建物の外壁構造及び壁パネル
【課題】意匠性に優れた外観とするとともに、壁パネルの外面に汚れが生じることを防止することができる建物の外壁構造を提供する。
【解決手段】外側面に複数枚の壁パネル21を配列した建物において、壁パネル21の上下両端を横方向に隣接する他の壁パネル21の上下両端と互い違いになるように配置する。横方向に隣接する壁パネル21間には、前面側の第1間隙29Aと奥側の第2間隙とを形成する。壁パネル21の上端縁には、雨水を第1間隙29Aに導くための導水板33を設ける。第2間隙をシール材やガスケット等で止水する。
【解決手段】外側面に複数枚の壁パネル21を配列した建物において、壁パネル21の上下両端を横方向に隣接する他の壁パネル21の上下両端と互い違いになるように配置する。横方向に隣接する壁パネル21間には、前面側の第1間隙29Aと奥側の第2間隙とを形成する。壁パネル21の上端縁には、雨水を第1間隙29Aに導くための導水板33を設ける。第2間隙をシール材やガスケット等で止水する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層階ビル等の建物における外壁構造及びその外壁構造に用いられる壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建物の外壁構造のひとつとして、建物の外側面に多数枚の壁パネルを配列した構造が知られている。このような外壁に用いられる壁パネルが特許文献1において提案されている。この特許文献1の壁パネルは、左右両端部間の中間部の前面が円弧状に膨らんだ形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-180112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1においては、前述した構成の壁パネルを使用して連続した曲面状のカーテンウォールを形成する技術が開示されているのみである。
この発明の目的は、外観意匠性に優れるばかりでなく、壁パネルを互い違いに配置したとしても、止水性に問題が生じることがない建物の外壁構造及びその外壁構造に用いられる壁パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この建物の外壁構造に関する発明は、外側面に複数枚の壁パネルを配列した建物において、横方向に隣接する壁パネル間に間隙を設け、各壁パネルを横方向に隣接する他の壁パネルと上下方向において互い違いに配置するとともに、上下両端部が横方向に重なるように配置し、前記間隙には前面開口側の広い幅の第1間隙と、奥部側の狭い幅の第2間隙とを形成し、前記第2間隙を弾性変形可能な止水手段によって閉塞したことを特徴とする。
【0006】
従って、この発明の建物の外壁構造においては、壁パネルの特徴を際立たせた良好な外観の建物とすることができる。また、幅の広い第1間隙を利用して雨水を排出でき、壁パネルの前面に雨水流下痕ができることを防止できる。さらに、狭い幅の第2間隙を閉塞することにより、建物内に雨水が侵入することを防止することができる。しかも、地震にともなう層間変位時には、壁パネルの変位を許容できて、壁パネルの損傷を防止できる。
【0007】
前記の構成において、前記壁パネルの上下の端縁を、上下方向の中央部の前面より後退させるとよい。
前記の構成において、縦方向に隣接する壁パネル間に窓用の開口のための間隔を設けるとよい。
【0008】
前記の構成において、前記壁パネルの横方向に対向する側面に突部を設けて、その突部間に前記第2間隙を形成するとよい。
前記の構成において、前記突部間に前記止水手段を構成するガスケットを設けるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記ガスケットの前面側及び上下両端部を覆うように、前記止水手段を構成するシール材を設けるとよい。
前記の構成において、前記壁パネルの上端面に排水溝を形成するとともに、その排水溝に対応するように、前記シール材の上下両端部に排水孔を形成するとよい。
【0010】
前記の構成において、壁パネルの上端縁には雨水を前記第1間隙に導くための導水板を設けるとよい。
前記の構成において、前記壁パネルと導水板との間にシール材を設けるとよい。
【0011】
前記の構成において、前記壁パネルの両側面に凹部を形成し、その凹部内に前記導水板の両側端部を入り込ませるとよい。
前記の構成において、建物の外側面と導水板との間に位置する水切り板を導水板の下面側に配置するとともに、その水切り板の両側端部を前記凹部内に入り込ませるとよい。
【0012】
前記の構成において、前記水切り板の前記凹部内の両端部に端部止水手段を設けるとよい。
前記の構成において、前記凹部の開口部を弾性変形可能なシール材によって閉塞するとよい。
【0013】
壁パネルに関する発明は、前面の両端が後退するように、両端間の中央部を厚く形成するとともに、両側面に凹部を形成し、両側面の両端部にパネル先端側に延びる突条を形成している。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明の建物の外壁構造によれば、良好な外観を得ることができるとともに、雨水を適切に排出できて、建物内への雨水の侵入を防止できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態を示す建物の斜視図。
【図2】図1の建物の外壁構造を拡大して示す部分正面図。
【図3】同外壁構造の壁パネルを拡大して示す斜視図。
【図4】図3の壁パネルをさらに拡大して示す部分斜視図。
【図5】(a)は壁パネルの上部の支持構成を示す断面図、(b)は壁パネルの下部の支持構成を示す断面図。
【図6】図2の6部分を拡大して示す要部正面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】図6の8−8線における断面図。
【図9】図6の外壁構造の諸部材を分解して示す要部斜視図。
【図10】図9の外壁構造における導水板の全体を示す平面図。
【図11】図6の11−11線における断面図。
【図12】壁パネルの下端縁のシール構造を示す部分断面図。
【図13】図6の13−13線における断面図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】図14の水切り板の両側端部のシール構造を示す要部分解斜視図。
【図16】層間変位時における壁パネルの移動を示す簡略図。
【図17】(a)〜(c)はそれぞれ平面部壁パネル,コーナ部壁パネルを示す断面図。
【図18】図7の横断面とほぼ同一の高さ位置において断面にして示す建物のコーナ部の部分断面図。
【図19】図13の横断面とほぼ同一の高さ位置において断面にして示す建物のコーナ部の部分断面図。
【図20】図19の建物のコーナ部における水切り板の側端部のシールブロックを拡大して示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の建物の外壁構造は、建物の外側面に多数枚の壁パネル21を配列することにより構成されている。そして、各壁パネル21の上下両端部が横方向に隣接する他の壁パネル21の上下両端部と互い違いに重なるように、かつ縦方向に隣接する他の壁パネル21との間に窓用の開口20が形成されるように間隔をおいて配置されている(以下、この配置を市松模様状という)。なお、後述するが、この外壁構造には、図17(a)〜(c)に示すように、平面部用の壁パネル21の他に、コーナ部用の壁パネル21A,21Bが用いられている。
【0017】
各壁パネル21,21A,21B間の開口20にはガラス窓22用のサッシ22aが配置されている。図5(a)(b)に示すように、各壁パネル21は、その上下2位置において壁パネル21,21A,21B内の鉄筋21dに固定したブラケット51と、建物の躯体の梁50に固定した金具52とを介して梁50に支持されている。壁パネル21,21A,21Bは、前記梁50に支持された窓用のサッシ22aの前方外側に位置している。図5(a)(b)において、10は床スラブを示す。
【0018】
以下に、建物のコーナ部を除いた平面部の構成を説明する。図3及び図4に示すように、前記壁パネル21はコンクリート材により全体として縦方向に延びる長方形状に形成され、その前面が上下方向の中央部ほど突出するように円弧曲面状に形成されている。従って、この形状により、壁パネル21が市松模様状に配置された状態で、壁パネル21の上端縁21a及び下端縁21bが、横方向に隣接する他の壁パネル21の前面よりも後退した位置に配置される。壁パネル21の裏面を除く表面には、多数のタイル23が表面部のみを露出した状態で埋設されている。
【0019】
前記壁パネル21の両側面の上部及び下部には、突部としての縦方向に延びる突条部24,25が突設されている。この突条部24,25が横方向に隣接する他の壁パネル21,21A,21Bの突条部24,25と対向する。上側突条部24の上端部は、壁パネル21の上端縁21aと同一高さ位置に形成されている。これに対して、下側突条部25の下端部は、壁パネル21の下端縁との間に空間26をおいて位置するように形成されている。各突条部24,25の外側面には、縦方向に延びる縦溝24a,25aが形成されている。
【0020】
前記両下側突条部25の上端部と対応する位置において壁パネル21の両側面には、一対の凹部27が形成されている。この凹部27は、壁パネル21が市松模様状に配置された状態で、隣接する他の壁パネル21の上端縁21aの位置に対応している。壁パネル21の上端縁21aには、横方向に延びる排水溝28が形成されている。
【0021】
図6及び図7に示すように、横方向に隣接する壁パネル21間には第1間隙29Aと第2間隙29Bとが形成されている。第1間隙29Aは壁パネル21の前面側に形成され、第2間隙29Bは第1間隙29Aの奥部において、横方向に対向する上側突条部24と下側突条部25との間に形成されている。第2間隙29Bは第1間隙29Aよりも狭く形成されている。この第2間隙29Bは、図16に2点鎖線で示すように、地震の際において壁パネル21が最大に変位しても、隣接する壁パネル21の突条部24,25どうしが接触しない幅となっている。
【0022】
図7に示すように、前記各壁パネル21における上側突条部24及び下側突条部25の縦溝24a,25aには、ゴム性の弾性材よりなる止水手段としてのチューブ状のガスケット30が接着固定されている。そして、隣接する壁パネル21間の前記第2間隙29Bを閉塞するように、両突条部24,25上のガスケット30が互いに弾性接触している。
【0023】
図11及び図12に示すように、前記ガスケット30の前面側及び上下両端を封止するように、隣接する壁パネル21の上側突条部24と下側突条部25との間には、第1シール材31が充填されている。第1シール材31における前記排水溝28と対応する部分には、雨水等の通過を許容するための貫通孔32Aが形成されている。さらに、前記貫通孔32Aと上下に対向するように、第1シール材31の下端部には貫通孔32Aからの雨水の外部への落下を許容する貫通孔32Bが形成されている。なお、第1シール材31の奥部側(第2間隙29B側)の下端部31bは前記空間26内の上部に位置している。従って、第1シール材31の下端部の下方には空間26が形成されている。
【0024】
図8に示すように、前記躯体の梁50(図5(a)に図示)に金具52を介して固定された別の金具53と、その金具53に固定された前記サッシ22aとの間には導水板33の後縁部がネジ36により固定されている。この導水板33は前部側において前記壁パネル21の上端縁21aの全体を覆うようになっている。導水板33の前縁部は壁パネル21の上端縁21aから前方へわずかに突出している。前記サッシ22aと金具53には前下がり階段状の水切り板34がネジ35,36によって固定されている。この水切り板34は前縁部が導水板33の下面に当接されて、ネジ37によって固定されている。なお、導水板33及び水切り板34をサッシ22aに固定する前記ネジ35,36は、縦方向あるいは横方向に延びる導水板33及び水切り板34のルーズホールを通っていて、この部分において施工誤差を吸収できるようになっている。
【0025】
図9及び図10に示すように、前記導水板33の両端前部には、前記壁パネル21間の第1間隙29Aと対応する切欠凹部33aが形成されている。導水板33の両端部及び後縁部には、水止め部33bが上方に向かって折り曲げ形成されている。導水板33の左右方向の中央部には、稜線となる山折り部33cが形成されている。導水板33において、山折り部33cの前端と両切欠凹部33aの内角部との間、及び山折り部33cの後端と両切欠凹部33aの内角部との間には、谷折り部33d,33eが形成されている。そして、谷折り部33d,33e及びそれに連なる斜面に沿って、導水板33上の雨水が両切欠凹部33aに導かれて、切欠凹部33aから前記第1間隙29Aに流れ落ちるようになっている。
【0026】
図14及び図15に示すように、前記水切り板34の両端部の前部側には水止め部34aが折曲げ形成されている。両水止め部34aの屈曲部34bから前方側の前半部には、端部止水手段としての第1シールブロック38が嵌着されている。前記両水止め部34aの外側面には、端部止水手段としての第2シールブロック39が接着されている。これらのシールブロック38,39は、シリコンゴムよりなる独立発泡のスポンジによって構成されている。第2シールブロック39は、水止め部34aの外側面に接合する第1接合面39aと、前記屈曲部34bの前面側において前記第1シールブロック38に接合する第2接合面39bと、水切り板34の下面に接合する第3接合面39cと、後述の第2シール材40が接合される第4接合面39dとを有している。この第1シールブロック38及び第2シールブロック39の取り付け状態で、水切り板34の前部側の両端部が隣接する壁パネル21の側面の凹部27内に位置されている。そして、水切り板34の上面に配置された導水板33の前部側の両端部も、同様に隣接する壁パネル21の凹部27内に位置されている。この状態においては、第2シールブロック39に水切り板34の水止め部34a及び下面が水密状に接合し、第1シールブロック38と第2シールブロック39とが水密状に接合し、さらに第2シールブロック39の上下両面が凹部27の内面に水密状に接合している。これらの接合により、第1,第2シールブロック38,39を介して導水板33及び水切り板34の両端部の前部側が凹部27の内面に支持されるとともに、水止めされるようになっている。なお、図14及び図15の第2シールブロック39は、図示左側のものであるが、図示右側のシールブロック39は図14及び図15のものに対して左右対称の形状である。
【0027】
図8及び図9に示すように、前記壁パネル21の上端縁21aの後縁部と水切り板34との間には、第2シール材40が設けられている。図15に示すように、この第2シール材40は、両端において第2シールブロック39の第4接合面39dに接合されるとともに、図11に示すように、両端部下面において前記第1シール材31の奥部側(前記第2間隙29B側)の上端部31aに接合されている。壁パネル21の上端縁21aの前縁部と導水板33との間には、第3シール材41が設けられている。図9及び図13に示すように、この第3シール材41の両端部には、壁パネル21の前端縁から側端縁を通って、前記第1シール材31の上端に接合された延長部41aが形成されている。
【0028】
図9、図13及び図14に示すように、前記凹部27内において、第3シール材41の延長部41aには、第4シール材42が接続されている。この第4シール材42は、凹部27の開口部を閉塞するとともに、導水板33の両端部においてその下面に接合し、そこから導水板33の前端部に接合して、導水板33の上面に接合されている。従って、第4シール材42は、凹部27の開口部と導水板33との間を水密状にシールしている。
【0029】
図8に示すように、前記導水板33の後縁部とサッシ22aとの間の間には第5シール材43が充填されている。図15に示すように、この第5シール材43の両端は前記第2シールブロック39の第1接合面39aに接合されている。
【0030】
前記第1〜第5シール材31,40〜43は、パテ状をなし、充填の硬化状態において、耐候性とゴム性の弾力性を備えている。
次に、図1に示す建物のコーナ部の外壁構造について説明する。このコーナ部においては、外壁パネル,導水板,水切り板,シール材,シールブロック等の部材の形状が平面部に使用されるものと相違するが、機能はほぼ同じである。
【0031】
すなわち、図17(b)(c)に示すように、建物のコーナ部においては、2種類の壁パネル21A,21Bが用いられる。図17(b)に示す壁パネル21Aは、ひとつの側面の奥側に約45度の傾斜面45Aが形成され、その傾斜面45A側の側面には上下の突条部24,25が形成されていない。図17(c)に示す壁パネル21Bは、別のひとつの側面の奥側に約45度の傾斜面45Bが形成され、その傾斜面45B側の側面には上下の突条部24,25が形成されていない。そして、図18及び図19に示すように、前記傾斜面45A,45Bが前記第2間隙29Bと同じ間隙をおいて対向配置されることにより、隣接する壁パネル21の側面間の前面側に広幅の第1間隙29Aが形成されている。
【0032】
コーナ部に用いられる前記導水板33,水切り板34はそれらの形状が傾斜面45A,45Bの角度にあわせて形状変更されている。ガスケット30は前述した平面部ものと同じものが用いられている。
【0033】
すなわち、第1間隙29Aの奥部の第2間隙29Bにおける傾斜面45A,45B間には、前記の場合と同様に、止水手段としてのガスケット30が配置されるとともに、そのガスケット30の前部及び上下両端部を包囲するように第1シール材31が設けられている。
【0034】
また、図19及び図20に示すように、建物のコーナ部に対応する導水板33及び水切り板34の端部は、前記壁パネル21の傾斜面45A,45Bに合わせて切り欠かれている。
【0035】
このコーナ部においては、水切り板34の端部に前記第1シールブロック38とは異なる形状の第1シールブロック138が嵌合されている。水切り板34の端部には第2シールブロック139が接合され、この第2シールブロック139は第1シールブロック138を受ける接合部139aを有しているが、この第2シールブロック139は接合部139a以外の部分が凹部27外に位置している。
【0036】
以上のように構成された建物の外壁構造においては、上下方向の中央部が膨らんだ各壁パネル21,21A,21Bが市松模様状に配列されている。そして、横方向に隣接する各壁パネル21,21A,21B間に広い幅の第1間隙29Aが形成されているため、各壁パネル21のデザインが際立ち、建物全体として新規で意匠性に優れた外観を得ることができる。そして、建物の平面部において、壁パネル21の奥部には、壁パネル21の突条部24,25によって幅狭の第2間隙29Bが形成されている。また、建物のコーナ部においては、壁パネル21A,21Bの傾斜面45A,45Bによって幅狭の第2間隙29Bが形成されている。そのため、その第2間隙29Bを利用して、シール材40等やガスケット30による適切な止水処理を施すことができる。
【0037】
地震の際には、壁パネル21,21A,21Bに対して各階の層間変位にともなう力が作用する。この場合、各壁パネル21,21A,21B間のガスケット30やシール材31が弾性変形されるとともに、壁パネル21,21A,21Bの凹部27内のシールブロック38,39や第4シール材42等が弾性変形される。このため、図16に2点鎖線で示すように、壁パネル21,21A,21Bの変位が許容されるとともに、前記第2間隙29Bが十分な幅を有しているため、壁パネル21,21A,21Bどうしの衝突は回避される。特に、建物のコーナ部においては、図18に矢印P,Qで示すように、壁パネル21A,21Bの変位方向が建物の面沿い方向であるため、面沿い方向に対して傾斜している第2間隙29Bの拡縮量は小さい。従って、コーナ部の第2間隙29Bは平面部の第2間隙29Bより狭くすることが可能である。なお、壁パネル21,21A,21Bはサッシ22aの前面側において、梁50に支持されているため、サッシ22aとはほとんど関係なく変位される。
【0038】
雨天時において、雨水は壁パネル21,21A,21B上の導水板33によって受け止められる。そして、この雨水は導水板33上の谷折り部33d,33eに沿って導水板33の両側前部の切欠凹部33aに向かって流れ、隣接する壁パネル21,21A,21B間の第1間隙29Aを通して流れ落ちる。そして、雨水は、壁パネル21,21A,21B間のシール材40,導水板33と壁パネル21,21A,21Bとの間のシール材41,水切り板34と壁パネル21,21A,21Bとの間のシール材42,壁パネル21の凹部27との間のシール材43,シールブロック38,39等によって止水されて、建物側への侵入が阻止される。
【0039】
また、何らかの原因によって、雨水が壁パネル21,21A,21Bの上端縁21aに入り込んだ場合は、その雨水は排水溝28を経てシール材31の上部の貫通孔32Aから第2間隙29Bを通って、下部の貫通孔32Bから外部に落下する。このとき、雨水はガスケット30によって建物側への侵入が阻止される。さらに、何らかの原因により雨水がサッシ22aの下側に入り込んだ場合は、水切り板34によって受けられ、室内側への侵入が防止される。しかも、導水板33上及び水切り板34上の雨水は、それらの板33,34の端部のシールブロック38,39や第4シール材42等によってブロックされるため、壁パネル21,21A,21Bの凹部27内を通って建物側に侵入することは防止される。
【0040】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この建物の外壁構造では、前記壁パネル21,21A,21Bを市松模様状に、かつ横方向の壁パネル21,21A,21B間に広幅の第1間隙29Aを形成することによって、壁パネル21,21A,21Bの曲面を際立たせた良好な外観意匠の建物とすることができる。しかも、広幅の第1間隙29Aを利用して雨水を排出できて、樋や排水パイプを設ける必要がないため、さらに良好な外観とすることができる。
【0041】
(2) この建物の外壁構造では、前記第1間隙29Aの奥部に狭い幅の第2間隙29Bが形成されている。従って、この狭い幅の第2間隙29Bを利用して、ガスケット30やシール材31等を適切に配置して、その第2間隙29Bを閉塞することができる。このため、壁パネル21間に広い第1間隙29Aを形成したとしても、建物内に雨水が侵入することを防止することができる。
【0042】
(3) この建物の外壁構造では、第1間隙29Aの幅が、地震にともなって変位される壁パネル21,21A,21Bの最大変位を見越して形成されているため、建物の外壁が損傷するおそれを無くすことができる。また、壁パネル21,21A,21Bがサッシ22aの前方側に設置されているため、サッシ22aの破損も防止される。
【0043】
(4) この建物の外壁構造では、壁パネル21の上端縁21aに、その上端縁21aから前方に突出する導水板33が設けられている。そして、この導水板33により雨水が第1間隙29Aに導かれる。このため、雨水が壁パネル21の前面に沿って流れ落ちることを少なくすることができて、壁パネル21に雨水流下痕による汚れが生じることを防止することができる。
【0044】
(5) この建物の外壁構造では、前記壁パネル21と導水板33との間にシール材41が設けられている。このため、壁パネル21の上端縁21aと導水板33との間から雨水が侵入することを抑制することができる。
【0045】
(6) この建物の外壁構造では、隣接する壁パネル21の両側面において、壁パネル21の上端縁21aと対応する上下方向位置には凹部27が形成され、その凹部27内に導水板33の両側端部が入り込むように構成されている。このため、導水板33の両端部が壁パネル21の外側に露出することを防止することができ、良好な外観を得ることができる。
【0046】
(7) この建物の外壁構造では、建物の外側面と導水板33との間に位置する前下がり階段状の水切り板34が導水板33の下面側に配置されるとともに、その水切り板34の両側端部が前記凹部27内に入り込むように構成されている。このため、水切り板34により建物側への雨水の侵入が防止されるとともに、導水板33及び水切り板34の端部を壁パネル21の凹部27により覆うことができて、前記と同様に良好な外観を得ることができる。
【0047】
(8) この建物の外壁構造では、前記凹部27の開口部がシール材42によって閉塞されるとともに、水切り板34の両端部に第1,第2シールブロック38,39が設けられている。このため、壁パネル21の凹部27から建物側に雨水が侵入するおそれを抑制することができる。
【0048】
(9) この建物の外壁構造では、第2間隙29Bの下部におけるシール材31の下端部31bの下方に空間26が形成されている。言い換えれば、シール材31の下端が上方に入り込んで、下方から見えにくいため、外観の向上に有効である。
【0049】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図3に2点鎖線で示すように、壁パネル21,21A,21Bとして、上下方向の中央側が直線的に突出した形状のものとすること。
【0050】
・ 壁パネル21,21A,21Bを窓用の開口20を設けることなく、上下方向に隙間無く、かつ横方向に互い違いに配列すること。
・ 導水板33を山折り部33cや谷折り部33dを形成することなく、フラットに形成すること。
【符号の説明】
【0051】
20…開口、21,21A,21B…壁パネル、21a…上端縁、24…上側突条部、25…下側突条部、27…凹部、28…排水溝、29A…第1間隙、29B…第2間隙、30…ガスケット、31…第1シール材、33…導水板、34…水切り板、38…第1シールブロック、39…第2シールブロック、40…第2シール材、41…第3シール材、42…第4シール材、138…第1シールブロック、139…第2シールブロック
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層階ビル等の建物における外壁構造及びその外壁構造に用いられる壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建物の外壁構造のひとつとして、建物の外側面に多数枚の壁パネルを配列した構造が知られている。このような外壁に用いられる壁パネルが特許文献1において提案されている。この特許文献1の壁パネルは、左右両端部間の中間部の前面が円弧状に膨らんだ形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-180112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1においては、前述した構成の壁パネルを使用して連続した曲面状のカーテンウォールを形成する技術が開示されているのみである。
この発明の目的は、外観意匠性に優れるばかりでなく、壁パネルを互い違いに配置したとしても、止水性に問題が生じることがない建物の外壁構造及びその外壁構造に用いられる壁パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この建物の外壁構造に関する発明は、外側面に複数枚の壁パネルを配列した建物において、横方向に隣接する壁パネル間に間隙を設け、各壁パネルを横方向に隣接する他の壁パネルと上下方向において互い違いに配置するとともに、上下両端部が横方向に重なるように配置し、前記間隙には前面開口側の広い幅の第1間隙と、奥部側の狭い幅の第2間隙とを形成し、前記第2間隙を弾性変形可能な止水手段によって閉塞したことを特徴とする。
【0006】
従って、この発明の建物の外壁構造においては、壁パネルの特徴を際立たせた良好な外観の建物とすることができる。また、幅の広い第1間隙を利用して雨水を排出でき、壁パネルの前面に雨水流下痕ができることを防止できる。さらに、狭い幅の第2間隙を閉塞することにより、建物内に雨水が侵入することを防止することができる。しかも、地震にともなう層間変位時には、壁パネルの変位を許容できて、壁パネルの損傷を防止できる。
【0007】
前記の構成において、前記壁パネルの上下の端縁を、上下方向の中央部の前面より後退させるとよい。
前記の構成において、縦方向に隣接する壁パネル間に窓用の開口のための間隔を設けるとよい。
【0008】
前記の構成において、前記壁パネルの横方向に対向する側面に突部を設けて、その突部間に前記第2間隙を形成するとよい。
前記の構成において、前記突部間に前記止水手段を構成するガスケットを設けるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記ガスケットの前面側及び上下両端部を覆うように、前記止水手段を構成するシール材を設けるとよい。
前記の構成において、前記壁パネルの上端面に排水溝を形成するとともに、その排水溝に対応するように、前記シール材の上下両端部に排水孔を形成するとよい。
【0010】
前記の構成において、壁パネルの上端縁には雨水を前記第1間隙に導くための導水板を設けるとよい。
前記の構成において、前記壁パネルと導水板との間にシール材を設けるとよい。
【0011】
前記の構成において、前記壁パネルの両側面に凹部を形成し、その凹部内に前記導水板の両側端部を入り込ませるとよい。
前記の構成において、建物の外側面と導水板との間に位置する水切り板を導水板の下面側に配置するとともに、その水切り板の両側端部を前記凹部内に入り込ませるとよい。
【0012】
前記の構成において、前記水切り板の前記凹部内の両端部に端部止水手段を設けるとよい。
前記の構成において、前記凹部の開口部を弾性変形可能なシール材によって閉塞するとよい。
【0013】
壁パネルに関する発明は、前面の両端が後退するように、両端間の中央部を厚く形成するとともに、両側面に凹部を形成し、両側面の両端部にパネル先端側に延びる突条を形成している。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明の建物の外壁構造によれば、良好な外観を得ることができるとともに、雨水を適切に排出できて、建物内への雨水の侵入を防止できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態を示す建物の斜視図。
【図2】図1の建物の外壁構造を拡大して示す部分正面図。
【図3】同外壁構造の壁パネルを拡大して示す斜視図。
【図4】図3の壁パネルをさらに拡大して示す部分斜視図。
【図5】(a)は壁パネルの上部の支持構成を示す断面図、(b)は壁パネルの下部の支持構成を示す断面図。
【図6】図2の6部分を拡大して示す要部正面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】図6の8−8線における断面図。
【図9】図6の外壁構造の諸部材を分解して示す要部斜視図。
【図10】図9の外壁構造における導水板の全体を示す平面図。
【図11】図6の11−11線における断面図。
【図12】壁パネルの下端縁のシール構造を示す部分断面図。
【図13】図6の13−13線における断面図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】図14の水切り板の両側端部のシール構造を示す要部分解斜視図。
【図16】層間変位時における壁パネルの移動を示す簡略図。
【図17】(a)〜(c)はそれぞれ平面部壁パネル,コーナ部壁パネルを示す断面図。
【図18】図7の横断面とほぼ同一の高さ位置において断面にして示す建物のコーナ部の部分断面図。
【図19】図13の横断面とほぼ同一の高さ位置において断面にして示す建物のコーナ部の部分断面図。
【図20】図19の建物のコーナ部における水切り板の側端部のシールブロックを拡大して示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の建物の外壁構造は、建物の外側面に多数枚の壁パネル21を配列することにより構成されている。そして、各壁パネル21の上下両端部が横方向に隣接する他の壁パネル21の上下両端部と互い違いに重なるように、かつ縦方向に隣接する他の壁パネル21との間に窓用の開口20が形成されるように間隔をおいて配置されている(以下、この配置を市松模様状という)。なお、後述するが、この外壁構造には、図17(a)〜(c)に示すように、平面部用の壁パネル21の他に、コーナ部用の壁パネル21A,21Bが用いられている。
【0017】
各壁パネル21,21A,21B間の開口20にはガラス窓22用のサッシ22aが配置されている。図5(a)(b)に示すように、各壁パネル21は、その上下2位置において壁パネル21,21A,21B内の鉄筋21dに固定したブラケット51と、建物の躯体の梁50に固定した金具52とを介して梁50に支持されている。壁パネル21,21A,21Bは、前記梁50に支持された窓用のサッシ22aの前方外側に位置している。図5(a)(b)において、10は床スラブを示す。
【0018】
以下に、建物のコーナ部を除いた平面部の構成を説明する。図3及び図4に示すように、前記壁パネル21はコンクリート材により全体として縦方向に延びる長方形状に形成され、その前面が上下方向の中央部ほど突出するように円弧曲面状に形成されている。従って、この形状により、壁パネル21が市松模様状に配置された状態で、壁パネル21の上端縁21a及び下端縁21bが、横方向に隣接する他の壁パネル21の前面よりも後退した位置に配置される。壁パネル21の裏面を除く表面には、多数のタイル23が表面部のみを露出した状態で埋設されている。
【0019】
前記壁パネル21の両側面の上部及び下部には、突部としての縦方向に延びる突条部24,25が突設されている。この突条部24,25が横方向に隣接する他の壁パネル21,21A,21Bの突条部24,25と対向する。上側突条部24の上端部は、壁パネル21の上端縁21aと同一高さ位置に形成されている。これに対して、下側突条部25の下端部は、壁パネル21の下端縁との間に空間26をおいて位置するように形成されている。各突条部24,25の外側面には、縦方向に延びる縦溝24a,25aが形成されている。
【0020】
前記両下側突条部25の上端部と対応する位置において壁パネル21の両側面には、一対の凹部27が形成されている。この凹部27は、壁パネル21が市松模様状に配置された状態で、隣接する他の壁パネル21の上端縁21aの位置に対応している。壁パネル21の上端縁21aには、横方向に延びる排水溝28が形成されている。
【0021】
図6及び図7に示すように、横方向に隣接する壁パネル21間には第1間隙29Aと第2間隙29Bとが形成されている。第1間隙29Aは壁パネル21の前面側に形成され、第2間隙29Bは第1間隙29Aの奥部において、横方向に対向する上側突条部24と下側突条部25との間に形成されている。第2間隙29Bは第1間隙29Aよりも狭く形成されている。この第2間隙29Bは、図16に2点鎖線で示すように、地震の際において壁パネル21が最大に変位しても、隣接する壁パネル21の突条部24,25どうしが接触しない幅となっている。
【0022】
図7に示すように、前記各壁パネル21における上側突条部24及び下側突条部25の縦溝24a,25aには、ゴム性の弾性材よりなる止水手段としてのチューブ状のガスケット30が接着固定されている。そして、隣接する壁パネル21間の前記第2間隙29Bを閉塞するように、両突条部24,25上のガスケット30が互いに弾性接触している。
【0023】
図11及び図12に示すように、前記ガスケット30の前面側及び上下両端を封止するように、隣接する壁パネル21の上側突条部24と下側突条部25との間には、第1シール材31が充填されている。第1シール材31における前記排水溝28と対応する部分には、雨水等の通過を許容するための貫通孔32Aが形成されている。さらに、前記貫通孔32Aと上下に対向するように、第1シール材31の下端部には貫通孔32Aからの雨水の外部への落下を許容する貫通孔32Bが形成されている。なお、第1シール材31の奥部側(第2間隙29B側)の下端部31bは前記空間26内の上部に位置している。従って、第1シール材31の下端部の下方には空間26が形成されている。
【0024】
図8に示すように、前記躯体の梁50(図5(a)に図示)に金具52を介して固定された別の金具53と、その金具53に固定された前記サッシ22aとの間には導水板33の後縁部がネジ36により固定されている。この導水板33は前部側において前記壁パネル21の上端縁21aの全体を覆うようになっている。導水板33の前縁部は壁パネル21の上端縁21aから前方へわずかに突出している。前記サッシ22aと金具53には前下がり階段状の水切り板34がネジ35,36によって固定されている。この水切り板34は前縁部が導水板33の下面に当接されて、ネジ37によって固定されている。なお、導水板33及び水切り板34をサッシ22aに固定する前記ネジ35,36は、縦方向あるいは横方向に延びる導水板33及び水切り板34のルーズホールを通っていて、この部分において施工誤差を吸収できるようになっている。
【0025】
図9及び図10に示すように、前記導水板33の両端前部には、前記壁パネル21間の第1間隙29Aと対応する切欠凹部33aが形成されている。導水板33の両端部及び後縁部には、水止め部33bが上方に向かって折り曲げ形成されている。導水板33の左右方向の中央部には、稜線となる山折り部33cが形成されている。導水板33において、山折り部33cの前端と両切欠凹部33aの内角部との間、及び山折り部33cの後端と両切欠凹部33aの内角部との間には、谷折り部33d,33eが形成されている。そして、谷折り部33d,33e及びそれに連なる斜面に沿って、導水板33上の雨水が両切欠凹部33aに導かれて、切欠凹部33aから前記第1間隙29Aに流れ落ちるようになっている。
【0026】
図14及び図15に示すように、前記水切り板34の両端部の前部側には水止め部34aが折曲げ形成されている。両水止め部34aの屈曲部34bから前方側の前半部には、端部止水手段としての第1シールブロック38が嵌着されている。前記両水止め部34aの外側面には、端部止水手段としての第2シールブロック39が接着されている。これらのシールブロック38,39は、シリコンゴムよりなる独立発泡のスポンジによって構成されている。第2シールブロック39は、水止め部34aの外側面に接合する第1接合面39aと、前記屈曲部34bの前面側において前記第1シールブロック38に接合する第2接合面39bと、水切り板34の下面に接合する第3接合面39cと、後述の第2シール材40が接合される第4接合面39dとを有している。この第1シールブロック38及び第2シールブロック39の取り付け状態で、水切り板34の前部側の両端部が隣接する壁パネル21の側面の凹部27内に位置されている。そして、水切り板34の上面に配置された導水板33の前部側の両端部も、同様に隣接する壁パネル21の凹部27内に位置されている。この状態においては、第2シールブロック39に水切り板34の水止め部34a及び下面が水密状に接合し、第1シールブロック38と第2シールブロック39とが水密状に接合し、さらに第2シールブロック39の上下両面が凹部27の内面に水密状に接合している。これらの接合により、第1,第2シールブロック38,39を介して導水板33及び水切り板34の両端部の前部側が凹部27の内面に支持されるとともに、水止めされるようになっている。なお、図14及び図15の第2シールブロック39は、図示左側のものであるが、図示右側のシールブロック39は図14及び図15のものに対して左右対称の形状である。
【0027】
図8及び図9に示すように、前記壁パネル21の上端縁21aの後縁部と水切り板34との間には、第2シール材40が設けられている。図15に示すように、この第2シール材40は、両端において第2シールブロック39の第4接合面39dに接合されるとともに、図11に示すように、両端部下面において前記第1シール材31の奥部側(前記第2間隙29B側)の上端部31aに接合されている。壁パネル21の上端縁21aの前縁部と導水板33との間には、第3シール材41が設けられている。図9及び図13に示すように、この第3シール材41の両端部には、壁パネル21の前端縁から側端縁を通って、前記第1シール材31の上端に接合された延長部41aが形成されている。
【0028】
図9、図13及び図14に示すように、前記凹部27内において、第3シール材41の延長部41aには、第4シール材42が接続されている。この第4シール材42は、凹部27の開口部を閉塞するとともに、導水板33の両端部においてその下面に接合し、そこから導水板33の前端部に接合して、導水板33の上面に接合されている。従って、第4シール材42は、凹部27の開口部と導水板33との間を水密状にシールしている。
【0029】
図8に示すように、前記導水板33の後縁部とサッシ22aとの間の間には第5シール材43が充填されている。図15に示すように、この第5シール材43の両端は前記第2シールブロック39の第1接合面39aに接合されている。
【0030】
前記第1〜第5シール材31,40〜43は、パテ状をなし、充填の硬化状態において、耐候性とゴム性の弾力性を備えている。
次に、図1に示す建物のコーナ部の外壁構造について説明する。このコーナ部においては、外壁パネル,導水板,水切り板,シール材,シールブロック等の部材の形状が平面部に使用されるものと相違するが、機能はほぼ同じである。
【0031】
すなわち、図17(b)(c)に示すように、建物のコーナ部においては、2種類の壁パネル21A,21Bが用いられる。図17(b)に示す壁パネル21Aは、ひとつの側面の奥側に約45度の傾斜面45Aが形成され、その傾斜面45A側の側面には上下の突条部24,25が形成されていない。図17(c)に示す壁パネル21Bは、別のひとつの側面の奥側に約45度の傾斜面45Bが形成され、その傾斜面45B側の側面には上下の突条部24,25が形成されていない。そして、図18及び図19に示すように、前記傾斜面45A,45Bが前記第2間隙29Bと同じ間隙をおいて対向配置されることにより、隣接する壁パネル21の側面間の前面側に広幅の第1間隙29Aが形成されている。
【0032】
コーナ部に用いられる前記導水板33,水切り板34はそれらの形状が傾斜面45A,45Bの角度にあわせて形状変更されている。ガスケット30は前述した平面部ものと同じものが用いられている。
【0033】
すなわち、第1間隙29Aの奥部の第2間隙29Bにおける傾斜面45A,45B間には、前記の場合と同様に、止水手段としてのガスケット30が配置されるとともに、そのガスケット30の前部及び上下両端部を包囲するように第1シール材31が設けられている。
【0034】
また、図19及び図20に示すように、建物のコーナ部に対応する導水板33及び水切り板34の端部は、前記壁パネル21の傾斜面45A,45Bに合わせて切り欠かれている。
【0035】
このコーナ部においては、水切り板34の端部に前記第1シールブロック38とは異なる形状の第1シールブロック138が嵌合されている。水切り板34の端部には第2シールブロック139が接合され、この第2シールブロック139は第1シールブロック138を受ける接合部139aを有しているが、この第2シールブロック139は接合部139a以外の部分が凹部27外に位置している。
【0036】
以上のように構成された建物の外壁構造においては、上下方向の中央部が膨らんだ各壁パネル21,21A,21Bが市松模様状に配列されている。そして、横方向に隣接する各壁パネル21,21A,21B間に広い幅の第1間隙29Aが形成されているため、各壁パネル21のデザインが際立ち、建物全体として新規で意匠性に優れた外観を得ることができる。そして、建物の平面部において、壁パネル21の奥部には、壁パネル21の突条部24,25によって幅狭の第2間隙29Bが形成されている。また、建物のコーナ部においては、壁パネル21A,21Bの傾斜面45A,45Bによって幅狭の第2間隙29Bが形成されている。そのため、その第2間隙29Bを利用して、シール材40等やガスケット30による適切な止水処理を施すことができる。
【0037】
地震の際には、壁パネル21,21A,21Bに対して各階の層間変位にともなう力が作用する。この場合、各壁パネル21,21A,21B間のガスケット30やシール材31が弾性変形されるとともに、壁パネル21,21A,21Bの凹部27内のシールブロック38,39や第4シール材42等が弾性変形される。このため、図16に2点鎖線で示すように、壁パネル21,21A,21Bの変位が許容されるとともに、前記第2間隙29Bが十分な幅を有しているため、壁パネル21,21A,21Bどうしの衝突は回避される。特に、建物のコーナ部においては、図18に矢印P,Qで示すように、壁パネル21A,21Bの変位方向が建物の面沿い方向であるため、面沿い方向に対して傾斜している第2間隙29Bの拡縮量は小さい。従って、コーナ部の第2間隙29Bは平面部の第2間隙29Bより狭くすることが可能である。なお、壁パネル21,21A,21Bはサッシ22aの前面側において、梁50に支持されているため、サッシ22aとはほとんど関係なく変位される。
【0038】
雨天時において、雨水は壁パネル21,21A,21B上の導水板33によって受け止められる。そして、この雨水は導水板33上の谷折り部33d,33eに沿って導水板33の両側前部の切欠凹部33aに向かって流れ、隣接する壁パネル21,21A,21B間の第1間隙29Aを通して流れ落ちる。そして、雨水は、壁パネル21,21A,21B間のシール材40,導水板33と壁パネル21,21A,21Bとの間のシール材41,水切り板34と壁パネル21,21A,21Bとの間のシール材42,壁パネル21の凹部27との間のシール材43,シールブロック38,39等によって止水されて、建物側への侵入が阻止される。
【0039】
また、何らかの原因によって、雨水が壁パネル21,21A,21Bの上端縁21aに入り込んだ場合は、その雨水は排水溝28を経てシール材31の上部の貫通孔32Aから第2間隙29Bを通って、下部の貫通孔32Bから外部に落下する。このとき、雨水はガスケット30によって建物側への侵入が阻止される。さらに、何らかの原因により雨水がサッシ22aの下側に入り込んだ場合は、水切り板34によって受けられ、室内側への侵入が防止される。しかも、導水板33上及び水切り板34上の雨水は、それらの板33,34の端部のシールブロック38,39や第4シール材42等によってブロックされるため、壁パネル21,21A,21Bの凹部27内を通って建物側に侵入することは防止される。
【0040】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この建物の外壁構造では、前記壁パネル21,21A,21Bを市松模様状に、かつ横方向の壁パネル21,21A,21B間に広幅の第1間隙29Aを形成することによって、壁パネル21,21A,21Bの曲面を際立たせた良好な外観意匠の建物とすることができる。しかも、広幅の第1間隙29Aを利用して雨水を排出できて、樋や排水パイプを設ける必要がないため、さらに良好な外観とすることができる。
【0041】
(2) この建物の外壁構造では、前記第1間隙29Aの奥部に狭い幅の第2間隙29Bが形成されている。従って、この狭い幅の第2間隙29Bを利用して、ガスケット30やシール材31等を適切に配置して、その第2間隙29Bを閉塞することができる。このため、壁パネル21間に広い第1間隙29Aを形成したとしても、建物内に雨水が侵入することを防止することができる。
【0042】
(3) この建物の外壁構造では、第1間隙29Aの幅が、地震にともなって変位される壁パネル21,21A,21Bの最大変位を見越して形成されているため、建物の外壁が損傷するおそれを無くすことができる。また、壁パネル21,21A,21Bがサッシ22aの前方側に設置されているため、サッシ22aの破損も防止される。
【0043】
(4) この建物の外壁構造では、壁パネル21の上端縁21aに、その上端縁21aから前方に突出する導水板33が設けられている。そして、この導水板33により雨水が第1間隙29Aに導かれる。このため、雨水が壁パネル21の前面に沿って流れ落ちることを少なくすることができて、壁パネル21に雨水流下痕による汚れが生じることを防止することができる。
【0044】
(5) この建物の外壁構造では、前記壁パネル21と導水板33との間にシール材41が設けられている。このため、壁パネル21の上端縁21aと導水板33との間から雨水が侵入することを抑制することができる。
【0045】
(6) この建物の外壁構造では、隣接する壁パネル21の両側面において、壁パネル21の上端縁21aと対応する上下方向位置には凹部27が形成され、その凹部27内に導水板33の両側端部が入り込むように構成されている。このため、導水板33の両端部が壁パネル21の外側に露出することを防止することができ、良好な外観を得ることができる。
【0046】
(7) この建物の外壁構造では、建物の外側面と導水板33との間に位置する前下がり階段状の水切り板34が導水板33の下面側に配置されるとともに、その水切り板34の両側端部が前記凹部27内に入り込むように構成されている。このため、水切り板34により建物側への雨水の侵入が防止されるとともに、導水板33及び水切り板34の端部を壁パネル21の凹部27により覆うことができて、前記と同様に良好な外観を得ることができる。
【0047】
(8) この建物の外壁構造では、前記凹部27の開口部がシール材42によって閉塞されるとともに、水切り板34の両端部に第1,第2シールブロック38,39が設けられている。このため、壁パネル21の凹部27から建物側に雨水が侵入するおそれを抑制することができる。
【0048】
(9) この建物の外壁構造では、第2間隙29Bの下部におけるシール材31の下端部31bの下方に空間26が形成されている。言い換えれば、シール材31の下端が上方に入り込んで、下方から見えにくいため、外観の向上に有効である。
【0049】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図3に2点鎖線で示すように、壁パネル21,21A,21Bとして、上下方向の中央側が直線的に突出した形状のものとすること。
【0050】
・ 壁パネル21,21A,21Bを窓用の開口20を設けることなく、上下方向に隙間無く、かつ横方向に互い違いに配列すること。
・ 導水板33を山折り部33cや谷折り部33dを形成することなく、フラットに形成すること。
【符号の説明】
【0051】
20…開口、21,21A,21B…壁パネル、21a…上端縁、24…上側突条部、25…下側突条部、27…凹部、28…排水溝、29A…第1間隙、29B…第2間隙、30…ガスケット、31…第1シール材、33…導水板、34…水切り板、38…第1シールブロック、39…第2シールブロック、40…第2シール材、41…第3シール材、42…第4シール材、138…第1シールブロック、139…第2シールブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面に複数枚の壁パネルを配列した建物において、
横方向に隣接する壁パネル間に間隙を設け、
各壁パネルを横方向に隣接する他の壁パネルと上下方向において互い違いに配置するとともに、上下両端部が横方向に重なるように配置し、
前記間隙には前面開口側の広い幅の第1間隙と、奥部側の狭い幅の第2間隙とを形成し、
前記第2間隙を弾性変形可能な止水手段によって閉塞したことを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項2】
前記壁パネルの上下の端縁を、上下方向の中央部の前面より後退させたことを特徴とする請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
縦方向に隣接する壁パネル間に窓用の開口のための間隔を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の建物の外壁構造。
【請求項4】
前記壁パネルの横方向に対向する側面に突部を設けて、その突部間に前記第2間隙を形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の建物の外壁構造。
【請求項5】
前記突部間に前記止水手段を構成するガスケットを設けたことを特徴とする請求項4に記載の建物の外壁構造。
【請求項6】
前記ガスケットの前面側及び上下両端部を覆うように、前記止水手段を構成するシール材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁構造。
【請求項7】
前記壁パネルの上端面に排水溝を形成するとともに、その排水溝に対応するように、前記シール材の上下両端部に排水孔を形成したことを特徴とする請求項6に記載の建物の外壁構造。
【請求項8】
壁パネルの上端縁には雨水を前記第1間隙に導くための導水板を設けたことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の建物の外壁構造。
【請求項9】
前記壁パネルと導水板との間にシール材を設けたことを特徴とする請求項8に記載の建物の外壁構造。
【請求項10】
前記壁パネルの両側面に凹部を形成し、その凹部内に前記導水板の両側端部を入り込ませたことを特徴とする請求項8に記載の建物の外壁構造。
【請求項11】
建物の外側面と導水板との間に位置する水切り板を導水板の下面側に配置するとともに、その水切り板の両側端部を前記凹部内に入り込ませたことを特徴とする請求項10に記載の建物の外壁構造。
【請求項12】
前記水切り板の前記凹部内の両端部に端部止水手段を設けたことを特徴とする請求項11に記載の建物の外壁構造。
【請求項13】
前記凹部の開口部を弾性変形可能なシール材によって閉塞したことを特徴とする請求項11または12に記載の建物の外壁構造。
【請求項14】
前面の両端が後退するように、両端間の中央部を厚く形成するとともに、両側面に凹部を形成し、両側面の両端部にパネル先端側に延びる突条を形成したことを特徴とする壁パネル。
【請求項1】
外側面に複数枚の壁パネルを配列した建物において、
横方向に隣接する壁パネル間に間隙を設け、
各壁パネルを横方向に隣接する他の壁パネルと上下方向において互い違いに配置するとともに、上下両端部が横方向に重なるように配置し、
前記間隙には前面開口側の広い幅の第1間隙と、奥部側の狭い幅の第2間隙とを形成し、
前記第2間隙を弾性変形可能な止水手段によって閉塞したことを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項2】
前記壁パネルの上下の端縁を、上下方向の中央部の前面より後退させたことを特徴とする請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
縦方向に隣接する壁パネル間に窓用の開口のための間隔を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の建物の外壁構造。
【請求項4】
前記壁パネルの横方向に対向する側面に突部を設けて、その突部間に前記第2間隙を形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の建物の外壁構造。
【請求項5】
前記突部間に前記止水手段を構成するガスケットを設けたことを特徴とする請求項4に記載の建物の外壁構造。
【請求項6】
前記ガスケットの前面側及び上下両端部を覆うように、前記止水手段を構成するシール材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁構造。
【請求項7】
前記壁パネルの上端面に排水溝を形成するとともに、その排水溝に対応するように、前記シール材の上下両端部に排水孔を形成したことを特徴とする請求項6に記載の建物の外壁構造。
【請求項8】
壁パネルの上端縁には雨水を前記第1間隙に導くための導水板を設けたことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の建物の外壁構造。
【請求項9】
前記壁パネルと導水板との間にシール材を設けたことを特徴とする請求項8に記載の建物の外壁構造。
【請求項10】
前記壁パネルの両側面に凹部を形成し、その凹部内に前記導水板の両側端部を入り込ませたことを特徴とする請求項8に記載の建物の外壁構造。
【請求項11】
建物の外側面と導水板との間に位置する水切り板を導水板の下面側に配置するとともに、その水切り板の両側端部を前記凹部内に入り込ませたことを特徴とする請求項10に記載の建物の外壁構造。
【請求項12】
前記水切り板の前記凹部内の両端部に端部止水手段を設けたことを特徴とする請求項11に記載の建物の外壁構造。
【請求項13】
前記凹部の開口部を弾性変形可能なシール材によって閉塞したことを特徴とする請求項11または12に記載の建物の外壁構造。
【請求項14】
前面の両端が後退するように、両端間の中央部を厚く形成するとともに、両側面に凹部を形成し、両側面の両端部にパネル先端側に延びる突条を形成したことを特徴とする壁パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−21299(P2012−21299A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158724(P2010−158724)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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