説明

建物の外装材、外装材の塗装劣化確認方法及び外装材の塗装方法

【課題】上塗りに劣化が生じていることを好適に確認することができる建物の外装材、外装材の塗装劣化確認方法及び外装材の塗装方法を提供する。
【解決手段】外壁材10は、矩形平板状の基材11を有し、基材11の表面には下塗り塗装層12が形成され、下塗り塗装層12の表面には上塗り塗装層13が形成されている。下塗り塗装層12には、所定の光が照射されることにより発光する蛍光物質18が含まれている。蛍光物質18としては、紫外線波長領域の光が照射されることにより発光する蛍光顔料が用いられている。上塗り塗装層13は、所定の光を透過しない非光透過層となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装材、外装材の塗装劣化確認方法及び外装材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、屋根材や外壁材等の外装材の表面側に意匠性を向上させるために着色塗装を施すことがある。この種の塗装では、まず外装材の基材表面にシーラ等により下塗りや中塗りを行って上塗りの下地となる下地塗装層を形成し、その後下地塗装層の表面に着色塗料により上塗りを行うのが一般的である。
【0003】
上塗りによって形成される上塗り塗装層は紫外線や風雨等の影響により経年劣化するものである。そのため、その劣化に伴い上塗り塗装層の膜厚が次第に小さくなり、場合によっては上塗り塗装層の一部に剥離が生じる。そこで、上塗りが劣化した場合には再塗装を行う等により外装材の補修を実施することとしている。
【0004】
また、上塗り塗装層に剥離が生じた場合には下地塗装層の一部が露出するため、その露出した部分において下地塗装層の劣化が生じることがある。この場合、下地塗装層の劣化が進行し下地塗装層の一部に剥離が生じると、基材表面の一部が露出してその露出した部分から基材の腐食が生じるおそれがある。基材の腐食が生じると再塗装による修復が困難となるため、塗装の経年劣化が生じた場合には、下地塗装層が劣化する前に、望ましくは上塗り塗装層が劣化した時点で再塗装を行うことが求められる。
【0005】
ところで、上塗りの経年劣化は、外装材の表面全域において緩やかに生じるものであるため上塗り塗装層の表面を単に目視するだけでは劣化を確認するのが困難である。そこで、上塗りの塗装劣化を判断する際には、例えばJISK5600−8−6に基づく劣化判断方法が用いられる(非特許文献1)。この方法は、粘着テープを上塗り塗装層に貼り付け、その後粘着テープを剥離することによりテープの粘着面に付着した塗料の量で劣化の度合いを判断するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本規格協会発行「JIS塗料一般試験方法 第8部:塗膜劣化の評価−、第6節:白亜化の等級JISK5600−8−6」,平成11年4月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1の方法では、粘着テープの種類や貼り付け方等により粘着テープへの上塗り塗料の付着量にばらつきが生じるおそれがある。そのため、かかる方法に基づき上塗りの塗装劣化が生じていないとの判断がなされた場合でも、実際は劣化が進行していることがありうる。この場合、上塗り塗装層の劣化に気づかない間に上塗り塗装層が剥離した部分から下地塗装層の劣化が生じ、さらにはその劣化が進行して下地塗装層が剥離し基材表面が露出するおそれがある。つまり、従来の劣化判断方法では、上塗り塗装層が劣化したことを適切に確認することが困難であるといえる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上塗りに劣化が生じていることを好適に確認することができる建物の外装材、外装材の塗装劣化確認方法及び外装材の塗装方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の外装材は、基材と、前記基材の表面側に形成された下地塗装層と、前記下地塗装層の表面に形成された上塗り塗装層と、を備えた建物の外装材において、前記下地塗装層には、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質が含まれており、前記上塗り塗装層は、前記所定の光を透過しない非光透過層であることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、上塗り塗装層が一部剥離する等して下地塗装層の一部が露出した場合に外装材の表面側に対し所定の光が照射されると、その露出した部位では下地塗装層に含まれた発光物質が発光し又は光反射物質が照射された光を反射する。そのため、上塗り塗装層が劣化したことを好適に確認することができる。
【0011】
また、製造工場において上塗りを行った後、上塗り塗装層の表面側に所定の光を照射し、発光物質による発光又は光反射物質による光反射が認められれば、その場合上塗り塗装層の一部に欠損が生じていることとなる。そのため、製造工場における上塗り後の塗装不良の確認についても好適に行うことができる。
【0012】
ここで、下地塗装層は、透明色又は半透明色により形成されているのが好ましい。そうすれば、下地塗装層に照射された光やその照射された光により発光物質が発した光(又は照射された光を光反射物質が反射した光)を下地塗装層において透過し易くすることができるため、上記の効果を得るにあたって都合がよい。
【0013】
第2の発明の建物の外装材は、第1の発明において、前記下地塗装層には、前記発光物質として、自然光とは異なる波長の光が照射された場合にのみ発光する物質が含まれていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、発光物質として自然光とは異なる波長の光が照射された場合にのみ発光する物質を用いているため、外装材の屋外設置時に上塗り塗装層が劣化し一部剥離したとしても、その剥離した部位において太陽光等の自然光により発光物質が発光するのを回避することができる。これにより、発光物質の発光により外観が損なわれるのを回避しつつ上記の効果を得ることができる。
【0015】
ここで、自然光とは異なる波長の光としては、例えば可視光よりも波長の短い紫外光や、可視光よりも波長の長い赤外光等の不可視光が挙げられる。
【0016】
第3の発明の建物の外装材は、第1の発明において、前記下地塗装層は、前記所定の光を透過する光透過層に、粒子状に形成された多数の前記光反射物質が混入されて形成されており、前記上塗り塗装層の消失部分において、前記光反射物質は、前記光透過層の劣化による露出からの時間経過に伴い光の反射強度が低下する性質を有することを特徴とする。
【0017】
下地塗装層に粒子状の光反射物質を多数含ませる構成とした場合、下地塗装層の劣化が進むにつれ露出する光反射物質の数は多くなる。ここで、本発明では、下地塗装層を、光透過層に粒子状の光反射物質を多数混入することにより形成し、光反射物質として、光透過層の劣化による露出からの時間経過に伴い光の反射強度が低下する物質を用いている。この場合、光透過層の劣化が進むにつれ露出して反射強度が低下する光反射物質が増えるため、光反射物質全体から反射される光の総量は減少する。そのため、光反射物質から反射される光の量(強度)を確認することで、下地塗装層の劣化の度合いを推定することができる。
【0018】
第4の発明の外装材の塗装劣化確認方法は、基材と、前記基材の表面側に形成され、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質を含む下地塗装層と、前記下地塗装層の表面に形成され、前記所定の光を透過しない非光透過層からなる上塗り塗装層と、を備えた建物の外装材に適用され、前記外装材の表面側に対し前記所定の光を照射して、前記発光物質の発光状況又は前記光反射物質からの光の反射状況を確認し、その確認結果に基づいて前記上塗り塗装層の劣化を判断することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、外装材の表面側に対し所定の光を照射し、発光物質の発光状況又は光反射物質からの光の反射状況を確認することで上塗り塗装層の劣化を判断できる。例えば、発光物質の発光又は光反射物質からの光反射が一部に認められれば、その部分において下地塗装層が露出していることを、すなわち上塗り塗装層が剥離等していることを確認できる。これにより、上塗り塗装層が劣化したことを好適に確認することができる。
【0020】
第5の発明の外装材の塗装方法は、基材の表面側に、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質を含む下地塗料を塗布することで下地塗装層を形成する下地工程と、前記下地塗装層の表面に上塗り塗料を塗布することで前記所定の光を透過しない非光透過層からなる上塗り塗装層を形成する上塗り工程と、を有する外装材の塗装方法であり、前記下地工程では、前記下地塗料において前記発光物質又は前記光反射物質を略均一に分布させるべく均一化処理を実施することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1の発明の建物の外装材を製造できるため、第1の発明と同様の効果を得ることができる。また、下地工程において、下地塗料に発光物質又は光反射物質を略均一に分布させる均一化処理を実施しているため、下地塗装層に発光物質又は光反射物質を均一に分布させることができる。したがって、上塗り塗装層におけるいずれの部位が剥離等しても、つまりは下地塗装層のいずれの部位が露出しても、外装材の表面側に所定の光を照射した場合に発光物質による発光又は光反射物質からの光反射を生じさせることができる。そのため、上塗り塗装層の劣化確認を行う上で好適な構成といえる。
【0022】
第6の発明の建物の外装材は、基材と、前記基材の表面側に形成された下地塗装層と、前記下地塗装層の表面に形成された上塗り塗装層と、を備えた建物の外装材において、前記下地塗装層と前記上塗り塗装層とは互いに異なる色に着色されており、前記上塗り塗装層が劣化した部位ではその劣化に伴い前記下地塗装層の色相が前記上塗り塗装層の表面側に現れ、前記上塗り塗装層の表面色が該上塗り塗装層の塗装色とは異なる色に変化することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、上塗り塗装層が劣化した部位ではその劣化に伴い下地塗装層の色相が上塗り塗装層の表面側に現れ、上塗り塗装層の表面色が当該上塗り塗装層の塗装色とは異なる色に変化するため、上塗り塗装層が劣化したことを好適に確認することができる。
【0024】
第7の発明の建物の外装材は、第6の発明において、前記上塗り塗装層の表面色が、前記上塗り塗装層の膜厚が小さくなるにつれて前記下地塗装層の塗装色へと変色していくことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、上塗り塗装層の膜厚が小さくなるに連れて上塗り塗装層の表面色が下地塗装層の塗装色へと変色していく。これにより、上塗り塗装層の表面色を確認することで、上塗り塗装層の劣化度合いを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態における外壁材を示す縦断面図。
【図2】外壁材の塗装作業を説明するための説明図。
【図3】塗装の劣化を確認する作業を説明するための説明図。
【図4】第2の実施形態における外壁材を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物の外装材として、建物の外壁面を形成する外壁材に対して本発明を具体化している。外壁材は、その裏側にブラケットが取り付けられて、ブラケットが梁等の構造体に固定されることにより建物の外周部に設置される。なお、図1は外壁材を示す縦断面図である。
【0028】
図1に示すように、外壁材10は、矩形平板状の基材11を有し、基材11の表面には下塗り塗装層12が形成され、下塗り塗装層12の表面には上塗り塗装層13が形成されている。基材11は、窯業系サイディングボードにより構成されている。
【0029】
下塗り塗装層12は、基材11の表面に下塗り塗料が塗布されることにより形成されており、この下塗り塗装層12が形成されることで上塗り塗装層13の密着性が高められている。下塗り塗料としてはクリア(透明の)シーラが用いられており、それ故下塗り塗装層12は無着色(透明)層となっている。つまり、下塗り塗装層12は光を透過する光透過層となっている。
【0030】
上塗り塗装層13は、耐候性を有する上塗り塗料が下塗り塗装層12の表面に上塗りされることにより形成されている。上塗り塗料としては、例えばアクリルシリコン系材料からなる着色塗料が用いられている。そのため、上塗り塗装層13は着色層となっており、例えば茶色に着色されている。
【0031】
各塗装層12,13は、例えばスプレー塗装により形成される。但し、塗装方法は、スプレー塗装に限定されることなくロール塗装等その他の方法を用いてもよい。
【0032】
ところで、本実施形態では、下塗り塗装層12に光が照射されることにより発光する発光物質を含ませており、その点に特徴を有している。以下、その詳細について説明する。
【0033】
下塗り塗装層12には、所定の光が照射されることにより発光する蛍光物質18(発光物質に相当)が含まれている。具体的には、蛍光物質18は所定の光が照射された場合には可視光を発し、所定の光とは異なる光が照射された場合にはかかる光を発しない性質を有している。本実施形態では、蛍光物質18として、所定の光としての紫外線波長領域の光が照射されることにより発光する蛍光顔料(無機系顔料)が用いられている。したがって、蛍光物質18は、太陽光等の自然光や蛍光灯の光が照射されても発光することがない。なお、かかる蛍光顔料としては、例えばZnS/Ag等を用いることができる。また、上塗り塗装層13は、紫外線波長領域の光を透過しない非光透過層となっている。
【0034】
蛍光物質18は粒子状に形成されており、例えば約10〜20μmの大きさを有している。本実施形態では、下塗り塗料に蛍光物質18を配合した混合塗料を予め作成し、その混合塗料を基材11の表面に塗布することで下塗り塗装層12に蛍光物質18を含ませることとしている。また、蛍光物質18は、下塗り塗装層12の全域にほぼ均一に分布して含まれている。
【0035】
次に、外壁材10を塗装する際の作業内容について図2に基づいて説明する。なお、図2は外壁材10の塗装作業を説明するための説明図である。
【0036】
図2に示すように、外壁材10の塗装作業は基材11をベルトコンベア21上に載置した(寝かせた)状態で行われる。具体的には、基材11は、その表面側が上方に向けられた状態でベルトコンベア21上に載置される。
【0037】
本塗装作業では、まず蛍光物質18を配合した下塗り塗料15(以下、混合塗料という)を基材11の表面に下塗りする下塗り作業が行われる。この作業は、ベルトコンベア21の上方に設置されたスプレー装置22により混合塗料が基材11の表面に吹き付けられることにより行われる。スプレー装置22には、混合塗料を貯える塗料タンク23が供給配管27を介して接続されており、この供給配管27の途中に設けられたポンプ24により塗料タンク23内の混合塗料がスプレー装置22に供給される。これにより、スプレー装置22より混合塗料が吹き出すようになっている。
【0038】
また、塗料タンク23には、同タンク23内の混合塗料(つまり下塗り塗料15及び蛍光物質18)を攪拌するための攪拌装置28が設けられている。塗料タンク23内の混合塗料は攪拌装置28により常時攪拌されており、それ故下塗り塗料15に蛍光物質18が均一に分散された状態で混合塗料がスプレー装置22に供給されるようになっている。
【0039】
さらに、塗料タンク23の近くには、同タンク23内の混合塗料の温度を所定温度に調整するための温度調整装置29が設けられている。温度調整装置29は、塗料タンク23内の混合塗料を加熱するヒータ等を備えてなる。この温度調整装置29により混合塗料の温度が所定温度に調整されることで、混合塗料(詳細には下塗り塗料15)の粘度が所定の粘度に調整される。そして、この粘度調整によって下塗り塗料15に蛍光物質18を均一に分布させることが可能となっている。
【0040】
下塗り後、乾燥炉で下塗り塗料15の乾燥が行われ、下塗り塗装層12が形成される。
【0041】
次に、下塗り塗装層12の表面に上塗りする上塗り作業が行われる。この作業も、上記下塗り作業と同様、スプレー装置により上塗り塗料16が下塗り塗装層12の表面に吹き付けられることにより行われる。上塗り後、乾燥炉等で上塗り塗料16の乾燥が行われ、上塗り塗装層13が形成される。
【0042】
塗装作業が終了した後、上塗り塗装層13の塗装状態について確認する確認作業が行われる。この作業では、基材11が暗室に入れられて、基材11の表面側に向けてブラックライトにより光が照射される。これにより、基材11の表面側から発光が認められれば、下塗り塗装層12に含まれた蛍光物質18が発光していることとなるため、その発光が認められた部位では上塗り塗装層13が形成されていないこととなる。よって、この場合上塗り塗装層13について塗装不良を確認することができる。そして、塗装不良が確認された場合には、再塗装が行われる。その後、外壁材10は製造工場においてブラケット等の部材が取り付けられ、施工現場に出荷される。
【0043】
次に、上塗り塗装層13の劣化を確認する場合の作用について図3に基づいて説明する。なお、図3は塗装の劣化を確認する作業を説明する説明図である。
【0044】
図3に示すように、上塗り塗装層13の劣化を確認する場合には、まず建物に設置された劣化確認対象である外壁材10の表面(屋外側面)を遮光部材31で覆って遮光する作業を行う。遮光部材31は、例えば遮光性を有する遮光シートからなり、本作業ではこの遮光シートにより外壁材10の屋外側面全域を覆う。具体的には、遮光シートと外壁材10との間に作業者が入るスペースを確保すべく、外壁材10に対して所定の距離離間した位置に遮光シートを配置する。
【0045】
次に、遮光部材31により遮光されている外壁材10の表面にブラックライト32により紫外線を照射する作業を行う。この作業では、作業者が遮光部材31の内側に入り、ブラックライト32による紫外線照射により外壁材10の表面側に発光が認められるか否かを確認する。ここで、上塗り塗装層13が劣化して一部剥離し下塗り塗装層12の一部が露出している場合には、その露出した部位において蛍光物質18が紫外線による照射を受け発光する。この場合、この発光を視認することで上塗り塗装層13が劣化していることを確認することができる。そして、上塗り塗装層13の劣化が認められれば、再塗装を実施する等の対応をとる。
【0046】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0047】
基材11と、基材11の表面側に形成された下塗り塗装層12と、下塗り塗装層12の表面に形成された上塗り塗装層13と、を備え、下塗り塗装層12には光が照射されることにより発光する蛍光物質18を含ませるとともに、上塗り塗装層13を所定の光を透過しない非光透過層として構成した。この場合、上塗り塗装層13が一部剥離する等して下塗り塗装層12の一部が露出した場合に外壁材10の表面側に対し所定の光が照射されると、その露出した部位では下塗り塗装層12に含まれた蛍光物質18が発光するため、上塗り塗装層13が劣化したことを好適に確認することができる。
【0048】
また、製造工場において上塗りを行った後、上塗り塗装層13の表面側に光を照射することで、上塗り塗装層13の劣化を確認することとした。この場合、蛍光物質18による発光が認められれば、上塗り塗装層13の一部に欠損が生じていることとなる。そのため、製造工場における上塗り後の塗装不良の確認についても好適に行うことができる。
【0049】
下塗り塗装層12を無着色層(透明色)により形成した。この場合、下塗り塗装層12に照射された光やその照射された光により蛍光物質18が発する光を同塗装層12において透過し易くすることができるため、上記の効果を得るにあたって都合がよい。
【0050】
蛍光物質18として、自然光とは異なる波長の光が照射された場合にのみ発光する物質を用いたため、外壁材10の屋外設置時に上塗り塗装層13が劣化し一部剥離したとしても、その剥離した部位において太陽光等の自然光により蛍光物質18が発光するのを回避することができる。これにより、蛍光物質18の発光により外観が損なわれるのを回避しつつ上記の効果を得ることができる。
【0051】
下塗り塗料15に蛍光物質18を均一に分布させる均一化処理を実施しているため、下塗り塗装層12に蛍光物質18を均一に分布させることができる。したがって、上塗り塗装層13におけるいずれの部位が剥離等しても、つまりは下塗り塗装層12のいずれの部位が露出しても、外壁材10の表面側に所定の光を照射した場合に蛍光物質18による発光を生じさせることができる。この場合、上塗り塗装層13の劣化確認を行う上で好適な構成といえる。
【0052】
〔第2の実施形態〕
上記実施形態では、下塗り塗装層12に蛍光物質18を設ける構成としたが、本実施形態ではこれを変更する。以下に、本実施形態の構成を図4に基づいて第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、図4は、本実施形態の外壁材を示す縦断面図である。
【0053】
本実施形態の外壁材40は、基材11を有し、その基材11の表面には下塗り塗装層41が形成され、下塗り塗装層41の表面には上塗り塗装層42が形成されている。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、下塗り塗装層41が着色層とされている。また、下塗り塗装層41と上塗り塗装層42とが互いに異なる色に着色されており、例えば下塗り塗装層41が黄色に着色されているのに対し上塗り塗装層42が茶色に着色されている。各塗装層41,42は、それぞれ所定の膜厚を有して膜状に形成されている。
【0054】
本実施形態では、上塗り塗装層42の膜厚が所定の膜厚よりも小さくなった部位では、つまり上塗り塗装層42が劣化した部位ではその劣化に伴い下塗り塗装層12の色相が上塗り塗装層13の表面側に表れ、上塗り塗装層42の表面色が当該上塗り塗装層42の塗装色とは異なる色に変化する。例えば、上塗り塗装層42の表面色が、上塗り塗装層42の塗装色と下塗り塗装層41の塗装色との中間色となる。また、具体的には、上塗り塗装層42の膜厚が小さくなるにつれて上塗り塗装層42の表面色が下塗り塗装層41の塗装色へと変色するようになっている。
【0055】
次に、上塗り塗装層42の劣化を確認する場合の作用について説明する。
【0056】
上塗り塗装層42の劣化についての確認作業は、上塗り塗装層42の膜厚と同塗装層42の表面色との関係を規定する色相データを予め作成しておき、その色相データを用いて行う。
【0057】
色相データの作成は、上塗り塗装層42の劣化を促進させるべく外壁材10の曝露試験を工場等で実施し、定期的に上塗り塗装層42の膜厚と表面色とを測定してその測定結果を都度記録することにより行う。上塗り塗装層42の膜厚の測定は、例えば外壁材10を一部切断しその切断したものを顕微鏡等で拡大することにより行う。また、上塗り塗装層42の表面色の測定は例えば色差計を用いて行う。ここで、色差計は、計測対象に照射した光の反射光から計測対象の色を数値化し(例えば、L*a*b*表色系)、基準とする色の数値との差(色差)を検出する計測機器であり、本実施形態では劣化前(例えば塗装直後)の上塗り塗装層42の表面色(初期表面色)を基準として、その基準色との色差を測定する。
【0058】
上記のように測定し記録した上塗り塗装層42の膜厚と表面色(色差値)との測定データからそれらの相関関係を求めて色相データを作成する。
【0059】
施工現場では、塗装劣化の確認対象である外壁材40の上塗り塗装層42の表面色を色差計で測定する。そして、その測定で得られた色差の値に基づいて色相データを参照しつつ上塗り塗装層42の膜厚を算出する。これにより、上塗り塗装層42の劣化の度合いを確認することができる。
【0060】
なお、色相データを色差計に記録しておき、色差計により色差が測定されると、その色差に対応する膜厚が色差計の制御部により上記記録された色相データに基づいて算出され、その算出された膜厚が色差計のモニタに表示されるようにしてもよい。
【0061】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0062】
基材11と、基材11の表面側に形成された下塗り塗装層41と、下塗り塗装層41の表面に形成された上塗り塗装層42とを備え、これら各塗装層41,42を互いに異なる色に着色した。そして、上塗り塗装層13が劣化した部位ではその劣化に伴い下塗り塗装層12の色相が上塗り塗装層13の表面側に現れ、上塗り塗装層13の表面色が該上塗り塗装層13の塗装色とは異なる色に変化するようにした。これにより、上塗り塗装層42が劣化したことを好適に確認することができる。
【0063】
具体的には、上塗り塗装層42の表面色が、上塗り塗装層42の膜厚が小さくなるにつれて下塗り塗装層41の塗装色へと変色していくようにした。これにより、上塗り塗装層42の表面の色を確認することで、上塗り塗装層42の劣化度合いを確認することができる。
【0064】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0065】
(1)上記第1の実施形態では、所定の光を照射することにより発光する蛍光物質18(発光物質に相当)を下塗り塗装層12に含ませることとしたが、これを変更して、所定の光が照射されることによりその光を反射する光反射物質を下塗り塗装層12に含ませてもよい。例えば、光反射物質として金属等の光反射率の高い材料からなる微小な粒子を用いることが考えられる。この場合でも、上塗り塗装層13が剥離して下塗り塗装層12が露出した場合に所定の光(例えば照明光等の可視光)を照射すれば、その露出した部位では照射した光が光反射物質により反射されるため、その反射光によって上塗り塗装層13が剥離していることを確認できる。
【0066】
(2)上記(1)で述べた光反射物質として、上塗り塗装層13の消失部分において、下塗り塗装層12の劣化による露出からの時間経過に伴い光の反射強度が低下する物質を用いてもよい。かかる物質として、例えば酸化すると光沢が鈍り光の反射が弱まる金属材料を用いることが考えられる。この場合、下塗り塗装層12の劣化が進むにつれ露出する光反射物質が増えると、反射強度が低下する光反射物質が増えるため、光反射物質全体から反射される光の総量は減少する。そのため、光反射物質から反射される光の量(強度)を確認することで、下塗り塗装層12の劣化の度合いを推定することができる。
【0067】
また、光の反射強度が低下する速度の異なる複数種の光反射物質を下塗り塗装層12に含ませてもよい。そうすれば、下塗り塗装層12の劣化の度合いを多様に推定することができる。
【0068】
(3)上記第1の実施形態では、蛍光物質18として紫外線照射により発光する物質を、換言すると太陽光とは異なる波長の光により発光する物質を用いたが、太陽光により発光する物質を用いてもよい。また、照明光等その他の光を照射することで発光する物質を用いてもよい。例えば、照明光により発光する物質を蛍光物質18として用いる場合には、懐中電灯等の入手が比較的容易な発光器具を用いて発光させることができるため、上塗り塗装層13の劣化を簡易に確認することができる。なお、照明光により発光する蛍光物質としてはLaPO4:Ce,Tb等を用いることが考えられる。
【0069】
(4)上記第1の実施形態では、蛍光物質18を含んだ下塗り塗装層12を無着色層として形成したが、下塗り塗装層12を着色層としてもよい。この場合でも、上塗り塗装層13が剥離した場合に、少なくとも下塗り塗装層12の表面側に存在する蛍光物質18については発光するため、上塗り塗装層13が劣化したことを確認することができる。
【0070】
(5)上記第1の実施形態における蛍光物質18による発光により以下のような確認を行うこともできる。例えば、上塗り塗装層13がすべて剥離した場合には、外壁材10の表面全域において下塗り塗装層12が露出する。そのため、外壁材10の表面全域に発光が認められたことをもって、上塗り塗装層13が消失したことを確認できる。
【0071】
また、上塗り塗装層13の消失後、下塗り塗装層12の劣化が進むと、下塗り塗装層12の一部、例えば複数箇所に剥離が生じる。その場合、外壁材10の表面側にはまばらに発光が認められることになる。そのため、上塗り塗装層13の消失後、まばらに発光が認められたことをもって下塗り塗装層12の劣化が進行していることを確認できる。
【0072】
さらに、下塗り塗装層12の劣化が進行すると、やがて下塗り塗装層12が消失する。この場合、外壁材10の表面側に発光が認められなくなる。そのため、外壁材10の表面側に発光が認められなくなったことをもって下塗り塗装層12が消失したことを確認できる。この場合、基材11の腐食が生じるおそれがあるため至急基材11に対し塗装を施す等迅速な対応をとる必要がある。
【0073】
(6)上記第2の実施形態における上塗り塗装層42を所定の大きさで剥離するように形成してもよい。例えば、上塗り塗装層が剥離する際に、上塗り塗装層が小片状態で、例えば1mm程度の大きさの小片として剥離するように形成することが考えられる。この場合、上塗り塗装層の小片が剥離した部分では、下塗り塗装層の塗装色が露出する。そのため、上塗り塗装層の剥離の進行に伴って、外壁材10(上塗り塗装層)の表面側の色合いが変化する。したがって、この場合においても上塗り塗装層の劣化の度合いを確認することができる。
【0074】
(7)上記各実施形態では、下塗り塗装層12,41と上塗り塗装層13,42との二層の塗装層からなる外壁材10,40に本発明を適用したが、これを変更し、3層以上の塗装層からなる外壁材に本発明を適用してもよい。例えば、下塗り塗装層と、上塗り塗装層との間に中塗り塗装層を設けた3層からなる外壁材に本発明を適用する場合には、第1の実施形態において下塗り塗装層12に含ませた蛍光物質18を中塗り塗装層に含ませればよい。また、第2の実施形態では下塗り塗装層41を上塗り塗装層42と異なる色に着色したが、これに代えて、中塗り塗装層を上塗り塗装層と異なる色に着色すればよい。そして、上塗り塗装層が劣化した部位においてその劣化に伴い中塗り塗装層の色相が上塗り塗装層の表面側に現れ、上塗り塗装層の表面色が該上塗り塗装層の塗装色とは異なる色に変化するようにすればよい。
【0075】
(8)上記各実施形態では、基材11として窯業系サイディングボードを用いたが、押出セメント板やALC等その他の窯業系材料を用いてもよいし、また塩化ビニル等の樹脂系材料を用いてもよい。また、本発明を適用する基材11として、表面に凹凸模様の柄が施された基材を用いてもよいし、板状以外の形状をなした基材を用いてもよい。
【0076】
(9)上記各実施形態では、外装材としての外壁材10に対して本発明を適用したが、屋根材等その他の外装材に対し本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…建物の外装材としての外壁材、11…基材、12…下地塗装層としての下塗り塗装層、13…上塗り塗装層、18…発光物質としての蛍光物質、40…建物の外装材としての外壁材、41…下地塗装層としての下塗り塗装層、42…上塗り塗装層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面側に形成された下地塗装層と、
前記下地塗装層の表面に形成された上塗り塗装層と、
を備えた建物の外装材において、
前記下地塗装層には、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質が含まれており、
前記上塗り塗装層は、前記所定の光を透過しない非光透過層であることを特徴とする建物の外装材。
【請求項2】
前記下地塗装層には、前記発光物質として、自然光とは異なる波長の光が照射された場合にのみ発光する物質が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の建物の外装材。
【請求項3】
前記下地塗装層は、前記所定の光を透過する光透過層に、粒子状に形成された多数の前記光反射物質が混入されて形成されており、
前記上塗り塗装層の消失部分において、前記光反射物質は、前記光透過層の劣化による露出からの時間経過に伴い光の反射強度が低下する性質を有することを特徴とする請求項1に記載の建物の外装材。
【請求項4】
基材と、
前記基材の表面側に形成され、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質を含む下地塗装層と、
前記下地塗装層の表面に形成され、前記所定の光を透過しない非光透過層からなる上塗り塗装層と、を備えた建物の外装材に適用され、
前記外装材の表面側に対し前記所定の光を照射して、前記発光物質の発光状況又は前記光反射物質からの光の反射状況を確認し、その確認結果に基づいて前記上塗り塗装層の劣化を判断する外装材の塗装劣化確認方法。
【請求項5】
基材の表面側に、所定の光が照射されることにより発光する発光物質又は前記照射された光を反射する光反射物質を含む下地塗料を塗布することで下地塗装層を形成する下地工程と、前記下地塗装層の表面に上塗り塗料を塗布することで前記所定の光を透過しない非光透過層からなる上塗り塗装層を形成する上塗り工程と、を有する外装材の塗装方法であり、
前記下地工程では、前記下地塗料において前記発光物質又は前記光反射物質を略均一に分布させるべく均一化処理を実施することを特徴とする外装材の塗装方法。
【請求項6】
基材と、
前記基材の表面側に形成された下地塗装層と、
前記下地塗装層の表面に形成された上塗り塗装層と、
を備えた建物の外装材において、
前記下地塗装層と前記上塗り塗装層とは互いに異なる色に着色されており、
前記上塗り塗装層が劣化した部位ではその劣化に伴い前記下地塗装層の色相が前記上塗り塗装層の表面側に現れ、前記上塗り塗装層の表面色が該上塗り塗装層の塗装色とは異なる色に変化することを特徴とする建物の外装材。
【請求項7】
前記上塗り塗装層の表面色が、前記上塗り塗装層の膜厚が小さくなるにつれて前記下地塗装層の塗装色へと変色していくことを特徴とする請求項6に記載の建物の外装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224416(P2011−224416A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93651(P2010−93651)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】