎30及び第2杭基礎40について説明し、妻方向の第1杭基礎30及び第2杭基礎40の説明を省略する。
【0027】
図3(A)には、図2における第1杭基礎30のA−A´の断面が示されている。第1杭基礎30は、地盤22に埋設され鉛直方向(矢印Z方向)を軸方向とする柱状改良体の一例としての円柱状の杭32と、杭32の上面32Cに載置され下部が地盤22に埋設されたコンクリート製の基礎本体34と、を含んで構成されている。そして、地盤22内で杭32の上端部の外周よりも外側には、砕石層36が設けられている。
【0028】
杭32は、地盤22の土とセメント系の固化材を混合して直径dの円柱状に形成されたものであり、鉛直方向で上側に位置する上部32Aと、上部32Aの下側に一体に形成された下部32Bとを備えている。上部32Aと下部32Bは、鉛直方向(杭32の軸方向)における上端である上面32Cからの長さがL1となる深さ位置を表す仮想の境界線M1(境界面に相当)を境に区分されている。また、上部32Aは、固化材の添加量が下部32Bの固化材の添加量よりも多くなっており、即ち、上部32Aの圧縮強度が下部32Bの圧縮強度よりも高くなっている。なお、長さL1の設定方法については後述する。
【0029】
基礎本体34は、鉛直方向に一定幅で延びる立上り部34Aと、立上り部34Aの下端に一体的に形成されて妻方向(矢印Y方向)に幅W1(底面34Cの幅に相当)で拡幅されたフーチング34Bと、を含んで構成されており、Y−Z断面形状が逆T字形状とされている。また、基礎本体34では、図示を省略するが、立上り部34Aの幅方向の中心線がフーチング34Bの幅方向の中心線と一致しており、Y−Z断面形状が左右対称の形状となっている。そして、第1杭基礎30では、フーチング34Bの幅方向の中心線と杭32の軸心とが一致する様に、杭32とフーチング34Bとの相対的な位置が決められている。
【0030】
一方、図3(B)には、図2における第2杭基礎40のB−B´の断面が示されている。第2杭基礎40は、地盤22に埋設され鉛直方向(矢印Z方向)を軸方向とする柱状改良体の一例としての円柱状の杭42と、杭42の上面42Cに載置され下部が地盤22に埋設されたコンクリート製の基礎本体44と、を含んで構成されている。そして、地盤22内で杭42の上端部の外周よりも外側には、砕石層36が設けられている。
【0031】
杭42は、地盤22の土とセメント系の固化材を混合して直径dの円柱状に形成されたものであり、鉛直方向で上側に位置する上部42Aと、上部42Aの下側に一体に形成された下部42Bとを備えている。上部42Aと下部42Bは、鉛直方向(杭42の軸方向)における上端である上面42Cからの長さがL3となる深さ位置を表す仮想の境界線M2(境界面に相当)を境に区分されている。また、上部42Aは、固化材の添加量が下部42Bの固化材の添加量よりも多くなっており、即ち、上部42Aの圧縮強度が下部42Bの圧縮強度よりも高くなっている。なお、長さL2の設定方法については後述する。
【0032】
基礎本体44は、鉛直方向に一定幅で延び矢印Y方向の幅(底面44Aの幅)がW2の立上り部のみで構成されており、底部は拡幅されておらず、即ち、フーチングは形成されていない。また、基礎本体44では、図示を省略するが、基礎本体44の幅方向の中心線と杭42の軸心とが一致するように、杭42と基礎本体44との相対的な位置が決められている。なお、敷地境界線Kと基礎本体44の外側の側面との離隔距離をΔd1とする。
【0033】
図3(A)、(B)において、杭32、42の施工方法としては、地盤22を掘削機(図示省略)で掘削して土を地上へ排出し、排出された土とセメント系固化材とを攪拌混合して得られた混合土を再び杭孔へ戻す方法と、地盤22を掘削しながら、その場で土とセメント系固化材とを混合処理機(図示省略)によって攪拌混合する方法などがある。
【0034】
次に、仮想の境界線M1、M2までの長さL1、L3の設定方法について説明する。
【0035】
図4に示すように、第1杭基礎30において、フーチング34Bの底面から杭32に対して荷重F(ユニット建物10(図1参照)及び基礎本体34の荷重)が作用しているものとする。この場合、杭32における破壊線は、基礎本体34の長手方向(X方向)に見て、フーチング34Bの側面の下端位置(基礎本体34の底面の角)P1、P2から矢印Y方向(水平面)に対して角度θ(斜め下向き)で延びる破壊線Cで表される。
【0036】
ここで、角度θ=45°の破壊線Cを設定する。また、矢印Z方向(杭32の軸線方向に相当する鉛直方向)において、破壊線Cによる破壊の影響を受ける杭32の範囲が、上面32Cからの長さLの範囲であるとする。この場合、下端位置P1又は下端位置P2からの破壊線Cは、直角二等辺三角形の斜辺となり、L=(d−W1)/2で表すことができる。そして、少なくとも上面32Cからの長さがLより長い範囲となる杭32の上部の圧縮強度を上げておけば、杭32は荷重Fに対して耐えられることになる。
【0037】
一例として、杭32の上面32Cから仮想の境界線MKまでの長さを2Lで設定した場合は、上面32Cから仮想の境界線MKまでの長さはd−W1となる。そして、杭32において、上面32Cから仮想の境界線MKまでの範囲を上部32Aとし、仮想の境界線MKよりも下側を下部32Bとして、上部32Aの施工に用いる固化材の量を下部32Bの施工に用いる固化材の量よりも増やす。
【0038】
なお、図4は角度θ=45°で設定した場合であるが、角度θが45°を超える場合は、図3(A)に示すように、ユニット建物10(図1参照)及び基礎本体34の荷重に基づいて仮想の破壊線C1を設定する。そして、上面32Cの位置から仮想の破壊線C1が杭32の外周に到達する深さ位置までの長さL2に対して、上部32Aの長さL1の方が長くなるように長さL1を設定すればよい。ここで、L1>(d−W1)である。
【0039】
同様にして、図3(B)において、第2杭基礎40の破壊線C2の角度が45°の場合は、上面42Cから仮想の境界線M2までの長さL3が長さ(d−W2)よりも長くなるように、長さL3を設定する。一方、破壊線C2の角度が45°を超える場合は、ユニット建物10(図1参照)及び基礎本体44の荷重に基づいて仮想の破壊線C2を設定する。そして、上面42Cの位置から仮想の破壊線C2が杭42の外周に到達する深さ位置までの長さL4に対して、上部42Aの長さL3の方が長くなるように長さL3を設定すればよい。なお、L3>(d−W2)である。
【0040】
図3(A)、(B)において、破壊線C1、C2の角度(図4同様にθとするが、図示は省略)が45°以外となる場合の一例として、破壊線C1、C2が50°の場合には、例えば、tanθ=2×L/(d−W1)としてθに50°を代入して、長さL2、L4を算出することもできる。
【0041】
ここで、基礎本体のフーチング幅を狭くすればするほど、杭の圧縮強度を上げる部位の長さ(深さ)は長くなる。このため、W1>W2であればL1<L3となる。このように、各杭の上部の長さは、杭の直径dと基礎本体の底面の幅Wとに基づいて設定されるが、施工誤差(±α)を含んでいる。一例として、施工誤差α=500mmで設定しておくことができる。
【0042】
次に、第1比較例の基礎構造体100について説明する。
【0043】
図6に示すように、第1比較例の基礎構造体100は、杭基礎110を有しており、杭基礎110は、地盤22に埋設され鉛直方向を軸方向とする円柱状の杭112と、杭112の上面112Cに載置され下部が地盤22に埋設されたコンクリート製の基礎本体114と、を含んで構成されている。また、基礎本体114上には、図示しないユニット建物が載置され、基礎本体114により支持されている。
【0044】
杭112は、地盤22の土とセメント系の固化材を混合して直径dの円柱状に形成されており、軸方向(鉛直方向)において、含有する固化材の量は同等となっている。一方、基礎本体114は、鉛直方向に一定幅で延びる立上り部114Aと、立上り部114Aの下端に一体的に形成されて妻方向(矢印Y方向)に幅W3で拡幅されたフーチング114Bと、を含んで構成されており、Y−Z断面形状が逆T字形状とされている。そして、立上り部114Aの幅は、基礎本体44(図3(B)参照)の妻方向の幅と等しくなっており、フーチング114Bの幅W3は、杭112の直径dよりも大きくなっている。
【0045】
また、杭基礎110は、敷地境界線Kに近い側のフーチング114Bの側面から敷地境界線Kまでの距離が、前述の第2杭基礎40(図3(B)参照)における基礎本体44と敷地境界線Kとの離隔距離Δd1と等しくなるように設定されている。なお、敷地境界線Kに近い側の立上り部114Aの側面から敷地境界線Kまでの離隔距離をΔd2とする。
【0046】
ここで、第1比較例の基礎構造体100では、フーチング114Bを施工するための作業スペースを確保しなければならず、さらに、フーチング114B自体の幅W3を確保しなければならないので、必要となる離隔距離Δd2が離隔距離Δd1よりも長くなってしまう。これにより、敷地11内でのユニット建物(図示省略)の配置の自由度が低下し、建築面積が小さくなってしまう。
【0047】
次に、第2比較例の基礎構造体120について説明する。
【0048】
図7(B)に示すように、第2比較例の基礎構造体120は、杭基礎130を有しており、杭基礎130は、地盤22に埋設され鉛直方向を軸方向とする円柱状の杭132と、杭132の上面に載置され下部が地盤22に埋設されたコンクリート製の基礎本体134と、を含んで構成されている。また、基礎本体134上には、図示しないユニット建物が載置され、基礎本体134により支持されている。
【0049】
杭132は、地盤22の土とセメント系の固化材を混合して円柱状に形成されており、軸方向(鉛直方向)において、含有する固化材の量は同等となっている。一方、基礎本体134は、鉛直方向に一定幅で延びる立上り部134Aと、立上り部134Aの下端に一体的に形成されて妻方向(矢印Y方向)に拡幅されたフーチング134Bと、を含んで構成されている。そして、立上り部134Aの幅は、基礎本体44(図3(B)参照)の妻方向の幅と等しくなっており、フーチング134Bの幅は、杭132の直径よりも大きくなっている。
【0050】
また、杭基礎130は、敷地境界線Kに近い側のフーチング134Bの側面から敷地境界線Kまでの距離が、第2杭基礎40(図7(A)参照)における基礎本体44と敷地境界線Kとの離隔距離Δd3(第1比較例と区別するためにΔd1ではなくΔd3としている)と等しくなるように設定されている。なお、敷地境界線Kに近い側のフーチング134Bの側面から敷地境界線Kまでの離隔距離をΔd4とする。
【0051】
ここで、第2比較例の基礎構造体120では、出隅部G2の杭基礎130が被災して沈下復旧工事が必要となった場合、フーチング134Bが邪魔となり、敷地境界線Kから、敷地境界線K側のフーチング134Bの側面までの離隔距離Δd4(<Δd3)の領域S2でしか工事が行えず、工事の種類が限定されてしまうことになる。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0053】
図4に示す基礎構造体20の施工(ここでは第1杭基礎30)では、一例として、施工機械(図示省略)により地盤22を掘削して杭孔を形成する。続いて、この掘削で排出された土とセメント系固化材を攪拌混合して得られた混合土を再び杭孔へ戻して下側から押し固めていく。そして、杭32の施工位置(深さ)が仮想の境界線MKに到達する時点に合わせて固化材の量を増加させる。この固化材の増加量は、ユニット建物10(図1参照)及び基礎本体34の荷重Fに耐え得る圧縮強度となるように予め設定されている。このように、杭32の施工では、途中で固化材の量を変更するだけでよいので、打ち継ぐ手間や補強部材の設置作業等が省略でき、基礎構造体20としての作業工数の増加を抑制することができる。
【0054】
続いて、杭32上にフーチング34Bを備えた基礎本体34が構築されて第1杭基礎30が形成された後、基礎本体34上に建物18ユニット(図1参照)が順次据えつけられて、ユニット建物10(図1参照)が構築される。なお、第2杭基礎40についても同様の手順で形成されるため、第2杭基礎40の施工手順についての説明は省略する。
【0055】
杭32では、仮想の境界線MKよりも上側の上部32Aの圧縮強度が、仮想の境界線MKよりも下側の下部32Bの圧縮強度よりも高くなっている。そして、上部32Aの圧縮強度は、破壊線Cの破壊を抑制する強度となっている。このため、基礎本体34の底面(フーチング34B)の幅W1が杭32の直径dに対して短く設定されていても、杭32の圧壊を抑制することができる。即ち、基礎本体34の底面の幅を狭く設定することができる。さらに、フーチングを無くすことができるので、基礎重量を軽くすることができ、ユニット建物10(図1参照)の支持に必要な杭の本数も減って、施工費用を低減することができる。
【0056】
また、図2及び図3(A)、(B)に示すように、基礎構造体20では、基礎本体34、44の底面の幅W1、W2に合わせて固化材の添加量を変えることで、杭32、42における上部32A、42Aの長さL1、L3及び圧縮強度が変えられるので、杭32、42それぞれについて外径(直径)を変更(拡大)せずに済む。これにより、底面の幅が異なる基礎本体34、44に対して杭32、42を施工するときに、固化材の添加量を変更するだけでよく、同一の施工機械で施工が行えるので、複数種類の底面の幅(フーチング)を有する基礎構造体20の施工を容易に行うことができる。
【0057】
さらに、図3(B)に示すように、基礎構造体20の最外周を構成する杭基礎40では、フーチングが無いため、フーチングを施工するための作業スペースを確保する必要がなくなる。これにより、敷地境界線Kからの基礎本体44の離隔距離Δd1を第1比較例の基礎本体114の離隔距離Δd2(図6参照)よりも短く設定することができるので、敷地11内でのユニット建物10(図1参照)の配置の自由度が第1比較例に比べて向上し、ユニット建物10の幅を大きく(建築面積を大きく)することができる。
【0058】
加えて、図7(A)に示すように、基礎構造体20では、基礎構造体20の最外周を構成する基礎本体44にフーチングが形成されていないので、出隅部G1の杭基礎40が被災して沈下復旧工事が必要となった場合、敷地境界線Kから、敷地境界線K側の基礎本体44の側面までの離隔距離Δd3(>Δd4)の領域S1で工事を行うことができる。このように、第2比較例の領域S2(図7(B)参照)よりも広い領域S1で工事を行うことができ、即ち、復旧工事の対応範囲が拡大するので、復旧工事の種類が限定されることがなくなる。
【0059】
また、図3(A)、(B)、及び図4において、破壊線C(C1、C2)の角度θ=45°と設定した場合は、圧縮強度を高める杭32の上部32A、杭42の上部42Aの範囲が必要最小限の設定範囲となるので、上部32A、42Aの強化に使用する固化材の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0060】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0061】
基礎構造体20(図2参照)に換えて、図5に示すように、全ての基礎本体にフーチングが設けられていない基礎構造体60を用いてもよい。基礎構造体60は、基礎構造体20の基礎本体34におけるフーチング34Bを除いた構成となっており、立上り部34Aと杭32とを含んで第3杭基礎70が構成されている。
【0062】
また、基礎構造体20上に構築される建物は、ユニット建物10に限らず、ユニット建物10とは異なる施工方法により構築される建物であってもよい。
【0063】
角度θ=45°として、破壊線Cの角度を45°とすることが最も好ましいが、「破壊線45°」というのを近似値として、例えば45°±2°の近似値として定義して設定してもよい。また、破壊線Cの角度を45°に代えて、40°に設定したり、50°に設定したりしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 ユニット建物(建物の一例)
12 柱(建物躯体の一例)
14 天井大梁(建物躯体の一例)
16 床大梁(建物躯体の一例)
20 基礎構造体(建物の基礎構造の一例)
22 地盤
32 杭(柱状改良体の一例)
32A 上部
32B 下部
34 基礎本体
34C 底面
42 杭(柱状改良体の一例)
42A 上部
42B 下部
44 基礎本体(立上り部の一例)
44A 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に設けられた柱状改良体と、
前記柱状改良体の上端に載置された基礎本体と、
を有し、
前記柱状改良体は、前記基礎本体の長手方向に見て、前記基礎本体の底面の角を通る所定の角度の破壊線よりも鉛直方向の下側にある境界によって上部と下部に区分され、前記上部の固化材の添加量が前記下部の固化材の添加量よりも多くなっている建物の基礎構造。
【請求項2】
前記基礎本体の前記底面の幅が複数設定され、
前記底面の幅に合わせて前記上部の鉛直方向の長さを変えた複数の前記柱状改良体が設けられている請求項1に記載の建物の基礎構造。
【請求項3】
建物の最も外周に設けられている前記基礎本体は、立上り部のみで構成されている請求項1又は請求項2に記載の建物の基礎構造。
【請求項4】
前記破壊線の角度が45°である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建物の基礎構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建物の基礎構造と、
前記基礎本体で支持される建物躯体と、
を有する建物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate