説明

建物の床施工方法

【課題】畳の敷設箇所の外周に畳周辺部材を設置する床構造において、畳相互間並びに畳と畳周辺部材との隙間の管理性を高め仕上がり品質の向上を図ることが可能であり、かつ、施工性に優れる建物の床施工方法を提供すること。
【解決手段】畳敷設箇所の外周を囲んで仮枠を設置する仮枠設置工程と、仮枠内に畳20を仮置きする畳仮置き工程と、仮置きした畳20どうしの間の隙間及び畳20と仮枠との間の隙間の寸法を測定し、これらの隙間の寸法から、仮枠の設置位置に対する畳敷設箇所の外周縁の正規位置を示す矯正値を求める隙間測定工程と、仮置きした畳及び仮枠を、床下地から取り外す畳取外工程及び仮枠取外工程と、仮枠の設置位置と矯正値とに基づいて、畳敷設箇所の周囲を囲む位置に、畳周辺部材としての見切材30を設置する畳周辺部材設置工程と、見切材30で囲まれた畳敷設箇所に畳20を本設置する畳本設置工程とを備えた建物の床施工方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床施工方法に関し、特に、床下地の上に畳を敷設すると共に、畳敷設箇所の外周に沿ってフローリングや見切材といった畳周辺部材を敷設する床施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床下地の上に畳を敷設すると共に、畳敷設箇所の外周に沿ってフローリングや見切材などの畳周辺部材を敷設した床構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、この特許文献1には、床下地の上に畳を敷設し、次に、その外周に第1の畳周辺部材としての見切材を固定し、その後、見切材の外周に第2の畳周辺部材としての遮音フローリング材を設置する施工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−241704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように畳の敷設後にその外周に見切材などの畳周辺部材を固定する施工方法では、畳どうし、畳と畳周辺部材の密着度を十分得ることが難しく、畳どうしの間、並びに畳と見切材との間の隙間が大きくなって仕上がり品質の低下を招くおそれがあった。さらに、このように上記隙間が大きくなった場合、再度、隙間を調整する作業が必要になり、施工手間が増す。特に、畳として工場などで大量に生産される規格畳を用いた場合、畳個々が仕上がり寸法誤差を有しており、かつ、施工現場による寸法調整が難しいため、上記問題が生じ易い。
また、上記施工方法とは逆に、先に、床下地に見切材を枠状に設置し、その後、畳を敷設する方法では、上記問題に加え、畳が見切材で形成した枠内に納まりきれない不具合が生じるおそれもあった。この場合も、見切材の位置の調整など施工手間がさらに増す。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決することを目的とするものであり、畳の敷設箇所の外周に畳周辺部材を設置する床構造において、畳相互間並びに畳と畳周辺部材との隙間の管理性を高め仕上がり品質の向上を図ることが可能であり、かつ、施工性に優れる建物の床施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
建物の床下地の上に複数の畳を敷設すると共に、これら複数の畳を敷設する畳敷設箇所の外周を囲んで畳周辺部材を設置する建物の床施工方法であって、
前記畳敷設箇所の外周を囲んで、前記床下地に仮枠を設置する仮枠設置工程と、
前記仮枠内に前記畳を仮置きする畳仮置き工程と、
仮置きした前記畳どうしの間の隙間及び前記畳と前記仮枠との間の隙間の寸法を測定し、前記隙間の寸法から、前記仮枠の設置位置に対する前記畳敷設箇所の外周縁の正規位置を示す矯正値を求める隙間測定工程と、
仮置きした前記畳及び前記仮枠を、前記床下地から取り外す取外工程と、
前記仮枠の設置位置と前記矯正値とに基づいて、前記畳敷設箇所の外周縁の正規位置に畳周辺部材を設置する畳周辺部材設置工程と、
前記畳周辺部材で囲まれた前記畳敷設箇所に前記畳を本設置する畳本設置工程と、
を備えていることを特徴とする建物の床施工方法とした。
【0007】
なお、本発明の建物の床施工方法において、
前記隙間測定工程では、前記畳の縦横に沿う方向の間隔である縦方向隙間及び横方向隙間の寸法と各隙間の基準値との差を、それぞれ縦方向と横方向とで合計した値を、それぞれ縦方向と横方向の矯正値とすることが好ましい。
また、前記畳仮置き工程では、前記仮枠においてあらかじめ設定されたコーナー部である基準コーナー部に近い位置から前記畳を仮置きし、
前記畳周辺部材設置工程では、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置する前記畳周辺部材は、前記仮枠と同一位置に配置し、前記基準コーナー部の対角である対角コーナー部を囲む残りの2辺に配置する前記畳周辺部材を、前記仮枠の設置位置に対して前記矯正値の分だけずらして配置することが好ましい。
また、前記仮枠設置工程には、前記畳敷設箇所において、前記床下地に対する前記畳上面高さを調整するための捨貼合板を前記床下地上に設置する工程が含まれ、
前記仮枠設置工程では、
まず、前記仮枠を、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置し、
次に、前記捨貼合板を、前記2辺の前記仮枠に突き当てて配置し、
さらに、前記捨貼合板の前記対角コーナー部を囲む残りの2辺側では、その外周端縁が前記畳敷設箇所の外周縁に配置されるよう寸法調節を行い、
その後、前記残りの2辺の位置に配置する前記仮枠を、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁に当接させて設置し、
前記畳周辺部材設置工程では、
まず、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁位置が、前記矯正値の分だけずらした位置となるように寸法調整あるいは位置調整した後に、前記捨貼合板を前記床下地に固定し、
次に、前記畳周辺部材を、前記捨貼合板の外周端縁に当接させて、前記畳敷設箇所を囲む四周に設置することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建物の床施工方法では、畳敷設箇所の外周を囲んで設置した仮枠内に、畳を仮置きし、このときの畳どうし間及び畳と畳周辺部材との隙間の寸法を測定して矯正値を求め、この矯正値に基づいて畳周辺部材を正規位置に設置し、その後、正規位置に配置した畳周辺部材の内側に畳を本設置するようにした。
したがって、畳の敷設の後に見切材を設置する場合と比較して、畳どうし及び畳と畳周辺部材との間の隙間が、設定値よりも大きくならないようにできる。また、畳周辺部材を正規位置に配置できるため、先に畳周辺部材を固定しても、畳周辺部材どうしの間隔が狭くなって畳を入れることができない不具合も生じることがない。
よって、畳相互間並びに畳と畳周辺部材との隙間の管理性を高め仕上がり品質の向上を図ることができ、かつ、施工性にも優れる。
【0009】
また、隙間測定工程において、畳の縦横に沿う方向の間隔である縦方向隙間及び横方向隙間の寸法と各隙間の基準値との差を、それぞれ縦方向と横方向とで合計した値を、それぞれ縦方向と横方向の矯正値とするものでは、下記の効果を得ることができる。
すなわち、仮枠の設置時の位置精度は低くて済みながら、これを基準として畳周辺部材の適正な設置位置を簡単に正確に求めることができる。そして、これら矯正値により、対向して配置される畳周辺部材の正規の間隔を仮枠の設置位置を基準として求めることができる。
【0010】
また、畳仮置き工程において、前記仮枠においてあらかじめ設定されたコーナー部である基準コーナー部に近い位置から前記畳を仮置きし、畳周辺部材設置工程において、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置する前記畳周辺部材は、前記仮枠と同一位置に配置し、前記基準コーナー部の対角である対角コーナー部を囲む残りの2辺に配置する前記畳周辺部材を、前記仮枠の設置位置に対して前記矯正値の分だけずらして配置するものでは、下記の効果を得ることができる。
すなわち、畳敷設箇所の四周を囲む畳周辺部材のうち、位置を調整するのが2辺に配置するものだけで済むので、四周の全ての畳周辺部材の位置を調整するのと比較して、作業性に優れる。
【0011】
また、前記仮枠設置工程には、前記畳敷設箇所において、前記床下地に対する前記畳上面高さを調整するための捨貼合板を前記床下地上に設置する工程が含まれ、前記仮枠設置工程では、まず、前記仮枠を、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置し、次に、前記捨貼合板を、前記2辺の前記仮枠に突き当てて配置し、さらに、前記捨貼合板の前記対角コーナー部を囲む残りの2辺側では、その外周端縁が前記畳敷設箇所の外周縁に配置されるよう寸法調節を行い、その後、前記残りの2辺の位置に配置する前記仮枠を、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁に当接させて設置し、前記畳周辺部材設置工程では、まず、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁位置が、前記矯正値の分だけずらした位置となるように寸法調整あるいは位置調整した後に、前記捨貼合板を前記床下地に固定し、次に、前記畳周辺部材を、前記捨貼合板の外周端縁に当接させて、前記畳敷設箇所を囲む四周に設置した場合、下記の効果を得ることができる。
すなわち、畳周辺部材の設置の際には、畳周辺部材を、捨貼合板の外周端縁に当接させて設置するだけで正規位置に設置することができ、床下地に対する位置を計測や調整しながら設置する作業が不要であり作業性に優れる。
しかも、このような良好な作業性を得るのに、床下地に対する畳の表面高さを調節する捨貼合板を利用しているため、畳周辺部材の位置を調整するための部材を別途設定するのと比較して、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の建物の床施工方法における畳本設置工程の終了直前の床構造を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態の建物の床施工方法における仮枠設置工程の実施前の時点の状態を示す平面図である。
【図3】図3は、実施の形態の建物の床施工方法における仮枠設置工程において、基準コーナー部に2本の木桟を仮固定する作業を説明するための斜視図である。
【図4】図4は、実施の形態の建物の床施工方法における仮枠設置工程において、捨貼合板の設置途中の状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態の建物の床施工方法における仮枠設置工程において、捨貼合板の設置後に、残りの2本の木桟を設置する過程を示す平面図である。
【図6】図6は、実施の形態の建物の床施工方法における畳仮置き工程及び隙間測定工程を示す斜視図である。
【図7】図7は実施の形態の建物の床施工方法における隙間測定工程を説明するための要部を拡大した平面図である。
【図8】図8は、実施の形態の建物の床施工方法における畳周辺部材設置工程の途中過程を説明するための平面図である。
【図9】図9は、実施の形態の建物の床施工方法における畳周辺部材設置工程の途中過程を説明するための斜視図である。
【図10】図10は、実施の形態の建物の床施工方法の畳周辺部材設置工程を説明するための一部を切断した状態の斜視図である。
【図11】図11は、実施の形態の建物の床施工方法における畳周辺部材設置工程の途中過程を示す斜視図である。
【図12】図12は、実施の形態の建物の床施工方法に用いる畳を示す図であり(a)は畳の端縁部の断面図であり、(b)は畳の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の建物の床施工方法について、添付図面を参照しながら説明する。
この実施の形態の建物の床施工方法を説明するのにあたり、まず、この施工方法を適用する床の構造について図1に基づいて簡単に説明する。
【0014】
図1は、実施の形態の建物の床施工方法により施工された床構造を示す斜視図である。この床構造は、部屋RMの床FLの外周にフローリング材(畳周辺部材)10と見切材(畳周辺部材)30とが枠状に設置され、その内側に複数の畳20が敷設された構造となっている。なお、見切材30は、枠全体を指す場合の符号は30と標記するが、特に、設置位置に応じて特定のものを指す場合には符号30の後に(a)(b)(c)(d)を付して区別する。
【0015】
畳20は、工場においてあらかじめ決められた寸法に形成された規格品である規格畳を用いており、本実施の形態では、畳20として、図12(b)に示すように、L1=L2の半畳タイプのものを用いている。
また、畳20は、図12(a)に示すように、芯材21の表面に上側クッション材22と畳表23とを順次積層し、芯材21の裏面に段差調整材24a及び下側クッション材24を積層して形成されている。なお、下側クッション材24の外周縁部は、畳表23の折返し部分に対し、端縁が露出しないように接着テープ25で覆われた状態で接着されている。
芯材21としては、例えば、ミディアムデンシティファイバーボードと呼ばれる、木材などの植物繊維を原料として合成樹脂接着剤を加え成型熱圧した板や、発泡樹脂板などを用いることができる。
上側クッション材22及び下側クッション材24としては、例えば、無架橋ポリオレフィンや架橋ポリオレフィンやポリウレタン、ポリスチレン、エラストマー等の合成樹脂発泡体を用いることができる。また、段差調整材24aは、畳表23と同様の厚みの繊維を含む合成樹脂製のシートである。
畳表23としては、従来から畳の畳表として使用されている任意の畳表(例えば、イ草、ポリオレフィン系樹脂、和紙などから製造された畳表)を用いることができる。
【0016】
(床施工方法)
次に、実施の形態による床施工方法を、図面に基づいて順を追って説明する。
<墨出し工程>
墨出し工程は、部屋RMの畳20を敷設する箇所である畳敷設箇所200の四周を囲む位置に、後述する仮枠40を設置するための墨出しを行なう工程である。
すなわち、図2に示すように、この時点で部屋RMに露出している床下地50の表面に対し、部屋RMの内周縁から、フローリング材10及び見切材30を設置する寸法a,b,c,dだけ離した位置に、墨出し線LX1,LX2,LY1,LY2を引く。
【0017】
<仮枠設置工程>
仮枠設置工程は、床下地50の表面に仮枠40を設置する工程である。
仮枠40は、図5に示す4本の細長い木桟41,42,43,44を、墨出し線LX1,LX2,LY1,LY2の外側に沿って四角枠状に設置するもので、まず、図3に示すように、仮枠40により形成する四角枠のうちの1つのコーナー部である基準コーナー部40cを囲む2辺の位置に2本の木桟41,42を仮固定する。
なお、この仮固定には、本実施の形態では、ビス45を用いるが、その手段はこれに限定されるものではなく、釘などの他の固定具や接着材などを用いることができる。
【0018】
次に、この仮枠設置工程の途中において捨貼合板60を設置する。
この捨貼合板60は、畳敷設箇所200において、図10に示すように床下地50の上に設置する。この捨貼合板60として、本実施の形態では、5枚の合板61〜65を設置する。
この捨貼合板60の設置にあたって、まず、図4に示すように、木桟41と木桟42とにより形成される基準コーナー部40cに近い側に配置され、畳敷設箇所200の範囲内に全体が収まる2枚の合板61,62は、その端縁部を木桟41,42に当接させた状態で、床下地50にフィニッシュネイルなどの固定具66を用いて固定する。
また、全体が畳敷設箇所200の範囲内に納まりきれない3枚の合板63,64,65については、墨出し線LX2,LY2に重なる位置で切断した上で、その外周端縁を先に固定した合板61,62に当接させて床下地50の上に仮置きする。なお、図4において、各合板63〜65の斜線で表示している部分が、切断して切り落とす部分を示しており、非斜線部分を床下地50の上に仮置きする。
【0019】
その後、図5に示すように、木桟43,44を、墨出し線LX2,LY2に沿わせるとともに、合板63〜64の外側端縁に当接させて床下地50に仮固定する。
以上により、仮枠設置工程を終える。
【0020】
<畳仮置き工程>
畳仮置き工程は、仮枠40の内側に設定された畳敷設箇所200に畳20を仮置きする工程である。
この畳仮置き工程では、9枚の畳20を、図6に示すように、基準コーナー部40cに近い位置から、それぞれ矢印で示すように図において右上方向に向かって押し当てながら順に捨貼合板60の上に仮置きする。
また、この際、畳20と畳20との間に形成される隙間201(図7参照)は、畳敷設箇所200の外周縁に沿う方向である縦横両方向に直線状に並ぶように、各畳20の配置を入れ替えて調節するのが好ましい。
【0021】
<隙間測定工程>
隙間測定工程は、仮置きを終えた畳20どうしの間、並びに畳20と仮枠40との間に形成される隙間201の寸法を測定する工程である。
【0022】
これらの隙間201は、図7に示すように、金尺100などの測定具を用いて測定する。ここで、図6及び図7に示すように、両図において左右方向をx(この方向を、以下、横方向とする)とし、各隙間201の寸法をそれぞれ、Sx1〜Sx4とする。また、両図において前後方向をy(この方向を、以下、縦方向とする)とし、各隙間201の寸法をSy1〜Sy4とする。
【0023】
そして、各隙間201の寸法Sx1,Sx2,Sx3,Sx4,Sy1,Sy2,Sy3,Sy4の測定を終えると、次に、矯正値Kx,Kyを求める。
これらの矯正値Kx,Kyは、それぞれ、横方向の矯正値Kxと、縦方向の矯正値Kyとが存在し、これらは、各隙間201の寸法からそれぞれ基準値Saを差し引いた数値を合計して矯正値Kx,Kyを求める。なお、基準値Saは、目標とする隙間寸法である。
Kx=(Sx1−Sa)+(Sx2−Sa)+(Sx3−Sa)+(Sx4−Sa)
Ky=(Sy1−Sa)+(Sy2−Sa)+(Sy3−Sa)+(Sy4−Sa)
なお、畳20は、相互に密着するように敷設するのが一般的であって、基準値Saは、1mm未満の僅かな寸法に設定する。
【0024】
したがって、矯正値Kx,Kyがプラスの場合、現在の仮枠40の位置では、現在の隙間の合計が矯正値Kx,Kyの分だけ大き過ぎることを意味する。すなわち、仮枠40間の間隔が矯正値Kx,Kyの分だけ大き過ぎることを意味する。一方、矯正値Kx,Kyがマイナスの場合は、現在の仮枠40の位置では、現在の隙間の合計が矯正値Kx,Kyの分だけ不足することを意味する。すなわち、仮枠40間の間隔が矯正値Kx,Kyの分だけ不足することを意味する。
【0025】
<畳取外工程(取外工程)>
畳取外工程は、畳敷設箇所200に仮置きした畳20を、全て捨貼合板60上から取り外す工程である。
【0026】
<仮枠取外工程(取外工程)>
仮枠取外工程は、床下地50に設置していた仮枠40を、全て床下地50から取り外す工程である。
【0027】
<捨貼合板再調整工程>
本実施の形態では、仮枠取外工程の後に、捨貼合板再調整工程を実施するもので、この捨貼合板再調整工程は、捨貼合板60のうちで、床下地50に仮置き状態の合板63〜65を、矯正値Kx,Kyに応じて、寸法あるいは設置位置を再調整する工程である。
【0028】
この工程では、横方向の矯正値Kxがプラスの場合、合板63及び合板65の横方向の寸法を矯正値Kxの分(図8において斜線で示す部分)だけカットした後、再び、元の位置に配置して床下地50に固定具66(図4参照)を用いて固定する。
一方、横方向の矯正値Kxがマイナスの場合は、合板63及び合板65を、仮置きしていた位置から、矯正値Kxの分だけ、合板62から図8において左方向に離して配置した後、固定具66(図4参照)を用いて固定する。
【0029】
また、縦方向の矯正値Kyがプラスの場合、合板64及び合板65の縦方向の寸法を矯正値Kyの分(図8において斜線で示す部分)だけカットした後、再び、元の位置に配置して床下地50に固定具66(図4参照)を用いて固定する。
一方、矯正値Kyがマイナスの場合は、合板64及び合板65を、仮置きしていた位置から、矯正値Kyの分だけ、合板61〜63に対して図において縦方向に離して配置した後、固定具66(図4参照)を用いて固定する。
【0030】
<見切材設置工程(畳周辺部材設置工程)>
見切材設置工程は、畳周辺部材としての見切材30を、仮枠40の設置位置に対して矯正値Kx,Kyに応じた分だけずらして設置する工程である。
【0031】
この場合、本実施の形態では、基準コーナー部40cを囲む2辺に配置する見切材30(a),30(b)は、仮枠40の木桟41,42と同一位置に設置する。一方、基準コーナー部40cと対角の対角コーナー部40dを囲む2辺の見切材30(c),30(d)は、仮枠40を構成する木桟43,44の設置位置に対して矯正値Kx,Kyに応じた位置にずらして配置する。
【0032】
本実施の形態では、この時点で、既に捨貼合板60の合板63〜65の外側縁の位置が仮枠40の設置位置に対して矯正値Kx,Kyに応じた分だけずらして配置している。このため、見切材30を、上記の位置に配置するのにあたり、本実施の形態では、各見切材30(a)(b)(c)(d)を、図9に示すように、捨貼合板60の外周縁に沿って4周に設置するだけでよい。そして、この状態で、見切材30の側方から固定具を打って捨貼合板60の側面に固定するか、あるいは見切材30の上方から固定具を打って床下地50に固定する。
なお、図10に示すように、見切材30は、直方体の木桟状の部材であって、床下地50の上に設置した場合に、その上面が、捨貼合板60の上に設置状態の畳20の上面と、略同一高さに配置される寸法に形成されている。
【0033】
<フローリング材設置工程(畳周辺部材設置工程)>
フローリング材設置工程は、図10及び図11に示すように、見切材30の外側に沿って、畳周辺部材としてのフローリング材10を設置する工程である。
【0034】
フローリング材10は、図10に示すように、第2の捨貼合板70と重ねて床下地50の上に設置する。なお、第2の捨貼合板70は、フローリング材10の設置時に、フローリング材10の上面が畳20の上面と略同一高さとなるように、その厚さが設定されている。
また、フローリング材10と第2の捨貼合板70との積層は、あらかじめ工場などで行なっていてもよいし、施工現場で行なってもよい。
【0035】
<畳本設置工程>
畳本設置工程は、畳20を、見切材30で囲まれた畳敷設箇所200において捨貼合板60の上に設置する工程である。
この場合、畳20は、それぞれ、畳仮置き工程及び隙間測定工程において、畳敷設箇所200に仮置きした場合と同じ位置に配置する。
【0036】
また、見切材30は、畳20を敷設した際に、畳20どうしの間及び畳20と見切材30との間の隙間201の寸法が基準値Saとなるよう配置されている。このため、畳20の相互間並びに畳20と見切材30との隙間201を一定寸法とすることができ、畳20として規格畳を用いながらも高い仕上がり品質を得ることができる。また、畳敷設箇所200の寸法が不足して畳20が納まらないという不具合が生じることもない。
したがって、この畳本設置工程の際には、畳20の置き直し作業や見切材30の付け替え作業や寸法調節作業などを行う必要が無く、施工性に優れる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態の建物の床施工方法では、以下に列挙する効果を得ることができる。
1)本実施の形態では、
畳敷設箇所200の外周を囲んで仮枠40を設置する仮枠設置工程と、
仮枠40内に畳20を仮置きする畳仮置き工程と、
仮置きした畳20どうしの間の隙間及び畳20と仮枠40との間の隙間の寸法を測定し、これらの隙間の寸法から、仮枠40の設置位置に対する畳敷設箇所200の外周縁の正規位置を示す矯正値Kx,Kyを求める隙間測定工程と、
仮置きした畳20及び仮枠40を、床下地50から取り外す畳取外工程及び仮枠取外工程と、
仮枠40の設置位置と矯正値Kx,Kyとに基づいて、畳敷設箇所200の周囲を囲む位置に、畳周辺部材としての見切材30を設置する見切材設置工程(畳周辺部材設置工程)と、
見切材30で囲まれた畳敷設箇所200に畳20を本設置する畳本設置工程と、
を備えた建物の床施工方法とした。
この床施工方法では、一旦、畳20を仮置きし、その隙間201の寸法Sx1〜4,Sy1〜4に基づいて、矯正値Kx,Kyを求め、この矯正値Kx,Kyに基づいて見切材30の設置位置を決定する。
したがって、畳20の敷設の後に見切材30を設置する場合と比較して、畳20どうし及び畳20と見切材30との間の隙間201が、基準値Saよりも大きくならないようにできる。また、見切材30を正規位置に配置できるため、畳20の本敷設の前に見切材30を固定しても、見切材30どうしの間隔が狭くなって畳20を敷設できない不具合も生じることがない。
よって、畳20として規格畳を用いても、畳20相互間及び畳20と見切材30との隙間が適正値となり、高い仕上がり品質を得ることができる。そして、この際には、畳20の置き直し作業や見切材30の付け替え作業や寸法調節作業などを行う必要が無く、施工性に優れる。
【0038】
2)実施の形態では、隙間測定工程では、畳20の縦横に沿う方向の間隔である縦方向隙間及び横方向隙間の寸法Sy,Sxと各隙間201の基準値Saとの差を、それぞれ縦方向と横方向とで合計した値を、それぞれ縦方向と横方向の矯正値Ky,Kxとするようにした。
このように、縦方向及び横方向でそれぞれ隙間201の合計値と基準値Saとの差から矯正値Kx,Kyを決定するようにしたため、畳周辺部材としての見切材30の正規の設置位置を簡単に求めることができる。そして、これら矯正値Kx,Kyにより、対向する一対の見切材30(a),30(d)及び見切材30(b),30(c)の正規の間隔を仮枠40の設置位置を基準に求めることができる。
また、仮枠40の設置時の位置精度は低くて済みながら、これを基準として、寸法誤差を有した規格品の畳20に応じた、見切材30の正規の設置位置を正確に把握することができる。
【0039】
3)畳仮置き工程では、仮枠40においてあらかじめ設定されたコーナー部である基準コーナー部40cに近い位置から畳20を仮置きし、
畳周辺部材設置工程では、基準コーナー部40cを囲む2辺に配置する見切材30(a),30(b)は、仮枠40の木桟41,42と同一位置に配置し、対角コーナー部40dを囲む残りの2辺に配置する見切材30(c),30(d)を、仮枠40の木桟43,44の設置位置に対して矯正値Kx,Kyの分だけずらして配置するようにした。
このため、位置を調整するのが4本の見切材30(a)〜(d)のうちの2本の見切材30(c)(d)のみで済むため、4本の見切材30(a)〜(d)の全ての位置を調整するのと比較して、作業性に優れる。
【0040】
4)仮枠設置工程には、畳敷設箇所200において床下地50上に捨貼合板60を設置する工程が含まれ、
仮枠設置工程では、
まず、仮枠40の木桟41,42を、基準コーナー部40cを囲む2辺に配置し、
次に、捨貼合板60のうちの合板61,62を、2辺の仮枠40の木桟41,42に突き当てて配置し、
さらに、捨貼合板60の対角コーナー部40dを囲む残りの2辺側では、その外周端縁が畳敷設箇所200の外周縁に配置されるよう寸法調節を行い、
その後、残りの2辺の位置に配置する仮枠40(木桟43,44)を、捨貼合板60の前記残りの2辺の外周端縁に当接させて設置し、
畳周辺部材設置工程では、
まず、捨貼合板60の対角コーナー部40dを囲む2辺の外周端縁位置が、矯正値Kx,Kyの分だけずらした位置となるように寸法調整あるいは位置調整した後に、捨貼合板60を床下地50に固定し、
次に、見切材30を、捨貼合板60の外周端縁に当接させて、畳敷設箇所200を囲む四周に設置するようにした。
このように、見切材30は、捨貼合板60の外周端縁に当接させて設置するだけで、矯正値Kx,Kyに基づいて正規の位置に設置することができ、床下地50に対する位置を計測や調整しながら設置する作業が不要であり作業性に優れる。
しかも、このような良好な作業性を得るのに、床下地50に対する畳20の表面高さを調節する捨貼合板60を利用しているため、見切材30の位置を調整するための部材を別途設定するのと比較して、コスト的に有利である。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0042】
例えば、畳を敷設する部屋としては、実施の形態で示した形状、大きさの部屋に限定されるものではない。要は、床下地の上において畳周辺部材により囲まれた枠状の畳敷設箇所に畳を設置するのであれば、本発明の床施工方法を適用できる。
また、実施の形態では、畳として半畳タイプのものを示したが、これに限定されず、一畳タイプのものを用いてもよい。
【0043】
また、畳周辺部材としては、実施の形態で示した見切材及びフローリング材に限定されるものではなく、例えば、実施の形態で示したフローリング材及び捨貼合板を畳周辺部材とし、実施の形態で示した見切材を介在させることなくこれらフローリング材及び捨貼合板の内周に畳を敷設するようにしてもよい。あるいは、フローリング材を設置することなく見切材のみを設置するようにしてよい。あるいは、実施の形態で示した見切材及びフローリング材以外の部材を畳周辺部材として畳敷設箇所を囲んで設置するようにしてもよい。
【0044】
また、実施の形態では、畳と床下地との間に捨貼合板を設置する例を示したが、これに限定されず、畳を床下地の上に直接敷設するようにしてもよい。あるいは、畳と床下地との間に、捨貼合板以外の部材(例えば、断熱材やクッション材など)を介在させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 フローリング材(畳周辺部材)
20 畳
30 見切材(畳周辺部材)
40 仮枠
40c 基準コーナー部
40d 対角コーナー部
50 床下地
60 捨貼合板
200 畳敷設箇所
201 隙間
FL 床
Kx,Ky 矯正値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下地の上に複数の畳を敷設すると共に、これら複数の畳を敷設する畳敷設箇所の外周を囲んで畳周辺部材を設置する建物の床施工方法であって、
前記畳敷設箇所の外周を囲んで、前記床下地に仮枠を設置する仮枠設置工程と、
前記仮枠内に前記畳を仮置きする畳仮置き工程と、
仮置きした前記畳どうしの間の隙間及び前記畳と前記仮枠との間の隙間の寸法を測定し、前記隙間の寸法から、前記仮枠の設置位置に対する前記畳敷設箇所の外周縁の正規位置を示す矯正値を求める隙間測定工程と、
仮置きした前記畳及び前記仮枠を、前記床下地から取り外す取外工程と、
前記仮枠の設置位置と前記矯正値とに基づいて、前記畳敷設箇所の外周縁の正規位置に畳周辺部材を設置する畳周辺部材設置工程と、
前記畳周辺部材で囲まれた前記畳敷設箇所に前記畳を本設置する畳本設置工程と、
を備えていることを特徴とする建物の床施工方法。
【請求項2】
前記隙間測定工程では、前記畳の縦横に沿う方向の間隔である縦方向隙間及び横方向隙間の寸法と各隙間の基準値との差を、それぞれ縦方向と横方向とで合計した値を、それぞれ縦方向と横方向の矯正値とすることを特徴とする請求項1に記載の建物の床施工方法。
【請求項3】
前記畳仮置き工程では、前記仮枠においてあらかじめ設定されたコーナー部である基準コーナー部に近い位置から前記畳を仮置きし、
前記畳周辺部材設置工程では、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置する前記畳周辺部材は、前記仮枠と同一位置に配置し、前記基準コーナー部の対角である対角コーナー部を囲む残りの2辺に配置する前記畳周辺部材を、前記仮枠の設置位置に対して前記矯正値の分だけずらして配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建物の床施工方法。
【請求項4】
前記仮枠設置工程には、前記畳敷設箇所において、前記床下地に対する前記畳上面高さを調整するための捨貼合板を前記床下地上に設置する工程が含まれ、
前記仮枠設置工程では、
まず、前記仮枠を、前記基準コーナー部を囲む2辺に配置し、
次に、前記捨貼合板を、前記2辺の前記仮枠に突き当てて配置し、
さらに、前記捨貼合板の前記対角コーナー部を囲む残りの2辺側では、その外周端縁が前記畳敷設箇所の外周縁に配置されるよう寸法調節を行い、
その後、前記残りの2辺の位置に配置する前記仮枠を、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁に当接させて設置し、
前記畳周辺部材設置工程では、
まず、前記捨貼合板の前記残りの2辺の外周端縁位置が、前記矯正値の分だけずらした位置となるように寸法調整あるいは位置調整した後に、前記捨貼合板を前記床下地に固定し、
次に、前記畳周辺部材を、前記捨貼合板の外周端縁に当接させて、前記畳敷設箇所を囲む四周に設置することを特徴とする請求項3に記載の建物の床施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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