説明

建物の建築方法

【課題】住宅密集地等のように建物の外側にスペースを確保し難い環境において、上階外壁部材と胴差材との固定作業、及び、防水機構の取付け作業を建物の内側から行うことができる建築方法を提供する。
【解決手段】上階外壁部材4及び下階外壁部材5の双方と、上下方向において双方の間に挟まれる位置にて固定される胴差材6とを有する建物1の建築方法であって、(A)予め設置された下階外壁部材5の上に胴差材6を載置し胴差材6に下階外壁部材5を固定する工程と、(B)胴差材6に上階外壁部材4の固定部材を、胴差材6の上端部セット穴Bhに挿入する工程と、(C)固定部材を保持している間に、水の浸入を防ぐための防水機構9を、胴差材6の前方位置に取付ける工程と、(D)上階外壁部材4を防水機構9及び胴差材6の上に載置して、固定部材により上階外壁部材4を胴差材6に固定する工程と、を有する建物1の建築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建築方法に係り、特に、上階外壁部材及び下階外壁部材の双方と、上下方向において当該双方の間に挟まれる位置にて当該双方の各々が固定される胴差材とを有する建物の建築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上階外壁部材及び下階外壁部材の双方と、上下方向において当該双方の間に挟まれる位置にて当該双方の各々が固定される胴差材とを有する建物の建築方法は既に知られている。当該建築方法では、一般に、下階外壁部材を胴差材に固定してから上階外壁部材を胴差材上に載置して、その後、ボルト等の固定部材により当該上階外壁部材を胴差材に固定する。
【0003】
ところで、従来の建築方法においては、上階外壁部材と胴差材との固定を、上階外壁部材や胴差材の外側(すなわち、完成前の建物から見たときの外側)にて行う必要があった(例えば、特許文献1参照)。これは、胴差材における固定部材のセット位置が当該胴差材の外側にあり、上階外壁部材を胴差材上に載置した後では内側(完成前の建物から見たときの内側)から上記セット位置に手が届かないためである。また、上階外壁部材及び下階外壁部材の間の隙間からの水の浸入を防ぐために、上階外壁部材及び下階外壁部材の間に防水機構を取付ける必要があるが、従来の工法では、当該取付け作業も上階外壁部材を胴差材に固定した後に行われていた。これは、上述の内容と同様であり、上階外壁部材を胴差材上に載置した後では内側から両外壁部材の間に手が届かないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−26646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の工法では、上階外壁部材を胴差材に固定する作業、及び、防水機構の取付け作業を外側から行うことになっていた。ただし、かかる工法を採用する場合、例えば、住宅密集地のように、隣接する建物が近接しており(完成前の建物から見て)外側にスペースを確保し難い環境下では、上記作業を行うことが困難となっていた。このため、従来の建物の建築方法は、高度な施工技能を要することとなり、施工品質が作業者の技量に左右されることとなっていた。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、住宅密集地等のように建物の外側にスペースを確保し難い環境において、上階外壁部材と胴差材との固定作業、及び、上階外壁部材及び下階外壁部材の間での防水機構の取付け作業を建物の内側から行うことができる建築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の建物の建築方法によれば、上階外壁部材及び下階外壁部材の双方と、上下方向において当該双方の間に挟まれる位置にて当該双方の各々が固定される胴差材とを有する建物の建築方法であって、(A)予め設置された前記下階外壁部材の上に前記胴差材を載置して該胴差材に前記下階外壁部材を固定する工程と、(B)前記胴差材に前記上階外壁部材を固定するための固定部材を、前記胴差材の上端部に形成されたセット穴に挿入する工程と、(C)前記固定部材を前記セット穴に挿入された状態で保持している間に、前記建物において前記双方の間の隙間からの水の浸入を防ぐための防水機構を、前記胴差材の前方位置に取付ける工程と、(D)前記防水機構の取付け後に、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記胴差材の上に載置して、前記セット穴に挿入された状態の前記固定部材により前記上階外壁部材を前記胴差材に固定する工程と、を有することにより、解決される。
【0008】
すなわち、本発明によれば、建物の建築を容易に行うことが可能になり、施工品質が作業者の技量に左右され難くなる。具体的に説明すると、本発明により、従来の工法において建物の外側(より正確には、完成前の建物から見たときの外側)で行われていた上階外壁部材と胴差材との固定作業を、建物の外側で行う必要がなくなる。同様に、従来までは建物の外側で行われていた防水機構の取付け作業を、建物の内側で行えるようになる。これにより、例えば、住宅密集地のように外側にスペースを確保し難い環境下であっても、上記の取付け作業を容易に行うことができる。この結果、住宅密集地であっても良好な建物の建築が行われ、その施工品質についても作業者の技量に影響されにくくなる。
【0009】
また、上記の建物の建築方法において、前記下階外壁部材の上に前記胴差材を載置して該胴差材に前記下階外壁部材を固定する工程では、前記下階外壁部材の上に前記胴差材としてのH型鋼を載置して、当該H型鋼に備えられた下側フランジ部のうち、該下側フランジ部の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分に前記下階外壁部材をボルト止めし、前記セット穴に前記固定部材を挿入する工程では、前記H型鋼に備えられた上側フランジ部のうち、該上側フランジ部の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分に形成された前記セット穴に、前記固定部材としてのボルトを挿入し、前記防水機構を取付ける工程では、前記H型鋼の後側から前記H型鋼の前側へ手を伸ばして前記防水機構を取付けることとしてもよい。
胴差材としてのH型鋼に備えられた上側フランジ部において、その幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分にセット穴が形成されていた場合、H型鋼の上に上階外壁部材を載置すると、建物の内側から前記セット穴に手が届かず、該セット穴にボルトを挿入することが困難となる。したがって、かかる場合には、本発明の効果がより有効に奏されることとなる。
すなわち、上階外壁部材と胴差材との固定作業を建物の外側で行う必要がなくなる。そして、防水機構の取付け作業についても、H型鋼の後側から当該H型鋼の前側へ手を伸ばすことで行われる。これにより、住宅密集地であっても上記の作業を容易に行うことが可能となる結果、作業者の技量に左右されず、施工品質が安定する。
【0010】
また、上記の建物の建築方法において、前記ボルトを前記セット穴に挿入された状態で保持するために、前記セット穴に挿入された状態の前記ボルトを支持するための支持部材を、該支持部材が前記ボルトの下方位置に位置するように前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の間に設置する工程を、更に有することとしてもよい。かかる方法であれば、簡易な構成により、セット穴にボルトを挿入した状態で保持することが可能になる。
【0011】
また、上記の建物の建築方法において、前記防水機構を取付ける工程は、前記H型鋼の前方位置にて前記H型鋼を覆う第一の水切板を取付ける第一の取付け工程と、前記第一の水切板の前方位置に位置する第二の水切板を、該第二の水切板の下端部が前記下階外壁部材の上端部の前方位置に位置して当該上端部を覆うように取付ける第二の取付け工程と、前記建物において前記双方の間で外壁の一部をなす化粧面材を、前記第二の水切板の前方位置に取付ける第三の取付け工程と、を有することとしてもよい。かかる方法であれば、より効果的な防水効果を得ることが可能となる。
【0012】
また、上記の建物の建築方法において、前記双方の各々が、当該各々の厚み方向において、空気を通気させるための通気層を有するとき、前記第二の取付け工程では、前記第二の水切板と前記第一の水切板との間に空間が設けられ、かつ、当該空間と前記下階外壁部材が有する前記通気層とが連通するように前記第二の水切板を取付け、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置して、前記上階外壁部材を前記H型鋼に固定する工程では、前記空間と前記上階外壁部材が有する前記通気層とが連通するように、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置することとしてもよい。かかる方法であれば、上階外壁部材と下階外壁部材の通気層がより有効に機能するようになる。
【0013】
また、上記の建物の建築方法において、前記防水機構を取付ける工程は、前記第二の水切板が有する外表面のうち、前側に位置する面の上端部に第一の弾性ゴムを貼り付ける第一の貼付工程と、前記化粧面材の上端面に第二の弾性ゴムを貼り付ける第二の貼付工程と、を更に有し、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置して、前記上階外壁部材を前記H型鋼に固定する工程では、前記上階外壁部材の下端部が前記第一の弾性ゴム及び前記第二の弾性ゴムを押圧するように、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置することとしてもよい。かかる方法であれば、より一層効果的な防水効果を得ることが可能となる。
【0014】
また、上記の建物の建築方法において、前記第二の取付け工程では、折れ曲がって段差が形成された前記第二の水切板を、該第二の水切板のうち、前記段差から見て下側にある部分が、前記段差から見て上側にある部分の前方位置に位置するように取付け、前記第三の取付け工程の前に、前記段差に相当する厚みを有する断熱部材を、前記第二の水切板において前記段差から見て上側にある部分に位置し、かつ、当該部分が有する外表面のうち、前側に位置する面に設置する工程を更に有し、前記第三の取付け工程では、前記化粧面材を前記断熱部材及び前記第二の水切板の前方位置に取付けることとしてもよい。かかる方法であれば、胴差材付近の断熱を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上階外壁部材と胴差材との固定作業、及び、防水機構の取付け作業を建物の内側で行えるようになる。これにより、例えば、住宅密集地等のように建物の外側にスペースを確保し難い環境下であっても、上記の作業を容易に行うことができる。この結果、住宅密集地であっても良好な建物の建築が行われ、その施工品質についても作業者の技量に影響されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】建物1全体の模式断面図である。
【図2】胴差材6付近を示した模式断面図である。
【図3】上階外壁パネル4の構造を示す断面図である。
【図4】支持部材20の正面図である。
【図5】完成状態の建物1において所定位置に取付けられている状態の支持部材20を示す図である。
【図6】本実施形態の建築方法を示す流れ図である。
【図7】建物1の建築作業における各施工段階を示す第一図である。
【図8】建物1の建築作業における各施工段階を示す第二図である。
【図9】建物1の建築作業における各施工段階を示す第三図である。
【図10】建物1の建築作業における各施工段階を示す第四図である。
【図11】建物1の建築作業における各施工段階を示す第五図である。
【図12】建物1の建築作業における各施工段階を示す第六図である。
【図13】建物1の建築作業における各施工段階を示す第七図である。
【図14】建物1の建築作業における各施工段階を示す第八図である。
【図15】建物1の建築作業における各施工段階を示す第九図である。
【図16】防水機構9及び断熱部材14を取付ける工程の手順を示す図である。
【図17】防水機構9を取付ける作業の様子を示す模式図である。
【図18】従来の建物の建築方法の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<建物1の全体構成>>
本実施形態に係る建築方法について説明するにあたり、先ず、当該建築方法により建てられる建物1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、建物1全体の模式断面図である。なお、同図には、建物1と隣接する隣接建物Hが破線にて示されている。図2は、胴差材6付近を示した模式断面図であり、図1中、記号Xが付された範囲の拡大図である。
【0018】
なお、以降の説明において、建物1の内側(すなわち、室内側)を単に内側と呼び、建物1の外側(すなわち、室外側)を単に外側と呼ぶこととする。また、以降の説明において、ある部材の前方位置とは、当該ある部材から見て外側の位置を意味する。
【0019】
建物1は、複数の階を有するものであり(図1には2階建て家屋を一例として図示)、本実施形態では住宅密集地に建設されたものである。すなわち、図1に示すように、本実施形態に係る建物1は隣接建物Hと近接しており、建物間のスペースが狭小となっている。したがって、本実施形態に係る建物1の建築方法は、当該建物1の施工段階においてその外側に作業用スペースが確保し難い環境において適用されるものである。本実施形態に係る建物1の建築方法については後述する。
【0020】
本実施形態に係る建物1は、図1に示すように、骨組み(いわゆる軸組み)としての躯体2と、屋根3と、外壁部材としての外壁パネル4、5とを有する。また、躯体2は、階間に胴差材6を備えている。この胴差材6は、階間にて建物の外周に亘って配設される横架部材(梁部材)であり、本実施形態ではH型鋼である。そして、胴差材6は、2つのフランジ部が上下方向において互いに対向するように配置されている。以下、2つのフランジ部のうち、より上側に位置するものを上側フランジ部7と呼び、より下側に位置するものを下側フランジ部8と呼ぶ。
【0021】
ここで、胴差材6としてのH型鋼は、図2に示すように、上下方向において上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の双方の間に挟まれた位置に位置している。そして、当該位置において胴差材6には上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の各々が固定されている。
【0022】
より詳しく説明すると、図2に示すように、H型鋼に備えられた下側フランジ部8のうち、当該下側フランジ部8の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分(以下、前側部分8aという)に下階外壁パネル5がボルト止めされている。つまり、下側フランジ部8の前側部分8aには、建物1の外周に沿って一定間隔ごとに、セット穴の一例としてのボルト穴Bhが形成されている。そして、固定部材の一例としてのボルトBoが各ボルト穴Bhに挿入されており、当該ボルトBoにより下側フランジ部8に下階外壁パネル5が固定(締結)される。なお、各フランジ部7、8の幅方向とは、いわゆるフランジ幅方向(図2中、矢印にて示した方向)のことである。
【0023】
同様に、H型鋼に備えられた上側フランジ部7のうち、当該上側フランジ部7の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分(以下、前側部分7a)に上階外壁パネル4がボルト止めされている。つまり、上側フランジ部7の前側部分7aには、建物1の外周に沿って一定間隔ごとに、ボルトBoを挿入するためのボルト穴Bhが形成されており、各ボルト穴Bhに挿入されたボルトBoにより上側フランジ部7と上階外壁パネル4とが固定(締結)される。
【0024】
一方、上側フランジ部7の前側部分7aと下側フランジ部8の前側部分8aとの間には、上側フランジ部7側のボルト穴Bhに挿入されたボルトBoを支持する支持部材20が設けられている。支持部材20については後に詳述する。
【0025】
上階外壁パネル4は、上階外壁部材の一例であり、図1に示す建物1では2階の外壁をなすパネル部材である。下階外壁パネル5は、下階外壁部材の一例であり、図1に示す建物1では1階の外壁をなすパネル部材である。本実施形態では、両外壁パネル4、5は、いずれも多層構造になっている。以下、本実施形態における外壁パネル4、5の構造について説明する。なお、上階外壁パネル4の積層構造と下階外壁パネル5の積層構造とは略同一であるため、以下では、上階外壁パネル4の構造についてのみ説明する。
【0026】
上階外壁パネル4は、図3に示すように、その厚み方向において複数の層を有する。図3は、上階外壁パネル4の構造を示す断面図である。具体的には、上階外壁パネル4の厚み方向において、外側から順に、外壁材層4aと、通気層4bと、断熱材層4cと、エアースペース層4dと、石膏ボード層4eとが設けられている。また、通気層4bを形成するため、外壁材層4aと断熱材層4cとの間には、適宜な間隔で、通気層4bを確保するためのスペーサー4fが設けられている。
【0027】
上階外壁パネル4に設けられた複数の層のうち、通気層4bは、外壁パネル内における結露を防止する目的で、空気を通気させるために設けられたものである。この通気層4b内を流れる気流により、室内から石膏ボード層4eを透過して壁内に持ち込まれた湿気を屋外に排除することが可能になる。なお、通気層4b内を流れる気流は、主として、下方から上方に向かって通気層4b内を流れるものである。
【0028】
なお、本実施形態では、壁体内結露をより有効に防止するために、防湿性を有するアルミ蒸着フィルム4gをエアスペース層4dと断熱材層4cとの境界位置に設けているとともに、透湿防水シート4hを通気層4bと断熱材層4cとの境界位置に設けている。さらに、本実施形態では、断熱性能を高めるために、断熱材層4cが2層構造となっており、具体的には、グラスウールからなる内側層4iと、内側層4iよりもグラスウールが密集した外側層4jとが設けられている。
【0029】
一方、上階外壁パネル4については、図2に示すように、最も外側に位置する外壁材層4aが、他の層よりも上下方向に長く、他の層よりも幾分下側に突出している。これに対し、下階外壁パネル5については、図2に示すように、外壁材層5aが他の層よりも上下方向に短く、その上端位置は他の層のものよりも幾分低い位置にある。
【0030】
上述した上階外壁パネル4と下階外壁パネル5とは上下方向において幾分離間している。換言すると、上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の双方の間には隙間が形成されている。そして、建物1には、当該隙間からの水の浸入を防ぐための防水機構9が設けられている。
【0031】
なお、前述したように、上階外壁パネル4のうち、最も外側に位置する外壁材層4aが、他の層よりも幾分下側に突出しており、下階外壁パネル5の外壁材層5aが他の層よりも短く、その上端位置が他の層のものよりも幾分低い位置にある。この結果、図2に示すように、上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間に形成される隙間については、その開口位置が上下方向において胴差材6の設置位置から幾分ずれた位置となっている。
【0032】
<<防水機構9の構成>>
次に、既出の図2を参照しながら、上述した防水機構9について説明する。
【0033】
防水機構9は、建物1において上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間の隙間からの水の浸入を防止すべく、胴差材6付近(より詳しくは、胴差材6の前方)に配置されている。特に、本実施形態では、防水機構9は、その下端部が下階外壁パネル5の上端部に架かるように、胴差材6の前方位置に取付けられている。そして、本実施形態に係る防水機構9は、図2に示すように、主たる構成要素として、第一の水切板10と、第二の水切板11と、化粧面材としての胴面材12とを有する。
【0034】
第一の水切板10は、胴差材6であるH型鋼の前方位置にて当該H型鋼を覆う金属板である。第一の水切板10は、側面視で略L字状に折れ曲がっており、水平方向に沿って平坦な水平部10aと、水平部10aと交差する方向(上下方向)に延出した交差部10bとを有する。そして、図2に示すように、水平部10aは上側フランジ部7上に載り、交差部10bはH型鋼が上記の隙間に面しないように当該H型鋼を覆っている。
【0035】
なお、第一の水切板10が所定位置に取付けられた状態において、交差部10bの下端部は、上下方向において下階外壁パネル5の上端部に差し掛かっている。また、交差部10bは、その延出方向の中途位置で外側に向かって折れ曲がり、その後、もとの延出方向に沿って延出するように再度折れ曲がっている。つまり、交差部10bの延出方向の中途位置には、段差D1が形成されている。
【0036】
また、交差部10bが有する外表面のうち、前側に位置する面には、段差D1より幾分上がった位置に、略L字状のアングル10cが、上下方向と交差する方向(図2にて紙面を貫く方向)において一定間隔ごとにビス止めされている。上記の面には、また、段差D1より幾分下がった位置に、略矩形波状の金属片10dが、上下方向と交差する方向(図2にて紙面を貫く方向)において一定間隔ごとにビス止めされている。
【0037】
第二の水切板11は、第一の水切板10の前方位置に位置する金属板であり、第一の水切板10に沿って延出している。この第二の水切板11の上端部は、上下方向と交差する方向(図2にて紙面を貫く方向)において一定間隔ごとに略直角に折れ曲がっている。そして、当該折れ曲がった部分は、上述した略L字状のアングル10cと係合し、該アングル10cにビス止めされている。また、第二の水切板11は、その延出方向中央部にて、上述した略矩形波状の金属片10dにビス止めされている。つまり、当該金属片10dは、第二の水切板11を取付けるための台座として機能している。そして、上記の如く第二の水切板11が取付けられることにより、第二の水切板11と第一の水切板10の間には、金属片10dの高さに応じた空間Sが設けられている。
【0038】
さらに、第二の水切板11は、図2に示すように、その延出方向の中途位置にて複数回折れ曲がって段差D2、D3を形成している。所定位置に取付けられた第二の水切板11において、上側に形成された段差(以下、上側の段差D2)は、上下方向において、第一の水切板10に形成された段差D1と略同位置に位置している。他方、下側に形成された段差(以下、下側の段差D3)は、上下方向において、下階外壁パネル5(より具体的には、外壁材層5a)の上端よりも僅かに上方に位置している。
【0039】
上記段差D2、D3が形成される結果、最終的に、第二の水切板11のうち、下側の段差D3よりも下側に位置する部分が、下階外壁パネル5の上端部の前方に位置するようになっている。つまり、第二の水切板11は、その下端部が下階外壁パネル5の上端部を覆うように配置されている。これにより、第二の水切板11による水切効果をより有効に発揮することが可能になる。
【0040】
以上の構成を有する第二の水切板11は、第一の水切板10との間に一定の空間Sを形成しながら、第一の水切板10に沿って延出している。そして、当該空間Sは各外壁パネル4、5の通気層4b、5bと連通している。これにより、上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の各々の通気層4b、5bは、当該通気層4b、5b内の通気を促して外壁パネル内における結露を防止する機能を有効に発揮することが可能となる。
【0041】
胴面材12は、建物1において上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の双方の間で外壁の一部をなし、当該双方の間の隙間をその開口位置にて塞ぐための面材である。本実施形態における胴面材12は、胴面材12の背面に取付けられた金属板製の台座13を介して第二の水切板11に固定されている。
【0042】
また、胴面材12が第二の水切板11にビス止めされた状態では、胴面材12の上端部が、上下方向において、第二の水切板11に形成された上側の段差D2よりも幾分上方に突出している(図2参照)。つまり、胴面材12が第二の水切板11にビス止めされた状態において、胴面材12の上端部と第二の水切板11との間には、空きスペースが形成されている。この空きスペースには、グラスウールボードからなる断熱部材14が配置されている。この断熱部材14により、胴差材6付近(換言すると、上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間)における断熱性能を高めることが可能となる。
【0043】
断熱部材14は、上側の段差D2の高さに相当する厚みを有し、上下方向において、第二の水切板11に形成された上側の段差D2から見て上側にある部分に位置し、かつ、第二の水切板11が有する外表面のうち、前側(外側)に位置する面に設置されている。以下、第二の水切板11が有する外表面のうち、断熱部材14が設置されている部分を断熱部材設置面と呼ぶ。
【0044】
なお、本実施形態における胴面材12は、断片化されており、建物1の外周に沿って形成された上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間の隙間を埋めるべく、上記外周に沿って複数個連ねて取付けられている。また、各胴面材12の繋ぎ目(目地)には、ガスケット15が挿入されており、当該繋ぎ目からの水の浸入を防止している。
【0045】
<<支持部材20の構成>>
次に、図4及び図5を参照しながら、支持部材20の構成について説明する。図4は、支持部材20の正面図である。図5は、完成状態の建物1において所定位置に取付けられている状態の支持部材20を示す図である。
【0046】
支持部材20は、前述したように、建物1の施工過程において、胴差材6に上階外壁パネル4を固定するためのボルトBoが、胴差材6の上側フランジ部7側のボルト穴Bhに挿入された状態で保持されるように、当該ボルトBoを支持するための部材である。支持部材20は、図4に示すように、ボルトBoを保持する機能を有するボルト保持機構21と、当該ボルト保持機構21の台座として機能する長尺体22とを有する。
【0047】
長尺体22は、平坦部22aと、該平坦部22aから立設している立設部22bとを有する。立設部22bは、図4及び図5に示すように、略C字状の断面形状を有し、所定方向に長い鋼材であり、その長さは、胴差材6であるH型鋼のウェブ寸法よりも幾分短くなっている。
【0048】
ボルト保持機構21は、図4に示すように、ネジ部21aと、ネジ部21aに取付けられた係止ナット21bと、ネジ部21aの先端に接合された皿状の受け部21cとを有する。受け部21cは、底板21dと、底板21dの外周から延出して底板21dと略直交している爪部21eを有し、支持部材20の頂上部に位置してボルトBoの頭部を把持できるようになっている(図5参照)。そして、ネジ部21aが、長尺体22の平坦部22aに形成された穴(図4及び図5では不図示)に挿通され、係止ナット21bが平坦部22aよりも外側に位置するようにネジ部21aに取付けられることにより、ボルト保持機構21が長尺体22に組み付けられる。
【0049】
かかる状態のボルト保持機構21では、係止ナット21bが長尺体22の平坦部22aに係止されることにより、ネジ部21aのうち、平坦部22aの外側に突出し、その先端に受け部21cが位置するようになる。そして、ネジ部21a及び係止ナット21bとを操作することにより、上記ネジ部21aの突出量が調整可能となる。この結果、受け部21cの位置を長尺体22の長手方向に沿って変化させることが可能となる。
【0050】
以上のような構成の支持部材20は、図5に示す通り、受け部21cが胴差材6の上側フランジ部7のボルト穴BhにセットされたボルトBoと対向するように、上側フランジ部7と下側フランジ部8との間に配置される。その後、ボルト保持機構21のネジ部21a及び係止ナット21bを操作して、受け部21cの位置を、ボルトBoの頭部を把持可能な位置まで変化させる。これにより、支持部材20は、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入させた状態で保持できるようになる。
【0051】
なお、本実施形態では、支持部材20が所定位置に取付けられたとき、長尺体22の立設部22bに備えられ、互いに対向する2つの側部22cは、その間に、胴差材6に下階外壁パネル5を固定しているボルトBo用のナット(以下、下側ナット)を挟むようになる(図5参照)。つまり、2つの側部22cの間には、下側ナットを挟むこと可能な分だけの間隔が設けられており、当該間隔内に下側ナットを位置させることによって、支持部材20が位置決めされることになる。この結果、ボルト保持機構21のネジ部21a等を操作する際に支持部材20の位置がずれるのを抑制することができる。
【0052】
<<本実施形態の建築方法について>>
次に、上記構成の建物1の建築方法について、上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5と胴差材6との固定方法、及び、防水機構9の取付け方法を中心に説明する。本実施形態の建築方法は、図6に示すように、胴差材6を下階外壁パネル5上に載置して胴差材6に下階外壁パネル5を固定する工程S001と、胴差材6に上階外壁パネル4を固定するためのボルトBoをボルト穴Bhに挿入する工程S002と、支持部材20を所定位置に設置する工程S003と、防水機構9及び断熱部材14を取付ける工程S004と、上階外壁パネル4を胴差材6上に載置して胴差材6に固定する工程S005とを有する。図6は、本実施形態に係る建築方法を示す流れ図である。そして、本実施形態に係る建築方法による建物1の施工は、工程S001、S002、S003、S004、S005の順に進められる。
【0053】
以下、図7〜図15を参照しながら、各工程について説明する。図7〜図15の各図は、建物1の建築作業における各施工段階を示す図であり、胴差材6付近の状態を示している。
【0054】
<胴差材6に下階外壁パネル5を固定する工程S001>
本工程S001は、予め設置された下階外壁パネル5の上に胴差材6を載置して当該胴差材6に下階外壁パネル5を固定する工程である。具体的に説明すると、先ず、下階外壁パネル5の上に、胴差材6となるH型鋼を載置する。このとき、図7に示すように、H型鋼のうち、下側フランジ部8の前端が、下階外壁パネル5の外壁材層5aや通気層5bよりも後側(換言すると、建物1の室内側)に位置するように、H型鋼を下階外壁パネル5上に載置する。その後、H型鋼が有する下側フランジ部8の前側部分8aに形成されたボルト穴Bhの上方からボルトBoを挿入し、このボルトBoにより下階外壁パネル5をH型鋼(詳しくは、H型鋼の下側フランジ部8)にボルト止めする。
なお、本実施形態では、下階外壁パネル5をH型鋼に固定するボルトBoと嵌合するナットが、下階外壁パネル5の、ボルト穴Bhが形成されている箇所に溶接にて固定されている。
【0055】
<上階外壁パネル4固定用のボルトBoをボルト穴Bhに挿入する工程S002>
本工程S002は、胴差材6の上端部(具体的には、H型鋼の上側フランジ部7の前側部分7a)に形成されたボルト穴BhにボルトBoを挿入する工程である。本実施形態では、ボルト穴Bhの下方からボルトBoを挿入し、図7に示すように、ボルトBoの頭部が下側に位置するようになる。なお、この作業は、作業者がH型鋼の後側(すなわち、建物1の室内側)からH型鋼の前側(すなわち、建物1の外側)へ手を伸ばすことによって行われる。つまり、本工程S002における作業については、建物1の外側からではなく内側から行うことが可能である。
【0056】
<支持部材20を設置する工程S003>
本工程S003は、前の工程S002でボルト穴Bhに挿入されたボルトBoを、かかる状態のまま保持しておくために、前述した支持部材20を所定位置に設置する工程である。ここで、支持部材20を設置する所定位置とは、胴差材6となるH型鋼の上側フランジ部7と下側フランジ部8の間においてボルトBoの略真下に位置する位置である。
【0057】
より具体的に説明すると、ボルト保持機構21の受け部21cが上側フランジ部7のボルト穴BhにセットされたボルトBoの頭部と対向するように、支持部材20を上側フランジ部7と下側フランジ部8との間に配置する。このとき、長尺体22の立設部22bに備えられた2つの側部22cが、その間に前述の下側ナットを挟み込むようになる。
【0058】
そして、支持部材20を上述の位置に設置してから、ボルト保持機構21のネジ部21a及び係止ナット21bを操作する。この操作により、ネジ部21aの突出量が調整される結果、支持部材20の頂上部に位置する受け部21cの位置が変わり、最終的に、受け部21cがボルトBoの頭部を把持するようになる。
【0059】
また、本工程S003における作業についても、前の工程S002と同様、作業者がH型鋼の後側(すなわち、建物1の室内側)からH型鋼の前側(すなわち、建物1の外側)へ手を伸ばすことによって行われる。
【0060】
なお、本実施形態では、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入した後に、支持部材20を設置して支持部材20に上記ボルトBoを支持させることとしたが、これに限定されるものではない。つまり、予め支持部材20を所定位置に設置した後に、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入して当該ボルトBoを支持部材20に支持させることとしてもよい。
【0061】
<防水機構9及び断熱部材14を取付ける工程S004>
本工程S004は、ボルトBoが支持部材20によりボルト穴Bhに挿入された状態で保持されている間に、防水機構9を胴差材6の前方位置に取付けるとともに、前述した断熱部材14を所定位置に設置する工程である。本工程S004により、防水機構9は、上下方向において下階外壁パネル5の上端部に架かるようになる。一方、断熱部材14は、第二の水切板11が有する外表面のうち、前述した断熱部材設置面に設置され、最終的に、胴面材12の上端部と第二の水切板11との間に形成される空きスペース内に収容させる。
【0062】
そして、本工程S004は、図16に示す手順によって実施される。図16は、防水機構9及び断熱部材14を取付ける工程S004の手順を示す図である。図16に示すように、本工程S004は、第一の水切板10を取付ける第一の取付け工程S011と、第二の水切板11を取付ける第二の取付け工程S012と、断熱部材14を第二の水切板11の断熱部材設置面に設置する工程S014と、胴面材12を取付ける第三の取付け工程S015とを有する。
【0063】
さらに、本工程S004は、図16に示すように、第二の水切板11が有する外表面の所定部位に第一の弾性ゴム16を貼り付ける第一の貼付工程S013と、胴面材12の上端面に第二の弾性ゴム17を貼り付ける第二の貼付工程S016とを更に有する。
【0064】
なお、本工程S004中の各工程S011〜S016における作業についても、図17に示すように、作業者がH型鋼の後側(すなわち、建物1の室内側)からH型鋼の前側(建物1の外側)へ手を伸ばすことによって行われる。図17は、防水機構9を取付ける作業の様子を示す模式図である。
【0065】
以下、本工程S004における各工程S011〜S016について説明する。
【0066】
<第一の取付け工程S011>
この工程S011では、第一の水切板10が胴差材6となるH型鋼の前方位置にて当該H型鋼を覆うように、第一の水切板10を取付ける。具体的には、第一の水切板10の水平部10aを上側フランジ部7に載せて、かつ、交差部10bをH型鋼の前方位置に位置させる。このとき、交差部10bの下端部は、図8に示すように、下階外壁パネル5の上端部に差し掛かるようになる。かかる状態の下、第一の水切板10を所定の固定部位にビス止めする。ここで、ビス止めにより第一の水切板10が固定される部材は、第一の水切板10と隣設する部材(例えば、下階外壁パネル5や支持部材20)である。
【0067】
なお、第一の水切板10が所定の固定部位にビス止めされる段階で、第一の水切板10の交差部10bは、その延出方向の中途位置で折れ曲がっており、当該位置には段差D1が形成されている。そして、かかる段差D1から見て下側に位置する部分が、段差D1から見て上側に位置する部分の前方位置に位置するように、第一の水切板10の取付けが行われる。
【0068】
さらに、交差部10bが有する外表面のうち、前側(外側)に位置する面において、上記段差D1から幾分上がった位置に、略L字状のアングル10cを、図8にて紙面を貫く方向に沿って一定間隔ごとにビス止めする。さらに、上記アングル10cが固定されている面と同一の面において、上記段差D1から幾分下がった位置に、略矩形波状の金属片10dを、図8にて紙面を貫く方向に沿って一定間隔ごとにビス止めする。なお、アングル10cや金属片10dのビス止めは、第一の水切板10を所定の固定部位に取付ける前に予め行われていてもよい。
【0069】
<第二の取付け工程S012>
この工程S012では、第一の水切板10の前方位置に第二の水切板11を位置させて、第二の水切板11を所定の固定部位に取付ける。この際、第二の水切板11の下端部が下階外壁パネル5の上端部の前方位置に位置して当該上端部を覆うように、第二の水切板11を取付ける。
【0070】
より詳しく説明すると、取付け前の第二の水切板11については、その上端部が、図10にて紙面を貫く方向に沿って一定間隔ごとに略直角に折れ曲がっている。また、取付け前の第二の水切板11においては、その延出方向の中途位置にて複数回折れ曲がって段差D2、D3が形成されている。
【0071】
かかる状態の第二の水切板11を、第一の水切板10の前方位置にて位置させてから、第一の水切板10に沿うように取付ける。具体的に説明すると、第二の水切板11の上端部のうち、略直角に折れ曲がった部分を、第一の水切板10にビス止めされた略L字状のアングル10cと係合させてから、当該アングル10cにビス止めする。さらに、第二の水切板11の延出方向中央部を、第一の水切板10にビス止めされた略矩形波状の金属片10dにビス止めする。
【0072】
上記の作業により、第二の水切板11は、第一の水切板10の前方位置にて第一の水切板10に沿うようになる。かかる状態において、第二の水切板11に形成された上側の段差D2は、上下方向において、第一の水切板10に形成された段差D1と略同位置に位置するようになる(図10参照)。また、第二の水切板11と第一の水切板10との間には空間Sが設けられるようになる。そして、本実施形態において上記空間Sは下階外壁パネル5の通気層5bと連通するようになる。換言すると、第二の取付け工程S012では、第二の水切板11と第一の水切板10との間に空間Sを設け、かつ、空間Sと下階外壁パネル5が有する通気層5bとが連通するように第二の水切板11を取付けることになる。
【0073】
さらに、第二の水切板11の取付けが完了すると、第二の水切板11に形成された下側の段差D3が、下階外壁パネル5(より具体的には、外壁材層5a)の上端よりも僅かに上方位置に位置するようになる。そして、第二の水切板11のうち、下側の段差D3から見て下側に位置する部分が、下階外壁パネル5の前方位置に位置するようになる。つまり、本実施形態では、第二の水切板11の下端部と下階外壁パネル5の上端部とが上下方向において重なり合う位置に位置するように、第二の水切板11を取付ける。
【0074】
なお、本実施形態では、防水機能を高める上で、第二の水切板11のうち、下側の段差D3付近に位置する部分と、下階外壁パネル5との間に形成された空隙に止水材としてのEPT(Ethylene−Propylene
Terpolymer)を設けることとしている。より具体的に説明すると、図9に示すように、第二の水切板11を取付けるにあたり、事前に、下階外壁パネル5の外壁材層5aの上端面に上記EPTを貼り付けておく。同様に、下階外壁パネル5の外壁材層5aの外表面のうち、第二の水切板11の下端部と対向するようになる部分にも、EPTを貼り付けておく(図10参照)。その後、第二の水切板11を取付けると、各EPTが第二の水切板11に押圧されて弾性変形され、上記空隙がシーリングされるようになる(図10参照)。
【0075】
<第一の貼付工程S013>
この工程S013では、後に上階外壁パネル4を設置した際に、上階外壁パネル4と第二の水切板11との間に形成される空隙をシーリングすべく、止水材としての第一の弾性ゴム16を予め第二の水切板11の所定部位に貼り付ける。ここで、第一の弾性ゴム16を貼り付ける部位としては、図10に示すように、第二の水切板11が有する外表面のうち、前側(外側)に位置する面の上端部となる。なお、第一の弾性ゴム16の材質としては、上述のEPTが好適である。
【0076】
<断熱部材14を設置する工程S014>
この工程S014では、胴面材12の取付け(すなわち、第三の取付け工程S015)に先んじて、第二の水切板11に設けられた断熱部材設置面に、グラスウールボードからなる断熱部材14を設置する。ここで、断熱部材14は、前述したように、第二の水切板11に形成された上側の段差D2の高さに応じた厚みを有し、図11に示すように、上側の段差D2に隣り合う形で上記断熱部材設置面に設置される。なお、断熱部材14を断熱部材設置面に設置する(取付ける)ための手段としては、例えば、両面テープが好適である。
【0077】
<第三の取付け工程S015>
この工程S015では、第二の水切板11及び断熱部材14の前方位置に胴面材12を取付ける。本実施形態では、胴面材12の背面に金属板製の台座13が取付けられており、図12に示すように、当該台座13を介して胴面材12を第二の水切板11に固定する。
【0078】
なお、所定位置に取付けられた胴面材12は、図12に示すように、第二の水切板11のうち、上側の段差D2から下側の段差D3に亘る部分、及び、上記断熱部材14を覆うようになる。一方、胴面材12の背面に取付けられた台座13の上端部は、図12に示すように、断熱部材14の上端に回り込み、最終的に第二の水切板11にビス止めされている。
【0079】
また、本実施形態では、胴面材12(より具体的には、胴面材12の背面に取付けられた台座13)と第二の水切板11との間に形成される空隙をシーリングすべく、止水材としてのEPTを、胴面材12の取付け前に第二の水切板11の所定部位に貼り付ける。ここで、EPTを貼り付ける所定部位とは、例えば、第二の水切板11のうち、上側の段差D2と下側の段差D3の中間位置に位置する部位である。
【0080】
さらに、複数の胴面材12を建物1の外周に沿って連ねて取付けた後には、各胴面材12の間の繋ぎ目(目地)にガスケット15を挿入するなどして、当該繋ぎ目からの水の浸入を防止するための処理を行う(図13参照)。
【0081】
<第二の貼付工程S016>
この工程S016では、後に上階外壁パネル4を胴面材12及び胴差材6となるH型鋼の上に載置した際に、上階外壁パネル4と胴面材12との間に形成される空隙をシーリングすべく、止水材としての第二の弾性ゴム17を胴面材12の所定部位に貼り付ける。ここで、第二の弾性ゴム17を貼り付ける部位としては、図13に示すように、胴面材12の上端面となる。なお、第二の弾性ゴム17の材質としては上述のEPTが好適である。
【0082】
<上階外壁パネル4を胴差材6上に載置して固定する工程S005>
本工程S005は、防水機構9及び断熱部材14の取付け後に、上階外壁パネル4を防水機構9及び胴差材6となるH型鋼の上に載置してから、上階外壁パネル4を胴差材6に固定する工程である。本工程S005において、上階外壁パネル4とH型鋼との締結は、支持部材20によりボルト穴Bhに挿入された状態で保持されているボルトBoを用いて行われる。つまり、上階外壁パネル4とH型鋼との締結が完了するまでの間、支持部材20は、上階外壁パネル4をH型鋼に固定するためのボルトBoをボルト穴Bhに挿入した状態で保持し続けることになる。
【0083】
ここで、上階外壁パネル4をH型鋼の上に載置するにあたり、上記ボルトBoを挿入するために上階外壁パネル4に設けられたボルト挿入孔が、当該ボルトBoの上方位置に位置するように、上階外壁パネル4を吊り上げる。この過程において、先ず、上階外壁パネル4を、その下端部が前述した第一の弾性ゴム16と対向するような位置まで搬送する。それから、上階外壁パネル4の下端部と第一の弾性ゴム16とを対向させつつ、上階外壁パネル4を後側(室内側)へ引き込んでいく(図14参照)。このとき、上階外壁パネル4の下端部が第一の弾性ゴム16を押圧し、当該第一の弾性ゴム16は弾性変形するようになる。この結果、上階外壁パネル4が第一の弾性ゴム16を介して第二の水切板11と密着し、上階外壁パネル4と第二の水切板11との間に形成される空隙がシーリングされるようになる。
【0084】
そして、上階外壁パネル4のボルト挿入孔がボルトBoの上方位置に至ると、上階外壁パネル4を下ろし、最終的に防水機構9とH型鋼の上に載置させる。これにより、上階外壁パネル4のボルト挿入孔にボルトBoが挿入されるようになる。このとき、上階外壁パネル4(具体的には、外壁材層4a)の下端部が、前述した第二の弾性ゴム17に上方から接近し、やがて第二の弾性ゴム17を押圧するようになる(図15参照)。この結果、上階外壁パネル4が第二の弾性ゴム17を介して胴面材12と密着し、上階外壁パネル4と胴面材12との間に形成される空隙がシーリングされるようになる。
【0085】
以上のような作業により、上階外壁パネル4は、胴差材6となるH型鋼上に載置される。そして、上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間に隙間が形成され、当該隙間が防水機構9により塞がれるようになる。換言すると、前の工程S004では、上階外壁パネル4がH型鋼上に載置された際に防水機構9が上記隙間を塞ぐように、防水機構9を取付ける。そして、防水機構9及びH型鋼の上に載置された上階外壁パネル4を、ボルト穴Bhに挿入された状態のボルトBoによりH型鋼(より具体的には、H型鋼が有する上側フランジ部7の前側部分7a)に固定する。
【0086】
なお、本実施形態では、上階外壁パネル4の外壁材層4aや通気層4bがH型鋼の上側フランジ部7の前端よりも外側に位置するように、上階外壁パネル4をH型鋼上に載置する。さらに、本実施形態では、上階外壁パネル4の通気層4bと第一の水切板10と第二の水切板11の間に設けられた空間Sとが連通するように、上階外壁パネル4を防水機構9及びH型鋼の上に載置する。これにより、上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の通気層4b、5bが、それぞれ、当該通気層4b、5b内の通気を促して外壁パネル内における結露を防止する機能を有効に発揮するようになる。
【0087】
また、本実施形態では、上階外壁パネル4をH型鋼に固定するボルトBoにナットを嵌合させる際、上階外壁パネル4の室内側にナット取付け用の開口(不図示)を設ける等して、建物1の内側に形成される作業床(例えば、胴差材6上に形成される2階床)上で容易にナットをボルトBoに嵌合させることが可能になる。
【0088】
以上までに説明してきた工程S001〜S005が完了することにより、建物1の建築のうち、上階外壁パネル4及び下階外壁パネル5の設置、及び、胴差材6付近の防水処理及び断熱処理が完了する。以降、他の建設資材の建て込みや内装作業が完了した時点で、建物1の建築が完了し、建物1が完成する。
【0089】
<<本実施形態に係る建物1の建築方法の有効性について>>
本実施形態に係る建物1の建築方法では、上階外壁パネル4の設置に先んじて、胴差材6に上階外壁パネル4を固定するためのボルトBoを、胴差材6の上端部に形成されたセット穴Bhに挿入し、かかる状態で保持しておく。そして、ボルトBoをセット穴Bhに挿入した状態で保持している間に、防水機構9を胴差材6の前方位置に取付ける。その後、上階外壁パネル4を防水機構9及び胴差材6の上に載置して、ボルト穴Bhに挿入された状態のボルトBoによって上階外壁パネル4を胴差材6に固定する。これにより、より容易な建物の建築方法が実現され、作業者の技量によらずに施工品質を安定させることが可能になる。
【0090】
すなわち、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、従来の建築方法は、図18に示すように、上階外壁パネル4を胴差材6上に載置した後に、上階外壁パネル4と胴差材6との固定作業や防水機構9の取付け作業を行うことを余儀なくされていた。したがって、上記の作業を建物の外側から行う必要があり、住宅密集地等のように、施工対象となる建物がこれと隣接する建物に近接し、当該建物の外側に作業スペース(例えば、作業用足場の架設スペース)を確保し難い環境では、上記の作業を行うことが困難となっていた。図18は、従来の建物の建築方法の流れを示した図である。
【0091】
より具体的に説明すると、上階外壁パネル4を胴差材6に固定するためのボルトBoをボルト穴Bhに挿入しただけでは当該ボルトBoが脱落してしまう。このため、従来の建築方法においては、一先ず上階外壁パネル4を胴差材6となるH型鋼上に載置し、その上で、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入して、当該ボルトBoにより上階外壁パネル4をH型鋼に固定していた。しかしながら、H型鋼の上側フランジ部7のうち、前側部分7aにボルト穴Bhが形成されていると、上階外壁パネル4を胴差材6上に載置した後では、内側(建物の室内側)から上記ボルト穴Bhの形成位置に手が届かなくなってしまう。
【0092】
また、従来は、上階外壁パネル4が胴差材6となるH型鋼上に載置された後に、上述の防水機構9を、上階外壁パネル4と下階外壁パネル5との間の隙間を塞ぐ位置に取付けることとなっていた。さらに、胴差材6付近に設置される断熱部材についても、上階外壁パネル4が胴差材6となるH型鋼上に載置された後に設置されていた。このため、従来では、防水機構9や断熱部材14の取付け作業を内側(建物の室内側)から行うことが困難となっていたため、建物の外側に作業用足場を架設した上で、上記の作業を建物の外側から行う必要があった。
【0093】
そして、建物の外側にて上記の作業を行う際、住宅密集地のように、施工対象となる建物がこれと隣接する既存の建物と近接している環境では、当該建物の外側に十分な作業スペースが確保できない結果、上記の作業を行うことが困難となり、その施工品質が作業者の技量に依存することとなっていた。
【0094】
これに対して、本実施形態では、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入した状態で保持しつつ、胴差材6となるH型鋼の上に上階外壁パネル4を載置し、上記ボルトBoによりH型鋼と上階外壁パネル4とを固定する。これにより、胴差材6と上階外壁パネル4との固定作業を建物1の外側で行わずに済むようになる。
【0095】
具体的に説明すると、H型鋼の上側フランジ部7の前側部分7aに形成されたボルト穴BhにボルトBoを挿入した上で、当該上側フランジ部7の前側部分7aと下側フランジ8の前側部分8aとの間に、上記のボルトBoをボルト穴Bhに挿入した状態で支持する支持部材20を設置する。
【0096】
そして、支持部材20に備えられているボルト保持機構21において、ネジ部21a及び係止ナット21bが操作されてネジ部21aの突出量が調整される結果、当該ネジ部21aの先端に接合された受け部21cが、ボルトBoの頭部を把持するようになる。これにより、上階外壁パネル4をH型鋼の上に載置することに先んじて、上階外壁パネル4をH型鋼に固定するためのボルトBoをボルト穴Bhに挿入し、かつ、その状態のままで上記ボルトBoを保持しておくことが可能になる。このような効果により、胴差材6と上階外壁パネル4との固定作業を建物1の内側から行うことが可能になる。
【0097】
さらに、本実施形態では、上階外壁パネル4をH型鋼の上に載置することに先んじて、防水機構9や断熱部材14の取付け作業を行うため、既出の図17に示した場合と同様に、H型鋼の内側から作業者が手を伸ばせば防水機構9や断熱部材14を所定位置に取付けることが可能である。すなわち、当該取付け作業についても建物1の内側から行うことが可能になる。
【0098】
以上の効果により、例えば、住宅密集地のように建物1の外側にスペースを確保し難い環境下であっても、上記の作業を建物1の内側から行うことができる結果、住宅密集地であっても良好な建物1の建築が行われ、その施工品質についても作業者の技量に影響されなくなる。
【0099】
また、本実施形態では、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入した状態で保持するために、H型鋼の上側フランジ部7と下側フランジ部8の間であって、前記ボルトBoの下方位置に、既述の構成を有する支持部材20を設置することとした。これにより、比較的簡易な構成により、ボルトBoを上記の状態で保持しておくことが可能になる。なお、これに限定されるものではなく、ボルトBoをボルト穴Bhに挿入した状態で保持できる限り、如何なる工法(例えば、接着剤等を用いる工法)も利用可能である。ただし、上記の支持部材20であれば、上側フランジ部7と下側フランジ部8の間のスペースを有効利用でき、かつ、第一の水切板10を取付ける際の台座としても利用することができる。
【0100】
また、本実施形態において、第三の取付け工程S015の前に、第二の水切板11に形成された上側の段差D2に相当する厚みを有する断熱部材14を、第二の水切板11の断熱部材設置面に設置する。そして、その後の第三の取付け工程S015において、断熱部材14及び第二の水切板11の前方位置に胴面材12を取付けることとした。これにより、胴差材6付近の断熱を図ることができる。なお、断熱部材14を第二の水切板11に取付けなくてもよい(すなわち、断熱部材14を取付ける工程を省略することとしてもよい)が、上述した効果が得られる分、本実施形態の方が好適である。
【0101】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、主として本発明の建物1の建築方法について説明したが、上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した部材の形状等については、本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0102】
特に、本実施形態では、胴差材6付近を適切に防水するために、胴差材6の前方位置に複数枚(本実施形態では2枚)の水切板を重ねて設けることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、第一の水切板10のみであってもよいが、胴差材6付近の防水効果を高める上で、第一の水切板10及び第二の水切板11を設ける方が望ましい。
【0103】
また、本実施形態において、各外壁パネル4、5は、多層構造となっており、通気層4b、5bを有することとしたが、これに限定するものではなく、通気層4b、5bを有しない外壁パネル4、5であってもよい。ただし、上述したように、通気層4b、5bを設けることにより、壁内に持ち込まれた湿気を屋外に排除することが可能になる。かかる点において、本実施形態の方がより望ましい。
【0104】
さらに、本実施形態では、第一の水切板10と第二の水切板11との間に空間Sを設け、当該空間Sと上階外壁パネル4や下階外壁パネル5の通気層4b、5bとを連通させることとした。つまり、本実施形態に係る建築方法では、前記空間Sと各通気層4b、5bとが連通するように、建物1を施工する。この結果、上記の通気層4b、5bは、その機能を有効に発揮することが可能になる。
【0105】
また、本実施形態では胴差材6としてH型鋼を用いているが、これに限定するものではなく、例えば、他の形状の鋼材あるいは鋼材以外の材質であってもよい。ただし、本実施形態のように胴差材6としてH型鋼を用いている場合、本発明の効果がより有効に奏される。つまり、胴差材6となるH型鋼の上に上階外壁パネル4を載置する場合、上階外壁パネル4を当該H型鋼の上に載置した後に、上階外壁パネル4を胴差材6に固定するためのボルトBoをボルト穴Bhに挿入し、防水機構9や断熱部材14の取付作業を行おうとすると、上述した課題が顕在化する。かかるケースにおいては、本発明の効果がより有効なものとなる。
【0106】
なお、上記の実施形態では、本発明の建築方法とともに、当該建築方法に用いて完成される建物についても明らかにした。すなわち、上階外壁部材及び下階外壁部材の双方と、上下方向において前記双方の間に挟まれる位置にて前記双方の各々が固定される胴差材と、前記双方の間の隙間からの水の浸入を防ぐための防水機構とを有する建物であって、(A)前記下階外壁部材の上に前記胴差材を載置して該胴差材に前記下階外壁部材を固定した後に、前記胴差材に前記上階外壁部材を固定するための固定部材が、前記胴差材の上端部に形成されたセット穴に挿入され、(B)前記固定部材が前記セット穴に挿入された状態で保持されている間に、前記防水機構が前記胴差材の前方位置に取付けられ、(C)前記防水機構の取付け後に、前記上階外壁部材が、前記防水機構及び前記胴差材の上に載置されて、前記セット穴に挿入された状態の前記固定部材により前記上階外壁部材を前記胴差材に固定されたことを特徴とする建物も実現可能である。
【0107】
さらに、上記の建物には、前記セット穴に挿入された状態の前記ボルトを支持するための支持部材が備えられ、該支持部材が、前記ボルトの下方位置に位置するように、前記胴差材としてのH型鋼の上側フランジ部と下側フランジ部の間に設置されている構成についても実現可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 建物、2 躯体、3 屋根、4 上階外壁パネル(上階外壁部材)、
4a 外壁材層、4b 通気層、4c 断熱材層、4d エアースペース層、
4e 石膏ボード層、4f スペーサー、4g アルミ蒸着フィルム、
4h 透湿防水シート、4i 内側層、4j 外側層、
5 下階外壁パネル(下階外壁部材)、5a 外壁材層、5b 通気層、
6 胴差材、7 上側フランジ部、7a 前側部分、
8 下側フランジ部、8a 前側部分、9 防水機構、10 第一の水切板、
10a 水平部、10b 交差部、10c アングル、10d 金属片、
11 第二の水切板、12 胴面材(化粧面材)、13 台座、14 断熱部材、
15 ガスケット、16 第一の弾性ゴム、17 第二の弾性ゴム、
20 支持部材、21 ボルト保持機構、21a ネジ部、21b 係止ナット、
21c 受け部、21d 底板、21e 爪部、
22 長尺体、22a 平坦部、22b 立設部、22c 側部、
D1,D2,D3 段差、Bh ボルト穴(セット穴)、Bo ボルト、
H 隣接建物、S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階外壁部材及び下階外壁部材の双方と、上下方向において前記双方の間に挟まれる位置にて当該双方の各々が固定される胴差材とを有する建物の建築方法であって、
予め設置された前記下階外壁部材の上に前記胴差材を載置して該胴差材に前記下階外壁部材を固定する工程と、
前記胴差材に前記上階外壁部材を固定するための固定部材を、前記胴差材の上端部に形成されたセット穴に挿入する工程と、
前記固定部材を前記セット穴に挿入された状態で保持している間に、前記建物において前記双方の間の隙間からの水の浸入を防ぐための防水機構を、前記胴差材の前方位置に取付ける工程と、
前記防水機構の取付け後に、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記胴差材の上に載置して、前記セット穴に挿入された状態の前記固定部材により前記上階外壁部材を前記胴差材に固定する工程と、
を有することを特徴とする建物の建築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の建築方法において、
前記下階外壁部材の上に前記胴差材を載置して該胴差材に前記下階外壁部材を固定する工程では、
前記下階外壁部材の上に前記胴差材としてのH型鋼を載置して、当該H型鋼に備えられた下側フランジ部のうち、該下側フランジ部の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分に前記下階外壁部材をボルト止めし、
前記セット穴に前記固定部材を挿入する工程では、
前記H型鋼に備えられた上側フランジ部のうち、該上側フランジ部の幅方向において中央位置よりも前側に位置する部分に形成された前記セット穴に、前記固定部材としてのボルトを挿入し、
前記防水機構を取付ける工程では、前記H型鋼の後側から前記H型鋼の前側へ手を伸ばして前記防水機構を取付けることを特徴とする建物の建築方法。
【請求項3】
請求項2に記載の建物の建築方法において、
前記ボルトを前記セット穴に挿入された状態で保持するために、前記セット穴に挿入された状態の前記ボルトを支持するための支持部材を、該支持部材が前記ボルトの下方位置に位置するように前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の間に設置する工程を、更に有することを特徴とする建物の建築方法。
【請求項4】
請求項3に記載の建物の建築方法において、
前記防水機構を取付ける工程は、
前記H型鋼の前方位置にて前記H型鋼を覆う第一の水切板を取付ける第一の取付け工程と、
前記第一の水切板の前方位置に位置する第二の水切板を、該第二の水切板の下端部が前記下階外壁部材の上端部の前方位置に位置して当該上端部を覆うように取付ける第二の取付け工程と、
前記建物において前記双方の間で外壁の一部をなす化粧面材を、前記第二の水切板の前方位置に取付ける第三の取付け工程と、
を有することを特徴とする建物の建築方法。
【請求項5】
請求項4に記載の建物の建築方法において、
前記双方の各々が、当該各々の厚み方向において、空気を通気させるための通気層を有するとき、
前記第二の取付け工程では、前記第二の水切板と前記第一の水切板との間に空間が設けられ、かつ、当該空間と前記下階外壁部材が有する前記通気層とが連通するように前記第二の水切板を取付け、
前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置して、前記上階外壁部材を前記H型鋼に固定する工程では、前記空間と前記上階外壁部材が有する前記通気層とが連通するように、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置することを特徴とする建物の建築方法。
【請求項6】
請求項5に記載の建物の建築方法において、
前記防水機構を取付ける工程は、
前記第二の水切板が有する外表面のうち、前側に位置する面の上端部に第一の弾性ゴムを貼り付ける第一の貼付工程と、
前記化粧面材の上端面に第二の弾性ゴムを貼り付ける第二の貼付工程と、を更に有し、
前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置して、前記上階外壁部材を前記H型鋼に固定する工程では、前記上階外壁部材の下端部が前記第一の弾性ゴム及び前記第二の弾性ゴムを押圧するように、前記上階外壁部材を前記防水機構及び前記H型鋼の上に載置することを特徴とする建物の建築方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6のいずれか一項に記載の建物の建築方法において、
前記第二の取付け工程では、折れ曲がって段差が形成された前記第二の水切板を、該第二の水切板のうち、前記段差から見て下側にある部分が、前記段差から見て上側にある部分の前方位置に位置するように取付け、
前記第三の取付け工程の前に、前記段差に相当する厚みを有する断熱部材を、前記第二の水切板において前記段差から見て上側にある部分に位置し、かつ、当該部分が有する外表面のうち、前側に位置する面に設置する工程を更に有し、
前記第三の取付け工程では、前記化粧面材を前記断熱部材及び前記第二の水切板の前方位置に取付けることを特徴とする建物の建築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−117268(P2012−117268A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267331(P2010−267331)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】